説明

車体側部構造

【課題】側部の剛性を確保しつつ、リアドアの乗降性を向上した自動車の側部構造を提供する。
【解決手段】スライドドアを備えた自動車において、サイドアウタパネル2と、サイドアウタパネル2の内側に配設されるロッカリインフォース5と、スライドドアのレールを格納するレールカバー6とを含む側部構造であって、ロッカリインフォース5は、フロントロッカリインフォース3と、リアロッカリインフォース4と、これらを結合する中間部材7a,7bと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体側部構造に係り、特にスライドドアを備えた自動車におけるドア開口の下縁部を形成するロッカリインフォースの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の側面における剛性確保を図る観点から、車体側面に補強部材を装着する側部構造が採用されている。図4〜図6は、このような自動車の側部構造のうち、リアドアにスライドドアを採用する自動車における側部構造10を示す。
【0003】
従来の側部構造10は、サイドアウタパネル2と、ロッカリインフォース5と、レールカバー6とを含んで構成されている。なお、側部構造10はこの他にも多くの補強部材等を含むが、本発明と関連性の薄い部材については、適宜図示及び説明を省略する。
【0004】
サイドアウタパネル2は、フロントドア開口21とリアドア開口22との間において地面に対し略垂直に設けられるセンタピラー23と、フロントドア開口21及びリアドア開口22の下側を含む自動車下縁部に設けられ、センタピラー23の下端へ繋がるロッカパネル24とを含む。ロッカパネル24におけるフロントドア開口21及びリアドア開口22を形成する上縁部には、地面と垂直なフロントオープニングフランジ25及びリアオープニングフランジ26が設けられる。
【0005】
このようなロッカパネル24の補強構造として、ロッカパネル24内側に、該ロッカパネル24の全長にわたって延びる断面略ハット状のロッカリインフォース5が配設され、このロッカリインフォース5を最大必要耐力に応じた剛性に設定することで、ロッカパネル24の車体前後方向及び車幅方向における剛性が高められている。
以上のような構成を有する自動車の側部構造が特許文献1に開示されている。この自動車はスライドドアを採用していないが、サイドアウタ(ロッカパネル)にリインフォースを接合することにより補強している。
【0006】
ところで、リアドアがスライドドアである自動車においては、スライドドアを支持する図示しないアッパアーム及びロアアームがリアドア開口22上下縁に沿って設けられた図示しないアッパレール及びロアレールにスライド可能に連結される。そのため、図4及び図5(b)に示すように、ロッカパネル24におけるリアドア開口22の下側にはこのレールを格納するためのレールカバー6が設けられる。レールカバー6は、アッパーカバー61及びロアカバー62より成り、それらの接合部の内側にレール格納部63を有する。
【特許文献1】特開2000-351387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レールカバー6はレールを格納するため車両幅方向に一定の長さを有する。そのため、ロッカパネル24及びロッカリインフォース5との干渉を避けるよう、図5(b)に図4のF−F断面として示すようにロッカパネル24の下であってロッカリインフォース5の上に配置される。しかしながら、レールカバー6をロッカリインフォース5上に配置することにより、レール格納部63の高さ分だけリアオープニングフランジ26の位置がフロントオープニングフランジ25の位置に比べて高くなるため、リアドア開口22からの乗降性が悪くなる。
【0008】
ここで、理論的にはロッカリインフォース5のうちレールカバー下部分52における垂立部52aの高さh4をフロントドア下部分51の垂立部51aの高さh3に比べて低く形成することで、リアオープニングフランジ26の高さをフロントオープニングフランジ25の高さに合わせることができる。しかし、ロッカリインフォース5は一枚の鉄板をプレスすることにより成形されるため、その設計にあたり以下のような制約を有する。
【0009】
第一に、ロッカリインフォース5は、図5(a)及び(b)にそれぞれ図4のE−E断面及びF−F断面として、また図6に斜視図として示すように、そのフロントドア下部分51及びレールカバー下部分52においてそれぞれ略ハット状の断面形状にプレス成型され、これらの中間部分には断面形状が徐々に変化する徐変部分53を有するところ、フロントドア下部分51の垂立部51aとレールカバー下部分52の垂立部52aとの高さの差a2が大きくなると、図6に示すように徐変部分53の歪み、すなわち変化量が大きくなり、その稜線53a付近に皺や割れ等が発生する。前述のようにロッカリインフォース5は強化部材であり、一定の強度が必要とされるところ、このような皺や割れがある場合、これらがロッカリインフォース5に強い力が加わったときの変形のきっかけとなり、一定の強度を確保することができない。
【0010】
第二に、ロッカリインフォース5には最大必要耐力に応じた剛性を確保すべく硬い部材が使用されるところ、上述のようなプレス成型時の皺や割れは、部材の硬度により大きく異なり、一般的に硬い部材では発生しやすい。また、硬い部材であるほど成型が困難である。
以上の理由により、高さの差a2を一定以上に大きくすることは困難であり、従来のスライドドアを採用する自動車における側部構造10においては、リアオープニングフランジ26の高さをフロントオープニングフランジ25の高さと同一にすることができなかった。
【0011】
本発明は上記課題に鑑み、リアドアがスライドドアである自動車において、側部の剛性を確保しつつ、リアドアの乗降性を向上した、自動車の側部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、スライドドアを備えた自動車における、サイドアウタパネルと、サイドアウタパネルの内側に配設されるロッカリインフォースと、スライドドアのレールを格納するレールカバーと、を含む側部構造であって、ロッカリインフォースは、フロントロッカリインフォースと、リアロッカリインフォースと、これらを結合する中間部材と、を備えたことを特徴とする。
中間部材は、フロントロッカリインフォース及びリアロッカリインフォースに固着される第一の中間部材と、第一の中間部材及びレールカバーに固着される第二の中間部材と、から成ることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロッカリインフォースが主としてフロントロッカリインフォースとリアロッカリインフォースとの二部材に分割されることにより、上述のようなプレス成型時の制限がなくなると共に、中間部材がフロントロッカリインフォース及びリアロッカリインフォースを結合することにより、剛性を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の自動車の側部構造の実施形態につき詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明の実施形態に係る自動車の側部構造1を示す。側部構造1は、サイドアウタパネル2と、ロッカリインフォース8と、レールカバー6とを含む。
ロッカリインフォース8は、フロントロッカリインフォース3と、リアロッカリインフォース4と、これらを結合する第一の中間部材7a及び第二の中間部材7bとから成る。
レールカバー6は、アッパーカバー61及びロアカバー62より成り、リアロッカリインフォース4上に配置される。
【0015】
サイドアウタパネル2は、従来同様、フロントドア開口21とリアドア開口22との間において地面に対し略垂直に設けられるセンタピラー23と、フロントドア開口21及びリアドア開口22の下側を含む自動車下縁部に設けられ、センタピラー23の下端へ繋がるロッカパネル24とを含む。ロッカパネル24におけるフロントドア開口21及びリアドア開口22を形成する上縁部には、地面と垂直なフロントオープニングフランジ25及びリアオープニングフランジ26が設けられる。
【0016】
このようなロッカパネル24の補強構造として、ロッカパネル24内側に、このロッカパネル24の全長にわたって延びる断面略ハット状のフロントロッカリインフォース3及びリアロッカリインフォース4とこれらを結合する第一の中間部材7a及び第二の中間部材7bとからなるロッカリインフォース8が配設され、このロッカリインフォース8を最大必要耐力に応じた剛性に設定することで、ロッカパネル24の車体前後方向及び車幅方向における剛性が高められている。
【0017】
フロントロッカリインフォース3は、図3(a)に図2のA−A断面として示すように、フロントドア開口21下側においてロッカパネル24に固着される、断面が外側凸略ハット状の板部材であって、その上縁においてフロントオープニングフランジ25に、垂立部3aの中程においてロッカパネル24下縁に、それぞれスポット溶接w1、w2により固着され、その下縁はサイドアウタパネル2の下縁より下に突出する。
【0018】
リアロッカリインフォース4は、図3(d)に図2のD−D断面として示すように、リアドア開口22下側においてレールカバー6を介してロッカパネル24に固着される、断面が外側凸略ハット状の板部材であって、その上縁はロアカバー62にスポット溶接w4により固着され、下縁はサイドアウタパネル2の下縁より下に突出する。
また、フロントロッカリインフォース3及びリアロッカリインフォース4は、スポット溶接w5により互いに固着されている。
【0019】
第一の中間部材7aは、図3(b)に図2のB−B断面として示すように、センタピラー23の下側において、フロントロッカリインフォース3及びリアロッカリインフォース4にそれぞれスポット溶接w7及びw8により固着され、これらを強固に結合する。
【0020】
第二の中間部材7bは、図3(c)に図2のC−C断面として示すように、センタピラー23の下側であって第一の中間部材7aの後ろ側において、アッパーカバー61及び第一の中間部材7aにそれぞれスポット溶接w10及びw11により固着されると共にアッパーカバー61の側面及びフロントロッカリインフォース3の側面にw12により固着され、これらを強固に結合する。
【0021】
以上のような構成の側部構造1によれば、フロントロッカリインフォース3、リアロッカリインフォース4及びレールカバー6はそれぞれが第一の中間部材7a及び第二の中間部材7bを介して互いに固着されると共にサイドアウタパネル2の下縁に固着され、ロッカリインフォース8全体が必要強度を確保することができるから、車体下縁部における横方向からの力に対し剛性を保つことができる。
【0022】
また、ロッカリインフォース8が主としてフロントロッカリインフォース3とリアロッカリインフォース4とに分かれているため、プレス成型の制約を受けることなく成型することができる。そのため、リアロッカリインフォース4の垂立部4aの高さh2をフロントロッカリインフォース3における垂立部3aの高さh1に比べ低く成形することができる。言い換えれば、垂立部4aの高さh2と垂立部3aの高さh1との差a1を大きくとることができるから、リアオープニングフランジ26の高さをフロントオープニングフランジ25の高さと同一にすることができる。
【0023】
以上、本発明のシート取付け構造の一実施形態につき説明したが、これは本発明を具現化する一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において車両の構造や材料の供給事情などに応じて様々な形態で実施をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による自動車の側部構造の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1の側部構造を示す正面図である。
【図3】図2の側部構造を示す断面図で、それぞれ、(a)はA−A,(b)はB−B,(c)はC−C,(d)はD−D断面を示す。
【図4】従来例の自動車の側部構造を示す正面図である。
【図5】図4の側部構造を示す断面図である。それぞれ、(a)はA−A,(b)はB−B断面を示す。
【図6】従来例のロッカリインフォースを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 側部構造
2 サイドアウタパネル
5,8 ロッカリインフォース
6 レールカバー
7a 第一の中間部材
7b 第二の中間部材
10 側部構造
21 フロントドア開口
22 リアドア開口
23 センタピラー
24 ロッカパネル
25 フロントオープニングフランジ
26 リアオープニングフランジ
51 フロントドア下部分
51a 垂立部
52 レールカバー下部分
52a 垂立部
53 徐変部分
61 アッパーカバー
62 ロアカバー
63 レール格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドドアを備えた自動車における、サイドアウタパネルと、該サイドアウタパネルの下縁内側に配設されるロッカリインフォースと、該スライドドアのレールを格納するレールカバーと、を含む側部構造であって、
上記ロッカリインフォースは、フロントロッカリインフォースと、リアロッカリインフォースと、これらを結合する中間部材と、を備えたことを特徴とする、車体側部構造。
【請求項2】
前記中間部材は、前記フロントロッカリインフォース及び前記リアロッカリインフォースに固着される第一の中間部材と、上記第一の中間部材及び前記レールカバーに固着される第二の中間部材と、から成ることを特徴とする、請求項1に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−273337(P2008−273337A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117729(P2007−117729)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】