説明

車体フレームの車枠の構造

【課題】 この発明は、サイドレール間のラジエータ等の取付のためのスペースを拡開した車体フレーム構造に関する。
【解決手段】 サイドレールが、左右一対に設けられて直線状に延びるサイドレール本体部と、左右一対に設けられて前記サイドレール本体部の先端側でその外側に平行に並べて固定されるサイドレールフロント部とからなり、該一対のサイドレールフロント部の横幅方向の隙間に車両の冷却装置を収納可能としたことを特徴とする。サイドレールフロント部にはフロント・アンダーラン・プロテクタを支持するステーを一体に形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、左右一対のサイドレール間のラジエータ等の取付のためのスペースを拡開した車体フレーム構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両において、ラジエータRなどの冷却装置は、図7、図8に示すように左右一対のサイドレール31、31間の幅方向のスペースに配置しブラケットを介するなどしてサイドレール31にマウントされている。なお、図8で符号Eはエンジン、符号35はクロスメンバーである。
しかし、ラジエータRは排気ガス規制対応のために大型化が検討されており、今後もさらに進んでいくことが予想される。
現状では図8に示すように、サイドレール31とラジエータRの配置では隙間に余裕が無く、特に、直線状に伸びるストレートフレーム構造では、これ以上のラジエータRの大型化は困難である。
そこで、従来のフレーム構造を踏襲してラジエータのスペースを確保するには、図9、図10に示すように、サイドレール31の先端部で幅方向のスペースを拡開するため外向きに折り曲げる折曲片部32を設ける構造が考えられるが、次ぎの問題点が発生する。
(1)サイドレールのフォーム型の変更が必要であり、膨大な金型投資費用が発生する。
(2)ラジエータ大型化の要否は仕向地によって異なるため、図8のような従来型のストレート構造のサイドレールも継続生産され、2種類の金型が必要となるため、専用金型の新規製作が必要となる。
(3)サイドレールを曲げ加工するので、前面衝突時に曲げ部から座屈してしまい衝突性能が低下する虞れがある。
(4)更に、図10に示すように、上記サイドレール31のフレーム構造にフロント・アンダーラン・プロテクタ40を装着するにはステー36を取り付けることになるが、ステー36はサイドレール31と別製品となるためコストアップとなる。
【特許文献1】特開平11−155619号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、
一対のサイドレール間のラジエータ取付用のスペースを拡大することができると共に、前面衝突性能悪化の軽減ができるフレーム構造を提供することにある。
この発明の別の課題は、フロント・アンダーラン・プロテクタ取付け機能を付加した構造とすることで、複数の機能を一体化し、コストを低減できるフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
サイドレールが、左右一対に設けられて直線状に延びるサイドレール本体部と、左右一対に設けられて直線状に延びると共に前記サイドレール本体部の先端側でその外側に平行に並べて固定されるサイドレールフロント部とからなり、
該一対のサイドレールフロント部の横幅方向の隙間に車両の冷却装置を収納可能としたことを特徴とする。
また、請求項2の位では、
前記サイドレール本体部とサイドレールフロント部とがコ字断面の鋼材からなっており、 一対のサイドレール本体部が、コ字断面の開口部を内向きで向かい合うように配置してなり、一対のサイドレールフロント部が、コ字断面の開口部を前記サイドレール本体部の開口部と180度反転させると共に溝底壁面を前記サイドレール本体部の溝底壁面の外側に重ねて固着してなることを特徴とする。
また、請求項3の発明では、
前記サイドレールフロント部の先端側に、下方に延びてフロント・アンダーラン・プロテクタを支持するためのステーを一体に形成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明は以下の特段の効果を奏することができる。
(1)先端側のサイドレールフロント部と後方側のサイドレール本体部とに二分し、サイドレールフロント部をサイドレール本体部の外側に平行に重ねて固定することで容易に幅方向のスペースを拡大することができる。
(2)後方側のサイドレール本体部は、従来形状から先端部をカットするだけで流用できサイドレールの金型投資費用を削減できる。
(3)先端側のサイドレールフロント部の設計仕様が、サイドレール本体部の強度に影響されず、先端側に関わる強度のみを考慮した形状、板厚、材質とする最適設計が可能となり、コスト低減が図れると共に、前面衝突性能の悪化を緩和することが可能となる。
(4)フロント・アンダーラン・プロテクタを取付けるためのステーを別体とせずに、サイドレールフロント部に一体に形成した構造にすることにより、部品点数や収納スペースが節減でき、コスト低減となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、この発明の車体フレーム構造の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0007】
図1から図2に示す車体フレームに使用するサイドレール1はコ字断面の鋼材からなっており、サイドレール本体部2にサイドレールフロント部7を固定し、左右一対に配置した構成からなっている。
【0008】
[サイドレール本体部]
サイドレール本体部2は、上下に略水平に延びる一対のフランジとしての周壁面3、5と、周壁面3、5の端部間を繋ぐ溝底壁面4の略コ字断面からなっている。
そして、サイドレール本体部2は、上記コ字断面の開口部6が内向きで向かい合うように所定の横幅の間隔L1を隔てて左右一対に配置した構成からなっている。
【0009】
[サイドレールフロント部]
サイドレールフロント部7は、上下に略水平に延びる一対のフランジとしての周壁面8、10と、該周壁面8、10の端部間を繋ぐ溝底壁面9の略コ字断面からなっている。
このサイドレールフロント部7は左右一対に設けられており、各サイドレールフロント部7のコ字断面の開口部11を前記サイドレール本体部2の開口部6と180度反転させて、溝底壁面9を前記サイドレール本体部2の先端側の溝底壁面4の外側に重ね、リベットやボルトなどの固定具12で固定している。
【0010】
また、サイドレールフロント部7の溝底壁面9の先端には折返片13が設けられており、周壁面8、10と同様に外向き側に略直角に折り曲げられている。
この折返片13は、サイドレール1の先端で横幅方向に延びるクロスメンバー15に固定具12により固着される。
クロスメンバー15は、図示例の場合、コ字断面からなっており、その開口部側にサイドレールフロント部7の先端が突入して折返片13を溝底壁面19の内面に固着しているが、クロスメンバー15を反転して溝底壁面19の外面に固着してもよい。
【0011】
これにより一対のサイドレール本体部2、2間の横幅の間隔L1に対して、サイドレールフロント部7は、サイドレール本体部2の横幅L3分だけ外側にずれるので、サイドレールフロント部7間の横幅の間隔L2は、前記間隔L1に対して(L3×2)の幅分だけ広く設定することができる。
【0012】
上記実施例1では、サイドレール1は折り曲げられることなく、溝底壁面4、9をほぼ同一線上に揃えて固定しているので、前面衝突性能悪化の軽減を図りながら冷却装置(ラジエータ)の大型化に沿ったフロント周りのスペースを拡大することができる。
また、サイドレール本体部2およびサイドレールフロント部7をコ字断面の鋼材としたので、同一のコ字断面の鋼材を分断して両者を成形することもできるし、サイドレール本体部とサイドレールフロント部とで、それぞれ形状や厚み、素材などを変えて用いることもできる。
【実施例2】
【0013】
上記実施例1では、サイドレール本体部2とサイドレールフロント部7を共にコ字断面の鋼材としたが、閉断面の鋼材を用いてもよい。
図3に一例を示すサイドレール1では、サイドレールフロント部7のみに閉断面の鋼材を用い、サイドレール本体部2には実施例1と同様のコ字断面の鋼材を用いた場合を例示する。
【0014】
ここで、閉断面は、コ字断面の鋼材にやや大きめのコ字断面の鋼材を向かい合わせて外嵌し溶着することで形成されるが、角筒状のパイプを用いてもよい。
そして、この閉断面の鋼材を用いて、前記実施例1と同様に、直線状に延びる左右一対のサイドレール本体部2の先端側でその外側に、サイドレールフロント部7を平行に並べて固定具12により両者を固定する。
その他の構成は前記実施例に準じるので、その説明を省略する。
【0015】
この発明では、サイドレールフロント部7と共にサイドレール本体部2に閉断面の鋼材を用いてもよいし、逆にサイドレールフロント部7に実施例1のコ字断面の鋼材を用いサイドレール本体部2にのみ閉断面の鋼材を用いてもよい。
【実施例3】
【0016】
図4にはサイドレール1の異なる実施例を示す。
このサイドレール1のサイドレールフロント部7’は、先端を横倒略L字形状としている。
即ち、サイドレールフロント部7’は、下段の周壁部10の先端寄りで下方に垂下するコ字断面の片からなるステー16を一体に形成している。
【0017】
ここでサイドレールフロント部7’の下方の周壁部10は、サイドレールフロント部7’の下側縁部に沿って延びているが、ステー16の連設部分では前後が分断されてステー16の両側縁部に沿って一連に延びている。
図示例ではステー16の下端縁部にはフランジは設けられていない。
【0018】
このサイドレールフロント部7’は、前記実施例と同様にしてサイドレール本体部2に固定具12を介して固着されており、同様にサイドレールフロント部7’の折返片13がクロスメンバー15に固定具12を介して固着されている。
そして、このステー16の先端に、公知構成のフロント・アンダーラン・プロテクタ20が固定されて使用に供される。
その他の構成は前記実施例と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0019】
これにより、図5(b)および図10に示す従来のステー36のように前方へ向かって曲成されることなく、図5(a)に示すようにサイドレールフロント部7’の先端で垂下しているのでフロント・アンダーラン・プロテクタ20の入力点に近い位置に配置されて強度を高めることができる。
【実施例4】
【0020】
上記各実施例では、サイドレールフロント部7、7’が、サイドレール本体部2と同様に直線状に延びている例を示したが、図6に示すサイドレールフロント部7”は、サイドレール本体部2と固定される基端側は直線状に延びているが、先端側は幅広に傾斜または湾曲している。
【0021】
これによりサイドレールフロント部7”のフロント・アンダーラン・プロテクタ20との結合個所がより外側に広がるので、フロント・アンダーラン・プロテクタ20の入力点に近い位置となり、一層強度を高めることができる。
その他の構成は前記実施例2に準じるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0022】
また、この発明は上記各実施例に限定されるものではなく、用途に応じて発明の要旨を変更しない範囲で適宜に設計変更しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の車体フレームの前方部分を示す斜視図である。
【図2】同平面図である。
【図3】サイドレールフロント部を閉断面の鋼材とした実施例2の車体フレームの前方部分を示す平面図である。
【図4】サイドレールフロント部に一体にステーを形成した実施例3の車体フレームの前方部分を示す斜視図である。
【図5】(a)は図4のステーとフロント・アンダーラン・プロテクタとの位置関係を示す側面図、(b)は従来の別体のステーとフロント・アンダーラン・プロテクタとの位置関係を示す側面図である。
【図6】サイドレールフロント部の先端を外側に曲成した実施例4の車体フレームの前方部分を示す平面図である。
【図7】従来のトラックの車体フレームの前半部分を示す側面図である。
【図8】同サイドレール間にラジエータを配置する状態を示す平面図である。
【図9】サイドレールのフロント部分を外向きに折り曲げてラジエータの収納スペースを拡大した従来構造の斜視図である。
【図10】同サイドレールに別体のステーを固着してフロント・アンダーラン・プロテクタを取り付けた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 サイドレール
2 サイドレール本体部
3、5 周壁面
4 溝底壁面
6 開口部
7、7’、7” サイドレールフロント部
8、10周壁面
9 溝底壁面
11 開口部
12 固定具
13 折返片
15 クロスメンバー
16 ステー
20 フロント・アンダーラン・プロテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドレールが、左右一対に設けられて直線状に延びるサイドレール本体部と、左右一対に設けられて前記サイドレール本体部の先端側でその外側に平行に並べて固定されるサイドレールフロント部とからなり、
該一対のサイドレールフロント部の横幅方向の隙間に車両の冷却装置を収納可能としたことを特徴とする車体フレーム構造。
【請求項2】
サイドレール本体部とサイドレールフロント部とがコ字断面の鋼材からなっており、
一対のサイドレール本体部が、コ字断面の開口部を内向きで向かい合うように配置してなり、
一対のサイドレールフロント部が、コ字断面の開口部を前記サイドレール本体部の開口部と180度反転させると共に溝底壁面を前記サイドレール本体部の溝底壁面の外側に重ねて固着してなることを特徴とする請求項1に記載の車体フレーム構造。
【請求項3】
サイドレールフロント部の先端側に、下方に延びてフロント・アンダーラン・プロテクタを支持するためのステーを一体に形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の車体フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−6786(P2009−6786A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168743(P2007−168743)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】