車体前部構造
【課題】オフセット衝突した場合に衝撃荷重を良好に吸収することができ、かつ部品数を減らすことができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、平面視略U字状のフロントバンパービーム30を備える。フロントバンパービーム30は、左右のエネルギー吸収部24,25の前端部に架け渡されたバンパービーム直線部44と、バンパービーム直線部44の左右端部から湾曲状に延出された左右の湾曲部45,46と、左右の湾曲部45,46の後端部から車体後方に向けて延出された左右の直線部47,48とがそれぞれ一体にハイドロフォーム成形されている。
【解決手段】車体前部構造10は、平面視略U字状のフロントバンパービーム30を備える。フロントバンパービーム30は、左右のエネルギー吸収部24,25の前端部に架け渡されたバンパービーム直線部44と、バンパービーム直線部44の左右端部から湾曲状に延出された左右の湾曲部45,46と、左右の湾曲部45,46の後端部から車体後方に向けて延出された左右の直線部47,48とがそれぞれ一体にハイドロフォーム成形されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のフロントサイドフレームの外側に左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、ラジエータサポートロアとロアメンバーとの間に、衝撃荷重を吸収する干渉構造部が設けられたものがある。
この干渉構造部は、下部と上部とで段階形状に形成され、上部がラジエータサポートロアに当接状態または近接状態になるように配置されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−137326号公報
【0003】
この車体前部構造によれば、車体前部から車体後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、作用した衝撃荷重はラジエータサポートロアを経て干渉構造部の上部に伝達される。そして、上部に伝達された衝撃荷重は干渉構造部の下部を経てロアメンバーに伝達される。
このように、ラジエータサポートロアに作用した衝撃荷重を干渉構造部の上部および下部を経てロアメンバーに伝達させることで、衝撃荷重を初期段階から吸収することが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車体前部構造は、衝撃荷重を初期段階から吸収するために、ラジエータサポートロアとロアメンバーとの間に干渉構造部を設ける必要があり、部品数が増加するという問題があった。
【0005】
ここで、車両同士が衝突する場合、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突することが考えられる。
この場合、相手車両はラジエータサポートロアの車体幅方向外側(すなわち、干渉構造部の車体幅方向外側)にずれてしまい、衝撃荷重を干渉構造部で吸収することはできない。
【0006】
この対策として、ラジエータサポートロアの車体幅方向外側に新たな干渉構造部を備え、新たな干渉構造部を、オフセット衝突した相手車両に当てることで衝撃荷重を吸収することが考えられる。
しかし、この対策は、ラジエータサポートロアの車体幅方向外側に新たな干渉構造部を備える必要があり、部品数がさらに増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、オフセット衝突した場合に衝撃荷重を良好に吸収することができ、かつ部品数を減らすことができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向いて左右のフロントサイドフレームが設けられ、前記左右のフロントサイドフレームの外側に左右のフロントピラーから車体前方に向けて延びる左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられた車体前部構造において、前記左右のフロントサイドフレームのそれぞれの前端部から車体前方に向けて突出され、衝撃荷重で変形可能な左右のエネルギー吸収部と、前記左右のエネルギー吸収部のそれぞれの前端部に架け渡されるとともに、左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた平面視略U字状のフロントバンパービームと、を備え、前記フロントバンパービームは、前記左右のエネルギー吸収部のそれぞれの前端部に架け渡されたバンパービーム直線部と、前記バンパービーム直線部の左右端部からそれぞれ車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出された左右の湾曲部と、左右の湾曲部のそれぞれの後端部から車体後方に向けて延出されて前記左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた左右の直線部と、がそれぞれ一体にハイドロフォーム成形されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記左右のフロントサイドフレームの前端部間に配置されたラジエータの上部を支持する横梁部と、前記横梁部の左右端部からそれぞれ車体後方に向けて直線状に延出されて前記左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた左右の連結部と、を備え、前記横梁部および前記左右の連結部がそれぞれ一体にハイドロフォーム成形されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、フロントバンパービームは、バンパービーム直線部の左右端部から左右の湾曲部がそれぞれ車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出されている。
よって、バンパービーム直線部の左右端部から左右の湾曲部をそれぞれ車体幅方向外側に向けて張り出させることができる。
これにより、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合に、相手車両に左右の湾曲部を当て、衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0011】
さらに、左右のフロントサイドフレームのそれぞれの前端部から左右のエネルギー吸収部を車体前方に向けて突出し、それぞれの前端部にバンパービーム直線部を架け渡した。
これにより、左右の湾曲部を左右のフロントサイドフレームより車体前側に設けることができるので、衝撃荷重を初期段階から吸収することができる。
【0012】
加えて、フロントバンパービームを一体にハイドロフォーム成形することで、フロントバンパービームを一部材で形成した。
フロントバンパービームを一部材で形成することで、部品数を減らすことができる。
さらに、フロントバンパービームを一部材で形成することで、溶接などによる複数部材の結合部を除去できる。結合部を除去することで、フロントバンパービームの剛性を高めることができる。
このように、フロントバンパービームの部品数を減らすとともに結合部を除去することで、フロントバンパービームの軽量化を図ることができる。
【0013】
ここで、ハイドロフォーム成形とは、金型にパイプをセットした状態で、パイプ内部に液体を充填し、充填した液体圧力を上昇させながら軸方向にパイプを押圧して、パイプを金型に倣わせて成形する工法をいう。
【0014】
請求項2に係る発明では、ラジエータの上部を支持する横梁部と、横梁部の左右端部を左右のホイールハウスアッパーメンバーに連結する左右の連結部とをそれぞれ一体にハイドロフォーム成形した。
このように、横梁部および左右の連結部を一部材とすることで、横梁部および左右の連結部の剛性を高めることができ、軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0016】
図1は本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図、図2は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側部にそれぞれ設けられた左右のフロントサイドフレーム11,12と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aに設けられたフロントバルクヘッド13と、左右のフロントサイドフレーム11,12の外側にそれぞれ設けられた左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15とを備えている。
【0017】
この車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12、左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15およびフロントバルクヘッド13でエンジンルーム16の骨格が形成されている。
【0018】
さらに、車体前部構造10は、左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15からフロントバルクヘッド13の左右端部にそれぞれ延出された左右のアッパメンバー18,19と、左フロントサイドフレーム11および左ホイールハウスアッパーメンバー14間に設けられた左ホイールハウス21と、右フロントサイドフレーム12および右ホイールハウスアッパーメンバー15間に設けられた右ホイールハウス22とを備えている。
【0019】
加えて、車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12のそれぞれの前端部11a,12aから車体前方に向けて突出された左右のエネルギー吸収部24,25と、左右のエネルギー吸収部24,25および左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15に設けられたフロントバンパービーム30とを備えている。
【0020】
左フロントサイドフレーム11は、車体前部方向を向いて車体前部の左側に配置され、後端部が左フロントサイドフレームリヤエンド32を介して左フロアフレーム(図示せず)に連結されたフレーム部材である。
【0021】
右フロントサイドフレーム12は、車体前部方向を向いて車体前部の右側に配置され、後端部が右フロントサイドフレームリヤエンド33を介して右フロアフレーム(図示せず)に連結されたフレーム部材である。
なお、右フロントサイドフレーム12は、左フロントサイドフレーム11と左右対称の部材であり、以下右フロントサイドフレーム12の説明を省略する。
【0022】
フロントバルクヘッド13は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに設けられた左脚部35と、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた右脚部36と、左右の脚部35,36の上端部に架け渡された上横梁部37と、左右の脚部35,36の下端部に架け渡された下横梁部38とを備えている。
【0023】
上横梁部37の左端部(フロントバルクヘッド13の左端部)37aは、左ホイールハウスアッパーメンバー14に左アッパメンバー18を介して連結されている。
上横梁部37の右端部(フロントバルクヘッド13の右端部)37bは、右ホイールハウスアッパーメンバー15に右アッパメンバー19を介して連結されている。
【0024】
左ホイールハウスアッパーメンバー14は、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられ、左フロントピラー41から車両前下方向に向かって延びる部材である。
右ホイールハウスアッパーメンバー15は、右フロントサイドフレーム12の外側に設けられ、右フロントピラー42から車両前下方向に向かって延びる部材である。
なお、右ホイールハウスアッパーメンバー15は、左ホイールハウスアッパーメンバー14と左右対称の部材であり、以下右ホイールハウスアッパーメンバー15の説明を省略する。
【0025】
左エネルギー吸収部24は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aから車体前方に向けて突出され、衝撃荷重で変形可能な部材である。
右エネルギー吸収部25は、右フロントサイドフレーム12の前端部12aから車体前方に向けて突出され、衝撃荷重で変形可能な部材である。
【0026】
フロントバンパービーム30は、左エネルギー吸収部24の前端部24aおよび右エネルギー吸収部25の前端部25aに架け渡され、左後端部(左直線部47)が左ホイールハウスアッパーメンバー14に設けられ、右後端部(右直線部48)が右ホイールハウスアッパーメンバー15に設けられた平面視略U字状の部材である。
【0027】
図3は第1実施の形態に係る車体前部構造のフロントバンパービームを示す斜視図、図4(a)は第1実施の形態に係るフロントバンパービームのバンパービーム直線部を示す断面図、図4(b)は従来のフロントバンパービームを比較例として示す断面図、図5(a),(b)は第1実施の形態に係るフロントバンパービームの左右の湾曲部を示す断面図である。
図3に示すように、フロントバンパービーム30は、バンパービーム直線部44、左右の湾曲部45,46、および左右の直線部47,48を有し、それぞれが一体にハイドロフォーム成形されている。
【0028】
具体的には、フロントバンパービーム30の素材となるパイプの内部に液体を充填し、充填した液体圧力を上昇させながらパイプの軸方向にパイプを押圧して、パイプを金型に倣わせてフロントバンパービーム30(すなわち、バンパービーム直線部44、左右の湾曲部45,46、および左右の直線部47,48)が一体に成形されている。
【0029】
バンパービーム直線部44は、左エネルギー吸収部24の前端部24aおよび右エネルギー吸収部25の前端部25aに架け渡された直線状の梁部位である。
図4(a)に示すように、フロントバンパービーム30は、中空のパイプがハイドロフォーム成形で略矩形状の中空閉断面に形成されている。よって、バンパービーム直線部44は、前後の壁部44c,44dおよび上下の壁部44e,44fが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されている。
なお、バンパービーム直線部44は、高さ寸法がL1、幅寸法がL2に形成されている。そして、高さ寸法L1および幅寸法L2は、略同じ大きさに形成されている。
【0030】
これに対して、図4(b)に示す比較例のバンパービーム100は、断面略ハット状にプレス成形した部材101に板材102を重ね合わせられている。
このバンパービーム100は、ハット部材101の上下の辺101a,101bが板材102の上下の辺102a,102bにそれぞれスポット溶接で結合することで略矩形状の中空閉断面が形成されている。
図4(a)に戻って、バンパービーム直線部44は、スポット溶接で結合する部位を除去できるので、バンパービーム直線部44の剛性を高めることができる。
【0031】
図3に示す左湾曲部45は、バンパービーム直線部44の左端部44aから車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出された部位である。
この左湾曲部45は、図5(a)に示すように、前後の壁部45c,45dおよび上下の壁部45e,45fが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
【0032】
右湾曲部46は、バンパービーム直線部44の右端部44bから車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出された部位である。
この右湾曲部46は、図5(a)に示すように、前後の壁部46c,46dおよび上下の壁部46e,46fが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
【0033】
ここで、左右の湾曲部45,46は、図5(a)に示すように、高さ寸法L1、幅寸法L3に断面形状が形成されている。幅寸法L3は、高さ寸法L1より小さい。
よって、フロントバンパービーム30に車体前方から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、左右の湾曲部45,46を矢印方向(車幅方向)に積極的に変形させることができる。
【0034】
このように、フロントバンパービーム30を中空のパイプからハイドロフォーム成形することで、左右の湾曲部45,46の断面形状を他の部位の断面形状に対して変えることが可能になる。
これにより、フロントバンパービーム30の変形状態を車両に応じて任意に調整することができる。
【0035】
図5(a)の変形例として、図5(b)に示すように、左右の湾曲部45,46の断面形状を高さ寸法L4、幅寸法L2に形成して、高さ寸法L4を幅寸法L2より小さくすることも可能である。
この場合、フロントバンパービーム30に車体前方から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、左右の湾曲部45,46を矢印方向(上下方向)に積極的に変形させることができる。
【0036】
左直線部47は、左湾曲部45の後端部45aから車体後方に向けて延出されて左ホイールハウスアッパーメンバー14にボルト51…(図2参照)で取り付けられた部位である。
この左直線部47は、図4(a)に示すバンパービーム直線部44と同様に、前後の壁部および上下の壁部が一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
【0037】
右直線部48は、右湾曲部46の後端部46aから車体後方に向けて延出されて右ホイールハウスアッパーメンバー15にボルト52…(図2参照)で取り付けられた部位である。
この右直線部48は、図4(a)に示すバンパービーム直線部44と同様に、前後の壁部および上下の壁部が一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
【0038】
このように、フロントバンパービーム30を中空のパイプからハイドロフォーム成形で形成することで、バンパービーム直線部44、左右の湾曲部45,46、および左右の直線部47,48が一部材で形成されるとともに、それぞれの部位44〜48が略矩形状の中空閉断面に一部材で形成されている。
【0039】
フロントバンパービーム30を一部材で形成することで、部品数を減らすことができる。
さらに、フロントバンパービーム30を一部材で形成することで、溶接などによる複数部材の結合部を除去できる。結合部を除去することで、フロントバンパービーム30の剛性を高めることができる。
このように、フロントバンパービーム30の部品数を減らすとともに結合部を除去することで、フロントバンパービーム30の軽量化を図ることができる。
【0040】
図6は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図、図7は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す底面図である。
フロントバンパービーム30は、バンパービーム直線部44の左端部44aから左湾曲部45が車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出され、かつバンパービーム直線部44の右端部44bから右湾曲部46が車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出されている。
よって、バンパービーム直線部44の左右端部44a,44bから左右の湾曲部45,46をそれぞれ車体幅方向外側に向けて幅W1だけ張り出させることができる。
【0041】
さらに、左フロントサイドフレーム11の前端部11aから左エネルギー吸収部24が車体前方に向けて突出されている。
同様に、右フロントサイドフレーム12の前端部12aから右エネルギー吸収部25が車体前方に向けて突出されている。
そして、左右のエネルギー吸収部24,25のそれぞれの前端部24a,25aにバンパービーム直線部44が架け渡されている。
【0042】
よって、バンパービーム直線部44を、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けることができる。
さらに、左右の湾曲部45,46の前部位45b,46bを左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けることができる。
【0043】
加えて、バンパービーム直線部44および左右の湾曲部45,46の前部位45b,46bを左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けることで、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみの変形範囲Hを確保することができる。
よって、軽衝突の場合には、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみの変形で衝撃荷重を吸収することが可能である。
【0044】
つぎに、フロントバンパービーム30に相手車両がオフセット衝突した場合を図8に基づいて説明する。
図8は第1実施の形態に係る左衝撃支え部材に相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
フロントバンパービーム30は、バンパービーム直線部44の左右端部44a,44bから左右の湾曲部45,46がそれぞれ車体幅方向外側に向けて幅W1だけ張り出されている。
【0045】
これにより、例えば、相手車両55が左側にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両55に左湾曲部45を確実に当てることができる。
このように、相手車両55に左湾曲部45を確実に当てることで衝撃荷重Fを好適に吸収することができる。
【0046】
さらに、フロントバンパービーム30のバンパービーム直線部44が左右のエネルギー吸収部24,25の前端部24a,25aに架け渡され、バンパービーム直線部44および左右の湾曲部45,46の前部45b,46bが左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けられている。
これにより、例えば、相手車両55が左側にずれてオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を初期段階から吸収することができる。
【0047】
加えて、バンパービーム直線部44および左右の湾曲部45,46の前部45b,46bを左右のフロントサイドフレーム11,12より車体前側に設けることで、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみの変形範囲Hを確保した。
【0048】
よって、例えば、相手車両55が左側にずれてオフセット衝突(軽衝突)した場合に、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみの変形で衝撃荷重を吸収することができる。
これにより、軽衝突後に、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみを交換するだけでよいので修理を簡単におこなうことができる。
【0049】
ここで、フロントバンパービーム30の左右の直線部47,48は、左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15にそれぞれボルト51…,52…で取り付けられている。
よって、ボルト51…,52…を外すだけの作業でフロントバンパービーム30を簡単に交換することができる。
【0050】
つぎに、第2の実施の形態の車体前部構造60を図9〜図13に基づいて説明する。なお、第2実施の形態の車体前部構造60において第1実施の形態の構成部材と同一類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
図9は本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)を示す斜視図、図10は第2実施の形態に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
車体前部構造60は、フロントバルクヘッド13の上横梁部37および左右のアッパメンバー18,19(図1参照)を一体に形成したフロントアッパビーム62を備え、このフロントアッパビーム62をフロントバンパービーム30に結合したもので、その他の構成は第1実施の形態の車体前部構造10と略同じ構成である。
【0051】
フロントアッパビーム62は、上横梁部(横梁部)63、左連結部64および右連結部65を有し、それぞれが平面視略U字状になるように一体にハイドロフォーム成形されている。
【0052】
具体的には、フロントアッパビーム62の素材となるパイプの内部に液体を充填し、充填した液体圧力を上昇させながらパイプの軸方向にパイプを押圧して、パイプを金型に倣わせてフロントアッパビーム62(すなわち、上横梁部63および左右の連結部64,65)が一体に成形されている。
【0053】
上横梁部63は、ラジエータ61の上部に沿って設けられ、ラジエータ61の上部に連結されている。よって、上横梁部63でラジエータ61の上部を支えることができる。
上横梁部63は、中空のパイプがハイドロフォーム成形で略矩形状の中空閉断面に一部材で形成されている。
ラジエータ61は、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12a間に配置されている。
【0054】
左連結部64は、上横梁部63の左端部63aから車体後方かつ車体幅方向外側に向けて傾斜状に直線に延出され、後端部64aがフロントバンパービーム30の後端部(左直線部47)に設けられている(溶接されている)。
左連結部64は、中空のパイプがハイドロフォーム成形で略矩形状の中空閉断面に一部材で形成されている。
【0055】
右連結部65は、左連結部64と同様に、上横梁部63の右端部63bから車体後方かつ車体幅方向外側に向けて傾斜状に直線に延出され、後端部65aがフロントバンパービーム30の後端部(右直線部48)に設けられている(溶接されている)。
右連結部65は、中空のパイプがハイドロフォーム成形で略矩形状の中空閉断面に一部材で形成されている。
【0056】
図11は第2実施の形態に係るフロントアッパビームの上横梁部を示す断面図である。
図11に示すように、フロントアッパビーム62は、中空のパイプがハイドロフォーム成形で略矩形状の中空閉断面に形成されている。
よって、上横梁部63は、前後の壁部63c,63dおよび上下の壁部63e,63fが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されている。
なお、上横梁部63は、高さ寸法がL5、幅寸法がL6に形成されている。そして、高さ寸法L5および幅寸法L6は、略同じ大きさに形成されている。
【0057】
図12(a),(b)は第2実施の形態に係るフロントアッパビームの左右の連結部を示す断面図である。
左連結部64は、図12(a)に示すように、前後の壁部64b,64cおよび上下の壁部64d,64eが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
この左連結部64は、高さ寸法L5、幅寸法L7に断面形状が形成されている。幅寸法L7は、高さ寸法L5より小さい。
【0058】
また、右連結部65は、左連結部64と左右対称の部材であり、図12(a)に示すように、前後の壁部65b,65cおよび上下の壁部65d,65eが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
右連結部65は、高さ寸法L5、幅寸法L7に断面形状が形成されている。
【0059】
このように、フロントアッパビーム62を中空のパイプからハイドロフォーム成形することで、左右の連結部64,65の断面形状を上横梁部63の断面形状に対して変えることが可能になる。
よって、フロントアッパビーム62に車体前方から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、左右の連結部64,65を図12(a)に示す矢印方向(車幅方向)に積極的に変形させることができる。
さらに、左右の連結部64,65の断面形状を上横梁部63の断面形状に対して変えることで、フロントアッパビーム62の変形状態を車両に応じて任意に調整することができる。
【0060】
図12(a)の変形例として、図12(b)に示すように、左右の連結部64,65を高さ寸法L8、幅寸法L6に断面形状を形成して、高さ寸法L8を幅寸法L6より小さくすることも可能である。
この場合、フロントアッパビーム62に車体前方から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、左右の連結部64,65を矢印方向(上下方向)に積極的に変形させることができる。
【0061】
図9、図10に戻って、フロントアッパビーム62を中空のパイプからハイドロフォーム成形で形成することで、上横梁部63および左右の連結部64,65が一部材で形成されるとともに、それぞれの部位63〜65が略矩形状の中空閉断面に一部材で形成されている。
【0062】
フロントアッパビーム62を一部材で形成することで、部品数を減らすことができる。
さらに、フロントアッパビーム62を一部材で形成することで、溶接などによる複数部材の結合部を除去できる。結合部を除去することで、フロントアッパビーム62の剛性を高めることができる。
このように、フロントアッパビーム62の部品数を減らすとともに結合部を除去することで、フロントアッパビーム62の軽量化を図ることができる。
【0063】
また、フロントアッパビーム62は、左連結部64の後端部64aがフロントバンパービーム30の後端部(左直線部47)に設けられている(溶接されている)。溶接された部材64a,47が左ホイールハウスアッパーメンバー14にボルト67…で取り付けられている。
同様に、右連結部65の後端部65aがフロントバンパービーム30の後端部(右直線部48)に設けられている(溶接されている)。溶接された部材65a,48が右ホイールハウスアッパーメンバー15にボルト68…で取り付けられている。
【0064】
左連結部64の後端部64aがフロントバンパービーム30の左直線部47に溶接され、右連結部65の後端部65aがフロントバンパービーム30の右直線部48溶接されることで、フロントアッパビーム62をフロントバンパービーム30に強固に取り付けることができる。
加えて、フロントアッパビーム62の上横梁部63をラジエータ61の上部に連結されている。
これにより、図1に示すフロントバルクヘッド13から左右の脚部35,36を除去することが可能になり、軽量化を一層図ることができる。
【0065】
図13は第2実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図である。
第1実施の形態で説明したように、フロントバンパービーム30は、バンパービーム直線部44の左右端部44a,44bから左右の湾曲部45,46がそれぞれ車体幅方向外側に向けて幅W1だけ張り出されている。
これにより、例えば、相手車両55(図8参照)が左側にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両55に左湾曲部45を確実に当て、衝撃荷重を好適に吸収することができる。
【0066】
さらに、フロントバンパービーム30は、図7に示すように、バンパービーム直線部44が、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けられている。
さらに、左右の湾曲部45,46の前部位45b,46bが左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けられている。
これにより、例えば、相手車両55(図8参照)が左側にずれてオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を初期段階から吸収することができる。
【0067】
加えて、フロントバンパービーム30は、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25(図7参照)のみの変形範囲Hが確保されている。
よって、軽衝突の場合には、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみの変形で衝撃荷重を吸収することが可能である。
これにより、軽衝突後に、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみを交換するだけでよいので修理を簡単におこなうことができる。
【0068】
すなわち、第2実施の形態の車体前部構造60によれば、第1実施の形態の車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。
【0069】
加えて、第2実施の形態の車体前部構造60によれば、ラジエータ61(図9参照)の上部を支持する上横梁部63と、上横梁部63の左端部63aを左ホイールハウスアッパーメンバー14に連結する左連結部64と、上横梁部63の右端部63bを右ホイールハウスアッパーメンバー15に連結する右連結部65との3部位をそれぞれ一体にハイドロフォーム成形した。
【0070】
このように、上横梁部63および左右の連結部64,65を一部材とすることで、上横梁部63および左右の連結部64,65の剛性を高めることができ、軽量化を図ることができる。
【0071】
なお、前記第1実施の形態で例示した左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15にフロントバンパービーム30を取り付けるボルト51…,52…の取付位置や使用本数は適宜変更が可能である。
同様に、前記第2実施の形態で例示した左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15にフロントバンパービーム30およびフロントアッパビーム62を取り付けるボルト67…,68…の取付位置や使用本数は適宜変更が可能である。
【0072】
また、前記第1、第2の実施の形態で例示したフロントバンパービーム30およびフロントアッパビーム62の形状は車両に応じて適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の車体前部構造は、左右のフロントサイドフレームの外側に左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係る車体前部構造のフロントバンパービームを示す斜視図である。
【図4】(a)は第1実施の形態に係るフロントバンパービームのバンパービーム直線部を示す断面図、(b)は従来のフロントバンパービームを比較例として示す断面図である。
【図5】第1実施の形態に係るフロントバンパービームの左右の湾曲部を示す断面図である。
【図6】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図である。
【図7】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す底面図である。
【図8】第1実施の形態に係る左衝撃支え部材に相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
【図9】本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)を示す斜視図である。
【図10】第2実施の形態に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
【図11】第2実施の形態に係るフロントアッパビームの上横梁部を示す断面図である。
【図12】第2実施の形態に係るフロントアッパビームの左右の連結部を示す断面図である。
【図13】第2実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図である。
【符号の説明】
【0075】
10,60…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム、11a…左フロントサイドフレームの前端部、12…右フロントサイドフレーム、12a…右フロントサイドフレームの前端部、14…左ホイールハウスアッパーメンバー、15…右ホイールハウスアッパーメンバー、24…左エネルギー吸収部、24a…左エネルギー吸収部の前端部、25…右エネルギー吸収部、25a…右エネルギー吸収部の前端部、30…フロントバンパービーム、41…左フロントピラー、42…右フロントピラー、44…バンパービーム直線部、44a…バンパービーム直線部の左端部、44b…バンパービーム直線部の右端部、45…左湾曲部、45a…左湾曲部の後端部、46…右湾曲部、46a…右湾曲部の後端部、47…左直線部、48…右直線部、61…ラジエータ、62…フロントアッパビーム、63…上横梁部(横梁部)、63a…上横梁部の左端部、63b…上横梁部の右端部、64…左連結部、65…右連結部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のフロントサイドフレームの外側に左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、ラジエータサポートロアとロアメンバーとの間に、衝撃荷重を吸収する干渉構造部が設けられたものがある。
この干渉構造部は、下部と上部とで段階形状に形成され、上部がラジエータサポートロアに当接状態または近接状態になるように配置されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−137326号公報
【0003】
この車体前部構造によれば、車体前部から車体後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、作用した衝撃荷重はラジエータサポートロアを経て干渉構造部の上部に伝達される。そして、上部に伝達された衝撃荷重は干渉構造部の下部を経てロアメンバーに伝達される。
このように、ラジエータサポートロアに作用した衝撃荷重を干渉構造部の上部および下部を経てロアメンバーに伝達させることで、衝撃荷重を初期段階から吸収することが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車体前部構造は、衝撃荷重を初期段階から吸収するために、ラジエータサポートロアとロアメンバーとの間に干渉構造部を設ける必要があり、部品数が増加するという問題があった。
【0005】
ここで、車両同士が衝突する場合、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突することが考えられる。
この場合、相手車両はラジエータサポートロアの車体幅方向外側(すなわち、干渉構造部の車体幅方向外側)にずれてしまい、衝撃荷重を干渉構造部で吸収することはできない。
【0006】
この対策として、ラジエータサポートロアの車体幅方向外側に新たな干渉構造部を備え、新たな干渉構造部を、オフセット衝突した相手車両に当てることで衝撃荷重を吸収することが考えられる。
しかし、この対策は、ラジエータサポートロアの車体幅方向外側に新たな干渉構造部を備える必要があり、部品数がさらに増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、オフセット衝突した場合に衝撃荷重を良好に吸収することができ、かつ部品数を減らすことができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向いて左右のフロントサイドフレームが設けられ、前記左右のフロントサイドフレームの外側に左右のフロントピラーから車体前方に向けて延びる左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられた車体前部構造において、前記左右のフロントサイドフレームのそれぞれの前端部から車体前方に向けて突出され、衝撃荷重で変形可能な左右のエネルギー吸収部と、前記左右のエネルギー吸収部のそれぞれの前端部に架け渡されるとともに、左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた平面視略U字状のフロントバンパービームと、を備え、前記フロントバンパービームは、前記左右のエネルギー吸収部のそれぞれの前端部に架け渡されたバンパービーム直線部と、前記バンパービーム直線部の左右端部からそれぞれ車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出された左右の湾曲部と、左右の湾曲部のそれぞれの後端部から車体後方に向けて延出されて前記左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた左右の直線部と、がそれぞれ一体にハイドロフォーム成形されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記左右のフロントサイドフレームの前端部間に配置されたラジエータの上部を支持する横梁部と、前記横梁部の左右端部からそれぞれ車体後方に向けて直線状に延出されて前記左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた左右の連結部と、を備え、前記横梁部および前記左右の連結部がそれぞれ一体にハイドロフォーム成形されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、フロントバンパービームは、バンパービーム直線部の左右端部から左右の湾曲部がそれぞれ車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出されている。
よって、バンパービーム直線部の左右端部から左右の湾曲部をそれぞれ車体幅方向外側に向けて張り出させることができる。
これにより、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合に、相手車両に左右の湾曲部を当て、衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0011】
さらに、左右のフロントサイドフレームのそれぞれの前端部から左右のエネルギー吸収部を車体前方に向けて突出し、それぞれの前端部にバンパービーム直線部を架け渡した。
これにより、左右の湾曲部を左右のフロントサイドフレームより車体前側に設けることができるので、衝撃荷重を初期段階から吸収することができる。
【0012】
加えて、フロントバンパービームを一体にハイドロフォーム成形することで、フロントバンパービームを一部材で形成した。
フロントバンパービームを一部材で形成することで、部品数を減らすことができる。
さらに、フロントバンパービームを一部材で形成することで、溶接などによる複数部材の結合部を除去できる。結合部を除去することで、フロントバンパービームの剛性を高めることができる。
このように、フロントバンパービームの部品数を減らすとともに結合部を除去することで、フロントバンパービームの軽量化を図ることができる。
【0013】
ここで、ハイドロフォーム成形とは、金型にパイプをセットした状態で、パイプ内部に液体を充填し、充填した液体圧力を上昇させながら軸方向にパイプを押圧して、パイプを金型に倣わせて成形する工法をいう。
【0014】
請求項2に係る発明では、ラジエータの上部を支持する横梁部と、横梁部の左右端部を左右のホイールハウスアッパーメンバーに連結する左右の連結部とをそれぞれ一体にハイドロフォーム成形した。
このように、横梁部および左右の連結部を一部材とすることで、横梁部および左右の連結部の剛性を高めることができ、軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0016】
図1は本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図、図2は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側部にそれぞれ設けられた左右のフロントサイドフレーム11,12と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aに設けられたフロントバルクヘッド13と、左右のフロントサイドフレーム11,12の外側にそれぞれ設けられた左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15とを備えている。
【0017】
この車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12、左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15およびフロントバルクヘッド13でエンジンルーム16の骨格が形成されている。
【0018】
さらに、車体前部構造10は、左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15からフロントバルクヘッド13の左右端部にそれぞれ延出された左右のアッパメンバー18,19と、左フロントサイドフレーム11および左ホイールハウスアッパーメンバー14間に設けられた左ホイールハウス21と、右フロントサイドフレーム12および右ホイールハウスアッパーメンバー15間に設けられた右ホイールハウス22とを備えている。
【0019】
加えて、車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12のそれぞれの前端部11a,12aから車体前方に向けて突出された左右のエネルギー吸収部24,25と、左右のエネルギー吸収部24,25および左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15に設けられたフロントバンパービーム30とを備えている。
【0020】
左フロントサイドフレーム11は、車体前部方向を向いて車体前部の左側に配置され、後端部が左フロントサイドフレームリヤエンド32を介して左フロアフレーム(図示せず)に連結されたフレーム部材である。
【0021】
右フロントサイドフレーム12は、車体前部方向を向いて車体前部の右側に配置され、後端部が右フロントサイドフレームリヤエンド33を介して右フロアフレーム(図示せず)に連結されたフレーム部材である。
なお、右フロントサイドフレーム12は、左フロントサイドフレーム11と左右対称の部材であり、以下右フロントサイドフレーム12の説明を省略する。
【0022】
フロントバルクヘッド13は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに設けられた左脚部35と、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた右脚部36と、左右の脚部35,36の上端部に架け渡された上横梁部37と、左右の脚部35,36の下端部に架け渡された下横梁部38とを備えている。
【0023】
上横梁部37の左端部(フロントバルクヘッド13の左端部)37aは、左ホイールハウスアッパーメンバー14に左アッパメンバー18を介して連結されている。
上横梁部37の右端部(フロントバルクヘッド13の右端部)37bは、右ホイールハウスアッパーメンバー15に右アッパメンバー19を介して連結されている。
【0024】
左ホイールハウスアッパーメンバー14は、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられ、左フロントピラー41から車両前下方向に向かって延びる部材である。
右ホイールハウスアッパーメンバー15は、右フロントサイドフレーム12の外側に設けられ、右フロントピラー42から車両前下方向に向かって延びる部材である。
なお、右ホイールハウスアッパーメンバー15は、左ホイールハウスアッパーメンバー14と左右対称の部材であり、以下右ホイールハウスアッパーメンバー15の説明を省略する。
【0025】
左エネルギー吸収部24は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aから車体前方に向けて突出され、衝撃荷重で変形可能な部材である。
右エネルギー吸収部25は、右フロントサイドフレーム12の前端部12aから車体前方に向けて突出され、衝撃荷重で変形可能な部材である。
【0026】
フロントバンパービーム30は、左エネルギー吸収部24の前端部24aおよび右エネルギー吸収部25の前端部25aに架け渡され、左後端部(左直線部47)が左ホイールハウスアッパーメンバー14に設けられ、右後端部(右直線部48)が右ホイールハウスアッパーメンバー15に設けられた平面視略U字状の部材である。
【0027】
図3は第1実施の形態に係る車体前部構造のフロントバンパービームを示す斜視図、図4(a)は第1実施の形態に係るフロントバンパービームのバンパービーム直線部を示す断面図、図4(b)は従来のフロントバンパービームを比較例として示す断面図、図5(a),(b)は第1実施の形態に係るフロントバンパービームの左右の湾曲部を示す断面図である。
図3に示すように、フロントバンパービーム30は、バンパービーム直線部44、左右の湾曲部45,46、および左右の直線部47,48を有し、それぞれが一体にハイドロフォーム成形されている。
【0028】
具体的には、フロントバンパービーム30の素材となるパイプの内部に液体を充填し、充填した液体圧力を上昇させながらパイプの軸方向にパイプを押圧して、パイプを金型に倣わせてフロントバンパービーム30(すなわち、バンパービーム直線部44、左右の湾曲部45,46、および左右の直線部47,48)が一体に成形されている。
【0029】
バンパービーム直線部44は、左エネルギー吸収部24の前端部24aおよび右エネルギー吸収部25の前端部25aに架け渡された直線状の梁部位である。
図4(a)に示すように、フロントバンパービーム30は、中空のパイプがハイドロフォーム成形で略矩形状の中空閉断面に形成されている。よって、バンパービーム直線部44は、前後の壁部44c,44dおよび上下の壁部44e,44fが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されている。
なお、バンパービーム直線部44は、高さ寸法がL1、幅寸法がL2に形成されている。そして、高さ寸法L1および幅寸法L2は、略同じ大きさに形成されている。
【0030】
これに対して、図4(b)に示す比較例のバンパービーム100は、断面略ハット状にプレス成形した部材101に板材102を重ね合わせられている。
このバンパービーム100は、ハット部材101の上下の辺101a,101bが板材102の上下の辺102a,102bにそれぞれスポット溶接で結合することで略矩形状の中空閉断面が形成されている。
図4(a)に戻って、バンパービーム直線部44は、スポット溶接で結合する部位を除去できるので、バンパービーム直線部44の剛性を高めることができる。
【0031】
図3に示す左湾曲部45は、バンパービーム直線部44の左端部44aから車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出された部位である。
この左湾曲部45は、図5(a)に示すように、前後の壁部45c,45dおよび上下の壁部45e,45fが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
【0032】
右湾曲部46は、バンパービーム直線部44の右端部44bから車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出された部位である。
この右湾曲部46は、図5(a)に示すように、前後の壁部46c,46dおよび上下の壁部46e,46fが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
【0033】
ここで、左右の湾曲部45,46は、図5(a)に示すように、高さ寸法L1、幅寸法L3に断面形状が形成されている。幅寸法L3は、高さ寸法L1より小さい。
よって、フロントバンパービーム30に車体前方から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、左右の湾曲部45,46を矢印方向(車幅方向)に積極的に変形させることができる。
【0034】
このように、フロントバンパービーム30を中空のパイプからハイドロフォーム成形することで、左右の湾曲部45,46の断面形状を他の部位の断面形状に対して変えることが可能になる。
これにより、フロントバンパービーム30の変形状態を車両に応じて任意に調整することができる。
【0035】
図5(a)の変形例として、図5(b)に示すように、左右の湾曲部45,46の断面形状を高さ寸法L4、幅寸法L2に形成して、高さ寸法L4を幅寸法L2より小さくすることも可能である。
この場合、フロントバンパービーム30に車体前方から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、左右の湾曲部45,46を矢印方向(上下方向)に積極的に変形させることができる。
【0036】
左直線部47は、左湾曲部45の後端部45aから車体後方に向けて延出されて左ホイールハウスアッパーメンバー14にボルト51…(図2参照)で取り付けられた部位である。
この左直線部47は、図4(a)に示すバンパービーム直線部44と同様に、前後の壁部および上下の壁部が一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
【0037】
右直線部48は、右湾曲部46の後端部46aから車体後方に向けて延出されて右ホイールハウスアッパーメンバー15にボルト52…(図2参照)で取り付けられた部位である。
この右直線部48は、図4(a)に示すバンパービーム直線部44と同様に、前後の壁部および上下の壁部が一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
【0038】
このように、フロントバンパービーム30を中空のパイプからハイドロフォーム成形で形成することで、バンパービーム直線部44、左右の湾曲部45,46、および左右の直線部47,48が一部材で形成されるとともに、それぞれの部位44〜48が略矩形状の中空閉断面に一部材で形成されている。
【0039】
フロントバンパービーム30を一部材で形成することで、部品数を減らすことができる。
さらに、フロントバンパービーム30を一部材で形成することで、溶接などによる複数部材の結合部を除去できる。結合部を除去することで、フロントバンパービーム30の剛性を高めることができる。
このように、フロントバンパービーム30の部品数を減らすとともに結合部を除去することで、フロントバンパービーム30の軽量化を図ることができる。
【0040】
図6は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図、図7は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す底面図である。
フロントバンパービーム30は、バンパービーム直線部44の左端部44aから左湾曲部45が車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出され、かつバンパービーム直線部44の右端部44bから右湾曲部46が車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出されている。
よって、バンパービーム直線部44の左右端部44a,44bから左右の湾曲部45,46をそれぞれ車体幅方向外側に向けて幅W1だけ張り出させることができる。
【0041】
さらに、左フロントサイドフレーム11の前端部11aから左エネルギー吸収部24が車体前方に向けて突出されている。
同様に、右フロントサイドフレーム12の前端部12aから右エネルギー吸収部25が車体前方に向けて突出されている。
そして、左右のエネルギー吸収部24,25のそれぞれの前端部24a,25aにバンパービーム直線部44が架け渡されている。
【0042】
よって、バンパービーム直線部44を、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けることができる。
さらに、左右の湾曲部45,46の前部位45b,46bを左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けることができる。
【0043】
加えて、バンパービーム直線部44および左右の湾曲部45,46の前部位45b,46bを左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けることで、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみの変形範囲Hを確保することができる。
よって、軽衝突の場合には、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみの変形で衝撃荷重を吸収することが可能である。
【0044】
つぎに、フロントバンパービーム30に相手車両がオフセット衝突した場合を図8に基づいて説明する。
図8は第1実施の形態に係る左衝撃支え部材に相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
フロントバンパービーム30は、バンパービーム直線部44の左右端部44a,44bから左右の湾曲部45,46がそれぞれ車体幅方向外側に向けて幅W1だけ張り出されている。
【0045】
これにより、例えば、相手車両55が左側にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両55に左湾曲部45を確実に当てることができる。
このように、相手車両55に左湾曲部45を確実に当てることで衝撃荷重Fを好適に吸収することができる。
【0046】
さらに、フロントバンパービーム30のバンパービーム直線部44が左右のエネルギー吸収部24,25の前端部24a,25aに架け渡され、バンパービーム直線部44および左右の湾曲部45,46の前部45b,46bが左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けられている。
これにより、例えば、相手車両55が左側にずれてオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を初期段階から吸収することができる。
【0047】
加えて、バンパービーム直線部44および左右の湾曲部45,46の前部45b,46bを左右のフロントサイドフレーム11,12より車体前側に設けることで、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみの変形範囲Hを確保した。
【0048】
よって、例えば、相手車両55が左側にずれてオフセット衝突(軽衝突)した場合に、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみの変形で衝撃荷重を吸収することができる。
これにより、軽衝突後に、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみを交換するだけでよいので修理を簡単におこなうことができる。
【0049】
ここで、フロントバンパービーム30の左右の直線部47,48は、左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15にそれぞれボルト51…,52…で取り付けられている。
よって、ボルト51…,52…を外すだけの作業でフロントバンパービーム30を簡単に交換することができる。
【0050】
つぎに、第2の実施の形態の車体前部構造60を図9〜図13に基づいて説明する。なお、第2実施の形態の車体前部構造60において第1実施の形態の構成部材と同一類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
図9は本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)を示す斜視図、図10は第2実施の形態に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
車体前部構造60は、フロントバルクヘッド13の上横梁部37および左右のアッパメンバー18,19(図1参照)を一体に形成したフロントアッパビーム62を備え、このフロントアッパビーム62をフロントバンパービーム30に結合したもので、その他の構成は第1実施の形態の車体前部構造10と略同じ構成である。
【0051】
フロントアッパビーム62は、上横梁部(横梁部)63、左連結部64および右連結部65を有し、それぞれが平面視略U字状になるように一体にハイドロフォーム成形されている。
【0052】
具体的には、フロントアッパビーム62の素材となるパイプの内部に液体を充填し、充填した液体圧力を上昇させながらパイプの軸方向にパイプを押圧して、パイプを金型に倣わせてフロントアッパビーム62(すなわち、上横梁部63および左右の連結部64,65)が一体に成形されている。
【0053】
上横梁部63は、ラジエータ61の上部に沿って設けられ、ラジエータ61の上部に連結されている。よって、上横梁部63でラジエータ61の上部を支えることができる。
上横梁部63は、中空のパイプがハイドロフォーム成形で略矩形状の中空閉断面に一部材で形成されている。
ラジエータ61は、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12a間に配置されている。
【0054】
左連結部64は、上横梁部63の左端部63aから車体後方かつ車体幅方向外側に向けて傾斜状に直線に延出され、後端部64aがフロントバンパービーム30の後端部(左直線部47)に設けられている(溶接されている)。
左連結部64は、中空のパイプがハイドロフォーム成形で略矩形状の中空閉断面に一部材で形成されている。
【0055】
右連結部65は、左連結部64と同様に、上横梁部63の右端部63bから車体後方かつ車体幅方向外側に向けて傾斜状に直線に延出され、後端部65aがフロントバンパービーム30の後端部(右直線部48)に設けられている(溶接されている)。
右連結部65は、中空のパイプがハイドロフォーム成形で略矩形状の中空閉断面に一部材で形成されている。
【0056】
図11は第2実施の形態に係るフロントアッパビームの上横梁部を示す断面図である。
図11に示すように、フロントアッパビーム62は、中空のパイプがハイドロフォーム成形で略矩形状の中空閉断面に形成されている。
よって、上横梁部63は、前後の壁部63c,63dおよび上下の壁部63e,63fが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されている。
なお、上横梁部63は、高さ寸法がL5、幅寸法がL6に形成されている。そして、高さ寸法L5および幅寸法L6は、略同じ大きさに形成されている。
【0057】
図12(a),(b)は第2実施の形態に係るフロントアッパビームの左右の連結部を示す断面図である。
左連結部64は、図12(a)に示すように、前後の壁部64b,64cおよび上下の壁部64d,64eが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
この左連結部64は、高さ寸法L5、幅寸法L7に断面形状が形成されている。幅寸法L7は、高さ寸法L5より小さい。
【0058】
また、右連結部65は、左連結部64と左右対称の部材であり、図12(a)に示すように、前後の壁部65b,65cおよび上下の壁部65d,65eが一部材で略矩形状の中空閉断面に形成されているので剛性を高めることができる。
右連結部65は、高さ寸法L5、幅寸法L7に断面形状が形成されている。
【0059】
このように、フロントアッパビーム62を中空のパイプからハイドロフォーム成形することで、左右の連結部64,65の断面形状を上横梁部63の断面形状に対して変えることが可能になる。
よって、フロントアッパビーム62に車体前方から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、左右の連結部64,65を図12(a)に示す矢印方向(車幅方向)に積極的に変形させることができる。
さらに、左右の連結部64,65の断面形状を上横梁部63の断面形状に対して変えることで、フロントアッパビーム62の変形状態を車両に応じて任意に調整することができる。
【0060】
図12(a)の変形例として、図12(b)に示すように、左右の連結部64,65を高さ寸法L8、幅寸法L6に断面形状を形成して、高さ寸法L8を幅寸法L6より小さくすることも可能である。
この場合、フロントアッパビーム62に車体前方から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、左右の連結部64,65を矢印方向(上下方向)に積極的に変形させることができる。
【0061】
図9、図10に戻って、フロントアッパビーム62を中空のパイプからハイドロフォーム成形で形成することで、上横梁部63および左右の連結部64,65が一部材で形成されるとともに、それぞれの部位63〜65が略矩形状の中空閉断面に一部材で形成されている。
【0062】
フロントアッパビーム62を一部材で形成することで、部品数を減らすことができる。
さらに、フロントアッパビーム62を一部材で形成することで、溶接などによる複数部材の結合部を除去できる。結合部を除去することで、フロントアッパビーム62の剛性を高めることができる。
このように、フロントアッパビーム62の部品数を減らすとともに結合部を除去することで、フロントアッパビーム62の軽量化を図ることができる。
【0063】
また、フロントアッパビーム62は、左連結部64の後端部64aがフロントバンパービーム30の後端部(左直線部47)に設けられている(溶接されている)。溶接された部材64a,47が左ホイールハウスアッパーメンバー14にボルト67…で取り付けられている。
同様に、右連結部65の後端部65aがフロントバンパービーム30の後端部(右直線部48)に設けられている(溶接されている)。溶接された部材65a,48が右ホイールハウスアッパーメンバー15にボルト68…で取り付けられている。
【0064】
左連結部64の後端部64aがフロントバンパービーム30の左直線部47に溶接され、右連結部65の後端部65aがフロントバンパービーム30の右直線部48溶接されることで、フロントアッパビーム62をフロントバンパービーム30に強固に取り付けることができる。
加えて、フロントアッパビーム62の上横梁部63をラジエータ61の上部に連結されている。
これにより、図1に示すフロントバルクヘッド13から左右の脚部35,36を除去することが可能になり、軽量化を一層図ることができる。
【0065】
図13は第2実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図である。
第1実施の形態で説明したように、フロントバンパービーム30は、バンパービーム直線部44の左右端部44a,44bから左右の湾曲部45,46がそれぞれ車体幅方向外側に向けて幅W1だけ張り出されている。
これにより、例えば、相手車両55(図8参照)が左側にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両55に左湾曲部45を確実に当て、衝撃荷重を好適に吸収することができる。
【0066】
さらに、フロントバンパービーム30は、図7に示すように、バンパービーム直線部44が、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けられている。
さらに、左右の湾曲部45,46の前部位45b,46bが左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aより車体前側に設けられている。
これにより、例えば、相手車両55(図8参照)が左側にずれてオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を初期段階から吸収することができる。
【0067】
加えて、フロントバンパービーム30は、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25(図7参照)のみの変形範囲Hが確保されている。
よって、軽衝突の場合には、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみの変形で衝撃荷重を吸収することが可能である。
これにより、軽衝突後に、フロントバンパービーム30および左右のエネルギー吸収部24,25のみを交換するだけでよいので修理を簡単におこなうことができる。
【0068】
すなわち、第2実施の形態の車体前部構造60によれば、第1実施の形態の車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。
【0069】
加えて、第2実施の形態の車体前部構造60によれば、ラジエータ61(図9参照)の上部を支持する上横梁部63と、上横梁部63の左端部63aを左ホイールハウスアッパーメンバー14に連結する左連結部64と、上横梁部63の右端部63bを右ホイールハウスアッパーメンバー15に連結する右連結部65との3部位をそれぞれ一体にハイドロフォーム成形した。
【0070】
このように、上横梁部63および左右の連結部64,65を一部材とすることで、上横梁部63および左右の連結部64,65の剛性を高めることができ、軽量化を図ることができる。
【0071】
なお、前記第1実施の形態で例示した左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15にフロントバンパービーム30を取り付けるボルト51…,52…の取付位置や使用本数は適宜変更が可能である。
同様に、前記第2実施の形態で例示した左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15にフロントバンパービーム30およびフロントアッパビーム62を取り付けるボルト67…,68…の取付位置や使用本数は適宜変更が可能である。
【0072】
また、前記第1、第2の実施の形態で例示したフロントバンパービーム30およびフロントアッパビーム62の形状は車両に応じて適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の車体前部構造は、左右のフロントサイドフレームの外側に左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係る車体前部構造のフロントバンパービームを示す斜視図である。
【図4】(a)は第1実施の形態に係るフロントバンパービームのバンパービーム直線部を示す断面図、(b)は従来のフロントバンパービームを比較例として示す断面図である。
【図5】第1実施の形態に係るフロントバンパービームの左右の湾曲部を示す断面図である。
【図6】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図である。
【図7】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す底面図である。
【図8】第1実施の形態に係る左衝撃支え部材に相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
【図9】本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)を示す斜視図である。
【図10】第2実施の形態に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
【図11】第2実施の形態に係るフロントアッパビームの上横梁部を示す断面図である。
【図12】第2実施の形態に係るフロントアッパビームの左右の連結部を示す断面図である。
【図13】第2実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図である。
【符号の説明】
【0075】
10,60…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム、11a…左フロントサイドフレームの前端部、12…右フロントサイドフレーム、12a…右フロントサイドフレームの前端部、14…左ホイールハウスアッパーメンバー、15…右ホイールハウスアッパーメンバー、24…左エネルギー吸収部、24a…左エネルギー吸収部の前端部、25…右エネルギー吸収部、25a…右エネルギー吸収部の前端部、30…フロントバンパービーム、41…左フロントピラー、42…右フロントピラー、44…バンパービーム直線部、44a…バンパービーム直線部の左端部、44b…バンパービーム直線部の右端部、45…左湾曲部、45a…左湾曲部の後端部、46…右湾曲部、46a…右湾曲部の後端部、47…左直線部、48…右直線部、61…ラジエータ、62…フロントアッパビーム、63…上横梁部(横梁部)、63a…上横梁部の左端部、63b…上横梁部の右端部、64…左連結部、65…右連結部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に向いて左右のフロントサイドフレームが設けられ、前記左右のフロントサイドフレームの外側に左右のフロントピラーから車体前方に向けて延びる左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられた車体前部構造において、
前記左右のフロントサイドフレームのそれぞれの前端部から車体前方に向けて突出され、衝撃荷重で変形可能な左右のエネルギー吸収部と、
前記左右のエネルギー吸収部のそれぞれの前端部に架け渡されるとともに、左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた平面視略U字状のフロントバンパービームと、
を備え、
前記フロントバンパービームは、
前記左右のエネルギー吸収部のそれぞれの前端部に架け渡されたバンパービーム直線部と、
前記バンパービーム直線部の左右端部からそれぞれ車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出された左右の湾曲部と、
左右の湾曲部のそれぞれの後端部から車体後方に向けて延出されて前記左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた左右の直線部と、がそれぞれ一体にハイドロフォーム成形されたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記左右のフロントサイドフレームの前端部間に配置されたラジエータの上部を支持する横梁部と、
前記横梁部の左右端部からそれぞれ車体後方に向けて直線状に延出されて前記左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた左右の連結部と、を備え、
前記横梁部および前記左右の連結部がそれぞれ一体にハイドロフォーム成形されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項1】
車体前後方向に向いて左右のフロントサイドフレームが設けられ、前記左右のフロントサイドフレームの外側に左右のフロントピラーから車体前方に向けて延びる左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられた車体前部構造において、
前記左右のフロントサイドフレームのそれぞれの前端部から車体前方に向けて突出され、衝撃荷重で変形可能な左右のエネルギー吸収部と、
前記左右のエネルギー吸収部のそれぞれの前端部に架け渡されるとともに、左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた平面視略U字状のフロントバンパービームと、
を備え、
前記フロントバンパービームは、
前記左右のエネルギー吸収部のそれぞれの前端部に架け渡されたバンパービーム直線部と、
前記バンパービーム直線部の左右端部からそれぞれ車幅方向外側かつ車体後方に向けて湾曲状に延出された左右の湾曲部と、
左右の湾曲部のそれぞれの後端部から車体後方に向けて延出されて前記左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた左右の直線部と、がそれぞれ一体にハイドロフォーム成形されたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記左右のフロントサイドフレームの前端部間に配置されたラジエータの上部を支持する横梁部と、
前記横梁部の左右端部からそれぞれ車体後方に向けて直線状に延出されて前記左右のホイールハウスアッパーメンバーに設けられた左右の連結部と、を備え、
前記横梁部および前記左右の連結部がそれぞれ一体にハイドロフォーム成形されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−101849(P2009−101849A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275414(P2007−275414)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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