説明

車体上部構造

【課題】ルーフパネルとルーフリインフォースメントとの接合強度を向上させる。
【解決手段】車体前後方向に延在する下凹ビード部19が車幅方向に複数形成されたルーフパネル18と、ルーフパネル18の下面18C側で車幅方向に延在するとともに、下凹ビード部19に対応した凹部50が複数形成され、下凹ビード部19及び下凹ビード部19間にける下面18Cにそれぞれ凹部50及び凹部50間における上縁部が接合されたルーフリインフォースメント40と、を有する車体上部構造10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のルーフパネルに車体前後方向に延在する下凹ビード部を複数形成し、ルーフパネルの剛性を向上させるようにした車体上部構造は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−136595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ルーフパネルの下面側には、車幅方向に延在するルーフリインフォースメントが接合されるようになっており、ルーフパネルに下凹ビード部が形成されていると、その下凹ビード部間におけるルーフパネルの下面とルーフリインフォースメントとの接合強度が不足するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、ルーフパネルとルーフリインフォースメントとの接合強度を向上できる車体上部構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車体上部構造は、車体前後方向に延在する下凹ビード部が車幅方向に複数形成されたルーフパネルと、前記ルーフパネルの下面側で車幅方向に延在するとともに、前記下凹ビード部に対応した凹部が複数形成され、前記下凹ビード部及び前記下凹ビード部間における前記下面にそれぞれ前記凹部及び前記凹部間における上縁部が接合されたルーフリインフォースメントと、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ルーフリインフォースメントにルーフパネルの下凹ビード部に対応した凹部が形成されているので、ルーフリインフォースメントの凹部及び凹部間における上縁部を、それぞれルーフパネルの下凹ビード部及び下凹ビード部間における下面に接合することができる。したがって、ルーフパネルとルーフリインフォースメントとの接合強度を向上させることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の車体上部構造は、請求項1に記載の車体上部構造であって、前記凹部及び前記凹部間を含む前記上縁部に平面視で千鳥状になるように形成され、少なくとも前記下凹ビード部及び前記下凹ビード部間における前記下面に接合されたフランジ部を有することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、ルーフリインフォースメントの凹部及び凹部間を含む上縁部に形成され、ルーフパネルの少なくとも下凹ビード部及び下凹ビード部間における下面に接合されたフランジ部が平面視千鳥状とされているので、ルーフリインフォースメントをルーフパネルに効率よく接合することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、ルーフパネルとルーフリインフォースメントとの接合強度を向上できる車体上部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る車体上部構造を備えた車両のルーフ部を外側から示す概略斜視図である。
【図2】本実施形態に係る車体上部構造を備えた車両のルーフ部を車室側から示す概略底面図である。
【図3】本実施形態に係る車体上部構造を備えた車両のルーフ部の構成を示す概略正面図である。
【図4】本実施形態に係る車体上部構造を備えた車両のルーフ部の形状を拡大して示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車体上方向、矢印FRを車体前方向、矢印INを車幅方向内側とする。図1、図2で示すように、自動車等の車両12のルーフ部16には、車室14のルーフを構成するルーフパネル18が備えられている。
【0013】
本実施形態に係る車体上部構造10を構成するルーフパネル18は、平板状に形成されており、車体上下方向に延在する車体骨格部材としてのセンターピラー30よりも車体後方側における上面18Bで、かつ車体後方側端部を除く部位には、車体前後方向に延在する複数(図示のものは4本)の下凹ビード部(意匠ビード)19が車幅方向に並んで形成されている。
【0014】
また、図3で示すように、このルーフパネル18の車幅方向両端部には、車体前後方向に延在する車体骨格部材としてのルーフサイドレール20が左右一対で設けられている。そして、各ルーフサイドレール20は、車幅方向内側に配置されるレールインナパネル22と、車幅方向外側に配置されるレールアウタパネル24と、を含んで構成されている。
【0015】
レールインナパネル22とレールアウタパネル24は、それぞれの上端側及び下端側が互いに接合されることで、閉断面構造を形成するようになっている。詳細には、レールインナパネル22とレールアウタパネル24の下端側における接合部分は、車体下方側へ向けてフランジ状に突出されており、この接合部分で、かつセンターピラー30との結合部分を除く部位には、オープニングウエザストリップ26が取り付けられている。
【0016】
一方、レールインナパネル22とレールアウタパネル24の上端側における接合部分は、車幅方向内側へ向けてフランジ状に突出されており、レールインナパネル22とレールアウタパネル24の上端側における接合部分の間には、ルーフパネル18の車幅方向外側端部18Aが重ね合わされて接合されている。なお、以下において、この接合部分を接合部28とする。
【0017】
また、ルーフパネル18の車幅方向外側端部18A(接合部28)と、レールアウタパネル24の車幅方向内側端部24A(接合部28)は、それぞれ車体下方側へ向かって屈曲成形されている。これにより、ルーフ部16の車幅方向両端部には、接合部28を底壁とする溝部Gが車体前後方向に形成されるようになっている。
【0018】
また、図1で示すように、センターピラー30の車体前方側には、車体上下方向に延在する車体骨格部材としてのフロントピラー32が、ルーフサイドレール20と連続的に結合されている。そして、センターピラー30の車体後方側には、車体上下方向に延在する車体骨格部材としてのリアピラー34が、ルーフサイドレール20と連続的に結合されている。
【0019】
また、図2で示すように、フロントピラー32の車体上方側における左右のルーフサイドレール20間には、車幅方向に延在する車体骨格部材としてのフロントルーフクロスメンバ36が架設されている。そして、センターピラー30の結合部分における左右のルーフサイドレール20間には、車幅方向に延在する車体骨格部材としてのセンタールーフクロスメンバ38が架設されている。
【0020】
詳細には、フロントルーフクロスメンバ36及びセンタールーフクロスメンバ38は、それぞれ断面ハット形状(正確な「U」字ではない断面「U」字状)に形成されており、それらの車幅方向外側端部36A、38Aは、それぞれレールインナパネル22とレールアウタパネル24の上端側における接合部分(接合部28)に重ね合わされて接合されている。
【0021】
また、フロントルーフクロスメンバ36の車体前方側を向く側壁部の上端部及び車体後方側を向く側壁部の上端部には、それぞれ車体前方向及び車体後方向へ張り出すフランジ部36B、36Cが一体に形成されている。そして、各フランジ部36B、36Cに設定されたマスチック(接着剤)52等により、フロントルーフクロスメンバ36がルーフパネル18の下面(裏面)18Cに接合されるようになっている。
【0022】
同様に、センタールーフクロスメンバ38の車体前方側を向く側壁部の上端部及び車体後方側を向く側壁部の上端部には、それぞれ車体前方向及び車体後方向へ張り出すフランジ部38B、38Cが一体に形成されている。そして、各フランジ部38B、38Cに設定されたマスチック(接着剤)52等により、センタールーフクロスメンバ38がルーフパネル18の下面(裏面)18Cに接合されるようになっている。
【0023】
また、センタールーフクロスメンバ38(センターピラー30)よりも車体後方側における左右のルーフサイドレール20間には、車幅方向に延在するルーフリインフォースメント40が複数本(図示のものは2本)、車体前後方向に所定間隔を隔てて架設されている。
【0024】
本実施形態に係る車体上部構造10を構成するルーフリインフォースメント40は、それぞれ断面ハット形状(正確な「U」字ではない断面「U」字状)に形成されており、その車幅方向外側端部40Aは、それぞれレールインナパネル22とレールアウタパネル24の上端側における接合部分(接合部28)に重ね合わされて接合されている。
【0025】
そして、各ルーフリインフォースメント40の車体前方側を向く側壁部42の上端部(上縁部)及び車体後方側を向く側壁部44の上端部(上縁部)には、それぞれ車体前方向及び車体後方向へ張り出すフランジ部46、48が一体に形成されている。なお、各フランジ部46、48は、図2で示す車室側から見た底面視(平面視)で、略千鳥状(一定間隔の波状)になるように形成されている。
【0026】
また、図2で示すように、各ルーフリインフォースメント40は、ルーフパネル18における複数の下凹ビード部19が形成されている車体後方側部分に架設されている。そのため、各ルーフリインフォースメント40の各側壁部42、44における上端部(上縁部)の形状(各フランジ部46、48の厚さ方向の形状)は、図3、図4で示す車体前後方向から見た正面視で、各下凹ビード部19に沿った形状とされている。
【0027】
すなわち、各ルーフリインフォースメント40の各側壁部42、44の上端部(上縁部)には、各フランジ部46、48を含めて、車幅方向における各下凹ビード部19の形状に対応した(沿った)形状の複数(図示のものは4個)の凹部50が形成されている。
【0028】
詳細には、図2、図4で示すように、ルーフパネル18の各下凹ビード部19は、車幅方向において、ルーフパネル18の上面18Bから連続する所定角度の傾斜面19Aと、その傾斜面19Aと連続する平坦な底面19Bと、その底面19Bと連続する所定角度の傾斜面19Cと、を有しており、傾斜面19Aと傾斜面19Cは同じ角度で(左右対称に)傾斜している。
【0029】
なお、図2で示すように、各下凹ビード部19の車体前方側端部及び車体後方側端部には、底面19Bからルーフパネル18の上面18Bへ連続する緩やかな傾斜面19D、19Eが形成されており、傾斜面19Dと傾斜面19Eは同じ角度で(前後対称に)傾斜している。
【0030】
そして、ルーフリインフォースメント40の各凹部50も、車幅方向において、下凹ビード部19の傾斜面19A、底面19B、傾斜面19Cにそれぞれ合致(接触又は一定の間隙で対向)する所定角度の傾斜面50Aと、その傾斜面50Aと連続する平坦な底面50Bと、その底面50Bと連続する所定角度の傾斜面50Cと、を有している。つまり、各傾斜面50A、50Cは、各傾斜面19A、19Cと同じ角度で(左右対称に)傾斜している。
【0031】
したがって、各ルーフリインフォースメント40の各フランジ部46、48は、その複数の凹部50により、複数の下凹ビード部19が形成されているルーフパネル18の下面(裏面)18Cの形状に沿って配置され、図2、図4で示すように、各フランジ部46、48に設定された接合手段としてのマスチック(接着剤)52等により、ルーフパネル18の下面18Cにほぼ隙間無く接合されるようになっている。
【0032】
つまり、車幅方向において、少なくともルーフパネル18の下凹ビード部19における下面18Cと、ルーフリインフォースメント40の凹部50におけるフランジ部46、48の上面とがマスチック52によって接合され、かつルーフパネル18の下凹ビード部19間における下面18Cと、ルーフリインフォースメント40の凹部50間におけるフランジ部46、48の上面とがマスチック52によって接合されるようになっている。
【0033】
以上のような構成の車体上部構造10において、次にその作用について説明する。上記したように、ルーフパネル18の車体後方側部分には、車体前後方向に延在する複数の下凹ビード部19が車幅方向に並んで形成されている。したがって、ルーフパネル18の剛性を向上させることができるとともに、上凸ビード部(図示省略)が形成される構成に比べて、空力性能の低下を抑制又は防止することができる。
【0034】
また、ルーフパネル18における複数の下凹ビード部19が形成されている車体後方側部分の下面(裏面)18C側には、車幅方向に延在する断面ハット形状のルーフリインフォースメント40が、車体前後方向に所定間隔を隔てて2本架設(接合)されている。
【0035】
ここで、各ルーフリインフォースメント40の各側壁部42、44の上端部(上縁部)には、各フランジ部46、48を含めて、車幅方向における各下凹ビード部19の形状に対応した(沿った)形状の複数の凹部50が形成されている。
【0036】
したがって、複数の下凹ビード部19が形成されているルーフパネル18であっても、ルーフリインフォースメント40の各フランジ部46、48にマスチック52を設定することができ、ルーフパネル18の下面18Cにルーフリインフォースメント40の各フランジ部46、48をほぼ隙間無く接合することができる。
【0037】
すなわち、車幅方向において、少なくともルーフパネル18の下凹ビード部19における下面18Cに、ルーフリインフォースメント40の凹部50におけるフランジ部46、48の上面を接合することができるとともに、ルーフパネル18の下凹ビード部19間における下面18Cに、ルーフリインフォースメント40の凹部50間におけるフランジ部46、48の上面を接合することができる。
【0038】
このように、ルーフリインフォースメント40の各フランジ部46、48の上面を、ルーフパネル18の下面18Cに対する接合面として全て使用することができるため(各フランジ部46、48にマスチック52を設定することができるため)、凹部50が形成されていないルーフリインフォースメント(図示省略)に比べて、車幅方向における接合ピッチが大きく空くことがない。
【0039】
換言すれば、ルーフパネル18の下面18Cに対するルーフリインフォースメント40の各フランジ部46、48における接合面の面積を、凹部50が形成されていないルーフリインフォースメント(図示省略)に比べて、大きくとることができる。したがって、ルーフパネル18に対するルーフリインフォースメント40の接合強度を、凹部50が形成されていないルーフリインフォースメント(図示省略)に比べて、向上させることができる。
【0040】
そして、これにより、車幅方向に亘って、各ルーフリインフォースメント40とルーフパネル18とで適切な閉断面構造(閉断面部)を形成することができるため、ルーフリインフォースメント40によるルーフパネル18の張り剛性を向上させることができる。よって、ルーフ部16の剛性を向上させることができる。
【0041】
また、ルーフリインフォースメント40の各フランジ部46、48は、図2で示す車室側から見た底面視(平面視)で、略千鳥状(一定間隔の波状)になるように形成されている。したがって、各フランジ部46、48に対してマスチック52を設定し易く、車幅方向において互い違いに等ピッチでマスチック52を設定することができる。よって、ルーフリインフォースメント40をルーフパネル18に効率よく接合することができる。
【0042】
以上、本実施形態に係る車体上部構造10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車体上部構造10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、下凹ビード部19及び凹部50の数量は、図示の数量に限定されるものではない。また、ルーフリインフォースメント40の数量も、複数本に限定されるものではなく、1本だけ設けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 車体上部構造
18 ルーフパネル
19 下凹ビード部
40 ルーフリインフォースメント
46 フランジ部
48 フランジ部
50 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延在する下凹ビード部が車幅方向に複数形成されたルーフパネルと、
前記ルーフパネルの下面側で車幅方向に延在するとともに、前記下凹ビード部に対応した凹部が複数形成され、前記下凹ビード部及び前記下凹ビード部間における前記下面にそれぞれ前記凹部及び前記凹部間における上縁部が接合されたルーフリインフォースメントと、
を有することを特徴とする車体上部構造。
【請求項2】
前記凹部及び前記凹部間を含む前記上縁部に平面視で千鳥状になるように形成され、少なくとも前記下凹ビード部及び前記下凹ビード部間における前記下面に接合されたフランジ部を有することを特徴とする請求項1に記載の車体上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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