説明

車体側部構造

【課題】コーナリング走行時におけるサイドシルの撓みを保持することで、車両の走行中における操舵感を向上させることのできる車体側部構造を提供する。
【解決手段】センターピラー50に、接続部51a,52aの上方に位置する部分を屈曲することにより形成され、変形可能な屈曲部51b,52bを設けている。これにより、車両のコーナリング走行時には、屈曲部51b,52bが弾性変形することで、サイドシル10の走行時の撓みを保持することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側部の下部側を前後方向に延びるサイドシルと、車体側部の前後方向略中央部を上下方向に延びるセンターピラーと、を備えた車体側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車体側部構造としては、車体側部の下部側を前後方向に延びるサイドシルと、下端側がサイドシルに接続され、上下方向に延びるセンターピラーと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。センターピラーは、車体の幅方向外側に位置するアウタ部材と、車体の幅方向内側に位置するインナ部材と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−7021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記車体側部構造では、アウタ部材およびインナ部材のサイドシルとの接続部を、アウタ部材およびインナ部材の他の部分と同一面上に設けることにより、サイドシルとセンターピラーとの接続部分の剛性を向上させている。
【0005】
しかし、前記車体側部構造においては、車体側部の剛性は向上するが、車両のコーナリング走行時のサイドシルの自然な撓みが、センターピラーによって阻害され、操舵感に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
本発明の目的とするところは、コーナリング走行時におけるサイドシルの撓みを保持することで、車両の走行中における操舵感を向上させることのできる車体側部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、車体側部の下部側を前後方向に延びるサイドシルと、下端側がサイドシルに接続され、上下方向に延びるセンターピラーと、を備えた車体側部構造において、前記センターピラーは、車幅方向外側に位置するアウタ部材と、車幅方向内側に位置するインナ部材と、を有し、前記アウタ部材および前記インナ部材の下端には、前記サイドシルに接続される接続部が設けられ、前記アウタ部材および前記インナ部材の前記接続部の上方には、屈曲形成され、外部から作用する力に対して変形可能な屈曲部が設けられている。
【0008】
これにより、サイドシルの撓みに応じて、センターピラーの屈曲部が変形することから、車両のコーナリング時に、屈曲部が弾性変形することで、サイドシルの撓みが保持される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両のコーナリング時に、屈曲部が弾性変形することで、サイドシルの撓みを保持することができるので、操舵感を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示す車体側面部の斜視図である。
【図2】車体側面部の要部斜視図である。
【図3】車体側面部の概略正面図である。
【図4】側面衝突時の車体側面部の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図4は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0012】
本発明の車体側部構造としては、図1に示すように、車体の下部側を前後方向に延びるサイドシル10と、車体の上部側を前後方向に延びるルーフサイドレール20と、サイドシル10の前端に下端が接続されるとともに、ルーフサイドレール20の前端に上端が接続されたフロントピラー30と、サイドシル10の後端に下端が接続されるとともに、ルーフサイドレール20の後端に上端が接続されたリヤピラー40と、サイドシル10の前後方向略中央部に下端が接続されるとともに、ルーフサイドレール20の前後方向中央部に上端が接続されたセンターピラー50と、を備えている。サイドシル10、ルーフサイドレール20、フロントピラー30およびセンターピラー50の間には、フロントドア用の開口部が形成されている。また、サイドシル10、ルーフサイドレール20、リヤピラー40およびセンターピラー50の間には、リヤドア用の開口部が形成されている。
【0013】
サイドシル10は、図3に示すように、断面形状が四角形の中空状に形成されている。サイドシル10は、車幅方向外側に位置するアウタ部材としてのシルアウタ11と、車幅方向内側に位置するインナ部材としてのシルインナ12と、から形成されている。シルアウタ11とシルインナ12は、それぞれの上端および下端に設けられたフランジ11a,12a同士を互いに溶接することによって接続される。
【0014】
センターピラー50は、図3に示すように、中空状に形成されている。センターピラー50は、車幅方向外側に位置するピラーアウタ51と、車幅方向内側に位置するピラーインナ52と、から形成されている。
【0015】
ピラーアウタ51の下端側には、シルアウタ11の車幅方向外側面に接続される接続部51aが設けられている。接続部51aは、溶接によってシルアウタ11に固定される。ピラーアウタ51の接続部51aの上方には、屈曲形成され、外部から作用する力で弾性変形可能な屈曲部51bが設けられている。屈曲部51bは、シルアウタ11の上面に沿って車幅方向外側に延びるように形成されている。ピラーアウタ51は、屈曲部51bの上側に対して屈曲部51bの下側が車幅方向外側に位置している。
【0016】
ピラーインナ52の下端側には、シルアウタ11のフランジ11aとシルインナ12のフランジ12aとの間に挟まれた状態でサイドシル10に接続される接続部52aが設けられている。接続部52aは、溶接によってフランジ11aとフランジ12aとの間に固定される。ピラーインナ52の接続部52aの上方には、屈曲形成され、外部から作用する力で弾性変形可能な屈曲部52bが設けられている。ピラーインナ52は、屈曲部52bの上側に対して屈曲部52bの下側が車幅方向外側に位置している。
【0017】
屈曲部51b,52bは、それぞれピラーアウタ51およびピラーインナ52の下部側に設けられるとともに、互いに略同一の高さ位置に設けられている。
【0018】
以上のように構成された車体側部構造において、センターピラー50の下端側は、ピラーアウタ51およびピラーインナ52の弾性変形可能な屈曲部51b,52bを介してサイドシル10に接続されている。このため、車両のコーナリング走行時には、屈曲部51b,52bが弾性変形することで、走行中に生じるサイドシル10の自然な撓みをセンターピラー50が阻害しないようにしている。
【0019】
また、車体の側方からの衝突等、車両の幅方向外側から衝撃力が加わる場合に、センターピラー50は、ピラーアウタ51およびピラーインナ52の下端側に位置する屈曲部51b,52bを中心に車幅方向内側に向かって変形する。このとき、センターピラー50は、乗員の胸部側に張り出されることなく、搭乗者の腰部側に張り出されるように変形するため、乗員の胸部の傷害値の低減が可能となる。
【0020】
このように、本実施形態の車体側部構造によれば、センターピラー50に、接続部51a,52aの上方に位置する部分を屈曲することにより形成され、変形可能な屈曲部51b,52bを設けている。これにより、車両のコーナリング走行時には、屈曲部51b,52bが弾性変形することで、サイドシル10の走行時の撓みを保持することが可能となるので、操舵感を向上させることが可能となる。
【0021】
また、ピラーアウタ51およびピラーインナ52は、屈曲部51b,52bの上側に対して屈曲部51b,52bの下側が車幅方向外側に位置している。これにより、車体の上部側が車幅方向外側に張り出すことがないので、車体の外部形状に影響を及ぼすことがない。
【0022】
また、屈曲部51b,52bは、それぞれピラーアウタ51およびピラーインナ52の下部側に設けられるとともに、互いに略同一の高さ位置に設けられている。これにより、車両の幅方向外側から衝撃力が加わる場合に、センターピラー50は、センターピラー50の下部側に位置する屈曲部51b,52bを中心に車幅方向内側に向かって変形させることができるので、乗員の胸部に対する傷害値を小さくすることが可能となる。
【0023】
また、屈曲部51bが、シルアウタ11の上面に沿って車幅方向外側に延びるように形成されている。これにより、屈曲部51bを外観上サイドシル10と一体に構成することができるため、見栄えを損なうことはない。
【0024】
尚、前記実施形態では、屈曲部51b,52bをシルアウタ11の上面に沿って車幅方向外側に延びるように形成することで、サイドシル10の走行時の撓みをセンターピラー50が阻害しないようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、シルアウタ11と間隔をおいた上方に屈曲部51b,52bを設けても、サイドシル10の走行時の撓みをセンターピラー50が阻害しないようにすることが可能である。また、屈曲部51b,52bの形状についても、外部から作用する力によって変形可能であれば、車幅方向外側に延びるように形成したものに限られない。
【0025】
また、溶接によってサイドシル10にセンターピラー50を接続するようにしたものを示したが、例えばネジやボルトとナット等、サイドシル10にセンターピラー50を接続することが可能であればよい。
【符号の説明】
【0026】
10…サイドシル、11…シルアウタ、50…センターピラー、51…ピラーアウタ、51a…接続部、51b…屈曲部、52…ピラーインナ、52a…接続部、52b…屈曲部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部の下部側を前後方向に延びるサイドシルと、下端側がサイドシルに接続され、上下方向に延びるセンターピラーと、を備えた車体側部構造において、
前記センターピラーは、車幅方向外側に位置するアウタ部材と、車幅方向内側に位置するインナ部材と、を有し、
前記アウタ部材および前記インナ部材の下端には、前記サイドシルに接続される接続部が設けられ、
前記アウタ部材および前記インナ部材の前記接続部の上方には、屈曲形成され、外部から作用する力に対して変形可能な屈曲部が設けられている
ことを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記アウタ部材および前記インナ部材は、前記屈曲部の上側に対して前記屈曲部の下側が車幅方向外側に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記各屈曲部は、それぞれ前記アウタ部材および前記インナ部材の下部側に設けられるとともに、互いに略同一の高さ位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記アウタ部材の屈曲部は、前記サイドシルの外面に沿って車幅方向外側に延びるように形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10440(P2013−10440A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144789(P2011−144789)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】