車体側部構造
【課題】車体前部から入力された前突荷重を、ドアビームを通して車体後部に効率良く伝達することのできる車体側部構造を提供する。
【解決手段】第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bを上下に設け、両荷重伝達ブロック22A,22Bによって前突荷重を受ける。サイドドア内に内装するドアビーム17は、ビーム基部40から第1の荷重伝達ブロック22Aに向けて延出する上分岐部41と、ビーム基部40から第2の荷重伝達ブロック22Bに向けて延出する下分岐部42とを有する二股形状に形成する。上分岐部41は、ビーム基部40から同軸にかつ前方に直線的に延出するように形成する。
【解決手段】第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bを上下に設け、両荷重伝達ブロック22A,22Bによって前突荷重を受ける。サイドドア内に内装するドアビーム17は、ビーム基部40から第1の荷重伝達ブロック22Aに向けて延出する上分岐部41と、ビーム基部40から第2の荷重伝達ブロック22Bに向けて延出する下分岐部42とを有する二股形状に形成する。上分岐部41は、ビーム基部40から同軸にかつ前方に直線的に延出するように形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドア開口部にサイドドアが開閉可能に取り付けられる車体側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体側部のドア開口部の前縁にはフロントピラーが設けられ、そのフロントピラーにドアヒンジを介してサイドドアが回動自在に取り付けられている。
ところで、車両の側面衝突(以下、「側突」と呼ぶ。)の対策技術として、サイドドアの内部に車体前後方向に延出するドアビームが設けられ、車体側方からの入力荷重をサイドドア内のドアビームによって受け止めるものがある。
【0003】
この種の車体側部構造として、側突対策のためのドアビームを、前面衝突時等に車体前部から入力される衝撃荷重(以下、「前突荷重」と呼ぶ。)を車体後部にスムーズに伝達するために利用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この車体側部構造は、フロントピラーの前面側に前突荷重を後方に伝達するための荷重伝達部材(補強材)が設置され、フロントピラーの側面(車外側に臨む側面)の前記荷重伝達部材の近傍にドアヒンジが取り付けられるとともに、そのドアヒンジの回動片にサイドドア側のドアビームの前端部が結合されている。
この車体側部構造では、車体前部に前突荷重が入力されると、その荷重が荷重伝達部材を介してフロントピラーに伝達され、さらにその荷重がサイドシルやルーフサイドレール等の車体骨格部材に伝達されると同時に、ドアヒンジとドアビームを介して車体後部に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−206244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来の車体側部構造は、荷重伝達部材の後方側にサイドドア内の1本のドアビームが車体前後方向に直線状に配置されるため、ドアビームの前端部に効率良く前突荷重を伝達できる荷重入力範囲が限られている。このため、入力範囲によるドアビームの荷重分担の低下を考慮し、サイドシル等の車体骨格部材をその分補強しなければならず、車体の軽量化の観点からこの点の改善が望まれている。
【0006】
そこでこの発明は、車体前部から入力された前突荷重を、ドアビームを通して車体後部に効率良く伝達することのできる車体側部構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、車体のドア開口部(例えば、後述の実施形態におけるドア開口部4)に開閉可能に設置されるサイドドア(例えば、後述の実施形態におけるサイドドア2)の内部に、車体前後方向に延出して車体側方からの入力荷重を受け止めるドアビーム(例えば、後述の実施形態におけるドアビーム17)が設けられ、前記ドア開口部の前縁のフロントピラー(例えば、後述の実施形態におけるフロントピラー6)の前方に、車体前部からの入力荷重を後方に伝達する荷重伝達部材が設けられている車体側部構造において、前記荷重伝達部材は、上部側の第1の荷重伝達ブロック(例えば、後述の実施形態における第1の荷重伝達ブロック22A)と、下部側の第2の荷重伝達ブロック(例えば、後述の実施形態における第2の荷重伝達ブロック22B)と、からなり、前記ドアビームは、ビーム基部(例えば、後述の実施形態におけるビーム基部40)から前記第1の荷重伝達ブロックに向けて延出する上分岐部(例えば、後述の実施形態における上分岐部41)と、前記ビーム基部から前記第2の荷重伝達ブロックに向けて延出する下分岐部(例えば、後述の実施形態における下分岐部42)と、を有する二股形状に形成されていることを特徴とする。
これにより、車体前部に前突荷重が入力されると、その荷重は、第1の荷重伝達ブロックと第2の荷重伝達ブロックを通してドアビームの上分岐部と下分岐部とに入力され、ドアビームのビーム基部を通して車体後部に伝達される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体側部構造において、前記上分岐部と前記下分岐部のうちの一方は、前記ビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するように設けられていることを特徴とする。
これにより、ビーム基部には、上分岐部と下分岐部のうちの一方から効率良く多くの荷重が伝達されるようになる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車体側部構造において、前記上分岐部は、前記ビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するように設けられていることを特徴とする。
これにより、ビーム基部には、上分岐部から効率良く多くの荷重が伝達されるようになるとともに、ビーム基部をサイドシルから上方に充分に離間した位置に配置することが可能になる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車体側部構造において、前記上分岐部の座屈耐荷重は、前記下分岐部の座屈耐荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする。
これにより、サイドシルから上方に離れた上分岐部の荷重伝達量が多くなる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の車体側部構造において、前記第1の荷重伝達ブロックの崩壊荷重は、前記第2の荷重伝達ブロックの崩壊荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする。
これにより、上方側の第1の荷重伝達ブロック側により多くの前突荷重が伝達され易くなる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体側部構造において、前記第2の荷重伝達ブロックは、車体側部下端のサイドシルと前記第1の荷重伝達ブロックとの中間の高さに配置されていることを特徴とする。
これにより、第1の荷重伝達ブロックと第2の荷重伝達ブロックとサイドシルとが上下にほぼ等間隔に配置されることになる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の車体側部構造において、前記サイドドアの前部が前記フロントピラーにドアヒンジ(例えば、後述の実施形態におけるドアヒンジ16)を介して回動自在に取り付けられ、前記ドアヒンジは、前記フロントピラーに取り付けられる車体取付け部(例えば、後述の実施形態における車体取付け部30)と、前記ドアビームに結合される回動片(例えば、後述の実施形態における回動片34)と、前記車体取付け部から前記荷重伝達部材の後部に回り込んで前記荷重伝達部材から荷重を直接受ける荷重受け部(例えば、後述の実施形態における荷重受け部26)と、を備えていることを特徴とする。
これにより、荷重伝達部材に入力された前突荷重はドアヒンジの荷重受け部に直接伝達され、さらに、ドアヒンジの車体取付け部と回動片を通してドアビームに伝達されるようになる。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の車体側部構造において、前記第2の荷重伝達ブロックと前記下分岐部との間に、前記ドアヒンジが配置されるとともに、前記第1の荷重伝達ブロックと前記上分岐部との間に、前記第1の荷重伝達ブロックからの荷重を受けてその荷重を前記上分岐部に伝達する第3の荷重伝達ブロック(第3の荷重伝達ブロック50)が配置されていることを特徴とする。
これにより、第1の荷重伝達ブロックに入力された前突荷重は第3の荷重伝達ブロックを介してドアビームの上分岐部に伝達され、第2の荷重伝達ブロックに入力された前突荷重はドアヒンジを介してドアビームの下分岐部に伝達される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、車体前部から入力された前突荷重を、第1の荷重伝達ブロックと第2の荷重伝達ブロックを通してドアビームの上分岐部と下分岐部とに入力することができるため、ドアビームを通して前突荷重を車体後部に効率良く伝達することができる。したがって、この発明によれば、車体前部からの前突荷重の入力時に、サイドシル等の車体骨格部材に分担される伝達荷重を低減できることから、車体骨格部材の過大な補強を無くし車両の軽量化を図ることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、上分岐部と下分岐部のうちの一方が、ビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するため、上分岐部と下分岐部の一方の荷重伝達経路が車体前後方向で直線状になり、より効率よく前突荷重を車体後部に伝達することが可能になる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、上分岐部がビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するため、ビーム基部を用いた荷重伝達経路とサイドシルを用いた荷重伝達経路を上下方向に充分に離間させることが可能になり、その結果、前突荷重を車体の上下にバランス良く分散させて効率良く車体後部に伝達することが可能になる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、上分岐部の座屈耐荷重が下分岐部の座屈耐荷重よりも大きく設定され、サイドシルから上方に離れた上分岐部の荷重伝達量が多くなることから、前突荷重を車体の上下でより効率良く車体後部に伝達することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、第1の荷重伝達ブロックの崩壊荷重が第2の荷重伝達ブロックの崩壊荷重よりも大きく設定され、上方側の第1の荷重伝達ブロックでより多くの前突荷重が伝達されることから、前突荷重を車体の上下にバランス良く分散させ、効率良く車体後部に伝達することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、第2の荷重伝達ブロックがサイドシルと第1の荷重伝達ブロックの中間の高さに配置されていることから、前突荷重を第1の荷重伝達ブロックと第2の荷重伝達ブロックとサイドシルとにバランス良く分散させ、前突荷重を車体後部に効率良く伝達することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、荷重伝達部材に入力された前突荷重をドアヒンジの荷重受け部で直接受け止め、ドアヒンジの車体取付け部と回動片を介してドアビームに伝達することができるため、荷重伝達部材からドアビームへの荷重伝達効率を高めることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、第2の荷重伝達ブロックと下分岐部との間を、ドアヒンジで荷重伝達し、第1の荷重伝達ブロックと上分岐部との間を、第3の荷重伝達ブロックで荷重伝達するため、第1,第2の荷重伝達ブロックからドアビームへの荷重伝達効率を高めることができる。
また、ドアヒンジ部分には、サイドドアの自重によって下方向の力が加わるが、サイドドアの下端に近い部位をドアヒンジで支持するため、サイドドアの支持安定性が向上する。
また、ドアヒンジの取付精度はサイドドアの回転動作に直接影響するために厳密に管理されるが、第3の荷重伝達ブロックはドアヒンジに比較して厳密な取付精度を要さないことから、取付作業を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態の車両を示す側面図である。
【図2】この発明の一実施形態の車両の車体側部の構成部材を示す斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態の車両の車体側部の構成部材を示す分解斜視図である。
【図4】この発明の一実施形態の車両の図1のA−A断面に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面において、矢印FrとRrは、それぞれ車両1の前方と後方を指し、矢印RとLは、それぞれ車両1の左側方と右側方を指すものとする。また、以下の説明においては、特別に断らない限り、「前」と「後」は車体に対しての前後を意味するものとする。また、以下では、車両1の左側の側部の構造について説明するが、車両1の右側の側部も同様の構造とされている。
【0025】
図1は、この実施形態の車体側部構造を採用した車両1の一部の部品を取り去った左側面を示す図である。
車両1は、4ドアのセダン型車両であり、車体の側部には前後のサイドドア2,3が取付けられるドア開口部4,5が設けられている。前部側のドア開口部4の前縁にはフロントピラー6が配置され、後部側のドア開口部5の後縁にはリヤピラー7が配置されており、前後のドア開口部4,5の間にはセンターピラー8が配置されている。また、フロントピラー6,センターピラー8,リヤピラー7の各上端部と下端部は、車体前後方向に延出するルーフサイドレール9とサイドシル10によって連結されている。
【0026】
フロントピラー6の前方側には、ルーフサイドレール9の前部に連続するように、フロントサイドフレーム11が前方に延出している。フロントサイドフレーム11の下方には、前輪Wfを配置するためのホイールハウス12が設けられている。また、リヤピラー7の後部下方には、後輪Wrを配置するためのホイールハウス13が設けられている。
【0027】
前後の各サイドドア2,3は、ドア本体2A,3Aにそれぞれドアガラス14が昇降自在に支持され、各ドア本体2A,3Aの前端部が後述するドアヒンジ15,16を介してフロントピラー6とセンターピラー8にそれぞれ回動自在に取り付けられている。
また、前後の各サイドドア2,3のドア本体2A,3Aの内部には、車体前後方向に延出して側突荷重を受け止めるドアビーム17,18が設置されている。各ドアビーム17,18は、ドア本体2A,3Aの厚み方向の中央位置よりも車幅方向外側に偏倚した位置に配置されている。
【0028】
また、フロントピラー6の下方側の前部には、車体前部からの前突荷重の入力時に、前輪Wfの後方移動を規制するように前輪Wfのタイヤ面に後方側から当接する第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bが設けられている。これらの第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bは、フロントピラー6の前方にあって車体前部から入力荷重を後方に伝達する荷重伝達部材であり、両者は上下方向に並列に配置されるとともに、第1の荷重伝達ブロック22Aが第2の荷重伝達ブロック22Bの上方側に配置されている。
さらに詳細には、下側の第2の荷重伝達ブロック22Bは、車体下部側のサイドシル10と、上側の第1の荷重伝達ブロック22Aとの中間の高さに配置されている。
【0029】
図2〜図4は、車体側部の構成部材の詳細を示す図である。
第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bは、いずれもほぼ同様の構造とされ、車体前後方向に延出する複数の筒状断面が並列に配置されたハニカム構造の樹脂ブロック22aと、この樹脂ブロック22aを保持する金属製、若しくは、硬質樹脂製のリテーナ22bを備えている。
【0030】
リテーナ22bは、樹脂ブロック22aの後部面を支持するように略平板状に形成されており、第2の荷重伝達ブロック22Bのリテーナ22bは、車幅方向外側の上下の端部に枢支連結片24が設けられている。
第1の荷重伝達ブロック22Aの樹脂ブロック22aは前輪Wfのタイヤ面の後側上部に臨み、第2の荷重伝達ブロック22Bの樹脂ブロック22aは前輪Wfのタイヤ面の後側略中央部に臨むように配置されるが、第1の荷重伝達ブロック22Aの樹脂ブロック22aの車体前後方向の肉厚は第2の荷重伝達ブロック22Bの車体前後方向の肉厚よりも全体的に厚くなるよう設定されている。これにより、第1の荷重伝達ブロック22Aの崩壊荷重は第2の荷重伝達ブロック22Bの崩壊荷重よりも大きくなっている。
【0031】
各リテーナ22bの後面は、車幅方向外側の略半分の領域が後述する第3の荷重伝達ブロック50またはドアヒンジ16に当接し、車幅方向内側の略半分の領域がフロントピラー6の前面に当接する。なお、第3の荷重伝達ブロック50とドアヒンジ16は、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bの各後部側において、フロントピラー6の車外側の側面に重合状態で取り付けられている。この実施形態の場合、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bの車幅方向外側の略半分の領域は、第3の荷重伝達ブロック50またはドアヒンジ16の荷重受け部51,26の前面に当接する基部27を構成し、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bの車幅方向内側の略半分の領域は、基部27から車幅方向内側に延出してフロントピラー6の前面に当接する内側延長部28を構成している。
【0032】
また、図4に示すように、フロントピラー6は、断面略コ字状のピラーアウタパネル6Aの車幅方向内側にピラーインナパネル6Bが接合されて閉断面構造とされているが、ピラーアウタパネル6Aの裏面のうちの、第3の荷重伝達ブロック50(図4では図示せず)とドアヒンジ16が取り付けられる部位には、それぞれ断面略コ字状のスティフナ29が接合されて部分的に補強されている。
【0033】
ドアヒンジ16は、フロントピラー6の車外側の側面に重合状態で取り付けられる車体取付け部30の前端部に略L字状に屈曲して車幅方向外側に延出する前記の荷重受け部26が設けられている。この荷重受け部26の前面には前述した第2の荷重伝達ブロック22Bの基部27が重合される。また、車体取付け部30の後端部には、車幅方向外側に略L字状に屈曲して先端部にヒンジ軸32が支持される軸支持部33が設けられている。軸支持部33には、ヒンジ軸32を介して略水平方向に回動可能に回動片34が連結されている。この回動片34は、サイドドア2の前端部に結合される。
なお、ドアヒンジ16の車体取付け部30は、図4に示すように、ピラーアウタパネル6Aとスティフナ29の重合固定部にボルト31によって締結固定されている。また、ドアヒンジ16の荷重受け部26から車体取付け部30、軸支持部33にかけては車体前後方向及び幅方向の強度を持たせるために断面略コ字状に形成されている。
また、図3に詳細に示すように、リテーナ22bの車外側端部に延設された各枢支連結片24はピン38とカラー39を介してドアヒンジ16の荷重受け部26の車幅方向外側の端部に回動可能に連結されている。
【0034】
一方、第3の荷重伝達ブロック50は、図2に示すように、フロントピラー6の車外側の側面に重合状態で取り付けられる車体取付け部52と、この車体取付け部52の前端部に略L字状に屈曲して車幅方向外側に延出する前記の荷重受け部51と、車体取付け部52の後端部に略L字状に屈曲して車幅方向外側に延出する荷重伝達壁53と、を備えている。車体取付け部52は、ピラーアウタパネル6Aとスティフナ29の重合固定部にボルト31によって締結固定されている。荷重受け部51の前面には、第1の荷重伝達ブロック22Aの基部が重合される。また、荷重伝達壁53の後面はサイドドア2のドア本体2Aの前端面に対向している。なお、第3の荷重伝達ブロック50の荷重受け部51から車体取付け部52、荷重伝達壁53にかけては車体前後方向及び幅方向の強度を持たせるために断面略コ字状に形成されている。
【0035】
また、上部側のドアヒンジ15は、ここでは詳細な図示は省略するが、ほぼ下部側のドアヒンジ16から荷重受け部26を取り去ったものと同様の構造とされ、車体取付け部がフンロントピラー6の側面に取り付けられるとともに、回動片がサイドドア2の前端面に取り付けられている。
【0036】
ここで、サイドドア2内に配置されるドアビーム17は、図1,図2に示すように、サイドア2の後部側から車体前方側に延出するビーム基部40の前部に上分岐部41と下分岐部42が設けられた二股形状に形成されている。ビーム基部40と上分岐部41とは一本の直線状のパイプ材によって連続して形成され、上分岐部41の付根部の下面に、パイプ材から成る下分岐部42が前部斜め下方に傾斜するようにして溶接固定されている。下分岐部42は、上分岐部41やビーム基部40よりも直径の小さいパイプ材によって形成されている。これにより、上分岐部41の座屈耐荷重は下分岐部42の座屈耐荷重よりも大きくなっている。
【0037】
ドアビーム17の上分岐部41と下分岐部42はそれぞれ前端部に略コ字状のブラケット20が取り付けられ、そのブラケット20を介してサイドドア2の前端面に結合されている。サイドドア2の前端面のうちの上分岐部41側のブラケット20の結合部には、サイドドア2が閉じられた状態において、第3の荷重伝達ブロック50の荷重伝達壁53が所定隙間をもって対向し、サイドドア2の前端面のうちの下分岐部42側のブラケット20の結合部には、ドアヒンジ16の回動片34がボルト35によって締結固定されている。また、ドアビーム17のビーム基部40は、後端部にブラケット21が取り付けられ、そのブラケット21を介してサイドドア2の後端部に固定されている。
【0038】
また、センターピラー8に取り付けられる上下のドアヒンジ15,16は、フロントピラー6側のドアヒンジ15,16と同様の構造とされている。センターピラー8に取り付けられる下側のドアヒンジ16は、前後のサイドドア2,3のドアビーム17,18間に配置され、車体取付け部30がセンターピラー8の車外側の側面に結合されるとともに、荷重受け部26が前部側のサイドドア2の後端面のドアビーム17の延長上位置に臨むように配置されている。また、このドアヒンジ16の回動片34は、後部側のサイドドア3の前端面とドアビーム18(ブラケット20)の重合固定部に固定されている。
【0039】
以上の構成において、車両1の側面に側突荷重が入力された場合には、サイドドア2,3内のドアビーム17,18が前後のピラー間(フロントピラー6とセンターピラー8、センターピラー8とリヤピラー7)に跨るようにして荷重を支持し、各サイドドア2,3の車幅方向内側方向への変形を抑制する。
【0040】
一方、車体前部から前突荷重が入力され、前輪Wfの位置が後方に移動して前輪Wfのタイヤ面がその後方の第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bに当接すると、各荷重伝達ブロック22A,22Bには車体後方側に向かう荷重が作用する。
【0041】
第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bに入力された荷重は、各荷重伝達ブロック22A,22Bの基部27を介してその一部が第3の荷重伝達ブロック50の荷重受け部51とドアヒンジ16の荷重受け部26とに直接伝達され、残余の荷重が各荷重伝達ブロック22A,22Bの内側延長部28を介してフロントピラー6に直接伝達される。
【0042】
第3の荷重伝達ブロック50とドアヒンジ16の荷重受け部51,26に入力された荷重は車体取付け部52,30に伝達され、フロントピラー6の変形とそれに伴う各ドアヒンジ16の後方変位によって、第3の荷重伝達ブロック50とドアヒンジ16の車体取付け部52,30がサイドドア2の前端面のドアビーム17(上分岐部41及び下分岐部42)の前端部の近傍に当接する。これにより、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bに入力された荷重は第3の荷重伝達ブロック50とドアヒンジ16を介してドアビーム17の上分岐部41と下分岐部42とに伝達され、さらにビーム基部40の後端部からセンターピラー8とドアヒンジ16を介して後部側のサイドドア3に伝達される。そして、サイドドア3に入力された荷重は、さらにドアビーム18を通してリヤピラー7へと伝達される。なお、ドアヒンジ16から下分岐部42には、回動片34を介しても荷重が伝達される。
【0043】
また、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bの各内側延長部28を介してフロントピラー6に入力された荷重はその上下のルーフサイドレール9とサイドシル10に伝達され、ルーフサイドレール9とサイドシル10に分散されてリヤピラー7に伝達される。
【0044】
この車両1の車体側部構造は、前輪Wfのタイヤ面の後部に臨む第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bが上下に設けられるとともに、サイドドア2内に内装されるドアビーム17に第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bに向けて延出する上分岐部41と下分岐部42とが設けられているため、前突荷重を上分岐部41と下分岐部42を通してドアビーム17で確実に受け止め、ドアビーム17を通して車体後部に効率良く荷重伝達することができる。
つまり、この車体側部構造においては、荷重伝達ブロック22A,22Bが上下に配置され、ドアビーム17がビーム基部40から前方に二股に分岐した荷重入力部を持つ構造とされているため、前突荷重が上下に傾斜角をもって入力された場合や、ビーム基部40に対して上下にオフセットした位置から入力された場合であっても、上分岐部41と下分岐部42を通してドアビーム17のビーム基部40に確実に荷重を伝達することができる。
したがって、この車体側部構造を採用した場合には、サイドシル10やルーフサイドレール9等の車体骨格部材の荷重分担を軽減できるため、これらの車体骨格部材の過剰な補強が不要になり、その分車両の軽量化を図ることが可能になる。
【0045】
なお、この実施形態においては、ドアビーム17の上分岐部41がビーム基部40から同軸にかつ前方に直線的に延出するように形成されているが、下分岐部42側がビーム基部40から同軸にかつ前方に直線的に延出するようにしても良い。このように一方の分岐部をビーム基部40から同軸にかつ前方に直線的に延出するように形成した場合には、ドアビーム17上の一方の荷重伝達経路が車体前後方向で直線的になり、より効率良く前突荷重を車体後部に伝達することが可能になる。
ただし、この実施形態のように、ドアビーム17の上分岐部41をビーム基部40から同軸にかつ前方に直線的に延出するように形成した場合には、ドアビーム17のビーム基部40を通る荷重伝達経路と、車両下端のサイドシル10を通る荷重伝達経路が上下方向で充分大きく離間することになり、その結果、前突荷重をより効率良く車体後部に伝達することが可能になる。
【0046】
また、この実施形態の車体側部構造においては、ドアビーム17の上分岐部41の座屈耐荷重が下分岐部42の座屈耐荷重よりも大きく設定されているため、サイドシル10から上方に離れた上分岐部41の荷重伝達量を多くし、前突荷重を車体の上下でより分散させて車体後部に伝達することができる。
【0047】
さらに、この車体側部構造では、上側に位置される第1の荷重伝達ブロック22Aの崩壊荷重が下側の第2の荷重伝達ブロック22Bの崩壊荷重よりも大きく設定されているため、上側の第1の荷重伝達ブロック22Aでより多くの前突荷重を車体後部に伝達することができる。したがって、この構造の場合、サイドシル10から離間した第1の荷重伝達ブロック22A側で多く荷重を伝達できることから、前突荷重を車体の上下で分散させて伝達するうえでさらに有利となる。
【0048】
さらに、この車体側部構造においては、第2の荷重伝達ブロック22Bがサイドシル10と第1の荷重伝達ブロック22Aの中間の高さに配置されているため、前突荷重を第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bとサイドシル10とにバランス良く分散させることができる。したがって、前突荷重を車体の上下方向により分散させて車体後部に効率良く伝達することができる。
【0049】
また、この車体側部構造の場合、第1の荷重伝達ブロック22Aの後部に配置される第3の荷重伝達ブロック50が、フロントピラー6に取り付けられる車体取付け部52と、ドアビーム17の上分岐部41の前部に対向する荷重伝達壁53と、車体取付け部52から荷重伝達ブロック22Aの背部に回り込んでその荷重伝達ブロック22Aから荷重を受ける荷重受け部51を備えた構成とされるとともに、第2の荷重伝達ブロック22Bの後部に配置されるドアヒンジ16が、フロントピラー6に取り付けられる車体取付け部30と、ドアビーム17の下分岐部42の前部に結合される回動片34と、車体取付け部30から荷重伝達ブロック22Bの背部に回り込んでその荷重伝達ブロック22Bから荷重を受ける荷重受け部26を備えた構成とされているため、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bに入力された前突荷重を第3の荷重伝達ブロック50とドアヒンジ16の荷重受け部51,26で直接受け止め、荷重伝達壁53や回動片34を介してドアビーム17の上分岐部41と下分岐部42とに効率良く伝達することができる。
【0050】
さらに、この車体側部構造では、下側の第2の荷重伝達ブロック22Bと下分岐部42の間をドアヒンジ16で荷重伝達し、上側の第1の荷重伝達ブロック22Aと上分岐部41の間を第3の荷重伝達ブロック50で荷重伝達するため、自重によって下方向の力が加わるサイドドア2の下端の近傍をドアヒンジ16によって安定的に支持することができる。また、サイドドア2の取付形態としては、上分岐部41と下分岐部42の近傍をそれぞれドアヒンジ16でフロントピラー6に取り付けることも可能であるが、この実施形態では、サイドドア2の下分岐部42の近傍のみをドアヒンジ16でフロントピラー6に取り付けているため、厳密な取付精度を要求されるドアヒンジ箇所を減らし、取り付け作業を簡略化できる、という利点がある。
【0051】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
2…サイドドア
4…ドア開口部
6…フロントピラー
16…ドアヒンジ
17…ドアビーム
22A…第1の荷重伝達ブロック(荷重伝達部材)
22B…第2の荷重伝達ブロック(荷重伝達部材)
26…荷重受け部
30…車体取付け部
34…回動片
40…ビーム基部
41…上分岐部
42…下分岐部
50…第3の荷重伝達ブロック
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドア開口部にサイドドアが開閉可能に取り付けられる車体側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体側部のドア開口部の前縁にはフロントピラーが設けられ、そのフロントピラーにドアヒンジを介してサイドドアが回動自在に取り付けられている。
ところで、車両の側面衝突(以下、「側突」と呼ぶ。)の対策技術として、サイドドアの内部に車体前後方向に延出するドアビームが設けられ、車体側方からの入力荷重をサイドドア内のドアビームによって受け止めるものがある。
【0003】
この種の車体側部構造として、側突対策のためのドアビームを、前面衝突時等に車体前部から入力される衝撃荷重(以下、「前突荷重」と呼ぶ。)を車体後部にスムーズに伝達するために利用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この車体側部構造は、フロントピラーの前面側に前突荷重を後方に伝達するための荷重伝達部材(補強材)が設置され、フロントピラーの側面(車外側に臨む側面)の前記荷重伝達部材の近傍にドアヒンジが取り付けられるとともに、そのドアヒンジの回動片にサイドドア側のドアビームの前端部が結合されている。
この車体側部構造では、車体前部に前突荷重が入力されると、その荷重が荷重伝達部材を介してフロントピラーに伝達され、さらにその荷重がサイドシルやルーフサイドレール等の車体骨格部材に伝達されると同時に、ドアヒンジとドアビームを介して車体後部に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−206244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来の車体側部構造は、荷重伝達部材の後方側にサイドドア内の1本のドアビームが車体前後方向に直線状に配置されるため、ドアビームの前端部に効率良く前突荷重を伝達できる荷重入力範囲が限られている。このため、入力範囲によるドアビームの荷重分担の低下を考慮し、サイドシル等の車体骨格部材をその分補強しなければならず、車体の軽量化の観点からこの点の改善が望まれている。
【0006】
そこでこの発明は、車体前部から入力された前突荷重を、ドアビームを通して車体後部に効率良く伝達することのできる車体側部構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、車体のドア開口部(例えば、後述の実施形態におけるドア開口部4)に開閉可能に設置されるサイドドア(例えば、後述の実施形態におけるサイドドア2)の内部に、車体前後方向に延出して車体側方からの入力荷重を受け止めるドアビーム(例えば、後述の実施形態におけるドアビーム17)が設けられ、前記ドア開口部の前縁のフロントピラー(例えば、後述の実施形態におけるフロントピラー6)の前方に、車体前部からの入力荷重を後方に伝達する荷重伝達部材が設けられている車体側部構造において、前記荷重伝達部材は、上部側の第1の荷重伝達ブロック(例えば、後述の実施形態における第1の荷重伝達ブロック22A)と、下部側の第2の荷重伝達ブロック(例えば、後述の実施形態における第2の荷重伝達ブロック22B)と、からなり、前記ドアビームは、ビーム基部(例えば、後述の実施形態におけるビーム基部40)から前記第1の荷重伝達ブロックに向けて延出する上分岐部(例えば、後述の実施形態における上分岐部41)と、前記ビーム基部から前記第2の荷重伝達ブロックに向けて延出する下分岐部(例えば、後述の実施形態における下分岐部42)と、を有する二股形状に形成されていることを特徴とする。
これにより、車体前部に前突荷重が入力されると、その荷重は、第1の荷重伝達ブロックと第2の荷重伝達ブロックを通してドアビームの上分岐部と下分岐部とに入力され、ドアビームのビーム基部を通して車体後部に伝達される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体側部構造において、前記上分岐部と前記下分岐部のうちの一方は、前記ビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するように設けられていることを特徴とする。
これにより、ビーム基部には、上分岐部と下分岐部のうちの一方から効率良く多くの荷重が伝達されるようになる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車体側部構造において、前記上分岐部は、前記ビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するように設けられていることを特徴とする。
これにより、ビーム基部には、上分岐部から効率良く多くの荷重が伝達されるようになるとともに、ビーム基部をサイドシルから上方に充分に離間した位置に配置することが可能になる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車体側部構造において、前記上分岐部の座屈耐荷重は、前記下分岐部の座屈耐荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする。
これにより、サイドシルから上方に離れた上分岐部の荷重伝達量が多くなる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の車体側部構造において、前記第1の荷重伝達ブロックの崩壊荷重は、前記第2の荷重伝達ブロックの崩壊荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする。
これにより、上方側の第1の荷重伝達ブロック側により多くの前突荷重が伝達され易くなる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体側部構造において、前記第2の荷重伝達ブロックは、車体側部下端のサイドシルと前記第1の荷重伝達ブロックとの中間の高さに配置されていることを特徴とする。
これにより、第1の荷重伝達ブロックと第2の荷重伝達ブロックとサイドシルとが上下にほぼ等間隔に配置されることになる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の車体側部構造において、前記サイドドアの前部が前記フロントピラーにドアヒンジ(例えば、後述の実施形態におけるドアヒンジ16)を介して回動自在に取り付けられ、前記ドアヒンジは、前記フロントピラーに取り付けられる車体取付け部(例えば、後述の実施形態における車体取付け部30)と、前記ドアビームに結合される回動片(例えば、後述の実施形態における回動片34)と、前記車体取付け部から前記荷重伝達部材の後部に回り込んで前記荷重伝達部材から荷重を直接受ける荷重受け部(例えば、後述の実施形態における荷重受け部26)と、を備えていることを特徴とする。
これにより、荷重伝達部材に入力された前突荷重はドアヒンジの荷重受け部に直接伝達され、さらに、ドアヒンジの車体取付け部と回動片を通してドアビームに伝達されるようになる。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の車体側部構造において、前記第2の荷重伝達ブロックと前記下分岐部との間に、前記ドアヒンジが配置されるとともに、前記第1の荷重伝達ブロックと前記上分岐部との間に、前記第1の荷重伝達ブロックからの荷重を受けてその荷重を前記上分岐部に伝達する第3の荷重伝達ブロック(第3の荷重伝達ブロック50)が配置されていることを特徴とする。
これにより、第1の荷重伝達ブロックに入力された前突荷重は第3の荷重伝達ブロックを介してドアビームの上分岐部に伝達され、第2の荷重伝達ブロックに入力された前突荷重はドアヒンジを介してドアビームの下分岐部に伝達される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、車体前部から入力された前突荷重を、第1の荷重伝達ブロックと第2の荷重伝達ブロックを通してドアビームの上分岐部と下分岐部とに入力することができるため、ドアビームを通して前突荷重を車体後部に効率良く伝達することができる。したがって、この発明によれば、車体前部からの前突荷重の入力時に、サイドシル等の車体骨格部材に分担される伝達荷重を低減できることから、車体骨格部材の過大な補強を無くし車両の軽量化を図ることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、上分岐部と下分岐部のうちの一方が、ビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するため、上分岐部と下分岐部の一方の荷重伝達経路が車体前後方向で直線状になり、より効率よく前突荷重を車体後部に伝達することが可能になる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、上分岐部がビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するため、ビーム基部を用いた荷重伝達経路とサイドシルを用いた荷重伝達経路を上下方向に充分に離間させることが可能になり、その結果、前突荷重を車体の上下にバランス良く分散させて効率良く車体後部に伝達することが可能になる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、上分岐部の座屈耐荷重が下分岐部の座屈耐荷重よりも大きく設定され、サイドシルから上方に離れた上分岐部の荷重伝達量が多くなることから、前突荷重を車体の上下でより効率良く車体後部に伝達することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、第1の荷重伝達ブロックの崩壊荷重が第2の荷重伝達ブロックの崩壊荷重よりも大きく設定され、上方側の第1の荷重伝達ブロックでより多くの前突荷重が伝達されることから、前突荷重を車体の上下にバランス良く分散させ、効率良く車体後部に伝達することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、第2の荷重伝達ブロックがサイドシルと第1の荷重伝達ブロックの中間の高さに配置されていることから、前突荷重を第1の荷重伝達ブロックと第2の荷重伝達ブロックとサイドシルとにバランス良く分散させ、前突荷重を車体後部に効率良く伝達することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、荷重伝達部材に入力された前突荷重をドアヒンジの荷重受け部で直接受け止め、ドアヒンジの車体取付け部と回動片を介してドアビームに伝達することができるため、荷重伝達部材からドアビームへの荷重伝達効率を高めることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、第2の荷重伝達ブロックと下分岐部との間を、ドアヒンジで荷重伝達し、第1の荷重伝達ブロックと上分岐部との間を、第3の荷重伝達ブロックで荷重伝達するため、第1,第2の荷重伝達ブロックからドアビームへの荷重伝達効率を高めることができる。
また、ドアヒンジ部分には、サイドドアの自重によって下方向の力が加わるが、サイドドアの下端に近い部位をドアヒンジで支持するため、サイドドアの支持安定性が向上する。
また、ドアヒンジの取付精度はサイドドアの回転動作に直接影響するために厳密に管理されるが、第3の荷重伝達ブロックはドアヒンジに比較して厳密な取付精度を要さないことから、取付作業を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態の車両を示す側面図である。
【図2】この発明の一実施形態の車両の車体側部の構成部材を示す斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態の車両の車体側部の構成部材を示す分解斜視図である。
【図4】この発明の一実施形態の車両の図1のA−A断面に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面において、矢印FrとRrは、それぞれ車両1の前方と後方を指し、矢印RとLは、それぞれ車両1の左側方と右側方を指すものとする。また、以下の説明においては、特別に断らない限り、「前」と「後」は車体に対しての前後を意味するものとする。また、以下では、車両1の左側の側部の構造について説明するが、車両1の右側の側部も同様の構造とされている。
【0025】
図1は、この実施形態の車体側部構造を採用した車両1の一部の部品を取り去った左側面を示す図である。
車両1は、4ドアのセダン型車両であり、車体の側部には前後のサイドドア2,3が取付けられるドア開口部4,5が設けられている。前部側のドア開口部4の前縁にはフロントピラー6が配置され、後部側のドア開口部5の後縁にはリヤピラー7が配置されており、前後のドア開口部4,5の間にはセンターピラー8が配置されている。また、フロントピラー6,センターピラー8,リヤピラー7の各上端部と下端部は、車体前後方向に延出するルーフサイドレール9とサイドシル10によって連結されている。
【0026】
フロントピラー6の前方側には、ルーフサイドレール9の前部に連続するように、フロントサイドフレーム11が前方に延出している。フロントサイドフレーム11の下方には、前輪Wfを配置するためのホイールハウス12が設けられている。また、リヤピラー7の後部下方には、後輪Wrを配置するためのホイールハウス13が設けられている。
【0027】
前後の各サイドドア2,3は、ドア本体2A,3Aにそれぞれドアガラス14が昇降自在に支持され、各ドア本体2A,3Aの前端部が後述するドアヒンジ15,16を介してフロントピラー6とセンターピラー8にそれぞれ回動自在に取り付けられている。
また、前後の各サイドドア2,3のドア本体2A,3Aの内部には、車体前後方向に延出して側突荷重を受け止めるドアビーム17,18が設置されている。各ドアビーム17,18は、ドア本体2A,3Aの厚み方向の中央位置よりも車幅方向外側に偏倚した位置に配置されている。
【0028】
また、フロントピラー6の下方側の前部には、車体前部からの前突荷重の入力時に、前輪Wfの後方移動を規制するように前輪Wfのタイヤ面に後方側から当接する第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bが設けられている。これらの第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bは、フロントピラー6の前方にあって車体前部から入力荷重を後方に伝達する荷重伝達部材であり、両者は上下方向に並列に配置されるとともに、第1の荷重伝達ブロック22Aが第2の荷重伝達ブロック22Bの上方側に配置されている。
さらに詳細には、下側の第2の荷重伝達ブロック22Bは、車体下部側のサイドシル10と、上側の第1の荷重伝達ブロック22Aとの中間の高さに配置されている。
【0029】
図2〜図4は、車体側部の構成部材の詳細を示す図である。
第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bは、いずれもほぼ同様の構造とされ、車体前後方向に延出する複数の筒状断面が並列に配置されたハニカム構造の樹脂ブロック22aと、この樹脂ブロック22aを保持する金属製、若しくは、硬質樹脂製のリテーナ22bを備えている。
【0030】
リテーナ22bは、樹脂ブロック22aの後部面を支持するように略平板状に形成されており、第2の荷重伝達ブロック22Bのリテーナ22bは、車幅方向外側の上下の端部に枢支連結片24が設けられている。
第1の荷重伝達ブロック22Aの樹脂ブロック22aは前輪Wfのタイヤ面の後側上部に臨み、第2の荷重伝達ブロック22Bの樹脂ブロック22aは前輪Wfのタイヤ面の後側略中央部に臨むように配置されるが、第1の荷重伝達ブロック22Aの樹脂ブロック22aの車体前後方向の肉厚は第2の荷重伝達ブロック22Bの車体前後方向の肉厚よりも全体的に厚くなるよう設定されている。これにより、第1の荷重伝達ブロック22Aの崩壊荷重は第2の荷重伝達ブロック22Bの崩壊荷重よりも大きくなっている。
【0031】
各リテーナ22bの後面は、車幅方向外側の略半分の領域が後述する第3の荷重伝達ブロック50またはドアヒンジ16に当接し、車幅方向内側の略半分の領域がフロントピラー6の前面に当接する。なお、第3の荷重伝達ブロック50とドアヒンジ16は、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bの各後部側において、フロントピラー6の車外側の側面に重合状態で取り付けられている。この実施形態の場合、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bの車幅方向外側の略半分の領域は、第3の荷重伝達ブロック50またはドアヒンジ16の荷重受け部51,26の前面に当接する基部27を構成し、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bの車幅方向内側の略半分の領域は、基部27から車幅方向内側に延出してフロントピラー6の前面に当接する内側延長部28を構成している。
【0032】
また、図4に示すように、フロントピラー6は、断面略コ字状のピラーアウタパネル6Aの車幅方向内側にピラーインナパネル6Bが接合されて閉断面構造とされているが、ピラーアウタパネル6Aの裏面のうちの、第3の荷重伝達ブロック50(図4では図示せず)とドアヒンジ16が取り付けられる部位には、それぞれ断面略コ字状のスティフナ29が接合されて部分的に補強されている。
【0033】
ドアヒンジ16は、フロントピラー6の車外側の側面に重合状態で取り付けられる車体取付け部30の前端部に略L字状に屈曲して車幅方向外側に延出する前記の荷重受け部26が設けられている。この荷重受け部26の前面には前述した第2の荷重伝達ブロック22Bの基部27が重合される。また、車体取付け部30の後端部には、車幅方向外側に略L字状に屈曲して先端部にヒンジ軸32が支持される軸支持部33が設けられている。軸支持部33には、ヒンジ軸32を介して略水平方向に回動可能に回動片34が連結されている。この回動片34は、サイドドア2の前端部に結合される。
なお、ドアヒンジ16の車体取付け部30は、図4に示すように、ピラーアウタパネル6Aとスティフナ29の重合固定部にボルト31によって締結固定されている。また、ドアヒンジ16の荷重受け部26から車体取付け部30、軸支持部33にかけては車体前後方向及び幅方向の強度を持たせるために断面略コ字状に形成されている。
また、図3に詳細に示すように、リテーナ22bの車外側端部に延設された各枢支連結片24はピン38とカラー39を介してドアヒンジ16の荷重受け部26の車幅方向外側の端部に回動可能に連結されている。
【0034】
一方、第3の荷重伝達ブロック50は、図2に示すように、フロントピラー6の車外側の側面に重合状態で取り付けられる車体取付け部52と、この車体取付け部52の前端部に略L字状に屈曲して車幅方向外側に延出する前記の荷重受け部51と、車体取付け部52の後端部に略L字状に屈曲して車幅方向外側に延出する荷重伝達壁53と、を備えている。車体取付け部52は、ピラーアウタパネル6Aとスティフナ29の重合固定部にボルト31によって締結固定されている。荷重受け部51の前面には、第1の荷重伝達ブロック22Aの基部が重合される。また、荷重伝達壁53の後面はサイドドア2のドア本体2Aの前端面に対向している。なお、第3の荷重伝達ブロック50の荷重受け部51から車体取付け部52、荷重伝達壁53にかけては車体前後方向及び幅方向の強度を持たせるために断面略コ字状に形成されている。
【0035】
また、上部側のドアヒンジ15は、ここでは詳細な図示は省略するが、ほぼ下部側のドアヒンジ16から荷重受け部26を取り去ったものと同様の構造とされ、車体取付け部がフンロントピラー6の側面に取り付けられるとともに、回動片がサイドドア2の前端面に取り付けられている。
【0036】
ここで、サイドドア2内に配置されるドアビーム17は、図1,図2に示すように、サイドア2の後部側から車体前方側に延出するビーム基部40の前部に上分岐部41と下分岐部42が設けられた二股形状に形成されている。ビーム基部40と上分岐部41とは一本の直線状のパイプ材によって連続して形成され、上分岐部41の付根部の下面に、パイプ材から成る下分岐部42が前部斜め下方に傾斜するようにして溶接固定されている。下分岐部42は、上分岐部41やビーム基部40よりも直径の小さいパイプ材によって形成されている。これにより、上分岐部41の座屈耐荷重は下分岐部42の座屈耐荷重よりも大きくなっている。
【0037】
ドアビーム17の上分岐部41と下分岐部42はそれぞれ前端部に略コ字状のブラケット20が取り付けられ、そのブラケット20を介してサイドドア2の前端面に結合されている。サイドドア2の前端面のうちの上分岐部41側のブラケット20の結合部には、サイドドア2が閉じられた状態において、第3の荷重伝達ブロック50の荷重伝達壁53が所定隙間をもって対向し、サイドドア2の前端面のうちの下分岐部42側のブラケット20の結合部には、ドアヒンジ16の回動片34がボルト35によって締結固定されている。また、ドアビーム17のビーム基部40は、後端部にブラケット21が取り付けられ、そのブラケット21を介してサイドドア2の後端部に固定されている。
【0038】
また、センターピラー8に取り付けられる上下のドアヒンジ15,16は、フロントピラー6側のドアヒンジ15,16と同様の構造とされている。センターピラー8に取り付けられる下側のドアヒンジ16は、前後のサイドドア2,3のドアビーム17,18間に配置され、車体取付け部30がセンターピラー8の車外側の側面に結合されるとともに、荷重受け部26が前部側のサイドドア2の後端面のドアビーム17の延長上位置に臨むように配置されている。また、このドアヒンジ16の回動片34は、後部側のサイドドア3の前端面とドアビーム18(ブラケット20)の重合固定部に固定されている。
【0039】
以上の構成において、車両1の側面に側突荷重が入力された場合には、サイドドア2,3内のドアビーム17,18が前後のピラー間(フロントピラー6とセンターピラー8、センターピラー8とリヤピラー7)に跨るようにして荷重を支持し、各サイドドア2,3の車幅方向内側方向への変形を抑制する。
【0040】
一方、車体前部から前突荷重が入力され、前輪Wfの位置が後方に移動して前輪Wfのタイヤ面がその後方の第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bに当接すると、各荷重伝達ブロック22A,22Bには車体後方側に向かう荷重が作用する。
【0041】
第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bに入力された荷重は、各荷重伝達ブロック22A,22Bの基部27を介してその一部が第3の荷重伝達ブロック50の荷重受け部51とドアヒンジ16の荷重受け部26とに直接伝達され、残余の荷重が各荷重伝達ブロック22A,22Bの内側延長部28を介してフロントピラー6に直接伝達される。
【0042】
第3の荷重伝達ブロック50とドアヒンジ16の荷重受け部51,26に入力された荷重は車体取付け部52,30に伝達され、フロントピラー6の変形とそれに伴う各ドアヒンジ16の後方変位によって、第3の荷重伝達ブロック50とドアヒンジ16の車体取付け部52,30がサイドドア2の前端面のドアビーム17(上分岐部41及び下分岐部42)の前端部の近傍に当接する。これにより、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bに入力された荷重は第3の荷重伝達ブロック50とドアヒンジ16を介してドアビーム17の上分岐部41と下分岐部42とに伝達され、さらにビーム基部40の後端部からセンターピラー8とドアヒンジ16を介して後部側のサイドドア3に伝達される。そして、サイドドア3に入力された荷重は、さらにドアビーム18を通してリヤピラー7へと伝達される。なお、ドアヒンジ16から下分岐部42には、回動片34を介しても荷重が伝達される。
【0043】
また、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bの各内側延長部28を介してフロントピラー6に入力された荷重はその上下のルーフサイドレール9とサイドシル10に伝達され、ルーフサイドレール9とサイドシル10に分散されてリヤピラー7に伝達される。
【0044】
この車両1の車体側部構造は、前輪Wfのタイヤ面の後部に臨む第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bが上下に設けられるとともに、サイドドア2内に内装されるドアビーム17に第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bに向けて延出する上分岐部41と下分岐部42とが設けられているため、前突荷重を上分岐部41と下分岐部42を通してドアビーム17で確実に受け止め、ドアビーム17を通して車体後部に効率良く荷重伝達することができる。
つまり、この車体側部構造においては、荷重伝達ブロック22A,22Bが上下に配置され、ドアビーム17がビーム基部40から前方に二股に分岐した荷重入力部を持つ構造とされているため、前突荷重が上下に傾斜角をもって入力された場合や、ビーム基部40に対して上下にオフセットした位置から入力された場合であっても、上分岐部41と下分岐部42を通してドアビーム17のビーム基部40に確実に荷重を伝達することができる。
したがって、この車体側部構造を採用した場合には、サイドシル10やルーフサイドレール9等の車体骨格部材の荷重分担を軽減できるため、これらの車体骨格部材の過剰な補強が不要になり、その分車両の軽量化を図ることが可能になる。
【0045】
なお、この実施形態においては、ドアビーム17の上分岐部41がビーム基部40から同軸にかつ前方に直線的に延出するように形成されているが、下分岐部42側がビーム基部40から同軸にかつ前方に直線的に延出するようにしても良い。このように一方の分岐部をビーム基部40から同軸にかつ前方に直線的に延出するように形成した場合には、ドアビーム17上の一方の荷重伝達経路が車体前後方向で直線的になり、より効率良く前突荷重を車体後部に伝達することが可能になる。
ただし、この実施形態のように、ドアビーム17の上分岐部41をビーム基部40から同軸にかつ前方に直線的に延出するように形成した場合には、ドアビーム17のビーム基部40を通る荷重伝達経路と、車両下端のサイドシル10を通る荷重伝達経路が上下方向で充分大きく離間することになり、その結果、前突荷重をより効率良く車体後部に伝達することが可能になる。
【0046】
また、この実施形態の車体側部構造においては、ドアビーム17の上分岐部41の座屈耐荷重が下分岐部42の座屈耐荷重よりも大きく設定されているため、サイドシル10から上方に離れた上分岐部41の荷重伝達量を多くし、前突荷重を車体の上下でより分散させて車体後部に伝達することができる。
【0047】
さらに、この車体側部構造では、上側に位置される第1の荷重伝達ブロック22Aの崩壊荷重が下側の第2の荷重伝達ブロック22Bの崩壊荷重よりも大きく設定されているため、上側の第1の荷重伝達ブロック22Aでより多くの前突荷重を車体後部に伝達することができる。したがって、この構造の場合、サイドシル10から離間した第1の荷重伝達ブロック22A側で多く荷重を伝達できることから、前突荷重を車体の上下で分散させて伝達するうえでさらに有利となる。
【0048】
さらに、この車体側部構造においては、第2の荷重伝達ブロック22Bがサイドシル10と第1の荷重伝達ブロック22Aの中間の高さに配置されているため、前突荷重を第1の荷重伝達ブロック22Aと第2の荷重伝達ブロック22Bとサイドシル10とにバランス良く分散させることができる。したがって、前突荷重を車体の上下方向により分散させて車体後部に効率良く伝達することができる。
【0049】
また、この車体側部構造の場合、第1の荷重伝達ブロック22Aの後部に配置される第3の荷重伝達ブロック50が、フロントピラー6に取り付けられる車体取付け部52と、ドアビーム17の上分岐部41の前部に対向する荷重伝達壁53と、車体取付け部52から荷重伝達ブロック22Aの背部に回り込んでその荷重伝達ブロック22Aから荷重を受ける荷重受け部51を備えた構成とされるとともに、第2の荷重伝達ブロック22Bの後部に配置されるドアヒンジ16が、フロントピラー6に取り付けられる車体取付け部30と、ドアビーム17の下分岐部42の前部に結合される回動片34と、車体取付け部30から荷重伝達ブロック22Bの背部に回り込んでその荷重伝達ブロック22Bから荷重を受ける荷重受け部26を備えた構成とされているため、第1,第2の荷重伝達ブロック22A,22Bに入力された前突荷重を第3の荷重伝達ブロック50とドアヒンジ16の荷重受け部51,26で直接受け止め、荷重伝達壁53や回動片34を介してドアビーム17の上分岐部41と下分岐部42とに効率良く伝達することができる。
【0050】
さらに、この車体側部構造では、下側の第2の荷重伝達ブロック22Bと下分岐部42の間をドアヒンジ16で荷重伝達し、上側の第1の荷重伝達ブロック22Aと上分岐部41の間を第3の荷重伝達ブロック50で荷重伝達するため、自重によって下方向の力が加わるサイドドア2の下端の近傍をドアヒンジ16によって安定的に支持することができる。また、サイドドア2の取付形態としては、上分岐部41と下分岐部42の近傍をそれぞれドアヒンジ16でフロントピラー6に取り付けることも可能であるが、この実施形態では、サイドドア2の下分岐部42の近傍のみをドアヒンジ16でフロントピラー6に取り付けているため、厳密な取付精度を要求されるドアヒンジ箇所を減らし、取り付け作業を簡略化できる、という利点がある。
【0051】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
2…サイドドア
4…ドア開口部
6…フロントピラー
16…ドアヒンジ
17…ドアビーム
22A…第1の荷重伝達ブロック(荷重伝達部材)
22B…第2の荷重伝達ブロック(荷重伝達部材)
26…荷重受け部
30…車体取付け部
34…回動片
40…ビーム基部
41…上分岐部
42…下分岐部
50…第3の荷重伝達ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のドア開口部に開閉可能に設置されるサイドドアの内部に、車体前後方向に延出して車体側方からの入力荷重を受け止めるドアビームが設けられ、
前記ドア開口部の前縁のフロントピラーの前方に、車体前部からの入力荷重を後方に伝達する荷重伝達部材が設けられている車体側部構造において、
前記荷重伝達部材は、上部側の第1の荷重伝達ブロックと、下部側の第2の荷重伝達ブロックと、からなり、
前記ドアビームは、ビーム基部から前記第1の荷重伝達ブロックに向けて延出する上分岐部と、前記ビーム基部から前記第2の荷重伝達ブロックに向けて延出する下分岐部と、を有する二股形状に形成されていることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記上分岐部と前記下分岐部のうちの一方は、前記ビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記上分岐部は、前記ビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記上分岐部の座屈耐荷重は、前記下分岐部の座屈耐荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項3に記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記第1の荷重伝達ブロックの崩壊荷重は、前記第2の荷重伝達ブロックの崩壊荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項3または4に記載の車体側部構造。
【請求項6】
前記第2の荷重伝達ブロックは、車体側部下端のサイドシルと前記第1の荷重伝達ブロックとの中間の高さに配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項7】
前記サイドドアの前部が前記フロントピラーにドアヒンジを介して回動自在に取り付けられ、
前記ドアヒンジは、前記フロントピラーに取り付けられる車体取付け部と、前記ドアビームに結合される回動片と、前記車体取付け部から前記荷重伝達部材の後部に回り込んで前記荷重伝達部材から荷重を直接受ける荷重受け部と、を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項8】
前記第2の荷重伝達ブロックと前記下分岐部との間に、前記ドアヒンジが配置されるとともに、
前記第1の荷重伝達ブロックと前記上分岐部との間に、前記第1の荷重伝達ブロックからの荷重を受けてその荷重を前記上分岐部に伝達する第3の荷重伝達ブロックが配置されていることを特徴とする請求項7に記載の車体側部構造。
【請求項1】
車体のドア開口部に開閉可能に設置されるサイドドアの内部に、車体前後方向に延出して車体側方からの入力荷重を受け止めるドアビームが設けられ、
前記ドア開口部の前縁のフロントピラーの前方に、車体前部からの入力荷重を後方に伝達する荷重伝達部材が設けられている車体側部構造において、
前記荷重伝達部材は、上部側の第1の荷重伝達ブロックと、下部側の第2の荷重伝達ブロックと、からなり、
前記ドアビームは、ビーム基部から前記第1の荷重伝達ブロックに向けて延出する上分岐部と、前記ビーム基部から前記第2の荷重伝達ブロックに向けて延出する下分岐部と、を有する二股形状に形成されていることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記上分岐部と前記下分岐部のうちの一方は、前記ビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記上分岐部は、前記ビーム基部から同軸にかつ前方に直線的に延出するように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記上分岐部の座屈耐荷重は、前記下分岐部の座屈耐荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項3に記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記第1の荷重伝達ブロックの崩壊荷重は、前記第2の荷重伝達ブロックの崩壊荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項3または4に記載の車体側部構造。
【請求項6】
前記第2の荷重伝達ブロックは、車体側部下端のサイドシルと前記第1の荷重伝達ブロックとの中間の高さに配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項7】
前記サイドドアの前部が前記フロントピラーにドアヒンジを介して回動自在に取り付けられ、
前記ドアヒンジは、前記フロントピラーに取り付けられる車体取付け部と、前記ドアビームに結合される回動片と、前記車体取付け部から前記荷重伝達部材の後部に回り込んで前記荷重伝達部材から荷重を直接受ける荷重受け部と、を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項8】
前記第2の荷重伝達ブロックと前記下分岐部との間に、前記ドアヒンジが配置されるとともに、
前記第1の荷重伝達ブロックと前記上分岐部との間に、前記第1の荷重伝達ブロックからの荷重を受けてその荷重を前記上分岐部に伝達する第3の荷重伝達ブロックが配置されていることを特徴とする請求項7に記載の車体側部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−219032(P2011−219032A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92379(P2010−92379)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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