説明

車体フロア構造

【課題】車体が変形し難い車体フロア構造を提供する。
【解決手段】サイドシル10と、車幅方向外側に曲がりながら延びサイドシルインナ11の前端部の側壁に結合した延長部22と、延長部22の内側壁から後方内側に向けて傾斜して延びた後、車幅方向中央で後方に延びるトンネルフレーム40と、フロアパネル60と、アンダパネルと、フロアクロスメンバ55と、延長部22、サイドシルインナ11、フロアクロスメンバ55及びトンネルフレーム40で囲まれると共に、フロアパネル60及びアンダパネルで挟まれつつ結合され、平面視でX字形状の芯材と、を備え、芯材は第1芯材80と第2芯材90とを備え、第1芯材80は、前後方向及び車幅方向に対して斜めであって、後側に向かうにつれて車幅方向中央に近づくように延び、第2芯材90は、前後方向及び車幅方向に対して斜めであって、後側に向かうにつれて車幅方向外側に近づくように延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体フロア構造に関して、次のような技術が知られている。
フロア本体を構成する上平板と下平板との間に、車幅方向(左右方向)に延びると共に前後方向に配列した複数の横芯材と、前後方向に延びると共に車幅方向に配列した複数の縦芯材と、を備える技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、フロアパネルの底面(下面)に、前後方向に延びるフロアフレーム(補強部材、強度部材)を取り付け、フロアパネルを補強する技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4021672号公報
【特許文献2】特開2010−241261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、縦部材が前後方向に延び、横部材が車幅方向に延びているので、車両がナローオフセット衝突すると、前輪が後退して、衝突荷重が斜め後向きでフロアパネルに入力し、フロアパネル等の車体が大きく変形してしまう虞がある。ナローオフセット衝突とは、対向車等の衝突物の衝突位置が、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側にオフセットした前面衝突をいう。
【0006】
また、特許文献2でも、特許文献1と同様に、補強部材であるフロアフレームが前後方向に延びているので、ナローオフセット衝突すると、衝突荷重が斜め後向きでフロアパネルに入力し、フロアパネル等の車体が大きく変形してしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、ナローオフセット衝突しても、車体が変形し難い車体フロア構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、サイドシルインナを有し、前後方向に延びるサイドシルと、フロントサイドフレームの後側の延長部であって、ダッシュボードロアパネルに沿いつつ車幅方向外側に曲がりながら延び、前記サイドシルインナの前端部の側壁に結合した延長部と、前記延長部の内側壁から後方内側に向けて傾斜して延びた後、車幅方向中央で後方に延びるトンネルフレームと、前記サイドシルインナ及び前記トンネルフレームに結合したフロアパネルと、前記フロアパネルの下方に配置されたアンダパネルと、車幅方向に延びると共に、前記サイドシルインナ及び前記トンネルフレームに結合したフロアクロスメンバと、前記延長部、前記サイドシルインナ、前記フロアクロスメンバ及び前記トンネルフレームで囲まれると共に、前記フロアパネル及び前記アンダパネルで挟まれつつ前記フロアパネル及び前記アンダパネルに結合され、平面視でX字形状の芯材と、を備え、前記芯材は第1芯材と第2芯材とを備え、前記第1芯材は、前後方向及び車幅方向に対して斜めであって、後側に向かうにつれて車幅方向中央に近づくように延び、前記第2芯材は、前後方向及び車幅方向に対して斜めであって、後側に向かうにつれて車幅方向外側に近づくように延びていることを特徴とする車体フロア構造である。
【0009】
このような構成によれば、車両が通常に前方から衝突(通常衝突)した場合に作用する後向きの衝突荷重は、フロントサイドフレームから、その延長部を介してサイドシルインナ(サイドシル)と、トンネルフレームとに分散される。このように、通常衝突時の衝突荷重が、サイドシルインナ(サイドシル)とトンネルフレームとに分散されるので、フロアパネル(車体)が変形し難くなる。
【0010】
一方、車両がナローオフセット衝突した場合、斜め後向きの衝突荷重に対して、(1)前後方向及び車幅方向に対して斜めであって、後側に向かうにつれて車幅方向中央に近づくように延びる第1芯材が圧縮の反力を発生し、(2)前後方向及び車幅方向に対して斜めであって、後側に向かうにつれて車幅方向外側に近づくように延びる第2芯材が曲げの反力を発生するので、フロアパネル(車体)が変形し難くなる。
【0011】
また、主に第1芯材及び第2芯材を追加する構成であるので、車体フロア構造を軽量化しつつ、フロアパネル(車体)の変形を抑制できる。
【0012】
また、前記車体フロア構造において、前記第1芯材は、長手方向において、前記フロアパネルと前記アンダパネルとにそれぞれ結合し、前記第2芯材は、長手方向において、前記フロアパネルと前記アンダパネルとにそれぞれ結合していることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、第1芯材及び第2芯材と、これらが長手方向で結合するフロアパネル及びアンダパネルとで、2重フロア構造が構成される。そして、この2重フロア構造は、複数の閉断面を有するので、その断面2次モーメントが大きくなり、剛性が高まる。これにより、フロアパネル等の変形をさらに抑制しつつ、車両の振動を低減できる。
【0014】
また、前記車体フロア構造において、前記トンネルフレームの形成するトンネル空間で、前後方向において前記フロアクロスメンバと同位置で、車幅方向に延びるトンネルクロスメンバを備え、前記第1芯材の前端は、前記延長部の前記サイドシルインナ側に結合し、前記第1芯材の後端は、前記トンネルクロスメンバと前記フロアクロスメンバとの結合部に配置され、前記第2芯材の前端は、前記トンネルフレームの傾斜して延びる部分から後方に延びる部分に曲がる曲がり部に結合し、前記第2芯材の後端は、前記サイドシルインナと前記フロアクロスメンバとの結合部に配置されていることが好ましい。
【0015】
ここで、延長部の前記サイドシルインナ側、トンネルクロスメンバとフロアクロスメンバとの結合部、トンネルフレームの傾斜して延びる部分から後方に延びる部分に曲がる曲がり部、サイドシルインナとフロアクロスメンバとの結合部は、剛性が高い。
そして、このような構成によれば、第1芯材、第2芯材が、剛性の高い部分に結合し、その両側から支持されているので、前記した圧縮の反力、曲げの反力が発生し易くなる。
【0016】
また、前記車体フロア構造において、前記アンダパネルは、前記延長部の底面、前記サイドシルインナの底面、及び、前記トンネルフレームの底面に結合していることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、車体フロア構造の下面は、アンダパネルによって平坦となって、走行時に受ける空気抵抗が小さくなる。これにより、車両の空力性能が向上する。
【0018】
また、前記車体フロア構造において、前記第1芯材及び/又は前記第2芯材の結合する前記サイドシルインナ及び/又は前記トンネルフレーム内に、その結合部を補強するバルクヘッドを備えることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、バルクヘッドによって、第1芯材及び/又は第2芯材の結合部が補強されるので、第1芯材及び/又は第2芯材において、反力が速やかに発生し易くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ナローオフセット衝突しても、車体が変形し難い車体フロア構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る車体フロア構造を下方から見た図である。
【図2】本実施形態に係る車体フロア構造を下方から見た図であり、アンダパネルを取り外した状態である。
【図3】図1のX1−X1線断面図である。
【図4】図1のX2−X2線断面図である。
【図5】図1のX3−X3線断面図である。
【図6】図1のX4−X4線断面図である。
【図7】本実施形態に係る車体フロア構造の一部の斜視図である。
【図8】(a)は第1芯材及び第2芯材の分解斜視図であり、(b)は第1芯材及び第2芯材の斜視図であり、(c)は(b)のX5−X5線断面図である。
【図9】第1芯材及び第2芯材の一取付手順を示す斜視図である。
【図10】本実施形態に係る車体フロア構造を下方から見た図であって、通常衝突時の作用効果を説明する図である。
【図11】本実施形態に係る車体フロア構造を下方から見た図であって、ナローオフセット衝突時の作用効果を説明する図である。
【図12】(a)は変形例に係る第1芯材及び第2芯材の斜視図であり、(b)は分解斜視図であり、(c)は下方から見た分解斜視図である。
【図13】(a)は変形例に係る第1芯材及び第2芯材の斜視図であり、(b)は分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。
【0023】
≪車体フロア構造の構成≫
本実施形態に係る車体フロア構造1は、2本のサイドシル10と、2本のフロントサイドフレーム20と、略Y字形のトンネルフレーム40と、トンネルクロスメンバ51と、2本のフロアクロスメンバ55と、前側用の2枚のフロアパネル60(上パネル)と、2枚のアンダパネル70(下パネル)と、4本の第1芯材80と、4本の第2芯材90と、を備えている。ただし、第1芯材80及び第2芯材90の数はこれに限定されない。
なお、車体フロア構造1は、図1、図2に示すように、車幅方向(左右方向)において対称な構造である。以下、車体フロア構造1の左半分を主に説明する。
【0024】
<サイドシル>
サイドシル10は、車体両側部に配置されると共に、前後方向に延びる四角筒状の部品である(図3参照)。サイドシル10は、車幅方向外側が開口した横U字形のサイドシルインナ11と、車幅方向内側が開口した横U字形のサイドシルアウタ12と、を備えている。そして、サイドシル10は、サイドシルインナ11の開口部の両側に形成されたフランジ部と、サイドシルアウタ12の開口部の両側に形成されたフランジ部とを接合することで構成されている。
【0025】
サイドシル10内において、第1芯材80の前側の略延長線上には、バルクヘッド15(補強部材、隔壁)を備えている(図7参照)。このバルクヘッド15と、後記するバルクヘッド45とにより、ナローオフセット衝突時、第1芯材80に後記する軸圧縮力の反力が早期に発生するようになっている。
なお、バルクヘッド15は、その他に例えば、サイドシルインナ11に対応した大きさでもよい。後記するバルクヘッド16についても同様である。
【0026】
サイドシル10内において、第2芯材90の後側の略延長線上には、バルクヘッド16を備えている(図7参照)。このバルクヘッド16と、後記するバルクヘッド46とにより、ナローオフセット衝突時、第2芯材90に後記する曲げ応力の反力が早期に発生するようになっている。
【0027】
<フロントサイドフレーム>
フロントサイドフレーム20は、エンジンルーム201の左側又は右側において、前後方向に延びるフロントサイドフレーム本体21と、フロントサイドフレーム本体21の後端から延長すると共に、車幅方向外側に曲がりながら延び、サイドシルインナ11の前端部に結合した延長部22と、を備えている(図4参照)。
【0028】
延長部22は、ダッシュボードロアパネル210の水平方向に延びる水平部211に沿って延びている(図4〜図6参照)。また、延長部22の上側は開放しており、延長部22は、その開口幅を後方外側に拡大しながら車幅方向外側に曲がり(図2参照)、サイドシルインナ11の前端部の車幅方向内側の側壁と、サイドシルインナ11の前端部の底壁とに結合している(図4参照)。さらに、延長部22の後側は上方に立ち上がって後壁部23(図5、図6参照)を構成しており、後壁部23はフロアパネル60の前端に結合している。
【0029】
なお、延長部22の開放部は、水平部211で覆われており、ボックス構造が構成されている(図4〜図6参照)。
【0030】
ここで、ダッシュボードロアパネル210は、水平部211の他に、水平部211の前端から鉛直方向上向きで延びる鉛直部212を備えている(図4〜図6参照)。また、左右のフロントサイドフレーム本体21の前端は、車幅方向に延びるフロントクロスメンバ29(バンパービーム)で連結されている(図1、図2参照)。
【0031】
<トンネルフレーム>
トンネルフレーム40は、車幅方向の中央で、前後方向に延びるトンネル空間49を形成するフレームである(図3参照)。トンネルフレーム40は、前側が二股の略Y字形を呈しており(図2参照)、2つの傾斜部41と、その後方で前後方向に延び、内部にトンネル空間49を形成するトンネルフレーム本体42と、を備えている。
【0032】
傾斜部41の前端は、フロントサイドフレーム20の延長部22の内側壁に結合している。左右の2つの傾斜部41は、延長部22との結合部から後方内側に向けて傾斜して延びて合流し、トンネルフレーム本体42に連続している。すなわち、トンネルフレーム40は、延長部22の内側壁から後方内側に向けて傾斜して延びた後、車幅方向中央で後方に延びている。
【0033】
トンネルフレーム40内において、第1芯材80の後側の略延長線上には、バルクヘッド45(補強部材、隔壁)を備えている(図7参照)。また、トンネルフレーム40内において、第2芯材90の前側の略延長線上には、バルクヘッド46を備えている(図7参照)。
【0034】
<トンネルクロスメンバ>
トンネルクロスメンバ51は、トンネル空間49(トンネルフレーム本体42内)において、車幅方向に延びており、その両端部はトンネルフレーム本体42の内壁面とそれぞれ結合している(図1、図2、図3、図5、図7参照)。
また、トンネルクロスメンバ51の上方であって、トンネルフレーム本体42内に、車幅方向に延びるバルクヘッドを備える構成としてもよい。
【0035】
<フロアクロスメンバ>
フロアクロスメンバ55は、フロアパネル60の上方において、車幅方向に延びている。そして、フロアクロスメンバ55の車幅方向外側端はサイドシルインナ11に結合され、フロアクロスメンバ55の車幅方向内側端はトンネルフレーム本体42に結合されている(図1、図2、図3、図5参照)。
【0036】
また、トンネルクロスメンバ51と2本のフロアクロスメンバ55とは、前後方向において、同位置に配置されている(図1、図2参照)。すなわち、トンネルクロスメンバ51と2本のフロアクロスメンバ55とは、車幅方向において、一直線状で並んでいる。
【0037】
<フロアパネル>
フロアパネル60は、車体フロア構造1の上面を構成する薄板状のパネルである。フロアパネル60の周縁は、サイドシルインナ11、トンネルフレーム本体42、ダッシュボードロアパネル210の水平部211、及び、延長部22の後側に形成された後壁部23に結合している(図3、図5、図6参照)。
【0038】
<アンダパネル>
アンダパネル70は、車体フロア構造1の下面を構成する薄板状のパネルである。アンダパネル70の周縁は、延長部22の底面、サイドシルインナ11の底面、トンネルフレーム40の傾斜部41の底面及びトンネルフレーム本体42の底面に結合している(図1、図3参照)。
これにより、車体フロア構造1の下面は、アンダパネル70によって平坦となって、走行時に受ける空気抵抗が小さくなる。これにより、車両の空力性能が向上する。
【0039】
<第1芯材、第2芯材>
第1芯材80は、図2に示すように、前後方向及び車幅方向に対して斜めであって、後側につれて車幅方向中央に近づくように延びている。よって、第1芯材80は、ナローオフセット衝突時、前輪221(図11参照)からフロアパネル60に入力される衝突荷重F6の方向に沿って延びている。
【0040】
第2芯材90は、前後方向及び車幅方向に対して斜めであって、後側に向かうにつれて車幅方向外側に近づくように延びている。よって、第2芯材90は、ナローオフセット衝突時における衝突荷重F6の方向と交差する方向で延びている(図11参照)。
【0041】
また、第1芯材80と第2芯材90とを備える芯材全体は、平面視でX字形状となっている(図2参照)。そして、芯材全体は、平面視で、延長部22、サイドシルインナ11、フロアクロスメンバ55及びトンネルフレーム40(傾斜部41、トンネルフレーム本体42)で囲まれている。また、芯材全体は、上下方向において、フロアパネル60及びアンダパネル70で挟まれた状態で、フロアパネル60及びアンダパネル70に結合されている(図11参照)。
【0042】
第1芯材80の前端は、図2に示すように、フロントサイドフレーム20の延長部22のサイドシルインナ11側に結合している。なお、延長部22のサイドシルインナ11側は、剛性の高い部分である。
【0043】
第1芯材80の後端は、トンネルクロスメンバ51とフロアクロスメンバ55とが結合する結合部に配置されている。つまり、第1芯材80の後端は、トンネルクロスメンバ51とフロアクロスメンバ55とがトンネルフレーム本体42に結合する部分と平面視で略重なる位置で、トンネルフレーム本体42に結合している。なお、トンネルクロスメンバ51とフロアクロスメンバ55とがトンネルフレーム本体42に結合する部分は、剛性の高い部分である。
【0044】
このように、第1芯材80の両端は、剛性の高い部分に結合されている。これにより、第1芯材80は、ナローオフセット衝突時において、後記する軸圧縮力の反力を発生し易くなっている。
【0045】
第2芯材90の前端は、トンネルフレーム40の傾斜して延びる部分から後方に延びる部分に曲がる曲がり部に結合している。つまり、第2芯材90の前端は、斜め方向に延びる傾斜部41から前後方向に延びるトンネルフレーム本体42に曲がる曲がり部に結合している。なお、前記曲がり部は剛性の高い部分である。
【0046】
第2芯材90の後端は、サイドシルインナ11とフロアクロスメンバ55との結合部に配置されている。つまり、第2芯材90の後端は、サイドシルインナ11とフロアクロスメンバ55とが結合する部分と平面視で略重なる位置で、サイドシルインナ11に結合している。なお、サイドシルインナ11とフロアクロスメンバ55とが結合する部分は、剛性の高い部分である。
【0047】
このように、第2芯材90の両端は、剛性の高い部分に結合されている。これにより、第2芯材90は、ナローオフセット衝突時において、後記する曲げ応力の反力を発生し易くなっている。
【0048】
<第1芯材−具体的形状>
第1芯材80は、図8に示すように、断面視で略S字形(クランク形状)を呈する細長の部品であって、斜め方向で延びる縦壁部81と、縦壁部81の上端から水平方向に延びる上フランジ部82と、縦壁部81の下端から水平方向に延びる下フランジ部83と、を備えている。
ただし、第1芯材80の形状はこれに限定されず、例えば、パイプ状(筒状)、円柱状、角筒状、角柱状としてもよい。
【0049】
下フランジ部83の向きは、サイドシルインナ11に近づく向き(車幅方向外向き)であり、第1芯材80の前端において、下フランジ部83は、サイドシルインナ11の底壁と延長部22とで挟まれている(図4参照)。
【0050】
上フランジ部82は、第1芯材80の長手方向において、フロアパネル60と結合されている。具体的に例えば、(1)上フランジ部82とフロアパネル60とが連続溶接、(2)スポット溶接、(3)ボルト締結、(4)リベット締結、のいずれかによって結合されている。
【0051】
下フランジ部83は、第1芯材80の長手方向において、アンダパネル70と結合されている。具体的に例えば、上フランジ部82と同様に、下フランジ部83とアンダパネル70とが連続溶接、等によって結合されている。
【0052】
<第2芯材−具体的形状>
第2芯材90は、図8に示すように、断面視で略S字形(クランク形状)を呈する細長の部品であって、斜め方向で延びる縦壁部91と、縦壁部91の上端から水平方向に延びる上フランジ部92と、縦壁部91の下端から水平方向に延びる下フランジ部93と、を備えている。
【0053】
上フランジ部92は、第2芯材90の長手方向において、フロアパネル60と結合されている。具体的に例えば、(1)上フランジ部92とフロアパネル60とが連続溶接、(2)スポット溶接、(3)ボルト締結、(4)リベット締結、のいずれかによって結合されている。
【0054】
下フランジ部93は、第2芯材90の長手方向において、アンダパネル70と結合されている。具体的に例えば、上フランジ部92と同様に、下フランジ部93とアンダパネル70とが連続溶接、等によって結合されている。
【0055】
<第1芯材と第2芯材との組み付け状態>
図8(a)に示すように、第1芯材80には上方に開口した2つの切欠85が形成され、第2芯材90には下方に開口した2つの切欠95が形成されている。そして、切欠85と切欠95とを合わせながら、第1芯材80と第2芯材90とを上下方向において組み付けると、第1芯材80と第2芯材90とが相互に組み付いてX字形の芯材全体が構成される。芯材全体の上面及び下面は、平坦となるように構成されている(図8(b)、図8(c)参照)。そして、上面側にフロアパネル60が、下面側にアンダパネル70が、それぞれ溶接等によって良好に結合されている。
【0056】
なお、第1芯材80及び第2芯材90の交差部分において、第1芯材80及び第2芯材90はMIG溶接等によって相互に結合されている。その他に例えば、切欠85及び切欠95を形成せずに、第2芯材90を2分割し、その分割片を第1芯材80に結合させる構成としてもよい。
【0057】
そして、図9に示すように、第1芯材80及び第2芯材90が組み付いたものを、(1)アンダパネル70に溶接等によって結合させた後、(2)フロアパネル60に下方からアクセスして、延長部22、サイドシルインナ11及びトンネルフレーム40(傾斜部41、トンネルフレーム本体42)にアンダパネル70を溶接等によって結合すると共に、第1芯材80及び第2芯材90をフロアパネル60に溶接等によって結合させる。
【0058】
≪車体フロア構造の作用・効果≫
次に、車体フロア構造1の作用・効果を説明する。
【0059】
<通常衝突時>
図10を参照して、車両が前方から対向車、路面障害物等の衝突物に通常に衝突した通常衝突時について説明する。
通常衝突すると、フロントサイドフレーム本体21に後向きの衝突荷重F0が作用し、この衝突荷重F0は、フロントサイドフレーム本体21から、延長部22を介してサイドシルインナ11に向かう衝突荷重F1と、傾斜部41を介してトンネルフレーム本体42に向かう衝突荷重F2とに分散される。このように、衝突荷重F0が、サイドシルインナ11(サイドシル10)とトンネルフレーム本体42(トンネルフレーム40)とに分散されるので、フロアパネル60、アンダパネル70等の車体が変形し難くなる。
【0060】
<ナローオフセット衝突時>
図11を参照して、ナローオフセット衝突時について説明する。
ナローオフセット衝突すると、前輪221に後向きの衝突荷重F5が作用し、前輪221は後退すると共に略鉛直方向に延びる操舵軸部(図示しない)を中心として回動し、延長部22に斜め後向きの衝突荷重F6が入力される。なお、図11では、右後向きの衝突荷重F6を記載している。
【0061】
このような右後向きの衝突荷重F6に対して、(1)衝突荷重F6の方向の2本の第1芯材80が軸圧縮力の反力を発生し、(2)衝突荷重F6の方向と交差する方向の2本の第2芯材90が曲げ応力の反力を発生するので、ダッシュボードロアパネル210の水平部211(フロア面)、フロアパネル60及びアンダパネル70等の変形を抑制する。また、第1芯材80が複数本であるので、前輪221が延長部22に対してずれて衝突したとしても、複数本の第1芯材80で衝突荷重F6を受けることができ、変形を抑制できる。なお、第1芯材80及び第2芯材90の本数は、これに限定されず、3本、4本…等に適宜変更してよい。
【0062】
また、第1芯材80及び第2芯材90と、これに結合したフロアパネル60及びアンダパネル70とで、2重フロア構造となっているので、この2重フロア構造の複数の閉断面によって断面2次モーメントが向上して剛性が高まり、一層、ダッシュボードロアパネル210の水平部211(フロア面)の変形と、その後方に連続するフロアパネル60の変形が抑制される。
さらに、このようにして車体フロア構造1の剛性が向上しているので、走行に伴うフロア振動が減少し、耐騒音、耐振動性能も向上している。
【0063】
≪変形例≫
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば次のように変更できる。
【0064】
第1芯材及び第2芯材について、図12(a)〜図12(c)に示す構成としてもよい。
第1芯材180及び第2芯材190は、断面視において、略ハット状を呈している。第1芯材180の上面部は、溶接、ボルト締結等によって、フロアパネル60に結合されている。第1芯材180の下部で両外側に延びるフランジ部は、アンダパネル70に結合されている。第2芯材190についても同様である。
【0065】
2本の第1芯材180は、平面視で十字形(X字形)を呈するジョイント170を介して、一直線状で連結されている。2本の第2芯材190もジョイント170を介して、一直線状で連結されている。
【0066】
図12(c)に示すように、ジョイント170の裏面側には、一直線状で配列する第1芯材180の縦壁部、又は、第2芯材190の縦壁部を連続させるリブ171が形成されている。
【0067】
また、第1芯材及び第2芯材について、図13(a)〜図13(b)に示す構成としてもよい。
アンダパネル70には、第1芯材80(図2参照)に対応した位置に、その一部が隆起すること形成されたビード形状の第1芯材部78が形成されている。アンダパネル70の適所に第2芯材190が溶接等で結合された後、ジョイント170が、上方から第1芯材部78及び第2芯材190に外嵌している。この場合において、ジョイント170の裏面にはリブ171(図12(c)参照)は形成されていない。
【0068】
このような構成とすれば、第1芯材180(図12参照)を省略できるので、軽量化しつつ、部品点数を削減できる。
なお、このような構成としても技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
1 車体フロア構造
10 サイドシル
11 サイドシルインナ
20 フロントサイドフレーム
22 延長部
29 フロントクロスメンバ
40 トンネルフレーム
41 傾斜部
42 トンネルフレーム本体部
49 トンネル空間
51 トンネルクロスメンバ
55 フロアクロスメンバ
60 フロアパネル
70 アンダパネル
80 第1芯材
90 第2芯材
210 ダッシュボードロアパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドシルインナを有し、前後方向に延びるサイドシルと、
フロントサイドフレームの後側の延長部であって、ダッシュボードロアパネルに沿いつつ車幅方向外側に曲がりながら延び、前記サイドシルインナの前端部の側壁に結合した延長部と、
前記延長部の内側壁から後方内側に向けて傾斜して延びた後、車幅方向中央で後方に延びるトンネルフレームと、
前記サイドシルインナ及び前記トンネルフレームに結合したフロアパネルと、
前記フロアパネルの下方に配置されたアンダパネルと、
車幅方向に延びると共に、前記サイドシルインナ及び前記トンネルフレームに結合したフロアクロスメンバと、
前記延長部、前記サイドシルインナ、前記フロアクロスメンバ及び前記トンネルフレームで囲まれると共に、前記フロアパネル及び前記アンダパネルで挟まれつつ前記フロアパネル及び前記アンダパネルに結合され、平面視でX字形状の芯材と、
を備え、
前記芯材は第1芯材と第2芯材とを備え、
前記第1芯材は、前後方向及び車幅方向に対して斜めであって、後側に向かうにつれて車幅方向中央に近づくように延び、
前記第2芯材は、前後方向及び車幅方向に対して斜めであって、後側に向かうにつれて車幅方向外側に近づくように延びている
ことを特徴とする車体フロア構造。
【請求項2】
前記第1芯材は、長手方向において、前記フロアパネルと前記アンダパネルとにそれぞれ結合し、
前記第2芯材は、長手方向において、前記フロアパネルと前記アンダパネルとにそれぞれ結合している
ことを特徴とする請求項1に記載の車体フロア構造。
【請求項3】
前記トンネルフレームの形成するトンネル空間で、前後方向において前記フロアクロスメンバと同位置で、車幅方向に延びるトンネルクロスメンバを備え、
前記第1芯材の前端は、前記延長部の前記サイドシルインナ側に結合し、
前記第1芯材の後端は、前記トンネルクロスメンバと前記フロアクロスメンバとの結合部に配置され、
前記第2芯材の前端は、前記トンネルフレームの傾斜して延びる部分から後方に延びる部分に曲がる曲がり部に結合し、
前記第2芯材の後端は、前記サイドシルインナと前記フロアクロスメンバとの結合部に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体フロア構造。
【請求項4】
前記アンダパネルは、前記延長部の底面、前記サイドシルインナの底面、及び、前記トンネルフレームの底面に結合している
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車体フロア構造。
【請求項5】
前記第1芯材及び/又は前記第2芯材の結合する前記サイドシルインナ及び/又は前記トンネルフレーム内に、その結合部を補強するバルクヘッドを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車体フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−103650(P2013−103650A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249852(P2011−249852)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】