説明

車体前部構造

【課題】前突荷重を分散できる車体前部構造を得る。
【解決手段】前突時にフロントサイドメンバ12が受けた前突荷重Fは、ダッシュパネル16に伝達されるだけでなく、ステー24を介して車体フロア22にも伝達される。ここで、フロントサイドメンバ12におけるステー24との連結部35付近に、ステー28に対して連続的に延在されたサイドメンバリブ36が設けられるので、フロントサイドメンバ12が受けた前突荷重Fの一部は、サイドメンバリブ36を通ってステー24側に伝達され、車体フロア22に効率良く伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後方向に沿ってフロントサイドメンバが延在された車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造においては、フロントサイドフレームとフロントダッシュボードとの結合部からフロア部材側へ向けて延びるフロア側フレーム部材が、フロントダッシュボードに固設されている場合がある(例えば、特許文献1参照)。このような車体前部構造では、フロア側フレーム部材は、フロントサイドフレームにおけるフロントダッシュボードとの結合部を補強した状態としている。
【0003】
この従来の車体前部構造では、フロア側フレーム部材がフロントサイドフレームにおけるフロントダッシュボードとの結合部を補強しているにすぎないので、フロントサイドフレームが受けた前突荷重は、フロア部材には十分伝達されず、前突荷重が十分に分散されない。
【特許文献1】特開2001−225765公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、前突荷重を分散できる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の車体前部構造は、車体前部に車体前後方向に沿って延在され、後端部がダッシュパネルに連結されるフロントサイドメンバと、前記フロントサイドメンバと車体フロアの前端部とを連結するステーと、前記フロントサイドメンバの一部であって、前記ステーとの連結部付近に設けられ、前記ステーに対して連続的に延在されたリブと、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の車体前部構造によれば、前突時にフロントサイドメンバが受けた前突荷重は、ダッシュパネルに伝達されるだけでなく、ステーを介して車体フロアにも伝達される。ここで、フロントサイドメンバにおけるステーとの連結部付近に、ステーに対して連続的に延在されたリブが設けられるので、フロントサイドメンバが受けた前突荷重の一部は、リブを通ってステー側に伝達され、車体フロアに効率良く伝達される。
【0007】
請求項2に記載する本発明の車体前部構造は、請求項1記載の構成において、前記リブは、前記ステーが延びる方向と同方向若しくは略同方向に傾斜することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車体前部構造によれば、リブは、ステーが延びる方向と同方向若しくは略同方向に傾斜するので、フロントサイドメンバが受けた前突荷重の一部は、リブからステーへ同方向若しくは略同方向に作用して直線状若しくは略直線状に伝達される。このため、前突荷重が車体フロアに一層効率良く伝達される。
【0009】
請求項3に記載する本発明の車体前部構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記ステーは、前記フロントサイドメンバから伝達された荷重を支持する荷重支持面を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車体前部構造によれば、ステーは、フロントサイドメンバから伝達された荷重を形状的にしっかり支持できる荷重支持面を備えているので、フロントサイドメンバからステーに荷重が作用しても、この荷重は、ステーが備える荷重支持面によって確実に支持される。
【0011】
請求項4に記載する本発明の車体前部構造は、請求項1から3のいずれか一項に記載の構成において、前記ステーは、前記フロントサイドメンバから伝達された荷重を前記車体フロアの前端部に伝達する荷重伝達面を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載する本発明の車体前部構造によれば、ステーは、フロントサイドメンバから伝達された荷重を形状的に車体フロアの前端部にしっかり伝達できる荷重伝達面を備えているので、フロントサイドメンバからステーに荷重が伝達された場合、この荷重は、ステーが備える荷重伝達面によって車体フロアの前端部に確実に伝達される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車体前部構造によれば、フロントサイドメンバが受けた前突荷重の一部を車体フロアに効率良く伝達することができ、その結果、前突荷重を分散できるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項2に記載の車体前部構造によれば、前突荷重の一部をリブからステーへ同方向若しくは略同方向に作用させることが可能であり、その結果、前突荷重を車体フロアに一層効率良く伝達させることができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項3に記載の車体前部構造によれば、フロントサイドメンバからステーへ作用する荷重をステーの荷重支持面によって確実に支持させることで、荷重をステーに確実に伝達させることができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項4に記載の車体前部構造によれば、フロントサイドメンバからステーに伝達された荷重をステーの荷重伝達面によって車体フロアの前端部に確実に伝達させることができ、その結果、前突荷重を確実に分散できるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明における車体前部構造の第1の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは車両の上方向、矢印FRは車両の前方向をそれぞれ示す。
【0018】
(第1の実施形態)
図1及び図2に示されるように、アルミボディーである車体前部10の両サイドには、車体前後方向に沿って延在する左右一対のフロントサイドメンバ12が配置されている。フロントサイドメンバ12は、アルミの鋳物成形により略角筒状に形成されている。各フロントサイドメンバ12の前端部には、衝撃吸収部材としてのクラッシュボックス14が固定されており、クラッシュボックス14は、車幅方向に延在されたバンパリインフォース15(図1参照)の後面における右部と左部とを支持している。また、フロントサイドメンバ12の車体前後方向における中間部12Aには、路面入力緩衝用のショックアブソーバ(図示省略)の上端部が連結されている。
【0019】
フロントサイドメンバ12の後端部12Cは、ダッシュパネル16に連結されている。図1に示されるように、ダッシュパネル16は、エンジンルーム18とキャビン20との間で両者を隔てて略垂直に配設されている。ここで、ダッシュパネル16の下端部は、車体フロア22の前端部22Aに一体化されている。なお、「一体化」には、ダッシュパネル16と車体フロア22とが一体に形成されている場合の他、ダッシュパネル16と車体フロア22とが別体で構成されていてスポット溶接等で結合されている場合を含む。
【0020】
フロントサイドメンバ12における下面部と車体フロア22の前端部22Aとは、補強部及び荷重伝達部として機能するステー24によって掛け渡されて連結されており、ステー24は、側面視で前傾するように傾斜されている。
【0021】
図3に示されるように、ステー24は、フロントサイドメンバ12(図2参照)との結合用として断面形状が略コ字状に形成されたブラケット部26と、側面視でジグザグ形状に形成されたステー本体部28と、車体フロア22(図2参照)との結合用としてステー本体部28における後方側の端部から所定角度屈曲された状態で延出された延出部30と、によって構成されている。ブラケット部26には、押出し成形によるアルミ押出し材又はプレス成形によるアルミプレス品が適用されている。ステー本体部28及び延出部30は、本実施形態では、コストを低減するために押出し成形によって一体に形成されたアルミ押出し材とされ、これらとブラケット部26とは溶接等によって結合されている。
【0022】
ブラケット部26の両側部26A間の寸法は、図2に示されるように、フロントサイドメンバ12の幅方向寸法より僅かに大きめに設定されており、フロントサイドメンバ12の下面に下方側から嵌合可能とされている。さらに、両側部26Aにはボルト挿通孔27が形成されており、フロントサイドメンバ12の側部へボルト32等の固定手段によって固定されている。なお、ボルト32等の固定手段に替えて溶接等を用いてもよい。
【0023】
ここで、図3に示されるように、ステー24におけるステー本体部28は、前後及び上下が平板状とされており、平面視で前方部幅よりも後方部幅が広い末広がり形状となっている。ステー本体部28の壁状の前面(車体前方側に配置される面)は、図2に示されるように、フロントサイドメンバ12から伝達された荷重を支持する荷重支持面28Aとされており、荷重支持面28Aは、フロントサイドメンバ12における下面部に形成された下向きの凸部12Bと面接触した状態で取り付けられている。
【0024】
図3に示されるように、ステー本体部28における後方側の端部にボルト挿通孔29、延出部30にボルト挿通孔31がそれぞれ設けられており、図2に示されるように、車体フロア22の前端部22A(ダッシュパネル16の下端部)へボルト34等の固定手段によって固定されている。なお、ボルト34等の固定手段に替えて溶接等を用いてもよい。
【0025】
ここで、ステー24におけるステー本体部28の壁状の後面(車体後方側に配置される面)は、フロントサイドメンバ12から伝達された荷重を車体フロア22の前端部22Aに伝達する荷重伝達面28Bとされており、前端部22Aと面接触した状態で取り付けられている。荷重伝達面28Bと面接触する車体フロア22の前端部22Aの上方には、エンジンルーム18側へ突出する凸部23が形成されており、ステー本体部28の後端上面と面接触するようになっている。
【0026】
フロントサイドメンバ12の角筒内には、フロントサイドメンバ12の一部であるサイドメンバリブ36が、フロントサイドメンバ12における角筒の上壁112と下壁212とを掛け渡して角筒を仕切るように配設されている。サイドメンバリブ36は、フロントサイドメンバ12におけるステー24との連結部35付近に設けられ、ステー24に対して角筒を介して連続的に延在されている。すなわち、サイドメンバリブ36における荷重の流れ方向(流線方向)とステー24における荷重の流れ方向(流線方向)とをほぼ等しくするために、サイドメンバリブ36は、側面視で前傾するように(ステー24が延びる方向と略同方向に)傾斜している。
【0027】
次に、上記の実施形態の作用を説明する。
【0028】
図1に示されるように、前突時にクラッシュボックス14等を介してフロントサイドメンバ12が受けた前突荷重F(衝突エネルギー)は、ダッシュパネル16に(矢印A方向に)伝達されるだけでなく、ステー24を通って(矢印B参照)車体フロア22にも伝達される。
【0029】
ここで、フロントサイドメンバ12におけるステー24との連結部35付近に、ステー24に対して連続的に延在されたサイドメンバリブ36が設けられているので、ステー24への荷重(衝撃エネルギー)の伝達性及び荷重分担を高めることができる。すなわち、フロントサイドメンバ12が受けた前突荷重Fの一部は、サイドメンバリブ36を通って(矢印C参照)ステー24側に伝達され、車体フロア22に効率良く(巧く)伝達される。その結果、ダッシュパネル16の荷重分担を減少でき、前突荷重Fを分散できる。また、ダッシュパネル16の荷重分担を減少できるので、ダッシュパネル16の板厚、断面積を小さくでき、その結果、軽量化を図ることが可能となる。
【0030】
ステー24は、フロントサイドメンバ12との結合がボルト締結(或いは溶接)のみではなく、フロントサイドメンバ12における凸部12Bと荷重支持面28Aとが形状的にしっかり面接触した状態(当った状態)で取り付けられているので、フロントサイドメンバ12からステー24に荷重(衝撃エネルギー)が作用しても、この荷重は、ステー24が備える荷重支持面28Aによって確実に支持される。これによって、荷重をステー24に確実に伝達させることができる。
【0031】
また、ステー24は、車体フロア22との結合についても、ボルト締結(或いは溶接)のみではなく、荷重伝達面28Bと車体フロア22の前端部22Aとが形状的にしっかり面接触した状態(当った状態)で取り付けられているので、フロントサイドメンバ12からステー24に荷重(衝撃エネルギー)が伝達された場合、この荷重は、ステー24が備える荷重伝達面28Bによって車体フロア22の前端部22Aに確実に伝達される。
【0032】
なお、ステー24は、ステー本体部28が側面視でジグザグ形状となっているので、フロントサイドメンバ12からの荷重が所定値以上になると荷重入力側から順次変形してエネルギー吸収を行う。このため、フロントサイドメンバ12に入力された荷重のエネルギー吸収効率が高くなり、その分車体フロア22への荷重伝達量を低減させることができる。
【0033】
以上説明したように、前突時の衝撃エネルギーをフレームに巧く分散して伝達することにより、各フレーム部材の寄与度を均一化し、その結果、フレームの軽量化を図ることができる。特に、車体フロア22にエネルギーを伝達することにより、他の部位のエネルギー分担量を低減できる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、車体前部構造の第2の実施形態を図4に基づき説明する。なお、第2の実施形態は、サイドメンバリブ36の形成角度が特徴であり、他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成である。第1の実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
図4に示されるように、サイドメンバリブ36は、ステー24が延びる方向(矢印24X方向)と同方向に側面視で前傾するように傾斜している。すなわち、本実施形態では、サイドメンバリブ36における荷重の流れ方向(流線方向)とステー24における荷重の流れ方向(流線方向)とを等しくするために、サイドメンバリブ36の傾斜軸とステー24の傾斜軸とが、一直線状になっている。
【0036】
これにより、フロントサイドメンバ12が受けた前突荷重F(衝撃エネルギー)の一部は、サイドメンバリブ36からステー24へ同じ方向に作用して直線状に伝達される。このため、前突時に荷重が車体フロア22に一層効率良く伝達される。
【0037】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、フロントサイドメンバ12内に1個のサイドメンバリブ36が形成されているが、例えば、フロントサイドメンバ内に同方向に並設される複数のリブを形成してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、フロントサイドメンバ12とステー24とが別体で構成されて連結されているが、フロントサイドメンバとステーとが一体に形成されていてもよい。
【0039】
さらに、上記実施形態では、ステー24におけるステー本体部28を側面視でジグザグ形状にしたが、ステーにおけるステー本体部を、例えば、前後両側が有底とされた角筒状のステー本体部にしてもよく、また、側面視でハニカム形状や梯子状等のような他の形状のステー本体部にしてもよい。
【0040】
さらにまた、上記実施形態では、各フロントサイドメンバ12に1個のステー24が固定されているが、各フロントサイドメンバに複数のステーが固定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるステーを示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る車体前部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 車体前部
12 フロントサイドメンバ
12C 後端部
16 ダッシュパネル
22 車体フロア
22A 前端部
24 ステー
24X ステーが延びる方向
28A 荷重支持面
28B 荷重伝達面
35 連結部
36 サイドメンバリブ(リブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に車体前後方向に沿って延在され、後端部がダッシュパネルに連結されるフロントサイドメンバと、
前記フロントサイドメンバと車体フロアの前端部とを連結するステーと、
前記フロントサイドメンバの一部であって、前記ステーとの連結部付近に設けられ、前記ステーに対して連続的に延在されたリブと、
を有することを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記リブは、前記ステーが延びる方向と同方向若しくは略同方向に傾斜することを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記ステーは、前記フロントサイドメンバから伝達された荷重を支持する荷重支持面を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記ステーは、前記フロントサイドメンバから伝達された荷重を前記車体フロアの前端部に伝達する荷重伝達面を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車体前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−223532(P2007−223532A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49081(P2006−49081)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】