説明

車体側部構造

【課題】車体前部から入力された前突荷重を、サイドドアを通して車体後部に効率良く伝達することのできる車体側部構造を提供する。
【解決手段】荷重伝達ブロック22とサイドドア2内のドアビーム17の間に第2の荷重伝達ブロック30を配置する。荷重伝達ブロック22、第2の荷重伝達ブロック30、ドアビーム17の三者は車体前後方向で直線的に並ぶように配置する。第2の荷重伝達ブロック30は、フロントピラー6のピラーアウタパネル6Aとスティフナ29の間の閉断面内に収容配置する。サイドドア2は、蝶番ヒンジを介してフロントピラー6の後面に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドア開口部の前縁のフロンピラーにサイドドアが回動可能に取り付けられる車体側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体側部のドア開口部の前縁にはフロントピラーが設けられ、そのフロントピラーにドアヒンジを介してサイドドアが回動自在に取り付けられている。
ところで、車両の側面衝突(以下、「側突」と呼ぶ。)の対策技術として、サイドドアの内部に車体前後方向に延出するドアビームが設けられ、車体側方からの入力荷重をサイドドア内のドアビームによって受け止めるものがある。
【0003】
この種の車体側部構造として、側突対策のためのドアビームを、前面衝突時等に車体前部から入力される衝撃荷重(以下、「前突荷重」と呼ぶ。)を車体後部にスムーズに伝達するために利用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この車体側部構造は、フロントピラーの前面側に前突荷重を後方に伝達するための荷重伝達部材(補強材)が設置され、フロントピラーの側面(車外側に臨む側面)の前記荷重伝達部材の近傍にドアヒンジが取り付けられるとともに、そのドアヒンジの回動片にサイドドア側のドアビームの前端部が結合されている。
この車体側部構造では、車体前部に前突荷重が入力されると、その荷重が荷重伝達部材を介してフロントピラーに伝達され、さらにその荷重がサイドシルやルーフサイドレール等の車体骨格部材に伝達されると同時に、ドアヒンジとドアビームを介して車体後部に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−206244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来の車体側部構造は、荷重伝達部材がフロントピラーの前面側に設置されるのに対し、ドアヒンジの車体取付け部がフロントピラーの側面に取り付けられ、さらに、サイドドアのドアビームがドアヒンジの車体取付け部の車幅方向外側にオフセットして配置されているため、荷重伝達部材に入力された前突荷重をドアビームに効率良く伝達する(分散させる)ことが難しい。
【0006】
特に、ドアビームは側突荷重を早期に受け止める必要上、できる限りサイドドアの車幅方向外側位置に配置しなければならない。このため、サイドドアのドアビームは、ドアヒンジの車体取付け部に対して車幅方向外側にオフセットせざるを得ず、前突荷重の入力時にドアビームに荷重を効率良く伝達することが難しくなる。このため、サイドシル等の車体骨格部材をその分補強しなければならず、車体の軽量化の観点からこの点の改善が望まれている。
【0007】
そこでこの発明は、車体前部から入力された前突荷重を、サイドドアを通して車体後部に効率良く伝達することのできる車体側部構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、車体のドア開口部(例えば、後述の実施形態におけるドア開口部4)に設置されるサイドドア(例えば、後述の実施形態におけるサイドドア2)の内部に、車体前後方向に延出して車体側方からの入力荷重を受け止めるドアビーム(例えば、後述の実施形態におけるドアビーム17)が設けられ、前記サイドドアの前部が前記ドア開口部の前縁のフロントピラー(例えば、後述の実施形態におけるフロントピラー6)にドアヒンジ(例えば、後述の実施形態における蝶番ヒンジ15)を介して回動自在に取り付けられるとともに、前記フロントピラーの前方に、車体前部からの入力荷重を後方に伝達する荷重伝達部材(例えば、後述の実施形態における荷重伝達ブロック22)が設けられている車体側部構造において、前記荷重伝達部材とドアビームの間に第2の荷重伝達部材(例えば、後述の実施形態における第2の荷重伝達ブロック30)が設けられるとともに、この第2の荷重伝達部材と前記荷重伝達部材とドアビームとが車体前後方向で重なるように配置され、前記ドアヒンジは、前記フロントピラーの後面に取り付けられるベースプレート(例えば、後述の実施形態におけるベースプレート35)と、このベースプレートの車幅方向外側の端部に設けられたヒンジ軸(例えば、後述の実施形態におけるヒンジ軸37)と、このヒンジ軸を介して前記ベースプレートに回動自在に連結される一方で前記サイドドアの前端面に固定される回動プレート(例えば、後述の実施形態における回動プレート36)と、を備えた蝶番ヒンジによって構成されていることを特徴とする。
これにより、通常使用時にサイドドアを開閉する際には、フロントピラーの後面とサイドドアの間に設けられた蝶番ヒンジによってサイドドアが開閉される。また、車体前部から前突荷重が荷重伝達部材に入力されると、その荷重は第2の荷重伝達部材を通してサイドドア内のドアビームに直線的に伝達される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体側部構造において、前記フロントピラーには、ピラーアウタパネル(例えば、後述の実施形態におけるピラーアウタパネル6A)の裏面にスティフナ(例えば、後述の実施形態におけるスティフナ29)が接合されて閉断面の補強部(例えば、後述の実施形態における補強部31)が設けられ、この補強部の閉断面内に前記第2の荷重伝達部材が配置されていることを特徴とする。
これにより、前突荷重が荷重伝達部材に入力されると、その荷重はフロントピラーの閉断面の補強部と、その内部の第2の荷重伝達部材を介してサイドドア内のドアビームに伝達される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車体側部構造において、前記フロントピラーには、ピラーアウタパネル(例えば、後述の実施形態におけるピラーアウタパネル106A)の裏面にスティフナ(例えば、後述の実施形態におけるスティフナ129)が接合された補強部(例えば、後述の実施形態における補強部131)が設けられ、この補強部の車外側の側面に前記第2の荷重伝達部材(例えば、後述の実施形態における第2の荷重伝達ブロック30)が取り付けられていることを特徴とする。
これにより、前突荷重が荷重伝達部材に入力されると、その荷重は補強部に取り付けられた第2の荷重伝達部材を介してサイドドア内のドアビームに伝達される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体側部構造において、前記荷重伝達部材は、前記第2荷重伝達部材の前方に位置される基部(例えば、後述の実施形態における基部27)と、この基部から車幅方向内側に延出して前記フロントピラーの前面に当接する内側延長部(例えば、後述の実施形態における内側延長部28)と、を備え、前記内側延長部の崩壊荷重が前記基部の崩壊荷重よりも小さく設定されていることを特徴とする。
これにより、車体前部から前突荷重が入力されると、荷重伝達部材では基部と内側延長部を合わせた車幅方向の広い領域で荷重が受け止められるようになる。このとき、比較的大きな荷重が、荷重伝達部材の基部を経て第2の荷重伝達部材からドアビームに伝達され、比較的小さな荷重が、荷重伝達部材の内側延長部を経てフロントピラーに伝達される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体側部構造において、前記蝶番ヒンジは、前記ドアビームと上下方向でオフセットした位置に配置されていることを特徴とする。
これにより、蝶番ヒンジが第2の荷重伝達部材とドアビームの間の前突荷重の伝達経路から外れ、前突荷重が蝶番ヒンジに直接入力されにくくなる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、車体前部から荷重伝達部材に入力された前突荷重が第2の荷重伝達部材を通してサイドドア内のドアビームに直線的に伝達される構造とされているため、車体前部から入力された前突荷重を、サイドドア内の第2のビーム部材を通して車体後部に効率良く伝達することができる。したがって、この発明によれば、前突荷重の入力時に、サイドシル等の車体骨格部材に分担される伝達荷重を低減できることから、車体骨格部材の過大な補強を無くし車両の軽量化を図ることができる。
また、この発明によれば、ドアヒンジが、前突荷重の入力時に変形の生じにくい蝶番ヒンジによって構成されているため、サイドドアのドア開閉性を確保することができる。さらに、蝶番ヒンジはフロントピラーとサイドドアの前端面の間の比較的狭いスペースにコンパクトに配置することができるため、フロントピラーの断面積の拡大や車室内スペースの拡大を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、ピラーアウタパネルとスティフナによる閉断面の内側に第2の荷重伝達部材が配置されることから、ドアビームに対する荷重伝達の一部を補強部の閉断面構造に担わせ、その分、第2の荷重伝達部材の小型・軽量化を図ることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、ピラーアウタパネルとスティフナによる補強部の車幅方向外側の側面に第2の荷重伝達部材が取り付けられることから、車体に対する第2の荷重伝達部材の取り付けを容易にして、生産効率の向上を図ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、車体前部から入力された前突荷重が荷重伝達部材の基部と内側延長部を合わせた車幅方向の広い領域で受け止められることから、前突荷重を広く分散させることができ、しかも、比較的大きな荷重が荷重伝達部材の基部を経て第2の荷重伝達部材からドアビームに伝達され、比較的小さな荷重が荷重伝達部材の内側延長部を経てフロントピラーに伝達されることから、サイドシル等の車体骨格部材の荷重分担より減らし、車両重量のさらなる低減を図ることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、蝶番ヒンジがドアビームと上下方向でオフセットした位置に配置されることから、蝶番ヒンジへの前突荷重の直接入力を低減し、サイドドアのドア開閉性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の第1の実施形態の車両の側面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の車両の図1のA−A断面に対応する拡大断面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の車両の図1のB−B断面に対応する拡大断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の車両の図1のB−B断面に対応する拡大断面図である。
【図5】この発明の第2の実施形態の車両の図1のA−A断面に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面において、矢印FrとRrは、それぞれ車両1の前方と後方を指し、矢印RとLは、それぞれ車両1の左側方と右側方を指すものとする。また、以下の説明においては、特別に断らない限り、「前」と「後」は車体に対しての前後を意味するものとする。また、以下では、車両1の左側の側部の構造について説明するが、車両1の右側の側部も同様の構造とされている。
【0020】
最初に、図1〜図4に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態の車体側部構造を採用した車両1の一部の部品を取り去った左側面を示す図である。
車両1は、4ドアのセダン型車両であり、車体の側部には前後のサイドドア2,3が取り付けられるドア開口部4,5が設けられている。前部側のドア開口部4の前縁にはフロントピラー6が配置され、後部側のドア開口部5の後縁にはリヤピラー7が配置されており、前後のドア開口部4,5の間にはセンターピラー8が配置されている。また、フロントピラー6,センターピラー8,リヤピラー7の各上端部と下端部は、車体前後方向に延出するルーフサイドレール9とサイドシル10によって連結されている。
【0021】
フロントピラー6の前方側には、ルーフサイドレール9の前部に連続するように、フロントサイドフレーム11が前方に延出している。フロントサイドフレーム11の下方には、前輪Wfを配置するためのホイールハウス12が設けられている。また、リヤピラー7の後部下方には、後輪Wrを配置するためのホイールハウス13が設けられている。
【0022】
前後の各サイドドア2,3は、ドア本体2A,3Aにそれぞれドアガラス14が昇降自在に支持され、各ドア本体2A,3Aの前端部が後述するドアヒンジ15を介してフロントピラー6とセンターピラー8にそれぞれ回動自在に取り付けられている。また、前後の各サイドドア2,3のドア本体2A,3Aの内部には、車体前後方向に延出して側突荷重を受け止めるドアビーム17,18が設置されている。各ドアビーム17,18はドア本体2A,3Aの高さ方向の中央位置よりも下方に偏倚し、かつ、ドア本体2A,3Aの厚み方向の中央位置よりも車幅方向外側に偏倚した位置に配置されている。この実施形態の場合、各ドアビーム17,18の前後の端部にブラケット20,21が一体に取り付けられ、各端部がブラケット20,21を介してドア本体2A,3Aの前後の端面に結合されている。
【0023】
また、フロントピラー6の下方側の前部には、前突荷重の入力時に、前輪Wfの後方移動を規制するように前輪Wfのタイヤ面に後方側から当接する荷重伝達ブロック22(荷重伝達部材)が設けられている。
【0024】
図2は、図1のA−A断面に対応する車両1の左側側部の拡大断面図である。
荷重伝達ブロック22は、車体前後方向に延出する複数の筒状断面が並列に配置されたハニカム構造の樹脂ブロックによって構成されている。この荷重伝達ブロック22の車体前後方向の厚みは一定ではなく、車幅方向外側領域の厚みが車幅方向内側領域の厚みよりも厚くなっている。この実施形態の場合、荷重伝達ブロック22の肉厚の厚い車幅方向外側の領域が基部27とされ、肉厚の薄い車幅方向内側の領域が基部27から延出する内側延長部28とされている。そして、荷重伝達ブロック22の基部27は内側延長部28に比較して肉厚が厚いことから、内側延長部28に対して崩壊荷重が大きくなっている。
荷重伝達ブロック22の基部27と内側延長部28はフロントピラー6の前面に重合状態で固定されるが、基部27は、フロントピラー6内の後述する第2の荷重伝達ブロック30(第2の荷重伝達部材)の前方に配置され、内側延長部28は、フロントピラー6の第2の荷重伝達ブロック30よりも車幅方向内側領域に配置される。
【0025】
図2に示すように、フロントピラー6は、断面略コ字状のピラーアウタパネル6Aの車幅方向内側にピラーインナパネル6Bが接合されて閉断面構造とされているが、ピラーアウタパネル6Aの裏面のうちの、少なくとも荷重伝達ブロック22の後方側に位置される部位には、断面略コ字状のスティフナ29が接合され、そのスティフナ29とピラーアウタパネル6Aによって閉断面の補強部31が構成されている。
なお、この実施形態においては、フロントピラー6全体がサイドドア2の車外側面の近傍まで車幅方向外側に迫り出し、その分、車室内前部の空間が車幅方向外側に拡大されている。
【0026】
補強部31の内側には略長方形状の空間部が設けられ、その空間部内に前述した第2の荷重伝達ブロック30が収容配置されている。この第2の荷重伝達ブロック30は樹脂や金属等によって構成されるが、より車両の軽量化を図る場合には、例えば、荷重伝達ブロック22と同様の樹脂ブロックを用いることが望ましい。
なお、センターピラー8は、ここでは詳細な図示は省略するが、ドアビーム17,18と同一高さに、ピラーアウターパネルとスティフナによる閉断面の補強部が設けられ、その補強部の内部に第2の荷重伝達ブロック30と同構造の第3の荷重伝達ブロック80(図1参照)が収容配置されている。
【0027】
補強部31内に設置された第2の荷重伝達ブロック30は、その前方側に荷重伝達ブロック22の基部27が位置され、その後方側にサイドドア2内のドアビーム17が位置される。荷重伝達ブロック22、第2の荷重伝達ブロック30、ドアビーム17の三者は、サイドドア2が閉じられた状態において車体前後方向で直線的に重なるように配置されている。
【0028】
ところで、前後のサイドドア2,3を回動自在に支持する前記のドアヒンジ15は以下に説明する蝶番ヒンジによって構成されている。以下では、各ドアヒンジ15を蝶番ヒンジ15と呼ぶものとする。
図1に示すように、前側のサイドドア2を支持する蝶番ヒンジ15は、フロントピラー6のうちのドアビーム17と上下にそれぞれオフセットした位置に二組設けられ、後側のサイドドア3を支持する蝶番ヒンジ15は、センターピラー8のうちのドアビーム17,18と上下にそれぞれオフセットした位置に二組設けられている。なお、各蝶番ヒンジ15はすべて同様の基本構造とされている。
【0029】
図3,図4は、図1のB−B断面に対応する拡大断面図であり、図3は、サイドドア2を閉じた状態を示し、図4は、サイドドア4を開いた状態を示している。
図3,図4に示す蝶番ヒンジ15は、フロントピラー6の後面6aに重合状態でボルト結合されるベースプレート35と、サイドドア2の前面2aに重合状態でボルト結合される回動プレート36と、ベースプレート35と回動プレート36を回動可能に連結するヒンジ軸37と、を備えている。ヒンジ軸37は、ベースプレート35のうちの、フロントピラー6の側面よりも車幅方向外側に突出する端部に設けられ、回動プレート36に取り付けられたサイドドア2を略水平方向に回動可能に支持する。また、ベースプレート35と回動プレート36は、サイドドア2が閉じられた状態においては、両者がほぼ密着するように相互に対向している。
【0030】
以上の構成において、車両1の側面に側突荷重が入力された場合には、サイドドア2,3内のドアビーム17,18が前後のピラー間(フロントピラー6とセンターピラー8、センターピラー8とリヤピラー7)に跨るようにして荷重を支持し、各サイドドア2,3の車幅方向内側方向への変形を抑制する。
【0031】
一方、車両前部から前突荷重が入力され、前輪Wfの位置が後方に移動して、前輪Wfのタイヤ面がその後方の荷重伝達ブロック22に当接すると、タイヤ面から荷重伝達ブロック22に前突荷重が入力されるようになる。
【0032】
荷重伝達ブロック22に入力された前突荷重は、同ブロック22の基部27と内側延長部28を介してフロントピラー6に伝達されるが、同ブロック22の基部27の後方には、フロントピラー6の補強部31と第2の荷重伝達ブロック30が配置され、これらと同一直線上となるようにさらに後方にサイドドア2のドアビーム17が配置されているため、基部27に入力された前突荷重はサイドドア2のドアビーム17に直線的に伝達される。このドアビーム17に伝達された荷重は、センターピラー8の補強部と第3の荷重伝達ブロック80を介して後部のサイドドア3のドアビーム18に伝達され、そのドアビーム18を通してリヤピラー7へと伝達される。
【0033】
また、荷重伝達ブロック22の内側延長部28を介してフロントピラー6に入力された荷重は、その上下のルーフサイドレール9とサイドシル10にも伝達され、ルーフサイドレール9とサイドシル10に分散されてリヤピラー7に伝達される。
【0034】
この車両1の車体側部構造は、前輪Wfのタイヤ面の後方に配置される荷重伝達ブロック22とサイドドア2のドアビーム17の間に第2の荷重伝達ブロック30が設けられ、荷重伝達ブロック22、第2の荷重伝達ブロック30、ドアビーム17の三者が車体前後方向で直線的に並ぶように配置されるとともに、サイドドア2がフロントピラー6の後面6aに蝶番ヒンジ15によって回動可能に取り付けられているため、車体前部から荷重伝達ブロック22に入力された前突荷重を、第2の荷重伝達ブロック30とドアビーム17を通して車体後部に効率良く伝達することができる。
したがって、この車体側部構造を採用した場合には、サイドシル10やルーフサイドレール9等の車体骨格部材の荷重分担を軽減できるため、これらの車体骨格部材の過剰な補強が不要になり、その分車両の軽量化を図ることが可能になる。
【0035】
また、この車体側部構造においては、ヒンジ軸37がフロントピラー6の外側に位置される蝶番ヒンジ15により、サイドドア2がフロントピラー6に回動可能に支持されているため、前突荷重の入力時に、ヒンジ軸37回りに潰れや屈曲等の変形が生じにくい。このため、前突後のサイドドア2のドア開閉性を確保することができる。
特に、この車体側部構造においては、各蝶番ヒンジ15がドアビーム17と上下方向でオフセットした位置に配置されているため、各チェッカーヒンジ15への前突荷重の直接入力を低減し、サイドドア2のドア開閉性をより確実に確保することができる。
【0036】
また、この車体側部構造では、フロントピラー6の後面6aとサイドドア2の前面2aの間の比較的狭いスペースに、薄型の蝶番ヒンジ15が配置されるため、ドアヒンジ(蝶番ヒンジ15)がフロントピラー6の断面スペースを圧迫することがない。このため、フロントピラー6の断面積の増大や車室内スペースの拡大を図ることができる。
【0037】
また、この車体側部構造においては、フロントピラー6のピラーアウタパネル6Aとスティフナ29によって閉断面構造の補強部31が形成され、その補強部31の内側に第2の荷重伝達ブロック30が収容配置される構造とされているため、荷重伝達ブロック22からドアビーム17に伝達される荷重の一部を強度の高い閉断面構造の補強部31に担わせることができる。したがって、これにより第2の荷重伝達ブロック30を小型・軽量化することができる。
【0038】
さらに、この車体側部構造においては、荷重伝達ブロック22が、第2の荷重伝達ブロック30の前方に位置される基部27と、基部27から車幅方向内側に延出してフロントピラー6の前面に当接する内側延長部28とを備えていることから、前輪Wfのタイヤ面から入力される前突荷重を車幅方向の広い領域で受け止め、前突荷重をフロントピラー6の広い範囲に分散させることができる。
また、荷重伝達ブロック22の内側延長部28の崩壊荷重が基部27の崩壊荷重よりも小さく設定されていることから、比較的大きな荷重を、基部27を経由して第2の荷重伝達ブロック30からドアビーム17に伝達し、比較的小さな荷重を、内側延長部28を経由してフロントピラー6に伝達することができる。したがって、サイドシル10等の車体骨格部材の荷重分担を減らし、車両1のさらなる軽量化を図ることができる。
【0039】
さらに、この実施形態の車体側部構造においては、後部側のサイドドア3も前部側のサイドドア2と同様に蝶番ヒンジ15によってセンターピラー8に回動自在に取り付けられ、前部側のドアビーム17と後部側のドアビーム18の間に、両ドアビーム17,18と車体前後方向で直線的に並ぶように第3の荷重伝達ブロック80が配置されているため、前部側のドアビーム17から後部側のドアビーム18に効率良く荷重を伝達することができる。
【0040】
また、この車体側部構造では、センターピラー8にピラーアウタパネルとスティフナによって閉断面が形成され、その閉断面内に第3の荷重伝達ブロック80が収容配置されているため、伝達荷重の一部をセンターピラー8の閉断面によって担わせ、その分、第3の荷重伝達ブロック80を小型・軽量化することができる。
【0041】
図5は、この発明の第2の実施形態の図1のA−A断面に対応する拡大断面図である。
この実施形態の車体側部構造は、第2の荷重伝達ブロック130(第2の荷重伝達部材)が荷重伝達ブロック22とサイドドア2のドアビーム17の間に配置され、荷重伝達ブロック22、第2の荷重伝達ブロック130、ドアビーム17の三者が車体前後方向で直線的に並ぶように配置されている点や、サイドドア2が蝶番ヒンジ(図示せず)によってフロントピラー106に取り付けられている点等の基本的な構成は第1の実施形態とほぼ同様であるが、フロントピラー106の構造とフロントピラー106に対する第2の荷重伝達ブロック130の取付形態が第1の実施形態のものと異なっている。
【0042】
フロントピラー106は、ピラーアウタパネル106Aとピラーインナパネル106Bが接合されて閉断面が形成されるとともに、ピラーアウタパネル106Aの裏面のドアビーム17と同一高さ位置にスティフナ129が接合され、スティフナ129とピラーアウタパネル106Aとによって補強部131が構成されている。ただし、ピラーアウタパネル106Aは、ドアビーム17の延長上位置までは車幅方向外側に迫り出さず、ドアビーム17よりも車幅方向内側に位置している。
【0043】
そして、第2の荷重伝達ブロック130は、ピラーアウタパネル106Aの車幅方向外側の側面に重合され、車幅方向の外側からボルト40によってピラーアウタパネル106Aとスティフナ129に締結固定されている。第2の荷重伝達ブロック130は、こうしてフロントピラー106に締結された状態において、荷重伝達ブロック22とドアビーム17の間に、両者に対して同一直線上となるように配置されている。
【0044】
この第2の実施形態の車体側部構造は、第1の実施形態とほぼ同様の基本的な効果を得ることができるが、第2の荷重伝達ブロック130がフロントピラー6のピラーアウタパネル6Aの車幅方向外側の側面に重合され、その状態でフロントピラー6にボルト40によって締結固定されているため、車体に対する第2の荷重伝達ブロック130の取り付けが容易になり、その分生産効率が向上するという利点がある。
【0045】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
2…サイドドア
4…ドア開口部
6…フロントピラー
6A,106A…ピラーアウタパネル
15…蝶番ヒンジ(ドアヒンジ)
17…ドアビーム
22…荷重伝達ブロック(荷重伝達部材)
27…基部
28…内側延長部
29,129…スティフナ
30,130…第2の荷重伝達ブロック(第2の荷重伝達部材)
31,131…補強部
35…ベースプレート
36…回動プレート
37…ヒンジ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のドア開口部に設置されるサイドドアの内部に、車体前後方向に延出して車体側方からの入力荷重を受け止めるドアビームが設けられ、
前記サイドドアの前部が前記ドア開口部の前縁のフロントピラーにドアヒンジを介して回動自在に取り付けられるとともに、前記フロントピラーの前方に、車体前部からの入力荷重を後方に伝達する荷重伝達部材が設けられている車体側部構造において、
前記荷重伝達部材とドアビームの間に第2の荷重伝達部材が設けられるとともに、この第2の荷重伝達部材と前記荷重伝達部材とドアビームとが車体前後方向で重なるように配置され、
前記ドアヒンジは、前記フロントピラーの後面に取り付けられるベースプレートと、このベースプレートの車幅方向外側の端部に設けられたヒンジ軸と、このヒンジ軸を介して前記ベースプレートに回動自在に連結される一方で前記サイドドアの前端面に固定される回動プレートと、を備えた蝶番ヒンジによって構成されていることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記フロントピラーには、ピラーアウタパネルの裏面にスティフナが接合されて閉断面の補強部が設けられ、
この補強部の閉断面内に前記第2の荷重伝達部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記フロントピラーには、ピラーアウタパネルの裏面にはスティフナが接合された補強部が設けられ、
この補強部の車外側の側面に前記第2の荷重伝達部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記荷重伝達部材は、前記第2荷重伝達部材の前方に位置される基部と、この基部から車幅方向内側に延出して前記フロントピラーの前面に当接する内側延長部と、を備え、
前記内側延長部の崩壊荷重が前記基部の崩壊荷重よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記蝶番ヒンジは、前記ドアビームと上下方向でオフセットした位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−218921(P2011−218921A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88809(P2010−88809)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】