説明

車体側部の衝撃緩衝構造

【課題】車体側方からの衝突による衝撃荷重入力時の乗員の安全性を確保する車体側部の衝撃緩衝構造を提供する。
【解決手段】車体上下方向に延在して車両用フロントドアの閉状態でドアビーム120の端部120aが重なるセンタピラー20を備え、センタピラー20がピラーインナ21とピラーアウタ22とによって形成された車体側部の衝撃緩衝構造において、ピラーアウタ22の内側面側に設けられてドアビーム120の上側位置からセンタピラー20の中間高さ位置まで延在して側面視でドアビーム120の端部120aと重なる位置を補強する補強パネル40、補強パネル40の下端部とピラーインナ21との間に架設されてピラーインナ21とピラーアウタ22との間の離間距離を保持する補強脚部50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側部の衝撃緩衝構造、特に、上端がサイドレールに結合されるとともに下端がサイドシルに結合されたセンタピラーに設けられる車体側部の衝撃緩衝構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体側部に配置されるセンタピラーは、上端がサイドレールに結合されるとともに下端がサイドシルに結合されてルーフ及びドアを支持して、側方からの荷重をサイドレール及びサイドシル等を介して他の構成部材に分散伝達するように構成されている。このようなセンタピラーが、側方衝突時に衝撃荷重の入力によって車室内に進入して乗員に影響を及ぼすことを防止する観点から、センタピラーの剛性を高める等、種々の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、車体上下方向におけるセンタピラーの下部に脆弱部を設けたセンタピラー構造が開示されている。この特許文献1のセンタピラー構造を、図8を用いて説明する。
【0004】
図8(a)は、センタピラー構造の概略を説明する図、図8(b)は、図8(a)のB―B線断面図、図8(c)は、図8(a)のC−C線断面図である。図示のように、センタピラー構造100は、上端がサイドレール110に連結され、下端がシル111に連結されて構成されている。センタピラー構造100は、センタピラーインナ101及びセンタピラーアウタ102が重ね合わせられて構成され、センタピラー構造100の車体上下方向上端側の上部からセンタピラー構造100の略中央部分に亘って、センタピラーインナ101とセンタピラーアウタ102との間にシートベルトリンフォース103が配設される。
【0005】
シートベルトリンフォース103の下端から間隙を介してセンタピラーインナ101とセンタピラーアウタ102との間にストライカパッチ104が配設され、更に、ストライカパッチ104の下端から間隙を介して、車体上下方向の下部からセンタピラー構造100の下端側に亘って、センタピラーインナ101とセンタピラーアウタ102との間にドアロアヒンジリンフォース105が配設される。
【0006】
これらシートベルトリンフォース103、ストライカパッチ104及びドアロアヒンジリンフォース105によってセンタピラー構造100が補剛されるとともに、シートベルトリンフォース103の下端とストライカパッチ104との間隙によって脆弱部P1が形成され、ストライカパッチ104の下端とドアロアヒンジリンフォース105との間隙によって脆弱部P2が形成される。
【0007】
これにより、図9で示すように、車体側方からの衝突によって衝撃荷重Fが入力されると、荷重入力点である脆弱部P2を介してセンタピラー構造100の下部が車室内方IN側に傾斜して屈曲し、センタピラー構造100の上部が脆弱部P2に入力された荷重に引っ張られて車室内方INに向かって変位する。センタピラー構造100の上部の車室内方INへの変位に伴って、ドアビーム120も車室内方INに進入する。すなわち、センタピラー構造100を脆弱部P1、P2で屈曲させてセンタピラー構造100及びドアビーム120の車室内への進入を、ある程度抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−61368
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1によると、センタピラー構造100及びドアビーム120の車室内への進入をある程度は抑制することができるものの、センタピラー構造100の上部が脆弱部P2に入力された荷重に引っ張られて車室内方INに向かって変位するとともに、ドアビーム120が車室内に進入することから、乗員の安全性に影響を及ぼすことが懸念される。すなわち、車体側方衝突時の乗員の安全性の向上を図る点からは、センタピラー構造100の上部の車室内方INへの変位を抑制して、ドアビーム120が車室内に進入することを極力抑制することが要求される。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車体側方からの衝突による衝撃荷重入力時の乗員の安全性を確保する車体側部の衝撃緩衝構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明による車体側部の衝撃緩衝構造は、車体前後方向に延在するドアビームが内設された車両用フロントドア、車体上下方向に延在し前記車両用フロントドアの閉状態で前記ドアビームの端部が重なるセンタピラーを備え、該センタピラーが車体内側に位置するピラーインナと車体外側に位置するピラーアウタとによって形成された車体側部の衝撃緩衝構造において、前記ピラーアウタの内側面側に設けられて前記ドアビームよりも上側の高さ位置から該ドアビームの下側の前記センタピラーの中間高さ位置まで延在し、かつ側面視で前記ドアビームの端部と重なる領域を補強する補強パネルと、該補強パネルの下端部と該下端部に対向する前記ピラーインナとの間に設けられて前記補強パネルと前記ピラーアウタとの間の離間距離を保持する補強脚部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、センタピラーには、ドアビームの上側からドアビームの下側のセンタピラーの中間高さ位置まで延在する補強パネルが設けられ、かつその下端部に設けられた補強脚部が補強脚部とピラーアウタとの間の離間距離を保持することから、センタピラーの中間高さ位置から上側の剛性が向上される。従って、他の車体による車体側方からの衝撃荷重が入力されやすいセンタピラーの中間高さ位置に、車両用ドアを介して衝撃荷重が入力されると、衝撃荷重によって該部が屈曲変形する。一方、センタピラーの中間高さ位置から上側の部分は、補強脚部によってピラーインナとピラーアウタとの間の離間距離が保持される。
【0013】
これにより、センタピラーの上側の部分が、センタピラーの中間高さ位置に入力された衝撃荷重の作用により車体下方向に引っ張られて、センタピラーが車室内方側に変位することが大幅に抑制される。その結果、ドアビームが車室内方側に変位して車室内に進入することが抑制されて、側方衝突時の乗員の安全性を向上させることが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明による車体側部の衝撃緩衝構造は、請求項1に記載の車体側部の衝撃緩衝構造において、前記補強脚部は、前記補強パネルの下端部が屈曲して一体に形成されたことを特徴とする。
【0015】
この発明によると、補強脚部は、補強パネルの下端部が屈曲されて補強パネルと一体に形成されることから、別途、補強脚部を設けることなく、センタピラーに簡易に設けることが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明による車体側部の衝撃緩衝構造は、請求項1または2に記載の車体側部の衝撃緩衝構造において、前記補強脚部は、前記ピラーインナに当接される端部が折曲して形成されたフランジを有して形成されたことを特徴とする。
【0017】
この発明によると、車体側方から衝撃荷重が入力されると、この衝撃荷重がフランジを介してピラーインナに伝達されることから、フランジによって伝達されるピラーインナの部分の変形を抑制して、衝撃荷重を効率的に吸収することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明による車体側部の衝撃緩衝構造は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体側部の衝撃緩衝構造において、前記補強パネルの下方と所定の間隔を介して前記ピラーアウタの内側面に設けられて前記センタピラーの下方側から前記センタピラーの中間高さ位置まで延在する下部補強パネルと、該下部補強パネルの上端部と該上端部に対向する前記ピラーインナとの間に架設されて該ピラーインナと前記ピラーアウタとの間の離間距離を保持する下部補強脚部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
この発明によると、補強パネル及び補強脚部によるセンタピラー上側の部分の補剛に加えて、センタピラーの下側から中間高さ位置まで下部補強パネルが設けられ、かつ下部補強脚部がピラーインナとピラーアウタとの離間距離を保持することから、センタピラーの中間高さ位置から下側のセンタピラーの剛性を向上させることができる。
【0020】
従って、補強パネル及び補強脚部によるセンタピラー上側の部分の補剛によるセンタピラー上側部分の車室内方側への変位が抑制されるとともに、センタピラーの下側の大幅な圧壊を抑制することができ、車体側方衝突時に乗員に及ぶ衝撃を低減させることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係る車体側部の衝撃緩衝構造によれば、センタピラーの中間高さ位置から上側が、補強パネル及び補強脚部によって補剛されていることから、側方からの衝撃荷重が入力されやすいセンタピラーの中間高さ位置に衝撃荷重が入力された場合、センタピラーの中間高さ位置から上側の部分が、センタピラーの中間高さ位置に入力された衝撃荷重の作用により車体下方向に引っ張られて、センタピラーが車室内方側に大幅に変位することが抑制される。従って、側方衝突時におけるドアビームの車室内方側への変位を抑制することができ、側方衝突時の乗員の安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態の車体側部の衝撃緩衝構造が適用される車体の概略を説明する図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】本実施の形態に係る車体側部の衝撃緩衝構造の要部斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV―V線断面図である。
【図6】本実施の形態に係る衝撃緩衝構造の概略を説明する図である。
【図7】側方衝突によって車体側部に衝撃荷重が入力された場合の衝撃緩衝構造の作用を説明する図である。
【図8】従来のセンタピラー構造の概略を説明する図である。
【図9】側方衝突によって、センタピラー構造に衝撃荷重が入力された場合の従来のセンタピラー構造の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態について、図に基づいて説明する。なお、図1〜図7において、矢線Hは車体上方向、矢線Lは車体下方向、矢線INは車室内方、矢線OUTは車室外方を示し、矢線Fは車体前方、矢線Rは車体後方を示す。
【0024】
まず、図1に基づいて、本実施の形態の車体側部の衝撃緩衝構造が適用される車体1の概略について説明する。図示のように、車体1は、その側部にフロントドア開口部2が形成される。フロントドア開口部2の下縁に車体前後方向に沿ってサイドシル10が延在し、フロントドア開口部2の上縁に車体前後方向に沿ってサイドレール11が延在する。フロントドア開口部2の車体後方側後端に、上端がサイドレール11に結合するとともに下端がサイドシル10に結合して上下方向に延在するセンタピラー20が配置される。このセンタピラー20をフロントドア開口部2の後端縁として、図示しないフロントドアが、フロントドア開口部2に対して開閉自在に取り付けられている。
【0025】
次に、本実施の形態に係る車体側部の衝撃緩衝構造の概略について説明する。図2は、図1のII−II線断面図、図3は、本実施の形態に係る車体側部の衝撃緩衝構造の要部斜視図である。図示のように、フロントドア(図示しない)は、車体前後方向に延在するドアアッパビーム120及びドアアッパビーム120の下方で車体前後方向に延在するドアロアビーム121を有して形成される。このフロントドアの閉状態で、ドアアッパビーム120の後端部120aがセンタピラー20と重なる。
【0026】
センタピラー20は、ピラーインナ21とピラーアウタ22とを備えるとともに、センタピラー20におけるドアアッパビーム120の後端部120aと重なる位置を補強するピラーリンフォース23を備えて形成される。センタピラー20におけるドアアッパビーム120の後端部120aと重なる位置に、上部衝撃緩衝構造30が構成され、この上部衝撃緩衝構造30と間隔を介して下部衝撃緩衝構造60が構成されている。
【0027】
上部衝撃緩衝構造30は、ピラーアウタ22の内側面側、本実施の形態ではピラーリンフォース23の内側面に設けられ、ピラーリンフォース23の車体上下方向においてドアアッパビーム120の上側位置からセンタピラーの中間高さ位置、本実施の形態ではセンタピラー20に設けられたストライカ22eの上端の高さ位置まで延在する補強パネルとなる上部ダブラー40を備える。
【0028】
更に、上部衝撃緩衝構造30は、上部ダブラー40の下端部とこの下端部に対向するピラーインナ21との間に架設されてピラーインナ21とピラーアウタ22との間、特に、本実施の形態では、ピラーインナ21とピラーリンフォース23との間の離間距離を保持する補強脚部となる上部セパレータ50を備える。本実施の形態では、上部セパレータ50は、上部ダブラー40の下端部から屈曲して断面視略L字状に一体形成される。
【0029】
下部衝撃緩衝構造60は、上部ダブラー40の下方と所定の間隔を介してピラーアウタ22の内側面側、本実施の形態ではピラーリンフォース23の内側面に設けられ、センタピラー20の下方側からセンタピラーの中間高さ位置、本実施の形態ではストライカ22eの下端の高さ位置まで延在する下部補強パネルとなる下部ダブラー70を備える。
【0030】
更に、下部衝撃緩衝構造60は、下部ダブラー70の上端部とこの上端部に対向するピラーインナ21との間に架設されてピラーインナ21とピラーアウタ22との間、特に本実施の形態ではピラーインナ21とピラーリンフォース23との間の離間距離を保持する下部補強脚部となる下部セパレータ80を備える。本実施の形態では、下部セパレータ80は、下部ダブラー70の上端部から屈曲して断面視略L字状に一体形成される。
【0031】
次に、本実施の形態に係る車体側部の衝撃緩衝構造の各部の具体的構成について説明する。
【0032】
まず、センタピラー20について説明する。図4は、図2のIV−IV線断面図、図5は、図2のV−V線断面図である。図示のように、ピラーインナ21は、車体上下方向に延在するインナ基部21a、インナ基部21aの両端から車室外方OUT側に折曲して形成された両側部21b、両側部21bから車体前後方向にそれぞれ折曲して形成された取付フランジ21cを有して断面略ハット状に一体形成される。
【0033】
ピラーリンフォース23は、車体上下方向に延在するとともにピラーインナ21のインナ基部21aと対向するリンフォース基部23a、リンフォース基部23aの両端から車室内方IN側に折曲して形成された両側部23b、両側部23bから車体前後方向にそれぞれ折曲して形成されるとともにピラーインナ21の取付フランジ21cと接合する取付フランジ23cを有して断面略ハット状に形成される。
【0034】
ピラーアウタ22は、車体上下方向に延在してピラーリンフォース23のリンフォース基部23aと一部において対向するアウタ基部22a、アウタ基部22aの車体後方R側から車室外方OUTに向かって折曲して形成されたリヤクォータ連続部22bを有するとともに、アウタ基部22aの車体前方F側から車室内方INに向かって折曲して形成された側部22c、側部22cから車体前方F側に折曲して形成されるとともにピラーリンフォース23の取付フランジ23cと接合する取付フランジ22dを有して一体形成される。側部22cの外表面には、フロントドアを係止するストライカ22eが設けられている。
【0035】
ピラーアウタ22のリヤクォータ連続部22bから連続して図示しないリヤクォータパネルが車体1の後方に延在し、ピラーアウタ22の下端とリヤクォータパネルの下端に沿って車体前後方向に延在する図示しないサイドシルアウタが形成され、これらピラーアウタ22、リヤクォータパネル、サイドシルアウタによって図示しないサイドパネルアウタが一体形成される。
【0036】
このように、ピラーインナ21とピラーアウタ22とによって車体上下方向に延在する中空閉断面構造を有するセンタピラー20が形成され、ピラーインナ21とピラーリンフォース23とが重ね合わせられて車体上下方向に延在する中空閉断面構造が更に形成されて、センタピラー20が補強される。
【0037】
図6は、上部衝撃緩衝構造30及び下部衝撃緩衝構造60の概略を説明する図である。図6及び図2、図3で示すように、上部衝撃緩衝構造30は、上部ダブラー40及び上部セパレータ50を備える。上部ダブラー40は、ピラーリンフォース23の内側面でピラーリンフォース23の上下方向に亘って配設され、ピラーリンフォース23のリンフォース基部23aの内側面に倣った形状を有する板状のダブラー基部41を有する。
【0038】
ダブラー基部41は、フロントドアの閉状態においてドアアッパビーム120の後端120aと重なって対向するとともに、ドアアッパビーム120の上側位置からストライカ22eの上端の高さ位置まで延在して形成される。更に、上部ダブラー40は、ダブラー基部41の両側端から車室内方INに向かって折曲して形成されてピラーリンフォース23の両側部23bに沿うダブラー取付フランジ42を有する。
【0039】
上部セパレータ50は、上部ダブラー40の車体下方向Lにおける下端から車室内方INに向かってピラーインナ21側に折曲して延設される板状のセパレータ基部51を有する。このセパレータ基部51は、その延設方向に複数のビード51aを有し、このビード51aに沿って断面凹状に形成されて、セパレータ基部51の強度が向上されている。
【0040】
また、上部セパレータ50は、車室内方INに向かって折曲した先端部がピラーインナ21のインナ基部21aに沿って車体下方Lに向かって折曲して形成された当接フランジ52を有する。更に、上部セパレータ50は、セパレータ基部51の両側端から車体上方Hに向かって折曲して形成されてピラーリンフォース23の両側部23bに沿うセパレータ取付フランジ53を有する。
【0041】
上記構成を有する上部衝撃緩衝構造30は、上部ダブラー40のダブラー基部41がリンフォース基部23aの内側面に重ね合わせられ、ダブラー取付フランジ42がピラーリンフォース23の両側部23bの内側面に重ね合わせられるとともに、上部セパレータ50の当接フランジ52がピラーインナ21のインナ基部21aに当接せしめられ、セパレータ取付フランジ53がピラーリンフォース23の両側部23bの内側面に重ね合わせられて、スポット溶接等によって結合される。当接フランジ52がピラーインナ21に当接することによって、ピラーインナ21とピラーリンフォース23とによって形成された車体上下方向に延在する中空閉断面構造が車体上下方向で分断される。
【0042】
下部衝撃緩衝構造60は、上部衝撃緩衝構造30に対して間隔を介して構成される。この下部衝撃緩衝構造60は、下部ダブラー70及び下部セパレータ80を備える。下部ダブラー70は、上部セパレータ50の下方において上部ダブラー40と間隔を介して、ピラーリンフォース23の内側面でピラーリンフォース23の上下方向に亘って配設され、ピラーリンフォース23の内側面における車体前方F側に倣った形状を有する板状のダブラー基部71を有する。
【0043】
ダブラー基部71は、センタピラー20の下方側からストライカ22eの下端の高さ位置まで延在して形成される。更に、下部ダブラー70は、ダブラー基部71における車体前方F側の端部から車室内方INに向かって折曲して形成されてピラーリンフォース23の両側部23bに沿うダブラー取付フランジ72を有する。
【0044】
下部セパレータ80は、下部ダブラー70の車体上方向Hにおける上端から車室内方INに向かってピラーインナ21側に折曲して延設される板状のセパレータ基部81を有する。このセパレータ基部81は、その延設方向に複数のビード81aを有し、このビード81aに沿って断面凸状に形成されて、セパレータ基部81の強度が向上されている。
【0045】
また、下部セパレータ80は、車室内方INに向かって折曲した先端部が車体上方Hに向かって折曲されて形成された当接フランジ82を有する。更に、下部セパレータ80は、セパレータ基部51の両側端から車体下方向Lに向かって折曲して形成されてピラーリンフォース23の両側部23bに沿うセパレータ取付フランジ83を有する。
【0046】
上記構成を有する下部衝撃緩衝構造60は、下部ダブラー70のダブラー基部71がリンフォース基部23aの内側面に重ね合わせられ、ダブラー取付フランジ72がピラーリンフォース23の両側部23bの内側面に重ね合わせられるとともに、下部セパレータ80の当接フランジ82がピラーインナ21のインナ基部21aに当接せしめられ、セパレータ取付フランジ83がピラーリンフォース23の両側部23bの内側面に重ね合わせられて、スポット溶接等によって結合される。当接フランジ82がピラーインナ21に当接することによって、ピラーインナ21とピラーリンフォース23とによって形成された車体上下方向に延在する中空閉断面構造が分断される。
【0047】
このように、上部衝撃緩衝構造30と下部衝撃緩衝構造60とは、上部セパレータ50と下部セパレータ80とが間隔を介在させて互いに対向するようにピラーリンフォース23の内側面に配設される。この上部セパレータ50と下部セパレータ80との間隔は、車体1に他の車体が側方から衝突する際に衝撃荷重が入力される衝撃荷重入力点Pとして設定される。
【0048】
次に、車体1の側方から他の車体等が衝突してセンタピラー20に衝撃荷重が入力された場合のセンタピラー20の作用について、図7に基づいて説明する。なお、図7において、図面の簡略化のために、ピラーアウタ22の図示を省略する。
【0049】
図7(a)で示すように、車体1の側方から他の車体Mが衝突すると、フロントドアを介して、上部セパレータ50と下部セパレータ80との間隔に設定された衝撃荷重入力点Pに衝撃荷重Fが入力される。
【0050】
衝撃荷重入力点Pに衝撃荷重Fが入力されると、図7(b)で示すように、フロントドアを介して、衝撃荷重入力点Pにおけるピラーアウタ22が車室内方INに向かって屈曲変形する。このとき、上部ダブラー40がドアアッパビーム120の上側位置からストライカ22eの上端の高さ位置まで延在し、上部セパレータ50が上部ダブラー40の車体下方向Lにおける下端から車室内方INに向かってピラーインナ21側に折曲して延設されて、センタピラー20の衝撃荷重入力点Pから上側の部分が補剛されていることから、衝撃荷重Fによってピラーアウタ22が衝撃荷重入力点Pで屈曲変形しても、その衝撃荷重Fが衝撃荷重入力点Pより上方へ伝達することが遮断される。これにより、ピラーアウタ22の上部が、衝撃荷重入力点Pに入力された衝撃荷重Fの作用によって引っ張られて車室内方IN側に変位することが大幅に抑制される。その結果、ドアアッパビーム120が車室内方IN側に変位して車室内に進入することが抑制される。従って、車体側方衝突時における乗員の傷害値、特には胸部の傷害値の低減により、乗員の安全性を向上させることが可能となる。
【0051】
上部セパレータ50の当接フランジ52は、ピラーインナ21のインナ基部21aに当接していることから、衝撃荷重入力点Pから入力された衝撃荷重Fをピラーインナ21に効率的に伝達することができる。従って、衝撃荷重入力点Pに入力された衝撃荷重Fを効率的に遮断することができる。その結果、ピラーインナ21とピラーリンフォース23との離間距離が保持され、すなわちピラーインナ21とピラーリンフォース23とによって形成された中空閉断面構造が保持されて、ピラーアウタ22の上部の車室内方向IN側への変位を大幅に抑制することができる。
【0052】
一方で、下部衝撃緩衝構造60における下部セパレータ80が、ピラーリンフォース23側からピラーインナ21側に折曲して延設され、当接フランジ82がピラーインナ21のインナ基部21aに当接していることから、センタピラー20の下側の剛性が確保される。従って、車体1の側方から他の車体Mが衝突して衝撃荷重入力点Pに衝撃荷重Fが入力されても、ピラーインナ21とピラーリンフォース23との離間距離が保持される。その結果、センタピラー20の下側におけるピラーインナ21とピラーリンフォース23とによる中空閉断面構造の大幅な圧壊を抑制することができ、ドアロアビーム121が車室内方IN側に変位して車室内に進入することが抑制される。従って、車体側方衝突時における乗員の傷害値、特には腰部の傷害値の低減により、乗員の安全性を向上させることができる。
【0053】
従って、センタピラー20の衝撃荷重入力点Pから上側の部分が補剛されることによって、ピラーアウタ22の上部の車室内方側への変位が抑制され、センタピラー20の衝撃荷重入力点Pから下側の部分が補剛されることによって、センタピラー20の下側の大幅な圧壊が抑制され、側方衝突時の乗員の安全性の向上を更に向上させることが可能となる。
【0054】
上部セパレータ50は、上部ダブラー40の下端部を屈曲させて断面略L字状に簡易に一体形成することができる。従って、簡易な構成で、側方衝突時におけるセンタピラー20の上側部分が車室内方IN側に変位することを抑制することができる。同様に、下部セパレータ80は、下部ダブラー70の上端部を屈曲させて断面略L字状に簡易に一体形成することができる。従って、簡易な構成で、センタピラー20の下側部分の大幅な圧壊を抑制することができる。
【0055】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記実施の形態では、上部ダブラー40と上部セパレータ50とが一体に形成され、下部ダブラー70と下部セパレータ80とが一体に形成された場合を例として説明したが、上部ダブラー40と上部セパレータ50とを別体として形成し、下部ダブラー70と下部セパレータ80とを別体として形成して、上部ダブラー40と上部セパレータ50とを近接させてピラーリンフォース23の内側面に配設し、下部ダブラー70と下部セパレータ80とを近接させてピラーリンフォース23の内側面に配設することによっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
上記本実施の形態では、センタピラー20に上部衝撃緩衝構造30及び下部衝撃緩衝構造60が構成された場合を説明したが、上部衝撃緩衝構造30のみをセンタピラー20に構成することによっても、ピラーアウタ22の上部が、衝撃荷重入力点Pに入力された衝撃荷重Fに引っ張られて車室内方IN側に変位することを抑制することができ、ドアアッパビーム120が車室内方IN側に変位して車室内に進入することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 車体
2 フロントドア開口部
10 サイドシル
20 センタピラー
21 ピラーインナ
22 ピラーアウタ
23 ピラーリンフォース
23a リンフォース基部
30 上部衝撃緩衝構造
40 上部ダブラー(補強パネル)
41 ダブラー基部
50 上部セパレータ(補強脚部)
51 セパレータ基部
52 当接フランジ(フランジ)
60 下部衝撃緩衝構造
70 下部ダブラー(下部補強パネル)
71 ダブラー基部
80 下部セパレータ(下部補強脚部)
81 セパレータ基部
120 ドアアッパビーム(ドアビーム)
121 ドアロアビーム
P 衝撃荷重入力点
F 衝撃荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延在するドアビームが内設された車両用フロントドア、車体上下方向に延在し前記車両用フロントドアの閉状態で前記ドアビームの端部が重なるセンタピラーを備え、該センタピラーが車体内側に位置するピラーインナと車体外側に位置するピラーアウタとによって形成された車体側部の衝撃緩衝構造において、
前記ピラーアウタの内側面側に設けられて前記ドアビームよりも上側の高さ位置から該ドアビームの下側の前記センタピラーの中間高さ位置まで延在し、かつ側面視で前記ドアビームの端部と重なる領域を補強する補強パネルと、
該補強パネルの下端部と該下端部に対向する前記ピラーインナとの間に設けられて前記補強パネルと前記ピラーアウタとの間の離間距離を保持する補強脚部と、
を備えることを特徴とする車体側部の衝撃緩衝構造。
【請求項2】
前記補強脚部は、
前記補強パネルの下端部が屈曲して一体に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車体側部の衝撃緩衝構造。
【請求項3】
前記補強脚部の前記ピラーインナ側の端部は、
該端部を折曲して形成したフランジを有することを特徴とする請求項1または2に記載の車体側部の衝撃緩衝構造。
【請求項4】
前記補強パネルの下方位置に該補強パネルの下端部と所定の間隔を介して前記ピラーアウタの内側面に設けられ、所定長さ上下方向に延在する下部補強パネルと、
該下部補強パネルの上端部と該上端部に対向する前記ピラーインナとの間に設けられて前記補強パネルと前記ピラーアウタとの間の離間距離を保持する下部補強脚部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体側部の衝撃緩衝構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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