説明

車体下部構造

【課題】部品点数の削減を図りながら、衝突時に運転席乗員の足首に加わるモーメントを低減することができる車体下部構造を得る。
【解決手段】トーボード14Bにおいて車両前後方向に対して交差する斜め方向に沿って皺ガイドビード40が形成されており、この皺ガイドビード40が車両前方側からの入力荷重によるトーボード14Bの伸びを吸収可能となっている。このため、衝突時には、トーボード14Bの一般面114Bの伸びが抑制されると共に、当該伸びによって生じる皺が皺ガイドビード40に沿って車両前後方向に対して交差する斜め方向に形成されることで皺の方向がコントロールされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダッシュパネルの下部側にフロアパネルが連接した車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、衝突時に運転席乗員の足首に加わるモーメントを低減するために、例えば、ヒールストッパの衝撃吸収構造が適用される場合がある(例えば、特許文献1参照)。このような構造では、ダッシュパネル下部側にヒールストッパ部材を組み付け、車両衝突時にはこのヒールストッパ部材を変形させることによってアクセルペダルを踏む足部の踵が受ける衝撃を吸収している。
【0003】
しかし、この従来構造では、別体のヒールストッパ部材をボルト等で組み付けており、部品点数の増加に繋がっていた。
【特許文献1】特開2003−312540公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、部品点数の削減を図りながら、衝突時に運転席乗員の足首に加わるモーメントを低減することができる車体下部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の車体下部構造は、エンジンルームとキャビンとを隔成するダッシュパネルの下部側に連接したフロアパネルと、前記ダッシュパネルの下部及び前記フロアパネルの前部の少なくとも一方において車両前後方向に対して交差する斜め方向に沿って形成され、車両前方側からの入力荷重による当該ダッシュパネルの下部及び当該フロアパネルの前部の少なくとも一方の伸びを吸収可能なビードと、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の車体下部構造によれば、ダッシュパネルの下部及びフロアパネルの前部の少なくとも一方において車両前後方向に対して交差する斜め方向に沿ってビードが形成されており、このビードが車両前方側からの入力荷重による当該ダッシュパネルの下部及び当該フロアパネルの前部の少なくとも一方の伸びを吸収可能となっているので、衝突時には、当該ダッシュパネルの下部一般面及び当該フロアパネルの前部一般面の少なくとも一方の伸びが抑制されると共に、当該伸びによって生じる皺がビードに沿って車両前後方向に対して交差する斜め方向に形成されることで皺の方向がコントロールされる。
【0007】
請求項2に記載する本発明の車体下部構造は、請求項1記載の構成において、前記ダッシュパネルは、車体前部の両サイドに略車両前後方向に延在する左右一対のフロントサイドメンバの後端側が結合されるサイドメンバ結合部と、アクセルペダル下方側に位置して乗員足部の踵が置かれる踵置部と、を備え、前記ビードは、前記サイドメンバ結合部と前記踵置部との間の車幅方向位置に形成され、車両後方側となる後端部から車両前方側となる前端部に向かうにつれて車幅方向内側に位置するように延在することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車体下部構造によれば、ビードは、サイドメンバ結合部と踵置部との間の車幅方向位置に形成され、車両後方側となる後端部から車両前方側となる前端部に向かうにつれて車幅方向内側に位置するように延在するので、衝突時にサイドメンバ結合部が車幅方向中央部に比べて車両後方側へ後方変位した場合、ダッシュパネルの下部及びフロアパネルの前部の少なくとも一方の伸びがビードによって効果的に吸収される。
【0009】
請求項3に記載する本発明の車体下部構造は、請求項2記載の構成において、前記ビードと前記踵置部との間に車両前後方向に沿って延在する補強部が設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車体下部構造によれば、ビードと踵置部との間に補強部が車両前後方向に沿って延在するので、衝突時にサイドメンバ結合部が車幅方向中央部に比べて車両後方側へ後方変位した場合、ダッシュパネルの下部一般面及びフロアパネルの前部一般面の少なくとも一方の伸びによって皺が生じても、補強部によって踵置部側への皺の進行が阻止又は抑制される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車体下部構造によれば、ビードによって衝突時の伸びを吸収すると共に皺の方向を制御することで、部品点数の削減を図りながら、衝突時に運転席乗員の足首に加わるモーメントを低減することができるという優れた効果を有する。
【0012】
請求項2に記載の車体下部構造によれば、衝突時におけるダッシュパネルの下部及びフロアパネルの前部の少なくとも一方の伸びを効果的に吸収することができるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項3に記載の車体下部構造によれば、補強部によって衝突時における踵置部での皺の発生を防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1実施形態]
本発明における車体下部構造の第1の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは車両の上方向、矢印FRは車両の前方向、矢印RHは車幅方向右側をそれぞれ示す。また、これらの図は、左ハンドル車で示されている。
【0015】
図1には、本実施形態に係る車体下部構造の全体構成をキャビン10側(車室内側)から見た場合の斜視図が示されている。図1に示されるように、キャビン10の前方部には、ダッシュパネル14が配設されている。ダッシュパネル14は、エンジンルーム12とキャビン10とを隔成している。ダッシュパネル14の上部は、略垂直板状に形成された垂直板部14Aとなっているおり、ダッシュパネル14の下部は、この垂直板部14Aと一体的に設けられて傾斜板状に形成されたトーボード14Bとなっている。トーボード14Bは、車両前方に向けて車両斜め上方側に立ち上がり、乗員の足乗せ用とされている。トーボード14Bの下端部側には、フロアパネル16が連接しており、トーボード14Bの下端部は、スポット溶接等で結合されることでフロアパネル16の前端部に一体化されている。また、ダッシュパネル14の略車幅方向中央部には、略車両前後方向に沿うダッシュトンネル部14Cが設けられている。ダッシュトンネル部14Cの後端部側には、フロアパネル16のフロアトンネル部(図示省略)が連接しており、ダッシュトンネル部14Cの後端部は、スポット溶接等で結合されることでトンネル状のフロアトンネル部の前端部に一体化されている。フロアトンネル部(図示省略)は、車両前後方向に沿って延在しており、ボデー下部を補強している。なお、近年、トンネルリインフォース(図示省略)の追加等によって、ダッシュトンネル部14Cの剛性が高められており、車両衝突時にダッシュトンネル部14Cで大きな反力が得られるようになっている。
【0016】
ダッシュパネル14によって隔成されたエンジンルーム12側となる車体前部の両サイドには、左右一対のフロントサイドメンバ18が略車両前後方向に延在している。フロントサイドメンバ18は、長尺状に形成されて矩形閉断面を構成しており、車両側面視で、ダッシュパネル14の垂直板部14Aから車両前方側に位置するサイドメンバ上部18Aと、このサイドメンバ上部18Aの後端部からダッシュパネル14のトーボード14Bの側面形状に沿って車両後方下側へ傾斜するキックアップ部18Bと、このキックアップ部18Bの後端部からフロアパネル16の下面に沿って車両後方側へ延在するサイドメンバ下部(図示省略)と、を備えている。ここで、ダッシュパネル14における外面側の車幅方向両側は、フロントサイドメンバ18の後端側が結合されるサイドメンバ結合部15Aとなっている。
【0017】
なお、左右一対のフロントサイドメンバ18の前端部同士は、車幅方向を長手方向として配置された図示しないフロントバンパリインフォースによって相互に連結されている。フロントバンパリインフォースはフロントバンパの一部を構成する高強度の長尺状の部材であり、図示しないフロントバンパカバーの後方側にアブソーバを介して配置されている。
【0018】
ダッシュパネル14における垂直板部14Aのキャビン10側には、アクセルペダル22を支持するためのロッドサポート24が、車幅方向中央部寄りに固定されている。車両用ペダルであるアクセルペダル22は、棒状部材を適宜屈曲させることにより形成されたペダルロッド22Aと、ペダルロッド22Aの先端部に取り付けられて運転席乗員(ドライバ)の踏力の付与用とされるペダルパッド22Bと、を含んで構成されている。運転席乗員による運転状態では、ペダルパッド22Bに運転席乗員の右足部の前部(踵よりも車両前方側へ向けられた部分の一部)が載せられることになる。ロッドサポート24には、車幅方向を軸方向とする回動中心軸26が配設されており、アクセルペダル22のペダルロッド22Aがこの回動中心軸26回りに回動可能に支持されている。ペダルロッド22Aは、略車両上下方向に沿って配設されており、ペダルパッド22Bは、トーボード14B側に配設されている。
【0019】
アクセルペダル22の車幅方向左側には、ブレーキペダル30、及び、クラッチペダル34が配設されている。ブレーキペダル30は、車両背面視でフロントサイドメンバ18よりも車幅方向右側(車幅方向内側)に配設され、狭幅の板材を適宜屈曲させて形成したペダルアーム30Aと、このペダルアーム30Aの下端部に設けられかつ運転席乗員の踏力が付与されるペダルパッド30Bと、を含んで構成されている。また、クラッチペダル34は、車両背面視でフロントサイドメンバ18よりも車幅方向左側(車幅方向外側)に配設され、ペダルアーム34Aとペダルパッド34Bとを含んで構成されている。
【0020】
図3に示されるように、ダッシュパネル14の下部としてのトーボード14Bには、サイドメンバ結合部15Aと、トーボード14Bにおいてアクセルペダル22の下方側に位置して乗員足部50の踵50Aが置かれる踵置部15B(図3の斜線で示される踵置きエリア)と、の間の車幅方向位置にビードとしての皺ガイドビード40が2個形成されている。皺ガイドビード40は、平面視で菱形とされている。なお、本実施形態では、皺ガイドビード40は、ブレーキペダル30のペダルパッド30Bの車両下方側(略直下側)に配設されているが、例えば、図3に示される位置よりも若干車幅方向中央寄りに配設してもよい。皺ガイドビード40は、車両前後方向に対して交差する斜め方向に沿って形成され、車両後方側となる後端部40Aから車両前方側となる前端部40Bに向かうにつれて車幅方向内側に位置するように延在しており、図2に示されるように、トーボード14Bの一般面114Bに対して車両上方側に凸状に突出して余肉部分を構成している。これらによって、皺ガイドビード40は、車両前方側からの入力荷重によるトーボード14Bの伸びを自らが伸びることによって吸収可能となっており、トーボード14B(フロア)伸び対策用とされている。
【0021】
図3に示されるように、皺ガイドビード40と足元エリアとなる踵置部15Bとの間には、車両前後方向に沿って延在する補強部としての皺防止ビード42が設けられている。皺防止ビード42は、平面視で矩形状とされると共に車両上方側に凸状とされており、トーボード14Bにおけるサイドメンバ結合部15A側から踵置部15B側への皺の進行を阻止するための阻止手段として機能する。
【0022】
すなわち、皺ガイドビード40及び皺防止ビード42が形成されたトーボード14Bは、アクセルペダル22の下方側の踵置部15Bが車両衝突状態で変形しない又は変形しにくい構造となっている(アクセルペダル下の保護構造)。
【0023】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果を説明する。
【0024】
衝突体がフロントバンパ(図示省略)に衝突すると、その際の衝突荷重は、フロントバンパリインフォース(図示省略)を介してフロントサイドメンバ18に入力される。このとき、図3に示されるフロントサイドメンバ18は、二点鎖線で示されるように、軸圧縮変形しながら、荷重を車両後方側へ伝達する。伝達される荷重の一部は、ダッシュトンネル部14C及びフロアトンネル部(図示省略)によって支持されており、サイドメンバ結合部15Aが車両後方側へ後退しても、ダッシュトンネル部14Cは変形が抑制されて殆ど後退しない。すなわち、入力荷重とダッシュトンネル部14C等の大きな反力とによって、トーボード14Bは、サイドメンバ結合部15Aと、ダッシュトンネル部14C及びフロアトンネル部(図示省略)と、の間が略車両後方側へ引っ張られる。
【0025】
ここで、トーボード14Bには車両前後方向に対して交差する斜め方向に沿って皺ガイドビード40が形成されており、この皺ガイドビード40が車両前方側からの入力荷重によるトーボード14Bの伸びを吸収可能となっているので、衝突時には、トーボード14Bの一般面114Bの伸びが抑制されると共にトーボード14Bの一般面114Bの伸びによって生じる皺が皺ガイドビード40をきっかけとして皺ガイドビード40に沿って車両前後方向に対して交差する斜め方向に形成される(皺の制御)。
【0026】
より具体的には、皺ガイドビード40は、サイドメンバ結合部15Aと踵置部15Bとの間の車幅方向位置に形成され、車両後方側となる後端部40Aから車両前方側となる前端部40Bに向かうにつれて車幅方向内側に位置するように延在するので、衝突時にサイドメンバ結合部15Aがダッシュトンネル部14Cに比べて車両後方側へ後方変位した場合、トーボード14Bの伸びが皺ガイドビード40によって効果的に吸収されると共に皺の生じる方向がコントロールされる。
【0027】
すなわち、図4に示されるように、一般面114Bに対して車両上方側に突出することで余肉部分とされて衝突前に長手方向寸法がAである皺ガイドビード40(図4(A)参照)が、衝突時に図4(B)に示されるように、引っ張り方向(矢印X1方向及び矢印X2方向)に伸びて長手方向寸法がA+αとなることによって、トーボード14Bの一般面114Bにおける皺の発生を抑制すると共に、皺ガイドビード40の配設方向によって皺の発生方向のきっかけを作り、踵置部15B(図3参照)に皺を発生させない方向に皺方向が制限される(皺の流れが作られる)。
【0028】
また、図3に示されるように、皺ガイドビード40と踵置部15Bとの間に皺防止ビード42が車両前後方向に沿って延在するので、衝突時にトーボード14Bの一般面114Bの伸びによって皺が生じても、皺防止ビード42によって踵置部15B側への皺の進行が効果的に阻止又は抑制される。
【0029】
以上説明したように、皺ガイドビード40及び皺防止ビード42は、トーボード14B全体の捩れを制御するヒール保護ビードとして機能する。すなわち、本実施形態の車体下部構造によれば、皺ガイドビード40によって衝突時の伸びを効果的に吸収すると共に皺の方向を制御することで、部品点数の削減を図りながら(衝撃吸収部材追加等によるコスト増及び重量増を回避して)、衝突時における踵置部15B自体の変形を防止又は抑制し、衝突時に運転席乗員の足首に加わるモーメントを効果的に低減することができる。また、皺防止ビード42によって衝突時における踵置部15Bでの皺の発生が有効に防止又は抑制される。
【0030】
[第2実施形態]
次に、車体下部構造の第2の実施形態を図5及び図6に基づき説明する。なお、第2の実施形態は、ビードとしての皺ガイドビード44の形状及び形成個数が特徴であり、他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
図5及び図6に示されるように、トーボード14Bには、皺ガイドビード44が3個形成されている。皺ガイドビード44は、トーボード14Bの一般面114Bに対して車両下方側に凸状に突出しており、キャビン10側から見て凹形状とされている。本実施形態における皺ガイドビード44は、他の点については、第1の実施形態における皺ガイドビード40(図1等参照)とほぼ同様の構成であり、詳細な説明を省略するが、図5では、皺ガイドビード44において車両後方側となる後端部を符号44A、車両前方側となる前端部を符号44Bで示す。皺ガイドビード44は、車両前方側からの入力荷重によるトーボード14Bの伸びを吸収可能となっている。このような構成によっても、第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0032】
[第3実施形態]
次に、車体下部構造の第3の実施形態を図7に基づき説明する。なお、第3の実施形態は、ビードとしての皺ガイドビード46の形状が特徴であり、他の構成については、第1、第2の実施形態とほぼ同様の構成であるので、実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
図7に示されるように、トーボード14Bには、平面視で四角形の皺ガイドビード46が3個形成されており、これらの皺ガイドビード46は、トーボード14Bの一般面114Bに対して車両上方側に凸状に突出している。本実施形態における皺ガイドビード46は、他の点については、第1の実施形態における皺ガイドビード40(図1等参照)とほぼ同様の構成であり、詳細な説明を省略するが、図7では、皺ガイドビード46において車両後方側となる後端部を符号46A、車両前方側となる前端部を符号46Bで示す。皺ガイドビード46は、車両前方側からの入力荷重によるトーボード14Bの伸びを吸収可能となっている。このような構成によっても、第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0034】
なお、本実施形態では、皺ガイドビード46がトーボード14Bの一般面114Bに対して車両上方側に凸状に突出しているが、皺ガイドビード46と同様の平面視四角形の皺ガイドビードが一般面114Bに対して車両下方側に凸状に突出していてもよい。
【0035】
[第4実施形態]
次に、車体下部構造の第4の実施形態を図8及び図9に基づき説明する。なお、第4の実施形態は、第1〜第3の実施形態における皺防止ビード42(図1等参照)の代わりに、リインフォース48の一部を構成する補強部としての皺防止部48Aが配設される点が特徴であり、他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図8に示されるように、皺ガイドビード40の車幅方向右側(車幅方向内側寄り)には、リインフォース48が配設されている。リインフォース48は、車両上方側に凸状に突出すると共に周縁部がフランジ状とされてトーボード14Bに溶接によって結合されており、車幅方向右側から見て平面視で略T字状に形成されている。
【0037】
リインフォース48における車幅方向左側部分は、皺ガイドビード40と踵置部15Bとの間に車両前後方向に沿って延在する皺防止部48Aとなっている。また、リインフォース48は、皺防止部48Aの長手方向中間部から車幅方向右側へ延出する延出部48Bを備えている。延出部48Bは、車両後方側が頂部148Bから略車両下方側へ一段下がる段差形状とされ、踵ストッパとして機能するようになっている。図9に示されるように、乗員足部50の踵50Aは、カーペット52及び延出部48Bを介して踵置部15Bに置かれることになる。以上のような構成によっても、第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0038】
[第5実施形態]
次に、車体下部構造の第5の実施形態を図10に基づき説明する。第5の実施形態では、トーボード14Bにおいて、アクセルペダル22のペダルパッド22Bの車両下方側からブレーキペダル30のペダルパッド30Bの車両下方側までの範囲(図10では踵置部15Bと拡張保護範囲15Cとを含む範囲)を保護エリア、すなわち、車両衝突時に皺の発生を防止又は抑制するエリアとして、皺ガイドビード40及び皺防止ビード42を配設する形態である。他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
図10に示されるように、皺ガイドビード40は、ブレーキペダル30のペダルパッド30Bの車両下方側よりも、車幅方向左側(車幅方向外側)でかつサイドメンバ結合部15Aよりも車幅方向右側(車幅方向内側)に形成されている。皺防止ビード42は、皺ガイドビード40に近接した位置に形成されている。このような構成によっても、第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる他、車両衝突時にブレーキペダル30のペダルパッド30Bの車両下方側における皺の発生も防止又は抑制することができる。
【0040】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、皺ガイドビード40、44、46がトーボード14Bに形成されているが、車両のフロア構造として、ビードは、フロアパネルの前部において車両前後方向に対して交差する斜め方向に沿って形成されて車両前方側からの入力荷重による当該フロアパネルの前部の伸びを吸収可能なビードであってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、皺ガイドビード40、44、46は、サイドメンバ結合部15Aと踵置部15Bとの間の車幅方向位置に形成され、車両後方側となる後端部40Aから車両前方側となる前端部40Bに向かうにつれて車幅方向内側に位置するように延在しているが、例えば、ビードは、サイドメンバ結合部の車幅方向外側に形成されて車両後方側となる後端部から車両前方側となる前端部に向かうにつれて車幅方向外側に位置するように延在してもよい。
【0042】
さらに、上記実施形態では、本発明の車体下部構造が左ハンドル車に適用された場合について具体的に説明したが、本発明の車体下部構造は、右ハンドル車にも同様に適用できる。また、上記実施形態では、クラッチペダル34を備えた車両を例に挙げたが、本発明の車体下部構造は、クラッチペダルを備えない車両にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体下部構造の全体構成をキャビン側から見た斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車体下部構造の全体構成を示す平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における皺ガイドビードの伸びる前後の状態を示す斜視図である。図4(A)は、皺ガイドビードが伸びる前の状態を示す。図4(B)は、皺ガイドビードが伸びた後の状態を示す。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る車体下部構造の全体構成をキャビン側から見た斜視図である。
【図6】図5の6−6線に沿った拡大断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る車体下部構造の全体構成をキャビン側から見た斜視図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る車体下部構造の全体構成をキャビン側から見た斜視図である。
【図9】図8の9−9線に沿った断面に相当する拡大断面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る車体下部構造の全体構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 キャビン
12 エンジンルーム
14 ダッシュパネル
14B トーボード(ダッシュパネルの下部)
15A サイドメンバ結合部
15B 踵置部
16 フロアパネル
18 フロントサイドメンバ
22 アクセルペダル
40 皺ガイドビード(ビード)
40A 後端部
40B 前端部
42 皺防止ビード(補強部)
44 皺ガイドビード(ビード)
44A 後端部
44B 前端部
46 皺ガイドビード(ビード)
46A 後端部
46B 前端部
48A 皺防止部(補強部)
50 乗員足部
50A 踵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームとキャビンとを隔成するダッシュパネルの下部側に連接したフロアパネルと、
前記ダッシュパネルの下部及び前記フロアパネルの前部の少なくとも一方において車両前後方向に対して交差する斜め方向に沿って形成され、車両前方側からの入力荷重による当該ダッシュパネルの下部及び当該フロアパネルの前部の少なくとも一方の伸びを吸収可能なビードと、
を有することを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
前記ダッシュパネルは、車体前部の両サイドに略車両前後方向に延在する左右一対のフロントサイドメンバの後端側が結合されるサイドメンバ結合部と、アクセルペダル下方側に位置して乗員足部の踵が置かれる踵置部と、を備え、
前記ビードは、前記サイドメンバ結合部と前記踵置部との間の車幅方向位置に形成され、車両後方側となる後端部から車両前方側となる前端部に向かうにつれて車幅方向内側に位置するように延在することを特徴とする請求項1記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記ビードと前記踵置部との間に車両前後方向に沿って延在する補強部が設けられることを特徴とする請求項2記載の車体下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−174061(P2008−174061A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8519(P2007−8519)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】