説明

車体下部構造、及びフロアトンネル用ブレース部材

【課題】フロアトンネルの変形抑制と排気管の熱に起因する部品熱害の抑制とを両立する。
【解決手段】フロアトンネル14を跨いでトンネル補強を行っているトンネル用ブレース部材22は、排気管16の右側の第1の傾斜部18Rが車両前方側が車両後方側よりも下側となるように水平方向に対して傾斜し、反対側の第2の傾斜部18Lが第1の傾斜部18Rとは反対に傾斜しているため、車両10が走行してフロア下面に沿って空気が流れると、その一部が第1の傾斜部18Rによって斜め上方に偏向されてトンネル内右側に誘導され、左側ではトンネル内の空気が排出されるので、トンネル内の空気の温度上昇が抑えられ、車両後方に配置される燃料タンク26には、温度上昇の抑えられたトンネル内の空気が到達することになり、燃料タンク26の温度上昇を抑えること、即ち、燃料タンク26の熱害を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気管を通すフロアトンネルを備えている車体下部構造、及びフロアトンネルの補強を行うフロアトンネル用ブレース部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロアパネルには、下方へ開口したフロアトンネルが形成されており、このフロアトンネルの内側に排気管が収容されている。
【0003】
フロアトンネルは、軸方向から見ると、下方が開口した開断面形状であるため、閉断面形状に比較して剛性が低く、開口幅が拡縮する変形を生じやすい。したがって、フロアトンネルの変形を抑えるために、フロアトンネルに対して種々の補強を設けることが行われている。
【0004】
一方、排気管には高温の排気ガスが通過することから、フロアトンネル内の空気が排気管によって熱せられ、熱せられた空気によってフロアトンネル付近の部品に影響が及ぶことがあり、熱対策を考えたフロアトンネルの構造として、例えば、特許文献1〜3に示すものが知られている。
【特許文献1】特開平11−5567号公報。
【特許文献2】特開平6−199252号公報。
【特許文献3】特開平11−11360号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、フロアトンネル内の排気管や触媒コンバーター等の排気管系により熱せられた空気の熱対流による空気流れを、遮熱板の一方の端部の開口から方向性を有して流出させることで、フロアトンネル内への高温の空気の流れ込みを低減し、フロアトンネル内の温度上昇を抑制している。また、遮熱 排気管系を覆う遮熱板に空気流れの方向をガイドする複数のリブを設けて空気の流れを分散させたり、一方に偏向させたり渦を発生させる等している。しかしながら、遮熱板は、部品に対する熱的影響を低減する機能しかなく、フロアトンネルを補強するものでは無い。
【0006】
特許文献2は、車体下面に位置する熱源の下面の空気流れを向上させる流速向上手段と、熱源の側方の空気流れを上方へ偏向させる偏向手段を備えることにより、空気抵抗を低減しつつ、熱源の冷却性能を向上させている。しかしながら、流速向上手段、及び偏向手段には、部品に対する熱的影響を低減する機能しかなく、フロアトンネルを補強するものでは無い。
【0007】
特許文献3は、床下に配置した導風板により、床下走行風をデファレンシャル側に誘導してデファレンシャルを冷却するものであるが、導風板は空気の流れを変える機能を有するものの、フロアトンネルを補強するものでは無い。
【0008】
したがって、フロアトンネルの変形を抑えることと、排気管の熱に起因する部品の熱害を抑えることを同時に達成しようとすると、フロアトンネルを補強する構成と、特許文献1〜3に記載されている構成の2つの構成が必要となり、部品点数が増大すると共に構造が複雑化し、それに伴ってコストも上昇する問題がある。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、フロアトンネルの変形抑制と排気管の熱に起因する部品熱害の抑制とを両立することのできる車両下部構造、及びフロアトンネル用ブレース部材を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の車体下部構造は、車両のフロアパネルに設けられ、車両下方へ向けて開口し、内部に排気管が収容されるフロアトンネルと、前記フロアトンネルの開口部のトンネル幅方向一方の端部側と他方の端部側とを連結するように前記フロアパネルに設けられるブレース部材と、を備え、前記ブレース部材には、走行時に前記排気管を境にしてトンネル幅方向一方側のトンネル内空間に向けて外気を導入する導入ガイド部、及び走行時にトンネル幅方向他方側のトンネル内空間の空気を車両外部へ排出する排気ガイド部の少なくとも一方が形成されている。
【0011】
次に、請求項1に記載の車体下部構造の作用を説明する。
請求項1に記載の車体下部構造では、フロアトンネルの開口部のトンネル幅方向一方の端部側と他方の端部側とを連結するようにブレース部材がフロアパネルに設けられているため、ブレース部材が補強となってフロアトンネルの断面形状変化が抑えられる。これにより、車体剛性を確保することができる。
【0012】
車両が走行すると、フロア下方において車両前側から後側へ空気が流れる。
導入ガイド部は、走行時に排気管を境にしてトンネル幅方向一方側のトンネル内空間に向けて外気、即ち、フロア下方において車両前側から後側へ空気を導入する。排気管を境にしてトンネル幅方向一方側のトンネル内空間に外気が導入されると、排気管を境にしてトンネル幅方向一方側のトンネル内空間の気圧が、トンネル幅方向他方側のトンネル内空間の気圧よりも相対的に大となり、フロアトンネルと排気管との間に形成されている排気管回りの空間をトンネル幅方向一方側から他方側へ排気管の円周方向に沿って空気が流れ、該空間のトンネル幅方向他方側から空間内の空気が排出され、排気管で熱せられた空気がトンネル内に滞留することが無く、トンネル内の空気(トンネル内の雰囲気)の温度上昇が抑えられる。
【0013】
一方、排気ガイド部は、走行時にトンネル幅方向他方側のトンネル内空間の空気を車両外部へ排出する。排気管を境にしてトンネル幅方向他方側のトンネル内空間の空気が外部に排出されると、トンネル幅方向他方側のトンネル内空間の気圧が、トンネル幅方向一方方側のトンネル内空間の気圧よりも相対的に小となり、フロアトンネルと排気管との間に形成されている排気管回りの空間をトンネル幅方向一方側から他方側へ空気が流れ、該空間のトンネル幅方向他方側から空間内の空気が排出され、排気管で熱せられた空気がトンネル内に滞留することが無く、トンネル内の空気の温度上昇が抑えられる。
【0014】
なお、導入ガイド部と排気ガイド部は、何れか一方が設けられていれば良いが、導入ガイド部と排気ガイド部を両方設けることで、何れか一方の場合よりも排気管回りに流れる空気量が増大し、トンネル内の空気の温度上昇を抑えるにはより効果的である。
また、ブレース部材は、トンネル長手方向に複数設けることが更に好ましい。
【0015】
このように、請求項1に記載の車体下部構造によれば、トンネル内の空気の温度上昇が抑えられるため、例えば、フロアトンネル後方に燃料タンクが配置されて、フロアトンネル内の空気が燃料タンクに当たるような構成となっている車両の場合、フロアトンネルからの空気による燃料タンクの温度上昇が抑えられることになる。
【0016】
また、フロアトンネルを補強する機能と、フロアトンネル内の空気の温度上昇を抑える機能の二つの機能をブレース部材が備えているので、部品点数を最小限で済ませることができ、車両の構造も複雑化することが無い。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体下部構造において、前記導入ガイド部、及び前記排気ガイド部は、前記ブレース部材の一部分をトンネル長手方向に対して傾斜させることで形成されている。
【0018】
次に、請求項2に記載の車体下部構造の作用を説明する。
ブレース部材の一部分をトンネル長手方向に対して傾斜させることで、トンネル開口付近の空気の流れを偏向し、外気をトンネル内に導入したり、トンネル内の空気を外部に排出することができる。
【0019】
例えば、外気をトンネル内に導入する場合には、車両後方側を上げるように傾斜させれば良く、トンネル内の空気をフロア下方へ排出する場合には、車両後方側を下げるように傾斜させれば良い。
【0020】
請求項3に記載の発明は、車両下方へ向けて開口して内部に排気管が収容されるフロアトンネルを補強するために、前記フロアトンネルを幅方向に横断する方向に延びて車両のフロアパネルに取り付けられるフロアトンネル用ブレース部材であって、長手方向一端側に設けられ、前記フロアトンネルの開口部のトンネル幅方向一方の端部側に連結される第1の連結部と、長手方向他端側に設けられ、前記開口部のトンネル幅方向他方の端部側に連結される第2の連結部と、を備え、前記フロアパネルに取り付けた際に、走行時に前記排気管を境にしてトンネル幅方向一方側のトンネル内空間に向けて外気を導入する導入ガイド、及び走行時にトンネル幅方向他方側のトンネル内空間の空気を車両外部へ排出する排気ガイドの少なくとも一方が形成されている。
【0021】
次に、請求項3に記載のフロアトンネル用ブレース部材の作用を説明する。
請求項3に記載のフロアトンネル用ブレース部材を、第1の連結部をフロアパネルのフロアトンネルの開口部のトンネル幅方向一方の端部側に連結し、第2の連結部をフロアパネルのフロアトンネルの開口部のトンネル幅方向他方の端部側に連結することで、フロアトンネル用ブレース部材がフロアトンネルの開口部分を横断してトンネル部分を閉断面形状とし、ブレース部材が補強となってフロアトンネルの断面形状変化が抑えられる。
【0022】
なお、フロアトンネル用ブレース部材をフロアパネルに取り付けた際の作用効果については、請求項1の作用効果と同一であるため、説明は省略する。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のフロアトンネル用ブレース部材において、前記導入ガイド部、及び前記排気ガイド部は、長手方向の一部分がトンネル長手方向に対して傾斜させることで形成されている。
【0024】
次に、請求項4に記載のフロアトンネル用ブレース部材を説明する。
ブレース部材の長手方向(トンネル幅方向)の一部分をトンネル長手方向に対して傾斜させることで、トンネル開口付近の空気の流れを偏向し、外気をトンネル内に導入したり、トンネル内の空気を外部に排出することができる。
【0025】
例えば、外気をトンネル内に導入する場合には、車両後方側を上げるように傾斜させれば良く、トンネル内の空気をフロア下方へ排出する場合には、車両後方側を下げるように傾斜させれば良い。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明の車両下部構造によれば、フロアトンネルの変形抑制と、排気管による部品熱害の抑制とを両立することができる。
【0027】
また、本発明のフロアトンネル用ブレース部材によれば、フロアパネルに取り付けることで、フロアトンネルの変形抑制と、排気管による部品熱害の抑制とを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
[第1の実施形態]
以下、図1〜図4を用いて、本発明に係る車体下部構造の第1の実施形態について説明する。なお、図において、矢印FR方向は車両前方、矢印RE方向は車両後方、矢印L方向は車両左方向、矢印R方向は車両右方向、矢印UP方向は車両上方、矢印DN方向は車両下方を示している。
【0029】
図1には本発明の第1の実施の形態に係る車体下部構造を適用した車両10を斜め後方下方から見た概略的な斜視図が示されている。
図1に示されるように、車両10は車体フロアとしてのフロアパネル12を備えており、フロアパネル12には、車両前後方向に延びる凹部としてのフロアトンネル14が設けられている。
【0030】
図1、及び図2に示すように、フロアトンネル14は車両10の下方へ向けて開口した凹形状とされており、車両10の下方へ向けて開口幅寸法が漸次広がるように長手方向直角断面形状が台形状に形成されている。なお、図2は、フロアトンネル14を前側から見た断面図であり、図面右側が車両左側、図面左側が車両右側となっている。
【0031】
フロアトンネル14の内側には、トンネル内壁面から離間して排気管16が配置されている。排気管16のうち、少なくともフロアトンネル14の内側に収容された部分は車両10の前後方向に沿って長手の筒形状(本実施の形態では、断面円形の筒状)に形成されており、その基端部(前端部)は車両10のエンジン(図示省略)に接続されている。
排気管16にはエンジンからの排気ガスが基端側(前側)から先端側(後側)へ向けて通過する。
【0032】
フロアトンネル14に排気管16を収容した状態では、フロアトンネル14の左壁14Lと排気管16との間に左空間20Lが、フロアトンネル14の上壁14Uと排気管16との間に上空間20Uが、また、フロアトンネル14の右壁14Rと排気管16との間に右空間20Rが各々形成されている。これら左空間20L、上空間20U、及び右空間20Rは、排気管16の周方向に空気が流れるように互いに連続している。なお、排気管16は、フロアトンネル14の幅方向中央に配置されている。
【0033】
(トンネル用ブレース部材)
図1〜3に示すように、フロアパネル12には、フロアトンネル14の開口側(下側)に、トンネル長手方向に沿って複数のトンネル用ブレース部材22が設けられている。
本実施形態のトンネル用ブレース部材22は板状に形成され、車両底部側から平面視した形状は、車両幅方向に長い長方形状とされている。
【0034】
本実施形態のトンネル用ブレース部材22は、断面円形の鋼管をプレス加工、またはハイドロフォーミング等により形成されている。
トンネル用ブレース部材22は、フロアトンネル14の開口を跨ぐようにフロアパネル12の下面に配置されている。
【0035】
トンネル用ブレース部材22は、フロアトンネル14の軸方向から見て、排気管16の右側と左側とで形状が異なっており、図3に示すように、排気管16の車両右側では車両後方側が車両前方側よりも上側となるように水平方向に対して角度αで傾斜した第1の傾斜部18Rが形成されており、排気管16の車両左側では車両後方側が車両前方側よりも下側となるように水平方向に対して角度βで傾斜した第2の傾斜部18Lが形成されている。
【0036】
なお、トンネル用ブレース部材22の長手方向中央部分18Cは、水平方向に対して平行に形成されている。即ち、本実施形態のトンネル用ブレース部材22は、長手方向の一部分が捩じられている。
また、トンネル用ブレース部材22の長手方向両端部分には、一定厚さに形成された連結部18Eが形成されている。連結部18Eには、ボルトのネジ部を挿通させる孔24が形成されている。
トンネル用ブレース部材22は、連結部18Eの孔24を挿通させたボルト(図示せず)をフロアパネル12に形成されたネジ孔(図示せず)にねじ込むことで、フロアパネル12に固定されている。
【0037】
また、この車両10には、フロアトンネル14の車両後方側に燃料タンク26が配置されている。燃料タンク26の下面には、排気管16を通過させるためのトンネル29が、フロアトンネル14と直列に形成されている。このトンネル29もフロアトンネル14と同様に、車両下方に向けて開口し、断面台形状を呈している。
【0038】
(作用、効果)
次に、第1の実施形態に係る車体下部構造の作用並びに効果について説明する。
本実施形態のトンネル用ブレース部材22は、フロアトンネル14を幅方向に跨ぐようにフロアパネル12に取り付けられているため、フロアトンネル14の開口部分の幅が拡大、または縮小する方向の変形を抑制することができる。
【0039】
車両10が走行すると車両10のエンジンから高温の排気ガスが排気管16の基端(前端)側から先端(後端)側へ向けて通過し、この高温の排気ガスによって排気管16が熱せられ、加熱した排気管16によってフロアトンネル内の周囲の空気が加熱される。
【0040】
ところで、トンネル用ブレース部材22は、フロアトンネル14の軸方向から見て、排気管16の右側の第1の傾斜部18Rが車両前方側が車両後方側よりも下側となるように水平方向に対して角度αで傾斜しているため、車両10が走行してフロア下側に車両前方側から後方側へ空気が流れると、その空気の一部が第1の傾斜部18Rによって車両後方斜め上方に偏向されてフロアトンネル14の右空間20Rに誘導される。これによって、右空間20Rの圧力が上昇する。
【0041】
また、トンネル用ブレース部材22は、フロアトンネル14の軸方向から見て、排気管16の左側の第2の傾斜部18Lが車両後方側が車両前方側よりも下側となるように水平方向に対して角度βで傾斜しているため、車両10が走行してフロア下側に車両前方側から後方側へ空気が流れると、第2の傾斜部18Lに当たった空気が車両後方斜め下方に偏向され、それに伴って排気管16の車両左側の左空間20Lの空気が車両下側へ排出され。
【0042】
このように、図4に示すように、排気管16の車両右側では外気が車両後方斜め上方(矢印A参照)に向けてトンネル内に導入され、車両左側ではトンネル内の空気が車両後方斜め下方(矢印B参照)に向けてトンネル外へ排出されるので、トンネル用ブレース部材22の車両後方側では、トンネル内の空気は図2、及び図4の矢印Cで示す様に排気管16の周囲を車両後方へ向かいつつ時計回り方向に略半周し、走行中は連続して外気が導入されると共に、排気管16の熱によって温度上昇したトンネル内の空気が連続して排出され、排気管回りの空気の温度上昇が抑えられる。
【0043】
したがって、フロアトンネル14の車両後方に配置される燃料タンク26には、温度上昇の抑えられたトンネル内の空気が到達することになり、燃料タンク26の温度上昇を抑えること、即ち、燃料タンク26の熱害を抑制することができる。
【0044】
このように、本実施形態のトンネル用ブレース部材22は、フロアトンネル14を補強する機能と、フロアトンネル内の空気の温度上昇を抑える機能の二つの機能を備えているため、部品点数を最小限で済ませることができ、車両の構造も複雑化することが無い。
【0045】
なお、燃料タンク26の温度上昇を抑えることにより、例えば、ガソリン臭発生を抑えることができる。また、燃料タンク26が合成樹脂性の場合、燃料タンク26の温度上昇を抑えることは好ましい形態となる。
【0046】
また、排気管16の円周方向に流れてフロアトンネル14から排出された空気は、フロア下側の空気の流速を低下させることができる。これを利用して、排出される側を排気管16の左右どちらかに配置するか任意に設定することで、フロア下側の空気の流れの左右さを制御でき、車両の空気抵抗の低減につなげる事も可能である。
【0047】
また、フロアトンネル内の空気の温度上昇を抑えることは、後方に配置される燃料タンク26に限らず、フロアトンネル内に露出している部品、フロアトンネル14に取り付けられている部品等の熱害に対しても有利になることは勿論である。
【0048】
[第2の実施形態]
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0049】
図5に示すように、本実施形態のトンネル用ブレース部材30は、鋼板のプレス成形品である。
このトンネル用ブレース部材30は、車両前側に配置されて車両幅方向に延びる断面コ字状の第1の翼部32と、車両後側に配置されて車両幅方向に延びる断面コ字状の第2の翼部34と、第1の翼部32と第2の翼部34とを連結する連結部36を備え、第1の翼部32の両端側にはフロアパネル12と連結するための第1の連結部32A、第2の翼部34の両端側にはフロアパネル12と連結するための第2の連結部34Aが形成されている。
【0050】
第1の翼部32は、車両右側の端部において上面が車両後方側が下側となるように水平方向に対して角度βで傾斜し、車両左側の端部において上面が車両後方側が上側となるように水平方向に対して角度αで傾斜し、上面が角度βから角度αに徐々に傾斜角度が変化するように捩れている。なお、第1の翼部32の車両幅方向中央部分CLにおいて、上面は、水平方向となっている。
【0051】
第2の翼部34も第1の翼部32と同様に上面が角度βから角度αに徐々に傾斜角度が変化するように捩れており、第1の翼部32の上面の延長線上に第2の翼部34の上面が位置している。
【0052】
なお、第1の連結部32Aの上面、及び第2の連結部34Aの上面は、共に水平方向に対して平行に形成されているが、第1の翼部32、及び第2の翼部34が捩れているため、第1の連結部32Aの上面、及び第2の連結部34Aの上面は、図5に示すように高さが異なっている。
【0053】
このため、フロアパネル12には、高さの異なる第1の連結部32A及び第2の連結部34Aを取り付けるために、車両右側では、図6(A)に示すようにフロアパネル12に突起部36を形成して第2の連結部34Aをボルト止めし(ボルトは図示省略)、第1の連結部32Aはフロアパネル12に直接ボルト止めしている。一方、車両左側では、図6(B)に示すようにフロアパネル12に突起部36を形成して第1の連結部32Aをボルト止めし、第2の連結部34Aはフロアパネル12に直接ボルト止めしている。
【0054】
なお、本実施形態のトンネル用ブレース部材30は、第1の実施形態のトンネル用ブレース部材22とは形状が異なるが、補強による効果、及びトンネル内の空気の流れによる効果は第1の実施形態と同様に得られる。
【0055】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態を図7にしたがって説明する。なお、本実施形態は第2の実施形態の変形例であり、第2の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0056】
図7に示すように、本実施形態のトンネル用ブレース部材38では、第1の連結部32A、及び第2の連結部34Aの車両幅方向両端部に、捩れ部40を介して連結部42が形成されている。
【0057】
本実施形態では、トンネル用ブレース部材38の車両幅方向両端部に、それぞれ単一の連結部42が形成されており、フロアパネル12に固定する箇所が2箇所となっているため、第2の実施形態に比較して固定が簡単となっており、また、フロアパネル12に突起部36を必要としないため構造が簡素化されている。
【0058】
[その他の実施形態]
上記実施形態のトンネル用ブレース部材は鋼材を用いて形成したが、CFRP等の強化プラスチック、アルミニューム合金等の鋼材以外の材質を用いて形成されていても良い。
車両のフロアパネル、フロアトンネルは、CFRP等の強化プラスチック等で形成されていても良く、プラスチック系の材料でフロアトンネルが形成されている場合には、フロアトンネルに対しても本発明は好適である。
上記実施形態では、トンネル用ブレース部材をフロアパネルにボルトで固定したが、取り外す必要がなければ溶接、接着等の他の手段で固定しても良い。
【0059】
また、本実施形態のトンネル用ブレース部材22,30,38は、既存の車両に取り付けられているトンネル用ブレース部材(傾斜部の形成されていない)と交換することもできる。
なお、本実施形態では、トンネル用ブレース部材22,30,38がフロアパネル12にのみ取り付けられているが、燃料タンク26のトンネル29を跨ぐ様に燃料タンク26の下面に取り付けても良い。
フロアトンネル内には、排気管16以外に、触媒コンバーター、マフラー等の排気の通過する部材が配置されていても良く、これらの部材に対向するようにトンネル用ブレース部材22,30,38を配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】車体の要部を示す下面図である。
【図2】車両前側から見たフロアトンネルの断面図である。
【図3】フロアトンネル用ブレース部材の斜視図である。
【図4】フロアトンネル用ブレース部材、及び排気管の斜視図である。
【図5】第2の実施形態に係るフロアトンネル用ブレース部材の斜視図である。
【図6】(A)、(B)は、フロアトンネル用ブレース部材のフロアパネルとの連結部位の断面図である。
【図7】第3の実施形態に係るフロアトンネル用ブレース部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
10 車体
12 フロアパネル
14 フロアトンネル
16 排気管
20R 右空間
20L 左空間
20U 上空間
22 トンネル用ブレース部材
30 トンネル用ブレース部材
38 トンネル用ブレース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルに設けられ、車両下方へ向けて開口し、内部に排気管が収容されるフロアトンネルと、
前記フロアトンネルの開口部のトンネル幅方向一方の端部側と他方の端部側とを連結するように前記フロアパネルに設けられるブレース部材と、
を備え、
前記ブレース部材には、走行時に前記排気管を境にしてトンネル幅方向一方側のトンネル内空間に向けて外気を導入する導入ガイド部、及び走行時にトンネル幅方向他方側のトンネル内空間の空気を車両外部へ排出する排気ガイド部の少なくとも一方が形成されている車体下部構造。
【請求項2】
前記導入ガイド部、及び前記排気ガイド部は、前記ブレース部材の一部分をトンネル長手方向に対して傾斜させることで形成されている、請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
車両下方へ向けて開口して内部に排気管が収容されるフロアトンネルを補強するために、前記フロアトンネルを幅方向に横断する方向に延びて車両のフロアパネルに取り付けられるフロアトンネル用ブレース部材であって、
長手方向一端側に設けられ、前記フロアトンネルの開口部のトンネル幅方向一方の端部側に連結される第1の連結部と、
長手方向他端側に設けられ、前記開口部のトンネル幅方向他方の端部側に連結される第2の連結部と、
を備え、
前記フロアパネルに取り付けた際に、走行時に前記排気管を境にしてトンネル幅方向一方側のトンネル内空間に向けて外気を導入する導入ガイド、及び走行時にトンネル幅方向他方側のトンネル内空間の空気を車両外部へ排出する排気ガイドの少なくとも一方が形成されているフロアトンネルブレース部材。
【請求項4】
前記導入ガイド部、及び前記排気ガイド部は、長手方向の一部分がトンネル長手方向に対して傾斜させることで形成されている、請求項3に記載のフロアトンネル用ブレース部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−120502(P2010−120502A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295587(P2008−295587)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】