説明

車体側部構造

【課題】センタピラーアウタ部の強度を確保し、センタピラーアウタ部の曲げ半径を小さくすることができる車体側部構造を提供する。
【解決手段】車体側部構造は、フロントピラー18のフロントピラーアウタロア部75を高張力鋼板を用いて成形した。センタピラーアウタ部45を高張力鋼板を用いて成形した。前ドア131の内部に配置されているドアビーム132を、車両側面視で、センタピラーアウタ部45及びフロントピラーアウタロア部75に重ねている。ドアビーム132は、前端134をフロントピラーアウタロア部75の上部幅広部に対向させ、後端136をセンタピラーアウタ部45の下部幅広部137に対向させる角度で斜めに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側壁のサイドパネルアウタを引っ張り強さの大きい鋼板で塑性加工した車体側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体側部構造には、車両に設けた前ドア開口の枠をなす板枠体を5枚の板材を連続させることで形成しているものがある。
前枠(フロントピラーの外板(アウタ))は2枚の板材を突き合わせたものである。
この前枠に上枠(ルーフレールのアウタ)及び下枠(サイドシルのアウタ)を突き合わせている。
そして、中央枠(センタピラーのアウタ)の上を上枠に、下を下枠に重ねて接合している。
その結果、各板材の寸法精度を必要以上に高めることなく、接合は容易になる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、中央枠(センタピラーのアウタ)に引っ張り強さの大きい鋼板を使用すると、塑性加工後に中央枠(センタピラーのアウタ)の角に亀裂が発生するおそれがある。
また、中央枠(センタピラーのアウタ)の軽量化と強度の点から、より引っ張り強さの大きい、例えば、引っ張り強さ1000MPaの鋼板を中央枠(センタピラーのアウタ)に選択すると、塑性加工に必要なプレス力は大きくなり、プレス機を大型にする必要がある。
センタピラーアウタ部の塑性加工に大きなプレス力を必要とせず、センタピラーアウタ部の強度を確保する一方、センタピラーアウタ部の角の曲げ半径を小さくしても亀裂が発生しない構造が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−243770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、センタピラーアウタ部の強度を確保し、センタピラーアウタ部の曲げ半径を小さくすることができる車体側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車室の側壁をなすサイドボデーのサイドパネルアウタを少なくとも、前ドア開口の前枠のフロントピラーアウタと、前ドア開口の後枠のセンタピラーアウタ部と、前ドア開口の上枠の車両後方へ延びるルーフレールアウタ部と、前ドア開口の下枠のサイドシルアウタ部で形成した車体側部構造において、フロントピラーアウタのフロントピラーアウタロア部を高張力鋼板を用いて成形し、センタピラーアウタ部を高張力鋼板を用いて成形し、
、前ドア開口に設けた前ドアの内部に配置されているドアビームを、車両側面視で、センタピラーアウタ部及びフロントピラーアウタロア部に重ねていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明では、センタピラーアウタ部をホットスタンプ成形で成形していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、ドアビームは、前端をフロントピラーアウタロア部の上部幅広部に対向させ、後端をセンタピラーアウタ部の下部幅広部に対向させる角度で斜めに配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明では、センタピラーアウタ部は、溝状で、底部の角をなす稜線部を前ドア開口の下枠のサイドシルアウタ部の稜線部に連続させていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明では、センタピラーアウタ部の上端は、ルーフレールアウタ部の内部の補強部材に接合していることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明では、サイドパネルアウタは、前ドア開口、後ドア開口をサイドパネルアウタ枠部にセンタピラーアウタ部を接合することで形成し、サイドパネルアウタ枠部は上部枠部と、下部枠部と、からなり、上部枠部は、フロントピラーアウタのうち前の傾斜したフロントピラーアウタアッパ部から上端のルーフレールアウタ部、後のリヤパネル部まで一体に、普通鋼板を用いて成形され、下部枠部は、フロントピラーアウタアッパ部に接合したフロントピラーアウタロア部から前ドア開口の下枠のサイドシルアウタ部まで一体に、高張力鋼板を用いて成形され、ルーフレールアウタ部の内部に、フロントピラーアウタロア部の上端に達するまで一体に延ばした、高強度の補強部材を設け、センタピラーアウタ部は、別体の高張力鋼板を用いて、塑性加工することによって成形されて、補強部材の後部に上端を接合し、サイドシルアウタ部に下端を接合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、フロントピラーアウタのフロントピラーアウタロア部を高張力鋼板を用いて成形し、センタピラーアウタ部を高張力鋼板を用いて成形し、前ドア開口に設けた前ドアの内部に配置されているドアビームを、車両側面視で、センタピラーアウタ部及びフロントピラーアウタロア部に重ねているので、センタピラーアウタ部の底部の角をなす稜線部の曲げ半径を小さくすることができ、センタピラーアウタ部に前ドア及びドアビームを近接させることができる。その結果、側面衝突したとき、センタピラーアウタ部は衝撃(荷重)を早期に受けることができる。
つまり、ドアビームからセンタピラーアウタ部に衝撃(荷重)を伝える時間を短縮することができるという利点がある。
【0013】
請求項2に係る発明では、センタピラーアウタ部をホットスタンプ成形で成形しているので、センタピラーアウタ部をホットスタンプ成形によって溝状に成形すると、底部の角をなす稜線部の曲げ半径を小さくすることできる。その結果、ドアビームとのラップ代を増大でき、側面衝突したときにセンタピラーに伝える衝撃(荷重)を大きくすることができる。
つまり、側面衝突したとき、センタピラーは衝撃(荷重)を十分に受けるという利点がある。
【0014】
請求項3に係る発明では、ドアビームは、前端をフロントピラーアウタロア部の上部幅広部に対向させ、後端をセンタピラーアウタ部の下部幅広部に対向させる角度で斜めに配置されているので、フロントピラーアウタロア部及びセンタピラーアウタ部とのラップ代の一層の増大とドアビームの中央部が相手車両の被衝突部に配置され、側面衝突時の衝撃(荷重)をより分散することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、センタピラーアウタ部は、溝状で、底部の角をなす稜線部を前ドア開口の下枠のサイドシルアウタ部の稜線部に連続させているので、側面衝突時の衝撃(荷重)をセンタピラーアウタ部から下枠(サイドシル)に連続的に分散させることができる。
【0016】
請求項5に係る発明では、センタピラーアウタ部の上端は、ルーフレールアウタ部の内部の補強部材に接合しているので、側面衝突時の衝撃(荷重)をセンタピラーアウタ部からルーフレールに連続的に分散させることができる。
【0017】
請求項6に係る発明では、サイドパネルアウタ枠部の上部枠部は、フロントピラーアウタのうち前の傾斜したフロントピラーアウタアッパ部から上端のルーフレールアウタ部、後のリヤパネル部まで一体に、普通鋼板を用いて成形され、下部枠部は、フロントピラーアウタアッパ部に接合したフロントピラーアウタロア部から前ドア開口の下枠のサイドシルアウタ部まで一体に、高張力鋼板を用いて成形され、ルーフレールアウタ部の内部に、フロントピラーアウタロア部の上端に達するまで一体に延ばした、高強度の補強部材を設け、センタピラーアウタ部は、別体の高張力鋼板を用いて、塑性加工することによって成形されて、補強部材の後部に上端を接合し、サイドシルアウタ部に下端を接合しているので、前ドア開口の枠部(ルーフレール内の高強度の補強部材、980MPaのフロントピラーアウタロア部とサイドシルアウタ部、590MPaから1180MPaまでの範囲のセンタピラー)を高強度枠体としたサイドパネルアウタを形成することができる。
その結果、従来、必要であったセンタピラー、サイドシル、フロントピラーアウタロアの内部に設けていた補強部材を廃止し、軽量化を図ることができ、且つ、車体の強度を高めることができる。
【0018】
また、ルーフレールアウタ部を引っ張り強さが少なくとも270MPaの鋼板を用いているので、プレス機で塑性加工したルーフレールアウタ部の角の曲げ半径を小さくすることができる。その結果、前ドアとの隙間を小さくすることができ、外観の見栄えが向上するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る車体側部構造を採用した車体の概要説明図である。
【図2】実施例に係る車体側部構造のサイドパネルアウタの斜視図である。
【図3】実施例に係るサイドパネルアウタの分解図である。
【図4】図2の4部詳細図である。
【図5】図2の5部詳細図である。
【図6】実施例に係る車体側部構造のセンタピラーの分解図である。
【図7】図1の7−7線断面図である。
【図8】図1の8−8線断面図である。
【図9】図1の9−9線断面図である。
【図10】図1の10−10線断面図である。
【図11】実施例に係る車体側部構造の前ドアを示す側面図で、(a)は概要図、(b)詳細図である。
【図12】実施例に係るセンタピラーと前ドアとの関係を示す斜視図である。
【図13】図12の13−13線断面図である。
【図14】図11(a)の14−14線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
実施例に係る車体側部構造は、図1〜図3に示すように、車体11に採用されている。
車体側部構造は、主に、サイドパネルアウタ14を形成し、このサイドパネルアウタ14に部材を接合している。
【0022】
まず、サイドパネルアウタ14に関し少し触れた後、戻って車体側部構造を説明していく。
【0023】
サイドパネルアウタ14は、下をカバーするサイドシルガーニッシュ15(図3)を有する。
そして、サイドパネルアウタ14はサイドシルガーニッシュ15を取付け前後に延びるサイドシル16、このサイドシル16から立設しているフロントピラーロア17のアウタを含む。
【0024】
さらに、フロントピラーロア17を含み立設しているフロントピラー18のアウタを含む。
サイドパネルアウタ14の内側にサイドパネルインナ19(図2)を設けている。
このサイドパネルインナ19の下部をなすサイドシルインナ21がサイドシル16の内側に設けられている。
【0025】
図2に示すサイドパネルインナ19において、22はフロントピラーロア17のフロントピラーロアインナ、25はセンタピラーインナ、26はリヤピラーインナ、27はフロントピラーインナである。
【0026】
ここで、車体に戻って説明していく。
車体11は、側壁をなすサイドボデー31と、車室32の床(アンダボデー33)と、ルーフ34と、を備える。
【0027】
車体側部構造は、サイドボデー31にアンダボデー33、ルーフ34を取付けている。
サイドボデー31は、下のサイドシル16、前のフロントピラー18、上のルーフレール36、中央のセンタピラー37、後のリヤピラー38、後のホイールハウス41を備える。
【0028】
フロントピラー18は、図2、図10に示す通り、フロントピラーアウタ43と、フロントピラーインナ27と、を備える。
センタピラー37は、図6に示す通り、センタピラーアウタ部45と、センタピラーインナ25と、を備える。
【0029】
ルーフ34は、図7に示す通り、中央ルーフアーチ47、ルーフパネル48を備える。
ルーフレール36は、図7、図8に示す通り、ルーフレールアウタ51、ルーフレールインナ52、高強度の補強部材53を備える。
ルーフレールアウタ51の中央には延長部54を形成している。
【0030】
サイドシル16は、図9に示す通り、サイドシルアウタ56と、サイドシルインナ21と、を備える。サイドシルアウタ56には、サイドシルガーニッシュ15を取付けている。
【0031】
次に、車体側部構造を図1〜図14で説明する。
車体側部構造は、車室32の側壁をなすサイドボデー31に車室32の屋根をなすルーフ34を接合し、サイドボデー31に車室32の床をなすアンダボデー33を接合した。
【0032】
サイドボデー31のサイドパネルアウタ14(図2)は、前ドア開口63、後ドア開口64をサイドパネルアウタ枠部65(図3)にセンタピラーアウタ部45を接合することで形成している。
サイドパネルアウタ枠部65は、図3に示す上部枠部67と、下部枠部68と、からなる。
【0033】
上部枠部67は、図3に示す通り、前の傾斜したフロントピラーアウタアッパ部71から上端のルーフレールアウタ部72、後のリヤパネル部73まで一体に、普通鋼板(冷間圧延鋼板のうち引っ張り強さが少なくとも270MPaの鋼板)を用いて成形されている。
【0034】
下部枠部68は、図3に示す通り、フロントピラーアウタアッパ部71に接合したフロントピラーアウタロア部75からサイドシルアウタ部76まで一体に、高張力鋼板(冷間圧延鋼板のうち引っ張り強さが少なくとも980MPaの鋼)板を用いて成形されている。
【0035】
ルーフレールアウタ部72の内部に、フロントピラーアウタロア部75の上端78(図5も参照)に達するまで一体に延ばした、高強度の補強部材(引っ張り強さが少なくとも980MPa)53を設けた。
【0036】
センタピラーアウタ部45は、別体の高張力鋼板(鋼板のうち引っ張り強さが少なくとも590MPaから1180MPaまでの範囲の鋼板)を用いて、塑性加工することによって成形されて、高強度の補強部材53の後部81に上端82を接合し(図7)、下のサイドシルアウタ部76に下端83を接合した。
【0037】
さらに、サイドシルアウタ部76に内側のサイドシルインナ21(図9、図13)を接合することで、前後に延びる閉断面形状を形成している。
その上、サイドボデー31では、図3、図4に示す通り、サイドパネルアウタ14のリヤパネル部73に設けたサイドシル接合部105をサイドシルアウタ部76に重ねている。
【0038】
次に、センタピラーアウタ部45を説明する。
センタピラーアウタ部45は、引っ張り強さが少なくとも1180MPaの鋼板を用いてホットスタンプ成形で、塑性加工することによって成形されている。
【0039】
センタピラーアウタ部45は、予めホットスタンプ成形で塑性加工されている。
一枚の鋼板から切り出したプレス素材を使用している。
ホットスタンプ成形は、高温に加熱した鋼板を急速冷却することによって、引っ張り強さを1500MPa程度にしている。
【0040】
また、センタピラーアウタ部45にテーラードの鋼板を採用してもよい。
センタピラーアウタ部45は、引っ張り強さが少なくとも590MPaから1180MPaまでの範囲のテーラードの鋼板を用いて、塑性加工することによって成形されている。
2種類の鋼板を突き合わせ接合したテーラードの鋼板から切り出したテーラードのプレス素材を使用する。例えば、引っ張り強さが少なくとも590MPaの鋼板と、引っ張り強さが少なくとも1180MPaの鋼板を接合する。
【0041】
テーラードの鋼板を採用した場合、センタピラーアウタ部45の中央から上端82まで引っ張り強さが少なくとも1180MPaの鋼板を採用するのが望ましい。
【0042】
次に、サイドパネルアウタ14の組立て要領を図3〜図7で簡単に説明する。
まず、上部枠部67の枠前端(フロントピラーアウタアッパ部71)に下部枠部68の枠前端(フロントピラーアウタロア部75)を重ねる(図5)。
ほぼ同時に、上部枠部67の枠後端(リヤパネル部73)に下部枠部68の枠後端(サイドシルアウタ部76)を重ねる(図4)。
引き続き、重ねた各前・後端にスポット溶接を施すことによって接合する。
なお、スポット溶接に加えリベットで接合してもよく、スポット溶接せずにリベットのみで接合してもよい。
【0043】
フロントピラーアウタアッパ部71には、図3、図5に示す通り、上接合部107を形成した。
上接合部107は、断面形状がコ字形で、車両側面視、三角形で、中央に三角開口部108を開けている。そして、底辺部111が車両前後方向に長い。
底辺部111に連なる接合本体部112をフロントピラーアウタロア部75に重ねて接合する。
【0044】
図4のリヤパネル部73のサイドシル接合部105をサイドシルアウタ部76に接合する。
【0045】
なお、上部枠部67(フロントピラーアウタアッパ部71、ルーフレールアウタ部72、リヤパネル部73を一体)に引っ張り強さが少なくとも270MPaの鋼板を用いると、降伏点を低く設定し、塑性加工の加工性が向上する。
【0046】
次に、ルーフレール36に高強度の補強部材53を組付ける要領を図3、図7、図8で簡単に説明する。
補強部材53を、図8に示す通り、ルーフレール36の内部に取り付ける。
具体的には、補強部材53の内フランジ114、外フランジ115をそれぞれルーフレールアウタ51(のルーフレールアウタ部72)とルーフレールインナ52で挟むことで、内フランジ114、外フランジ115に重ねる。重ねた部位にスポット溶接を施すことによって接合する。
さらに、高強度の補強部材53の前端117をフロントピラーアウタロア部75に接合する(図5)。
【0047】
なお、高強度の補強部材53の引っ張り強さを少なくとも980MPaに設定すると、下部枠部68と同等の強度、剛性を有する。
【0048】
次に、サイドパネルアウタ枠部65にセンタピラーアウタ部45を組付ける要領を図3〜図7で簡単に説明する。
まず、図3のサイドパネルアウタ枠部65のルーフレールアウタ部72にセンタピラーアウタ部45の上端82を図3、図7に示す矢印a1のように差し込む。その上端82をルーフレールアウタ部72の延長部54に重ねる。
【0049】
一方、センタピラーアウタ部45の下端83をサイドシルアウタ部76上に図3、図6に示す矢印a2のように重ねる。重ねた上・下端82、83にスポット溶接を施すことによって接合する。
その結果、センタピラーアウタ部45の組付け作業は容易になる。
【0050】
センタピラーアウタ部45にセンタピラーインナ25(図6)を矢印a3のように取付ける(図7)。
【0051】
次に、車体側部構造の主要構成を図1〜図14で説明する。
図14は、車体側部構造の主要構成のみを示している。
なお、既に説明したものでも理解を容易にするため説明した。
【0052】
車体側部構造は、車室32の側壁をなすサイドボデー31のサイドパネルアウタ14を少なくとも、前ドア開口63の前枠(フロントピラー18)のフロントピラーアウタ43と、前ドア開口63の後枠(センタピラー37)のセンタピラーアウタ部45と、前ドア開口63の上枠(ルーフレール36)の車両後方へ延びるルーフレールアウタ部72と、前ドア開口63の下枠(サイドシル16)のサイドシルアウタ部76で形成した。
【0053】
フロントピラーアウタ43のフロントピラーアウタロア部75を高張力鋼板を用いて成形した。
センタピラーアウタ部45を高張力鋼板を用いて成形した。
前ドア開口63に設けた前ドア131の内部に配置されているドアビーム132を、車両側面視(図11(a)の視点)で、センタピラーアウタ部45及びフロントピラーアウタロア部75に重ねている。
【0054】
ドアビーム132は、前端134をフロントピラーアウタロア部75の上部幅広部135(図2、図3)に対向させ、後端136をセンタピラーアウタ部45の下部幅広部137(図11)に対向させる角度で斜めに配置されている。
【0055】
センタピラーアウタ部45は、断面ハット状の溝状で、底部141の角をなす稜線部142(図6も参照)を前ドア開口63の下枠(サイドシル16)のサイドシルアウタ部76の前後に延びる稜線部144に連続させている。
【0056】
センタピラーアウタ部45の上端82は、ルーフレールアウタ部72の内部の補強部材53に接合している(図7)。
【0057】
サイドパネルアウタ14は、前述したが、図2、図3に示す通り、前ドア開口63、後ドア開口64をサイドパネルアウタ枠部65にセンタピラーアウタ部45を接合することで形成している。
サイドパネルアウタ枠部65は上部枠部67と、下部枠部68と、からなる(図3)。
【0058】
上部枠部67は、フロントピラーアウタ43のうち前の傾斜したフロントピラーアウタアッパ部71から上端のルーフレールアウタ部72、後のリヤパネル部73まで一体に、普通鋼板を用いて成形されている。
【0059】
下部枠部68は、フロントピラーアウタアッパ部71に接合したフロントピラーアウタロア部75から前ドア開口63の下枠(サイドシル16)のサイドシルアウタ部76まで一体に、高張力鋼板(冷間圧延鋼板のうち引っ張り強さが少なくとも980MPaの鋼板)を用いて成形されている。
【0060】
ルーフレールアウタ部72の内部に、フロントピラーアウタロア部75の上端78に達するまで一体に延ばした、高強度の補強部材(引っ張り強さが少なくとも980MPa)53を設けた。
【0061】
センタピラーアウタ部45は、別体の高張力鋼板(鋼板のうち引っ張り強さが少なくとも590MPaから1180MPaまでの範囲の鋼板)を用いて、塑性加工することによって成形されて、高強度の補強部材53の後部81に上端82を接合し、サイドシルアウタ部76に下端83を接合している。
【0062】
前ドア131は、図13、図14に示す通り、ドアアウタパネル147と、ドアインナパネル148と、ドアビーム132と、を備える。
ドアビーム132は、前端134に第1ブラケット151を取付け、この第1ブラケット151をドアインナパネル148の前端の近傍に取付けている。後端136に第2ブラケット152を取付け、この第2ブラケット152をドアインナパネル148の後端の近傍に取付けている。
【0063】
さらに、車両側面視(図11(a)の視点)で、第1ブラケット151をフロントピラーアウタロア部75の上部幅広部135に重ね(図14)、第2ブラケット152をセンタピラーアウタ部45の下部幅広部137に重ねている(図13)。
【0064】
次に、車体側部構造の作用を説明する。
車体側部構造では、側面衝突など前ドア131に荷重が入力される接触で、前ドア131に荷重が入力されると、ドアビーム132は車室32内へ向かって押し込まれて、フロントピラーアウタロア部75の上部幅広部135及びセンタピラーアウタ部45の下部幅広部137に当接して荷重を伝える。
【0065】
センタピラーアウタ部45は、従来の角(図13の二点鎖線)の曲げ半径に比べ、角(稜線部142)の曲げ半径rが小さいので、前ドア131が近接し、且つドアビーム132に重なる量が多く、側面衝突したとき、センタピラー37(センタピラーアウタ部45)は衝撃(荷重)を十分受けることができる。
【0066】
センタピラーアウタ部45は、図6に示す通り、側面衝突などの衝突で荷重が矢印a6のように入力されると、荷重を稜線部142から前ドア開口63の下枠(サイドシル16)のサイドシルアウタ部76の稜線部144に矢印a7のように連続的に伝える。従って、側面衝突時の衝撃(荷重)をサイドシル16に連続的に分散させることができる。
【0067】
センタピラーアウタ部45の上端82は、図6に示す通り、側面衝突などの衝突で荷重が矢印a6のように入力されると、荷重を図7に示すルーフレールアウタ部72の内部の補強部材53に矢印a8のように伝える。従って、側面衝突時の衝撃(荷重)をルーフレール36に矢印a8のように連続的に分散させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の車体側部構造は、車両に好適である。
【符号の説明】
【0069】
14…サイドパネルアウタ、16…下枠(サイドシル)、18…前枠(フロントピラー)、31…サイドボデー、32…車室、36…上枠(ルーフレール)、37…後枠(センタピラー)、43…フロントピラーアウタ、45…センタピラーアウタ部、53…高強度の補強部材、63…前ドア開口、64…後ドア開口、65…サイドパネルアウタ枠部、67…上部枠部、68…下部枠部、71…フロントピラーアウタアッパ部、72…ルーフレールアウタ部、73…リヤパネル部、75…フロントピラーアウタロア部、76…サイドシルアウタ部、78…フロントピラーアウタロア部の上端、81…高強度の補強部材の後部、82…センタピラーアウタ部の上端、83…センタピラーアウタ部の下端、131…前ドア、132…前ドアのドアビーム、134…ドアビームの前端、135…フロントピラーアウタロア部の上部幅広部、136…ドアビームの後端、137…センタピラーアウタ部の下部幅広部、141…底部、142…稜線部、144…サイドシルアウタ部の稜線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の側壁をなすサイドボデーのサイドパネルアウタを少なくとも、前ドア開口の前枠のフロントピラーアウタと、前記前ドア開口の後枠のセンタピラーアウタ部と、前記前ドア開口の上枠の車両後方へ延びるルーフレールアウタ部と、前記前ドア開口の下枠のサイドシルアウタ部で形成した車体側部構造において、
前記フロントピラーアウタのフロントピラーアウタロア部を高張力鋼板を用いて成形し、
前記センタピラーアウタ部を高張力鋼板を用いて成形し、
前記前ドア開口に設けた前ドアの内部に配置されているドアビームを、車両側面視で、前記センタピラーアウタ部及び前記フロントピラーアウタロア部に重ねていることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記センタピラーアウタ部をホットスタンプ成形で成形していることを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記ドアビームは、前端を前記フロントピラーアウタロア部の上部幅広部に対向させ、後端を前記センタピラーアウタ部の下部幅広部に対向させる角度で斜めに配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記センタピラーアウタ部は、溝状で、底部の角をなす稜線部を前記前ドア開口の下枠のサイドシルアウタ部の稜線部に連続させていることを特徴とする請求項3記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記センタピラーアウタ部の上端は、前記ルーフレールアウタ部の内部の補強部材に接合していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項6】
前記サイドパネルアウタは、前記前ドア開口、後ドア開口をサイドパネルアウタ枠部に前記センタピラーアウタ部を接合することで形成し、
前記サイドパネルアウタ枠部は上部枠部と、下部枠部と、からなり、
前記上部枠部は、前記フロントピラーアウタのうち前の傾斜したフロントピラーアウタアッパ部から上端の前記ルーフレールアウタ部、後のリヤパネル部まで一体に、普通鋼板を用いて成形され、
前記下部枠部は、前記フロントピラーアウタアッパ部に接合したフロントピラーアウタロア部から前記前ドア開口の下枠のサイドシルアウタ部まで一体に、高張力鋼板を用いて成形され、
前記ルーフレールアウタ部の内部に、前記フロントピラーアウタロア部の上端に達するまで一体に延ばした、高強度の補強部材を設け、
前記センタピラーアウタ部は、別体の高張力鋼板を用いて、塑性加工することによって成形されて、前記補強部材の後部に上端を接合し、前記サイドシルアウタ部に下端を接合していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−195110(P2011−195110A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66799(P2010−66799)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】