説明

車体前部構造

【課題】 フードとカウル部分との間のシール性能を向上することができる車体前部構造を提供すること。
【解決手段】 車両前方側端縁部6aを車両上下方向へ移動可能に車体1に取り付けられたカウルカバー6と、このカウルカバー6の車両前方側端縁部6aの車両上方に重なってこのカウルカバー6の車両前方に配置されたフード7と、を備えた車体前部構造であって、フード7とカウルカバー6との間に、両者の間をシールするシールラバー8を設け、カウルカバー6とフランジ33との間に、空間Bを設け、この空間Bに、フード7を閉じた状態で弾性変形してカウルカバー6を車両上方に付勢する弾性体9を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントウインドガラスの下縁部に沿って延在されたカウルパネル付近の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントウインドガラスの下縁部に沿って車幅方向に延在されたカウル部分と、エンジンルームを覆うフードと、の間を、シール部材でシールした車体前部構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−155351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来技術にあっては、フード形状や、その下に格納されたエンジンや補機類のレイアウト状態により、高速走行時に、フード上面に負圧が生じ、フードが車両上方へ持ち上がることがある。そして、このとき、フードとカウル部分との間に隙が発生し、エンジンルーム内の熱気がその隙から漏れ、フロントウインドガラスに当たり曇りが発生するという問題を招くおそれがあった。
【0004】
そこで、本発明は、フードとカウル部分との間のシール性能を向上することができる車体前部構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述事情に鑑みなされたもので、フードとカウルカバーとの間に、両者の間をシールするシール部材を設け、カウルカバーとカウルパネルとの間に、空間を設け、この空間に、フードを閉じた状態で弾性変形してカウルカバーを車両上方に付勢する弾性体を設けたことを最も主要な特徴とする車体前部構造である。
【発明の効果】
【0006】
フードを閉じたときには、シール部材と弾性体とが弾性変形され、その反力で、弾性体によりカウルカバーが車両上方へ付勢されるとともに、シール部材によりフードとカウルカバーとの間がシールされる。
【0007】
そこで、高速走行時にフードが負圧により車両上方に持ち上げられた時には、シール部材が復元するのに加え、弾性体が復元してカウルカバーが持ち上げられ、フードとカウルカバーの間隔が狭められる。このように、カウルカバーが上昇してフードとカウルカバーの間隔が狭められるため、シール部のみが復元するのに比べ、シール状態の維持性能が向上する。よって、フードとカウルカバーの隙間から熱気が漏れて、フロントウインドガラスが曇るのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
この実施の形態の車体前部構造は、車体前部のフロントウインドガラス(5)の下端部に沿って車幅方向に延在されたカウルパネル(31,32)と、このカウルパネル(31,32)の上部を覆い、車両前方側端部(6a)を車両上下方向へ移動可能に車体(1)に取り付けられたカウルカバー(6)と、このカウルカバー(6)の少なくとも車両前方側端部(6a)の車両上方に重なってこのカウルカバー(6)の車両前方に配置され、車体(1)に開閉可能に支持されたフード(7)と、を備えた車体前部構造である。
【0010】
そして、この実施の形態の車体前部構造は、前記フード(7)とカウルカバー(6)との間に、両者の間をシールするシール部材(8)を設け、前記カウルカバー(6)とカウルパネル(31,32)との間に、空間(B)を設け、この空間(B)に、前記フード(7)を閉じた状態で弾性変形して前記カウルカバー(6)を車両上方に付勢する弾性体(9)を設けたことを特徴とする。
【実施例1】
【0011】
図1〜図6に基づいて本発明の最良の実施の形態の実施例1の車体前部構造について説明する。
【0012】
まず、その構成について説明する。
【0013】
図2に示すように、車体1には、エンジンルームERと車室Rとを区画するダッシュパネル2の上端部に、車幅方向に延在したカウルボックス3が設けられている。このカウルボックス3の車幅方向両端部は、フロントピラー4,4に結合されている。
【0014】
カウルボックス3には、フロントウインドガラス5の下縁部が支持され、かつ、その車両上方側面が外装品である樹脂あるいは金属製のカウルカバー6により覆われている。
【0015】
エンジンルームERは、フード7により覆われる。このフード7は、エンジンルームERを開閉可能に、その後端部あるいは前端部が車体1に回動可能に支持される。
【0016】
さらに、カウルカバー6の車両前方端縁部6aとフード7との間にシール部材としてのゴム製のシールラバー8が介在されている。
【0017】
また、カウルカバー6の車両前方端縁部6aとカウルボックス3との間に弾性体9が介在されている。
【0018】
上記構造の詳細を、図2のS1−S1断面図である図1に基づいて説明する。
【0019】
カウルボックス3は、ダッシュパネル2の上部を形成するダッシュアッパパネル21と、カウルパネルとしてのカウルロア31およびカウルアッパ32を3箇所のフランジ33,34,35で結合させて箱断面形状に形成されている。
【0020】
フランジ34には、フロントウインドガラス5の下縁部が接着などにより取り付けられている。
【0021】
カウルカバー6は、その車両後方端縁部6bがフロントウインドガラス5の下縁部の上面に接着され、一方、その車両前方側端縁部6aは、車両上下方向に移動可能な片持ち支持状態となっている。また、カウルカバー6の車両前方側端縁部6aは、フード7とカウルボックス3のフランジ33の部分とに上下方向に重なって配置され、かつ、フード7との間、およびカウルアッパ32との間に、それぞれ空間A,Bを設定して配置されている。
【0022】
そして、シールラバー8は、空間Aに配置されてカウルカバー6の車両前方側端縁部6aの上面に接着などにより取り付けられている。なお、シールラバー8は、中空に形成され、フード7に当接する部分にリップ8aが形成されている。
【0023】
一方、弾性体9は、空間Bに配置されて、カウルカバー6の車両前方側端縁部6aの下面とカウルボックス3のフランジ33とに取り付けられている。
【0024】
弾性体9は、ステンレス製の板ばねで形成されており、繰り返し反力を受けても復元力を発揮し、かつ耐熱性に優れるという特性を有しているとともに、その反力の大きさが、シールラバー8の初期反力に相当する大きさに設定されている。
【0025】
また、弾性体9は、図3の拡大断面図に示すように、上側片9a、中間片9b、下側片9cにより略コの字断面形状に形成され、中間部には、弾性体9の伸縮性を向上させるために略くの字状に折り曲げられた折曲部9dが形成されている。そして、弾性体9は、上側片9aが、カウルカバー6の裏面に一体に形成された係合爪6cに係合され、下側片9cが、カウルボックス3のフランジ33に樹脂製のクリップ91で取り付けられている。
【0026】
そして、シールラバー8の車両上下方向寸法、および弾性体9の車両上下方向寸法は、それぞれ、空間A,Bの車両上下方向寸法よりも小さく形成されており、フード7を閉じたときに、それぞれ、圧縮方向に所定量弾性変形される寸法に設定されている。
【0027】
次に、実施例1の作用について説明する。
【0028】
通常は、フードを閉じたときには、図1に示すように、シールラバー8と弾性体9とが圧縮変形され、その反力でシールラバー8がフード7に当接して、両者間をシールしている。ここで、弾性体9の反力は、シールラバー8の初期反力と同等の大きさに設定されているため、シールラバー8と弾性体9とは、ほぼ同等に圧縮変形される。よって、シールラバー8とフード7の当接圧力が設定未満となってシール性が悪化したり、シールラバー8に過剰な反力が入力されてシールラバー8のみが過剰に圧縮されたりする不具合が生じない。
【0029】
次に、高速走行時にフード7の上面に生じる走行負圧Pによりフード7が、図4に示すように、二点鎖線で示す通常時の位置から車両上方へ持ち上げられる場合がある。このとき、フード7が車両上方に持ち上げられるのに追従して、シールラバー8と弾性体9との両方が復元方向である伸び方向に変形する。したがって、カウルカバー6の車両前方側端縁部6aが上昇し、シールラバー8は、フード7に接触したシール状態に保たれる。
【0030】
よって、エンジンルームER内の熱気がフロントウインドガラス5へ向けて漏れることが無く、この熱気の漏れによる曇りが生じることがない。
【0031】
次に、シールラバー8が経年劣化してシールラバー8それ自体の反力が弱まってフード7をシールするのに十分な反力が得られない状態になった時には、このシールラバー8の反力低下分だけ、弾性体9が伸び変形する。すなわち、図5に示すように、弾性体9の伸び分だけカウルカバー6の車両前方側端縁部6aが上昇し、空間Aの上下方向寸法が狭まる一方で、空間Bの上下方向寸法が拡がり、シールラバー8は、フード7に接触したシール状態に保たれる。
【0032】
次に、図6に示すように、フード7に対し、車両上方から衝撃荷重Fが入力された時には、フード7は、シールラバー8と弾性体9とを押し潰す。このように、実施例1では、衝撃荷重Fが入力されたときには、弾性体9を有しない従来構造と比べ、弾性体9の反力が入力方向とは逆方向に生じるとともに、フード7が弾性体9が設置された空間Bの分だけよけいに撓むことができ、衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0033】
次に、図7に基づきこの発明の実施の形態の実施例2の車体前部構造を説明する。
【0034】
この実施の形態の実施例2の車体前部構造は、実施例1とは弾性体を異ならせた例である。
【0035】
図7に示す弾性体209は、実施例1で示した弾性体9と同様に、ステンレス製の板ばねで、強反力部としての厚板材292と、弱反力部としての薄板材293と、の厚さの異なる2枚の板材292,293を上下に直列に結合して形成されている。
【0036】
また、この弾性体209は、実施例1の弾性体9と同様に、上側片209a、中間片209b、下側片209cにより略コの字断面形状に形成され、かつ、折曲部209dを備えている。
【0037】
また、厚板材292は、衝撃荷重Fが入力された際の大荷重吸収性能を得るのに最適な反力の大きさに設定されている。また、薄板材293は、通常時のシール性能を確保するのに最適な反力の大きさ、すなわち、実施例1と同様に、シールラバー8の初期反力相当の大きさに設定されている。
【0038】
したがって、この実施例2では、図1に示すようにフード7を閉じたときには、弾性体209にあっては、主として薄板材293が圧縮方向に変形される。
【0039】
よって、高速走行などでフード7が持ち上げられた際や、シールラバー8が劣化した際には、弾性体209において、主として薄板材293が伸び方向に復元し、実施例1と同様に、シールラバー8が持ち上げられて、フード7に当接したシール状態が維持される。
【0040】
一方、フード7の車両上方から衝撃荷重Fが入力されたときには、弾性体209にあっては、厚板材292が潰れる際に大きな反力が作用し、その分、衝撃吸収性能が高まる。
【0041】
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0042】
次に、図8に基づきこの発明の実施の形態の実施例3の車体前部構造を説明する。
【0043】
この実施の形態の実施例3の車体前部構造は、実施例2の弾性体209の変形例である。
【0044】
すなわち、図8に示す実施例3の車体前部構造の弾性体309は、強反力部392を形成する板厚の厚い部分と、弱反力部393を形成する板厚の薄い部分とが一体に形成されている。このような板厚の相違は、圧延ロール間のピッチを部位により異ならせることにより形成することができる。
【0045】
したがって、この実施例3の車体前部構造にあっては、実施例2の車体前部構造と同様に、フード7を閉じたときには、弾性体309にあっては、主として弱反力部393が圧縮方向に変形される。
【0046】
よって、高速走行などでフード7が持ち上げられた際や、シールラバー8が劣化した際には、弾性体309において、主として弱反力部393が伸び方向に復元し、実施例1と同様に、シールラバー8が持ち上げられて、フード7に当接したシール状態が維持される。
【0047】
一方、フード7の車両上方から衝撃荷重Fが入力されたときには、弾性体309にあっては、強反力部392が潰れる際に大きな反力が作用し、その分、衝撃吸収性能が高まる。
【0048】
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0049】
次に、図9に基づきこの発明の実施の形態の実施例4の車体前部構造を説明する。なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0050】
この実施の形態の実施例4の車体前部構造は、実施例1とは弾性体を異ならせた例である。
【0051】
図9に示す実施例4の車体前部構造の弾性体409は、ゴム製のもので、カウルカバー6の係合爪6cを係合させる係合凹部409aが形成され、かつ、収容穴409bに頭部が設置されたクリップ491によりフランジ33に取り付けられている。
【0052】
また、この弾性体409は、実施例1と同様に、繰り返し反力を受けても復元力を有し、かつ耐熱性に優れるという特性を有しているとともに、その反力の大きさが、シールラバー8の初期反力に相当する大きさに設定されている。
【0053】
したがって、この実施例4の車体前部構造にあっては、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【実施例5】
【0054】
次に、図10に基づきこの発明の実施の形態の実施例5の車体前部構造を説明する。
【0055】
この実施の形態の実施例5の車体前部構造は、実施例4の弾性体の変形例である。
【0056】
図10に示す実施例5の車体前部構造の弾性体509は、実施例4で示した弾性体409と同様に、ゴム製で、高硬度層の強反力部592と、低硬度層の弱反力部593と、を上下に直列に配置した硬度の異なる2層構造に形成されている。
【0057】
そして、強反力部592は、衝撃荷重Fが入力された際の大荷重吸収性能を得るのに最適な反力の大きさに設定されている。一方、弱反力部593は、通常時のシール性能を確保するのに最適な反力の大きさ、すなわち、実施例4と同様に、シールラバー8の初期反力相当の大きさに設定されている。
【0058】
この実施例5では、図1に示したようにフード7を閉じたときには、弾性体509にあっては、主として弱反力部593が圧縮方向に変形される。
【0059】
したがって、高速走行などでフード7が持ち上げられた際や、シールラバー8が劣化した際には、弾性体509において、主として弱反力部593が伸び方向に復元し、実施例1と同様に、シールラバー8が持ち上げられて、フード7に当接したシール状態が維持される。
【0060】
一方、フード7の車両上方から衝撃荷重Fが入力されたときには、弾性体509にあっては、強反力部592が潰れる際に大きな反力が作用し、その分、衝撃吸収性能が高まる。
【0061】
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【実施例6】
【0062】
次に、図11に基づきこの発明の実施の形態の実施例6の車体前部構造を説明する。なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0063】
この実施の形態の実施例6の車体前部構造は、実施例1とは弾性体を異ならせた例である。
【0064】
図11に示す形態の実施例6の車体前部構造の弾性体609は、カウルカバー606の車両前方側端縁部606aの下面から略ノの字断面形状で延びるカウルカバー606と一体に形成された板ばねである。この弾性体609は、2箇所の折曲部609a,609bのを経た先端に取付片609cを有している。
【0065】
そして、弾性体609は、自然状態では、図において、二点鎖線で示す形状を成し、取付片609cをクリップ691でフランジ33へ組み付け、図外のフード7を閉じた状態では、図において実線で示すように、取付片609cをカウルカバー606の車両前方側端縁部606aと対向して圧縮変形された状態となる。
【0066】
なお、この弾性体609は、実施例1と同様に、繰り返し反力を受けても復元力を有し、かつ耐熱性に優れるという特性を有しているとともに、その反力が、シールラバー8の初期反力に相当する大きさに設定されている。
【0067】
したがって、この実施例4の車体前部構造にあっては、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【実施例7】
【0068】
次に、図12に基づきこの発明の実施の形態の実施例7の車体前部構造を説明する。
【0069】
この実施の形態の実施例7の車体前部構造は、実施例6の弾性体の変形例である。
【0070】
図12に示す実施例7の車体前部構造の弾性体709は、実施例6で示した弾性体609と同様に、カウルカバー706と一体に形成され、相対的に厚さを厚くして反力を大きく設定した強反力部792と、相対的に薄く形成して反力を小さく設定した弱反力部793と、を上下方向に直列に備えている。
【0071】
強反力部792は、衝撃荷重Fが入力された際の大荷重吸収性能を得るのに最適な反力の大きさに設定されている。また、弱反力部793は、通常時のシール性能を確保するのに最適な反力、すなわち、実施例1と同様に、シールラバー8の初期反力に相当する大きさに設定されている。また、弾性体709は、実施例6と同様に、2箇所の折曲部709a,709bと、取付片709cとを備えている。
【0072】
この実施例7では、フード7を閉じた通常時は、弾性体709にあっては、主として弱反力部793が圧縮方向に変形される。
【0073】
したがって、高速走行などでフード7が持ち上げられた際や、シールラバー8が劣化した際には、弾性体709において、主として弱反力部793が伸び方向に復元し、実施例1と同様に、シールラバー8が持ち上げられて、フード7に当接したシール状態が維持される。
【0074】
一方、フード7の車両上方から衝撃荷重Fが入力されたときには、弾性体709にあっては、強反力部792が潰れる際に大きな反力が作用し、その分、衝撃吸収性能が高まる。
【0075】
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【実施例8】
【0076】
次に、図13に基づきこの発明の実施の形態の実施例8の車体前部構造を説明する。
【0077】
この実施の形態の実施例8の車体前部構造は、実施例7の弾性体の変形例である。
【0078】
図13に示す実施例8の車体前部構造では、カウルカバー806が、樹脂により形成されている。そして、このカウルカバー806と一体に形成された弾性体809は、反力の大きな例えばPPなどの樹脂から成る強反力部892と、反力の小さな例えばゴムから成る弱反力部893と、を備え、反力の大きさの違いを、板厚ではなしに材質の違いにより与えられている。なお、各反力部892,893の反力の大きさの設定は、実施例7と同様である。
【0079】
したがって、この実施例8の車体前部構造では、実施例7の車体前部構造と同様の作用効果が得られる。
【0080】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1および実施例2を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1および実施例2に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0081】
すなわち、実施例1ないし実施例8では、シール部材としてのシールラバー8を、カウルカバー6に取り付けた例を示したが、フード7に取り付け、フード7を閉じたときにカウルカバー6に当接するようにしてもよい。また、シール部材としては、ゴム製に限らず、弾性変形してシール性能を得ることができるものであれば、樹脂など他の素材のものを用いることができる。
【0082】
また、実施例1ないし実施例8では、弾性体9を、カウルカバー6とカウルパネルとしてのフランジ33との両方に取り付けた例を示したが、いずれか一方に取り付け、他方には当接させる構造としてもよい。
【0083】
また、実施例1ないし実施例8では、シール部材としてのシールラバー8と弾性体9とを、車両上下方向で重なるように配置した例を示したが、両者は、車両上下方向で異なる位置に設置してもよい。
【0084】
また、実施例1ないし実施例8では、カウルパネルとしてカウルロア31およびカウルアッパ32を示したが、カウル部分を形成する車体パネルであれば、実施例で示したカウルロア31およびカウルアッパ32に限定されない。
【0085】
また、実施例2,3,5,7,8では、弾性体209,309,509,709,809に強反力部292,392,592,792,892と、弱反力部293,393,593,793,893と、を形成し、弱反力部293,393,593,793,893の反力の大きさを、シールラバー8の初期反力と同等の大きさに設定した。このように設定することで、フード7を閉じたときのシールラバー8の接触圧力を最適にできるが、これに限定されない。例えば、シールラバー8の性質を、シール時の接触圧力以外の要素、例えば、耐久性などにより決定してその反力を通常とは異なる反力に設定しておき、弾性体の反力の大きさを、シール部材の接触圧力として最適の圧力が得られる大きさに設定し、この弾性体の反力に基づいてシール部材をフード7に接触させるようにしてもよい。
【0086】
また、実施例2,3,5,7,8では、弾性体209,309,509,709,809において、上部に強反力部292,392,592,792,892、下部に弱反力部293,393,593,793,893、を設けた例を示したが、これらは上下逆に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態の実施例1の車体前部構造を示す断面図であり、図2のS1−S1線の位置で切った断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の実施例1の車体前部構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の実施例1の車体前部構造の要部を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例1の車体前部構造のフード上昇時の作用を説明する作用説明図である。
【図5】本発明の実施の形態の実施例1の車体前部構造のシールラバー劣化時の作用を説明する作用説明図である。
【図6】本発明の実施の形態の実施例1の車体前部構造の衝撃荷重入力時の作用を説明する作用説明図である。
【図7】本発明の実施の形態の実施例2の車体前部構造の要部を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の実施例3の車体前部構造の要部を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態の実施例4の車体前部構造の要部を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態の実施例5の車体前部構造の要部を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態の実施例6の車体前部構造の要部を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態の実施例7の車体前部構造の要部を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態の実施例8の車体前部構造の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 車体
5 フロントウインドガラス
6 カウルカバー
6a 車両前方側端縁部
7 フード
8 シールラバー(シール部材)
9 弾性体
31 カウルロア(カウルパネル)
32 カウルアッパ(カウルパネル)
209 弾性体
292 厚板材(強反力部)
293 薄板材(弱反力部)
309 弾性体
392 強反力部
393 弱反力部
409 弾性体
509 弾性体
592 強反力部
593 弱反力部
606 カウルカバー
606a車両前方側端縁部
609 弾性体
706 カウルカバー
709 弾性体
792 強反力部
793 弱反力部
809 弾性体
892 強反力部
893 弱反力部
B 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部のフロントウインドガラスの下端部に沿って車幅方向に延在されたカウルパネルと、
このカウルパネルの上部を覆い、車両前方側端部を車両上下方向へ移動可能に車体に取り付けられたカウルカバーと、
このカウルカバーの少なくとも車両前方側端部の車両上方に重なってこのカウルカバーの車両前方に配置され、車体に開閉可能に支持されたフードと、
を備えた車体前部構造であって、
前記フードとカウルカバーとの間に、両者の間をシールするシール部材を設け、
前記カウルカバーとカウルパネルとの間に、空間を設け、
この空間に、前記フードを閉じた状態で弾性変形して前記カウルカバーを車両上方に付勢する弾性体を設けたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記弾性体は、車両上下方向に直列に、前記弾性変形したときの反力が相対的に大きな強反力部と、前記反力が相対的に小さい弱反力部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記弾性体は、前記弾性変形したときの反力の大きさが、前記シール部材の初期反力の大きさに設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記弾性体を、前記カウルカバーに一体に形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車体前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−22202(P2007−22202A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204454(P2005−204454)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】