説明

車体側部構造

【課題】車両の側面に入力された荷重を効率よく吸収し、センタピラーインナーの破断を防止し、製造が容易な車体側部構造を提供する。
【解決手段】車体側部構造11は、サイドボデー13に立設されている閉断面のセンタピラー14内に補強部材16を設け、補強部材16は、閉断面で、閉断面の形状を略台形とし、台形の平行な2つの辺部(長い底辺部51、短い底辺部52)のうち、長い底辺部51を車両12の内側へ向けて配置して、長い底辺部51に連ねて車両12前後方向へ向けてそれぞれ前支持フランジ部54、後支持フランジ部55を延ばし、前・後支持フランジ部54、55がセンタピラー14間に設けられているクロスメンバー15の左の縁56、右の縁にセンタピラー14のセンタピラーインナー37を介在させてそれぞれ、車両12側面視で、重ねられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の左右に立設されたサイドボデーやドアに入力された荷重をサイドボデーのセンタピラーから車体側に分散させる補強部材をセンタピラー内に設けた車体側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体側部構造には、サイドボデー側にドアからの荷重を伝える部位を設けたものがある。例えば、ドアの内部に車両前後方向に沿ってガードバーが配設され、一方、ドアを取付けている乗降口、すなわちサイドボデーの乗降口の枠の一部(ホイールハウスの前部側)に側面衝突時にガードバーから荷重が伝達され、且つ、ガードバーに係合するように膨出部を形成することで、ドアの車室内への侵入を抑制できるようにしたものがある(例えば、特許文献1(図1)参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)では、荷重を受ける部分、すなわち、乗降口(リヤドア開口)の内側に突出する膨出部だけでは、側面衝突時に効率よく荷重を伝達させることができないという問題がある。例えば、膨出部を形成しているプレート(ホイールハウスアウタ)が荷重で破断するおそれがある。
また、乗降口にホイールハウスの前部側が無い場合、別の荷重伝達経路を形成する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−17250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両の側面に入力された荷重を効率よく吸収し、センタピラーインナーの破断を防止し、製造が容易な車体側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車室の側壁をなすサイドボデーの中央に立設されている閉断面のセンタピラー内に補強部材を設けている車体側部構造において、補強部材は、閉断面で、その形状を略台形とし、台形の平行な2つの辺部のうち、長い底辺部を車両の内側へ向けて配置して、長い底辺部に連ねて車両前後方向へ向けてそれぞれ前支持フランジ部、後支持フランジ部を延ばし、前・後支持フランジ部がセンタピラー間に設けられているクロスメンバーの左右の縁にセンタピラーのセンタピラーインナーを介在させてそれぞれ、車両側面視で、重ねられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明では、補強部材は、押出し成形したものを用いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、補強部材は、閉断面で、その形状を略台形とし、台形の平行な2つの辺部のうち、長い底辺部を車両の内側へ向けて配置して、長い底辺部に連ねて車両前後方向へ向けてそれぞれ前支持フランジ部、後支持フランジ部を延ばし、前・後支持フランジ部がセンタピラー間に設けられているクロスメンバーの左右の縁にセンタピラーのセンタピラーインナーを介在させてそれぞれ、車両側面視で、重ねられているので、車両の外側へ向けた短い底辺部と非平行な2つの辺部によって、補強部材は車両の外側へ向けて徐々に狭くなり、車両側面に荷重が入力されると、長い底辺部へ向かって徐々に圧縮変形して衝撃を吸収する。つまり、短い底辺部並びに非平行な2つの辺部を効率よく変形させて衝撃を効率よく吸収することができる。
【0009】
また、車両側面に荷重が入力されると、補強部材の長い底辺部から延ばした前支持フランジ部、後支持フランジ部が、センタピラーインナーを介してクロスメンバーの縁を押し、縁に荷重を伝える。従って、センタピラーインナーに荷重が集中せず、センタピラーインナーの破断を防止することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、補強部材は、押出し成形したものを用いているので、例えば、材料にアルミニウム合金を用いて押し出すと、閉断面の形状を台形とし、長い底辺部に連ねて一体に前支持フランジ部及び後支持フランジ部を成形することができ、補強部材の製造、結果的に、車体側部構造の製造が容易であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る車体側部構造を採用した車両の側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】実施例に係る車体側部構造の分解図である。
【図4】実施例に係る車体側部構造の斜視図である。
【図5】実施例に係る車体側部構造の衝撃を吸収する機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
実施例に係る車体側部構造11は、図1、図2に示すように、車両12に採用され、左右のサイドボデー13のセンタピラー14と、左右のセンタピラー14間に配置しているクロスメンバー15を結合し、クロスメンバー15に補強部材16を対応させたものである。以降で具体的に説明していく。
【0014】
車両12は、車室21と、車室21の側壁をなすサイドボデー13と、床をなすアンダボデー23と、アンダボデー23のサイドシル24と、ルーフ25と、ドア26で開閉されるサイドボデー13の乗降口27と、を備える。
アンダボデー23は、クロスメンバー15と、クロスメンバー15に連続するフロアーパネル31を有する。
【0015】
サイドボデー13は、図2のインナパネル33と、アウタパネル34と、アウタパネル34の裏にホイールハウスアウター35と、センタピラー14と、を有する。
センタピラー14は、センタピラーインナー37と、サイドボデー13のアウタパネル34のピラー部38と、アウタパネル34の裏、すなわち、アウタパネル34とセンタピラーインナー37の間に設けられているセンターピラースチフナー41と、を有する。
【0016】
ドア26は、左のドアで、車両12の外方へ向き外面を形成しているドアスキン43と、ドアスキン43に取付けられて車室21へ向いているドアインナパネル44と、ドアスキン43とドアインナパネル44との間にほぼ水平に車両12前後方向(X軸方向)へ延ばして配置しているドアビーム45と、を備え、ドア26の前部46をヒンジ(図に示していない)にて、開閉自在(矢印a1の方向)に支持している。
ドアビーム45は、車両12の側面視(図1の視点)で、一端(後部)47を補強部材16に重ねているとともに、一端47をドア26の後部に取付け、ドアビーム45の他端(前部)48をドア26の前部に取付けている。
ドアスキン43とドアインナパネル44には、アルミニウム合金を採用し、ドアビーム45にアルミニウム合金製の押出し材を用いている。
【0017】
次に、車体側部構造11を主体に図1〜図4で説明する。
車体側部構造11は、車室21の側壁をなすサイドボデー13の中央に立設されている閉断面のセンタピラー14内に補強部材16を設け、補強部材16は、閉断面で、閉断面の形状を略台形(図2の視点)とし、台形の平行な2つの辺部(長い底辺部51、短い底辺部52)のうち、長い底辺部51を車両12の内側(矢印a2の方向)へ向けて配置して、長い底辺部51に連ねて車両12前後方向(X軸方向)へ向けてそれぞれ前支持フランジ部54、後支持フランジ部55を延ばし、前・後支持フランジ部54、55がセンタピラー14間に設けられているクロスメンバー15の左の縁56、右の縁57にセンタピラー14のセンタピラーインナー37を介在させてそれぞれ、車両12側面視で、重ねられている。
【0018】
補強部材16はまた、長い底辺部51に平行な短い底辺部52と、残りの平行でない2つの辺部である第1の辺部(前脚部)61と、第2の辺(後脚部)62を有する。
補強部材16は、アルミニウム合金を押出し成形したものを用いている。
【0019】
センタピラー14は、詳しくは、センタピラーインナー37とセンターピラースチフナー41とで閉断面とし、閉断面の形状を主に五つの辺を有する角形に形成している。
センタピラーインナー37は、くの字に車両12の外側(矢印a3の方向)へ押し出すように曲げられたアルミニウム合金製の部材で、乗降口27の後部に配置したフランジ部66と、フランジ部66に連ねドア26に略平行に車両12後方へ延ばした第1ピラーインナー側部67と、第1ピラーインナー側部67に連ねて曲げ、ドア26から離れる方向、言い換えると車両12の内側へ向かって傾斜させて延ばした第2ピラーインナー側部68と、を備えている。
【0020】
センターピラースチフナー41は、乗降口27の後部でセンタピラーインナー37のフランジ部66に重ねたフランジ部71と、フランジ部71に連ね外側のドア26へ向かって延びドア26の厚さの中央に達する第1ピラースチフナー側部72と、第1ピラースチフナー側部72に連ねて曲げ、ドア26に略平行に車両12後方へ延ばした第2ピラースチフナー側部73と、第2ピラースチフナー側部73に連ね第1ピラースチフナー側部72に対向して、センタピラーインナー37の第2ピラーインナー側部68にフランジ部74を重ねた第3ピラースチフナー側部75と、を有する。
センターピラースチフナー41の材質は、アルミニウム合金である。
【0021】
クロスメンバー15は、車両12の左右(X軸方向)に延びて、左右のセンタピラーインナー37に両端をそれぞれ溶接を用いて取付け、アンダボデー23のフロアーパネル31に連続している。詳しくは、図3のアルミニウム合金製の押出し材を用い、閉断面をほぼ五つの辺、すなわち、第1ビーム辺部77、第2ビーム辺部78、第3ビーム辺部81、第4ビーム辺部82、第5ビーム辺部83で形成し、第1ビーム辺部77、第2ビーム辺部78を車両12の前方へ向け、第3ビーム辺部81を車両12の後方へ向けて配置している。そして、クロスメンバー15の両端、詳しくは左の縁(端面)56、右の縁(端面)57がセンタピラーインナー37を介在させて補強部材16に対向している。
【0022】
補強部材16は、先述したが、センタピラーインナー37の第1ピラーインナー側部67、第2ピラーインナー側部68に重なり接触するようくの字状に曲げた板状の重ね部85と、重ね部85からドア26へ向かって立てた前脚部(第1の辺部)61、後脚部(第2の辺)62を有する荷重受け部86と、からなり、重ね部85の縁を溶接ビード部87で接合し、後脚部62を重ね部85の稜線部91に連続させ、且つ、傾斜させて延ばした第2ピラーインナー側部68の延長線に近似する角度で傾斜させ、前脚部61を第1ピラーインナー側部67に配置している。
すなわち、重ね部85が、長い底辺部51と、前支持フランジ部54と、後支持フランジ部55とからなり、荷重受け部86が、長い底辺部51に平行な短い底辺部52(入力部)と、短い底辺部52に連なり車両12前方へ向いている第1の辺部(前脚部)61と、短い底辺部52に連なり車両12後方へ向いている第2の辺(後脚部)62と、からなる。
【0023】
次に、本発明の実施例に係る車体側部構造11の作用を図5で説明する。図5は図2の断面図に対応する図である。
車体側部構造11では、車両12の側面に荷重が他の車両によって矢印a5のように入力されると、荷重はセンタピラー14内の補強部材16によってクロスメンバー15に直接、伝わるので、簡単な構造でセンタピラー14からクロスメンバー15まで荷重伝達を効率よく伝達することができる。
【0024】
具体的には、荷重がドア26並びにサイドボデー13に矢印a5のように入力されると、ドア26並びにサイドボデー13の変形に伴いセンタピラー14が車室21の内方(矢印a6の方向)へ向かって変形する。変形によってセンタピラー14のセンターピラースチフナー41が補強部材16に達して、補強部材16に荷重を伝達すると、補強部材16の前支持フランジ部54がクロスメンバー15の第2ビーム辺部78に荷重を矢印a7のように伝え、後支持フランジ部55がクロスメンバー15の第3ビーム辺部81に荷重を矢印a8のように伝えるので、クロスメンバー15に荷重を確実に伝えることができる。
【0025】
また、後脚部(第2の辺)62を傾斜させているので、後脚部(第2の辺)62からクロスメンバー15へ荷重を積極的に分散させることができる。その結果、第1ピラーインナー側部67と第2ピラーインナー側部68の境界(稜線部91)に荷重が集中するのを抑制することができる。つまり、強度を向上させることができる。
【0026】
ここで、仮に、後支持フランジ部55がクロスメンバー15の第3ビーム辺部81まで延びていないと仮定すると、荷重はセンタピラーインナー37が備える第1ピラーインナー側部67と第2ピラーインナー側部68の境界(稜線部91)や第2ピラーインナー側部68に集中するため、境界(稜線部91)や第1ピラーインナー側部67が二点鎖線で示すように破断する。その結果、クロスメンバー15に側面衝突の荷重(衝撃)を伝達できない。
【0027】
補強部材16がクロスメンバー15に荷重を伝達するところまで戻って説明を続ける。
補強部材16は、荷重がより大きい場合、つぶれ始め、荷重を吸収する。具体的には、後脚部(第2の辺)62は傾斜することで、補強部材16を車両12の外側へ向け徐々に小さくしているので、分力の発生によって、前脚部61(第1の辺部)62及び後脚部(第2の辺)62を徐々に滑らかにつぶすことができ、効率よく衝撃を吸収することができる。
【0028】
補強部材16は、押出し材なので、前支持フランジ部54と、後支持フランジ部55の製造が容易である。
車体側部構造11は、センターピラースチフナー41からクロスメンバー15に荷重を伝えるのは、補強部材16のみであり、部品数を少なくすることができる。
従って、部品数を少なくして簡単な構造で、センタピラー14からクロスメンバー15に荷重を伝えることができる。
【0029】
車体側部構造11では、ドア26のみに側面衝突の荷重が入力された場合、ドアビーム45が荷重を補強部材16に矢印a9のように伝えるので、既に説明したように、クロスメンバー15に荷重を伝えることができる。
また、ドア26が車室21の内方へ向かって侵入するのを抑制することができる。
さらに、補強部材16は、補強部材16の上方に吸音材92を配置する場合、吸音材92を保持するという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の車体側部構造は、センタピラー、ドアに好適である。
【符号の説明】
【0031】
11…車体側部構造、12…車両、13…サイドボデー、14…センタピラー、15…クロスメンバー、16…補強部材、21…車室、37…センタピラーインナー、51…長い底辺部、52…短い底辺部、54…前支持フランジ部、55…後支持フランジ部、56…クロスメンバーの左の縁、57…クロスメンバーの右の縁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の側壁をなすサイドボデーの中央に立設されている閉断面のセンタピラー内に補強部材を設けている車体側部構造において、
前記補強部材は、閉断面で、その形状を略台形とし、台形の平行な2つの辺部のうち、長い底辺部を車両の内側へ向けて配置して、該長い底辺部に連ねて車両前後方向へ向けてそれぞれ前支持フランジ部、後支持フランジ部を延ばし、該前・後支持フランジ部が前記センタピラー間に設けられているクロスメンバーの左右の縁に前記センタピラーのセンタピラーインナーを介在させてそれぞれ、車両側面視で、重ねられていることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記補強部材は、押出し成形したものを用いていることを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−228700(P2010−228700A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81137(P2009−81137)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】