説明

車体前部構造

【課題】車体前端部が平面視で円弧形状に形成されている場合においても、熱交換器が走行風により良好に冷却される車体前部構造を提供する。
【解決手段】左右の側方仕切り板20、20の車幅方向外側には、車両前方からの走行風を中央開口部8aを介してインタークーラ16へ導くダクト22を設ける。該ダクト22は走行風取入口22aを有しており、車両前方からの走行風を取り入れて走行風排出口22bからインタークーラ16へ導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部車体構造、より詳しくは、自動車に設けられる熱交換器に冷却用空気を導くための熱交換器冷却構造に関し、自動車の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車にはエンジン冷却水を冷却するためのラジエータが備えられている。ラジエータは例えば、エンジンルームの車両前部に設置され、車体前端部に形成された開口部から走行風を導くことにより冷却されるようになっている。また、ターボチャージャ付きのエンジンを搭載した自動車には、コンプレッサで加圧された空気を冷却するためのインタークーラが備えられている。このインタークーラの配置位置は種々考えられており、例えば特許文献1には、インタークーラを前記ラジエータの側方に配置すると共に、車体前端部における車幅方向一端部側に該インタークーラへ走行風を導く側方開口部を形成した構成が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−338602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1に記載の発明においては、車体前端部が平面視で略直線状、即ち車体の前面から見ると略平面状に形成されているが、車体の空力特性やデザイン性を確保するため、車体前端部の形状が平面視で円弧状とされることがある。その場合に、このような構造のものにおいては、車幅方向中央から両端部側に離れるにつれて車体側端部の前面における走行風圧力が小さくなるため、開口部位置での走行風圧力が比較的小さく、前記特許文献1に記載の側方開口部と同様の位置に開口部を設けると、十分な走行風が前記開口部に導入されず、インタークーラが十分に冷却されないという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、車体前端部が平面視で円弧状に形成されている場合においても、熱交換器が走行風により良好に冷却される車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0007】
本願の請求項1に記載の発明は、車体前端部が、平面視で車幅方向中央部が車幅方向両端部に対して車両前方に円弧状に膨出する形状とされていると共に、該車体前端部の前面の車幅方向中央に中央開口部が形成されており、かつ、該中央開口部の直後方に第1熱交換器が配設されていると共に、該第1熱交換器の側方に第2熱交換器が配設された車体前部構造であって、前記中央開口部を通過する走行風を前記第2熱交換器に導く流路が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本願の請求項2に記載の発明は、車体前端部が、平面視で車幅方向中央部が車幅方向両端部に対して車両前方に円弧状に膨出する形状とされていると共に、該車体前端部の前面の車幅方向中央に中央開口部が、該中央開口部の側方に側方開口部がそれぞれ形成されており、かつ、前記中央開口部の直後方に第1熱交換器が配設されていると共に、該第1熱交換器の側方でかつ前記側方開口部の直後方に第2熱交換器が配設された車体前部構造であって、前記中央開口部を通過する走行風を前記第2熱交換器に導く第1流路と、前記側方開口部を通過する走行風を前記第2熱交換器に導く第2流路とが設けられていることを特徴とする。
【0009】
さらに、本願の請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第1流路と前記第2流路とは前記第2熱交換器に到達するまでに合流するように設けられる二股状流路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
前記請求項1に記載の発明によれば、車体前端部の前面の車幅方向中央に設けられた中央開口部を通過する走行風が流路を介して第2熱交換器に導かれることとなる。すなわち、発明が解決しようとする課題の欄において説明したように、車体前端部が平面視で車幅方向中央部が車幅方向両端部に対して車両前方に円弧状に膨出する形状とされていると、車体前端部における車幅方向両端側に作用する走行風圧力が小さく、仮に第2熱交換器の前方に開口部を設けたとしても、第2熱交換器に走行風を十分に供給することができないが、本発明においては、第2熱交換器を冷却する冷却風を、走行風圧力の高い位置に設けられた中央開口部から取り込んで導くようにしたので、第2熱交換器の冷却能力を十分に発揮させることができる。
【0011】
ここで、請求項1に記載の発明を実施すれば、前述のように第2熱交換器を良好に冷却することができるようになるが、第2熱交換器の熱交換能力を一層高めたい場合がある。そこで、請求項2に記載の発明においては、前記中央開口部を通過する走行風を第2熱交換器に導く第1流路に加え、側方開口部を通過する走行風を前記第2熱交換器に導く第2流路を設けたものである。つまり、中央開口部を通過する走行風が第1流路を介して第2熱交換器に導かれるだけでなく、側方開口部を通過する走行風も第2流路を介して第2熱交換器に導かれることとなるので、第2流路を介して導入される走行風の分、第2熱交換器に供給される走行風の流量が請求項1に記載の発明の場合よりも増加し、第2熱交換器の冷却能力が向上することとなる。
【0012】
更に前記請求項3に記載の発明によれば、前記第1流路と前記第2流路は前記第2熱交換器に到達するまでに合流するように設けられる二股状流路であるので、第1流路内を流れる走行風に起因するベンチュリ効果により、側方開口部から該開口部周辺の走行風が第2流路に吸い込まれやすくなり、該第2流路に流入する走行風量が増加することとなる。つまり、第2熱交換器に導かれる走行風の流量が一層増加することとなり、該第2熱交換器の冷却能力が一層向上することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る車体前部構造について説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る自動車の前部を上方から見た斜視図、図2は図1と同状態においてバンパフェイシャを分離した状態で車体前部内部を上方から見た斜視図、図3は同自動車の前部を下方から見た斜視図、図4は同自動車の正面図、図5は図4のA−A断面図、図6は図5のB−B端面図、図7は図5のC−C端面図、図8は車体前部に加わる風圧の分布図、図9はダクト及びインタークーラの斜視図である。
【0015】
図2に示すように、この自動車1の車体前部構造は、主たる構造体として、車体前部の左右の側部において前後に延びるフロントサイドフレーム2,2(図5参照)と、左右のサスタワー3,3の上部から前方に延びるエプロンレイン4,4と、左右のフロントサイドフレーム2,2の前端部にクラッシュカン5,5(図5参照)を介して固定され、フロントバンパ30の骨格を構成するフロントバンパレインフォースメント6(以下適宜、フロントバンパレイン6という)とを有すると共に、図1に示すように、車体前部の外表面を構成する部材として、車体前部の上面を構成するボンネットフード7と、車体前端部の外表面でかつフロントバンパ30の外表面を構成するフロントバンパフェイシャ8と、車体の左右の側部の外表面を構成するフロントフェンダパネル9,9(図1においては一方のみ図示されている)とを有しており、これらの外表面を構成する部材の内側の空間が、エンジン10等を収容するエンジンルーム11として構成されている(図2参照)。
【0016】
エンジンルーム11には、エンジン10以外に、図3にも示すように、変速機12や、エンジン補機13等が収容されていると共に、エンジン10の前方に、図5〜図7に示すように、エンジン10の冷却水を冷却するためのラジエータ14が配設されている。ラジエータ14は、コンデンサ14a、ラジエータ本体14b、ラジエータファン14c、ファンカバー14d等で構成され、シュラウド15に固定されている。
【0017】
シュラウド15は、図2、図5〜図7に示すように、ラジエータ14の左右の端部が固定される左右の縦辺部15a,15aと、下端部が固定される下辺部15bと、上端部が固定される上辺部15cとを有し、正面視で略四角形の枠状とされている。また、上辺部15cの左右両端部から外方後方に延びる固定アーム部15d,15dを有し、該固定アーム部15d,15dの先端部が、前記エプロンレイン4,4の前端部に固定されている。なお、図示しないが、左右の縦辺部15a,15aもフロントバンパレイン6に対して固定されている。上辺部15cには、エンジン10の吸気ダクト1aが挿通される孔部15eが形成されている。
【0018】
エンジン10は、ターボチャージャ付きのエンジンであり、ターボチャージャにより圧縮されて高温となった吸気を冷却するためのインタークーラ16が、エンジンルーム11における車幅方向一端側に配設されている(図2、図5参照)。インタークーラ16は、種々の取付方法が可能であるが、本実施の形態においては、図示しない取付部材を介してフロントサイドフレーム2,2に固定されている。なお、本発明は、ターボチャージャを有さないエンジンに対しても適用可能である。
【0019】
バンパ30は、前述のフロントバンパフェイシャ8及びフロントバンパレイン6以外にも、衝撃吸収部材17と、前記フロントサイドフレーム2,2の前面側を覆うバンパレインカバー18とを有している。
【0020】
フロントバンパレイン6は、断面ハット状の前面側部材6aと板状の後面側部材6bとを接合してなる車幅方向に延びる閉断面体であり、安全基準等において定められた前突時の衝撃に耐え得る強度を達成可能なように上下方向に所定の幅を有している。
【0021】
衝撃吸収部材17は、前突時に歩行者等の被衝突体へ加わる衝撃を和らげるためのものであり、例えば発泡樹脂材で構成され、フロントバンパフェイシャ8の内面とフロントバンパレイン6の前面側部材6aとの間に配され、フロントバンパレイン6の前面側部材6aに固定されている。また、衝撃吸収部材17は、断面略矩形状とされており、高さ方向(上下)幅がフロントバンパレイン6の前面側部材6aの高さ方向幅よりも小さくされている。
【0022】
フロントバンパフェイシャ8は、車体の前端部外表面の比較的広い範囲を構成している。そして、該フェイシャ8の車幅方向中央部には、エンジンルーム11内に走行風を導入する横長の開口部8a(以後、中央開口部8aという)が形成されている。
【0023】
ここで、本実施の形態に係る自動車1においては、図4に明確にあらわれているように、フロントバンパレイン6が、フロントバンパフェイシャ8の中央開口部8aを車幅方向に横切っており、その結果、中央開口部8aの有効開口面積が減少し、ラジエータ14への冷却用空気の供給量が少なくなるという問題がある。そこで、本実施の形態においては、フロントバンパフェイシャ8の中央開口部8aから導入した走行風をラジエータ14へ効果的に導くための導風構造を設けている。
【0024】
この導風構造は、後端部がシュラウド15の左右の縦辺部15a,15aに固定され、前端部が車両前後方向においてフロントバンパレイン6の前面近傍に位置する左右の側方仕切り板20,20と、後端部がシュラウド15の下辺部15bに固定され、前端部がフロントバンパフェイシャ8の下端部に固定され、いわゆる足払い部材(車体前部に衝突した歩行者の脚部保護のための部材)を兼ねたほぼ水平な下方仕切り板21とを有している。また、シュラウド15には、フロントバンパフェイシャ8の中央開口部8aの上縁部とほぼ同じ高さ位置で上辺部15cから前方に延び、平面視で扇形状の上方仕切り板部15fが設けられていると共に、フロントバンパフェイシャ8には、中央開口部8aの上縁部から後方に延び、後縁部が前記仕切り板部15fの前縁部に対応する形状とされた横面部8cが設けられており、該横面部8cの後端部と上方仕切り板部22の前端部とが突き合わされている。そして、これらの仕切り板20,20,21,及び仕切り板部15f,並びに横面部8cにより中央開口部8aとラジエータ14とを前後に連結するダクト状の導風構造が構成されている。
【0025】
また、バンパレインカバー18は、図6、図7に示すように、概ね前方を向いた前面部18aと、該前面部18aの上端から後方に延びる上面部18bと、前面部18aの下端から後方に延びる下面部18cとを有し、衝撃吸収部材17とバンパレイン6との間に生じた段差Xを覆っている。その場合に、上面部18bは後方側ほど高くなっており、一方フロントバンパフェイシャ8の横面部8c及びシュラウド15の上方仕切り板部15fはほぼ水平であるので、これにより、上部流路F1の上下幅が後方側ほど狭まっている。また、下面部18cは後方側ほど低くなっており、一方下方仕切り板21はほぼ水平であるので、下部流路F2の上下幅が後方側ほど狭まっている。つまり、上部流路F1及び下部流路F2の流路断面積が後方側ほど小さくなっている
【0026】
ここで、本実施の形態のように車体前端部を構成するフロントバンパフェイシャ8が、車幅方向中央部が車幅方向両端部に対して車両前方側に円弧状に膨出する形状とされていると、図8に示すように、両端部側ほど車体外面に作用する走行風の圧力が小さくなる。なお、数値は参考値であるが、大気圧をゼロとして、プラスの値が大きいほど押し込む圧力が強いことを示し、マイナスの値は逆に負圧であることを示している。つまり、インタークーラ16の配設位置が、種々の理由により車幅方向一端部側に寄って配設されるような場合、側方開口部8b…8bから導入される走行風量がインタークーラ16の能力に比較して十分でなく、インタークーラ16の冷却能力が十分に発揮されない虞がある。
【0027】
そこで、本実施の形態においては、図2、図4、図5及び図9に示すように、上記導風構造の側方であって左右の側方仕切り板20、20車幅方向外側に、中央開口部8aから取り入れられた走行風をインタークーラ16へ導く流路としてのダクト22を設けている。このダクト22は、図5に示すように、中央開口部8aにおけるインタークーラ16側の車幅方向端部と、インタークーラ16とをほぼ直線的に接続する断面略矩形状の管状部材であり、図2、図9に明確にあらわれているように、その前端部には、バンパレイン18を上下にまたいで上側部分と下側部分とに分割形成された走行風取入口22aが設けられ、該取入口22aが図2、図3に示すように中央開口部18aのインタークーラ16側の車幅方向端部を介して外部空間に臨んでいる。一方、後端の走行風排出口22bは、インタークーラ16の図示しない走行風取入口に対向して設けられている。なお、ダクト22は、図示しないが、前端部がバンパレイン18に固定され、後端部がインタークーラ16に固定されている。
【0028】
次に、本実施の形態に係る車体前部構造の作用効果について説明する。
【0029】
まず、中央開口部8aの中央部分を通過する走行風(図5矢印参照)は、導風構造により効果的にラジエータ14へ導入される。
【0030】
また、中央開口部8aの側方部分を通過する走行風は、ダクト22によって車幅方向端部側に案内されて(図5矢印参照)、インタークーラ16へ導入される。その場合に、比較的大きい風圧を有するので、冷却に十分な走行風がインタークーラ16へ導かれることとなる。
【0031】
すなわち、発明が解決しようとする課題の欄において説明したように、車体前端部が平面視で車幅方向中央部が車幅方向両端部に対して車両前方に円弧状に膨出する形状とされていると、車体前端部における車幅方向両端側に作用する走行風圧力が小さく、仮にインタークーラ16の前方に開口部を設けたとしても、インタークーラ16に走行風を十分に供給することができないが、本発明においては、インタークーラ16を冷却する冷却風を、走行風圧力の高い位置に設けられた中央開口部8aから取り込んで導くようにしたので、インタークーラ16の冷却能力を十分に発揮させることができる。
【0032】
なお、本実施形態に係る車体前部構造においては、以下のような作用効果も得られる。
【0033】
ラジエータ14は走行風にとって通気抵抗体であるため走行風がラジエータ14を通過しにくく、またラジエータ14の周囲は前記ダクト状構造により囲まれているので、ラジエータ14の前方には、エア溜りが生じる。その場合に、エア溜りは、周囲と比べて圧力が高いので、開口部8aから走行風が導入されにくくなっている。したがって、例えばフロントバンパフェイシャ8の中央開口部8aの開口面積を大きくしても、エア溜りに作用する走行風の圧力、すなわちエア溜りへの空気の押し込み能力が同じである限り、冷却能力の向上幅は限られる。また、フロントバンパフェイシャ8の開口部8aの開口面積を広くするということは、理想とするデザインから遠ざかることを意味する。
【0034】
そこで、本実施の形態においては、前記エア溜りに流入するときの走行風の流速を、前述のように、バンパフェイシャ8前面における走行風の流速よりも速くさせて、その動圧によりエア溜りへ走行風を押し込むようにしたものであり、これにより、バンパフェイシャ8の開口部8aの開口面積を大きくすることなく、熱交換能力の向上が達成されるものである。また、デザインの自由度が担保され、理想とするデザインが実現可能となるものである。
【0035】
加えて、このような効果をフロントバンパレイン6がフロントバンパフェイシャ8の中央開口部8aを通して前方から丸見えとなるのを防止するためのバンパレインカバー18を利用して達成することができる。
【0036】
また、図6に示すように、衝撃吸収部材17とフロントバンパレイン6との間に段差Xが生じているが、本実施の形態においては、該段差Xがバンパレインカバー18の上面部18b及び下面部18cにより覆われるので、該段差Xにより走行風の流れが乱されることがない。つまり、走行風がよどんだり流速が低下したりしにくくなる。
【0037】
なお、前述のように、フロントバンパフェイシャ8の横面部8c及びシュラウド15の上方仕切り板部15f、下方仕切り板21、バンパレインカバー18の上面部18b及び下面部18cは、上部流路F1及び下部流路F2の上下幅がそれぞれ後方側ほど狭まるように形成されている、つまり流路断面積が後方側ほど小さくなるように形成されているから、中央開口部8aから流入する走行風の流速が上部流路F1及び下部流路F2を通過することにより上昇することとなる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態に係る車体前部構造について説明する。
【0039】
ここで、図10は本発明の第2の実施形態に係る自動車の前部を上方から見た斜視図、図11は図10と同状態においてバンパフェイシャを分離した状態で車体前部内部を上方から見た斜視図、図12は同自動車の正面図、図13は図12のD−D断面図、図14は本発明の第2実施形態に係るダクト及びインタークーラの斜視図である。
【0040】
尚、第1の実施形態と同一部材については同一の部材番号を付し、説明を省略する。本実施形態は、中央開口部8aへ走行風が導入されるだけでなく、前記側方開口部8b、8bからもインタークーラ16へ走行風が導入されるように構成されている。
【0041】
第2の実施形態においては、フロントバンパフェイシャ8には、中央開口部8aの左右側方にも、側方開口部8b,8bが形成されている。この側方開口部8bは、図12に示すように、車両正面視で、インタークーラ16に重なる位置に設けられており、主としてインタークーラ16に走行風を供給するために設けられている。なお、デザイン上、インタークーラ16が設けられていない車幅方向で対称な位置にも、側方開口部8bが設けられている。
【0042】
図10から図14に示すように、前記導風構造の側方であって左右の側方仕切り板20、20の車幅方向外側には、中央開口部8a及び側方開口部8bからの走行風をインタークーラ16へ導くダクト23が設けられている。該ダクト23は、第1流路としての第1導風部23aと、第2流路としての第2導風部23cとを有している。第1導風部23aは、図13に示すように、中央開口部8aにおけるインタークーラ側の車幅方向端部と、インタークーラ16とを接続しており、図11、図14に明確にあらわれているように、その前端部には、バンパレイン18を上下にまたいで上側部分と下側部分とに分割形成された走行風取入口23bが設けられ、該取入口23bが図11、図12に示すように中央開口部18aのインタークーラ16側の車幅方向端部を介して外部空間に臨んでいる。一方、後端の走行風排出口23eは、インタークーラ16の図示しない走行風取入口に対向して設けられている。なお、ダクト23は、図示しないが、前端部がバンパレイン18に固定され、後端部がインタークーラ16に固定されている。第2導風部23cは、側方開口部8bの直後方に設けられ、該側方開口部8bとインタークーラ16とを接続しており、図13、図14に示すように、その前端部には、側方開口部8bより大きな開口の第2走行風取入口23dが設けられ、該取入口23dが側方開口部8bを介して外部空間に臨んでいる。ダクト23は、前記第1導風部23aと第2導風部23cとが走行風排出口23eの直前で合流するように形成されており、1つの流路としてインタークーラ16へ走行風を導入する二股状流路を構成している。
【0043】
次に、第2の実施の形態に係る車体前部構造の作用効果について説明する。
【0044】
前述のように、中央開口部8aを通過する走行風が比較的大きい風圧を有するので、十分な走行風が第1走行風取入口23bから取り入れられ、第1導風部23aによって車幅方向端部側に案内されて(図13矢印参照)、インタークーラ16へ導入される。同時に側方開口部8bからも走行風が取り入れられ、第2走行風取入口23d、第2導風部23cを介してインタークーラ16へ導入される。つまり、中央開口部8aを通過する走行風が第1導風部23aを介してインタークーラ16に導かれるだけでなく、側方開口部8bを通過する走行風も第2導風部23cを介してインタークーラ16に導かれることとなるので、第2導風部23cを介して導入される走行風の分、インタークーラ16に供給される走行風の流量が第1の実施形態に記載の発明の場合よりも増加し、インタークーラ16の冷却能力が向上することとなる。更に、第1導風部23aと第2導風部23cは走行風排出口23eの直前で合流するように形成されているので、第1導風部23aを流れる走行風に起因するベンチュリ効果により、側方開口部8bから該開口部8b周辺の走行風が第2導風部23cに吸い込まれやすくなり、該第2導風部23cに流入する走行風量が増加することとなる。つまり、インタークーラ16に導かれる走行風の流量が一層増加することとなり、該インタークーラ16の冷却能力が一層向上することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、平面視で車幅方向中央部が車幅方向両端部に対して車両前方に円弧状に膨出する形状とされている車体前端部において、インタークーラの冷却用空気を前記車体前端部の空気導入開口部から導入するように構成されている車体前部構造に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動車の前部を上方から見た斜視図である。
【図2】図1と同状態においてバンパフェイシャを分離した状態で車体前部内部を上方から見た斜視図である。
【図3】自動車の前部を下方から見た斜視図である。
【図4】自動車の正面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図5のB−B端面図である。
【図7】図5のC−C端面図である。
【図8】車体前部に加わる風圧の分布図である。
【図9】ダクト及びインタークーラの斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る自動車の前部を上方から見た斜視図である。
【図11】図10と同状態においてバンパフェイシャを分離した状態で車体前部内部を上方から見た斜視図である。
【図12】同第2の実施形態に係る自動車の正面図である。
【図13】図12のD−D断面図である。
【図14】同第2の実施形態に係るダクト及びインタークーラの斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動車
8a 中央開口部
8b 側方開口部
14 ラジエータ(第1熱交換器)
16 インタークーラ(第2熱交換器)
22 ダクト(流路)
23 ダクト(二股状流路)
23a 第1導風部(第1流路)
23c 第2導風部(第2流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前端部が、平面視で車幅方向中央部が車幅方向両端部に対して車両前方に円弧状に膨出する形状とされていると共に、該車体前端部の前面の車幅方向中央に中央開口部が形成されており、かつ、該中央開口部の直後方に第1熱交換器が配設されていると共に、該第1熱交換器の側方に第2熱交換器が配設された車体前部構造であって、
前記中央開口部を通過する走行風を前記第2熱交換器に導く流路が設けられていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
車体前端部が、平面視で車幅方向中央部が車幅方向両端部に対して車両前方に円弧状に膨出する形状とされていると共に、該車体前端部の前面の車幅方向中央に中央開口部が、該中央開口部の側方に側方開口部がそれぞれ形成されており、かつ、前記中央開口部の直後方に第1熱交換器が配設されていると共に、該第1熱交換器の側方でかつ前記側方開口部の直後方に第2熱交換器が配設された車体前部構造であって、
前記中央開口部を通過する走行風を前記第2熱交換器に導く第1流路と、前記側方開口部を通過する走行風を前記第2熱交換器に導く第2流路とが設けられていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項3】
前記第1流路と前記第2流路とは前記第2熱交換器に到達するまでに合流するように設けられる二股状流路であることを特徴とする請求項2に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−49815(P2008−49815A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227679(P2006−227679)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】