説明

車体前部構造

【課題】衝撃の吸収が可能で、位置決めが容易で、部品点数の減少を図ることができ、さらに設計の自由度を高めることができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12にフロントバルクヘッド25を備え、フロントバルクヘッド25の左右側にヘッドライト41およびフロントフェンダ44をそれぞれ備える。この車体前部構造10は、フロントバルクヘッド25から車幅方向左右側に向けて延びる左右のサイドメンバー35,36をそれぞれ備える。左右のサイドメンバー35,36は、ヘッドライト41を取り付けるライト取付部42,47を有するとともに、フロントフェンダ44を取り付けるフェンダ取付部45,48を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体前部構造に係り、特に、左右のフロントサイドフレームにフロントバルクヘッドを備え、このフロントバルクヘッドの左右側にライトやフロントフェンダを備えた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、フェンダをフェンダパネル部材および樹脂製ブラケットで構成し、樹脂製ブラケットの下端部を車体側サポート部材に取り付けてフェンダパネル部材を車体側サポート部材で支えるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−193146公報
【0003】
図8は従来の車体前部構造を説明する図である。
車体前部構造200は、フェンダ201を構成するフェンダパネル部材202および樹脂製ブラケット203を備える。
フェンダ201は、フェンダパネル部材202の上端部202aに樹脂製ブラケット203の上端部203aが重ね合わされ、フェンダパネル部材202の上縁202bが折り曲げられて、フェンダパネル部材202の上端部202aに樹脂製ブラケット203の上端部203aが取り付けられる。
樹脂製ブラケット203の下端部203bが車体側サポート部材204に取り付けられることでフェンダパネル部材202が車体側サポート部材204で支えられる。
この樹脂製ブラケット203は、車体の前後方向に延びる比較的長尺状の部材である。
【0004】
この車体前部構造200によれば、フェンダ201の上縁202b近傍に衝撃が矢印の如く作用した場合、フェンダパネル部材202の上端部202aおよび樹脂製ブラケット203が撓んでフェンダ201が下方に変位する。
フェンダ201が下方に変位することで、衝撃を吸収することが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車体前部構造200では、フェンダ201に作用した衝撃を吸収するために、樹脂製ブラケット203を用いてフェンダパネル部材202を車体側サポート部材204に取り付ける必要がある。
すなわち、車体側サポート部材204に樹脂製ブラケット203を介在させてフェンダパネル部材202を取り付けるので、フェンダパネル部材202を車体側サポート部材204に対して精度よく位置決めする作業に手間がかかり、そのことが生産性を高める妨げになっていた。
【0006】
一例として、車体側サポート部材204にヘッドライトが設けられている場合に、フェンダパネル部材202を車体側サポート部材204に対して精度よく位置決めしないと、フェンダパネル部材202をヘッドライトに対して好適に位置決めすることが難しい。
【0007】
さらに、樹脂製ブラケット203を用いてフェンダパネル部材202を車体側サポート部材204に取り付けるために、車体前部構造200の部品点数が増し、そのことがコストを抑える妨げになっていた。
【0008】
加えて、エンジンルーム内に比較的長尺状な樹脂製ブラケット203を収納する必要がある。このため、樹脂製ブラケット203を収納する空間を確保する必要があり、そのことが設計の自由度を高める妨げになっていた。
【0009】
本発明は、衝撃の吸収が可能で、位置決めが容易で、部品点数の減少を図ることができ、さらに設計の自由度を高めることができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、左右のフロントサイドフレームにフロントバルクヘッドを備え、このフロントバルクヘッドの左右側にライトおよびフロントフェンダをそれぞれ備えた車体前部構造において、前記フロントバルクヘッドから車幅方向左右側に向けて延びるサイドメンバーをそれぞれ備え、前記サイドメンバーは、前記ライトを取り付けるライト取付部を有するとともに、前記フロントフェンダを片持ち状態で取り付けるフェンダ取付部を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明において、前記フェンダ取付部は、前記ライト取付部から略水平に延びた水平部位と、この水平部位の端部から立ち上げた立上部位と、この立上部位の上端にフロントフェンダを載せる載せ部位とを有し、前記水平部位の端部および前記立上部位は、車幅方向に沿って平坦部が設けられ、この平坦部の内側端に内壁部が設けられ、この平坦部の外側端に外壁部が設けられ、この外壁部および前記内壁部のうち、外壁部のみに車体外側に向けてフランジが張り出され、前記平坦部、前記内外の壁部および前記フランジで断面略ひしゃく状に形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記左右のフロントサイドフレームの外側にそれぞれ左右のフロントピラーまで延びるアッパーメンバーを備え、このアッパーメンバーから前記フェンダ取付部の水平部位まで上方に向けて湾曲状に延ばすとともに、水平部位に連結されたサポート部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明において、前記フェンダ取付部は、前記立上部位および前記載せ部位が略への字状に折り曲げられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、フロントバルクヘッドから車幅方向左右側に向けてサイドメンバーをそれぞれ延ばした。
このサイドメンバーに、ライトを取り付けるライト取付部を備えるとともに、フロントフェンダを取り付けるフェンダ取付部を備える。
【0015】
サイドメンバーにライトおよびフロントフェンダを取り付けることが可能になる。ライトおよびフロントフェンダを同一部材に取り付けることで、ライトに対してフロントフェンダを高精度に容易に位置決めすることができる。
これにより、ライトに対してフロントフェンダを高精度に位置決めする作業を、手間をかけないで実施することができ、生産性を高めることができるという利点がある。
【0016】
さらに、サイドメンバーを利用してフロントフェンダを取り付けることで、フロントフェンダを取り付けるために、専用の取付部材を個別に用意する必要がない。
これにより、車体前部構造の部品点数を減らして、コストを抑えることができるという利点がある。
【0017】
加えて、フロントフェンダを取り付けるために専用の取付部材を、エンジンルーム内に配置する必要がない。
これにより、エンジンルーム内に専用の取付部材を収納する空間を確保する必要がなく、設計の自由度を高めることができるという利点がある。
【0018】
さらに、フロントフェンダを片持ち状態で取り付けたので、フェンダ取付部周辺に障害物が衝突した際、フェンダ取付部が好適に変形して衝撃を良好に吸収することができるという利点がある。
【0019】
請求項2に係る発明では、水平部位の端部および立上部位を、外壁部および内壁部のうち、外壁部のみに車体外側に向けてフランジを張り出して断面略ひしゃく状に形成した。
よって、フロントフェンダに下向きの衝撃力が作用し、この衝撃力が載せ部位に伝えられた場合、水平部位の端部を支点にして立上部位が車体内側に向けて好適に変形するとともに、立上部位の内壁部側が好適に変形する。
これにより、立上部位を好適に変形させて衝撃力を良好に吸収することができるという利点がある。
【0020】
請求項3に係る発明では、アッパーメンバーからフェンダ取付部の水平部位まで上方に向けてサポート部を湾曲状に延ばすとともに、サポート部を水平部位に連結した。
このように、サポート部を湾曲状に延ばすことで、フェンダ取付部の水平部位に下向きの衝撃力が作用した場合に、左サポート部の湾曲状の部位が弾性変形することが可能になる。
これにより、左サポート部をばね状に好適に弾性変形させて、サポート部のばね作用で衝撃力を良好に吸収することができるという利点がある。
【0021】
請求項4に係る発明では、フェンダ取付部の立上部位および載せ部位を略への字状に折り曲げた。
この形状によれば、例えば、フェンダ取付部周辺のエンジンフードやフロントフェンダに拭き掃除の際に小さな力が作用しても、作用した小さな力に対して十分な剛性を保つことができる。
【0022】
一方、フェンダ取付部周辺のエンジンフードやフェンダに、障害物が衝突した場合には、立上部位および載せ部位で形成された略への字が略一の字(直線状)になるように延びながら立上部位の根本部(すなわち、水平部位の端部)で曲がるので、衝撃を効率よく吸収することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向に従い、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
図1は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側に前後方向に延びる左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)11,12を備え、左右のフロントサイドフレーム11,12のそれぞれの上側後方に左右のフロントピラー(フロントピラー)13,14を備え、左フロントピラー13の下端部13aから前方に向けて左アッパーメンバー(アッパーメンバー)16を延ばし、左アッパーメンバー16の下端部16aに左ロアメンバー17を備えるとともに、左ロアメンバー17を左フロントサイドフレーム11の外側に配置し、右フロントピラー14の下端部14aから前方に向けて右アッパーメンバー(アッパーメンバー)18を延ばし、右アッパーメンバー18の下端部18aに右ロアメンバー19を備えるとともに、右ロアメンバー19を右フロントサイドフレーム12の外側に配置したものである。
【0024】
この車体前部構造10は、左フロントサイドフレーム11と左アッパーメンバー16との間に、左前輪(図示せず)を覆う左ホイールハウス21を備え、右フロントサイドフレーム12と右アッパーメンバー18との間に、右前輪(図示せず)を覆う右ホイールハウス22を備え、左右のフロントサイドフレーム11,12のそれぞれの前端部にフロントバルクヘッド25を備える。
【0025】
フロントバルクヘッド25は、エンジンルーム57と外部とを仕切る隔壁である。
このフロントバルクヘッド25は、左右のフロントサイドフレーム11,12のそれぞれの前端部に左右のステイ26,27が設けられ、左右のステイ26,27の上端部にアッパーフレーム28が架け渡され、左右のステイ26,27の下端部にロアフレーム29が架け渡され、左右のステイ26,27の中央部にフロントバンパービーム31が架け渡されている。
【0026】
ロアフレーム29は、左端部29aが左ロアメンバー17に取り付けられ、右端部29bが右ロアメンバー19に取り付けられている。
【0027】
アッパーフレーム28は、センター部28aが車体幅方向に水平に延びるように形成され、センター部28aの左端部から左サイド部28bが下方に折り曲げられ、左サイド部28bの左端部から左アウトサイド部28cが略水平に延び、略水平に延びた左アウトサイド部28cが左アッパーメンバー16に取り付けられ、センター部28aの右端部から右サイド部28dが下方に折り曲げられ、右サイド部28dの右端部から右アウトサイド部28eが略水平に延び、略水平に延びた右アウトサイド部28eが右アッパーメンバー18に取り付けられている。
【0028】
さらに、車体前部構造10は、フロントバルクヘッド25のセンター部28aにフードロックブラケット32を備え、センター部28aの左端部から車幅方向左側に向けて延びる左サイドメンバー(サイドメンバー)35を備え、センター部の右端部から車幅方向右側に向けて延びる右サイドメンバー(サイドメンバー)36を備え、左サイドメンバー35を支える左サポート部(サポート部)37を備え、右サイドメンバー36を支える右サポート部(サポート部)38を備える。
フードロックブラケット32は、エンジンフードのフードロック(図示せず)を車体に固定するための部材である。
【0029】
左サイドメンバー35は、左ヘッドライト(ライト)41を取り付ける左ライト取付部(ライト取付部)42を略中央に有するとともに、左フロントフェンダ(フロントフェンダ)44を片持ち状態で取り付ける左フェンダ取付部(フェンダ取付部)45を先端部に有する。
左サポート部37は、左アッパーメンバー16から左フェンダ取付部45の水平部位53(図3参照)まで上方に向けて湾曲状に延びている。
左アッパーメンバー16は、左フェンダ取付部45の下方に配置されている。
【0030】
右サイドメンバー36は、右ヘッドライト(図示せず)を取り付ける右ライト取付部(ライト取付部)47を略中央に有するとともに、右フロントフェンダ(図示せず)を片持ち状態で取り付ける右フェンダ取付部(フェンダ取付部)48を先端部に有する。
右サポート部38は、右アッパーメンバー18から右フェンダ取付部48の水平部位まで上方に向けて湾曲状に延びている。
右アッパーメンバー18は、右フェンダ取付部48の下方に配置されている。
【0031】
すなわち、車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12にフロントバルクヘッド25を備え、このフロントバルクヘッド25の左側に左サイドメンバー35を介して左ヘッドライト41および左フロントフェンダ44が設けられるとともに、フロントバルクヘッド25の右側に右サイドメンバー36を介して右ヘッドライトおよび右フロントフェンダ(図示せず)が配置されている。
【0032】
左ヘッドライト41および左フロントフェンダ44を同一部材である左サイドメンバー35に取り付けることで、左ヘッドライト41に対して左フロントフェンダ44を高精度に容易に位置決めすることができる。
さらに、右ヘッドライトおよび右フロントフェンダを同一部材である右サイドメンバー36に取り付けることで、右ヘッドライト41に対して右フロントフェンダ44を高精度に容易に位置決めすることができる。
これにより、左右のヘッドライト41に対して左右のフロントフェンダ44を高精度に位置決めする作業を、手間をかけないで実施することができる。
【0033】
また、左サイドメンバー35を利用して左フロントフェンダ44を取り付けることで、左フロントフェンダ44を取り付けるために、専用の取付部材を個別に用意する必要がない。
さらに、右サイドメンバー36を利用して右フロントフェンダを取り付けることで、右フロントフェンダを取り付けるために、専用の取付部材を個別に用意する必要がない。
これにより、車体前部構造の部品点数の減少を図ることができる。
【0034】
加えて、左右のフロントフェンダ44を取り付けるために専用の取付部材を、エンジンルーム57内に配置する必要がない。
これにより、エンジンルーム57内に、左右のフロントフェンダ44を取り付ける専用の取付部材を収納する空間を確保する必要がなく、設計の自由度を高めることができる。
さらに、左右のフロントフェンダ44を片持ち状態で取り付けたので、左右のフェンダ取付部45,48周辺に障害物が衝突した際、左右のフェンダ取付部45,48がそれぞれ好適に変形して衝撃を良好に吸収することができる。
【0035】
なお、図示しない右ヘッドライトは、左ヘッドライト41と左右対称の部材である。図示しない右フロントフェンダは、左フロントフェンダ44と左右対称の部材である。
右サイドメンバー36は、左サイドメンバー35と左右対称な部材であり、以下説明を省略する。
右サポート部38は、左サポート部37と左右対称な部材であり、以下説明を省略する。
【0036】
図2は本発明に係る車体前部構造の要部を示す斜視図、図3は本発明に係る車体前部構造の要部を示す分解斜視図である。
左サイドメンバー35は、センター部28aの左端部にスポット溶接などで固定される基部51と、基部51から車幅方向外側に略水平に延びた左ライト取付部42と、左ライト取付部42から車幅方向外側に延びた左フェンダ取付部45とを有する。
【0037】
左ライト取付部42は、ライト取付孔42aが形成され、左ライト取付部42の裏面にライト取付孔42aと同軸上にナット88が溶接されている。
左フェンダ取付部45は、左ライト取付部42から車幅方向外側に略水平に延びた湾曲状の水平部位53と、この水平部位53の端部53aから立ち上げた立上部位54と、この立上部位54の上端に左フロントフェンダ44を載せる載せ部位55とを有する。
載せ部位55は、フェンダ取付孔45aが形成され、載せ部位55の裏面にフェンダ取付孔45aと同軸上にナット82が溶接されている。
【0038】
左フロントフェンダ44は、上端部44aにおいてエンジンルーム57側に、車体後方に向けて上り勾配になるように略水平に張り出した張出部58を備える。
張出部58は、前端部58aに取付孔61が形成され、取付孔61の前方に位置決め孔62が形成され、位置決め孔62の前方にライト取付孔63が形成され、張出部58の裏面にライト取付孔63と同軸上にナット85が溶接されている。
左ヘッドライト41は、ケース65の前部にレンズ66が設けられ、ケース65の上面65aに外側ブラケット67および内側ブラケット68が設けられている。
【0039】
外側ブラケット67は、上面65aの外側近傍に支柱71を立て、支柱71の上端部から車体方向に向けて外側プレート72を、車体後方に向けて上り勾配になるように延ばしたものである。
外側プレート72は、後端部に下方に延びる位置決めピン73が形成され、位置決めピン73の前方に取付孔74が形成されている。
内側ブラケット68は、上面65aの内側近傍に支えプレート76を立て、支えプレート76の上端部から車体方向に向けて内側プレート77を略水平に延ばしたものである。
内側プレート77は、取付孔78が形成されている。
【0040】
左フロントフェンダ44の張出部58を載せ部位55に載せ、張出部58の取付孔61および載せ部位55のフェンダ取付孔45aにボルト81を差し込む。
フェンダ取付孔45aから突出したボルト81をナット82にねじ結合することで、左サイドメンバー35の載せ部位55に左フロントフェンダ44を取り付ける。
【0041】
左ヘッドライト41の外側プレート72を張出部58に載せるとともに、位置決めピン73を位置決め孔62に差し込む。この状態で、外側プレート72の取付孔74および張出部58の取付孔63にボルト84を差し込む。
取付孔63から突出したボルト84をナット85にねじ結合することで、左フロントフェンダ44の張出部58に外側プレート72を取り付ける。
【0042】
左ヘッドライト41の内側プレート77を左ライト取付部42に載せ、内側プレート77の取付孔78および左ライト取付部42のライト取付孔42aにボルト87を差し込む。
ライト取付孔42aから突出したボルト87をナット88にねじ結合することで、左ライト取付部42に内側プレート77を取り付ける。
【0043】
よって、左ヘッドライト41が左フロントフェンダ44および左サイドメンバー35に取り付けられる。
これにより、フロントバルクヘッド25と一体に固定された左サイドメンバー35に、左フロントフェンダ44および左ヘッドライト41を取り付けることができる。
【0044】
左サポート部37は、左アッパーメンバー16の内壁16bに基部91がスポット溶接などで固定され、基部91から脚部92が、左フェンダ取付部45の水平部位53まで上方に向けて湾曲状に延び、脚部92の上端部位94が略水平に配置される。この上端部位94は水平部位53の裏面にスポット溶接などで固定(連結)される。
【0045】
脚部92は、帯状プレート95の両側縁にそれぞれ折曲片96,96が形成され、中央部位93において略90°捩られるとともに車体前方に向けて湾曲状に折り曲げられている。
これにより、上端部位94のうち、帯状プレート95が略水平に配置される。
左サポート部37の略中央において略90°捩ることで、各折曲片96,96が、脚部92の下側部位において内壁16bに沿って車体前後方向に配置され、脚部92の上端部において車体幅方向(内壁16bに対して直交する方向)に配置される。
【0046】
なお、左フロントフェンダ44は後部近傍に取付突片46を備える。取付突片46は、エンジンルーム57側に突出した突片である。この取付突片46は、ボルト52で支持部10aに取り付けられる。
支持部10aは、車体前部構造10の一部を構成する部材である。
【0047】
図4は本発明に係る車体前部構造の左サイドメンバーおよび左サポート部を示す斜視図である。
左サイドメンバー35は、センター部28aの左端部に基部51が固定され、左フェンダ取付部45の水平部位53に左サポート部37の上端部位94が固定(連結)されている。
これにより、左サポート部37で左フェンダ取付部45の水平部位53(すなわち、左サイドメンバー35の外側端部)を支える。
【0048】
左サイドメンバー35の左ライト取付部42は、基部51から車幅方向外側に略水平に延びるとともに断面略ハット状に形成されている。
この左ライト取付部42は、平坦部101にライト取付孔42aが形成され、平坦部101の裏面にライト取付孔42aと同軸上にナット88が溶接されている。
【0049】
左フェンダ取付部45の水平部位53は、左ライト取付部42から車幅方向外側で、かつ車体後方に湾曲状に延びた部位である。
車体後方に湾曲状に延びることで、水平部位53の端部53aは、車幅方向に対して略平行に配置される。
【0050】
端部53aにおいて、立上部位54が上方に向けて立ち上げられている。よって、立上部位54は、平坦部103が車幅方向に対して略平行に(すなわち、横向きに)配置される。
立上部位54の上端において、載せ部位55が車体後方に向けて上り勾配になるように折り曲げられている。そして、立上部位54および載せ部位55が略への字状(略へ字状)に折り曲げられている。
【0051】
載せ部位55は、平坦部105にフェンダ取付孔45aが形成され、平坦部105の裏面にフェンダ取付孔45aと同軸上にナット82が溶接されている。
この載せ部位55に左フロントフェンダ44の張出部58(図3参照)が載せられる。
【0052】
水平部位53は、載せ部位55の下方に位置する。この載せ部位55に、左フロントフェンダ44や左ヘッドライト41(図3参照)のそれぞれの重量がかかる。
よって、左フロントフェンダ44や左ヘッドライト41のそれぞれの重量を左サポート部37で支えることができる。
【0053】
ここで、左サポート部37は、帯状プレート95の両側縁にそれぞれ折曲片96,96が形成され、中央部位93において略90°捩られるとともに車体前方に向けて湾曲状に折り曲げられている。
左サポート部37は、上端部位94に下向きの衝撃力が作用した場合に中央部位93において弾性変形することが可能になる。
よって、左フロントフェンダ44に衝撃力が作用し、この衝撃力が載せ部位55に伝えられた場合、左サポート部37をばね状に好適に弾性変形させることができる。この左サポート部37のばね作用で衝撃力を良好に吸収することができる。
【0054】
なお、左フェンダ取付部45の立上部位54および載せ部位55が略への字状に折り曲げた理由は以下の通りである。
すなわち、この形状によれば、例えば、左フェンダ取付45部周辺のエンジンフード117(図6参照)や左フロントフェンダ44に拭き掃除の際に小さな力が作用しても、作用した小さな力に対して十分な剛性を保つことができる。
【0055】
一方、フェンダ取付部周辺のエンジンフード117や左フロントフェンダ44に、障害物が衝突した場合には、立上部位54および載せ部位55で形成された略への字が略一の字(直線状)になるように延びながら立上部位55の根本部(すなわち、水平部位53の端部53a)で曲がり、衝撃力を吸収することができる。
【0056】
図5(a)は図4の5a−5a線断面図、図5(b)は図4の5b−5b線断面図である。
(a)は水平部位53の断面形状を示す。水平部位53は、断面略ハット状に形成された部材である。
すなわち、水平部位53は、平坦部107が略水平に設けられ、平坦部107の前側端に前壁部108が下向きに設けられ、前壁部108の下端から前フランジ109が車体前方に向けて水平に張り出され、平坦部107の後側端に後壁部111が下向きに設けられ、後壁部111の下端から後フランジ112が車体後方に向けて水平に張り出されている。
【0057】
水平部位53は、平坦部107、前後の壁部108,111、および前後のフランジ109,112で断面略ハット状に形成されている。
なお、平坦部107は、左ライト取付部42の平坦部101と連続した部位である。
【0058】
(b)は水平部位53の端部53aおよび立上部位54の断面形状を示す。水平部位53の端部53aおよび立上部位54は、断面略ひしゃく状に形成された部材である。
以下、立上部位54の断面形状について説明して、水平部位53の端部53aの断面形状の説明は省略する。
【0059】
立上部位54は、平坦部103が略車幅方向に沿って設けられ、平坦部103の内側端に内壁部113が車体後方に向けて設けられ、平坦部103の外側端に外壁部114が車体後方に向けて設けられ、外壁部114の後端から外フランジ(フランジ)115が車体外側に向けて略車幅方向に沿って張り出されている。
立上部位54は、平坦部103、内外の壁部113,114、および外フランジ115で断面略ひしゃく状に形成されている。
【0060】
図4に戻って、水平部位53の端部53aおよび立上部位54が、断面略ひしゃく状に形成されている。すなわち、水平部位53の端部53aおよび立上部位54は、内壁部の後端から内フランジが張り出されていない。
よって、図3に示す左フロントフェンダ44に下向きの衝撃力が作用し、この衝撃力が載せ部位55に伝えられた場合、水平部位53の端部53aを支点にして立上部位54が車体内側に向けて矢印方向に好適に変形するとともに、立上部位54の内壁部113側が好適に変形する。
これにより、立上部位54を好適に変形させて衝撃力を良好に吸収することができる。
【0061】
図6は本発明に係る車体前部構造の左サイドメンバーに左ヘッドライトおよび左フロントフェンダを取り付けた状態を示す外観図である。
フロントバルクヘッド25(図1参照)の一部を構成するセンター部28aに左サイドメンバー35が固定されている。この左サイドメンバー35の左フェンダ取付部45に左フロントフェンダ44をボルト81で取り付ける。
【0062】
そして、左フロントフェンダ44の張出部58に左ヘッドライト41の外側プレート72をボルト84で取り付ける。
さらに、左サイドメンバー35の左ライト取付部42に内側プレート77をボルト87で取り付ける。
【0063】
このように、フロントバルクヘッド25と一体に固定された左サイドメンバー35に、左フロントフェンダ44および左ヘッドライト41を取り付けることができる。
よって、左フロントフェンダ44に対して左ヘッドライト41を精度よく位置決めすることができる。これにより、左フロントフェンダ44と左ヘッドライト41との間隔S1を公差内に容易に収めることができる。
【0064】
ここで、図1に示すように、フロントバルクヘッド25は左右のフロントサイドフレーム11,12などに一体に取り付けられている。左フロントフェンダ44および左ヘッドライト41を、左右のフロントサイドフレーム11,12などで構成する車体に対して精度よく位置決めすることができる。
【0065】
よって、左フロントフェンダ44および左ヘッドライト41を、車体に取り付けられたエンジンフード117に対して精度よく位置決めすることができる。
これにより、左フロントフェンダ44とエンジンフード117との間隔S2を公差内に容易に収めることができる。さらに、左ヘッドライト41とエンジンフード117との間隔S3を公差内に容易に収めることができる。
【0066】
ここで、図1に示すフロントバルクヘッド25には、フロントグリル119が取り付けられている。フロントグリル119に装飾部位119aが設けられている。装飾部位119aは、エンブレム(図示せず)と一体に形成された部位である。
よって、装飾部位119aに対して左ヘッドライト41を精度よく位置決めすることができる。これにより、装飾部位119aと左ヘッドライト41との間隔S4を公差内に容易に収めることができる。
【0067】
加えて、前述したようにフロントバルクヘッド25は左右のフロントサイドフレーム11,12などに一体に取り付けられている。装飾部位119aを、左右のフロントサイドフレーム11,12などで構成する車体に対して精度よく位置決めすることができる。
よって、装飾部位119aを、車体に取り付けられたエンジンフード117に対して精度よく位置決めすることができる。
これにより、装飾部位119aとエンジンフード117との間隔S5を公差内に容易に収めることができる。
【0068】
図7(a),(b)は本発明に係る車体前部構造の左フロントフェンダに衝撃力が作用した例を示す説明図である。
(a)において、左フロントフェンダ44に衝撃力Foが作用し、この衝撃力Foが載せ部位55に伝えられる。
【0069】
(b)において、衝撃力Foが載せ部位55に伝えられることにより、水平部位53の端部53aを支点にして立上部位54が車体内側に向けて矢印方向に好適に変形するとともに、立上部位54の内壁部113側が好適に変形する。
【0070】
ここで、左フェンダ取付部45の立上部位54および載せ部位55が略への字状に折り曲げられている。
よって、フェンダ取付部周辺のエンジンフード117(図6参照)や左フロントフェンダ44に、障害物が衝突した場合、立上部位54および載せ部位55で形成された略への字が略一の字(直線状)になるように延びながら立上部位55の根本部(すなわち、水平部位53の端部53a)で曲がる。
【0071】
このように、立上部位54を好適に変形させたり、立上部位54および載せ部位55で形成された略への字が略一の字(直線状)になるように変形させることで、衝撃力を吸収することができる。
【0072】
加えて、衝撃力Foが載せ部位55に伝えられることにより、衝撃力Foが立上部位54および水平部位53を経て上端部位94(図4参照)に伝えられる。
上端部位94に衝撃力Foが作用することで、左サポート部37をばね状に弾性変形させて、左サポート部37のばね作用で衝撃力を吸収することができる。
このように、立上部位54を好適に変形させて衝撃力を吸収するとともに、左サポート部37のばね作用で衝撃力を吸収することで、衝撃力を良好に吸収することができる。
【0073】
なお、前記実施の形態では、ライトとしてヘッドライト41を例示したが、これに限らないで、ヘッドライトおよびフロントターンライトを一体にまとめたものや、フロントターンライトなどの他のライトを用いても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、左右のフロントサイドフレームにフロントバルクヘッドを備え、このフロントバルクヘッドの左右側にライトやフロントフェンダを備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造の要部を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造の要部を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る車体前部構造の左サイドメンバーおよび左サポート部を示す斜視図である。
【図5】(a)は図4の5a−5a線断面図、(b)は図4の5b−5b線断面図である。
【図6】本発明に係る車体前部構造の左サイドメンバーに左ヘッドライトおよび左フロントフェンダを取り付けた状態を示す外観図である。
【図7】本発明に係る車体前部構造の左フロントフェンダに衝撃力が作用した例を示す説明図である。
【図8】従来の車体前部構造を説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
10…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、12…右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、13…左フロントピラー(フロントピラー)、14…右フロントピラー(フロントピラー)、16…左アッパーメンバー(アッパーメンバー)、18…右アッパーメンバー(アッパーメンバー)、25…フロントバルクヘッド、35…左サイドメンバー(サイドメンバー)、36…右サイドメンバー(サイドメンバー)、37…左サポート部(サポート部)、38…右サポート部(サポート部)、41…左ヘッドライト(ライト)、42…左ライト取付部(ライト取付部)、44…左フロントフェンダ(フロントフェンダ)、45…左フェンダ取付部(フェンダ取付部)、47…右ライト取付部(ライト取付部)、48…右フェンダ取付部(フェンダ取付部)、53…水平部位、53a…水平部位の端部、54…立上部位、55…載せ部位、103…平坦部、113…内壁部、114…外壁部、115…外フランジ(フランジ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のフロントサイドフレームにフロントバルクヘッドを備え、このフロントバルクヘッドの左右側にライトおよびフロントフェンダをそれぞれ備えた車体前部構造において、
前記フロントバルクヘッドから車幅方向左右側に向けて延びるサイドメンバーをそれぞれ備え、
前記サイドメンバーは、前記ライトを取り付けるライト取付部を有するとともに、前記フロントフェンダを片持ち状態で取り付けるフェンダ取付部を有することを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記フェンダ取付部は、前記ライト取付部から略水平に延びた水平部位と、この水平部位の端部から立ち上げた立上部位と、この立上部位の上端にフロントフェンダを載せる載せ部位とを有し、
前記水平部位の端部および前記立上部位は、
車幅方向に沿って平坦部が設けられ、この平坦部の内側端に内壁部が設けられ、この平坦部の外側端に外壁部が設けられ、この外壁部および前記内壁部のうち、外壁部のみに車体外側に向けてフランジが張り出され、
前記平坦部、前記内外の壁部および前記フランジで断面略ひしゃく状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記左右のフロントサイドフレームの外側にそれぞれ左右のフロントピラーまで延びるアッパーメンバーを備え、
このアッパーメンバーから前記フェンダ取付部の水平部位まで上方に向けて湾曲状に延ばすとともに、水平部位に連結されたサポート部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記フェンダ取付部は、前記立上部位および前記載せ部位が略への字状に折り曲げられたことを特徴とする請求項3記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−223432(P2007−223432A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45821(P2006−45821)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】