説明

車体側部構造

【課題】ピラー内にハーネスを配策した状態で、ピラーの剛性(強度)を確保し、かつ、運転者の視界を確保できる車体側部構造を提供する。
【解決手段】車体側部構造は、窓枠の縦辺を構成するサブピラーを備える。サブピラーは、第1閉断面部81を有するピラー枠体82、前重合フランジ83および後内装部材71を備える。後内装部材およびサブピラーインナ33との間に、ハーネス90を配策可能な第2閉断面部88が、第1閉断面部に対して車体前後方向に並列に配置されている。また、ハーネスの車体前後方向の縦寸法L2より前重合フランジの車体前後方向の長さ寸法L1が大きく形成されている。さらに、前重合フランジに複数の結合部が千鳥状に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側部の前方側に窓枠が設けられ、窓枠の縦辺がピラーで構成され、コーナ窓ガラスが設けられた車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部構造に備えたフロントピラーとして、中空部材の前方側にアウタパネルを設け、中空部材の後方に内装部材が設けられ、中空部材、アウタパネルおよび内装部材の三部材を運転者の視界方向に対して重ねるように配置したものが知られている。
このように、中空部材、アウタパネルおよび内装部材の三部材を運転者の視界方向に重ねることで、フロントピラーの剛性を確保し、かつ、運転者の視界を確保することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−182079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このフロントピラーは、中空部材の後方に内装部材を設けることで中空部材および内装部材で閉断面が形成される。
よって、中空部材および内装部材で形成された閉断面内に、例えば車両上部のマップランプやルーフアンテナなどの機器に接続されるハーネスが配策されることがある。
しかし、中空部材および内装部材で形成された閉断面内にハーネスを配策する場合、フロントピラーの幅寸法が広がることが考えられ、運転者の視界を確保する工夫が要求される。
【0005】
本発明は、ピラー内にハーネスを配策した状態で、ピラーの剛性(強度)を確保し、かつ、運転者の視界を確保できる車体側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体側部の前方側に配置されるコーナ窓ガラスと、該コーナ窓ガラスが設けられる窓枠の縦辺を構成するピラーとを備えた車体側部構造であって、前記ピラーは、車室外側のピラーアウタおよび車室内側のピラーインナで形成され、第1閉断面部を有するピラー枠体と、前記ピラーアウタおよび前記ピラーインナを重ね合わせることにより形成され、前記第1閉断面部の車幅方向外側端から前記コーナ窓ガラスの前後方向中心に向けて前記コーナ窓ガラスに沿うように延出された重合フランジと、前記重合フランジの端部から車幅方向内側に延出された第1被覆部と、該第1被覆部の車幅方向中央側端から車体前後方向に延出されて前記第1閉断面部を車幅方向内側から覆う第2被覆部と、を有する内装部材と、を備え、前記内装部材および前記ピラーインナとの間に前記第1閉断面部に対して車体前後方向に並列に配置され、ハーネスを配策可能な第2閉断面部が形成され、前記ハーネスの車体前後方向の縦寸法より前記重合フランジの車体前後方向の長さ寸法が大きく形成され、前記ピラーアウタおよび前記ピラーインナを結合するために、前記重合フランジに複数の結合部が千鳥状に設けられたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記ピラーは、前記窓枠の車体前方側の縦辺部を構成するフロントピラーアッパの車体後方に配置され、前記窓枠の車体後方側の縦辺部を構成するサブピラーであり、前記ピラーアウタは、前記コーナ窓ガラスに沿うサブピラーアウタ第1フランジと、該サブピラーアウタ第1フランジの後端から車体後方に向けて延出されたサブピラーアウタ縦壁と、該サブピラーアウタ縦壁の後端から車幅方向中央側に向けて延出されたサブピラーアウタ横壁と、該サブピラーアウタ横壁の車幅方向中央側端から車体後方に向けて延出されたサブピラーアウタ第2フランジと、を有するサブピラーアウタであり、前記ピラーインナは、前記サブピラーアウタ第1フランジに車室側から結合されるサブピラーインナ第1フランジと、該サブピラーインナ第1フランジの後端から車幅方向中央側に向けて延出されたサブピラーインナ横壁と、該サブピラーインナ横壁の車幅方向中央側端から車体後方に向けて延出されたサブピラーインナ縦壁と、該サブピラーインナ縦壁の後端から車体後方に向けて延出され、前記サブピラーアウタ第2フランジに結合されるサブピラーインナ第2フランジと、を有するサブピラーインナであり、前記ピラー枠体は、前記サブピラーアウタ第1フランジおよび前記サブピラーインナ第1フランジが重ね合わされた状態で複数箇所が千鳥状に結合されて前記重合フランジが形成され、かつ、前記サブピラーアウタ第2フランジおよび前記サブピラーインナ第2フランジが結合されることで、前記サブピラーアウタ縦壁、前記サブピラーアウタ横壁、前記サブピラーインナ横壁および前記サブピラーインナ縦壁により閉断面状に形成されて前記第1閉断面部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記サブピラーインナ横壁は、車幅方向の長さ寸法が前記ハーネスの車幅方向の横寸法より大きく形成され、前記ハーネスは、前記第1閉断面部の車体前方に配策されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、内装部材およびピラーインナ間にハーネスを配策可能な第2閉断面部を形成し、この第2閉断面部を第1閉断面部に対して車体前後方向に並列に配置し、ハーネスの車体前後方向の縦寸法に比してハーネスに対向する重合フランジの車体前後方向の長さ寸法を大きく形成し、さらにピラーアウタおよびピラーインナを結合するために、重合フランジに複数の結合部を千鳥状に設けた。
【0010】
よって、ハーネスを配策するスペースを確保しつつ、複数の千鳥状に設けた結合部によってピラーの剛性を確保することができるため、ピラーアウタおよびピラーインナで形成した第1閉断面部を小型化することができる。
これにより、第2閉断面部にハーネスを配策する場合であっても、第1閉断面部の剛性を確保しつつ、第1閉断面部を小型化して、運転者の視界を好適に確保することができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、窓枠の車体後方側の縦辺部を構成するサブピラーにピラーを適用した。よって、ピラーは乗員(運転者)に近い位置に配置されている。
これにより、ピラーがサブピラーとして用いられて乗員(運転者)に近い位置に配置された場合でも、運転者の視界を好適に確保することができる。
【0012】
さらに、ピラーに備えた重合フランジは、車体前後方向の長さ寸法が大きく形成され、複数の結合部が千鳥状に設けられている。よって、重合フランジ、すなわちピラーの剛性(強度)が確保されている。
このように、剛性が確保されたピラーを、乗員(運転者)に近い位置に配置することで、乗員をピラーで好適に保護することができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、ハーネスの車体前後方向の縦寸法より重合フランジの車体前後方向の長さ寸法を大きく形成した。
また、ハーネスの車幅方向の横寸法よりサブピラーインナ横壁の車幅方向の長さ寸法を大きく形成した。
これにより、第2閉断面部にハーネスの断面積より大きな空間を確保できるので、第2閉断面部にハーネスを好適に配策することができる。
【0014】
ここで、ハーネスの車幅方向の横寸法よりサブピラーインナ横壁の車幅方向の長さ寸法が大きく形成され、サブピラーインナ横壁の車体前方側にハーネスが配策されている。
よって、内装部材の第2被覆部を、後端から車体前方に向けて車幅方向外向きとなるように配置することができる。
これにより、第2被覆部を運転者の視界方向に沿って傾斜させることができる。
【0015】
さらに、ハーネスの車体前後方向の縦寸法より重合フランジの車体前後方向の長さ寸法が大きく形成されている。
よって、内装部材の第1被覆部を、車幅方向外側端が車幅方向中央側端より車体前方側に配置できる。
これにより、第1被覆部を視界方向に対して車幅方向外方に傾斜させることができる。
【0016】
このように、第2被覆部を視界方向に沿って傾斜させ、かつ、第1被覆部を視界方向に対して車幅方向外方に傾斜させることで、内装部材を運転者の視界方向に沿う方向に配置できる。
これにより、運転者の視界領域を広げて、運転者の視界を一層好適に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車体側部構造を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】本発明に係る車体側部構造のピラー枠体、前重合フランジおよび後重合フランジを示す斜視図である。
【図5】本発明に係るサブピラーに対するハーネスの関係を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0019】
実施例に係る車体側部構造10について説明する。
図1に示すように、車体側部構造10は、床部を形成するフロアパネル12と、フロアパネル12の外側部に沿って車体前後方向に延出されたサイドシル13と、サイドシル13の前端13aから立ち上げられたフロントピラー14と、フロントピラー14の窓枠24に設けられたコーナ窓ガラス17と、フロントピラー14の上端14aから車体後方に延出されるルーフサイドレール18と、ルーフサイドレール18に設けられたルーフパネル21とを備えている。
【0020】
窓枠24は、フロントピラー14の上半部14bに形成されていることにより車体側部の前方側に配置されている。
この窓枠24は、フロントピラーアッパ25、サブピラー(ピラー)26、ルーフサイドレール18のレール前部19およびフロントピラーロア27で略矩形状(詳しくは、略平行四辺形状)に形成されている。
【0021】
フロントピラーアッパ25は、窓枠24の車体前方側の縦辺部を構成する部材である。
このフロントピラーアッパ25は、車体側部の前方側において車体後方に向けて上り勾配となるように延出されている。
サブピラー26は、フロントピラーアッパ25の車体後方に配置され、窓枠24の車体後方側の縦辺部を構成する部材である。
【0022】
図2示すように、サブピラー26は、車室15の外側に設けられたサブピラーアウタ(ピラーアウタ)53と、車室15内側に設けられたサブピラーインナ(ピラーインナ)33と、サブピラーインナ33を車室15側から覆う後内装部材(内装部材)71とを備えている。
【0023】
図3示すように、サブピラーアウタ53およびサブピラーインナ33が結合されることにより、第1閉断面部81を有するピラー枠体82と、前重合フランジ(重合フランジ)83および後重合フランジ84が形成される。
【0024】
サブピラーアウタ53は、サブピラーアウタ第1フランジ63と、サブピラーアウタ縦壁64と、サブピラーアウタ横壁65と、サブピラーアウタ第2フランジ66とを有する。
【0025】
サブピラーアウタ第1フランジ63は、コーナ窓ガラス17の後端17bに沿って車体前後方向に向けて配置されている。
サブピラーアウタ縦壁64は、サブピラーアウタ第1フランジ63の後端63aから車体後方に向けて延出された壁部である。
【0026】
サブピラーアウタ横壁65は、サブピラーアウタ縦壁64の後端64aから車幅方向中央側に向けて延出された壁部である。
このサブピラーアウタ横壁65は、後端64aから車幅方向内側に向けるとともに車体後方に向けて傾斜状に延出されている。
【0027】
サブピラーアウタ第2フランジ66は、サブピラーアウタ横壁65の車幅方向中央側端65aから車体後方に向けてサブピラーアウタ第1フランジ63に対して略平行に延出されている。
サブピラーインナ33は、サブピラーインナ第1フランジ46と、サブピラーインナ横壁44と、サブピラーインナ縦壁43と、サブピラーインナ第2フランジ49とを有する。
【0028】
サブピラーインナ第1フランジ46は、コーナ窓ガラス17の後端17bに沿って車体前後方向に向けて配置され、サブピラーアウタ第1フランジ63に車室15側から結合されている。
サブピラーインナ横壁44は、サブピラーインナ第1フランジ46の後端46aから車幅方向中央側に向けて延出された壁部である。
このサブピラーインナ横壁44は、後端46aから車幅方向内側に向けるとともに車体後方に向けて傾斜状に延出されている。
【0029】
サブピラーインナ縦壁43は、サブピラーインナ横壁44の車幅方向中央側端44aから車体後方に向けて延出された壁部である。
サブピラーインナ第2フランジ49は、サブピラーインナ縦壁43の後端43aから車体後方に向けてサブピラーインナ第1フランジ46に対して略平行に延出されている。
このサブピラーインナ第2フランジ49は、サブピラーアウタ第2フランジ66に車室15側から結合されている。
【0030】
図4示すように、サブピラーアウタ第1フランジ63およびサブピラーインナ第1フランジ46は、互いに重ね合わされた状態でスポット溶接により複数の結合部86で千鳥状に結合されている。
サブピラーアウタ第1フランジ63およびサブピラーインナ第1フランジ46が結合されることにより前重合フランジ83が形成されている。
【0031】
前重合フランジ83に複数の結合部86を千鳥状に設けることで、複数の結合部86を前重合フランジ83の全域に設けることができる。
これにより、前重合フランジ83の剛性を確保することができるので、サブピラーアウタ53およびサブピラーインナ33、すなわちサブピラー26(図3参照)の剛性(強度)を確保することができる。
【0032】
図3示すように、前重合フランジ83は、ピラー枠体82(第1閉断面部81)の車幅方向外側端82aからコーナ窓ガラス17の前後方向中心17a(図2参照)に向けてコーナ窓ガラス17に沿うように延出されている。
ピラー枠体82の車幅方向外側端82aは、詳しくは、ピラー枠体82の車幅方向外側端で、かつ、ピラー枠体82の車体前側端に位置する角部である。
【0033】
また、図4示すように、サブピラーアウタ第2フランジ66およびサブピラーインナ第2フランジ49は、互いに重ね合わされた状態でスポット溶接により直線状に結合されている。
よって、サブピラーアウタ第2フランジ66およびサブピラーインナ第2フランジ49で後重合フランジ84が形成されている。
【0034】
図3示すように、後重合フランジ84は、ピラー枠体82(第1閉断面部81)の車幅方向中央側端82bから車体後方に向けて延出されている。
ピラー枠体82の車幅方向中央側端82bは、詳しくは、ピラー枠体82の車幅方向中央側端で、かつ、ピラー枠体82の車体後側端に位置する角部である。
後重合フランジ84は、前重合フランジ83に対して略平行に配置されている。
【0035】
このように、サブピラーアウタ第1フランジ63およびサブピラーインナ第1フランジ46が結合され、かつ、サブピラーアウタ第2フランジ66およびサブピラーインナ第2フランジ49が結合されることでサブピラーアウタ53およびサブピラーインナ33が結合される。
【0036】
これにより、ピラー枠体82は、サブピラーアウタ縦壁64、サブピラーアウタ横壁65、サブピラーインナ横壁44およびサブピラーインナ縦壁43により閉断面状(略平行四辺形状)に形成される。
ピラー枠体82が閉断面状に形成されることにより、ピラー枠体82内に第1閉断面部81が備えられている。
【0037】
ピラー枠体82、前重合フランジ83および後重合フランジ84が車室15側から後内装部材71で覆われている。
後内装部材71は、サブピラーインナ33を車室15側から覆う部材である。
この後内装部材71は、サブピラーインナ33の車体前方側に設けられた前面被覆部(第1被覆部)72と、サブピラーインナ33の車幅方向中心側に設けられた側面被覆部(第2被覆部)73とを有する。
【0038】
前面被覆部72は、前重合フランジ83の前端(端部)83aの車体前方側から車幅方向内側に向けるとともに車体後方に向けて傾斜状に延出されている。
この前面被覆部72は、サブピラーインナ横壁44の車体前方側においてサブピラーインナ横壁44に沿って配置されている。
【0039】
側面被覆部73は、前面被覆部72の車幅方向中央側端72aから車体後方に向けるとともに車幅方向中央側に向けて傾斜状に延出されている。
この状態で、側面被覆部73の後端73aが後重合フランジ84の後端84aの近傍に配置されている。
また、側面被覆部73の後壁73bがピラー枠体82の車幅方向中央側端82b(サブピラーインナ縦壁43の後端43a)の近傍に配置されている。
側面被覆部73によりピラー枠体82が車幅方向内側から覆われている。
【0040】
この後内装部材71は、サブピラーアウタ53およびサブピラーインナ33を車室15側から覆うようにサブピラーアウタ53およびサブピラーインナ33に設けられている。
サブピラーアウタ53およびサブピラーインナ33を後内装部材71で覆うことで、サブピラーインナ33および後内装部材71間に第2閉断面部88が形成されている。
具体的には、サブピラーインナ第1フランジ46(前重合フランジ83)、サブピラーインナ横壁44、サブピラーインナ縦壁43および後内装部材71で第2閉断面部88が形成されている。
【0041】
図5に示すように、第2閉断面部88は、第1閉断面部81に対して車体前方向(白抜き矢印Fr方向)に並列に配置され、前重合フランジ83に対向させてハーネス90が配策可能に形成されている。
ハーネス90にストラップ92を介してクリップ93が取り付けられ、クリップ93がサブピラーインナ横壁44に取り付けられることにより、ハーネス90が第2閉断面部88に配策されている。
ハーネス90を第2閉断面部88に配策することで、サブピラーアウタ53およびハーネス90が運転者の視界方向(矢印A)に沿って重ねられた状態に配置されている。
【0042】
ここで、前重合フランジ83は、車体前後方向の長さ寸法L1が、ハーネス90の車体前後方向の縦寸法L2より大きく形成されている。
また、サブピラーインナ横壁44は、車幅方向の長さ寸法L3が、ハーネス90の車幅方向の横寸法L4より大きく形成されている。
【0043】
よって、前重合フランジ83、サブピラーインナ横壁44および後内装部材71で形成する空間89をハーネス90の断面積より大きく確保できる。
このように、第2閉断面部88にハーネス90の断面積より大きな空間89を確保できるので、第2閉断面部88にハーネス90を好適に配策することができる。
【0044】
この空間89は、第1閉断面部81に対して車体前方向に並列に位置している。
よって、空間89にハーネス90を配策することで、ハーネス90が第1閉断面部81の車体前方に配策される。
【0045】
ここで、ハーネス90の車幅方向の横寸法L4よりサブピラーインナ横壁44の車幅方向の長さ寸法L3が大きく形成され、サブピラーインナ横壁44の車体前方側にハーネス90が配策されている。
よって、後内装部材71の側面被覆部73を、後端73aから車体前方に向けて車幅方向外向きなるように傾斜させて配置できる。
これにより、側面被覆部73を視界方向(矢印A)に沿って傾斜させることができる。
【0046】
さらに、ハーネス90の車体前後方向の縦寸法L2より前重合フランジ83の車体前後方向の長さ寸法L1が大きく形成されている。
よって、後内装部材71の前面被覆部72を、車幅方向外側端72bが車幅方向中央側端72aより車体前方側に位置させた状態に傾斜させて配置できる。
これにより、前面被覆部72を視界方向(矢印A)に対して車幅方向外方に傾斜させることができる。
【0047】
このように、側面被覆部73を視界方向に沿って傾斜させ、かつ、前面被覆部72を視界方向に対して車幅方向外方に傾斜させることで、後内装部材71を運転者の視界方向(矢印A)に沿う方向に配置できる。
【0048】
以上説明したように、ピラー枠体82およびハーネス90が運転者の視界方向(矢印A)に重ねられた状態に配置され、後内装部材71が運転者の視界方向に沿う方向に配置されることで、サブピラー26の幅寸法L5を小さく抑えることができる。
ここで、サブピラー26の幅寸法L5とは、運転者の視界方向(矢印A)に対して直交する方向(矢印B)の寸法をいう。
これにより、運転者の視界領域を広げて、運転者の視界を一層好適に確保することができる。
【0049】
さらに、サブピラー26は、前重合フランジ83の車体前後方向の長さ寸法L1が大きく形成されている。さらに、前重合フランジ83に複数の結合部86(図4参照)が千鳥状に設けられている。よって、前重合フランジ83、すなわちサブピラー26の剛性が確保されている。
【0050】
このように、サブピラー26の剛性を確保することで、サブピラー26内にハーネス90を配策した状態で、サブピラー26の剛性(強度)を確保することができる。
これにより、車両の前方から入力した荷重をサブピラー26で好適に支えることができる。
加えて、剛性が確保されたサブピラー26を、乗員(運転者)に近い位置に配置することで、乗員をサブピラー26で好適に保護することができる。
【0051】
以上説明したように、サブピラー26によれば、後内装部材71およびサブピラーインナ33間にハーネス90を配策可能な第2閉断面部88を形成し、この第2閉断面部88を第1閉断面部81に対して車体前後方向に並列に配置し、ハーネス90の車体前後方向の縦寸法L2に比してハーネス90に対向する前重合フランジ83の車体前後方向の長さ寸法L1を大きく形成し、さらにサブピラーアウタ53およびサブピラーインナ33を結合するために、前重合フランジ83に複数の結合部86を千鳥状に設けた。
【0052】
よって、ハーネス90を配策するスペースを確保しつつ、複数の千鳥状に設けた結合部86によってサブピラー26の剛性を確保することができるため、サブピラーアウタ53およびサブピラーインナ33で形成した第1閉断面部81を小型化することができる。
これにより、第2閉断面部88にハーネス90を配策する場合であっても、第1閉断面部81(すなわち、ピラー枠体82)の剛性を確保しつつ、第1閉断面部81を小型化して、運転者の視界を好適に確保することができる。
【0053】
図2に示すように、フロントピラーアッパ25は、車室15外側に設けられたフロントピラーアッパアウタ51と、車室15内側に設けられたフロントピラーアッパインナ31と、フロントピラーアッパインナ31を車室15側から覆う前内装部材76とを備えている。
【0054】
フロントピラーアッパアウタ51およびフロントピラーアッパインナ31が結合されることにより、第3閉断面部95を有するピラー枠体94と、前重合フランジ96および後重合フランジ97が形成されている。
【0055】
前内装部材76は、フロントピラーアッパアウタ51およびフロントピラーアッパインナ31の車体後方側に設けられた後面被覆部77と、フロントピラーアッパインナ31の車幅方向中心側に設けられた側面被覆部78とを有する。
ここで、フロントピラーアッパ25は、サブピラー26と類似した部材であり、詳しい説明を省略する。
【0056】
なお、本発明に係る車体側部構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、ピラーとしてサブピラー26を例示したが、これに限らないで、ピラーをフロントピラーアッパに適用することも可能である。
この場合、内装部材として例示した後内装部材71は前内装部材に適用される。
【0057】
また、前記実施例で示した車体側部構造10、コーナ窓ガラス17、窓枠24、フロントピラーアッパ25、サブピラー26、サブピラーインナ33、サブピラーアウタ53、後内装部材71、前面被覆部72、側面被覆部73、第1閉断面部81、ピラー枠体82、前重合フランジ83、第2閉断面部88およびハーネス90などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、車体側部の前方側に窓枠が設けられ、窓枠の縦辺がピラーで構成され、コーナ窓ガラスが設けられた車体側部構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0059】
10…車体側部構造、15…車室、17…コーナ窓ガラス、24…窓枠、25…フロントピラーアッパ、26…サブピラー(ピラー)、33…サブピラーインナ(ピラーインナ)、43…サブピラーインナ縦壁、43a…サブピラーインナ縦壁の後端、44…サブピラーインナ横壁、44a…サブピラーインナ横壁の車幅方向中央側端、46…サブピラーインナ第1フランジ、46a…サブピラーインナ第1フランジの後端、49…サブピラーインナ第2フランジ、53…サブピラーアウタ(ピラーアウタ)、63…サブピラーアウタ第1フランジ、63a…サブピラーアウタ第1フランジの後端、64…サブピラーアウタ縦壁、64a…サブピラーアウタ縦壁の後端、65…サブピラーアウタ横壁、65a…サブピラーアウタ横壁の車幅方向中央側端、66…サブピラーアウタ第2フランジ、71…後内装部材(内装部材)、72…前面被覆部(第1被覆部)、72a…前面被覆部の車幅方向中央側端、73…側面被覆部(第2被覆部)、81…第1閉断面部、82…ピラー枠体、83…前重合フランジ(重合フランジ)、83a…前重合フランジの前端(端部)、86…結合部、88…第2閉断面部、90…ハーネス、L1…前重合フランジ83の車体前後方向の長さ寸法、L2…ハーネスの車体前後方向の縦寸法、L3…サブピラーインナ横壁44の車幅方向の長さ寸法、L4…ハーネスの車幅方向の横寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部の前方側に配置されるコーナ窓ガラスと、該コーナ窓ガラスが設けられる窓枠の縦辺を構成するピラーとを備えた車体側部構造であって、
前記ピラーは、
車室外側のピラーアウタおよび車室内側のピラーインナで形成され、第1閉断面部を有するピラー枠体と、
前記ピラーアウタおよび前記ピラーインナを重ね合わせることにより形成され、前記第1閉断面部の車幅方向外側端から前記コーナ窓ガラスの前後方向中心に向けて前記コーナ窓ガラスに沿うように延出された重合フランジと、
前記重合フランジの端部から車幅方向内側に延出された第1被覆部と、該第1被覆部の車幅方向中央側端から車体前後方向に延出されて前記第1閉断面部を車幅方向内側から覆う第2被覆部と、を有する内装部材と、
を備え、
前記内装部材および前記ピラーインナとの間に前記第1閉断面部に対して車体前後方向に並列に配置され、ハーネスを配策可能な第2閉断面部が形成され、
前記ハーネスの車体前後方向の縦寸法より前記重合フランジの車体前後方向の長さ寸法が大きく形成され、
前記ピラーアウタおよび前記ピラーインナを結合するために、前記重合フランジに複数の結合部が千鳥状に設けられたことを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記ピラーは、
前記窓枠の車体前方側の縦辺部を構成するフロントピラーアッパの車体後方に配置され、前記窓枠の車体後方側の縦辺部を構成するサブピラーであり、
前記ピラーアウタは、
前記コーナ窓ガラスに沿うサブピラーアウタ第1フランジと、
該サブピラーアウタ第1フランジの後端から車体後方に向けて延出されたサブピラーアウタ縦壁と、
該サブピラーアウタ縦壁の後端から車幅方向中央側に向けて延出されたサブピラーアウタ横壁と、
該サブピラーアウタ横壁の車幅方向中央側端から車体後方に向けて延出されたサブピラーアウタ第2フランジと、を有するサブピラーアウタであり、
前記ピラーインナは、
前記サブピラーアウタ第1フランジに車室側から結合されるサブピラーインナ第1フランジと、
該サブピラーインナ第1フランジの後端から車幅方向中央側に向けて延出されたサブピラーインナ横壁と、
該サブピラーインナ横壁の車幅方向中央側端から車体後方に向けて延出されたサブピラーインナ縦壁と、
該サブピラーインナ縦壁の後端から車体後方に向けて延出され、前記サブピラーアウタ第2フランジに結合されるサブピラーインナ第2フランジと、を有するサブピラーインナであり、
前記ピラー枠体は、
前記サブピラーアウタ第1フランジおよび前記サブピラーインナ第1フランジが重ね合わされた状態で複数箇所が千鳥状に結合されて前記重合フランジが形成され、
かつ、前記サブピラーアウタ第2フランジおよび前記サブピラーインナ第2フランジが結合されることで、
前記サブピラーアウタ縦壁、前記サブピラーアウタ横壁、前記サブピラーインナ横壁および前記サブピラーインナ縦壁により閉断面状に形成されて前記第1閉断面部を有することを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記サブピラーインナ横壁は、
車幅方向の長さ寸法が前記ハーネスの車幅方向の横寸法より大きく形成され、
前記ハーネスは、
前記第1閉断面部の車体前方に配策されることを特徴とする請求項2記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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