説明

車体前部構造

【課題】車両衝突時の車室変形を最小限にする車体前部構造を提供すること。
【解決手段】本発明の車体前部構造では、上部骨格構造部材3と、下部骨格構造部材7と、上部骨格構造部材3及び下部骨格構造部材7の各前端同士を連結する前側連結部材5と、上部骨格構造部材3及び下部骨格構造部材7の各後端同士を連結する後側連結部材13,21と、上部骨格構造部材3及び下部骨格構造部材7の各中間部同士を連結するジョイント部材15と、後側連結部材13,21とジョイント部材15とを接続するサイドメンバ19と、前側連結部材5とジョイント部材15とを接続するサブメンバ17とを備え、車体側視方向から見てエンジンルームの前部及び後部にそれぞれ環状構造が構築されている。サブメンバ17に前方から加わる荷重によってサイドメンバ19が下方に移動するように、ジョイント部材15とサイドメンバ19及びサブメンバ17とが接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前部構造、詳しくはエンジンコンパートメントの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンコンパートメントは、例えば車体前部に配設されており、車体前端に設けられたシュラウドメンバ、車体側部に配設された上部側のフードリッジメンバ及び下部側のサイドメンバ、これらのフードリッジメンバ及びサイドメンバの後端に配設されたダッシュパネルなどによって画成されている(例えば、下記[特許文献1]参照)。これらのフードリッジメンバとサイドメンバは、それぞれ車両前後方向に沿って延設され、かつ上下方向に所定の間隔をおいて配置されている。
【特許文献1】特開平5−85407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両前面衝突時には、上述した車体前部の骨格構造を変形させるなどして衝突エネルギーを吸収し、車室の変形を最小限にとどめることがなされている。車両前面衝突時には、エンジンコンパートメントと車室とを仕切るダッシュパネルが車室側に押し込まれ内容にすることが好ましい。従って、本発明は、車両前面衝突時に車室の変形を最小限にとどめることの可能な車体前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の車体前部構造では、車体前部のエンジンルームの上部両側縁部に車体前後方向に延設された一対の上部骨格構造部材と、各上部骨格構造部材の下方に車体前後方向にそれぞれ延設された下部骨格構造部材と、車体各側部において上部骨格構造部材及び下部骨格構造部材の各前端同士を連結する前側連結部材と、車体各側部において上部骨格構造部材及び下部骨格構造部材の各後端同士を連結する後側連結部材と、上部骨格構造部材及び下部骨格構造部材の各中間部同士を連結するジョイント部材とを備え、車体側視方向から見てエンジンルームの前部及び後部にそれぞれ環状骨格構造が構築されている。また、車体各側部において、後側連結部材とジョイント部材とを接続するサイドメンバ、及び、前側連結部材とジョイント部材とを接続するサブメンバを備えており、これらによって上述した前側環状骨格構造及び後側環状骨格構造が補強されている。そして、サイドメンバが後側連結部材の下方に接続され、サブメンバに前方から加わる荷重によってサイドメンバが下方に移動するように、ジョイント部材とサイドメンバ、及び、ジョイント部材とサブメンバとが接合されている。
【発明の効果】
【0005】
本発明の車体前部構造によれば、車両衝突時などにサブメンバに前方から荷重が加わるとサイドメンバが下方に移動するように、サイドメンバ及びサブメンバがジョイント部材に接合されている。この結果、サイドメンバによってダッシュパネルが車室側に押し込まれることが抑止され、車室の変形を最小限にとどめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の車体前部構造の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第一実施形態の車体前部構造(エンジンコンパートメント構造)を示す斜視図である。車体前部には、内部にエンジン等の車両部品を搭載するためのエンジンコンパートメント1(エンジンルーム)が設けられている。エンジンコンパートメント1の左右両側の上部には、車両前後方向に沿って左右一対のフードリッジメンバ(上部骨格構造部材)3,3が延設されており、フードリッジメンバ3,3の前端には前側連結部材5,5の上端がそれぞれ結合されている。
【0007】
また、フードリッジメンバ3の下方で、エンジンコンパートメント1の下端部には、平面視略H字状のサスペンションメンバ(下部骨格構造部材)7が配設されている。サスペンションメンバ7は、車体の左右両側に前後方向に沿って延びる側部9,9と、これら側部9,9の後端同士を車体幅方向に結合させる連接部11とからなる。側部9の前端9aが上述した前側連結部材5の下端と結合されており、側部9の後端9bが後述する取付部材13に結合されている。
【0008】
フードリッジメンバ3の中間部とサスペンションメンバ7とは、ジョイントメンバ(ジョイント部材)15によって連結されている。ジョイントメンバ15の上端15aはフードリッジメンバ3の車幅方向内側の側面に締結され、下端15bはサスペンションメンバ7の側部の中間部分に締結されている。さらに、フードリッジメンバ3とサスペンションメンバ7との間には、車両前後方向に沿って延びるサブメンバ(前側サイドメンバ)17及びサイドメンバ(後側サイドメンバ)19が配設されている。前側のサブメンバ17は、前側連結部材5とジョイントメンバ15とを前後方向に沿って連結している。また、後側のサイドメンバ19は、ジョイントメンバ15とダッシュパネル23下部の取付部材13とを連結している。
【0009】
ジョイント部材15とサイドメンバ19の前端との接合部は、ジョイント部材15とサブメンバ17の後端との接合部よりも下方に位置されている。即ち、ジョイント部材15とサイドメンバ19の前端との接合部は、ジョイント部材15とサブメンバ17の後端との接合部よりも下方にオフセットされて配置されている。取付部材13は、ダッシュパネル23の下部に配設され、ピラーロア部材21に繋がっている。取付部材13及びピラーロア部材21によって後側連結部材が構成されている。サスペンションメンバ7の後端9b及びサイドメンバ19は、取付部材13及びピラーロア部材21を介して、フードリッジメンバ3に繋がっている。
【0010】
また、エンジンコンパートメント1の後端には、ダッシュパネル23が配設されており、ダッシュパネル23を介して、エンジンコンパートメント1と車両室内とが分離されている。ダッシュパネル23の上部には、車幅方向に沿ってカウルボックス(エアボックス)25が延設され、カウルボックス25の左右両端は、左右のピラーロア部材21,21同士を車体幅方向で結合させている。また、カウルボックス25の左右両端とジョイントメンバ15の上端との間には、サスペンションタワー27が配設されている。なお、フードリッジメンバ3の前端同士は、車幅方向に延びる支持メンバ29によって連結され、前側連結部材5の下端同士は、取付メンバ31によって連結されている。
【0011】
図2は、図1の側面図である。エンジンコンパートメント1を車体側方から見ると、前部と後部とにそれぞれ前側環状骨格部33と後側環状骨格部35とが形成されている。前側環状骨格部33は、フードリッジメンバ3、サスペンションメンバ7、前側連結部材5、及び、ジョイントメンバ15から構成され、側面視ほぼ台形状に形成されている。また、後側環状骨格部35は、フードリッジメンバ3、サスペンションメンバ7、ジョイントメンバ15、及び、後側連結部材(ピラーロア部材21・取付部材13)とから構成され、側面視ほぼ矩形状に形成されている。
【0012】
図3は図1のエンジンコンパートメントを前後に分割した状態を示す分解斜視図、図4は図3の分割した前側エンジンコンパートメントにエンジン等を組み付けた状態を示す分解斜視図である。本実施形態のエンジンコンパートメントは、図3及び図4に示されるように、当初は分割されて構築された前後部構造を結合させて構成されている。図4に示すように、分割した前側エンジンコンパートメント37にエンジン51等の車両部品39やその他の部品(サスペンション53、ステアリングラック[図示せず]、ラジエータ55、及びヘッドランプ79)を搭載したのち、前側エンジンコンパートメント37と後側エンジンコンパートメント41とを結合させることにより、車体前部の組付作業が完了する。
【0013】
本実施形態においては、フードリッジメンバ3が前後に2分割されて前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45とから構成されている。前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との結合部47は、ジョイントメンバ15の上端15aと前側フードリッジメンバ43との連結部49の後側に設定されている。また、本実施形態では、サスペンションメンバ7は分割されておらず、サスペンションメンバ7の側部9の後端9bがダッシュパネル23の下部に設けられた取付部材13に締結されている。そして、サイドメンバ19の後端部は前記取付部材13に支持されており、前端部がジョイントメンバ15に締結可能に構成されている。
【0014】
図5は本実施形態のエンジンコンパートメントに下方向の荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図、図6は比較例のエンジンコンパートメントに下方向の荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図である。本実施形態によるエンジンコンパートメント1では、上述したように、環状骨格部33,35が形成されて車体前部の剛性が向上している。このため、図5に示すように、車体前部に下方向の荷重Fが入力された場合に、この荷重Fを環状骨格部33,35によって確実に受け止めるので、車体前部の下方への変形量は小さくなる。一方、図6に示した比較例のエンジンコンパートメント2には、本実施形態のような環状骨格部が設けられていない。このため、荷重Fが入力された場合に、この荷重Fをエンジンコンパートメント2で確実に受け止めることができず、図6に示すように、車体前部の下方への変形量が大きくなる。
【0015】
上述したように、本実施形態の車体前部構造は、前側環状骨格部33と後側環状骨格部35とを有している。このため、エンジンコンパートメント1の剛性が大幅に向上する。また、エンジンコンパートメントを構成する各部材の板厚を薄くして軽量化を図っても、従来構造と同等の剛性を維持することができる。また、サブメンバ17及びサイドメンバ19によって、前記前側環状骨格部33と後側環状骨格部35をそれぞれ補強しているため、エンジンコンパートメント1の剛性が更に向上する。また、エンジンコンパートメント1を前後に分割し、エンジン51などの部品を搭載後にこれらを結合する構造としてある。このため、車両組立工程を大幅に簡素化することができる。また、後側エンジンコンパートメント41がない状態でも、前記車両部品39を前側エンジンコンパートメント37に組み付けることができるため、車両部品39の搭載作業が非常に容易になる。
【0016】
図7に、車両前面衝突時における上述した環状骨格構造の変形状態を示す。車両前面衝突時には、主として前側の環状骨格構造33が潰れる。このとき、サブメンバ17によってジョイントメンバ15に荷重が伝達される。このとき、サブメンバ17とジョイントメンバ15との接合部よりも下方にサイドメンバ19とジョイントメンバ15との接合部がオフセットされて位置しているため、ジョイントメンバ15は屈曲される。これと同時に、サイドメンバ19は、ジョイントメンバ15との接合部を下方に移動させるように変形する。このため、サイドメンバ19の後方への移動量は低減され、サイドメンバ19によるダッシュパネル23(ピラーロア部材21)の車室内への侵入量を低減できる。この結果、車室の変形を抑え、乗員の生存空間を確保することができる。
【0017】
図8に、サイドメンバ19とジョイントメンバ15との締結構造を示す断面図を示す。上述したように、本実施形態では、前後に分割されたエンジンコンパートメント1を結合させている。ジョイントメンバ15は、前側の分割部分に含まれ、サイドメンバ19は、後側の分割部分に含まれる。このため、サイドメンバ19の先端をジョイントメンバ15の側面に結合させることとなる。本実施形態では、図8(a)に示されるように、サイドメンバ19の先端内部にウェルドナット19aを取り付けておく。ジョイントメンバ15には、サブメンバ17が結合されている側に、ボルト19bを内部に挿入させるための挿入口15aが形成されていると共に、サイドメンバ19が結合される側にボルト19bの挿通孔15bが形成されている。
【0018】
そして、図8(b)に示されるように、挿入口15aからボルト19bを挿入し、挿通孔15bにボルト19bを挿入してサイドメンバ19のウェルドナット19aに螺合させる。このようにすることで、サイドメンバ19の先端がジョイントメンバ15に締結される。これは、ジョイントメンバ15におけるサブメンバ17の結合場所とサイドメンバ19の結合場所とがオフセットされているため、ボルト19b及びウェルドナット19aの配置が容易になっている恩恵である。即ち、締結部材であるボルト19b及びウェルドナット19aでサイドメンバ19をジョイントメンバ15に締結している。
【0019】
図9に、他の締結例を示す。図8の例では、ジョイントメンバ15のサイドメンバ19側の壁部とのみサイドメンバ19を締結した。図9の例では、ジョイントメンバ15を貫通させてボルト19bを締結する。この例でも、図9(a)に示されるように、サイドメンバ19の先端内部にウェルドナット19aを取り付けておく。ジョイントメンバ15には、サブメンバ17が結合されている側とサイドメンバ19が結合される側の双方にボルト19bの挿通孔15bを形成させておく。
【0020】
そして、図9(b)に示されるように、一対の挿通孔15bにボルト19bを挿入してサイドメンバ19のウェルドナット19aに螺合させる。このようにすることで、サイドメンバ19の先端がジョイントメンバ15に締結される。この場合も、ジョイントメンバ15におけるサブメンバ17の結合場所とサイドメンバ19の結合場所とがオフセットされているため、ボルト19b及びウェルドナット19aの配置が容易になっている恩恵である。ここでも、締結部材であるボルト及びウェルドナットでサイドメンバ19をジョイントメンバ15に締結している。
【0021】
上述した第一実施形態に対して、下部骨格構造部材の分割位置を変更したものも考えられる。たとえば、図10に示される第二実施形態のような分割位置としてもよい。この例では、エンジンコンパートメント1が、前側エンジンコンパートメント57と後側エンジンコンパートメント59とから構成されている。サスペンションメンバ7においては、側部9が前後に2分割されており、側部9の前部側63と後部側65とが締結可能に構成されている。これらの前部側63と後部側65との結合部66は、ジョイントメンバ15の下端と側部9の前部側63との連結部64の後側に設定されている。そして、サイドメンバ19の後端は取付部材13に支持されており、前端がジョイントメンバ15に締結可能に構成されている。なお、エンジンコンパートメント1の前側分割部分に各種部品を装着した後に、分割された前後部分を結合させるのも第一実施形態と同様である。また、サイドメンバ19のジョイントメンバ15への締結に関しては、上述した第一実施形態と同様である。
【0022】
上述した第一及び第二実施形態においては、エンジンコンパートメント1が前後に二分割され、ジョイントメンバ15が前側部分に含まれているものであった。以下に説明する実施形態は、エンジンコンパートメント1が前後に二分割され、ジョイントメンバ15が後側部分に含まれているものである。図11に第三実施形態の図1相当図を示す。本実施形態では、エンジンコンパートメント1が前後に分割されて、前側エンジンコンパートメント67と後側エンジンコンパートメント69とから構成されている。また、車体側部に形成された環状骨格部についても、前後に分割されている。しかしながら、上述した第一及び第二実施形態と比較すると、前側エンジンコンパートメント67と後側エンジンコンパートメント69との結合部の位置が異なっている。
【0023】
本実施形態において、フードリッジメンバ3が前後に2分割されており、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との結合部71は、ジョイントメンバ15と後側フードリッジメンバとの連結部73の前側に設定されている。また、サスペンションメンバ7は、側部9が前後に2分割されており、その結合部75はジョイントメンバ15と側部9の後部側65との連結部77の前側に設定されている。そして、サブメンバ17は前側連結部材5に支持されており、後端部がジョイントメンバ15に締結可能に構成されている。次いで、本実施形態によるエンジンコンパートメントの組付手順について説明する。図12に示すように、分割した前側エンジンコンパートメント67にラジエータ55やヘッドランプ79を組み付け、後側エンジンコンパートメント69にサスペンション53及び図外のステアリングラックを組み付ける。こののち、前側エンジンコンパートメント67を後側エンジンコンパートメント69に締結することにより、車体前部の組付作業が完了する。
【0024】
図13に、サブメンバ17とジョイントメンバ15との締結構造を示す断面図を示す。上述したように、本実施形態では、前後に分割されたエンジンコンパートメント1を結合させている。ジョイントメンバ15は、後側の分割部分に含まれ、サブメンバ17は、前側の分割部分に含まれる。このため、サブメンバ17の先端をジョイントメンバ15の側面に結合させることとなる。本実施形態では、図13(a)に示されるように、サブメンバ17の先端内部にウェルドナット17aを取り付けておく。ジョイントメンバ15には、サイドメンバ19が結合されている側にボルト17bを内部に挿入させるための挿入口15aが形成されていると共に、サブメンバ17が結合される側にボルト17bの挿通孔15bが形成されている。
【0025】
そして、図13(b)に示されるように、挿入口15aからボルト17bを挿入し、挿通孔15bにボルト19bを挿入してサブメンバ17のウェルドナット17aに螺合させる。このようにすることで、サブメンバ17の先端がジョイントメンバ15に締結される。これは、ジョイントメンバ15におけるサブメンバ17の結合場所とサイドメンバ19の結合場所とがオフセットされているため、ボルト17b及びウェルドナット17aの配置が容易になっている恩恵である。即ち、締結部材であるボルト17b及びウェルドナット17aでサイドメンバ19をジョイントメンバ15に締結している。
【0026】
図14に、他の締結例を示す。図13の例では、ジョイントメンバ15のサブメンバ17側の壁部とのみサブメンバ17を締結した。図14の例では、ジョイントメンバ15を貫通させてボルト17bを締結する。この例でも、図14(a)に示されるように、サブメンバ17の先端内部にウェルドナット17aを取り付けておく。ジョイントメンバ15には、サブメンバ17が結合されている側とサイドメンバ19が結合される側の双方にボルト17bの挿通孔15bを形成させておく。
【0027】
そして、図14(b)に示されるように、一対の挿通孔15bにボルト17bを挿入してサブメンバ17のウェルドナット17aに螺合させる。このようにすることで、サブメンバ17の先端がジョイントメンバ15に締結される。この場合も、ジョイントメンバ15におけるサブメンバ17の結合場所とサイドメンバ19の結合場所とがオフセットされているため、ボルト17b及びウェルドナット17aの配置が容易になっている恩恵である。ここでも、締結部材であるボルト17b及びウェルドナット17aでサブメンバ17をジョイントメンバ15に締結している。
【0028】
上述した第三実施形態に対して、下部骨格構造部材の分割位置を変更したものも考えられる。たとえば、図15に示される第四実施形態のような分割位置としてもよい。この例では、エンジンコンパートメント1が、前側エンジンコンパートメント81と後側エンジンコンパートメント83とから構成されている。
【0029】
また、本実施形態では、サスペンションメンバ7は分割されておらず、サスペンションメンバ7の側部9の後端9bがダッシュパネル23の下部に設けられた取付部材13に締結されている。そして、サイドメンバ19の後端部は前記取付部材13に支持されており、前端部がジョイントメンバ15に結合されている。ジョイントメンバ15の下端は、分割時にはどこにも結合されておらず、エンジンコンパートメント1の前後結合時にサスペンションメンバ7の側部9に締結される。なお、図16に示されるように、エンジンコンパートメント1の前側分割部分に各種部品を装着した後に、分割された前後部分を結合させるのは第一実施形態と同様である。また、サブメンバ17のジョイントメンバ15への締結に関しては、上述した第三実施形態と同様である。
【0030】
上述した実施形態では、いずれもジョイントメンバ15におけるサブメンバ17の結合場所とサイドメンバ19の結合場所とがオフセットされていた。以下に説明する実施形態では、サイドメンバ19及びサブメンバ17が、ジョイント部材15との接合点にて下方に屈曲するように、ジョイント部材15に同一高さにてそれぞれ接合されている。このようにしても、車両衝突時などにサブメンバ17に前方から加わる荷重によってサイドメンバ19を下方に移動させることができ、サイドメンバ19によってダッシュパネル23が車室側に押し込まれることが抑止され、車室の変形を最小限にとどめることができる。
【0031】
本実施形態の図7相当図を図17に示す。図17(a)は衝突前の状態を示しており、図17(b)は衝突後の状態を示している。図17(a)に示されるように、サイドメンバ19及びサブメンバ17は、ジョイント部材15との接合点にて下方に屈曲されている。このため、車両衝突時などには、図17(b)に示されるように、サイドメンバ19及びサブメンバ17はさらに下方に屈曲され、サイドメンバ19は下方に移動する。この結果、サイドメンバ19の後方への移動量は低減され、サイドメンバ19によるダッシュパネル23(ピラーロア部材21)の車室内への侵入量を低減でき、車室の変形を抑えて乗員の生存空間を確保することができる。
【0032】
サイドメンバ19及びサブメンバ17のジョイント部材15への接合は、サイドメンバ19及びサブメンバ17の双方をジョイント部材15に溶接したり、サイドメンバ19又はサブメンバ17の一方をジョイント部材15にボルト止めし、他方を溶接したりすればよい。スペース的に可能であるならば、サイドメンバ19及びサブメンバ17の双方をジョイント部材15にボルト止めしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の車体前部構造の第一実施形態におけるエンジンコンパートメントを示す斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1のエンジンコンパートメントを前後に分割した状態を示す分解斜視図である。
【図4】図3の分割した前側エンジンコンパートメントにエンジン等を組み付けた状態を示す分解斜視図である。
【図5】図1のエンジンコンパートメントに下方に向かう荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図である。
【図6】比較例のエンジンコンパートメントに下方に向かう荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図である。
【図7】図1のエンジンコンパートメントにおける車両前面衝突時の環状骨格構造の変形状態を示す説明図である。
【図8】ジョイントメンバへのサブメンバの取付構造(第一例)を示す断面図である。
【図9】ジョイントメンバへのサブメンバの取付構造(第二例)を示す断面図である。
【図10】第二実施形態の図3相当図である。
【図11】第三実施形態の図3相当図である。
【図12】第三実施形態の図4相当図である。
【図13】ジョイントメンバへのサイドメンバの取付構造(第一例)を示す断面図である。
【図14】ジョイントメンバへのサイドメンバの取付構造(第二例)を示す断面図である。
【図15】第四実施形態の図3相当図である。
【図16】第四実施形態の図4相当図である。
【図17】第5実施形態の図7相当図である。
【符号の説明】
【0034】
1…エンジンコンパートメント
3…フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
5…前側連結部材
7…サスペンションメンバ(下部骨格構造部材)
13…取付部材(後側連結部材)
15…ジョイントメンバ(ジョイント部材)
17…サブメンバ
19…サイドメンバ
21…ピラー部材(後側連結部材)
25…カウルボックス
27…サスペンションタワー
33…前側環状骨格部
35…後側環状骨格部
43…前側フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
45…後側フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部のエンジンルームの上部両側縁部に車体前後方向に延設された一対の上部骨格構造部材と、前記各上部骨格構造部材の下方に車体前後方向にそれぞれ延設された下部骨格構造部材と、車体各側部において前記上部骨格構造部材及び前記下部骨格構造部材の各前端同士を連結する前側連結部材と、車体各側部において前記上部骨格構造部材及び前記下部骨格構造部材の各後端同士を連結する後側連結部材と、前記上部骨格構造部材及び前記下部骨格構造部材の各中間部同士を連結するジョイント部材とを備え、車体側視方向から見て前記エンジンルームの前部及び後部にそれぞれ環状骨格構造が構築され、車体各側部において、前記後側連結部材と前記ジョイント部材とを接続するサイドメンバ、及び、前記前側連結部材と前記ジョイント部材とを接続するサブメンバを備えている車体前部構造であって、
前記サイドメンバが前記後側連結部材の下方に接続され、前記サブメンバに前方から加わる荷重によって前記サイドメンバが下方に移動するように、前記ジョイント部材と前記サイドメンバ、及び、前記ジョイント部材と前記サブメンバとが接合されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記ジョイント部材と前記サイドメンバ前端との接合部が、前記ジョイント部材と前記サブメンバの後端との接合部よりも下方に位置されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前側環状骨格構造と後側環状骨格構造とが前後に分割されており、両者を結合させて構成されたものであって、分割時に前記ジョイント部材が前側環状骨格構造に含まれており、結合時に前記ジョイント部材と前記サイドメンバ前端とを締結部材を用いて締結させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前側環状骨格構造と後側環状骨格構造とが前後に分割されており、両者を結合させて構成されたものであって、分割時に前記ジョイント部材が後側環状骨格構造に含まれており、結合時に前記ジョイント部材と前記サブメンバ後端とを締結部材を用いて締結させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記サイドメンバ及び前記サブメンバが、前記ジョイント部材との接合点にて下方に屈曲するように、該ジョイント部材に同一高さにてそれぞれ接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−191061(P2007−191061A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11568(P2006−11568)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】