説明

車体前部構造

【課題】車両前面衝突時に車室の変形を最小限にとどめることの可能な車体前部構造の提供を図る。
【解決手段】フードリッジメンバ3の前端に連結されて車幅方向に延在するアッパバンパーレインフォース101と、サスペンションメンバ7の前端に連結されて車幅方向に延在するロアバンパーレインフォース102と、を備え、アッパバンパーレインフォース101とロアバンパーレインフォース102のそれぞれの対向する車幅方向両端部同士を上下連結部材103で連結し、この上下連結部材103をその上端部が下端部に対して車幅方向外方にオフセットするように傾斜させることにより、アッパバンパーレインフォース101に入力された前面衝突や斜め衝突時の荷重を、上下連結部材103およびロアバンパーレインフォース102に荷重伝達できるため車体反力が増大されて、車室の変形を最小限にとどめることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前部構造、詳しくはエンジンコンパートメントの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンコンパートメントは、例えば車体前部に配設されており、車体前端に設けられたシュラウドメンバ、車体前部に配設された上部側のフードリッジメンバおよび下部側のサイドメンバ、これらのフードリッジメンバおよびサイドメンバの後端に配設されたダッシュパネルなどによって画成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これらのフードリッジメンバとサイドメンバは、それぞれ車両前後方向に沿って延設され、かつ上下方向に所定の間隔をおいて配置されている。
【特許文献1】特開平5−85407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両前面衝突時には、上述した車体前部の骨格構造を変形させるなどして衝突エネルギーを吸収し、車室の変形を最小限にとどめることがなされている。車両前面衝突時には、エンジンコンパートメントと車室とを仕切るダッシュパネルが車室側に押し込まれないようにすることが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、車両前面衝突時に車室の変形を最小限にとどめることの可能な車体前部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、車体前部のエンジンコンパートメントを構成する骨格構造部材の前端に連結されて車幅方向に延在する上方バンパー骨格部材と、該上方バンパー骨格部材の下方で前記骨格構造部材の前端に連結されて車幅方向に延在する下方バンパー骨格部材と、を備えてフロントバンパー骨格を構成し、上方バンパー骨格部材と下方バンパー骨格部材のそれぞれの対向する車幅方向両端部同士を上下連結部材で連結するとともに、該上下連結部材を、その上端部が下端部に対して車幅方向外方にオフセットするように傾斜させたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前面衝突時に衝突荷重が上方バンパー骨格部材の車幅方向中央部に入力された場合、上下連結部材の引張り力を介して下方バンパー骨格部材の引張り力として荷重伝達されることにより車体反力が増大する。また、斜め衝突により衝突荷重が上方バンパー骨格部材の車幅方向端部に適宜角度をもって入力された場合、上方バンパー骨格部材の圧縮力として反力を発生するとともに、上下連結部材の圧縮力を介して下方バンパー骨格部材の圧縮力として荷重伝達されることにより車体反力が増大する。従って、このように車両前面衝突時に車体反力が増加することにより、車室の変形を最小限にとどめることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。図1は、第1実施形態の車体前部構造(エンジンコンパートメント構造)を示す斜視図である。
【0009】
車体前部には、内部にエンジン等の車両部品を搭載するためのエンジンコンパートメント1(エンジンルーム)が設けられている。エンジンコンパートメント1の左右両側の上部には、車両前後方向に沿って左右一対のフードリッジメンバ(上部骨格構造部材)3,3が延設されており、フードリッジメンバ3,3の前端には前側連結部材5,5の上端がそれぞれ結合されている。
【0010】
また、フードリッジメンバ3の下方で、エンジンコンパートメント1の下端部には、平面視略H字状のサスペンションメンバ(下部骨格構造部材)7が配設されている。サスペンションメンバ7は、車体の左右両側に前後方向に沿って延びる側部9,9と、これら側部9,9の後端同士を車体幅方向に結合させる連設部11とからなる。側部9の前端9aが上述した前側連結部材5の下端と結合されており、側部9の後端9bが後述する取付部材13に結合されている。
【0011】
フードリッジメンバ3の中間部とサスペンションメンバ7とは、ジョイントメンバ(ジョイント部材)15によって連結されている。ジョイントメンバ15の上端15aはフードリッジメンバ3の車幅方向内側の側面に締結され、下端15bはサスペンションメンバ7の側部9の中間部分に締結されている。更に、フードリッジメンバ3とサスペンションメンバ7との間には、車両前後方向に沿って延びる前側サイドメンバ17および後側サイドメンバ19が配設されている。前側サイドメンバ17は、前側連結部材5とジョイントメンバ15とを前後方向に沿って連結している。また、後側サイドメンバ19は、ジョイントメンバ15とダッシュパネル23下部の取付部材13とを連結している。
【0012】
ジョイントメンバ15と後側サイドメンバ19の前端との接合部は、ジョイントメンバ15と前側サイドメンバ17の後端との接合部よりも下方に位置されている。即ち、ジョイントメンバ15と後側サイドメンバ19の前端との接合部は、ジョイントメンバ15と前側サイドメンバ17の後端との接合部よりも下方にオフセットされて配置されている。取付部材13は、ダッシュパネル23の下部に配設され、ピラーロア部材21に繋がっている。取付部材13およびピラーロア部材21によって後側連結部材6が構成されている。サスペンションメンバ7の後端9bおよび後側サイドメンバ19は、前記後側連結部材6を介してフードリッジメンバ3に繋がっている。
【0013】
また、エンジンコンパートメント1の後端には、ダッシュパネル23が配設されており、ダッシュパネル23を介してエンジンコンパートメント1と車両室内とが分離されている。ダッシュパネル23の上部には、車幅方向に沿ってカウルボックス(エアボックス)25が延設され、カウルボックス25の左右両端は、左右のピラーロア部材21,21同士を車幅方向で結合させている。また、カウルボックス25の左右両端とジョイントメンバ15の上端との間には、サスペンションタワー27が配設されている。
【0014】
ここで、本実施形態にあっては、図1に示すように前記フードリッジメンバ3と前記サスペンションメンバ7の前端部に跨って、フロントバンパー骨格100が設けられている。このフロントバンパー骨格100は、前記フードリッジメンバ3の前端に連結されて車幅方向に延在するアッパバンパーレインフォース(上方バンパー骨格部材)101と、該アッパバンパーレインフォース101の下方で前記サスペンションメンバ7の前端に連結されて車幅方向に延在するロアバンパーレインフォース(下方バンパー骨格部材)102と、を上下二段に設けて構成されている。
【0015】
図2はフロントバンパー骨格の車体右側半分を示す正面図である。
【0016】
図2に示すように前記アッパバンパーレインフォース101と前記ロアバンパーレインフォース102は、それぞれの対向する車幅方向両端部同士を上下連結部材103で連結してあり、該上下連結部材103はその上端部が下端部に対して車幅方向外方にオフセットするように傾斜させて、この左右一対の上下連結部材103を正面視で逆ハの字状に配置してある。
【0017】
前記アッパバンパーレインフォース101は、左右一対のフードリッジメンバ3,3の前端にアッパバンパーステー104を介して連結されるとともに、前記ロアバンパーレインフォース102はサスペンションメンバ7の左右一対の側部9,9の前端にロアバンパーステー105を介して連結されている。このアッパバンパーステー104とアッパバンパーレインフォース101およびフードリッジメンバ3とを連結する手段、およびロアバンパーステー105とロアバンパーレインフォース101およびサスペンションメンバ7とを連結する手段は溶接であってもよく、また、ボルト・ナットを用いた締結であってもよい。
【0018】
図3はフロントバンパー骨格の車体右側半分を示す平面図である。
【0019】
図3に示すように、ロアバンパーレインフォース102は平面視でアッパバンパーレインフォース101よりも車両後方に所定量Lだけ後退して配置され、かつ、このロアバンパーレインフォース102の左右のロアバンパーステー105間が直線状に形成されている。尚、アッパバンパーレインフォース101およびロアバンパーレインフォース102の車幅方向両端部は車両後方に傾斜して曲折成形されている。
【0020】
図4は図1の側面図である。エンジンコンパートメント1を車体側方から見ると、前部と後部とにそれぞれ前側環状骨格部33と後側環状骨格部35とが形成されている。前側環状骨格部33は、フードリッジメンバ3と、サスペンションメンバ7と、前側連結部材5と、ジョイントメンバ15と、によって構成され、側面視略台形状に形成されている。また、後側環状骨格部35は、フードリッジメンバ3と、サスペンションメンバ7と、ジョイントメンバ15と、ピラーロア部材21および取付部材13からなる後側連結部材6と、によって構成されて側面視略矩形状に形成されている。
【0021】
図5は図1のエンジンコンパートメント1を前後に分割した状態を示す分解斜視図、図6は図5の分割した前側エンジンコンパートメント1にエンジン等を組み付けた状態を示す分解斜視図である。
【0022】
本実施形態のエンジンコンパートメント1は、図5,図6に示すように当初は分割されて構築された前後部構造を結合させて構成されている。図6に示すように、分割した前側エンジンコンパートメント37にエンジン51等の車両部品39やその他の部品(サスペンション53、図示省略したステアリングラック、ラジエータ55およびヘッドランプ79)を搭載した後、前側エンジンコンパートメント37と後側エンジンコンパートメント41とを結合させることにより、車体前部の組付作業が完了する。
【0023】
本実施形態においては、フードリッジメンバ3が前後に2分割されて前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45とから構成されている。前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との結合部47は、ジョイントメンバ15の上端15aと前側フードリッジメンバ43との連結部49の後側に設定されている。また、本実施形態では、サスペンションメンバ7は分割されておらず、サスペンションメンバ7の側部9の後端9bがダッシュパネル23の下部に設けられた取付部材13に締結されている。そして、後側サイドメンバ19の後端部は前記取付部材13に支持されており、前端部がジョイントメンバ15に締結可能に構成されている。
【0024】
図7は本実施形態のエンジンコンパートメント1に下方向の荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図、図8は比較例のエンジンコンパートメント2に下方向の荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図である。本実施形態によるエンジンコンパートメント1では、上述したように環状骨格部33,35が形成されて車体前部の剛性が向上している。このため、図7に示すように車体前部に下方向の荷重Fが入力された場合に、この荷重Fを環状骨格部33,35によって確実に受け止めるので、車体前部の下方への変形量は小さくなる。一方、図8に示した比較例のエンジンコンパートメント2には、本実施形態のような環状骨格部が設けられていない。このため、荷重Fが入力された場合に、この荷重Fをエンジンコンパートメント2で確実に受け止めることができず、図8に示すように車体前部の下方への変形量が大きくなる。
【0025】
上述したように、本実施形態の車体前部構造は、前側環状骨格部33と後側環状骨格部35とを有している。このため、エンジンコンパートメント1の剛性が大幅に向上する。また、エンジンコンパートメント1を構成する各部材の板厚を薄くして軽量化を図っても、従来構造と同等の剛性を維持することができる。また、前側サイドメンバ17および後側サイドメンバ19によって、前記前側環状骨格部33と後側環状骨格部35をそれぞれ補強しているため、エンジンコンパートメント1の剛性が更に向上する。また、エンジンコンパートメント1を前後に分割し、エンジン51等の部品を搭載後にこれらを結合する構造としてある。このため、車両組立工程を大幅に簡素化することができる。また、後側エンジンコンパートメント41に結合する前に、前記車両部品39を前側エンジンコンパートメント37に組み付けることができるため、車両部品39の搭載作業が非常に容易になる。
【0026】
図9に車両前面衝突時における上述した環状骨格構造の変形状態を示す。車両前面衝突時には、主として前側の環状骨格構造33が潰れる。このとき、前側サイドメンバ17によってジョイントメンバ15に荷重が伝達される。このとき、前側サイドメンバ17とジョイントメンバ15との接合部よりも下方に後側サイドメンバ19とジョイントメンバ15との接合部がオフセットされて位置しているため、ジョイントメンバ15は屈曲される。これと同時に後側サイドメンバ19は、ジョイントメンバ15との接合部を下方に移動させるように変形する。このため、後側サイドメンバ19の後方への移動量は低減され、後側サイドメンバ19によるダッシュパネル23(およびピラーロア部材21)の車室内への侵入量を低減できる。この結果、車室の変形を抑え、乗員の生存空間を確保することができる。
【0027】
図10は、フロントバンパーに入力される衝突荷重の態様を(a),(b)にそれぞれ示す説明図である。
【0028】
本実施形態ではアッパバンパーレインフォース101とロアバンパーレインフォース102とによって上下二段でフロントバンパー骨格100を構成し、これらアッパバンパーレインフォース101とロアバンパーレインフォース102のそれぞれの対向する車幅方向両端部同士を連結した上下連結部材103は、上端部が下端部に対して車幅方向外方にオフセットするように傾斜されているので、図10(a)に示すように前面衝突時に衝突荷重F1がアッパバンパーレインフォース101の車幅方向中央部に入力された場合、上下連結部材103の上方への引張り力fs1によりロアバンパーレインフォース102に車幅方向の引張り力fs2として荷重伝達されることにより車体反力が増大する。また、図10(b)に示すように斜め衝突により衝突荷重F2がアッパバンパーレインフォース101の車幅方向端部に適宜角度をもって入力された場合、アッパバンパーレインフォース101の車幅方向の圧縮力fc1として反力を発生するとともに、上下連結部材103の下方への圧縮力fc2によりロアバンパーレインフォース102に車幅方向の圧縮力fc3として荷重伝達されることにより車体反力が増大する。
【0029】
従って、このように車両前面衝突時に車体反力が増加することにより、図9に示した特性をより有効に行わせて、車室の変形を最小限にとどめることが可能となる。
【0030】
図11は後側サイドメンバ19とジョイントメンバ15との結合構造の断面図を示し、上述したように本実施形態では、前後に分割されたエンジンコンパートメント1を結合させている。ジョイントメンバ15は、前側の分割部分に含まれ、後側サイドメンバ19は後側の分割部分に含まれる。このため、後側サイドメンバ19の先端をジョイントメンバ15の側面に結合させることとなる。本実施形態では図11(a)に示すように、後側サイドメンバ19の先端内部にウエルドナット19aを取り付けておく。ジョイントメンバ15には、前側サイドメンバ17が結合されている側に、ボルト19bを内部に挿入させるための挿入口15aが形成されているとともに、後側サイドメンバ19が結合される側にボルト19bの挿通孔15bが形成されている。
【0031】
そして、図11(b)に示すように挿入口15aからボルト19bを挿入し、挿通孔15bにボルト19bを挿入して後側サイドメンバ19のウエルドナット19aに螺合させる。このようにすることで、後側サイドメンバ19の先端がジョイントメンバ15に締結される。これは、ジョイントメンバ15における前側サイドメンバ17の結合場所と後側サイドメンバ19の結合場所とがオフセットされているため、ボルト19bおよびウエルドナット19aの配置が容易になっている恩恵である。即ち、締結部材であるボルト19bおよびウエルドナット19aで後側サイドメンバ19をジョイントメンバ15に締結している。
【0032】
図12に他の締結例を示す。図11の例ではジョイントメンバ15の後側サイドメンバ19側の壁部とのみ後側サイドメンバ19を締結した。図12の例ではジョイントメンバ15を貫通させてボルト19bを締結する。この例でも、図12(a)に示されるように後側サイドメンバ19の先端内部にウエルドナット19aを取り付けておく。ジョイントメンバ15には、前側サイドメンバ17が結合されている側と後側サイドメンバ19が結合される側の双方にボルト19bの挿通孔15bを形成しておく。
【0033】
そして、図12(b)に示すように一対の挿通孔15bにボルト19bを挿入して後側サイドメンバ19のウエルドナット19aに螺合させる。このようにすることで後側サイドメンバ19の先端がジョイントメンバ15に締結される。この場合もジョイントメンバ15における前側サイドメンバ17の結合場所と後側サイドメンバ19の結合場所とがオフセットされているため、ボルト19bおよびウエルドナット19aの配置が容易になっている恩恵である。ここでも、締結部材であるボルトおよびウエルドナットで後側サイドメンバ19をジョイントメンバ15に締結している。
【0034】
上述した第1実施形態に対して下部骨格構造部材の分割位置を変更したものも考えられる。例えば、図13に示される第2実施形態のような分割位置としてもよい。この例では、エンジンコンパートメント1が前側エンジンコンパートメント57と後側エンジンコンパートメント59とから構成されている。サスペンションメンバ7においては、側部9が前後に2分割されており、側部9の前部側63と後部側65とが締結可能に構成されている。これらの前部側63と後部側65との結合部66は、ジョイントメンバ15の下端15bと側部9の前部側63との連結部64の後側に設定されている。そして、後側サイドメンバ19の後端は取付部材13に支持されており、前端がジョイントメンバ15に締結可能に構成されている。なお、エンジンコンパートメント1の前側分割部分に各種部品を装着した後に、分割された前後部分を結合させるのも第1実施形態と同様である。また、後側サイドメンバ19のジョイントメンバ15への締結に関しては、上述した第1実施形態と同様である。
【0035】
上述した第1,第2実施形態においては、エンジンコンパートメント1が前後に2分割され、ジョイントメンバ15が前側部分に含まれているものであった。以下に説明する実施形態は、エンジンコンパートメント1が前後に2分割され、ジョイントメンバ15が後側部分に含まれているものである。図14に第3実施形態の図1相当図を示す。本実施形態ではエンジンコンパートメント1が前後に分割されて、前側エンジンコンパートメント67と後側エンジンコンパートメント69とから構成されている。また、車体側部に形成された環状骨格部についても、前後に分割されている。しかしながら、上述した第1,第2実施形態と比較すると、前側エンジンコンパートメント67と後側エンジンコンパートメント69との結合部の位置が異なっている。
【0036】
本実施形態において、フードリッジメンバ3が前後に2分割されており、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との結合部71は、ジョイントメンバ15と後側フードリッジメンバとの連結部73の前側に設定されている。また、サスペンションメンバ7は、側部9が前後に2分割されており、その結合部75はジョイントメンバ15と側部9の後部側65との連結部77の前側に設定されている。そして、前側サイドメンバ17は前側連結部材5に支持されており、後端部がジョイントメンバ15に締結可能に構成されている。次いで、本実施形態によるエンジンコンパートメント1の組付手順について説明する。図15に示すように分割した前側エンジンコンパートメント67にラジエータ55やヘッドランプ79を組み付け、後側エンジンコンパートメント69にサスペンション53および図示省略したステアリングラックを組み付ける。その後、前側エンジンコンパートメント67を後側エンジンコンパートメント69に締結することにより、車体前部の組付作業が完了する。
【0037】
図16に前側サイドメンバ17とジョイントメンバ15との締結構造を示す断面図を示す。上述したように本実施形態では、前後に分割されたエンジンコンパートメント1を結合させている。ジョイントメンバ15は後側の分割部分に含まれ、前側サイドメンバ17は前側の分割部分に含まれる。このため、前側サイドメンバ17の先端をジョイントメンバ15の側面に結合させることとなる。本実施形態では図16(a)に示されるように、前側サイドメンバ17の先端内部にウエルドナット17aを取り付けておく。ジョイントメンバ15には後側サイドメンバ19が結合されている側にボルト17bを内部に挿入させるための挿入口15aが形成されているとともに、前側サイドメンバ17が結合される側にボルト17bの挿通孔15bが形成されている。
【0038】
そして、図16(b)に示されるように挿入口15aからボルト17bを挿入し、挿通孔15bにボルト19bを挿入して前側サイドメンバ17のウエルドナット17aに螺合させる。このようにすることで、前側サイドメンバ17の先端がジョイントメンバ15に締結される。これはジョイントメンバ15における前側サイドメンバ17の結合場所と後側サイドメンバ19の結合場所とがオフセットされているため、ボルト17bおよびウエルドナット17aの配置が容易になっている恩恵である。即ち、締結部材であるボルト17bおよびウエルドナット17aで後側サイドメンバ19をジョイントメンバ15に締結している。
【0039】
図17に他の締結例を示す。図16の例では、ジョイントメンバ15の前側サイドメンバ17側の壁部とのみ前側サイドメンバ17を締結した。図17の例では、ジョイントメンバ15を貫通させてボルト17bを締結する。この例でも図17(a)に示すように前側サイドメンバ17の先端内部にウエルドナット17aを取り付けておく。ジョイントメンバ15には、前側サイドメンバ17が結合されている側と後側サイドメンバ19が結合される側の双方にボルト17bの挿通孔15bを形成させておく。
【0040】
そして、図17(b)に示されるように、一対の挿通孔15bにボルト17bを挿入して前側サイドメンバ17のウエルドナット17aに螺合させる。このようにすることで前側サイドメンバ17の先端がジョイントメンバ15に締結される。この場合もジョイントメンバ15における前側サイドメンバ17の結合場所と後側サイドメンバ19の結合場所とがオフセットされているため、ボルト17bおよびウエルドナット17aの配置が容易になっている恩恵である。ここでも締結部材であるボルト17bおよびウエルドナット17aで前側サイドメンバ17をジョイントメンバ15に締結している。
【0041】
上述した第3実施形態に対して下部骨格構造部材の分割位置を変更したものも考えられる。例えば、図18に示される第4実施形態のような分割位置としてもよい。この例ではエンジンコンパートメント1が前側エンジンコンパートメント81と後側エンジンコンパートメント83とから構成されている。
【0042】
また、本実施形態ではサスペンションメンバ7は分割されておらず、サスペンションメンバ7の側部9の後端9bがダッシュパネル23の下部に設けられた取付部材13に締結されている。そして、後側サイドメンバ19の後端部は前記取付部材13に支持されており、前端部がジョイントメンバ15に結合されている。ジョイントメンバ15の下端は、分割時にはどこにも結合されておらず、エンジンコンパートメント1の前後結合時にサスペンションメンバ7の側部9に締結される。尚、図19に示されるようにエンジンコンパートメント1の前側分割部分に各種部品を装着した後に、分割された前後部分を結合させるのは第1実施形態と同様である。また、前側サイドメンバ17のジョイントメンバ15への締結に関しては上述した第3実施形態と同様である。
【0043】
上述した実施形態では、いずれもジョイントメンバ15における前側サイドメンバ17の結合場所と後側サイドメンバ19の結合場所とがオフセットされていた。以下に説明する実施形態では、後側サイドメンバ19および前側サイドメンバ17が、ジョイントメンバ15との接合点にて下方に屈曲するようにジョイントメンバ15に同一高さにてそれぞれ接合されている。このようにしても車両衝突時などに前側サイドメンバ17に前方から加わる荷重によって後側サイドメンバ19を下方に移動させることができ、後側サイドメンバ19によってダッシュパネル23が車室側に押し込まれることが抑止され、車室の変形を最小限にとどめることができる。
【0044】
本実施形態の図9相当図を図20に示す。図20(a)は衝突前の状態を示しており、図20(b)は衝突後の状態を示している。図20(a)に示すように後側サイドメンバ19および前側サイドメンバ17は、ジョイントメンバ15との接合点にて下方に屈曲されている。このため、車両衝突時などには、図20(b)に示されるように後側サイドメンバ19および前側サイドメンバ17は更に下方に屈曲され、後側サイドメンバ19は下方に移動する。この結果、後側サイドメンバ19の後方への移動量は低減され、後側サイドメンバ19によるダッシュパネル23(ピラーロア部材21)の車室内への侵入量を低減でき、車室の変形を抑えて乗員の生存空間を確保することができる。
【0045】
後側サイドメンバ19および前側サイドメンバ17のジョイントメンバ15への接合は、後側サイドメンバ19および前側サイドメンバ17の双方をジョイントメンバ15に溶接し、また、後側サイドメンバ19または前側サイドメンバ17の一方をジョイントメンバ15にボルト止めし、他方を溶接するようにしてもよい。スペース的に可能であるならば、後側サイドメンバ19および前側サイドメンバ17の双方をジョイントメンバ15にボルト止めしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態におけるエンジンコンパートメントを示す斜視図。
【図2】図1のエンジンコンパートメントのフロントバンパー骨格の車体右側半分を示す正面図。
【図3】図1のエンジンコンパートメントのフロントバンパー骨格の車体右側半分を示す平面図。
【図4】図1の側面図。
【図5】図1のエンジンコンパートメントを前後に分割した状態を示す分解斜視図。
【図6】図5の分割した前側エンジンコンパートメントにエンジン等を組み付けた状態を示す分解斜視図。
【図7】図1のエンジンコンパートメントに下方に向かう荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図。
【図8】比較例のエンジンコンパートメントに下方に向かう荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図。
【図9】図1のエンジンコンパートメントにおける車両前面衝突時の環状骨格構造の変形状態を示す説明図。
【図10】フロントバンパーに入力される衝突荷重の態様を(a),(b)にそれぞれ示す説明図。
【図11】ジョイントメンバへの前側サイドメンバの取付構造(第一例)を示す断面図。
【図12】ジョイントメンバへの前側サイドメンバの取付構造(第二例)を示す断面図。
【図13】第2実施形態の図5相当図。
【図14】第3実施形態の図5相当図。
【図15】第3実施形態の図6相当図。
【図16】ジョイントメンバへの後側サイドメンバの取付構造(第一例)を示す断面図。
【図17】ジョイントメンバへの後側サイドメンバの取付構造(第二例)を示す断面図。
【図18】第4実施形態の図5相当図。
【図19】第4実施形態の図6相当図。
【図20】第5実施形態の図9相当図。
【符号の説明】
【0047】
1 エンジンコンパートメント
3 フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
5 前側連結部材
6 後側連結部材
7 サスペンションメンバ(下部骨格構造部材)
15 ジョイントメンバ(ジョイント部材)
17 前側サイドメンバ
19 後側サイドメンバ
25 カウルボックス
27 サスペンションタワー
33 前側環状骨格部
35 後側環状骨格部
43 前側フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
45 後側フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
100 フロントバンパー骨格
101 アッパバンパーレインフォース(上方バンパー骨格部材)
102 ロアバンパーレインフォース(下方バンパー骨格部材)
103 上下連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部のエンジンコンパートメントを構成する骨格構造部材の前端に連結されて車幅方向に延在する上方バンパー骨格部材と、該上方バンパー骨格部材の下方で前記骨格構造部材の前端に連結されて車幅方向に延在する下方バンパー骨格部材と、を備えてフロントバンパー骨格を構成し、上方バンパー骨格部材と下方バンパー骨格部材のそれぞれの対向する車幅方向両端部同士を上下連結部材で連結するとともに、該上下連結部材を、その上端部が下端部に対して車幅方向外方にオフセットするように傾斜させたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
エンジンコンパートメントは、その上部両側縁部に車体前後方向に延設されて前記上方バンパー骨格部材を連結する左右一対の上部骨格構造部材と、各上部骨格構造部材の下方に車体前後方向にそれぞれ延設されて前記下方バンパー骨格部材を連結する左右一対の下部骨格構造部材と、車体各側部において前記上部骨格構造部材および前記下部骨格構造部材の各前端同士を連結する前側連結部材と、車体各側部において前記上部骨格構造部材および前記下部骨格構造部材の各後端同士を連結する後側連結部材と、前記上部骨格構造部材および前記下部骨格構造部材の各中間部同士を連結し、車体側視方向から見て前記エンジンコンパートメントの前部および後部にそれぞれ環状骨格構造を構築するジョイント部材と、車体各側部において前記後側連結部材と前記ジョイント部材とを接続する後側サイドメンバと、前記前側連結部材と前記ジョイント部材とを接続する前側サイドメンバと、を備え、前記後側サイドメンバが前記後側連結部材の下方に接続され、前記前側サイドメンバに前方から加わる荷重によって前記後側サイドメンバが下方に移動するように、前記ジョイント部材と前記後側サイドメンバ、および前記ジョイント部材と前記前側サイドメンバがそれぞれ接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記ジョイント部材と前記後側サイドメンバ前端との接合部が、前記ジョイント部材と前記前側サイドメンバの後端との接合部よりも下方に位置されていることを特徴とする請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前側環状骨格構造と後側環状骨格構造とが前後に分割されており、両者を結合させて構成されたものであって、分割時に前記ジョイント部材が前側環状骨格構造に含まれており、結合時に前記ジョイント部材と前記後側サイドメンバ前端とを締結部材を用いて締結させたことを特徴とする請求項2または3に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前側環状骨格構造と後側環状骨格構造とが前後に分割されており、両者を結合させて構成されたものであって、分割時に前記ジョイント部材が後側環状骨格構造に含まれており、結合時に前記ジョイント部材と前記前側サイドメンバ後端とを締結部材を用いて締結させたことを特徴とする請求項2または3に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記後側サイドメンバおよび前記前側サイドメンバが、前記ジョイント部材との接合点にて下方に屈曲するように、該ジョイント部材にそれぞれ接合されていることを特徴とする請求項2に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−68760(P2008−68760A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249661(P2006−249661)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】