説明

車体へのプライマ焼付無しでの多層コーティングの形成方法

本発明は、自動車基材上に、順番に、プライマサーフェイサ、ベースコート組成物、およびクリアコート組成物をウェットオンウェットオンウェット方式で塗布するステップと、塗布された3層を一緒に1回の焼付ステップで同時に硬化するステップとによる、多層コーティングの形成方法に関する。プライマサーフェイサはフィルム形成性バインダー、揮発性有機液体キャリア、および顔料を含み、バインダーは、約40〜95重量%の、約1〜65%のヒドロキシル、カルボキシルおよび/または他の架橋性官能基モノマー含有量を有する高分岐アクリルポリマーと;約5〜60重量%のアミノプラスト樹脂架橋剤とを含有する。組成物は、架橋非水性分散体樹脂粒子または架橋ミクロゲル樹脂粒子または両方を基本的に含まない。得られる多層コーティングフィルムは、3つのウェット層塗布方法で形成された場合であっても、優れた美的外観、ストライクイン耐性、耐チッピング性、サグ耐性、およびフィルム塗り厚を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年10月7日出願の米国仮特許出願第60/725,012号明細書からの、米国特許法第119条に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、車体またはその部品への多層コーティングの形成方法、特に、良好な仕上げの外観を、プライマ、ベースコート、およびクリアコート層を同時に焼付することにより得ることが可能である多層コーティングフィルムの形成方法、および上塗りフィルムでの界面にじみに対する優れた耐性を有し、前述の方法において用いられることが可能であるプライマ組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車用コーティング系は、通常、スチール基材に塗布された複数のコーティングを含む。典型的には、スチールは、防錆リン酸層で処理され、次いで、追加的な防錆のための陰極電着塗装プライマが塗布される。プライマ−サーフェイサ(耐チッピングプライマ、プライマ、またはプライマ充填材としても知られている)が次いで用いられて、上塗りのために表面が平滑化され、およびコーティング系に、通常の運転中の石によるチッピングへの耐性がまた提供される。次いで、トップコート系が、時々、単一の有色層として、より頻繁には、現在では、ソリッドカラーでの、またはフレーク顔料を有するベースコートとして塗布され、その後、透明な保護クリアコートが塗布されて、車両の仕上げの魅力的な美的品質を、環境または屋外への長期の露出に対しても保護し、維持する。
【0004】
ベースコートおよびクリアコートのコーティングフィルムの形成は、通常、ウェットオンウェット塗布により達成される(すなわち、クリアコートの塗布前にベースコートを焼付せず(ベースコートは、クリアコートの塗布の前に室温で、短時間フラッシュ乾燥され得るが)にクリアコートをベースコートに塗布し、次いで、続いて、ベースコートおよびクリアコートを同時に焼付して乾燥したおよび硬化された仕上げを形成する)。多層コーティングフィルムを形成する従来の方法においては、しかしながら、下位のプライマサーフェイサ層は、ベースコートおよびクリアコートで上塗りされる前に焼付される。歴史的には、トップコートをその上に塗布するための平滑な表面を提供するためだけではなく、上位のベースコートとの界面にじみまたは混合をも防止すると共に、トップコート仕上げの全体の外観の破損を防止するために、焼付されたプライマが用いられてきた。混合に対する耐性(時々、「ストライクイン(strike−in)」耐性として称される)は、現今では自動車およびトラックで非常に人気のある、魅力的なメタリック仕上げの外観に対して特に重要である。プライマ−サーフェイサ上への塗布後の、メタリックベースコートにおけるメタリック顔料フレーク配向のいかなる乱れも、仕上げのメタリック効果を低減させることとなる。従って、金属顔料フレークが塗布後に乱されないことを確実とするために注意をしなければならない。
【0005】
近年において、自動車組み立て工場の環境負荷または影響を、塗布ブースおよび焼付オーブンの操業で生じるVOC(揮発性有機化合物)排出およびCO2(二酸化炭素)排出を低減させることにより低減させることも強く所望されている。これは、塗料における低い溶剤含有量の使用および、プライマサーフェイサ、ベースコートおよびクリアコートをウェットオンウェットで連続的に塗布して、すべてを一度に一回の焼付で硬化することを可能とする3層ウェット塗料系の開発をもたらした。この単純化された塗布プロセスでは、個別のプライマ塗布ブースおよびプライマオーブンを排除することが可能であり、自動車製造業者への相当の経費削減をもたらす。このプロセスの単純化の技術的な困難性は、しかしながら、顕著である。例えば、界面にじみおよび美的外観、ならびに耐チッピング性などのフィルム特性が、未だに顕著な問題である。
【0006】
プライマコーティング材料の配合物を変性させることにより、前述の問題を解決するための試みがなされてきた。例えば、Watanabeらの米国特許第6,863,929号明細書には、3層ウェット塗装プロセス(「3ウェット」または「3−コート−1−焼付」プロセスとしても称される)を用いる多層自動車コーティングフィルムの形成方法が記載されており、ここでは、標準的なポリエステル−メラミン樹脂プライマコーティングは、アクリルポリマー粒子をも含有するよう、すなわち、内部的に架橋された非水性分散体(NAD)ポリマーまたは内部的に架橋されたミクロゲル粒子の形態で含有するよう配合されている。これらの粒子は、プライマサーフェイサとベースコーティングとの間の粘度および溶解度パラメータを高めて、コート層間の界面での混合を防止することを意図している。しかしながら、このような粒子充填系の使用はまた、いくつかの欠点を招く。
【0007】
例えば、微小粒子はまた、ベースコートが流れ込んで混合する可能性がある空隙をウェットプライマの表面に形成して、平滑性、光沢、正面輝度、および/またはメタリック効果の欠損などの美的外観における欠陥をもたらす傾向にある。特に、ドア、フェンダー、ロッカーパネル等などの垂直なパネルでの、これらのコーティングのサギングもまた問題である。これらの粒子充填系はまた、通常の商業レベルでの乾燥フィルム塗り厚を維持することができない。フィルム塗り厚は、従って、NADまたはミクロゲル粒子を界面へ移動させるように減少されなければならない。さらに、薄いフィルムは、下位の防錆性電着塗装プライマ層を過剰なUV光透過および劣化に曝す傾向にあるため、障害がある。薄いフィルムまたは薄いフィルム領域はまた、仕上げ全体の機械特性および視覚的外観が不適当である。
【0008】
従って、ウェットオンウェットオンウェット(すなわち、3ウェット)方式で塗布した場合に、プライマサーフェイサおよびベースコートおよびクリアコート層の混合を防止すると共に、プライマ焼付プロセスを排除し、コーティング系の環境への影響を低減し、その一方で、フィルム塗り厚、高光沢およびイメージの明瞭性などの全体の外観、およびコーティング系のフィルム特性をも維持することを可能とする、より効果的な方法を見出す必要性が未だ存在する。
【0009】
本発明は、前述の望ましい特徴を有する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願明細書において開示されているのは、基材上に、順番に、プライマコーティング組成物の層を塗布し、ベースコーティング組成物の層を塗布し、およびクリアコーティング組成物の層を塗布するステップと、塗布した3層を焼付により同時に硬化するステップとを含む多層コーティングの形成方法であって、プライマコーティング組成物は、フィルム形成性バインダーおよび有機液体キャリアおよび任意により、約1:100〜150:11の顔料対バインダー重量比で顔料を含み、バインダーは、
(a)バインダーの重量を基準にして約40〜95重量%の、約1〜65重量%のヒドロキシル、カルボキシル、およびまたは他の架橋性官能基モノマー含有量および約10,000〜150,000の重量平均分子量を有する分岐アクリルポリマー、および
(b)バインダーの重量を基準にして約5〜60重量%の、アミノプラスト樹脂、ブロックトポリイソシアネート樹脂、またはこれらの混合物からなる群から選択される架橋剤
を含有する。
【0011】
本願明細書においてまた開示されているのは、プライマサーフェイサと、着色ベースコートと、およびベースコート上に塗布されたクリアコートとを含む多層コーティングであり、ここで、プライマサーフェイサは、上記方法において形成された生成物である。
【0012】
本願明細書におけるさらなる開示は、
フィルム形成性バインダーおよび有機液体キャリア、ならびに任意により、約1:100〜150:11の顔料対バインダー重量比で顔料を含み、バインダーが、
(a)バインダーの重量を基準にして約40〜95重量%の、約1〜65重量%のヒドロキシル、カルボキシル、およびまたは他の架橋性官能基モノマー含有量および約10,000〜150,000の重量平均分子量を有する分岐アクリルポリマーと、
(b)バインダーの重量を基準にして約5〜60重量%の、アミノプラスト樹脂、ブロックトポリイソシアネート樹脂、またはこれらの混合物からなる群から選択される架橋剤と
を含有するプライマコーティング組成物である。
【0013】
本願明細書におけるさらなる他の開示は、上記の組成物の乾燥および硬化層でコートされた基材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここに、本発明は、プライマコーティング、ベースコーティング、およびクリアコーティングが、順番に、互いの上に、ウェットオンウェット(すなわち、ウェットオンウェットオンウェット)方式で、一緒での焼付前に基材上に塗布される場合に隣接する塗料層の混合、界面にじみ、および各コート層間の界面での転移を制御することが可能であり、その一方でなお、良好な外観、チッピング性能、およびフィルム塗り厚などの今日の性能要求を満たす、多層コーティングを形成するための方法およびプライマコーティング組成物を提供する。
【0015】
より特定的には、本発明は、基材上へ、順番に、プライマコーティング組成物層、ベースコート組成物層、およびクリアコート組成物層を塗布するステップと、塗布した3層を焼付により同時に硬化するステップとを含む多層コーティングの形成方法を提供し、ここで、プライマコーティング組成物は、フィルム形成性バインダーおよび有機液体キャリア、ならびに任意であるが好ましくは顔料を含み、ここで、バインダーは、
(a)バインダーの重量を基準にして約40〜95重量%の、約1〜65重量%のヒドロキシルおよび/またはカルボキシルおよび/または他の官能基化架橋性モノマー含有量、および約10,000〜150,000の重量平均分子量を有する界面制御ポリマーとしての分岐アクリルポリマーと、
(b)バインダーの重量を基準にして約5〜60重量%の、アミノプラスト樹脂、ブロックトポリイソシアネート、またはこれらの混合物からなる群から選択される架橋剤と
を含有する。
【0016】
本発明のプロセスにおいて、多層コーティングは、好ましくは、架橋NADまたは架橋ミクロゲル樹脂粒子または両方を、「基本的に含まない」ないし「完全に含まない」。組成物はまた、塗布時に約40〜70重量%の総固形分含有量を有する低VOC、高固形分組成物として配合されることが好ましい。
【0017】
本発明はまた、多層コーティングフィルムを形成する前述の方法において用いるための、前述の成分(a)〜(b)を含む高固形分溶剤系プライマコーティング組成物を提供する。上記に定義されたプライマの挙動は、プライマ焼付の欠如にも関わらず、高フィルム塗り厚、高光沢、イメージの明瞭性、および所望の視覚効果(メタリックまたはパールなどの)などの優れた外観、および優れた耐チッピング性(SAE J−400を用いた5の最低等級)を可能にする。
【0018】
本発明の範囲にはまた、本願明細書に開示の方法によりおよびコーティング組成物でコートされた、車体またはその部品などの基材が含まれる。
【0019】
本発明は、自動車およびトラックの車体の外装のすべておよびそれらの部品の仕上げに特に有用である。
【0020】
この開示において、多数の用語および略語が用いられている。以下の定義を提供する。
【0021】
「ウェットオンウェット」とは、上位のコートを、下位のコートに、硬化(すなわち焼付)無しでまたは完全に下位のコートを乾燥させることなく塗布することを意味する。
【0022】
「ウェットオンウェットオンウェット」もまた、本願明細書において「3層ウェット」、「3ウェット」、および「3−コート−1−焼付」と同義に用いられ、プライマ層、ベースコート層、およびクリアコート層が、ウェットオンウェット方式で順番に塗布されることを意味する。
【0023】
プライマコーティングに関して、「基本的に含まない」とは、プライマコーティング組成物が、組成物の総重量を基準にして、1重量%未満、好ましくは0重量パーセントの特定された成分を含有することを意味することとする。
【0024】
「高固形分組成物」とは、組成物の総重量を基準にした重量パーセントで、塗布時に少なくとも40パーセント、好ましくは40〜70パーセントの範囲で総固形分含有量を有する低溶剤の溶剤系液体コーティング組成物を意味する。「総固形分」は、成分のいくつかは、室温で、非揮発性固形分ではなく非揮発性液体であり得るが、組成物中における非揮発性成分の総量を指すと理解されるべきである。
【0025】
「非ゲル化」または「実質的に非ゲル化」は、架橋を実質的に含まず、およびポリマーについて好適な溶剤に溶解したときに計測可能な固有粘度を有する反応生成物を指す。当該技術分野において周知であるとおり、ポリマーの固有粘度は、濃度に対する粘度の低減をプロットすると共に、ゼロ濃度まで外挿することにより判定される。ゲル化反応生成物は、基本的に、無限分子量のものであり、度々、高過ぎて計測できない固有粘度を有することとなる。
【0026】
「低VOC組成物」とは、ASTM D3960に提供されている手法で測定した際に、組成物1リットル当たり約0.6キログラム(5ポンド/ガロン)未満の有機溶剤、好ましくは、1リットル当たり約0.42キログラム(3.5ポンド/ガロン)未満の範囲の有機溶剤を有するコーティング組成物を意味する。
【0027】
本発明は、高分子量の、実質的に非ゲル化の分岐アクリルポリマーを生成するために、または実質的に非ゲル化のカプロラクトン変性分岐アクリルポリマーを生成するために単純かつ効率的な手段を提供する。両方は、時々、本願明細書において、「高分岐」または「超分岐」または「分岐」アクリルポリマーとして称される。これらの分岐アクリルポリマーは、それらの直鎖類似体より低い粘度を有する。これらの分岐アクリルポリマーは、このように生成されたポリマーを溶剤でさらに希釈して粘度を実際的な制限内に維持する必要性なく、自動車組み立て工場において見出される従来の噴霧器具などの標準的な器具における実際の塗布について使用可能な粘度を室温でなお有する、高固形分(低VOC)、液体コーティング組成物、特に高品質の自動車用プライマまたは、ベースコートまたはクリアコートなどのトップコート仕上げの配合に特に有用である。
【0028】
本発明は、界面制御ポリマーとして役立つ一定の比較的高分子量の官能基化分岐アクリルポリマーのプライマ組成物中における使用は、続くベースコートがプライマ上にウェットオンウェット方式で塗布される場合に、組成物を、プライマとベースコーティング層との混合が効果的に防止されるようにし、その一方で、美的外観および耐チッピング性および固形分含有量および従来の焼付プライマのものと同等のフィルム塗り厚などのフィルム特性をも提供する、という発見に基づいている。
【0029】
プライマコート層
本多層コーティングフィルムの形成方法においては、その上にウェットオンウェットで塗布されたときに、トップコート層の混合を防止する性能を有する新規のプライマサーフェイサコーティング組成物が用いられる。このプライマサーフェイサ、プライマ充填材、または耐チッピングプライマ(本願明細書中、以下「プライマ」)は、本願明細書に記載の3層ウェット塗装方法において、良好な仕上げの外観および良好なチッピング性能および良好なフィルム塗り厚を犠牲にすることなく用いることが可能である。
【0030】
溶剤系プライマ組成物は、ウェットオンウェット塗布プロセスにおいて有用なだけではなく、低VOC含有量(揮発性有機含有量)を有するよう配合されることが可能であり、隠すことが容易である灰色のまたは着色組成物に配合されることが可能であり、硬質であるが可撓性でもある仕上げを形成し、冷間圧延スチール、リン酸塩化スチール、電着塗装により塗布された電着塗装プライマで下塗りされたリン酸塩化スチール、ポリエステル強化繊維ガラス、反応射出成形ウレタン、部分結晶性ポリアミドおよび他のプラスチック基材などの予め下塗りされていても下塗りされていなくてもよいプラスチック基材などの多様な基材に対して優れた接着性を有し、および従来のトップコートが接着するであろうような表面を提供する。
【0031】
プライマ組成物は、サーフェイサまたは充填材として用いられて、下塗りされた金属およびプラスチック基材の表面における欠陥をカバーすることが可能であるため、前述の基材に対して特に有用である。例えば、金属基材のプライマでの電着塗装は、度々、小さい欠陥を有する仕上げをもたらし、この組成物を塗布して、欠陥を有さない平滑な、光沢のある仕上げを形成することが可能である。また、繊維ガラスで強化されたポリエステルであるSMC(シート成形化合物)などのプラスチック基材は多くの表面欠陥を含有し、およびサーフェイサでコートされなければならない。
【0032】
本発明の新規のプライマ組成物は、一般的には、フィルム形成性バインダーおよび通常はバインダーについての溶剤である揮発性有機液体キャリアを含有する。組成物が低VOC組成物として配合されることが一般的には望ましい。従って、低VOC組成物については、プライマ組成物は、典型的には、約40〜85重量%のフィルム形成性バインダー含有量、および対応して約15〜60重量%の揮発性有機液体キャリアを有する。一般的には、組成物はまた、約1:100〜150:100の顔料対バインダー重量比で顔料を含有する。
【0033】
上に示したとおり、本発明のプライマ組成物のフィルム形成性部分は、「バインダー」または「バインダー固形分」として称される。バインダーは、一般的には、硬化組成物の固体有機部分に寄与するすべてのフィルム形成性成分を含む。一般的には、本願明細書中後述の触媒、顔料、および安定化剤などの非高分子化学添加剤は、バインダー固形分の一部としては見なされない。顔料以外の非バインダー固形分は、通常は、組成物の約5〜15重量%超には達しない。この開示において、用語「バインダー」または「バインダー固形分」は、さらに本願明細書中以下にさらに記載されるとおり、フィルム形成性分岐アクリルポリマー、メラミン樹脂またはポリイソシアネート架橋剤、およびすべての他の任意選択のフィルム形成性成分を指す。
【0034】
好ましい実施形態において、組成物中に用いられるバインダーまたはフィルム形成性成分は、一般的には、時々、本願明細書において「高分岐」または「超分岐」アクリルポリマーとして称される、約40〜95重量%の前述の実質的に非ゲル化の、分岐アクリルポリマーと、約5〜45重量%のアミノプラスト樹脂架橋剤とを含む。所望の場合には、ブロックトポリイソシアネート架橋剤を用いて、アミノプラストの一部またはすべてを置き換えることが可能であることが理解されるべきである。ブロックトポリイソシアネートは、しかしながら、組成物の全体的なコストを増加させることが知られており、従ってあまり望ましくない。ほとんどの使用については、組成物は、典型的には、約65〜75重量%の分岐アクリルポリマーおよび25〜35重量%のアミノプラスト樹脂架橋剤を含有する。
【0035】
一般には、分岐アクリルポリマーは、約10,000〜150,000、より好ましくは約30,000〜120,000の範囲のMw(重量平均分子量)、および約1〜65重量%の官能基化架橋性モノマー含有量を有する。
【0036】
本願明細書に記載のすべての分子量は、ポリスチレンを基準として用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される。
【0037】
理論に束縛されることは望まないが、前述のアクリルポリマーの包含は界面制御ポリマーとして作用すると考えられ、それゆえ、(1)にじみが防止されるが、なお、相当量の揮発性溶剤を用いる必要なく吹付けなどによる容易な塗布が可能であるよう、十分に低い粘度が維持されるよう、プライマの浸透性を十分に低減させることにより、および/または(2)好ましくは、ベースコート層である続く層と不混和性の化学、主にアクリル系化学を選択することにより、ウェットプライマおよびベースコーティング層の混合を防止する。
【0038】
分岐アクリルポリマーは、一般的には、少なくとも2種のタイプのエチレン性不飽和モノマー、すなわち、1)少なくとも1種のモノアクリルモノマーおよび少なくとも1種のジアクリルまたはジメタクリルモノマーから組成される。任意により、ポリマーは、さらに、3)少なくとも1種のモノメタクリルモノマー(ただし、総反応混合物の40重量%を超えない限りにおいて)を含有し得る。好ましい実施形態において、モノマー混合物は、30重量%以下のジアクリルおよび/またはジメタクリルモノマーを合計で含有して、上述の反応条件下でのゲル形成を最低限に抑える。
【0039】
上述のエチレン性不飽和モノマー構造の部分はまた、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基または他の架橋性官能基を含有することが好ましい。ヒドロキシル基が一般的には好ましい。このようなヒドロキシル基の導入に用いられることが可能であるヒドロキシル含有モノエチレン性不飽和モノマーの例は、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、および4−ヒドロキシブチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレート。このようなカルボキシル含有モノエチレン性不飽和モノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸である。ヒドロキシルおよび/またはカルボキシル官能基の量は、所望される最終特性に応じて異なり得る。好ましい実施形態において、65重量%以下のモノマー混合物がヒドロキシルおよび/またはカルボキシル官能基を含有して、ポリマーが所望の架橋性官能基を有することが可能になる。
【0040】
任意により、上述のヒドロキシルおよび/またはカルボキシル基のほかに、分岐アクリルポリマーは、アミノ、カルバメート、トリメトキシシランなどのアルコキシシラン、エポキシ等などの追加の官能基(モノマー混合物中約65重量%以下の官能性モノマー)を含有して、追加の架橋性官能基をポリマーに付与し、および硬化コーティングのフィルム完全性を増加し得る。当然、官能基の量は、所望される最終特性に応じて異なり得る。これらの官能基は、当業者に明らかであろうとおり、所望の基を含有する官能性モノマーを重合方法中に用いることによりまたは所望の追加の官能基を導入する本発明のポリマーの後反応により、導入されることが可能である。
【0041】
このような官能性モノマーの例は、シラン含有モノマー、特に、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(Crompton製のシルクエスト(Silquest)(登録商標)A−174)、およびγ−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどのアルコキシシランである。有用なアミン含有モノマーの例は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(第三級アミン)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(第三級アミン)、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレート(第二級アミン)、N−t−ブチルアミノエチルアクリレート(第二級アミン)、塩酸2−アミノエチルメタクリレート(第一級アミン)等である。有用なエポキシ含有モノマーの例は、エピクロロヒドリンと反応して、エポキシ基含有モノマーを生成することが可能であるヒドロキシル基を有する、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートおよびいずれかのアクリルモノマーである。有用なカルバメート含有モノマーの例としては、脂肪族アルコールと2−イソシアナトエチルメタクリレートとの付加物が挙げられる。カルバメート官能基化アクリルの調製方法は当該技術分野において周知であり、および、例えば、その記載が参照により本願明細書に援用される欧州特許第0 594 142 B1号明細書および欧州特許第0 719 795 B1号明細書に記載されている。
【0042】
典型的には、モノマー混合物中のエチレン性不飽和モノマーの残りは、カルボン酸基、ヒドロキシル基または他の反応性または架橋性官能基を含有しない非官能性モノマーであろう。
【0043】
非官能性モノアクリルおよびメタクリルモノマーの例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、アクリル酸ステアリル、シクロヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、プロピルアクリレート、フェニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メタクリル酸ステアリル、シクロヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、プロピルメタクリレート、フェニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等などのアルキルアクリレートおよびメタクリレート、またはスチレンまたはメチルスチレンなどの置換スチレン、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリル、アクリルアミド、およびメタクリルアミド等などの他の成分である。
【0044】
モノマー混合物中において分岐を付与するコモノマーとして用いられるジアクリルおよびメタクリルモノマーの例は、エチレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレートおよびジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチルプロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレートなどのアクリルおよびメタクリル酸のジエステルである。コーティング塗布において正確な比率で他の必須の成分と共に用いられればコーティング塗布において、硬化コーティング層への増加した柔軟性、および低減した脆性を付与するために、ウレタンジアクリレートおよびジメタクリレートもまた用いることが可能である。ウレタンモノマーは、当業者に公知であるいずれかの方法により生成されることが可能である。2つの典型的な方法は、1)ジイソシアネートを、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシ含有アクリレートまたはヒドロキシ含有メタクリレートと反応させる方法;および2)イソシアナトアルキルアクリレートまたはイソシアナトメタクリレートを好適なジオールと反応させる方法である。ジエチレン性不飽和モノマーのいくつかはまた、これらのモノマーの上記リストから見ることが可能であるとおり、架橋性官能基をポリマーに付与するために上記に列挙したいずれかのものなどの官能基を含有し得る。
【0045】
上述のとおり、ポリマーはまた、いくつかのモノメタクリルモノマーを含有し得る。しかしながら、このようなモノマーがフリーラジカル重合反応において用いられる場合、モノメタクリルモノマーのモノマー混合物中の総量がおよそ40重量%を超えるべきではないことが望ましい。より多い量を用いることが可能であるが、40重量%を超える量では、このようなモノマーは分岐化メカニズム(または、本願明細書中後述のいわゆる「解裂(backbiting)」)に干渉し始め、それゆえ、望ましくない粘度の急な増加によって示されるとおり、低度の分岐のポリマーがもたらされる。このような濃度で形成される生成物は、かなり粘性であり、扱いが困難である。
【0046】
さらに、上記に列挙したモノアクリルおよびメタクリルモノマーの中から、一般的には、イソボルニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート(すべての異性体)、エチルヘキシル(メタ)アクリレート(すべての異性体)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、またはこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の嵩高いモノマーを、好ましくはコーティング組成物の、ウェットオンウェットでその上に塗布された上位のコーティング層との混合またはストライクイン耐性を高めるために、(モノマー混合物の約70重量%以下で)含むことが望ましい。
【0047】
また、分岐ポリマー生成物の意図される最終用途が高固形分プライマコーティング組成物にあるため、ジアクリルまたはジメタクリルモノマーの量は、一般的には、ゲル化を防止するために、用いられる特定のジアクリルまたはジメタクリルモノマー、ならびにモノマー混合物の組成に応じて異なり得るが、総モノマー混合物の30重量%以下であろう。
【0048】
好ましい実施形態において、分岐アクリルポリマーは、イソボルニルアクリレート、ブチルアクリレート(すべての異性体)、エチルヘキシルアクリレート(すべての異性体)、またはシクロヘキシルアクリレート、またはこれらのモノマーの混合物のいずれかである第1のアクリレートモノマーと、アルキル基中に1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルメタクリレートまたはアクリレート、またはカルボキシル含有アクリルまたはメタクリルモノマーまたはこれらのモノマーの混合物、ジアクリレートまたはジメタクリレートモノマーまたはこれらのモノマーの混合物のいずれかである第2のメタクリレートまたはアクリレートモノマーとの重合化モノマーから組成される。
【0049】
一つの特に好ましい分岐アクリルポリマーは、約40〜98重量%の第1のアクリレート、1〜30%の第2のアクリレートまたはメタクリレート、および1〜30重量%のジアクリレートまたはジメタクリレートを含有する。当然、ポリマー中のモノマーの総割合は100%に等しく、従って、最大量に等しいまたは近い量の一つの特定のモノマーが用いられる場合には、残りのモノマーの相対量は適宜低減されなければならない。
【0050】
一つの特に好ましい分岐アクリルポリマーは、以下の成分、すなわち、イソボルニルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、および1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを、上記の割合範囲で含有する。
【0051】
分岐アクリルポリマーは、モノマーが、液体反応媒体、フリーラジカル重合開始剤、および任意により連鎖移動剤とブレンドされ、および典型的には少なくとも130℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも160℃の比較的高温に、十分な時間、当業者に明らかであるとおり、典型的には2〜8時間加熱されて、実質的に非ゲル化の分岐ポリマーが形成される多様な溶液重合法により調製されることが可能である。一般には、130℃未満の温度では、内部架橋の量が増加すると共に、副生成物の相対量が増加する。しかも、過度に低い反応温度では、反応混合物の粘度は、反応混合物が過度に粘性で攪拌できず、そのために反応を制御することが困難になり、および停止されなければならなくなるまでに急速に増加する。
【0052】
上に示したとおり、本願明細書において、分岐アクリルポリマー主鎖を形成するために用いられるプロセスのフリーラジカル重合部分は、モノマーを開始剤および/または触媒および異なる溶剤の存在下で加熱するなどの従来の技術を利用して実施されてもよい(ただし、ポリマーのゲル化を生じさせずに分岐化を誘引するためには、重合中の反応温度は十分に高温でなければならない(すなわち、一般的には130℃を超える))。
【0053】
いずれかの特定のメカニズムに限定されることは望ましくないが、本願明細書において用いられる高温フリーラジカル重合方法は、モノマー混合物のゲル化を防止する、いわゆる「解裂(backbiting)」を含むと考えられている。記載の重合方法においては、メチン主鎖水素の除去が第3級ラジカルを与えるために生じ、これが分岐点の形成をもたらしおよび最終的に、その後のモノマー付加を介して分岐ポリマーをもたらすと考えられている。水素の主鎖からの除去は、分子鎖間移動、またはいわゆる解裂により生じると考えられており、これが、ジアクリレートまたはジメタクリレートモノマーをわずかな量を超えて用いる古典的なフリーラジカル重合において通常生じると予期されるであろうゲル化ポリマーの形成とは対照的に、観察される分岐化を最も良く説明する。高温アクリレート重合におけるこのような解裂反応は、参照により本願明細書に援用されるPeckおよびGrady、「Polym.Preprints」、2002年、43(2)、154において、より完全に記載されている。
【0054】
本発明において、ジアクリルまたはジメタクリルモノマーの存在下においても、ゲル化ポリマーがほとんどまたは全く形成されず、より高い反応温度がこの解裂に有利であることが予想外にも観察された。過去においては、反応混合物中の多量のジアクリルまたはジメタクリルモノマーの存在は、反応混合物のゲル化を生じさせるであろうと考えられていた。開示のプロセスは、従って、かなり高い反応温度を用いて、主鎖水素除去の発生率を増加させると共に、分岐化の発生率を増加させる。ポリマー鎖上の分岐点の数の増加は、低粘度をもたらす。分岐ポリマーの内部粘度は、等しい分子量の対応する直鎖ポリマーのものより低く、これにより、このように形成された分岐ポリマーを、吹付けによるものなどの実際の適用について十分に低い粘度で、高固形分コーティングにおいて用いることが可能になることが周知である。
【0055】
フリーラジカル重合は、好ましくは、フリーラジカル重合開始剤の存在下に実施され、典型的には、第3級ブチルパーベンゾエート、第3級ブチルパーオクテート、クメンヒドロ過酸化物、ベンゾイルペルオキシド、ジ−第3級ブチルペルオキシド、ジクメンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシドまたは類似の過酸化(peroxygen)化合物、またはアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物が用いられる。フリーラジカル重合開始剤の量は、所望の分子量に応じて異なることが可能であるが、すべての重合性モノマーの重量を基準にして約0.05〜8重量%が典型的である。好ましい範囲は0.05〜4重量パーセントである。2種以上の開始剤の混合物を用い得る。
【0056】
溶剤は必須ではなく、液体反応媒体として好ましく用いられる。溶剤は、総反応混合物の0〜約75%として用いられることが可能である。従来の重合溶剤のいずれかは、高温プロセスの存在下に、分岐アクリルポリマーの調製に用いられ得る。分岐化の誘引に必要とされる高温でのそれらの低い蒸気圧のため、高沸点溶剤が好ましい。一般には、100℃を超える、特に150℃を超える沸点を有する溶剤が最も好ましい。このような高沸点溶剤の例としては、エステルおよび混合エーテルおよびエステル、Cellosolve(Union Carbide Corporationの登録商標)、ブチルCellosolve、Cellosolveアセテート、Carbitols(Union Carbide Corporationの登録商標)、(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。溶剤の官能基がモノマー官能基と干渉しない限りにおいて、いずれの溶剤も許容される。反応はまた、圧力下に行われ得、従って、低沸点溶剤の沸点を、本発明のポリマーの生成に望ましい温度まで高めることが可能である。
【0057】
さらに、種々の炭化水素画分が用いられ得るが、Solvesso150またはSolvesso100(Exxon Mobil Oil Companyの登録商標)が最も好ましい。例えば、トルエン、キシレン、クメン、およびエチルベンゼンといった芳香族溶剤もまた用いられることが可能である。官能性溶剤が所望される場合には、特別な注意がなされる。
【0058】
上述のプロセスのいずれかにおいて、重合は好ましくは、得られるフィルム形成性分岐ポリマーが、未だ、本発明のプライマコーティング組成物における使用のために十分に低粘度を有するが、所望の分子量および必要な架橋性官能基および所望の混合およびストライクイン耐性を有するまで継続される。
【0059】
上記のフィルム形成性分岐アクリル樹脂成分に追加して、プライマ組成物はまた、フィルム形成性バインダーの一部として、架橋剤を含有する。組成物において用いられる架橋剤は、アミノプラスト樹脂またはブロックトポリイソシアネート樹脂または2つの混合物である。メラミンホルムアルデヒド縮合物などのアミノプラスト樹脂が一般的には好ましい。一般には、アミノプラスト樹脂は、メラミン樹脂、尿素、ベンゾグアナミン、または類似の化合物のアルデヒド縮合物である。通常は、用いられるアルデヒドはホルムアルデヒドであるが、有用な生成物は、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフラール等などの他のアルデヒドから形成することが可能である。メラミン樹脂または尿素の縮合物が、最も一般的であると共に好ましいが、少なくとも1種のアミン基が存在する他のアミンおよびアミドの生成物もまた用いることが可能である。
【0060】
メラミン樹脂縮合物のうち、部分的にまたは完全にアルキル化されている、単量体または高分子メラミンホルムアルデヒド縮合物樹脂が一般的には好ましい。これらの好ましい樹脂は、有機溶剤に可溶であり、商品名Cymel(登録商標)でニュージャージー州ウェストパターソン(West Patterson,New Jersey)のCytec Industries,Inc.から市販されている。一つの好ましい架橋剤は、約1〜3の重合度を有する、メチル化およびブチル化またはイソブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂である。一般的には、このメラミンホルムアルデヒド樹脂は、約50%ブチル化基またはイソブチル化基および50%メチル化基を含有する。特性の良好なバランスのための他の好ましいメラミン樹脂は、Cymel 1156(登録商標)として公知である完全にブチル化された樹脂である。
【0061】
尿素ホルムアルデヒド、ベンゾクアナミンホルムアルデヒドおよびブロックトポリイソシアネートまたは非ブロックトポリイソシアネートまたは前述の架橋剤のいずれかの適合する混合物などの、他の可能な架橋剤もまた、当然用いることが可能である。
【0062】
例えば、上述のアミノプラスト架橋剤は、フィルム特性の増強のために、または、従来のブロックトポリイソシアネート架橋剤のいずれかと、置き換えるまたは任意により組み合わせることが可能である。典型的な遮断剤は、アルコール、ケチミン、オキシム、ピラゾール等である。
【0063】
ポリイソシアネートの典型的な例は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、テトラメチルキシリデンジイソシアネート等などの、2〜4個のイソシアネート基/分子を有するイソシアネート化合物である。商品名Desmodur N−3390(登録商標)で、ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,Pennsylvania)のBayer Corporationから入手可能であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、商品名Desmodur Z−4470(登録商標)でBayer Corporation等から入手可能であるイソホロンジイソシアネート(イソシアヌレート)のイソシアヌレートなどの、イソシアヌレート構造単位を有するポリイソシアネートもまた用いることが可能である。
【0064】
前述の有機ポリイソシアネートおよびポリオールのいずれかから形成される、ポリイソシアネート官能基付加物もまた用いることが可能である。トリメチロールプロパンまたはエタンのようなトリメチロールアルカンなどのポリオールを用いることが可能である。一つの有用な付加物は、テトラメチルキシリデンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応生成物であり、およびCythane3160(登録商標)の商品名で入手可能である。本発明の架橋性樹脂が外装コーティングに用いられる場合、耐候性および黄化耐性の観点から、脂肪族または脂環式イソシアネートの使用が、芳香族イソシアネートの使用に対して好ましい。本系において用いることが可能である好適なブロックトイソシアネートの例は、Bayer Corporationから入手可能である1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのピラゾールブロックトポリイソシアネートである。
【0065】
任意により、上記のフィルム形成性バインダー成分に追加して、組成物はまた、フィルム形成性バインダーの一部として、アクリル樹脂、アクリロウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等などの他のフィルム形成性バインダー樹脂および/または架橋性樹脂を含有し得る。しかしながら、上に示したとおり、組成物は、フィルム形成性バインダーの一部として、例えば、アクリルミクロゲル、および例えばアクリルNADベースの架橋NAD樹脂粒子ベースの、架橋ミクロゲル樹脂粒子を完全にまたは基本的に含むべきではない。上位のベースコーティング層がポリエステルベースのコーティング組成物(例えば、標準ポリエステル−メラミン樹脂ベースコーティング)から形成されている場合、プライマ組成物もまた、2つの層の間の溶解度パラメータをさらに高めるために、前述のポリエステルバインダー樹脂のいずれも含まないことが一般的に望ましい。
【0066】
フィルム形成性バインダー成分の他に、本発明のコーティング組成物はまた、少量の非バインダー固形分を含み得る。一般的には、触媒、顔料、または安定化剤などの化学添加剤は、バインダー固形分の一部としてはみなされない。顔料以外の非バインダー固形分は、上に示したとおり、通常は、組成物の約5〜15重量%を超えない。このような追加の添加剤は、当然、コーティング組成物の意図された使用に応じることとなる。
【0067】
例えば、硬化時の組成物の架橋速度を高めるために、触媒を組成物に添加することが可能である。一般的には、バインダーの重量を基準にして約0.1〜6重量%の触媒が用いられる。このような触媒の典型的なものはブロック酸触媒である。典型的には有用なブロック酸触媒は、アミノメチルプロパノールまたはジメチルオキサゾリンでブロックされた芳香族スルホン酸である。典型的には、有用な芳香族スルホン酸は、パラ−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸である。一つの好ましい触媒は、アミノメチルプロパノールでブロックされたドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0068】
組成物の屋外耐候性を向上するために、およびコートされた基材を早期の劣化から保護するために、組成物は、典型的には、バインダーの重量を基準にして約0.01〜2重量%の紫外光安定化剤(この用語は、紫外光吸収剤、遮蔽剤および消光剤を含む)を含有する。典型的な紫外光安定化剤としては、ベンゾフェノン、トリアジン、トリアゾール、ベンゾエート、ヒンダードアミンおよびこれらのブレンドが挙げられる。
【0069】
組成物において用いることが可能である典型的な顔料は、タルク、カオリン、バライト、炭酸塩、ケイ酸塩などの充填材顔料、および二酸化チタン、酸化亜鉛および酸化鉄などの金属酸化物などの着色顔料、およびカーボンブラックおよび有機着色顔料および染料である。得られるプライマ組成物は、約1:100〜150:100の顔料対バインダー重量比を有する。
【0070】
顔料は、先ず、練り顔料を、アクリルコポリマー分散剤と共に、または他の適合するポリマーまたは分散剤と共に、サンドグラインド、ボールミルまたは磨砕グラインドなどの従来の技術により形成することにより、プライマ組成物に導入されることが可能である。練り顔料は、組成物において用いられる他の成分とブレンドされる。
【0071】
一般には、カーボンブラックおよび二酸化チタンを主な顔料として用いることにより調製される、灰色のプライマが典型的には用いられる。しかしながら、種々の着色顔料を用いて、例えば、後にその上に直接的に塗布される有色のベースコート層の色調と類似の色調を有する種々の色を提供し得る。これは、可能な限り最薄のフィルム塗り厚で、有色のベースコートの完全な隠蔽の達成を図るためになされる。さらに、少量のタルクを組成物中に含んで、コーティングフィルムの耐チッピング性を向上させることが、一般的には望ましい。
【0072】
液体キャリアに対して、従来の有機溶剤のいずれかまたは溶剤のブレンドを用いて、プライマ組成物を形成することが可能であるが、ただし、溶剤の選択は、高分子バインダー成分が適合性であり、かつ、高品質のプライマコーティングを付与するようになされる。以下は、組成物の調製に用いられることが可能である溶剤の例である:メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、アセトン、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートおよび他のエステル、エーテル、ケトンおよび従来用いられている脂肪族および芳香族炭化水素溶剤。溶剤の比率は、これらは主に、固体材料をコートされるべき基材に運ぶ揮発性の展色剤として役立つため重要ではない。溶剤は、好ましくは、組み立て工場に運搬されることが可能であり、後に塗布の容易さのために溶剤で好適な噴霧粘度に希釈される、安定な濃縮物を提供する量で用いられる。上記の成分に追加して、組成物はまた、強化剤、および例えばResiflow(登録商標)S(ポリブチルアクリレート)、BYK(登録商標)320および325(高分子量ポリアクリレート)などの流動性制御剤などの他の従来の配合物添加剤を含み得る。このような追加の添加剤は、当然、当業者に明らかであろうとおり、コーティング組成物の所望の最終特性に応じるであろう。さらに、Garamite(登録商標)クレイなどの従来の流体力学的活性剤、ヒュームドシリカ、尿素サグ抑制剤等もまた、混合耐性の増加のために用いることが可能である。
【0073】
上に示したとおり、高固形分プライマ組成物が、一般的には、本発明の多層コーティングプロセスにおいて用いられるために好ましい。空気汚染を最低限のレベルに維持するために、プライマコーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の総重量を基準にして、約40〜70重量%の総固形分含有量(%非揮発性)を塗布時に有し、および好ましくは50〜65重量%を有する。高固形分コーティングは低固形分液体コーティングのような挙動を示すが、より低い溶剤含有量および著しく低減された排出の追加の利益を有する。このような固形分での揮発性有機含有量またはVOCレベルは、典型的には、ASTM D3960に提供された手法で測定した際に、約3.5ポンド未満の有機溶剤/ガロンの硬化性組成物と言い換えられる。
【0074】
しかしながら、当業者に明らかであろうとおり、塗布時に、噴霧粘度を調節するため、およびコーティングの流動性およびレベリングを制御するため、および他の所望の特性を提供するために、追加の溶剤を必要に応じて追加し得ることが理解されるべきである。
【0075】
プライマ組成物は、プラスチックまたは金属基材に、吹付け、静電塗装、浸漬、ブラッシング、フローコーティング等などの従来の技術により塗布することが可能である。
【0076】
ベースコート層
本発明による多層コーティングフィルムの形成方法において、有色ベースコーティング材料が、ベースコート層の形成に用いられる。ベースコート層は、後述されることとなるクリアコート層と共にトップコートフィルムを形成する。このベースコーティング組成物は、フィルム形成性樹脂、通常は硬化剤、着色顔料および任意により光輝材顔料を含有して、輝き、パール、蛍光、および/またはメタリック外観または硬化コーティング組成物への色の深度の増加などの特殊な視覚効果を付与する。
【0077】
従来公知のベースコート組成物のいずれかを、本発明の方法において用いることが可能である。一般には、ベースコートの組成は本発明によっては限定されない。ベースコーティング組成物は溶剤タイプまたは水系タイプであり得る。
【0078】
ベースコーティング材料中に含まれるフィルム形成性樹脂の例としては、これらに限定されないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、および樹脂は単独でまたは組み合わせて用い得る。フィルム形成性樹脂は硬化剤と組み合わせて用いることが可能である。典型的な硬化剤の例としては、メラミンホルムアルデヒド縮合物および/またはブロックトイソシアネート樹脂などのアミノ樹脂が挙げられる。
【0079】
典型的な高固形分溶剤系ベースコートの例は、着色顔料、任意選択のアルミニウムフレーク、およびUV吸収器に追加して、組成物の重量で、約10%ミクロゲルを、レオロジー制御のために、21%メラミンホルムアルデヒド樹脂、15%分岐ポリエステル樹脂、5%ヒドロキシ官能性アクリル樹脂、1%ドデシルベンジルスルホン酸触媒、および上述のポリマーを分散および/または希釈するおよび噴霧塗布を促進する40%溶剤を含む。
【0080】
クリアコート層
クリアコート層を形成するために、クリアコーティング組成物が用いられる。クリアコーティング組成物は特に制限されず、およびフィルム形成性樹脂、硬化剤等を含有するクリアコーティング材料であり得る。クリアコーティング材料は、溶剤タイプ、水系タイプまたは粉末タイプであり得る。
【0081】
低VOC(揮発性有機含有量)を有すると共に、現在の汚染規制を満たす高固形分溶剤系クリアコートが一般的には好ましい。典型的には、有用な溶剤系クリアコートとしては、これらに限定されないが、イソシアネートと架橋したポリオールポリマーの2K(2成分)系およびメラミン樹脂と架橋したアクリルポリオールの1K系またはポリオールおよびメラミン樹脂と組み合わせた1Kアクリロシラン系が挙げられる。
【0082】
本発明のプロセスにおいて用いることが可能である好適な1K溶剤系アクリロシランクリアコート系が、参照により本願明細書に援用される米国特許第5,162,426号明細書に開示されている。好適な1K溶剤系アクリル/メラミン樹脂クリアコート系が、参照により本願明細書に援用される米国特許第4,591,533号明細書に開示されている。
【0083】
エポキシ酸系もまた用いることが可能である。このような仕上げは、高い光沢およびDOI(イメージの明瞭性)を含む魅力的な美的外観を有する鏡面状外装仕上げを備える自動車およびトラックを提供する。
【0084】
基材
本発明のコートフィルムの形成方法は、金属、プラスチックおよび発泡体、およびこれらの組み合わせなどの種々の基材に、好ましくは金属表面および成形体に、およびより好ましくはカチオン性電着塗装コートフィルムがその上に形成された金属製品に適用され得る。
【0085】
金属基材の例としては、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等およびスチールなどのこれらの金属を含有する合金が挙げられる。特定の製品としては、乗用車、トラック、自動二輪車およびバスなどの自動車の車体および部品が挙げられる。
【0086】
特に好ましい金属基材は、リン酸塩、クロム酸塩等での形成処理に予備的に供されたものである。
【0087】
基材は、形成処理に供した表面上に電着塗装コートフィルムを有し得る。電着塗装コートフィルムは、アニオン性またはカチオン性電着塗装コーティング材料から形成され得る。しかしながら、優れた耐腐食性を提供するためカチオン性電着塗装コーティング材料が好ましい。
【0088】
本発明の方法によりコートされることが可能であるプラスチック基材の例としては、ガラス繊維強化ポリエステル、反応−射出成形ウレタン、特に結晶性ポリアミド等またはこれらの混合物が挙げられ、これらは下塗りされていても下塗りされていなくてもよく、または本願明細書に記載のコーティング方法による処理の前に他に処理されていてもよい。これらのプラスチック基材は、度々、フェンダー、バンパー、および/またはトリム部品などの特定の車体部品の製造に用いられる。
【0089】
コートフィルムの形成方法
本発明の多層コートフィルムの形成方法によれば、図1に例示されているとおり、プライマコート層12がプライマコーティング組成物を用いて基材(図1に示されている車体10)上に形成され、次いで、ベースコート層14がベースコーティング材料を用いて、およびクリアコート層16がクリアコーティング材料を用いて、この順番で、ウェットオンウェット方式で形成される。
【0090】
本発明によれば、上述の3つのコーティング組成物が車体に塗布される場合、吹付け、静電塗装、高速回転静電ベル(high speed rotational electrostatic bells)等などの従来のコーティング方法を実施することが可能である。すべての3つのコーティングを塗布する好ましい技術は、典型的に最新の自動車およびトラック組み立て工場において利用されているため、静電増強有り、または無しにおいての空気噴霧吹付け、および高速回転噴霧静電ベルである。
【0091】
本発明によりプライマコーティング材料が車体に塗布されるとき、上記技術のいずれかを用いることが可能である。
【0092】
プライマコーティング材料は、通常は、0.3〜2.5ミル(7〜60μm)、好ましくは0.5〜1.5ミル(12〜36μm)の厚さを有する硬化層を形成するが、これは意図される使用に従って異なり得る。厚さが上限より厚い場合、イメージ鮮鋭性が悪化し得、または不均一性またはサギングなどのトラブルが塗布時に生じ得る。下限未満である場合、電着−下塗り基材を隠蔽することができず、およびフィルムの不連続性が生じ得、これは下位の電着塗装層を過剰なUV透過および劣化に曝す可能性がある。
【0093】
未硬化プライマコート層上に、ベースコーティング材料およびクリアコーティング材料がウェットオンウェット方式で塗布されて、ベースコート層およびクリアコート層が形成される。
【0094】
ベースコーティング材料は、プライマコーティング材料のように、空気−静電吹付けコーティングまたは回転噴霧静電ベルを用いて、0.4〜1.2ミル(10〜30μm)の乾燥厚を有するように塗布され得る。
【0095】
クリアコート材料が、次いで、ベースコート層上に、平滑な粗度または光沢着色顔料の存在により生じる光沢を目的として、およびベースコート層の表面を保護するために塗布される。クリアコート材料は、ベースコーティング材料のように、回転噴霧静電ベルを用いて塗布され得る。
【0096】
クリアコート層は、好ましくは、約1.0〜3.0ミル、(25〜75μm)の乾燥厚を有するよう形成される。
【0097】
上記で得られる多重コート層は、次いで、図1に示すとおり同時に硬化されて(すなわち焼付されて)、層状のコートフィルムを形成する。これが、「3−コート−1−焼付方法」と呼ばれるものである。この方法は、ベースコート化される前に、プライマコート層を乾燥させるためのオーブンを必要とせず(図2に示される従来のプロセスにおいては必要とされている)、および経済的および環境的観点から好ましい。
【0098】
三層化コートフィルムは、次いで、硬化オーブン中に、100〜180℃、好ましくは130〜160℃の範囲内の硬化温度で、高架橋密度を有する硬化コートフィルムが得られるよう硬化される。硬化時間は硬化温度に応じて異なり得るが、硬化温度が130℃〜160℃のときには10〜30分間の硬化時間が適切である。
【0099】
本発明のプロセスによれば、多層コートフィルムは、3〜5ミル(75〜120μm)の厚さを有するよう形成される。本発明の層の各々においては、薄いフィルム塗り厚は、外観、機械的特性、および下位の層へのUV透過量に影響することとなるため、適切なフィルム塗り厚を有することが重要である。過度に薄いフィルム塗り厚は、電着コート層へUV放射線を透過させる可能性がある。ほとんどの電着塗装層はUV吸収剤は配合されておらず、およびこれらは、UV劣化に対して極めて感受性である傾向にある。
【0100】
以下の実施例は本発明をさらに例示するが、これらは、本発明をそれらの詳細に限定するものと解釈されるべきではない。すべての部および割合は、他に示されていない限りにおいて重量基準である。本願明細書に開示のすべての分子量は、ポリスチレンを基準として用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されている。他に規定されていない限りにおいて、すべての薬品および試薬は、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のAldrich Chemical Companyから入手することが可能である。
【実施例】
【0101】
以下の分岐アクリルコポリマーを調製し、次いでそれを用いて、以下の本発明の3ウェットプライマコーティング組成物を形成した。
【0102】
実施例1
高Mw高度分岐アクリルポリマーの調製
攪拌機、温度計、水コンデンサ、窒素インレットおよび加熱マントルを備えた5−リットルのガラスフラスコに、800グラムのSolvesso100を添加した。この混合物を、攪拌し、および163℃に加熱した(還流)。バッチを還流に維持しながら、360グラムの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1340グラムのイソボルニルアクリレート、360グラムのヒドロキシエチルメタクリレート、20グラムのt−ブチルペルオキシアセテート、320グラムのSolvesso100の混合物を300分の時間をかけて添加した。次いで、反応混合物をさらなる60分間、還流で保持した。得られるポリマー溶液の重量固形分は67.5%であり、および25℃で計測したガードナーホルト粘度(ASTM D1545−98)はZ2であった。GPCで測定したところ、ポリマーの重量平均分子量は54,550であり、および多分散性は15であった。
【0103】
実施例2
上記3ウェットプライマ含有ポリマーの調製
灰色のプライマサーフェイサ組成物を、以下の成分を好適な混合容器中に示す順番で一緒に混合することにより調製した。
【0104】

【0105】
表脚注
1エステル溶剤中の19%固形分の顔料分散体剤中に分散された18%固形分のカーボンブラック顔料。
2エステル溶剤中のアクリル樹脂中に分散された68%固形分の二酸化チタン顔料。
3ブチルアセテート溶剤。
4イソプロパノール溶剤。
548%のNacure(登録商標)XP−221、コネチカット州ノーウォーク(Norwalk,Connecticut)のKing Industriesにより供給された芳香族スルホン酸。
6Cymel(登録商標)1168、ニュージャージー州ウェストパターソン(West Patterson,New Jersey)のCytec Industries Inc.により供給された完全アルキル化(50%メチル;50%イソブチル)単量体メラミンホルムアルデヒド樹脂。
7アクリル樹脂溶液および芳香族炭化水素溶剤中の9%固形分のシリカ分散体。
8実施例1からの超分岐アクリル。
【0106】
得られる3ウェットプライマサーフェイサ組成物は、60.8%の理論的固体含有量を有し、および吹付け固形分は57重量%であり、Solvesso(登録商標)100を溶剤として用いて4番Fordカップで34秒に短縮された。
【0107】
実施例3および比較例
従来の焼付プライマと比した上記で調製した3ウェットプライマを用いる3ウェットコーティング方法
リン酸化スチールパネルを:(1)上記で調製したプライマ(実施例3)での3ウェットコーティング方法を用いる;および(2)対照として、標準的な焼付プライマ(比較例)での従来のプライマ焼付プロセスを用いる、二つの異なる方法でコートした。
【0108】
実施例3において、実施例2のプライマサーフェイサを、プライマ−サーフェイサを吹付けることにより、硬化陰極エポキシ樹脂ベースの電着プライマ(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のDuPont Company製のCormax(登録商標)6ED)でコートされたリン酸塩化スチールパネル上に塗布して、23ミクロンのフィルム塗り厚を得た。プライマサーフェイサ層およびすべての続く層を55鋸状ベルカップを用いて塗布した。プライマサーフェイサ塗布の後、パネルを室温で3分間空気フラッシュ乾燥させ、および、その後、シルバーバーチ溶剤系ベースコート(Du Pont Company製の商品コード(commercial code)647−DP067)の塗布を、2コートで続けて18ミクロンのフィルム塗り厚をフラッシュオフ3分間で得、および続けて、アクリロシランクリアコート(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のDuPont Company製のGen(登録商標)4ES)を塗布して、この試験のために垂直および水平位置上に40ミクロンのフィルム塗り厚を得、および10分間フラッシュ乾燥し、および30分間140℃で焼付した。
【0109】
上記の3ウェットプライマサーフェイサ組成物を、比較のために、比較例1において、DuPont Company製の1回焼付プライマ708−DN079中の市販のTitanium Frost2と共に、ベースコート塗布との間にプライマを焼付する従来のプロセスを用いて、比較例1のために塗布した。
【0110】
試験結果が以下の表にまとめられている。表において、フロップ(すなわち、メタリック効果)、接着性、およびチッピングを以下の手法に従って試験した。
【0111】
フロップ−フロップ値(仕上げのメタリック効果を計測する)を、各パネルの輝度特性を15°、45°、および110°の角度から計測するX−Rite Inc.製のX−Rite(登録商標)マシーンにより測定した計測値から算出した。3回の読取値の平均を各角度で取り、および以下の式を用いてフロップが算出される。
フロップ=((L15°−L110°)*10/L45°)。
【0112】
上記のように形成した多層コーティングについての耐チッピング性および接着性もまた試験した。以下の試験手法を用いた。
【0113】
接着性(0〜5の接着性を試験法ASTM D3359に従って測定した接着性)−少なくとも4Bの等級が許容される最低値である。
【0114】
耐チッピング性(通過する車の車輪によってこの車両に飛ばされる最も通常は石または砂利といった硬質材料による衝撃からの、または同一の車の車輪によってこの車両に飛ばされるロッカーパネルの場合の物理的損傷に耐えるコーティング系の性能を測る)を、グラベロメータを用いて、および試験法SAE J−400に記載の手法に従って測定する。少なくとも5の等級が許容される最低値である。
【0115】
表1
DuPont708ラインプライマ、従来のプロセスを用いたパネルの物理特性対3ウェットプライマおよび3ウェットプロセスを用いたパネルの物理特性

【0116】
要約すると、従来の焼付プロセスによって塗布される従来の焼付プライマと同一または類似の特性を有する本発明のプライマコーティング組成物を3−コート−1−焼付(すなわち3ウェット)プロセスで用いて、自動車の高品質な外観を得ることが可能であることを結果は示した。
【0117】
本発明のプロセスおよび組成物の成分の種々の他の改良、変更、付加または置き換えは、本発明の思想および範囲から逸脱することなく当業者にとって明らかであろう。本発明は、本願明細書に規定の例示の実施形態によっては限定されず、特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明による3層ウェット塗料塗布プロセスの概略図である。
【図2】個別のプライマ噴霧ブースおよびプライマ焼付プロセスを必要とする従来の自動車コーティングプロセスの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、順番に、プライマコーティング組成物の層を塗布し、ベースコーティング組成物の層を塗布し、およびクリアコーティング組成物の層を塗布するステップと、塗布した3層を焼付により同時に硬化するステップとを含む多層コーティングの形成方法であって、前記プライマコーティング組成物は、フィルム形成性バインダーおよび有機液体キャリアを含み、および任意により、約1:100〜150:11の顔料対バインダー重量比で顔料を含んでもよく、前記バインダーは、
(a)前記バインダーの重量を基準にして約40〜95重量%の、約1〜65重量%のヒドロキシル、カルボキシル、およびまたは他の架橋性官能基モノマー含有量および約10,000〜150,000の重量平均分子量を有する分岐アクリルポリマー、および
(b)前記バインダーの重量を基準にして約5〜60重量%の、アミノプラスト樹脂、ブロックトポリイソシアネート樹脂、またはこれらの混合物からなる群から選択される架橋剤
を含有する方法。
【請求項2】
前記プライマ組成物が、架橋非水性分散体樹脂および/または架橋ミクロゲル樹脂の粒子を完全に含まないかまたは基本的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、その上に電着塗装コートフィルムが形成された予め下塗りされた基材に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基材が車体またはその部品である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プライマサーフェイサと、
着色ベースコートと、
前記ベースコート上に塗布されたクリアコートと
を含み、
前記プライマサーフェイサが、請求項1に記載の組成物でできている多層コーティング。
【請求項6】
プライマサーフェイサの下位が電着塗装プライマコーティングである、請求項5に記載の多層コーティング。
【請求項7】
前記コーティングが自動車およびトラックの外装仕上げである、請求項5に記載の多層コーティング。
【請求項8】
フィルム形成性バインダーおよび有機液体キャリアを含み、ならびに任意により、約1:100〜150:11の顔料対バインダー重量比で顔料を含んでもよく、前記バインダーが、
(a)前記バインダーの重量を基準にして約40〜95重量%の、約1〜65重量%のヒドロキシル、カルボキシル、およびまたは他の架橋性官能基モノマー含有量および約10,000〜150,000の重量平均分子量を有する分岐アクリルポリマーと、
(b)前記バインダーの重量を基準にして約5〜60重量%の、アミノプラスト樹脂、ブロックトポリイソシアネート樹脂、またはこれらの混合物からなる群から選択される架橋剤と
を含有するプライマコーティング組成物。
【請求項9】
前記分岐アクリルポリマーが、少なくとも一方が前記ヒドロキシルおよび/またはカルボキシル含有物を有し、および他方がヒドロキシルおよび/またはヒドロキシル含有物を有さない少なくとも2種のエチレン性不飽和モノマーから組成される、請求項8に記載のプライマ組成物。
【請求項10】
前記分岐アクリルポリマーが、少なくとも1種のモノアクリルモノマーおよび少なくとも1種のジアクリルまたはジメタクリルモノマーから組成され、および任意により、このポリマーは、少なくとも1種のモノメタクリルモノマーを、総反応混合物の40重量%を超えない限りにおいてさらに含有し得る、請求項9に記載のプライマ組成物。
【請求項11】
前記モノマー混合物が、合計で、30重量%以下のジアクリルおよび/またはジメタクリルモノマーを含有する、請求項10に記載のプライマ組成物。
【請求項12】
前記分岐アクリルポリマーが、イソボルニルアクリレート、ブチルアクリレート(すべての異性体)、エチルヘキシルアクリレート(すべての異性体)、またはシクロヘキシルアクリレート、またはこれらのモノマーの混合物のいずれかである第1のアクリレートモノマーと、アルキル基中に1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルメタクリレートまたはアクリレート、またはカルボキシル含有アクリルまたはメタクリルモノマーまたはこれらのモノマーの混合物、およびジアクリレートまたはジメタクリレートモノマーまたはこれらのモノマーの混合物のいずれかである第2のメタクリレートまたはアクリレートモノマーとの重合化モノマーから組成される、請求項9に記載のプライマ組成物。
【請求項13】
前記アミノプラスト樹脂が、部分的または完全アルキル化単量体または高分子メラミンホルムアルデヒド縮合物である、請求項8に記載のプライマ組成物。
【請求項14】
前記バインダーの重量を基準にして約0.1〜6重量%のブロック酸触媒をさらに含有する、請求項8に記載のプライマ組成物。
【請求項15】
架橋非水性分散体樹脂および/または架橋ミクロゲル樹脂の粒子を完全に含まないかまたは基本的に含まない、請求項8に記載のプライマ組成物。
【請求項16】
少なくとも40%の総固形分濃度を有する、請求項8に記載のプライマ組成物。
【請求項17】
前記組成物が、複合体ベースコート/クリアコート仕上げの下のプライマ−サーフェイサである、請求項8または15に記載のプライマ組成物。
【請求項18】
請求項8または15に記載の組成物の乾燥および硬化層でコートされた基材。
【請求項19】
前記基材が車体またはその部品である、請求項18に記載の基材。
【請求項20】
3層ウェット塗料系を用いて、プライマ焼付無しで、通常のフィルム塗り厚を自動車基材で得る方法であって、
(a)請求項8または15に記載のプライマ−サーフェイサ組成物を基材に塗布するステップと、
(b)ベースコート組成物をウェットオンウェットで前記プライマ−サーフェイサ上に塗布するステップと、
(c)クリアコート組成物をウェットオンウェットで前記ベースコート上に塗布するステップと、
(d)塗布した3つの重量層を、一緒に1回の焼付で硬化するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−511249(P2009−511249A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534780(P2008−534780)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/039644
【国際公開番号】WO2007/044767
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】