説明

車体前部構造

【課題】 車体の外観を良好に維持しつつエンジン吸気開口部への水沫等の浸入を確実に防止することのできる車体前部構造を提供すること。
【解決手段】 車体前面に設けられる車体前面開口部と、その車体前面開口部の後方で、ラジエタ12の上辺部を覆うシュラウドアッパ20aと、シュラウドアッパ20aの上方に設けられるエンジン吸気開口部30と、シュラウドアッパ20aから前方に突出して車幅方向に延在するシールボード22とを有する車体前部構造。シールボード22には、その下方の車体前面開口部より導入された空気を上方に挿通可能とするスリット24aが形成され、スリット24aとエンジン吸気開口部30とは、車幅方向において重複しない位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車体前部より取り入れた空気をエンジン吸気開口部へと供給する構造には、次のような性能が要求される。
(1)吸気温度をなるべく低くすること。
(2)停車時の熱気を吸わないこと。
(3)水沫や雪など(以下「水沫等」という。)を吸わないこと。
【0003】
以前より、これらの性能を確保するためのさまざまな車体前部構造が提案されている。
【0004】
とりわけ、上記(3)の性能に注目して、特許文献1は、ラジエタ上部に配設されたシュラウドアッパに車体前方に延出するシールボードを設け、ラジエタ前方に位置するフロントグリルのフィン部を、このシールボード先端位置と略同一位置まであるいは重複する位置まで車体後方に延ばした吸気取入構造を開示している。
【0005】
また、特許文献2は、エアガイドの上部に、上方に向かって後方に傾斜する傾斜面を設け、この傾斜面に外気の通過を許容するスリットを形成し、このスリットを通過した風をその直後の外気取り入れ口に導入する構造を開示している。
【0006】
【特許文献1】実開平7−4133号公報
【特許文献2】特開2005−343244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された構造では、バンパフェイシャの外観を良好に仕上げることが困難になるという問題があった。すなわち、フロントグリルは一般に樹脂成形品であるバンパフェイシャに支持されるところ、上記のような後方に突出したフィン部をフロントグリル裏に設けた場合には、その設置部に成形不良、例えば樹脂成形時のひけに起因した表面の凹み等が生じやすくなり、これによってバンパフェイシャの外観を損なうおそれがある。
【0008】
また、特許文献2には、同文献に記載された発明の構造によれば、導入した外気に雨水が混じっている場合は、この雨水はスリットを形成した傾斜面に沿って上方に押しやられて外気流通領域から排除されるため、雨水の分離効率が向上する旨記載されているものの、スリットの直後に外気取り入れ口が設けられているため、外気取り入れ口への雨水の浸入を完全に防ぐことはできず、水沫等吸い込みの対策としては十分なものとは言えなかった。
【0009】
本発明は、車体前部構造の改良であり、特に、車体の外観を良好に維持しつつエンジン吸気開口部への水沫等の浸入を確実に防止することのできる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、車体前面に設けられる車体前面開口部と、前記車体前面開口部の後方で、ラジエタの上辺部を覆うシュラウドアッパと、前記シュラウドアッパの上方に設けられるエンジン吸気開口部と、前記シュラウドアッパから前方に突出して車幅方向に延在するシールボードとを有する車体前部構造に係り、前記シールボードには、その下方の前記車体前面開口部より導入された空気を上方に挿通可能とするスリットが形成され、前記スリットと前記エンジン吸気開口部とは、車幅方向において重複しない位置に配置されることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、シールボードによってシュラウドアッパ前方に巻き上げられる水沫等を遮断しつつ、シールボードに形成されたスリットの存在によって、その下方の車体前面開口部からの空気を導入することができる。しかも、そのスリットとエンジン吸気開口部とは、車幅方向において重複しない位置に配置されるので、スリットを通じてシールボードの上に挿通される空気に伴って浸入する水沫等が直接エンジン吸気開口部へと吸い込まれることが防止される。くわえて、上記のシールボードはシュラウドアッパ側に設けられるため、バンパフェイシャ裏側にシール用の突起物を設けた特許文献1の構造と異なり、バンパフェイシャ表面にひけ等の成形不良が生じるのを効果的に防止して車体の外観を良好に維持できるという利点がある。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、前記シールボードは、前記スリットが形成されるシールボードロアと、該シールボードロアよりも所定距離上方の位置で車幅方向に延在するシールボードアッパとを有して、これらシールボードロアとシールボードアッパとの間に車幅方向に延在する新気導風経路を形成し、前記スリットを通じて前記新気導風経路に導入された空気が、車幅方向を移動しつつ前記シールボードアッパの前端部と閉状態のボンネット裏面部との隙間を通じて前記エンジン吸気開口部に到達するように構成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の別の実施形態によれば、前記シールボードは、前記スリットが形成されるシールボードロアと、該シールボードロアよりも所定距離上方の位置で車幅方向に延在するシールボードアッパとを有して、これらシールボードロアとシールボードアッパとの間に車幅方向に延在する新気導風経路を形成し、前記スリットを通じて前記新気導風経路に導入された空気が、車幅方向を移動しつつ前記シールボードアッパの前端部と前記車体開口部を形成するグリルの裏面部との隙間を通じて前記エンジン吸気開口部に到達するように構成されている。
【0014】
これらの構成によれば、スリットから新気導風経路内を車幅方向に移動しながらシールボードアッパの前端部と閉状態のボンネット裏面部又はグリル裏面部との隙間を通じてエンジン吸気開口部へと到達する迷路(ラビリンス)が形成されるので、水沫等がたとえシールボードロアから浸入しても、その水沫等がエンジン吸気開口部に到達することはなく、この水沫等を効果的に遮断することができる。
【0015】
本発明の好適な実施形態によれば、前記スリットと前記エンジン吸気開口部との間の前記新気導風経路内で前記シールボードロアとシールボードアッパとを結合する縦壁部を更に有することが好ましい。
【0016】
この縦壁部の存在によって、シールボードロア上に溜まった水分がエンジン吸気開口部に接近することを防止できるため、エンジン吸気開口部への水の浸入を確実に防止できる。また、この縦壁部を設けることにより、シールボードの剛性を効果的に高めることもできる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の車体前部構造によれば、車体の外観を良好に維持しつつエンジン吸気開口部への水沫等の浸入を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施に有利な具体例を示すにすぎない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決手段として必須のものであるとは限らない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る自動車1の前部外観を示す斜視図である。本実施形態の自動車1は、エンジンルームを覆うボンネット5の先端がスラントして車体前面まで延ばされたデザインとされている。バンパフェイシャ10の上端部には、その車幅方向の両端にヘッドランプ11,11が取り付けられるとともに、その中央部にフロントグリル14が取り付けられる。このフロントグリル14は車幅方向に延びる1枚のフィン14aを備え、その上下にエンジン冷却用の新気(フレッシュエア)を導入するための車体前面開口部14b、14cが形成されている。また、バンパフェイシャ10の下部にもフレッシュエアを導入するための車体前面開口部10aが形成されている。
【0020】
図2は、図1に示した外観部分、すなわち、ボンネット5、バンパフェイシャ10、ヘッドランプ11、及びフロントグリル14を除去した状態の車体前部構造を示す要部斜視図である。また、図3は図2のC−C線に沿う断面図である。
【0021】
図2において、15は、バンパフェイシャ10の裏面に沿って車幅方向に延びるように設置され、バンパフェイシャ10を補強するバンパレインフォースメントである。16,16は、エンジン2の側辺部に沿って前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームである。20は、バンパレインフォースメント15の後方に設置され、エンジン冷却用のラジエタ12を支持するシュラウドパネルである。
【0022】
シュラウドパネル20は、ラジエタ12の上辺部を覆って支持するシュラウドアッパ20aと、ラジエタ12の下辺部を支持するシュラウドロア20bと、これらシュラウドアッパ20aとシュラウドロア20bとをつなぐ左右一対のシュラウドサイド20c,20cとを有した略矩形枠状の部材である。
【0023】
図2及び図3に示されるように、フロントサイドフレーム16,16とバンパレインフォースメント15との間には、左右一対のクラッシュカン18,18が介在している。このクラッシュカン18は、角筒状に形成され、車両の前方衝突事故時等に圧縮変形することにより、バンパレインフォースメント15を介して前方から加わる衝撃エネルギを吸収する役割を果たすように構成されている。
【0024】
クラッシュカン18の後端部にはフランジ部材18aが溶接されており、このフランジ部材18aがフロントサイドフレーム16の前端部に溶接されたフランジ部材16aにボルト等によって締結されることにより、フロントサイドフレーム16とクラッシュカン18とが各フランジ部材16a,18aを介して結合されている。
【0025】
一方、クラッシュカン18の前端部には、図3に示すように、ブラケット34が溶接されており、このブラケット34のうちバンパレインフォースメント15の裏面に沿うように形成された第1部位34aがボルト締結等によりバンパレインフォースメント15に固定されている。さらに、ブラケット34は、第1部位34aと連続して形成された断面視略コ字状の第2部位34bを有しており、この第2部位34bがシュラウドパネル20のシュラウドサイド20cの前面部にボルト締結等により固定されている。すなわち、バンパレインフォースメント15は、クラッシュカン18及びシュラウドパネル20の両部材に対してブラケット34を介して固定されている。
【0026】
さらに、図2に示すように、シュラウドサイド20cとクラッシュカン18のフランジ部材18aとは、シュラウドサイド20cの側面部に突設された連結部36を介して連結されており、シュラウドパネル20の支持剛性がより強固に確保されるようになっている。
【0027】
本実施形態では、図2に示すように、シュラウドアッパ20aの車幅方向左側には、エンジン2のフレッシュエアダクト(FAD)32の前端部が接続されるエンジン吸気開口部30が形成されており、このエンジン吸気開口部30を通じてエンジンの燃焼室に空気が取り込まれるようになっている。また、シュラウドアッパ20aの上縁部には、閉状態のボンネット5の裏面部と当接して、ボンネット5の裏面部とシュラウドアッパ20aの上縁部との間をシールするボンネットシール31が車幅方向に亘って装着されている。
【0028】
また、シュラウドアッパ20aの前面部には、車体前面開口部10a,14b,14cから内部に流入して上方に巻き上げられた水沫等がバンパフェイシャ10の裏面とシュラウドアッパ20aとの間を通ってエンジン吸気開口部30に浸入するのを防止するためのシールボード22が、シュラウドアッパ20aから前方に突出して車幅方向に沿って延びるように設置されている。
【0029】
本実施形態では、シールボード22は、シュラウドアッパ20aから前方に突出するシールボードロア24と、このシールボードロア24よりも所定距離上方に並設されたシールボードアッパ25とを有する。このようなシールボード22は、シュラウドアッパ20aと一体化された構成としてもよいし、シュラウドアッパ20aとは別部材としてもよい。シールボード22をシュラウドアッパ20aとは別部材とした場合には、必要に応じて、シールボード22またはシュラウドアッパ20aのいずれか一方のみを交換できるため、車両の修理コストを効果的に低減できるといった利点がある。
【0030】
そして、シールボードロア24には、その下方の車体前面開口部10a,14b,14cより導入されたフレッシュエアを上方に挿通可能とするスリット24aが形成されている。ここで、エンジン吸気開口部30がシュラウドアッパ20aの車幅方向左側に形成されているのに対し、スリット24aは、エンジン吸気開口部30と車幅方向において重複しないよう、シールボード24の車幅方向右側に形成されている。もちろん、これらスリット24aとエンジン吸気開口部30とは、車幅方向において重複しない位置関係にある限り、逆の位置関係にあってもよい。すなわち、エンジン吸気開口部30がシュラウドアッパ20aの車幅方向右側に形成され、スリット24aがシールボード24の車幅方向左側に形成されてもよい。
【0031】
シールボード22は、シールボードロア24とシールボードアッパ25とで、これらの間に車幅方向に延在する新気導風経路23を形成する。
【0032】
本実施形態では更に、図2に示すように、シールボード22には、エンジン吸気開口部30の設置部よりも車幅方向内側に、シールボードロア24の上面部から上方に延び、その上のシールボードアッパ25に結合される縦壁部28が形成されている。
【0033】
図4は、図1のA−A線に沿う断面図で、スリット24aが設けられる車幅方向の位置での車両前後方向の断面を示している。図5は、図1のB−B線に沿う断面図で、エンジン吸気開口部30が設けられる車幅方向の位置での車両前後方向の断面を示している。また、図6は、新気導風経路23周りの空気流を概念的に説明する図である。
【0034】
図4〜6において、14dは、フロントグリル14の上縁部をなし、閉状態のボンネット5の先端部と当接するフロントグリルアッパである。このフロントグリルアッパ14aの後端部は、シールボードロア24の前端部と車幅方向に亘って接合されている。
【0035】
さらに、このフロントグリルアッパ14aの上縁部には、ボンネット5の先端部とフロントグリルアッパ14aの上縁部との間をシールするボンネット先端シール32が車幅方向に亘って装着されている。したがって、本実施形態では、図4〜6に示されるように、ボンネット5の閉時には、ボンネット5の裏面部とシュラウドアッパ20aの上縁部との間がボンネットシール31によってシールされると共に、ボンネット5の先端部とフロントグリルアッパ14aの上縁部との間がボンネット先端シール32によってシールされている。他方、シールボードアッパ25の前端部とボンネット5の裏面部との間はシールされることなく、所定距離の隙間27が設けられている(図4参照)。
【0036】
よって、車体前面開口部10a,14b,14cから導入されたフレッシュエアがエンジン吸気開口部30に到達するには、シールボードロア24の車幅方向右側に形成されたスリット24aを上方に通過して、更にシールボードアッパ25の前端部とボンネット5の裏面部との間の隙間27を通過する以外にない。ここで、スリット24aは、エンジン吸気開口部30とは車幅方向において重複しないように形成されているから、エンジン吸気開口部30の真下部の車体前面開口部10a,14b,14cから導入されたフレッシュエアは、そのまま上方に昇ってエンジン吸気開口部30に直接的に流入することはない(図5参照)。
【0037】
スリット24aを通過したフレッシュエアは、新気導風経路23に沿って車幅方向左側に移動しながら、シールボードアッパ25の前端部とボンネット5の裏面部との隙間27を通じてエンジン吸気開口部30へと到達することになる。
【0038】
このように、本実施形態では、車体前面開口部10a,14b,14cから新気導風経路23を通ってエンジン吸気開口部30に至る、いわゆるラビリンス(迷路)構造によって、シュラウドアッパ20の前方に巻き上げられる水沫等を効果的に遮断することができる。仮に、車体前面開口部10a,14b,14cから入り込み上方に巻き上げられた水沫等がスリット24aを通過したとしても、シールボードロア24の上方に延在するシールボードアッパ25によって、エンジン吸気開口部30への浸入は阻止される。この水沫等が隙間27を通じてエンジン吸気開口部30に至る可能性はほとんどないといってよい。
【0039】
なお、スリット24aは、シールボードロア24に複数の小さい幅を持つ孔部であればよく、同一面積の大きな孔部を設ける場合に比して、通過空気量を同等に維持しつつ、冠水道路の走行時などに水塊がシールボードロア24の下方からぶつかっても、複数の孔部を通過する際に小さい水沫に分解されるため、シールボードロア24上に少しの水しか浸入させない機能を有する構成である。したがって、このスリットは、例えば格子(メッシュ)状に構成されてもよい。
【0040】
しかも、本実施形態では、エンジン吸気開口部30の設置部よりも車幅方向内側で、シールボードロア24とシールボードアッパ25とを結合し上下方向に延びる縦壁部28aを設けたので、シールボードロア24の上面部中央付近に溜まった水分が側方に移動してエンジン吸気開口部30に浸入することを確実に防止できる。すなわち、車体前面開口部10a,14b,14cから流入して上方に巻き上げられた水沫等がスリット24aを通過した場合には、その水沫等がシールボードロア24上を移動してエンジン吸気開口部30に接近する可能性が考えられる。しかし、縦壁部28aの存在によって、このような水沫等がエンジン吸気開口部30に浸入するほどに接近することが防止される。また、縦壁部28aを設けることにより、シールボードロア24及びシールボードアッパ25の剛性を効果的に向上させることもできる。
【0041】
さらに、本実施形態では、上記したようなシールボード22をシュラウドアッパ20a側に設けたため、バンパフェイシャ10の裏側にシール用の突起物を設けた特許文献1記載の構造と異なり、バンパフェイシャ10の表面にひけ等の成形不良が生じることはない。これにより、車両の外観を良好に維持できる。
【0042】
(変形例)
以上説明した実施形態に係る自動車1は、ボンネット5の先端がスラントして車体前面まで延ばされたデザインとされ、シールボードアッパ25の前方にボンネット5が位置しており、フレッシュエアが、シールボードアッパ25の前端部とボンネット5の裏面部との隙間27を通じてエンジン吸気開口部30に到達するように構成されたものであった。しかし、本発明は、ボンネットやフロントグリルの特定の形状に限定されるものではない。例えば、シールボードアッパの前方にフロントグリルが位置しており、フレッシュエアが、シールボードアッパの前端部とフロントグリルの裏面部との隙間を通じてエンジン吸気開口部に到達するように構成されていても、本発明を同様に適用可能である。
【0043】
図7〜9に、そのように構成された例を示す。なお、これらの図においては、先述の実施形態と同様の構成要素には同じ参照番号を付し、それらの説明を省略する。図7は、図1に示した自動車1のバリエーションに係る前部外観を示す斜視図、図8は、図7のD−D線に沿う断面図であり図4に対応するものである。図9は、図7のE−E線に沿う断面図であり図5に対応するものである。
【0044】
ここでは、先述の実施形態におけるフロントグリル14のかわりに、フロントグリル40が設けられている。このフロントグリル40は、フロントグリルの上縁部をなし、閉状態のボンネット5の先端部と当接するフロントグリルアッパ41と、4枚のフィン42〜45を備える。ここで、フロントグリルアッパ41とその下の第1フィン42とは、それらの車幅方向に亘って延びる連結部46によって連結され、また、第1フィン42とその下の第2フィン43とは、それらの車幅方向に亘って延びる連結部47によって連結されて、これによりフロントグリルアッパ41と第1及び第2フィン42,43とは一体化されている。さらに、フロントグリルアッパ41の上端部は、ボンネット5の先端部と結合されている。したがって、ボンネット5の開時には、フロントグリルアッパ41と第1及び第2フィン42,43を伴って上方に開くことになる。
【0045】
また、図8,9に示されるように、シールボードロア24の前端部上面には、ボンネット5の閉時に、第1フィン42の後端部下面との間をシールするシール部材35が車幅方向に亘って装着されるとよい。
【0046】
このように、図7〜9に示した例では、シールボードアッパ25の前方にはボンネット5ではなくフロントグリル40が位置している。この例においては、シールボードアッパ25の前端部とフロントグリルアッパ41の裏面部との間に隙間48が設けられている(図8参照)。したがって、車体前面開口部10a,14b,14cから導入されたフレッシュエアは、シールボードロア24の車幅方向右側に形成されたスリット24aを上方に通過して、更にシールボードアッパ25の前端部とフロントグリルアッパ41の裏面部との間の隙間48を通過することで、エンジン吸気開口部30に到達する。先述したとおり、スリット24aは、エンジン吸気開口部30とは車幅方向において重複しないように形成されているから、エンジン吸気開口部30の真下部の車体前面開口部10a,14b,14cから導入されたフレッシュエアは、そのまま上方に昇ってエンジン吸気開口部30に直接的に流入することはない(図9参照)。
【0047】
よって、図7〜9に示したようなバリエーションの構造でも、先述の実施形態と全く同様な効果を得ることができる。すなわち、本発明は、さまざまな形状、構成のボンネットやフロントグリルに対応して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車の前部外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示したボンネット、バンパフェイシャ、ヘッドランプ、及びフロントグリルを除去した状態の車体前部構造を示す要部斜視図である。
【図3】図2のC−C線に沿う断面図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図6】実施形態における新気導風経路周りの空気流を概念的に説明する図である。
【図7】変形例に係る自動車の前部外観を示す斜視図である。
【図8】図7のD−D線に沿う断面図である。
【図9】図7のE−E線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 自動車
2 エンジン
5 ボンネット
10 バンパフェイシャ
12 ラジエタ
14 フロントグリル
15 バンパレインフォースメント
16 フロントサイドフレーム
20a シュラウドアッパ
20b シュラウドロア
20c シュラウドサイド
22 シールボード
24 シールボードロア
25 シールボードアッパ
28 縦壁部
30 エンジン吸気開口部
31 ボンネットシール
32 フレッシュエアダクト(FAD)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前面に設けられる車体前面開口部と、
前記車体前面開口部の後方で、ラジエタの上辺部を覆うシュラウドアッパと、
前記シュラウドアッパの上方に設けられるエンジン吸気開口部と、
前記シュラウドアッパから前方に突出して車幅方向に延在するシールボードと、
を有する車体前部構造であって、
前記シールボードには、その下方の前記車体前面開口部より導入された空気を上方に挿通可能とするスリットが形成され、
前記スリットと前記エンジン吸気開口部とは、車幅方向において重複しない位置に配置される
ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記シールボードは、前記スリットが形成されるシールボードロアと、該シールボードロアよりも所定距離上方の位置で車幅方向に延在するシールボードアッパとを有して、これらシールボードロアとシールボードアッパとの間に車幅方向に延在する新気導風経路を形成し、前記スリットを通じて前記新気導風経路に導入された空気が、車幅方向を移動しつつ前記シールボードアッパの前端部と閉状態のボンネット裏面部との隙間を通じて前記エンジン吸気開口部に到達するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記シールボードは、前記スリットが形成されるシールボードロアと、該シールボードロアよりも所定距離上方の位置で車幅方向に延在するシールボードアッパとを有して、これらシールボードロアとシールボードアッパとの間に車幅方向に延在する新気導風経路を形成し、前記スリットを通じて前記新気導風経路に導入された空気が、車幅方向を移動しつつ前記シールボードアッパの前端部と前記車体前面開口部を形成するグリルの裏面部との隙間を通じて前記エンジン吸気開口部に到達するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記スリットと前記エンジン吸気開口部との間の前記新気導風経路内で前記シールボードロアとシールボードアッパとを結合する縦壁部を更に有することを特徴とする請求項2又は3に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−247122(P2008−247122A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88970(P2007−88970)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】