説明

車体の衝突エネルギ吸収構造

【課題】車両衝突時にバンパを支持する骨格部材の各稜線に作用する荷重を各稜線ごとに調節可能とする。
【解決手段】バンパリインフォースメント86に車体前方側から車体後方側に向かって、衝突荷重が作用した場合に、この衝突荷重が、クラッシュボックス58、60、62、64と取付台座32を介してフロントサイドメンバ12に伝達されるようになっている。また、各クラッシュボックス58、60、62、64は、ビード96の有無によって各衝撃吸収性能が調節されており、クラッシュボックス58、60、62、64がそれぞれ圧縮変形することによって、フロントサイドメンバ12の各稜線18、20、22、24に作用する衝突荷重を調節できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体の衝突エネルギ吸収構造に関し、特に、自動車等の車両のバンパからの衝突エネルギを吸収するための車体の衝突エネルギ吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両のバンパからの衝突エネルギを吸収するための車体の衝突エネルギ吸収構造が知られている(特許文献1)。この車体の衝突エネルギ吸収構造は、車体の前後方向に延びるサイドフレームの先端に取付けられたサイドフレーム延長部の先端部が、車幅方向に延びるバンパフェイスで覆われており、サイドフレーム延長部が上下に分割した第1分割体と第2分割体とを接合した筒体となっている。このため、用途に応じて第2分割体の先端部の長さを変えることで、種々の車両に取付けることができると共に、第1分割体を共用できるので量産効果が高まり、サイドフレーム延長部の製造コストを低減できるようになっている。
【特許文献1】特開平9−66785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来技術では、第1分割体を介してサイドフレームの上部に入力される荷重及び第2分割体を介してサイドフレームの下部に入力される荷重については考慮されているが、車体前後方向から見た断面形状が矩形となっているサイドフレーム(骨格部材)の各稜線に入力される荷重については考慮されていない。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、車両衝突時にバンパを支持する骨格部材の各稜線に作用する荷重を各稜線ごとに調節可能とする車体の衝突エネルギ吸収構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明の車体の衝突エネルギ吸収構造は、車体の前後方向端部に車幅方向に沿って配置されたバンパリインフォースメントと、車体の前後方向に沿って配置され、車体の前後方向に延びる複数の稜線が形成された骨格部材と、前記骨格部材における前記複数の稜線の各先端近傍部位と前記バンパリインフォースメントとを互いに連結し、荷重を前記バンパリインフォースメントから前記各稜線に伝達すると共に前記各稜線に対応してそれぞれの衝撃吸収性能が調節された複数の衝突エネルギ吸収手段と、を有する。
【0006】
従って、車体の前後方向端部に車幅方向に沿って配置されたバンパリインフォースメントに衝突荷重が作用した場合には、この荷重はバンパリインフォースメントと骨格部材とを連結する複数の衝突エネルギ吸収手段を介して、車体の前後方向に沿って配置された骨格部材の前後方向に延びる複数の稜線に伝達される。この際、本発明では、骨格部材の複数の稜線に対応してそれぞれの衝撃吸収性能が調節された複数の衝突エネルギ吸収手段が設けられている。このため、骨格部材の複数の稜線に作用する荷重を、各稜線ごとに調節できる。この結果、車両衝突時の骨格部材の変形モード(変形状態)が制御可能となる。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1記載の車体の衝突エネルギ吸収構造において、前記複数の衝突エネルギ吸収手段を前記骨格部材の前端に結合するための取付台座を有し、該取付台座には前記複数の衝突エネルギ吸収手段をそれぞれ取付けるための複数の台座部が形成されている。
【0008】
従って、複数の衝突エネルギ吸収手段を骨格部材の前端に結合するための取付台座を儲け、この取付台座に、複数の衝突エネルギ吸収手段をそれぞれ取付けるための複数の台座部を形成する構成のため、取付台座を共通部品にして部品点数を低減できる。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項2記載の車体の衝突エネルギ吸収構造において、前記複数の台座部は隣接する台座部との間に形成された切欠によって隔てられている。
【0010】
従って、複数の台座部が隣接する台座部との間に形成された切欠によって隔てられているため、各衝突エネルギ吸収手段を介して、骨格部材の各稜線に作用する荷重が互いに影響し合うのを抑制できる。この結果、各稜線ごとの荷重調節が容易になる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、車両衝突時にバンパを支持する骨格部材の各稜線に作用する荷重を各稜線ごとに調節できる。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、取付台座を共通部品にして部品点数を低減できる。
【0013】
請求項3に記載の本発明は、各稜線ごとの荷重調節が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における車体の衝突エネルギ吸収構造の第1実施形態を図1〜図6に従って説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車体前方側を示しており、矢印UPは車体上方側を示しており、矢印INは車幅方向内側を示している。
【0015】
図1には本実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造が側断面図で示されている。また、図2には本実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造のバンパリインフォースメントを除いた状態が車体斜め前方内側から見た斜視図で示されており、図3には図2の分解斜視図が示されている。また、図4には本実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造のバンパリインフォースメントを除いた状態が正面図で示されており、図5には本実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造の変形状態が側断面図で示されている。さらに、図6には本実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造の平面図が示されている。
【0016】
図2に示すように、本実施形態の自動車車体では、車体前部となるエンジンルーム10の車幅方向両端部下部に、車体骨格部材としての左右一対のフロントサイドメンバ12の前部が長手方向を車体前後方向に沿って配置されている。
【0017】
図3に示すように、フロントサイドメンバ12は車体前後方向に延びる閉断面部13を備えた閉断面構造となっている。
【0018】
なお、図2、3には車体左側のフロントサイドメンバ12のみを示している。また、閉断面構造とは、対象とする断面の開口外周部が実質的に連続して高強度及び高剛性になっている断面構造であって、実質的にとは、対象とする断面が外周長に比べて小さな孔等が部分的に形成されていても、断面の直角方向の手前側又は奥側では孔等が無く、開口部周囲の部材が連続している構成も含むことを意味する。
【0019】
図3に示すように、フロントサイドメンバ12は車幅方向内側部を構成するフロントサイドメンバインナパネル14と、車幅方向外側部を構成するフロントサイドメンバアウタパネル16とを備えている。また、フロントサイドメンバインナパネル14の車体前後方向から見た断面形状は、開口部を車幅方向外側に向けたハット断面形状とされており、開口端部には、車体上方へ向かって伸びる上フランジ14Aと車体下方へ向かって伸びる下フランジ14Bとが形成されている。一方、フロントサイドメンバアウタパネル16は車体上下方向に沿った平板状となっており、上端縁部16Aがフロントサイドメンバインナパネル14の上フランジ14Aに、下端縁部16Bがフロントサイドメンバインナパネル14の下フランジ14Bに溶接等によって結合されている。
【0020】
従って、フロントサイドメンバ12には、車幅方向外側上方の稜線18、車幅方向内側上方の稜線20、車幅方向内側下方の稜線22、車幅方向外側下方の稜線24の4本の稜線が、それぞれ車体前後方向に沿って形成されている。
【0021】
なお、車幅方向外側上方の稜線18は、フロントサイドメンバ12における上側の接合フランジ12Aの下端縁部に沿って形成されており、フロントサイドメンバ12における車幅方向外側壁部12Cと上壁部12Dとの境となっている。また、車幅方向外側下方の稜線24は、フロントサイドメンバ12における下側の接合フランジ12Bの上端縁部に沿って形成されており、フロントサイドメンバ12における車幅方向外側壁部12Cと下壁部12Eとの境となっている。
【0022】
一方、車幅方向内側上方の稜線20はフロントサイドメンバ12における上壁部12Dと車幅方向内側壁部12Fとの境となっており、車幅方向内側下方の稜線22はフロントサイドメンバ12における下壁部12Eと車幅方向内側壁部12Fとの境となっている。
【0023】
フロントサイドメンバ12の先端12Gには、フロントサイドメンバ12の前端を構成する取付板28が溶接等によって結合されている。取付板28は閉断面部13の矩形断面より大きな矩形の板材で構成されており、フロントサイドメンバ12の閉断面部13の前端を閉塞している。また、取付板28における閉断面部13の外周側前方部位となる四隅近傍には、取付孔30がそれぞれ形成されている。
【0024】
取付板28の前面28Aには、取付台座32が車体前方側から重ねられている。また、取付台座32の車体前後方向から見た外形形状は、取付板28と略同じ矩形となっており、四隅近傍には取付孔34が形成されている。これらの取付孔34には車体前方側から車体後方側に向かって締結部材としての例えばボルト36がそれぞれ挿入されている。また、ボルト36の螺子部36Aは、取付板28の取付孔30を通過しており、取付板28の車体後方側からボルト36の螺子部36Aにナット38が螺合している。このため、取付台座32は取付板28にボルト36とナット38とによって固定されている。
【0025】
図4に示すように、取付台座32の中央部には、十字形状の切欠40が形成されている。切欠40の上下方向に伸びる縦孔部42の上端42Aは、閉断面部13の上端13Aの車体前方の位置に達しており、下端42Bは、閉断面部13の下端13Bの車体前方の位置に達している。一方、切欠40の車幅方向に伸びる横孔部44の車幅方向外側端44Aは、閉断面部13の車幅方向外側端13Cの車体前方の位置に達しており、車幅方向内側端44Bは、閉断面部13の車幅方向内側端13Dの車体前方の位置に達している。
【0026】
なお、切欠40の縦孔部42と横孔部44とはそれぞれ長手方向中央部で互いに交差しており、切欠40の中心P1が閉断面部13の軸心と一致している。また、取付板28にも、取付台座32と同様に、切欠40と同形状の切欠を形成した構成としてもよい。
【0027】
図3に示すように、取付台座32における前面には、4つの台座部48、50、52、54が、車体前方へ向かって突出形成されており、各台座部48、50、52、54は、車体前方から見た形状が同じ矩形の枠形状となっている。
【0028】
図4に示すように、取付台座32の車幅方向外側上部に設けられた台座部48は、取付台座32における縦孔部42の車幅方向外側で且つ横孔部44の上側となる領域に形成されており、取付台座32の車幅方向内側上部に設けられた台座部50は、取付台座32における縦孔部42の車幅方向内側で且つ横孔部44の上側となる領域に形成されている。また、取付台座32の車幅方向内側下部に設けられた台座部52は、取付台座32における縦孔部42の車幅方向内側で且つ横孔部44の下側となる領域に形成されており、取付台座32の車幅方向外側下部に設けられた台座部54は、取付台座32における縦孔部42の車幅方向外側で且つ横孔部44の下側となる領域に形成されている。
【0029】
従って、台座部48の車幅方向外側上部の稜線55がフロントサイドメンバ12の車幅方向外側上部の稜線18の前方近傍部位にあり、台座部50の車幅方向内側上部の稜線57がフロントサイドメンバ12の車幅方向内側上部の稜線20の前方近傍部位にある。また、台座部52の車幅方向内側下部の稜線59がフロントサイドメンバ12の車幅方向内側下部の稜線22の前方近傍部位にあり、台座部54の車幅方向外側下部の稜線61がフロントサイドメンバ12の車幅方向内側下部の稜線24の前方近傍部位にある。
【0030】
図2に示すように、台座部48、50、52、54には、それぞれクラッシュボックス58、60、62、64が車体前方側から取付けられている。なお、クラッシュボックス58、60、62、64は例えばアルミの押し出し材で構成されている。
【0031】
図3に示すように、クラッシュボックス58、60、62、64は、車体後方側に開口部66が形成された同形状の矩形箱形状とされている。また、クラッシュボックス58、60、62、64の車体前方から見た形状は、台座部48、50、52、54の枠形状内に装着可能な矩形状となっており、クラッシュボックス58、60、62、64は、後端部58A、60A、62A、64Aを台座部48、50、52、54の内周部に嵌合させた状態で溶接等によって、各台座部48、50、52、54に結合されている。
【0032】
従って、クラッシュボックス58の車幅方向外側上部の稜線70が台座部48の車幅方向外側上部の稜線55の前方近傍部位にあり、クラッシュボックス60の車幅方向内側上部の稜線72が台座部50の車幅方向内側上部の稜線57の前方近傍部位にある。また、クラッシュボックス62の車幅方向内側下部の稜線74が台座部52の車幅方向内側下部の稜線59の前方近傍部位にあり、クラッシュボックス64の車幅方向外側下部の稜線76が台座部54の車幅方向外側下部の稜線61の前方近傍部位にある。
【0033】
クラッシュボックス58、60、62、64の前壁部58B、60B、62B、64Bの各中央部には、取付孔80が形成されており、前壁部58B、60B、62B、64Bの後面側には、ナット82が取付孔80と同軸的に固定されている。
【0034】
図1に示すように、クラッシュボックス58、60、62、64の前壁部58B、60B、62B、64Bの前面には、フロントバンパのバンパリインフォースメント86が取付けられている。
【0035】
図6に示すように、バンパリインフォースメント86は、その長手方向を車幅方向に沿って配置されており、車幅方向外側端部86Aは車体前方側が外周側となる円弧状となっている。
【0036】
図1に示すように、バンパリインフォースメント86の車幅方向から見た断面形状は、車体上下方向を長手方向とする略矩形の閉断面構造となっており、前壁部86Bの上下方向中央部には、車体前方側から車体後方側に向かって凹部88が形成されている。また、バンパリインフォースメント86の後壁部86Cには、クラッシュボックス58、60、62、64の取付孔80と対向する部位に取付孔90が形成されており、これらの取付孔90に車体前方側から挿入されたボルト92をナット82に締結することで、バンパリインフォースメント86がクラッシュボックス58、60、62、64に固定されている。
【0037】
なお、バンパリインフォースメント86の前壁部86Aには、ボルト92を締結するための作業孔94が形成されている。
【0038】
従って、図5に示すように、車体が衝突して、バンパリインフォースメント86に車体前方側から車体後方側に向かって、衝突荷重(図5の矢印F)が作用した場合には、この衝突荷重Fが、クラッシュボックス58、60、62、64と取付台座32を介してフロントサイドメンバ12に伝達されると共に、クラッシュボックス58、60、62、64がそれぞれ圧縮変形することによって、衝突エネルギーの一部を吸収するようになっている。
【0039】
この際、本実施形態では、フロントサイドメンバ12の各稜線18、20、22、24に作用する衝突荷重(図3の矢印F2、F3、F4、F5)を調節するため、各クラッシュボックス58、60、62、64の衝撃吸収性能(潰れ易さ)がそれぞれ個別に調節されている。
【0040】
例えば、下側のクラッシュボックス62、64の外周壁部62C、64Cには、それぞれ車体前後方向に所定の間隔を開けて周方向に沿った複数のビード96が4つの壁毎に形成されているが、上側のクラッシュボックス58、60の外周壁部58C、60Cにはビードが形成されていない。このため、衝突荷重Fに対して、下側のクラッシュボックス62、64が上側のクラッシュボックス58、60より変形し易く、衝撃吸収性能が高くなっている。この結果、上側のクラッシュボックス58、60に対応するフロントサイドメンバ12の稜線18、20に作用する荷重F2、F3に比べて、下側のクラッシュボックス62、64に対応するフロントサイドメンバ12の稜線22、24に作用する荷重F4、F5を小さくすることができるようになっている。
【0041】
なお、クラッシュボックス58、60、62、64のうちどのクラッシュボックスにビード96を設けるかは、フロントサイドメンバ12を含む車体前部構造を考慮し、車両衝突時のフロントサイドメンバ12の変形をどのように制御するかによって適宜決定する。このため、車幅方向外側の上下のクラッシュボックス58、64にビード96を設け、車幅方向内側の上下のクラッシュボックス60、62にビード96を設けない構成や、車幅方向内側下部のクラッシュボックス62のみにビード96を設けた構成等の他の構成としてもよい。
【0042】
また、各クラッシュボックス58、60、62、64における衝撃吸収性能の調節方法としては、ビード96の有無や数及び形状を変える構成の他に、スリット等の強度低下手段を形成する構成、クラッシュボックス58、60、62、64の板厚を変える構成、クラッシュボックス58、60、62、64の材質を例えば、アルミから鉄に変える構成等がある。
【0043】
即ち、本実施形態では、バンパリインフォースメント86と、車体の左右にそれぞれ配置する取付台座32、左右の取付台座32にそれぞれ取付けるクラッシュボックス58、60、62、64がフロントエンドモジュールを構成しており、このフロントエンドモジュールが、フロントサイドメンバ12の各稜線18、20、22、24への荷重入力を調節可能な構造となっている。
【0044】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0045】
車体が衝突して、バンパリインフォースメント86に車体前方側から車体後方側に向かって、衝突荷重(図5の矢印F)が作用した場合には、この衝突荷重Fが、クラッシュボックス58、60、62、64と取付台座32を介してフロントサイドメンバ12に伝達されると共に、クラッシュボックス58、60、62、64がそれぞれ圧縮変形することによって、衝突エネルギーの一部を吸収する。
【0046】
この際、本実施形態では、各クラッシュボックス58、60、62、64の衝撃吸収性能がそれぞれ調節されている。
【0047】
例えば、下側のクラッシュボックス62、64の外周壁部62C、64Cには、それぞれ車体前後方向に所定の間隔を開けて周方向に沿った複数のビード96が形成されており、上側のクラッシュボックス58、60の外周壁部58C、60Cにはビードが形成されていない。このため、衝突荷重Fに対して、下側のクラッシュボックス62、64が上側のクラッシュボックス58、60より変形し易く、衝撃吸収性能が高い。この結果、上側のクラッシュボックス58、60に対応するフロントサイドメンバ12の稜線18、20に作用する荷重F2、F3に比べて、下側のクラッシュボックス62、64に対応するフロントサイドメンバ12の稜線22、24に作用する荷重F4、F5を小さくなる。
【0048】
なお、クラッシュボックス58、60、62、64のうちどのクラッシュボックスにビード96を設けるかは、フロントサイドメンバ12を含む車体前部構造を考慮し、車両衝突時のフロントサイドメンバ12の変形をどのように制御するかによって適宜決定されている。
【0049】
従って、本実施形態では、フロントサイドメンバ12の各稜線18、20、22、24に作用する衝突荷重F2、F3、F4、F5を調節できるため、車両衝突時のフロントサイドメンバ12の変形を制御し、フロントサイドメンバ12の損傷を低減できる。特に、低速衝突時やオフセット衝突時のフロントサイドメンバ12の損傷を低減でき、修理費を抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、取付台座32を共通部品として、取付台座32の台座部48、50、52、54に取付けるクラッシュボックス58、60、62、64を交換することで、フロントサイドメンバ12の各稜線18、20、22、24に作用する衝突荷重F2、F3、F4、F5を調節できる。このため、部品点数を削減できる。
【0051】
また、本実施形態では、取付台座32の台座部48、50、52、54に、クラッシュボックス58、60、62、64を取付ける構成のため、取付台座32も共通部品となり、さらに部品点数を低減できる。さらに、フロントサイドメンバ12が共通で車体重量が異なる車種や、フロントサイドメンバ12が異なる車種にも同一のフロントエンドモジュールが適用可能となる。このため、コストダウンが可能になる。
【0052】
また、本実施形態では、取付台座32の台座部48、50、52、54が隣接する台座部との間に形成された切欠40によって互いに隔てられている。このため、各クラッシュボックス58、60、62、64を介して、フロントサイドメンバ12の各稜線18、20、22、24に作用する荷重が互いに影響し合うのを抑制できる。この結果、各稜線18、20、22、24ごとの荷重調節が容易になる。
【0053】
次に、本発明の車体の衝突エネルギ吸収構造の第2実施形態を図7に従って説明する。
【0054】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図7に示すように、本実施形態では、クラッシュボックス100、102、104、106が前壁部100A、102A、104A、106Aを備えた円筒形状となっており、クラッシュボックス100、102、104、106が取付けられる取付台座32の台座部108、110、112、114もリング形状になっている。
【0056】
また、下側のクラッシュボックス104、106の外周壁部104B、106Bには、それぞれ車体前後方向に所定の間隔を開けて周方向に沿ったリング状の複数のビード120が形成されており、上側のクラッシュボックス100、102の外周壁部100B、102Bにはビードが形成されていない。
【0057】
従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果がある。
【0058】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記各実施形態では、クラッシュボックス及び台座部を矩形または円形としたが、クラッシュボックス及び台座部の形状は、三角形状、楕円形状等の他の形状としてもよい。
【0059】
また、上記各実施形態では、フロントサイドメンバ12の車体前後方向から見た断面形状を4本の稜線を有する矩形状としたが、フロントサイドメンバ12の車体前後方向から見た断面形状は4本の稜線を有する矩形状に限定されず、6本の稜線を有する6角形状や他の数の稜線を有する多角形状としてもよく、その際、クラッシュボックスは各稜線と同数にして各稜線に対応する位置にそれぞれ設けた構成とする。
【0060】
また、上記実施形態では、本発明を骨格部材としてのフロントサイドメンバに適用したが、本発明は骨格部材としてのリヤサイドメンバにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造を示す車幅方向内側から見た側断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造を示すバンパリインフォースメントを除いた車体斜め前方内側から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造を示すバンパリインフォースメントを除いた車体斜め前方内側から見た分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造を示すバンパリインフォースメントを除いた車体前方から見た正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造の変形状態を示す図1に対応する断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造の一部を示す車体上方から見た平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車体の衝突エネルギ吸収構造を示すバンパリインフォースメントを除いた車体斜め前方内側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
12 フロントサイドメンバ(車体骨格部材)
13 閉断面部
18 稜線
20 稜線
22 稜線
24 稜線
28 取付板
32 取付台座
40 切欠
48 台座部
50 台座部
52 台座部
54 台座部
58 クラッシュボックス(衝突エネルギ吸収手段)
60 クラッシュボックス(衝突エネルギ吸収手段)
62 クラッシュボックス(衝突エネルギ吸収手段)
64 クラッシュボックス(衝突エネルギ吸収手段)
86 バンパリインフォースメント
96 ビード
100 クラッシュボックス(衝突エネルギ吸収手段)
102 クラッシュボックス(衝突エネルギ吸収手段)
104 クラッシュボックス(衝突エネルギ吸収手段)
106 クラッシュボックス(衝突エネルギ吸収手段)
108 台座部
110 台座部
112 台座部
114 台座部
120 ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向端部に車幅方向に沿って配置されたバンパリインフォースメントと、
車体の前後方向に沿って配置され、車体の前後方向に延びる複数の稜線が形成された骨格部材と、
前記骨格部材における前記複数の稜線の各先端近傍部位と前記バンパリインフォースメントとを互いに連結し、荷重を前記バンパリインフォースメントから前記各稜線に伝達すると共に前記各稜線に対応してそれぞれの衝撃吸収性能が調節された複数の衝突エネルギ吸収手段と、
を有する車体の衝突エネルギ吸収構造。
【請求項2】
前記複数の衝突エネルギ吸収手段を前記骨格部材の前端に結合するための取付台座を有し、該取付台座には前記複数の衝突エネルギ吸収手段をそれぞれ取付けるための複数の台座部が形成されている請求項1記載の車体の衝突エネルギ吸収構造。
【請求項3】
前記複数の台座部は隣接する台座部との間に形成された切欠によって隔てられている請求項2記載の車体の衝突エネルギ吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−269502(P2009−269502A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122671(P2008−122671)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】