説明

車体前部の構造

【課題】本発明の目的は、車体前部のフレームとフロントサイドメンバとの間の接合強度を高めるとともに、組付時の作業性も良い車体前部の構造を提供することにある。
【解決手段】本発明においては、サイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14には、上方又は下方に延びる第1のフランジ14aが設けられ、サイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14において第1のフランジ14aと上下方向で反対側の位置には、上側ブレース8又は下側ブレース9から第2のフランジ31aが延びており、第1のフランジ14aが、上側ブレース8又は下側ブレース9に取付けられるとともに、第2のフランジ31aが、サイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14に取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部の構造に関し、詳しくは、フロントサイドメンバと上側ブレース及び下側ブレースとの接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の車体前部には、左右一対のフロントサイドメンバが配設され、フロントサイドメンバには、ラジエータ等の車両部品を支持するアッパメンバ及びロアメンバがブレース等の部材を介して連結されている。
【0003】
特許文献1には、アッパメンバをエプロンフレームによって支持する構造が開示されている。特許文献1において、ダッシュパネルの車幅方向両端部には、車両前側に延びる一対のエプロンフレームが設けられ、エプロンフレームの前端部は、フロントサイドメンバに連結されている。ここで、車両部品を支持するアッパメンバは、一対のエプロンフレームを掛け渡すように取付けられている。
【0004】
また、特許文献2には、アッパメンバを支持する別の構造が開示されている。特許文献2では、アッパメンバとロアメンバと車幅方向両側のサイドブレースとによって矩形状のフレームを形成し、このフレームをフロントサイドメンバに連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−235012号公報
【特許文献2】特開2010−149601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の構成では、フロントサイドメンバの上方に車両前後方向に延びるエプロンフレームが配置されるので、ライト等の部品の配置に制限がある。また、エプロンフレームの分だけ車両前部の重量が増加してしまうという問題もあった。
【0007】
これらの問題を解消するために、特許文献2では、エプロンフレームを用いない構成が提案されている。特許文献2では、矩形状のフレームをフロントサイドメンバに連結しているが、フレームのブレースとフロントサイドメンバとが1つの面でしか接合していないので、接合剛性が弱いという問題があった。
また、特許文献2の構造は、フロントバンパを取付ける部分にボルト等を使用した複雑な構成となっている。したがって、特許文献2の構造は、組付工数が多く、作業者に負担がかかるという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車体前部のフレームとフロントサイドメンバとの間の接合強度を高めるとともに、組付時の作業性も良い車体前部の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明によれば、車両前後方向に延在する断面矩形状のサイドメンバと、該サイドメンバの上側に配置された上側ブレースと、前記サイドメンバの下側に配置された下側ブレースとを備え、前記サイドメンバが、上下方向に対向する上面及び下面と、車幅方向に対向する側壁面とを有し、前記上側ブレースが前記サイドメンバの前記上面に取付けられるとともに、前記下側ブレースが前記サイドメンバの前記下面に取付けられている車体前部の構造において、前記サイドメンバの車幅方向外側の側壁面には、上方又は下方に延びる第1のフランジが設けられ、前記サイドメンバの車幅方向外側の側壁面において前記第1のフランジと上下方向で反対側の位置には、前記上側ブレース又は前記下側ブレースから第2のフランジが延びており、前記第1のフランジが、前記上側ブレース又は前記下側ブレースに取付けられるとともに、前記第2のフランジが、前記サイドメンバの車幅方向外側の側壁面に取付けられている。
【0010】
また、本発明の別の実施態様は、バンパメンバを取付けためのフロントプレートを更に備え、前記上側ブレース及び前記下側ブレースが、車幅方向外側の外側面と、該外側面の車両前後方向両端部から車幅方向内側に向かって延在する前面及び後面とを有し、前記上側ブレースの前記前面と、前記下側ブレースの前記前面と、前記サイドメンバの車両前後方向の前端部とが、上下方向において同一平面上に位置しており、前記フロントプレートが、前記上側ブレースの前記前面と前記サイドメンバの車両前後方向の前記前端部と前記下側ブレースの前記前面とにわたって溶接によって取付けられている。
【0011】
また、本発明の別の実施態様は、前記上側ブレースの前記前面の裏側面と、前記下側ブレースの前記前面の裏側面と、前記サイドメンバの車幅方向内側の側壁面とにわたって延在する補強部材を更に備えている。
【0012】
また、本発明の別の実施態様によれば、前記サイドメンバの車幅方向内側の側壁面が、上方又は下方に延びる第3のフランジを有し、前記第1のフランジ及び前記第3のフランジが、前記サイドメンバの矩形断面の対角位置に設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車体前部の構造によれば、車両前後方向に延在する断面矩形状のサイドメンバと、該サイドメンバの上側に配置された上側ブレースと、前記サイドメンバの下側に配置された下側ブレースとを備え、前記サイドメンバが、上下方向に対向する上面及び下面と、車幅方向に対向する側壁面とを有し、前記上側ブレースが前記サイドメンバの前記上面に取付けられるとともに、前記下側ブレースが前記サイドメンバの前記下面に取付けられている車体前部の構造において、前記サイドメンバの車幅方向外側の側壁面には、上方又は下方に延びる第1のフランジが設けられ、前記サイドメンバの車幅方向外側の側壁面において前記第1のフランジと上下方向で反対側の位置には、前記上側ブレース又は前記下側ブレースから第2のフランジが延びており、前記第1のフランジが、前記上側ブレース又は前記下側ブレースに取付けられるとともに、前記第2のフランジが、前記サイドメンバの車幅方向外側の側壁面に取付けられている。
上述の従来の構造では、車体の前部フレームのブレースとフロントサイドメンバとが1つの面でしか接合していなかった。これに対して、本発明によれば、上側ブレースが、サイドメンバの上面と車幅方向外側の側壁面の2つの面に取付けられているので、サイドメンバと上側ブレースとの接合強度が従来に比べて大きくなる。また、下側ブレースも、サイドメンバの下面と車幅方向外側の側壁面の2つの面に取付けられているので、サイドメンバと下側ブレースとの接合強度が従来に比べて大きくなる。したがって、本発明の車体前部の構造は、車体前部が衝突して衝突荷重がかかった際に、サイドメンバと上側ブレースとの接合箇所やサイドメンバと下側ブレースとの接合箇所で変形するのを抑えることができる。
さらに、サイドメンバの車幅方向外側の側壁面が、上下両端の位置で上側ブレース及び下側ブレースと接合しているので、走行中のサイドメンバの上下の振動を抑えることができる。これにより、車体前部からの振動がフロアパネルなどに伝わることが抑えられるので、車室内の騒音を小さくすることができる。
【0014】
また、本発明に係る車体前部の構造は、バンパメンバを取付けためのフロントプレートを更に備え、前記上側ブレース及び前記下側ブレースが、車幅方向外側の外側面と、該外側面の車両前後方向両端部から車幅方向内側に向かって延在する前面及び後面とを有し、前記上側ブレースの前記前面と、前記下側ブレースの前記前面と、前記サイドメンバの車両前後方向の前端部とが、上下方向において同一平面上に位置しており、前記フロントプレートが、前記上側ブレースの前記前面と前記サイドメンバの車両前後方向の前記前端部と前記下側ブレースの前記前面とにわたって溶接によって取付けられている。
上述の従来の構造では、フロントバンパを取付ける部分にボルト等を使用しており、作業者に負担がかかる構成となっていた。これに対して、本発明によれば、フロントプレートを上側ブレースの前面とサイドメンバの車両前後方向の前端部と下側ブレースの前面とに溶接によって取付ける構成となっている。フロントプレートの取付構造が、ボルトを用いない簡易な構成になっているので、作業性が良く、作業者にかかる負担を小さくすることができる。また、フロントプレートをサイドメンバと上側ブレースと下側ブレースの3つの部材で支持する構成となっているので、フロントプレートの接合強度をより高めることができる。また、フロントバンパで受けた荷重をサイドメンバと上側ブレースと下側ブレースの3つの部材で受けることができるので、従来に比べて荷重の分散効果や吸収効果を高めることができる。
【0015】
また、本発明に係る車体前部の構造は、前記上側ブレースの前記前面の裏側面と、前記下側ブレースの前記前面の裏側面と、前記サイドメンバの車幅方向内側の側壁面とにわたって延在する補強部材を更に備えている。
本発明によれば、補強部材によって、サイドメンバと上側ブレースとの接合箇所やサイドメンバと下側ブレースとの接合箇所の剛性を高めることができる。したがって、本発明の車体前部の構造は、車体前部が衝突して衝突荷重がかかった際に、サイドメンバと上側ブレースとの接合箇所やサイドメンバと下側ブレースとの接合箇所で変形するのをより効果的に抑えることができる。
【0016】
また、本発明に係る車体前部の構造によれば、前記サイドメンバの車幅方向内側の側壁面が、上方又は下方に延びる第3のフランジを有し、前記第1のフランジ及び前記第3のフランジが、前記サイドメンバの矩形断面の対角位置に設けられているので、サイドメンバの断面剛性を向上させることができる。また、第1のフランジ及び第3のフランジがサイドメンバの対角位置に配置されて、対角位置で上側ブレース及び下側ブレースに支持されるので、車体前部が衝突して衝突荷重がかかった際の変形(特に、横向きの倒れ変形)をより効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車体前部の構造の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車体前部の構造の斜視図であり、フロントバンパを省略した図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車体前部の右側部分を上方から見た斜視図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車体前部の右側部分を示した図であり、(a)は車両前方から見た平面図であり、(b)は車幅方向内側から見た平面図であり、(c)は車両後方から見た断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車体前部の右側部分を車両後方且つ車幅方向内側から見た斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る車体前部の右側部分を車両後方且つ車幅方向外側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る車体前部の構造を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、車体1の前部には、車両前後方向に延在する左右一対のフロントサイドメンバ2が配設されている。一対のフロントサイドメンバ2の前端部には、ラジエータ(図示せず)等の車両部品を支持する前部フレーム3が連結されている。また、図1に示すように、フロントサイドメンバ2の前端部及び前部フレーム3には、フロントプレート4を介して車幅方向に延在するフロントバンパ5が取付けられている。
【0020】
図1及び図2に示すように、前部フレーム3は、車幅方向に延在するアッパメンバ6及びロアメンバ7と、アッパメンバ6とフロントサイドメンバ2との間に延在する上側ブレース8と、ロアメンバ7とフロントサイドメンバ2との間に延在する下側ブレース9と、上下方向に延在し且つアッパメンバ6及びロアメンバ7の車幅方向中央部を連結するセンタブレース10とから構成されている。
なお、以下では、車体1の右側部分のフロントサイドメンバ2を用いて構造を説明する。以下の構造は、他方のフロントサイドメンバ2(車両左側)においても同様である。
【0021】
図4に示すように、フロントサイドメンバ2は、車幅方向断面がL字状の第1の部材11と、車幅方向断面が逆L字状の第2の部材12とから構成されている。第1の部材11は、フロントサイドメンバ2の下面13と車幅方向外側の側壁面14とを形成している。また、第2の部材12は、フロントサイドメンバ2の上面15と車幅方向内側の側壁面16とを形成している。
【0022】
図3及び図4に示すように、第1の部材11の車幅方向外側の側壁面14の上端部は、上方に延在する第1側壁フランジ14aを有している。さらに、図3に示すように、第1の部材11の車幅方向外側の側壁面14の前端部は、車幅方向外側に延びる第2側壁フランジ14bを有している。また、図4に示すように、第1の部材の下面13の車幅方向内側端部は、下方に延在する下面フランジ13aを有している。
【0023】
図4に示すように、第2の部材12の車幅方向内側の側壁面16の下端部は、下方に延在する第3側壁フランジ16aを有している。また、第2の部材12の上面15の車幅方向外側端部は、上方に延在する上面フランジ15aを有している。
【0024】
図4に示すように、フロントサイドメンバ2は、第1の部材11と第2の部材12とを接合することによって矩形形状の閉断面を形成している。詳細には、第1の部材11の第1側壁フランジ14aと第2の部材12の上面フランジ15aとが重ね合わされて接合されている。また、第1の部材11の下面フランジ13aと第2の部材12の第3側壁フランジ16aとが重ね合わされて接合されている。
【0025】
また、図4に示すように、重ね合わせされた第1の部材11の第1側壁フランジ14a及び第2の部材12の上面フランジ15aは、上方に延びる上側フランジ(第1のフランジ)17を形成している。また、重ね合わされた第1の部材11の下面フランジ13a及び第2の部材12の第3側壁フランジ16aは、下方に延びる下側フランジ(第3のフランジ)18を形成している。本実施形態では、図4に示すように、上側フランジ17及び下側フランジ18は、フロントサイドメンバ2の矩形断面の対角位置に設けられている。
【0026】
図3ないし図5に示すように、上側ブレース8は、車幅方向外側に位置する外側面21と、外側面21の車両前後方向両端部から車幅方向内側に向かって延在する前面22及び後面23とを有している。上側ブレース8の前面22及び後面23は、車両前後方向に対向している。
【0027】
図3に示すように、上側ブレース8の前面22の車幅方向内側端部は、車両前側に延在する前面フランジ22aを有している。また、上側ブレース8の後面23の車幅方向内側端部は、車両後側に延在する第1後面フランジ23aを有している。また、図5(b)及び(c)に示すように、上側ブレース8の後面23の下端部は、車両後側に延在する第2後面フランジ23bを有している。
【0028】
図3ないし図5に示すように、下側ブレース9は、車幅方向外側の外側面31と、外側面31の車両前後方向両端部から車幅方向内側に向かって延在する前面32及び後面33とを有している。下側ブレース9の前面32及び後面33は、車両前後方向に対向している。
【0029】
図3及び図4に示すように、下側ブレース9の外側面31の上端部は、上方に延びる外側面フランジ(第2のフランジ)31aを有している。外側面フランジ31aは、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14に沿って配置されている。
【0030】
また、図3に示すように、下側ブレース9の前面32の車幅方向内側端部は、車両前側に延在する前面フランジ32aを有している。また、図5(b)、図6及び図7に示すように、下側ブレース9の後面33の車幅方向内側端部は、車両後側に延在する第1後面フランジ33aを有している。さらに、図5(b)及び(c)に示すように、下側ブレース9の後面33の上端部は、車両後側に延在する第2後面フランジ33bを有している。
【0031】
また、本実施形態において、図3に示すように、上側ブレース8の前面22と、下側ブレース9の前面32と、フロントサイドメンバ2の側壁面14の車両前後方向前端部にある第2側壁フランジ14bとが、上下方向において同一平面上に位置している。そして、図5(a)に示すように、フロントプレート4が、上側ブレース8の前面22とフロントサイドメンバ2の側壁面14の第2側壁フランジ14bと下側ブレース9の前面32とにわたって配置されている。
【0032】
また、図6に示すように、本実施形態に係る車体前部の構造は、上側ブレース8とフロントサイドメンバ2の前端部と下側ブレース9との接合を補強する第1の補強部材40を備えている。
【0033】
図6に示すように、第1の補強部材40は、板状部41と、第1フランジ部42と、第2フランジ部43と、第3フランジ部44とを備えている。第1の補強部材40の板状部41は、上側ブレース8の前面22の裏側面と下側ブレース9の前面32の裏側面とにわたって延びている。また、第1の補強部材40の第1フランジ部42は、板状部41の車幅方向内側端部から車両前側に延びており、上側ブレース8の前面フランジ22aと下側ブレース9の前面フランジ32aとにわたって配置されている。
また、第1の補強部材40の第2フランジ部43は、板状部41から車両後側に延びており、フロントサイドメンバ2の車幅方向内側の側壁面16に沿って配置されている。また、第1の補強部材40の第3フランジ部44は、板状部41から車両後側に延びており、フロントサイドメンバ2の上面15に沿って配置されている。
【0034】
また、図7に示すように、本実施形態の車体前部の構造は、フロントプレート4とフロントサイドメンバ2の前端部との接合を補強する第2の補強部材50を備えている。第2の補強部材50は、水平断面がL字状の部材であり、第1プレート部51と、第2プレート部52とを備えている。第2の補強部材50の第1プレート部51は、フロントプレート4の裏側面に沿って位置し、第2プレート部52は、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14と下側ブレース9の外側面31とにわたって延びている。
【0035】
次に、本実施形態におけるフロントサイドメンバ2と上側ブレース8と下側ブレース9との接合構造について図面を用いて説明する。
【0036】
図4に示すように、フロントサイドメンバ2の上側フランジ17は、上側ブレース8の外側面21に沿って配置され、上側フランジ17と上側ブレース8の外側面21とが溶接により接合されている。また、下側ブレース9の外側面31の外側面フランジ31aとフロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14とが溶接により接合されている。
このように接合した状態では、図4に示すように、上側ブレース8の外側面21とフロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14と下側ブレース9の外側面31とが、ほぼ面一の表面(段差がない表面)を形成するようになっている。
【0037】
また、図5(c)に示すように、上側ブレース8の後面23の第2後面フランジ23bとフロントサイドメンバ2の上面15とが溶接により接合されている。さらに、下側ブレース9の後面33の第2後面フランジ33bとフロントサイドメンバ2の下面13とが溶接により接合されている。
以上から、フロントサイドメンバ2は、上面15と車幅方向外側の側壁面14の2つの面で上側ブレース8と接合されている。また、フロントサイドメンバ2は、下面13と車幅方向外側の側壁面14の2つの面で下側ブレース9と接合されている。
【0038】
また、図5(a)に示すように、フロントプレート4は、上側ブレース8の前面22とフロントサイドメンバ2の側壁面14の第2側壁フランジ14bと下側ブレース9の前面32の3つの部材に溶接により接合されている。
【0039】
次に、本実施形態における第1の補強部材40の接合構造と第2の補強部材50の接合構造について図面を用いて説明する。
【0040】
また、図6に示すように、第1の補強部材40の板状部41は、上側ブレース8の前面22の裏側面と下側ブレース9の前面32の裏側面とに溶接により接合されている。また、第1の補強部材40の第1フランジ部42は、上側ブレース8の前面フランジ32aと下側ブレース9の前面フランジ33aとに溶接により接合されている。
【0041】
また、図6に示すように、第1の補強部材40の第2フランジ部43は、フロントサイドメンバ2の車幅方向内側の側壁面16に溶接により接合されている。そして、第1の補強部材40の第3フランジ部44は、フロントサイドメンバ2の上面15に溶接により接合されている。
【0042】
図7に示すように、第2の補強部材50の第1プレート部51は、フロントプレート4に溶接により接合され、第2の補強部材50の第2プレート部52は、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14と下側ブレース9の外側面31とに溶接により接合されている。
【0043】
このように本実施形態に係る車体前部の構造によれば、フロントサイドメンバ2が、上下方向に対向する上面15及び下面13と、車幅方向に対向する側壁面14,16とを有し、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14の上端部には、上方に延びる上側フランジ17が設けられ、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14の下端部には、下側ブレース9から外側面フランジ31aが延在しており、上側フランジ17が、上側ブレース8の外側面21に接合され、外側面フランジ31aが、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14に接合され、上側ブレース8の後面23の第2後面フランジ23bが、フロントサイドメンバ2の上面15に接合され、下側ブレース9の後面33の第2後面フランジ33bが、フロントサイドメンバ2の下面13に接合されている。
上述の従来の構造では、車体の前部フレームのブレースとフロントサイドメンバとが1つの面でしか接合していなかった。これに対して、本実施形態によれば、上側ブレース8が、フロントサイドメンバ2の上面15と車幅方向外側の側壁面14の2つの面と接合されているので、フロントサイドメンバ2と上側ブレース8との接合強度が従来に比べて大きくなる。また、下側ブレース9も、フロントサイドメンバ2の下面13と車幅方向外側の側壁面14の2つの面と接合されているので、フロントサイドメンバ2と下側ブレース9との接合強度が従来に比べて大きくなる。したがって、本実施形態の車体前部の構造は、車体1の前部が衝突して衝突荷重がかかった際に、フロントサイドメンバ2と上側ブレース8との接合箇所やフロントサイドメンバ2と下側ブレース9との接合箇所で変形するのを抑えることができる。特に、上側ブレース8とフロントサイドメンバ2と下側ブレース9とが、車幅方向外側の位置で接合されているので、車幅方向外側から内側への横向きの倒れ変形をより効果的に防ぐことができる。
さらに、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14が、上下両端の位置で上側ブレース8及び下側ブレース9と接合しているので、走行中のフロントサイドメンバ2の上下の振動を抑えることができる。これにより、車体前部からの振動がフロアパネル(図示せず)などに伝わることが抑えられるので、車室内の騒音を小さくすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る車体前部の構造によれば、上側ブレース8の外側面21とフロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14と下側ブレース9の外側面31とが、ほぼ面一の表面を形成するようになっている。
本実施形態によれば、上側ブレース8の外側面21とフロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14との境界部分や、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14と下側ブレース9の外側面31との境界部分において段差が形成されないので、車体1の前部が衝突して衝突荷重がかかった際に、局所的な荷重の集中を防ぐことができる。したがって、車体前部が衝突して衝突荷重がかかった際の荷重の分散効果をより高めることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る車体前部の構造は、フロントバンパ5を取付けためのフロントプレート4を備え、上側ブレース8が、車幅方向外側の外側面21と、外側面21の車両前後方向両端部から車幅方向内側に向かって延在する前面22及び後面23とを有し、下側ブレース9が、車幅方向外側の外側面31と、外側面31の車両前後方向両端部から車幅方向内側に向かって延在する前面32及び後面33とを有し、上側ブレース8の前面22と、下側ブレース9の前面32と、フロントサイドメンバ2の側壁面14の車両前後方向前端部にある第2側壁フランジ14bとが、上下方向において同一平面上に位置しており、フロントプレート4が、上側ブレース8の前面22とフロントサイドメンバ2の側壁面14の第2側壁フランジ14bと下側ブレース9の前面32とにわたって溶接によって取付けられている。
上述の従来の構造では、バンパメンバを取付ける部分にボルト等を使用しており、作業者に負担がかかる構成となっていた。これに対して、本実施形態は、フロントプレート4を上側ブレース8の前面22とフロントサイドメンバ2の車両前後方向の前端部と下側ブレース9の前面32とに溶接によって取付ける構成となっている。フロントプレート4の取付構造が、ボルトを用いない簡易な構成になっているので、作業性が良く、作業者にかかる負担を小さくすることができる。また、フロントプレート4をフロントサイドメンバ2と上側ブレース8と下側ブレース9の3つの部材で支持する構成となっているので、フロントプレート4の接合強度をより高めることができる。また、フロントバンパ5で受けた荷重をフロントサイドメンバ2と上側ブレース8と下側ブレース9の3つの部材で受けることができるので、従来に比べて荷重の分散効果や吸収効果を高めることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る車体前部の構造は、上側ブレース8とフロントサイドメンバ2の前端部と下側ブレース9との接合を補強する第1の補強部材40を備え、第1の補強部材40は、上側ブレース8の前面22の裏側面と下側ブレース9の前面32の裏側面とフロントサイドメンバ2の車幅方向内側の側壁面16とフロントサイドメンバ2の上面15
にわたって延びている。
本実施形態によれば、第1の補強部材40によって、フロントサイドメンバ2と上側ブレース8との接合箇所やフロントサイドメンバ2と下側ブレース9との接合箇所の剛性を高めることができる。これにより、車体前部が衝突して衝突荷重がかかった際に、フロントサイドメンバ2と上側ブレース8との接合箇所やフロントサイドメンバ2と下側ブレース9との接合箇所で変形するのをより効果的に抑えることができる。
【0047】
また、本実施形態に係る車体前部の構造は、フロントプレート4とフロントサイドメンバ2の前端部との接合を補強する第2の補強部材50を備え、第2の補強部材50は、フロントプレート4の裏側面とフロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14と下側ブレース9の外側面31とにわたって延びている。
本実施形態によれば、第2の補強部材50によって、フロントプレート4とフロントサイドメンバ2との接合箇所の剛性を高めることができる。これにより、フロントバンパ5で受けた荷重がフロントプレート4に伝わった際のフロントプレート4やフロントサイドメンバ2の変形を抑えることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る車体前部の構造によれば、フロントサイドメンバ2は、車幅方向断面がL字状の第1の部材11と、車幅方向断面が逆L字状の第2の部材12とから構成され、フロントサイドメンバ2は、第1の部材11と第2の部材12とを接合することによって矩形形状の閉断面を形成し、上側フランジ17及び下側フランジ18が、フロントサイドメンバ2の矩形断面の対角位置に設けられている。
本実施形態によれば、フロントサイドメンバ2が2つの部材(第1の部材11及び第2の部材12)によって矩形断面に形成されるので、断面剛性が向上する。また、上側フランジ17及び下側フランジ18がフロントサイドメンバ2の矩形断面の対角位置に配置されて、対角位置で上側ブレース8及び下側ブレース9に支持されるので、車体前部が衝突して衝突荷重がかかった際の変形(特に、横向きの倒れ変形)をより効果的に防ぐことができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0050】
上述の実施形態では、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14の上端部には、上方に延びる上側フランジ17が設けられ、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14の下端部には、下側ブレース9から外側面フランジ31aが延在しているが、この構成に限定されない。
本発明では、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14において上下方向の両端部で上側ブレース8及び下側ブレース9に接合されればよい。例えば、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14の下端部に下方に延びるフランジを設け、フロントサイドメンバ2の車幅方向外側の側壁面14の上端部に上側ブレース8からフランジを延在させてもよい。
【0051】
上述の実施形態では、第1の補強部材40が、上側ブレース8の前面22の裏側面と下側ブレース9の前面32の裏側面とフロントサイドメンバ2の車幅方向内側の側壁面16とフロントサイドメンバ2の上面15とにわたって延びている。
本発明では、第1の補強部材40は、上側ブレース8と下側ブレース9とフロントサイドメンバ2の3つの部材にわたるような形状であればよく、実施形態の形状に限定されない。例えば、第1の補強部材40においてフロントサイドメンバ2に接合する部分については、第2フランジ部43か、第3フランジ部44のいずれかが設けられていればよい。
【符号の説明】
【0052】
1 車体
2 フロントサイドメンバ
3 前部フレーム
4 フロントプレート
5 フロントバンパ
6 アッパメンバ
7 ロアメンバ
8 上側ブレース
9 下側ブレース
10 センタブレース
11 フロントサイドメンバの第1の部材
12 フロントサイドメンバの第2の部材
13 フロントサイドメンバの下面
15 フロントサイドメンバの上面
14,16 フロントサイドメンバの側壁面
17 フロントサイドメンバの上側フランジ
18 フロントサイドメンバの下側フランジ
21 上側ブレースの外側面
22 上側ブレースの前面
23 上側ブレースの後面
31 下側ブレースの外側面
31a 下側ブレースの外側面フランジ
32 下側ブレースの前面
33 下側ブレースの後面
40 第1の補強部材
50 第2の補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延在する断面矩形状のサイドメンバと、該サイドメンバの上側に配置された上側ブレースと、前記サイドメンバの下側に配置された下側ブレースとを備え、前記サイドメンバが、上下方向に対向する上面及び下面と、車幅方向に対向する側壁面とを有し、前記上側ブレースが前記サイドメンバの前記上面に取付けられるとともに、前記下側ブレースが前記サイドメンバの前記下面に取付けられている車体前部の構造において、
前記サイドメンバの車幅方向外側の側壁面には、上方又は下方に延びる第1のフランジが設けられ、
前記サイドメンバの車幅方向外側の側壁面において前記第1のフランジと上下方向で反対側の位置には、前記上側ブレース又は前記下側ブレースから第2のフランジが延びており、
前記第1のフランジが、前記上側ブレース又は前記下側ブレースに取付けられるとともに、前記第2のフランジが、前記サイドメンバの車幅方向外側の側壁面に取付けられていることを特徴とする車体前部の構造。
【請求項2】
バンパメンバを取付けためのフロントプレートを更に備え、
前記上側ブレース及び前記下側ブレースが、車幅方向外側の外側面と、該外側面の車両前後方向両端部から車幅方向内側に向かって延在する前面及び後面とを有し、
前記上側ブレースの前記前面と、前記下側ブレースの前記前面と、前記サイドメンバの車両前後方向の前端部とが、上下方向において同一平面上に位置しており、
前記フロントプレートが、前記上側ブレースの前記前面と前記サイドメンバの車両前後方向の前記前端部と前記下側ブレースの前記前面とにわたって溶接によって取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部の構造。
【請求項3】
前記上側ブレースの前記前面の裏側面と、前記下側ブレースの前記前面の裏側面と、前記サイドメンバの車幅方向内側の側壁面とにわたって延在する補強部材を更に備えていることを特徴とする請求項2に記載の車体前部の構造。
【請求項4】
前記サイドメンバの車幅方向内側の側壁面が、上方又は下方に延びる第3のフランジを有し、前記第1のフランジ及び前記第3のフランジが、前記サイドメンバの矩形断面の対角位置に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車体前部の構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−82337(P2013−82337A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223899(P2011−223899)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】