説明

車体前部構造

【課題】車体剛性を向上することができる車体前部構造を得る。
【解決手段】車体前部構造10は、それぞれ車体前後方向に長手とされると共に車幅方向に並列して配置されサスペンションを支持するための左右一対のサイドレール22と、それぞれ車体前後方向に長手とされサイドレール22の車体上下方向の上側で車幅方向に並列して配置された左右一対のサイドメンバ12と、車幅方向及び車体上下方向に沿った面状に形成されたラジエータ26を備えている。ラジエータ26は、一対のサイドレール22間及び一対のサイドメンバ12間をそれぞれ車幅方向に架け渡している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションを支持するためのサイドレールを含む車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
それぞれ車体前後方向に長手とされた左右一対フロントサイドメンバと、一対のフロントサイドメンバの前端間を架け渡すロアクロスメンバと、ロアクロスメンバ上に支持されたラジエータと、フードリッジパネルの上側部に閉断面に構成され車体前後方向に延在する左右一対の骨格メンバと、ラジエータを挟んで設けられて該ラジエータとで左右の骨格メンバを車幅方向に架け渡すアッパクロスメンバを構成する一対の分割メンバとを備えた自動車の車体前部構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−187574号公報
【特許文献2】特開2004−331002号公報
【特許文献3】特開平8−164868号公報
【特許文献4】特開2004−268680号公報
【特許文献5】特開2000−344131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の技術では、ラジエータのロア部がロアクロスメンバに対し支軸と軸受け部とで支持された構造であるため、一部材からなるアッパクロスメンバで左右の骨格メンバを車幅方向に架け渡す構成と比較して車体の剛性を向上させるものではなかった。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、車体剛性を向上することができる車体前部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車体前部構造は、それぞれ車体前後方向に長手とされると共に車幅方向に並列して配置され、サスペンションを支持するための一対のサイドレールと、それぞれ車体前後方向に長手とされ、前記サイドレールの車体上下方向の上側で車幅方向に並列して配置された一対のサイドメンバと、車幅方向及び車体上下方向に沿った面状に形成され、車幅方向及び車体上下方向に沿った面状に形成され、前記一対のサイドレール間及び一対のサイドメンバ間をそれぞれ車幅方向に架け渡渡した面状架橋部材と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車体前部構造では、正面視で四角形(の各頂点)を成すように配置された一対のサイドレールと一対のサイドメンバとが、面状架橋部材によって車幅方向及び車体上下方向に架け渡されているため、これらを四角形枠状に連結する構成と比較して車体剛性が向上する。特に、各サイドレールが支持するサスペンションからの入力荷重に対する車体(骨格)の捩れ剛性が向上する。
【0007】
このように、請求項1記載の車体前部構造では、車体剛性を向上することができる。なお、面状架橋部材は、車幅方向及び車体上下方向に沿った面との直角方向(主に車体前後方向)が厚み方向とされ、車体上下方向に対し傾斜して配置されても良い。
【0008】
請求項2記載の発明に係る車体前部構造は、請求項1記載の車体前部構造において、車幅方向中央に対し車幅方向の同じ側に位置する前記サイドレールとサイドメンバとをそれぞれ連結する一対の連結部材をさらに備え、前記面状架橋部材は、前記一対の連結部材間を車幅方向に架け渡している。
【0009】
請求項2記載の車体前部構造では、面状架橋部材によって車幅方向に架け渡された一対の連結部材が、それぞれ車幅方向の同じ側に位置するサイドレールとサイドメンバとを連結している。このため、面状架橋部材の取付が容易になり、また面状架橋部材の形状に対する制約が少なくなる。なお、連結部材の車体前後方向における位置を面状架橋部材の車体前後方向における位置に略一致させた構成とすることが望ましい。
【0010】
請求項3記載の発明に係る車体前部構造は、請求項1又は請求項2記載の車体前部構造において、前記一対のサイドレールは、それぞれサスペンションアーム取付部を有し、サスペンションアーム取付部の車体前後方向における位置は、前記面状架橋部材又は前記連結部材の車体前後方向における位置に対し車体前後方向にオーバラップしている。
【0011】
請求項3記載の車体前部構造では、サスペンションからサスペンションアーム取付部を経由してから入力される横力を面状架橋部材の面内力にて支持することができる。これにより、車体におけるサスペンションアーム取付部分の剛性が向上する。
【0012】
そして、サスペンションアーム取付部は、面状架橋部材又は連結部材に対し車体前後方向に近接した構成とすれば、荷重入力側のサイドレールに作用する車幅方向の曲げモーメント(モーメントアーム)が小さくなり、サイドレールの車幅方向の曲げ変形(一対のサイドレールの相対変位)が抑制されるが、本車体前部構造では、サスペンションアーム取付部と面状架橋部材又は連結部材とが車体前後方向にオーバラップしている(少なくとも一部が一致している)ため、サイドレールの車幅方向の曲げ変形が一層効果的に抑制される。すなわち、サスペンションからの入力荷重に対する車体剛性が一層向上する。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車体前部構造は、請求項3記載の車体前部構造において、車幅方向に長手とされ、前記一対のサスペンションアーム取付部を架け渡すクロスメンバをさらに備えている。
【0014】
請求項4記載の車体前部構造では、一対のサスペンションアーム取付部がクロスメンバにて架け渡されているため、サスペンションからサスペンションアーム取付部を経由してから入力される横力は、面状架橋部材の面内力にて支持されると共にクロスメンバを介して反対側のサイドレールに分散される。これにより、荷重入力側のサイドレールのサイドメンバに対する相対変位が抑制される。すなわち、サスペンションアームの取付部分の剛性が向上する。
【0015】
請求項5記載の発明に係る車体前部構造は、請求項4記載の車体前部構造において、前記クロスメンバの車体前後方向における位置は、前記面状架橋部材の車体前後方向における位置、又は面状架橋部材及び前記連結部材の車体前後方向における位置に一致している。
【0016】
請求項5記載の車体前部構造では、クロスメンバすなわちサスペンションアーム取付部の前後位置が面状架橋部材(車体前後方向における位置を一致させた連結部材を介してサイドメンバ及びサイドレールに固定された構成を含む)の前後位置に一致しているため、サスペンションからの入力荷重に対する車体剛性がより一層向上する。また、車幅方向に延在する高剛性部材であるクロスメンバと面状架橋部材との前後位置が一致しているため、クロスメンバと面状架橋部材とを共に備える構成でありながら、該クロスメンバと面状架橋部材との前後位置を異ならせた構成と比較して、車体前後方向の衝撃吸収ストロークを大きく採ることができる。
【0017】
請求項6記載の発明に係る車体前部構造は、請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の車体前部構造において、前記一対のサイドレールの前端部は、前記面状架橋部材よりも車体前後方向の前側に位置しており、車幅方向に長手とされ、フロントバンパ骨格部材に対する車体上下方向の下側で前記一対のサイドレールの前端部間を架け渡す前端クロスメンバをさらに備えた。
【0018】
請求項6記載の車体前部構造では、フロントバンパ(骨格部材)への被衝突体の衝突時には、前端クロスメンバが被衝突体の車体下側への入り込みを防止し、被衝突体が保護される。面状架橋部材で(直接的に、又は連結部材を介して)サイドメンバとサイドレールとを連結する本構造では、サイドメンバに連結するためにサイドレールを上側に屈曲する等の制約がなくなるため、被衝突体の保護に適した車体上下方向の位置に前端クロスメンバを配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明に係る車体前部構造は、車体剛性を向上することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る車体前部構造としての車体前部構造10について、図1乃至図3に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印INは、それぞれ車体前部構造10が適用された車体としての自動車Sの前方向(進行方向)、上方向、及び車幅方向内側を示している。
【0021】
図1には、車体前部構造10の車幅方向一方側(進行方向を見て左側)の構成が斜視図にて示されており、図2には、車体前部構造10が側断面図にて示されている。また、図3(A)には、車体前部構造10の車幅方向一方側が正面図にて示されており、図3(B)には、図3(A)の3B−3B線に沿った断面図が示されている。
【0022】
これらの図に示される如く、車体前部構造10は、それぞれ車体前後方向に長手とされ車幅方向中央に対し対称に配設された左右一対のフロントサイドメンバ12(図1では、左側のフロントサイドメンバ12のみ図示)を備えている。左右一対のフロントサイドメンバ12の図示しない後部は、ダッシュパネルとの接合部位で下方にキックダウンしてフロアパネルの下部に至っている。
【0023】
左右一対のフロントサイドメンバ12の前端間は、フロントバンパ14の車幅方向に沿った骨格を構成するバンパリインフォースメント16にて架け渡されている。図2に示される如く、フロントバンパ14は、バンパリインフォースメント16をバンパカバー18にて被覆して構成されている。バンパカバー18は、バンパリインフォースメント16を前方から被覆する上部18Aと、後述するフロントロアクロスメンバ48を被覆する下部18Bとを含んで構成されている。
【0024】
また、図1及び図2に示される如く、車体前部構造10は、サイドメンバ12の下方に配置されたサブフレーム20を備えている。サブフレーム20は、それぞれ車体前後方向に長手とされ車幅方向中央に対し対称に配設された左右一対のサイドレール22(図1では、左側のサイドレール22のみ図示)を備えている。
【0025】
左右のサイドレール22の前部間は、車幅方向に沿って長手とされた本発明におけるクロスメンバとしてのフロントクロスメンバ24にて架け渡されている。図2及び図3(B)に示される如く、フロントクロスメンバ24は、長手方向に直交する側断面視で上向きに開口するハット形状に形成されており、そのフランジ部24Bが車幅方向両端部において対応するサイドレール22の下面22Aに溶接等にて固着されている。
【0026】
一方、左右のサイドレール22の後部間は、図示しないリヤクロスメンバにて架け渡されている。これにより、サブフレーム20は、平面視で略矩形枠状に形成された部分を含み、この実施形態では井型サブフレーム(サスペンションメンバ)とされている。
【0027】
そして、車体前部構造10では、車幅方向中央に対して該車幅方向の同じ側に位置するフロントサイドメンバ12とサイドレール22とが面状架橋部材としてのラジエータ26によって固定的に連結されると共に、左右のフロントサイドメンバ12同士及び左右のサイドレール22同士がラジエータ26によって固定的に連結されている。以下、具体的に説明する。
【0028】
ラジエータ26は、車体上下方向及び車幅方向に沿った正面視略矩形でかつ車体前後方向に扁平の面状構造体とされている。ラジエータ26における車幅方向外端で該車幅方向外側を向く外側壁26Aには、該車幅方向外側に張り出して連結部材としてのラジエータ取付ブラケット28が設けられている。ラジエータ取付ブラケット28は、例えば溶接等によってラジエータ26に固着されている。
【0029】
ラジエータ取付ブラケット28は、フロントサイドメンバ12に固定される上側固定部30と、サイドレール22に固定される下側固定部32とを備えており、上側固定部30と下側固定部32との間には略半円状に切り欠かれた切欠部28Aが形成されている。切欠部28Aは、ラジエータ取付ブラケット28の重量軽減用の肉抜き部とされている。この切欠部28Aは、ボルト締め付け作業などの組み立てスペースとして用いることもできる。したがって、後述するボルト34、36を切欠部28A側から挿し込んだり、ボルト孔部30B等に代えてナットを用いたりすることも可能である。
【0030】
フロントサイドメンバ12は、その下面12Aを上側固定部30の上面30Aに当接させた状態で、該フロントサイドメンバ12を貫通したボルトが上側固定部30に形成されたボルト孔部30Bに螺合することで、ラジエータ取付ブラケット28に締結固定されている。この締結状態で、図1乃至図3に示される如く、ラジエータ26は、左右のフロントサイドメンバ12よりも車体上下方向の上側に突出している。また、図3(A)に示される如く、フロントサイドメンバ12と、左右のフロントサイドメンバ12間に位置するラジエータ26(外側壁26A)とは、車幅方向に離間している。
【0031】
一方、サイドレール22は、その上面22Bを下側固定部32の下面32Aに当接させた状態で、フロントクロスメンバ24、サイドレール22を下側から貫通したボルト36が、下側固定部32に形成されたボルト孔部32Bに螺合することで、ラジエータ取付ブラケット28に締結固定されている。したがって、この実施形態では、ラジエータ取付ブラケット28すなわちラジエータ26とフロントクロスメンバ24とは、車体前後方向における位置が略一致して配置されている。また、サイドレール22車幅方向内向き面22Cと、左右のサイドレール22間に位置するラジエータ26の外側壁26Aとは、当接している。
【0032】
図3(B)に示される如く、ラジエータ26の下端部26Bは、フロントクロスメンバ24における左右のサイドレール22の車幅方向内側に位置する部分に入り込んでおり、ラジエータ26に車幅方向に沿って部分的に設けられた締結用ブラケット37とフロントクロスメンバ24のフランジ部24Bとは、ボルト38及びナット39によって締結されている。これにより、ラジエータ26とフロントクロスメンバ24とが互いに固定されている。締結用ブラケット38は、車幅方向に沿って連続的に設けられても良い。
【0033】
そして、フロントクロスメンバ24の車幅方向両端部、すなわちサイドレール22の直下に位置する部分は、サスペンションアーム取付部40とされている。サスペンションアーム取付部40には、サスペンションロアアーム42のサブフレーム20に対する前後の連結部のうち、前側の連結部42Aがラバーブッシュ44を介して連結されている。ラバーブッシュ44は、その軸心部を貫通した上記ボルト36(のロッド部)を介してサスペンションアーム取付部40(フロントクロスメンバ24)に支持されている。
【0034】
サスペンションロアアーム42のサブフレーム20に対する前後の連結部のうち、後側の連結部42Bは、図1に示される如く、サブフレーム20のサイドレール22におけるサスペンションアーム取付部40の後方に配置されたサスペンションアーム取付部46に、ラバーブッシュ44を介して連結されている。
【0035】
さらに、図1に示される如く、車体前部構造10では、サブフレーム20を構成する左右のサイドレール22がフロントクロスメンバ24よりも前方まで延設されており、サイドレール22の前端間は車幅方向に長手とされた前端クロスメンバとしてのフロントロアクロスメンバ48にて架け渡されている。
【0036】
図2に示される如く、フロントロアクロスメンバ48は、バンパリインフォースメント16の下方に配置されており、その前面48Aの車体前後方向における位置がバンパリインフォースメント16の前面16Aの車体前後方向の位置に対し、同等又は若干前側とされている。フロントロアクロスメンバ48の路面Rからの高さH(上下方向の位置又は範囲)は、歩行者の下脚(膝下部)Luの下部の高さに設定されている。
【0037】
車体前部構造10では、フロントロアクロスメンバ48が路面Rから高さHの位置に配置されるように、サイドレール22の車体前後方向中間部が湾曲しており、この実施形態では、サイドレール22は後部よりも前部の方が上方に位置する設定とされている。フロントロアクロスメンバ48は、上記の通りバンパカバー18の下部18Bにて前方から被覆されている。
【0038】
なお、図2に示す符号50は前輪であり、前輪50はサスペンションロアアーム42を含んで構成されるフロントサスペンションによって車体に懸架されている。また、符号52はフロントグリルであり、符号54はエンジンルームを上側から閉止するエンジンフードである。
【0039】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0040】
上記構成の車体前部構造10が適用された自動車Sでは、正面視で矩形状に(矩形の頂点に)配置された左右一対のフロントサイドメンバ12及び左右一対のサイドレール22が、それぞれの前部において面状構造体であるラジエータ26によって結合されているため、車体剛性が高い。
【0041】
具体的には、面状構造体であるラジエータ26が、矩形状に配置された左右一対のフロントサイドメンバ12及び左右一対のサイドレール22が正面視で菱形を成すように変形することを著しく抑制するため、例えば左右一対のフロントサイドメンバ12左右一対のフロントサイドメンバ12を矩形枠状の部材で結合する構成と比較して、車体の前後軸周りの捩りに対する剛性が高い。
【0042】
また、車体前部構造10が適用された自動車Sでは、図3(A)に示される如く、前輪50からフロントサスペンション(サスペンションロアアーム42)、サスペンションアーム取付部40を介してサブフレーム20に車幅方向内向きの荷重F1が入力されると、この荷重はラジエータ26の面内力を反力F2として支持される。換言すれば、荷重F1が26(フロントクロスメンバ24を含む)によって車体上下方向の各部に分散される。このため、サスペンションアーム取付部40の変位、特に対応するサイドメンバ12に対する車幅方向の相対変位が抑制される構成、すなわちサスペンションロアアーム42の連結部42Aの取付部分の剛性を向上することが実現された。
【0043】
特に、サスペンションアーム取付部40の前後方向位置がラジエータ26の前後方向位置に一致しているため、上記車幅方向内向きの荷重F1が反対側のサイドレール22に分散されると共に、該荷重F1がサイドレール22の曲げモーメントして作用すること抑制され(曲げモーメントのアーム長が短く又は0であり)、荷重入力側のサイドレール22の反対側のサイドレール22に対する車幅方向の相対変位が抑制される。したがって、サスペンションアーム取付部40の車幅方向変位が一層抑制される。
【0044】
このように、車体前部構造10では、車体剛性を向上することができる。
【0045】
さらに、車体前部構造10が適用された自動車Sでは、前面衝突に至ると、フロントサイドメンバ12、サイドレール22の曲げ等に伴って、車体前後方向に圧縮して衝突衝撃が吸収される。ここで、ラジエータ26はラジエータ取付ブラケット28を介して左右のフロントサイドメンバ12及びサイドレール22に固定されると共に、ラジエータ26とフロントクロスメンバ24との車体前後方向の位置が一致しているため、例えばラジエータ取付ブラケット28又はフロントクロスメンバ24の車体前後方向における位置がラジエータ26の車体前後方向における位置と異なる構成と比較して、前面衝突時のクラッシュ(衝撃吸収)ストロークを長く採ることができる。
【0046】
すなわち、車体における前面衝突時のクラッシュストロークは、圧縮範囲の前後長からラジエータ26のように圧縮し難い部材の厚みを所謂デッドストロークとして除いて見積もるが、車体前部構造10では、このデッドストロークが図2に示すように車体構造部材として機能するラジエータ26の厚みtだけで足りるため、衝撃吸収ストロークを長く採ることができる。
【0047】
また、ラジエータ26と車体前後方向における位置を一致させたフロントクロスメンバ24内にラジエータ26の下端部26Bを入り込ませたため、フロントクロスメンバ24は、開断面構造でありながらサブフレーム20を構成するクロスメンバとして機能する。さらに、このフロントクロスメンバ24によって、ラジエータ26が路面干渉に対し保護される。
【0048】
さらにまた、車体前部構造10が適用された自動車Sでは、走行中にフロントバンパ14が例えば下脚部Lu等の被衝突体に衝突すると、被衝突体は、その下部がフロントロアクロスメンバ48によって支持され、該下部が車体下側に潜り込むことが防止される。すなわち、被衝突体が保護される。
【0049】
ここで、車体前部構造10では、ラジエータ26(ラジエータ取付ブラケット28)を介してサイドレール22をフロントサイドメンバ12に連結しているため、フロントサイドメンバ12との連結のためにサイドレール22を前部が上方に位置するように曲げる(キックアップする)必要(制約)がない。このため、車体前部構造10では、被衝突体の車体下側にへの潜り込みを防止するために適した位置にフロントロアクロスメンバ48(サイドレール22の前端)を配置することができる。すなわち、被衝突体の保護性能を向上することが、単に左右のサイドレール22の前端間をフロントロアクロスメンバ48で架け渡すといった簡単かつ部品点数の少ない構造で実現された。
【0050】
特に、上下に位置するフロントサイドメンバ12とサイドレール22とをラジエータ26(ラジエータ取付ブラケット28)にて連結するため、上下に離間した(被衝突体の保護性能を確保する配置とされた)フロントサイドメンバ12とサイドレール22とを連結するために大型のブラケットを設ける必要がなく、車体が全体として軽量化される。しかも、ラジエータ26を車体(主にフロントサイドメンバ12)に取り付けるためのラジエータサポートを設ける必要がないので車体の一層の軽量化が図られる。
【0051】
また、車体前部構造10では、ラジエータ取付ブラケット28を介して面状架橋部材としてのラジエータ26がそれぞれ左右一対のフロントサイドメンバ12、サイドレール22に取り付けられるため、該面状架橋部材としてのラジエータ26の形状に対する制約が少なくなる。このため、ラジエータ26を共通化した異なる車種で本車体前部構造10を容易に(ラジエータ取付ブラケット28の変更で)採用することができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、ラジエータ26、ラジエータ取付ブラケット28、フロントクロスメンバ24(サスペンションアーム取付部40)の車体前後方向における位置が一致した例を示したが、本発明はこれに限定されず、これらの一部又は全部の車体前後方向における位置が異なっても良い。但し、ラジエータ26、ラジエータ取付ブラケット28、フロントクロスメンバ24(サスペンションアーム取付部40)の車体前後方向における位置は、近接していることが望ましい。
【0053】
また、上記実施形態では、ラジエータ取付ブラケット28が車幅方向の同じ側のフロントサイドメンバ12とサイドレール22とを直接的に連結する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、上側固定部30と下側固定部32とが上下に分離されて(別体として)構成されても良い。すなわち、本発明は、連結部材を備える構成には限定されず、面状架橋部材(ラジエータ26)が上下のフロントサイドメンバ12とサイドレール22との間の荷重伝達を行う構成としても良い。
【0054】
さらに、上記実施形態では、面状架橋部材としてラジエータ26を利用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えばエアコンコンデンサやパネル部材等の他の部材(専用部材を含む)を面状架橋部材として用いても良い。
【0055】
さらにまた、上記実施形態では、面状架橋部材としてのラジエータ26が車体上下方向に沿って略直立した姿勢で保持された例を示したが、本発明はこれに限定されず、必要に応じてラジエータ26を前傾又は後傾させても良い。但し、上記実施形態では、ラジエータ取付ブラケット28を介してフロントサイドメンバ12、サイドレール22に取り付けられたラジエータ26の上端が自由端とされているため、比較的大型のラジエータを直立して配置することが可能である。
【0056】
また、上記実施形態では、サブフレーム20が平面視で略井型に形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、左右一対のサイドレールを備ええた各種構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す側断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であって、(A)は正面図、(B)は図3(A)の3B−3B線に沿った側断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 車体前部構造
12 フロントサイドメンバ
16 バンパリインフォースメント(フロントバンパ骨格部材)
22 サイドレール
24 フロントクロスメンバ(クロスメンバ)
26 ラジエータ(面状架橋部材)
28 ラジエータ取付ブラケット(連結部材)
40 サスペンションアーム取付部
48 フロントロアクロスメンバ(前端クロスメンバ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ車体前後方向に長手とされると共に車幅方向に並列して配置され、サスペンションを支持するための一対のサイドレールと、
それぞれ車体前後方向に長手とされ、前記サイドレールの車体上下方向の上側で車幅方向に並列して配置された一対のサイドメンバと、
車幅方向及び車体上下方向に沿った面状に形成され、前記一対のサイドレール間及び一対のサイドメンバ間をそれぞれ車幅方向に架け渡した面状架橋部材と、
を備えた車体前部構造。
【請求項2】
車幅方向中央に対し車幅方向の同じ側に位置する前記サイドレールとサイドメンバとをそれぞれ連結する一対の連結部材をさらに備え、
前記面状架橋部材は、前記一対の連結部材間を車幅方向に架け渡している請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記一対のサイドレールは、それぞれサスペンションアーム取付部を有し、
サスペンションアーム取付部の車体前後方向における位置は、前記面状架橋部材又は前記連結部材の車体前後方向における位置に対し車体前後方向にオーバラップしている請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
車幅方向に長手とされ、前記一対のサスペンションアーム取付部を架け渡すクロスメンバをさらに備えた請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記クロスメンバの車体前後方向における位置は、前記面状架橋部材の車体前後方向における位置、又は面状架橋部材及び前記連結部材の車体前後方向における位置に一致している請求項4記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記一対のサイドレールの前端部は、前記面状架橋部材よりも車体前後方向の前側に位置しており、
車幅方向に長手とされ、フロントバンパ骨格部材に対する車体上下方向の下側で前記一対のサイドレールの前端部間を架け渡す前端クロスメンバをさらに備えた請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−137224(P2007−137224A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332771(P2005−332771)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】