説明

車体前部構造

【課題】フロントバンパレインフォースメントに孔部しか設けられないような場合でも、熱交換器へ走行風を十分に供給することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】フロントバンパフェイシャ8の中央開口部8aと、該中央開口部8aの後方に配置されているラジエータ14との間を車幅方向に横切るようにフロントバンパレイン6が設けられ、該フロントバンパレイン6における正面から臨める部位に、該フロントバンパレイン6の前方から後方へ走行風を通過させる開口部6b,6cが設けられていると共に、該開口部6b,6cを通過する走行風の流速を増大させる衝撃吸収部材17の孔部17aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバンパレインがフロントバンパフェイシャの空気導入開口部を車幅方向に横切って構成される車体前部の構造に関し、自動車の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体前部にはエンジンルームが設けられて、該エンジンルームにはエンジン冷却水を冷却するためのラジエータ(熱交換器)が配設されると共に、車体前端部には該ラジエータを冷却するための走行風(冷却用空気)を導入する空気導入開口部が設けられる。例えば、特許文献1には、このような空気導入開口部が、フロントバンパの上下に設けられたものが開示されている。
【0003】
ところで、車体デザイン上、フロントバンパの外表面を構成するフロントバンパフェイシャを、車体前端部を車幅方向及び上下方向の広い範囲にわたって覆う形状のものとすると共に、このようなフロントバンパフェイシャに前記空気導入開口部を形成したい場合がある。
【0004】
しかし、この場合、以下のような問題が生じ得る。すなわち、フロントバンパは、前突時の衝撃吸収のための部材として、車幅方向に延び、上下方向に所定の幅を有するフロントバンパレインを有するが、フロントバンパフェイシャが前述のような構造のものの場合、該フェイシャの空気導入開口部をフロントバンパレインが車幅方向に横切ってしまう場合が生じ、この場合、実質的に空気導入開口部の有効開口面積が減少し、ラジエータへの冷却用空気の供給量が少なくなるという問題がある。なお、この問題への対処策として、空気導入開口部の開口面積を大きくすることが考えられるが、これは車体デザイン面において理想から遠ざかることを意味する。
【0005】
この問題を解決する他の構成として、例えば、特許文献2に記載のように、フロントバンパレインを、上下方向に所定間隔を開けて車幅方向に延設した2本の角パイプ材により構成し、それらの間から冷却用空気を後方に通過可能とさせることが考えられる。
【0006】
【特許文献1】実開平1−107627号公報
【特許文献2】特開2002−067839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、対象とする車体によっては車体前部の構造や衝突耐力の確保のために、特許文献2のような大きな開口を設けることができず、1本のフロントバンパレインに比較的小さな孔状の通風口しか設けられないような場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、フロントバンパレインフォースメントに孔部しか設けられないような場合でも、熱交換器へ走行風を十分に供給することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車体前端部の外表面を構成し、空気導入開口部が形成されたフロントバンパフェイシャと、該フロントバンパフェイシャの空気導入開口部の後方に配設された熱交換器と、該熱交換器と該空気導入開口部との間を車幅方向に横切るフロントバンパレインフォースメントとが設けられた車体前部構造であって、前記フロントバンパレインフォースメントにおける正面から臨める部位に、該フロントバンパレインフォースメントの前方から後方へ走行風を通過させる孔部が設けられていると共に、該孔部を通過する走行風の流速を増大させる流速増大手段が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記フロントバンパレインフォースメントの前面側に車体前方からの衝撃を吸収する衝撃吸収部材が取り付けられており、前記流速増大手段は、前記衝撃吸収部材における前記フロントバンパレインフォースメントの孔部に対応する位置に前後に貫通するように設けられ、後方ほど断面積が小さくなるように形成された孔部であることを特徴とする。
【0012】
そして、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記フロントバンパレインフォースメントは中空閉断面構造とされており、前記フロントバンパレインフォースメントの孔部は該フロントバンパレインフォースメントの前面側及び後面側にそれぞれ設けられた開口部と、これら開口部間を連結する管状部材とで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
次に、本発明の効果について説明する。
【0014】
まず、請求項1に記載の発明によれば、フロントバンパフェイシャの空気導入開口部から取り入れられた走行風のうち、フロントバンパレインフォースメント前方からの走行風は、該フロントバンパレインフォースメントに設けられた孔部を介して該レインフォースメントの前方から後方に通過することとなる。その場合に、この通過する走行風の流速が、本発明においては流速増大手段により増大されることとなる。
【0015】
ここで、ラジエータ等の熱交換器は走行風にとって通気抵抗体であるため走行風が熱交換器を通過しにくく、また熱交換器の周囲は囲まれている場合があり、該熱交換器の前方には、エア溜りが生じやすい。その場合に、エア溜りは、周囲と比べて圧力が高いので、空気導入開口部から走行風が導入されにくくなっている。したがって、バンパレインの孔部の断面積を大きくしても、エア溜りに作用する走行風の圧力、すなわちエア溜りへの空気の押し込み能力が同じである限り、冷却能力の向上幅は限られる。
【0016】
そこで、本発明においては、バンパレインの孔部を通過する走行風の流速、即ち前記エア溜りに流入するときの走行風の流速を増大させて、その動圧によりエア溜りへ走行風を押し込むようにしたものであり、これにより、比較的小径の孔部しか設けることができない場合でも、熱交換能力の向上が達成されるものである。
【0017】
次に、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の流速増大手段が具体化される。即ち、流速増大手段は、衝撃吸収部材における前記フロントバンパレインフォースメントの孔部に対応する位置に前後に貫通するように設けられ、後方ほど断面積が小さくなるように形成された孔部により構成される。これによれば、衝撃吸収部材の孔部は、後方ほど断面積が小さくなるように形成されているので、該孔部に導入された走行風は該孔部を通過する際、流速が増大することとなる。つまり、フロントバンパレインフォースメントの孔部を通過する走行風の流速が、流速増大手段ない場合よりも増大することとなる。また、説明によれば、流速増大手段をバンパの衝撃吸収部材を用いて容易に構成することができる。
【0018】
そして、請求項3に記載の発明によれば、フロントバンパレインフォースメントの孔部は前面側及び後面側に設けられた開口部とこれら開口部間を連結する管状部材とで構成されているので、前記前面側の開口部から導入された走行風がフロントバンパレインフォースメントの中空空間内に漏れることなく前記後面側の開口部から熱交換器へ向けて排出される。つまり、前面側から導入した走行風を効果的に導くことができる。また、たとえ該後面側の開口部と該前面側の開口部が同軸上に設けることができなくても、熱交換器まで走行風を良好に導くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る車体前部構造について説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態に係る自動車の前部を上方から見た斜視図、図2は図1と同状態においてバンパフェイシャを分離した状態で車体前部内部を上方から見た斜視図、図3は同自動車の前部を下方から見た斜視図、図4は同自動車の正面図、図5は図4のA−A断面図、図6は図5のB−B端面図、図7は流速増大手段の要部斜視図である。
【0021】
図2に示すように、この自動車1の車体前部構造は、主たる構造体として、車体前部の左右の側部において前後に延びるフロントサイドフレーム2,2と(図5参照)、左右のサスタワー3,3の上部から前方に延びるエプロンレイン4,4と、左右のフロントサイドフレーム2,2の前端部にクラッシュカン5,5(図5参照)を介して固定され、フロントバンパ30の骨格を構成するフロントバンパレインフォースメント6(以下、適宜、フロントバンパレイン6という)とを有すると共に、図1に示すように、車体前部の外表面を構成する部材として、車体前部の上面を構成するボンネットフード7と、車体前端部の外表面でかつフロントバンパ30の外表面を構成するフロントバンパフェイシャ8と、車体の左右の側部の外表面を構成するフロントフェンダパネル9,9(図1においては一方のみ図示されている)とを有しており、これらの外表面を構成する部材の内側の空間が、エンジン10等を収容するエンジンルーム11として構成されている(図2参照)。
【0022】
エンジンルーム11には、エンジン10以外に、図3にも示すように、変速機12や、エンジン補機13等が収容されていると共に、エンジン10の前方に、図5及び図6に示すように、エンジン10の冷却水を冷却するためのラジエータ14が配設されている。ラジエータ14は、コンデンサ14a、ラジエータ本体14b、ラジエータファン14c、ファンカバー14d等で構成され、シュラウド15に固定されている。
【0023】
シュラウド15は、図2、図5及び図6に示すように、ラジエータ14の左右の端部が固定される左右の縦辺部15a,15aと、下端部が固定される下辺部15bと、上端部が固定される上辺部15cとを有し、正面視で略四角形の枠状とされている。また、上辺部15cの左右両端部から外方後方に延びる固定アーム部15d,15dを有し、該固定アーム部15d,15dの先端部が、前記エプロンレイン4,4の前端部に固定されている。なお、図示しないが、左右の縦辺部15a,15aもフロントバンパレイン6に対して固定されている。
【0024】
エンジン10は、ターボチャージャ付きのエンジンであり、ターボチャージャにより圧縮されて高温となった吸気を冷却するためのインタークーラ16が、エンジンルーム11における車幅方向一端側に配設されている(図2、図5参照)。インタークーラ16は、種々の取付方法が可能であるが、本実施の形態においては、図示しない取付部材を介してフロントサイドフレーム2,2に固定されている。なお、本発明は、ターボチャージャを有さないエンジンに対しても適用可能である。
【0025】
バンパ30は、前述のフロントバンパフェイシャ8及びフロントバンパレイン6以外にも、衝撃吸収部材17と、前記フロントバンパレイン6の前面側を覆うバンパレインカバー18とを有している。
【0026】
フロントバンパレイン6は、断面ハット状の前面側部材6aと板状の後面側部材6bとを接合してなる車幅方向に延びる閉断面体であり、安全基準等において定められた前突時の衝撃に耐え得る強度を達成可能なように上下方向に所定の幅を有している。
【0027】
衝撃吸収部材17は、前突時に歩行者等の被衝突体へ加わる衝撃を和らげるためのものであり、例えば発泡樹脂材で構成され、フロントバンパフェイシャ8の内面とフロントバンパレイン6の前面側部材6aとの間に配され、フロントバンパレイン6の前面側部材6aに固定されている。また、衝撃吸収部材17は、断面略矩形状とされており、高さ方向(上下)幅がフロントバンパレイン6の前面側部材6aの高さ方向幅よりも小さくされている。
【0028】
フロントバンパフェイシャ8は、車体の前端部外表面の比較的広い範囲を構成している。そして、該フェイシャ8の車幅方向中央部には、エンジンルーム11内に走行風を導入する横長の開口部8a(以後、中央開口部8aという)が形成されており、前記ラジエータ14が車両正面視で該中央開口部8aの車幅方向ほぼ中央に配設されている。なお、この中央開口部8aが、特許請求の範囲における空気導入開口部に相当する。また、フロントバンパフェイシャ8には、中央開口部8aの左右側方にも、開口部8b,8bが形成されている(以後、適宜、側方開口部8b,8bという)。この側方開口部8bは、図4に示すように、車両正面視で、インタークーラ16に重なる位置に設けられており、主としてインタークーラ16に走行風を供給するために設けられている。なお、デザイン上、インタークーラ16が設けられていない車幅方向で対称な位置にも、側方開口部8bが設けられている。
【0029】
ここで、本実施の形態に係る自動車1においては、図4に明確にあらわれているように、フロントバンパレイン6が、フロントバンパフェイシャ8の中央開口部8aを車幅方向に横切っており、その結果、中央開口部8aの有効開口面積が減少し、ラジエータ14への冷却用空気の供給量が少なくなるという問題がある。そこで、本実施の形態においては、フロントバンパフェイシャ8の中央開口部8aから導入した走行風をラジエータ14へ効果的に導くための導風構造を設けている。
【0030】
この導風構造は、後端部がシュラウド15の左右の縦辺部15a,15aに固定され、前端部が車両前後方向においてフロントバンパレイン6の前面近傍に位置する左右の側方仕切り板20,20と、後端部がシュラウド15の下辺部15bに固定され、前端部がフロントバンパフェイシャ8の下端部に固定され、いわゆる足払い部材(車体前部に衝突した歩行者の脚部保護のための部材)を兼ねたほぼ水平な下方仕切り板21とを有している。また、シュラウド15には、フロントバンパフェイシャ8の中央開口部8aの上縁部とほぼ同じ高さ位置で上辺部15cから前方に延び、平面視で扇形状の上方仕切り板部15fが設けられていると共に、フロントバンパフェイシャ8には、中央開口部8aの上縁部から後方に延び、後縁部が前記仕切り板部15fの前縁部に対応する形状とされて該前縁部に突き当てられた横面部8cが設けられており、該横面部8cの後端部と上方仕切り板部15fの前端部とが突き合わされている。そして、これらの仕切り板20,20,21,及び仕切り板部15f,並びに横面部8cにより中央開口部8aとラジエータ14とを前後に連結するダクト状の導風構造が構成されている。
【0031】
また、バンパレインカバー18は、図6に示すように、概ね前方を向いた前面部18aと、該前面部18aの上端から後方に延びる上面部18bと、前面部18aの下端から後方に延びる下面部18cとを有し、衝撃吸収部材17とバンパレイン6との間に生じた段差Xを覆っている。その場合に、上面部18bは後方側ほど高くなっており、一方フロントバンパフェイシャ8の横面部8c及びシュラウド15の上方仕切り板部15fはほぼ水平であるので、これにより、上部流路F1の上下幅が後方側ほど狭まっている。また、下面部18cは後方側ほど低くなっており、一方下方仕切り板21はほぼ水平であるので、下部流路F2の上下幅が後方側ほど狭まっている。つまり、上部流路F1及び下部流路F2の流路断面積が後方側ほど小さくなっている。
【0032】
各図に示されているように、フロントバンパレイン6の車幅方向中央には、ライセンスプレートLが取り付けられている。ここで、本実施の形態においては、フロントバンパレイン6の前方から後方に走行風を通過させるための導風構造が設けられている。
【0033】
すなわち、フロントバンパレインフォースメント6には、前記ライセンスプレートLの左右側方で、かつ車両正面視で中央開口部8aから臨める位置に、前後に貫通すると共に車幅方向に細長い正面視矩形上の孔部6aが設けられている。フロントバンパレインフォースメント6は、前述のように車幅方向に延びる中空閉断面体であり、前記孔部6aは、該レインフォースメント6の前面側部材及び後面側部材にそれぞれ形成された開口部6b,6cと、該開口部間を連結する管状部材22とで構成されている。なお、開口部6b,6cの面積、すなわち孔部6aの断面積は、フロントバンパレインフォースメント6の強度を考慮して実現可能な大きさに設定されている。また、孔部6aの断面積は前後方向において同一とされている。
【0034】
また、衝撃吸収部材17には、前記フロントバンパレインスフォースメント6の貫通孔部6aに概ね対応する位置に、前後に貫通する孔部17aが設けられている。この孔部17aは、断面形状がフロントバンパレインフォースメント6の孔部6a同様に矩形状とされている。また、後端17cの断面積がフロントバンパレインスフォースメント6の孔部6aの断面積とほぼ同じとされ、前端17bの断面積が後端17cの断面積よりも大きくされている。より詳しくは、孔部17aは、前端17b側ほど断面積が大きくなるように、テーパ状に形成されている。換言すれば、後方側ほど、断面積が小さくなるように形成されている。
【0035】
また、バンパレインカバー18には、孔部17aの前端17bとほぼ同面積、同形状の開口部18dが形成されている。
【0036】
次に、本実施の形態に係る車体前部構造の作用効果について説明する。
【0037】
フロントバンパレイン6における正面から臨める部位に孔部6aが設けられているので、フロントバンパフェイシャ8の空気導入開口部8aから取り入れられた走行風のうち、フロントバンパレイン6前方からの走行風は、前記孔部6aを介して該フロントバンパレイン6の前方から後方に通過することとなる。その場合に、この通過する走行風の流速が、テーパ状に形成されている孔部17aにより増大されることとなる。
【0038】
ここで、ラジエータ14は走行風にとって通気抵抗体であるため走行風がラジエータ14を通過しにくく、またラジエータ14の周囲は囲まれている場合があり、その前方にはエア溜りが生じやすい。その場合に、エア溜りは、周囲と比べて圧力が高いので、空気導入開口部8aから走行風が導入されにくくなっている。したがって、フロントバンパレイン6の孔部6aの断面積を大きくしても、エア溜りに作用する走行風の圧力、すなわちエア溜りへの空気の押し込み能力が同じである限り、冷却能力の向上幅は限られる。
【0039】
そこで、本実施の形態では、フロントバンパレイン6の孔部6aを通過する走行風の流速、即ち前記エア溜りに流入するときの走行風の流速を増大させて、その動圧によりエア溜りへ走行風を押し込むようにしたものであり、これにより、比較的小径の孔部しか設けることができない場合でも、熱交換能力の向上が達成されるものである。
【0040】
なお、前記実施の形態では、フロントバンパレインン6の孔部6aの断面積は前後方向において同一としたが、それに限らず、図8及び図9に示す実施の形態のように、孔部6a´の断面積が後方ほど小さくなるように形成すると共に、管状部材22´もこれら導入開口部6b´,6c´の断面積に合わせて車両後方になるにつれて断面積が小さくなるように形成してもよい。
【0041】
このとき、衝撃吸収部材17′の孔部17a′に形成されるテーパ面とフロントバンパレイン6′の孔部6a′に形成されるテーパ面は連続するように形成することが好ましい。
【0042】
本実施の形態では、車両後方にある導入開口部6c′の断面積が衝撃吸収部材17′側の開口部6b′の断面積より小さくなるように形成されていると共に、管状部材22もこれら開口部6b′,6c′の断面積に合わせて車両後方になるにつれて断面積が小さくなるように形成されているので、該孔部17a′,17a′により流速が増大された走行風が更にバンパレイン6′の開口部6b′,6b′に導入され、走行風が管状部材22′内で次第に空気通路を狭められて流速が更に増大され、開口部6c′,6c′から後方へ向けて排出されてラジエータ14が冷却されることとなる。つまり、衝撃吸収部材17′とフロントバンパレインの6′の両方に流速増大手段を形成することで、一層ラジエータ14の冷却能力を向上させることができる。
【0043】
なお、本実施例では、衝撃吸収部材17′の孔部17a′及びフロントバンパレイン6′の孔部6a′の車両幅方向の断面積が車両後方になるにつれて小さくなるように形成されているが、それに限らず、車両上下方向の断面積が車両後方になるにつれて小さくなるように形成されてもよく、また車両幅方向及び車両上下方向の両方の断面積が車両後方になるにつれて小さくなるように形成されてもよい。
【0044】
また、本実施の形態に係る車体前部構造においては、以下のような作用効果も得られる。
【0045】
まず、前述のように、フロントバンパフェイシャ8の横面部8c及びシュラウド15の上方仕切り板部15f、下方仕切り板21、バンパレインカバー18の上面部18b及び下面部18cは、上部流路F1及び下部流路F2の上下幅がそれぞれ後方側ほど狭まるように形成されている、つまり流路断面積が後方側ほど小さくなるように形成されているから、中央開口部8aから流入する走行風の流速が上部流路F1及び下部流路F2を通過することにより上昇することとなる(なお、この効果は、主として正面視でライセンスプレートLが存在していない部分で発揮される)。従って、孔部による流速増大効果と同様の効果が得られる。
【0046】
即ち、前記エア溜りに流入するときの走行風の流速が、上部流路F1及び下部流路F2を通過することにより、バンパフェイシャ8前面における走行風の流速よりも速くなり、その動圧によりエア溜りへ走行風が押し込まれることとなる。これにより、バンパフェイシャ8の開口部8aの開口面積を大きくすることなく、熱交換能力の向上が達成される。また、デザインの自由度が担保され、理想とするデザインが実現可能となる。
【0047】
加えて、このような効果をフロントバンパレイン6がフロントバンパフェイシャ8の中央開口部8aを通して前方から丸見えとなるのを防止するためのバンパレインカバー18を利用して達成することができる。
【0048】
また、図6に示すように、衝撃吸収部材17とフロントバンパレイン6との間に段差Xが生じているが、本実施の形態においては、該段差Xがバンパレインカバー18の上面部18b及び下面部18cにより覆われるので、該段差Xにより走行風の流れが乱されることがない。つまり、走行風がよどんだり流速が低下したりしにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、フロントバンパレインがフロントバンパフェイシャの空気導入開口部を車幅方向に横切って構成されている車体前部構造に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動車の前部を上方から見た斜視図である。
【図2】図1と同状態においてバンパフェイシャを分離した状態で車体前部内部を上方から見た斜視図である。
【図3】同自動車の前部を下方から見た斜視図である。
【図4】同自動車の正面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図5のB−B端面図である。
【図7】流速増大手段の要部斜視図である。
【図8】図5に対応する他の態様を示す断面図である。
【図9】流速増大手段の他の態様の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 自動車
6 フロントバンパレイン(フロントバンパレインフォースメント)
6a 孔部(フロントバンパレインフォースメントの孔部)
6b 開口部(フロントバンパレインフォースメントの前面側の開口部)
6c 開口部(フロントバンパレインフォースメントの後面側の開口部)
8 フロントバンパフェイシャ
8a 中央開口部(空気導入開口部)
14 ラジエータ(熱交換器)
17 衝撃吸収部材
17a 孔部(衝撃吸収部材の孔部、流速増大手段)
18 フロントバンパカバー
22 管状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前端部の外表面を構成し、空気導入開口部が形成されたフロントバンパフェイシャと、該フロントバンパフェイシャの空気導入開口部の後方に配設された熱交換器と、該熱交換器と該空気導入開口部との間を車幅方向に横切るフロントバンパレインフォースメントとが設けられた車体前部構造であって、
前記フロントバンパレインフォースメントにおける正面から臨める部位に、該フロントバンパレインフォースメントの前方から後方へ走行風を通過させる孔部が設けられていると共に、
該孔部を通過する走行風の流速を増大させる流速増大手段が設けられていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車体前部構造において、
前記フロントバンパレインフォースメントの前面側に車体前方からの衝撃を吸収する衝撃吸収部材が取り付けられており、
前記流速増大手段は、前記衝撃吸収部材における前記フロントバンパレインフォースメントの孔部に対応する位置に前後に貫通するように設けられ、後方ほど断面積が小さくなるように形成された孔部であることを特徴とする車体前部構造。
【請求項3】
前記請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造において、
前記フロントバンパレインフォースメントは中空閉断面構造とされており、
前記フロントバンパレインフォースメントの孔部は該フロントバンパレインフォースメントの前面側及び後面側にそれぞれ設けられた開口部と、これら開口部間を連結する管状部材とで構成されていることを特徴とする車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−62815(P2008−62815A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243490(P2006−243490)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】