説明

車体前部構造

【課題】軽量化を図ることができ、かつ、組付け作業の容易化を図ることができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、左アッパメンバー14が左ロアメンバー16を介して左フロントサイドフレーム11の前端部11aに連結されている。左ロアメンバー16は、左アッパメンバー14から傾斜部41が前下方へ傾斜され、傾斜部41から屈曲部42が車体内側に向けて曲げられ、屈曲部42から左フロントサイドフレーム11の前端部11aまで水平部43が延出されて前端部11aを貫通したパイプ部材35と、前端部11aの両側壁78,83を挟持する内外のフランジ36,37とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられ、アッパメンバーがロアメンバーを介してフロントサイドフレームに連結された車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、通常、車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、このフロントサイドフレームの外側に、フロントピラーから車体前方向に向かって延びるアッパメンバーが設けられ、アッパメンバーから車体前下方向に向かって延びるロアメンバーが設けられている。
【0003】
そして、このロアメンバーの前端部が連結部材を介してフロントサイドフレームの前端部に連結されている。
具体的には、ロアメンバーの前端部と連結部材とが溶接で接合され、連結部材とフロントサイドフレームの前端部とが溶接で接合されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−112173号公報
【0004】
特許文献1のロアメンバーは前端部が上下に拡大されている。よって、万が一、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合でも、相手車両に当てることができる。
これにより、ロアメンバーで衝撃荷重を受け、ロアメンバーに作用した衝撃荷重をアッパメンバーに伝えて好適に分散、吸収することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の車体前部構造は、ロアメンバーの前端部と連結部材とが溶接で接合され、連結部材とフロントサイドフレームの前端部とが溶接で接合されている。
このため、ロアメンバーの前端部や連結部材などに相手車両が衝突した場合に、ロアメンバーの前端部と連結部材との接合部や、連結部材とフロントサイドフレームの前端部との接合部が剥離することが考えられる。
【0006】
そこで、衝突の場合に接合部が剥離しないように、連結部材の接合面を大きくして接合部を強固に接合する必要がある。
しかし、連結部材の接合面を大きくすることで、部材の重量や溶接部の重量が増し、そのことが軽量化を図る妨げになっていた。
加えて、連結部材の接合面が大きくなることで、溶接箇所が増え、そのことが組付け作業の容易化を図る妨げになっていた。
【0007】
本発明は、軽量化を図ることができ、かつ、組付け作業の容易化を図ることができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、前記フロントサイドフレームの外側に、フロントピラーから車体前方向に向かって延びるアッパメンバーが設けられ、前記アッパメンバーがロアメンバーを介して前記フロントサイドフレームの前端部に連結された車体前部構造において、前記ロアメンバーは、前記アッパメンバーから傾斜部が前下方へ傾斜され、前記傾斜部から屈曲部が車体内側に向けて曲げられ、前記屈曲部から前記フロントサイドフレームの前端部まで水平部が略水平に延出され、前記水平部が前記フロントサイドフレームの前端部を車体幅方向に貫通されたパイプ部材と、前記水平部に設けられ、前記前端部の両側壁を挟持する一対のフランジと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2において、前記フロントサイドフレームは、前記前端部に前記水平部が貫通する円筒部材が設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項3において、前記傾斜部は、基端部が、前記アッパメンバーの前端部内に接合される支持ブラケットに設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、ロアメンバーをパイプ部材で形成し、パイプ部材で傾斜部および水平部を屈曲部を介在させて一体に曲げ形成した。
よって、傾斜部に水平部を手間をかけないで強固に連結することができる。
これにより、従来技術のように、傾斜部および水平部を溶接で接合する必要がないので、それぞれの部材の接合面を大きく形成して、傾斜部に水平部を溶接で強固に接合する手間を省くことができる。
【0012】
さらに、ロアメンバーの水平部をフロントサイドフレームの前端部に車体幅方向に貫通させ、フロントサイドフレームの前端部を一対のフランジで挟持した。
よって、フロントサイドフレームの前端部に水平部を手間をかけないで強固に連結することができる。
これにより、従来技術のように、フロントサイドフレームの前端部および水平部を溶接で接合する必要がないので、それぞれの部材の接合面を大きく形成して、フロントサイドフレームの前端部に水平部を溶接で強固に接合する手間を省くことができる。
【0013】
このように、パイプ部材で傾斜部および水平部を一体に曲げ形成し、かつ、フロントサイドフレームの前端部に水平部を貫通させてフロントサイドフレームの前端部を一対のフランジで挟持することで、それぞれの部材の接合面を大きく確保して溶接で強固に接合する必要がない。
【0014】
したがって、軽量化を図ることができ、かつ、組付け作業の容易化を図ることができるという利点がある。
また、パイプ部材で傾斜部および水平部を屈曲部を介在させて一体に曲げ形成することで、部品点数を減らすことができるという利点がある。
【0015】
さらに、傾斜部に水平部を強固に連結し、かつ、フロントサイドフレームの前端部に水平部を強固に連結することで、相手車両が衝突した場合に、衝突により作用した衝撃荷重を、ロアメンバーを経てアッパメンバーに効率よく伝えることができるという利点がある。
【0016】
請求項2に係る発明では、フロントサイドフレームの前端部に円筒部材を設け、円筒部材に水平部を貫通させた。
よって、水平部と平行な荷重がフランジから作用した場合に、作用した荷重を円筒部材で支えることができる。
これにより、フロントサイドフレームの前端部に水平部を一層強固に取り付けることができるという利点がある。
【0017】
請求項3に係る発明では、傾斜部の基端部を支持ブラケットでアッパメンバーの前端部内に接合した。
よって、傾斜部の基端部を支持ブラケットでアッパメンバーの前端部内に強固に接合することが可能になる。
これにより、相手車両が衝突した場合に、衝突により作用した衝撃荷重を、ロアメンバーからアッパメンバーに効率よく伝えることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0019】
図1は本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側部にそれぞれ設けられた左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)11,12と、左右のフロントサイドフレーム11,12の外側に設けられた左右のアッパメンバー(アッパメンバー)14,15と、左アッパメンバー14を左フロントサイドフレーム11に連結する左ロアメンバー(ロアメンバー)16と、右アッパメンバー15を右フロントサイドフレーム12に連結する右ロアメンバー(ロアメンバー)17と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aに設けられたフロントバルクヘッド19と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aに架け渡されたフロントバンパービーム21とを備えている。
【0020】
さらに、車体前部構造10は、左右のアッパメンバー14,15からフロントバルクヘッド19の左右端部にそれぞれ延出された左右の連結メンバー22,23と、左フロントサイドフレーム11および左アッパメンバー14間に設けられた左ホイールハウス24と、右フロントサイドフレーム12および右アッパメンバー15間に設けられた右ホイールハウス25と、左右のフロントサイドフレーム11,12の下側に設けられたフロントサブフレーム26とを備えている。
【0021】
左フロントサイドフレーム11は、車体前部方向を向いて車体前部の左側に配置され、後端部11bが左フロントサイドフレームリヤエンド27を介して左フロアフレーム(図示せず)に連結されたフレーム部材である。
【0022】
右フロントサイドフレーム12は、車体前部方向を向いて車体前部の右側に配置されたフレーム部材である。
なお、右フロントサイドフレーム12は、左フロントサイドフレーム11と左右対称の部材であり、以下右フロントサイドフレーム12の説明を省略する。
【0023】
左アッパメンバー14は、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられ、左フロントピラー(フロントピラー)31から車体前方向に向かって延び、前端部14aが前下方に向けて湾曲状に形成された部材である。
左アッパメンバー14の前端部14aが左ロアメンバー16を介して左フロントサイドフレーム11の前端部11aに連結されている。
【0024】
右アッパメンバー15は、右フロントサイドフレーム12の外側に設けられ、右フロントピラー(フロントピラー)32から車体前方向に向かって延びる部材である。
右アッパメンバー15の前端部15aが右ロアメンバー17を介して右フロントサイドフレーム12の前端部12aに連結されている。
【0025】
なお、右アッパメンバー15は、左アッパメンバー14と左右対称の部材であり、以下右アッパメンバー15の説明を省略する。
また、右ロアメンバー17は、左ロアメンバー16と左右対称の部材であり、以下右ロアメンバー17の説明を省略する。
【0026】
図2は第1実施の形態に係る車体前部構造の左ロアメンバーを示す斜視図である。
左ロアメンバー16は、左アッパメンバー14を左フロントサイドフレーム11の前端部11aに連結する中空のパイプ部材35と、左フロントサイドフレーム11の前端部11aを挟持する内外のフランジ(一対のフランジ)36,37とを備えている。
【0027】
パイプ部材35は、断面円形に形成された中空のパイプである。
このパイプ部材35は、左アッパメンバー14から前下方へ傾斜された傾斜部41と、傾斜部41から車体内側に曲げられた屈曲部42と、屈曲部42から左フロントサイドフレーム11の前端部11aに向けて略水平に延出された水平部43とを備えている。
【0028】
傾斜部41は、左アッパメンバー14の前端部14aから前下方へ傾斜した部位である。この傾斜部41は、略中央部41cで僅かに車体外側に向けて傾斜状に折り曲げられ、平面視で略く字状に形成されている。
なお、第1実施の形態では、傾斜部41を略く字状に形成した例について説明するが、傾斜部41の形状はこれに限定するものではなく、例えば、直線状に延出することも可能である。
【0029】
屈曲部42は、傾斜部41の前端部41aから車体内側に向けて略直交するように折り曲げられた部位である。
水平部43は、屈曲部42の内端部42aから左フロントサイドフレーム11の前端部11aまで略水平な状態で直線状に延出された部位である。
【0030】
このように、左ロアメンバー16をパイプ部材35で形成し、パイプ部材35で傾斜部41、屈曲部42および水平部43を一体に曲げ形成した。
よって、傾斜部41に屈曲部42を介在させて水平部43を手間をかけないで強固に連結することができる。
これにより、従来技術のように、屈曲部42および水平部43を溶接で接合する必要がないので、それぞれの部材の接合面を大きく形成して、屈曲部42に水平部43を溶接で強固に接合する手間を省くことができる。
また、パイプ部材35で屈曲部42および水平部43を一体に曲げ形成することで、部品点数を減らすことができる。
【0031】
図3は第1実施の形態に係る左アッパメンバーに左ロアメンバーを溶接した状態を示す断面図、図4は図3を分解した状態を示す分解図である。
左ロアメンバー16は、傾斜部41の基端部41bが支持ブラケット45で左アッパメンバー14の前端部14a内に接合されている。
【0032】
左アッパメンバー14の前端部14aは、平板状のインナパネル47と、インナパネル47に溶接されたアウタパネル48とを備えている。
アウタパネル48は、上面部51と、下面部52と、上下の面部51,52を連結する外壁部53と、上面部51から上方に突出された上張出片54と、下面部52から下方に突出された下張出片55とで断面略コ字状に形成されている。
【0033】
支持ブラケット45は、上下方向の中央に収容凹部57が形成され、収容凹部57の上下の端部57a,57bから上下の脚部58,59が車体内側に向けて延出され、上脚部58から上方に上接合片61が張り出され、下脚部59から下方に下接合片62が張り出されている。
収容凹部57は、傾斜部41の基端部41bのうち、車体内側の部位64を収容可能に、基端部41bの外径に比して僅かに大きな内径で半円弧状に形成されている。
【0034】
傾斜部41の基端部41bを収容凹部57に収容した状態で、収容凹部57の上下の端部57a,57bが基端部41bの上下の部位65,66にそれぞれスポット溶接で接合されている。
また、上接合片61が、インナパネル47の上辺47aと、アウタパネル48の上張出片54とに挟持された状態でスポット溶接で接合されている。
【0035】
さらに、下接合片62が、インナパネル47の下辺47bと、アウタパネル48の下張出片55とに挟持された状態でスポット溶接で接合されている。
加えて、傾斜部41の基端部41bのうち、外部位67がアウタパネル48の外壁部53にスポット溶接で接合されている。
【0036】
このように、支持ブラケット45を用いることで、傾斜部41の基端部41bのうち、上下の部位65,66および外部位67の3箇所をスポット溶接で接合することができる。
よって、傾斜部41の基端部41bを支持ブラケット45で左アッパメンバー14の前端部14a内に強固に接合することができる。
【0037】
図5は第1実施の形態に係る左フロントサイドフレームに左ロアメンバーを連結した状態を示す断面図、図6は図5を分解した状態を示す分解図である。
左ロアメンバー16は、水平部43の先端部43aが左フロントサイドフレーム11の前端部11aに車体幅方向に貫通され、前端部11aが内外のフランジ36,37で挟持されている。
【0038】
左フロントサイドフレーム11の前端部11aは、略断面コ字状のインナパネル71と、インナパネル71に溶接されたアウタパネル72と、インナパネル71およびアウタパネル72間に設けられた円筒部材(カラー部材)74とを備えている。
【0039】
インナパネル71は、上面部76と、下面部77と、上下の面部76,77を連結する内壁部78と、下面部77から下方に突出された下張出片79とで断面略コ字状に形成されている。
内壁部78は、水平部43の先端部43aが貫通可能な内側貫通孔81が形成されている。
【0040】
アウタパネル72は、平坦な外壁部83に外側貫通孔84が形成され、上端部85が車体外側に折り曲げられて略L字状に形成されている。
外側貫通孔84は、水平部43の先端部43aが貫通可能な孔である。
上端部85が上面部76の外辺76aとスポット溶接で接合され、かつ、外壁部83の下辺83aおよび下張出片79がスポット溶接で接合されている。
この状態で、内側貫通孔81および外側貫通孔84が略水平の状態で同軸上に配置されている。
【0041】
円筒部材74は、中空部75が形成された中空状の部材で、内側端部に内フランジ部87が張り出され、外側端部に外フランジ部88が張り出されている。
円筒部材74は、インナパネル71およびアウタパネル72間に配置されるとともに、内側貫通孔81および外側貫通孔84に同軸上に配置されている。
【0042】
この状態で、内フランジ部87が内壁部78の内面に当接され、内フランジ部87が内壁部78の内面に溶接で接合されている。
また、外フランジ部88が外壁部83の内面に当接され、外フランジ部88が外壁部83の内面に溶接で接合されている。
左フロントサイドフレーム11の前端部11a内に円筒部材74を設けることで、前端部11aの剛性を高めることができる。
【0043】
水平部43は、先端部43aの内面43bにねじ孔91が同軸上に形成され、先端部43aの近傍に外フランジ37(一対のフランジの一方)が嵌合された状態に取り付けられている。
水平部43の先端部43aが、外側貫通孔84、円筒部材74の中空部75および内側貫通孔81に貫通され、ねじ孔91にボルト92がねじ結合されている。
ボルト92は、頭部92aに内フランジ36(一対のフランジの他方)が設けられている。
【0044】
ねじ孔91にボルト92をねじ結合した状態で、内フランジ36が内壁部78の外面に当接され、外フランジ37が外壁部83の外面に当接されている。
そして、内フランジ36が内壁部78の外面に溶接で接合され、外フランジ37が外壁部83の外面に当接されている。
これにより、内壁部78および外壁部83(すなわち、前端部の両壁部)を内外のフランジ36,37で挟持することができる。
【0045】
よって、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに水平部43を手間をかけないで強固に連結することができる。
これにより、従来技術のように、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび水平部43を溶接で接合する必要がないので、それぞれの部材の接合面を大きく形成して、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに水平部43を溶接で強固に接合する手間を省くことができる。
【0046】
加えて、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに円筒部材74を設け、円筒部材74に水平部43の先端部43aを貫通させた。
よって、荷重Fが矢印A方向に作用した場合に、荷重Fが外フランジ37を介して円筒部材74の外フランジ部88に作用する。
これにより、荷重Fを円筒部材74で支えることができる。
【0047】
一方、荷重Fが矢印B方向に作用した場合に、荷重Fが内フランジ36を介して円筒部材74の内フランジ部87に作用する。
これにより、荷重Fを円筒部材74で支えることができる。
このように、荷重Fが矢印A方向や矢印B方向に作用した場合に、荷重Fを円筒部材74で支えることで、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに水平部43を一層強固に取り付けることができる。
【0048】
つぎに、左ロアメンバー16に相手車両95がオフセット衝突した場合を図7〜図8に基づいて説明する。
図7(a),(b)は第1実施の形態に係る左ロアメンバーに相手車両が正面からオフセット衝突した場合を説明する図である。
(a)において、相手車両95が左ロアメンバー16の水平部43に正面からオフセット衝突した場合に、水平部43に衝撃荷重F1が作用する。
【0049】
(b)において、水平部43の先端部43aが、外側貫通孔84、円筒部材74の中空部75および内側貫通孔81に貫通され、左フロントサイドフレーム11の前端部11aのうち、内壁部78および外壁部83が内外のフランジ36,37で挟持されている。
よって、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに水平部43が強固に連結されている。
これにより、水平部43に衝撃荷重F1が作用した際に、水平部43が左フロントサイドフレーム11の前端部11aから剥離する虞がない。
【0050】
また、左ロアメンバー16をパイプ部材35で形成し、パイプ部材35で屈曲部42および水平部43が一体に曲げ形成されている。
よって、傾斜部41に屈曲部42を介在させて水平部43が強固に連結されている。
【0051】
(a)に戻って、左ロアメンバー16は、傾斜部41の基端部41bが支持ブラケット45(図4参照)で左アッパメンバー14の前端部14a内に強固に接合されている。
これにより、水平部43に衝撃荷重F1が作用した際に、作用した衝撃荷重F1を水平部43から屈曲部42および傾斜部41を経て矢印Cの如く左アッパメンバー14に効率よく伝えることができる。
【0052】
図8(a),(b)は第1実施の形態に係る左ロアメンバーに相手車両が斜め前面からオフセット衝突した場合を説明する図である。
(a)において、相手車両95が左ロアメンバー16の水平部43に斜め前面からオフセット衝突した場合に、水平部43に衝撃荷重F2が作用する。
【0053】
(b)において、衝撃荷重F2のうち、一部の衝撃荷重F3が矢印方向に作用する。この衝撃荷重F3は外フランジ37を介して円筒部材74の外フランジ部88に矢印(白抜き)の如く作用する。
これにより、衝撃荷重F3を円筒部材74で支えることができる。
一方、衝撃荷重F4が衝撃荷重F3と反対方向に作用した場合、衝撃荷重F4は内フランジ36を介して円筒部材74の内フランジ部87に矢印(黒色)の如く作用する。
これにより、衝撃荷重F4を円筒部材74で支えることができる。
【0054】
図9は本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)を示す断面図である。
第2実施の形態の車体前部構造100は、水平部43の先端部43a内にナット101が嵌合され、ナット101にボルト102をねじ結合するように構成したもので、その他の構成は第1実施の形態の車体前部構造10と同じである。
【0055】
ナット101は、先端部43a内に水平部43と同軸上に嵌合され、この状態で内面43bに固定されている。
ナット101にボルト102がねじ結合されている。
ボルト102は、頭部102aに内フランジ36(一対のフランジの他方)が設けられている。
【0056】
ナット101にボルト102をねじ結合した状態で、内フランジ36が内壁部78の外面に当接され、外フランジ37が外壁部83の外面に当接されている。
そして、内フランジ36が内壁部78の外面に溶接で接合され、外フランジ37が外壁部83の外面に当接されている。
これにより、内壁部78および外壁部83を内外のフランジ36,37で挟持することができる。
【0057】
よって、第1実施の形態の車体前部構造10と同様に、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに水平部43を手間をかけないで強固に連結することができる。
すなわち、第2実施の形態の車体前部構造100によれば、第1実施の形態の車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、前記第1、第2の実施の形態では、中空のパイプ部材35として、断面円形の中空のパイプを用いた例について説明したが、これに限らないで、断面多角形の中空のパイプを用いることも可能である。
また、中空のパイプ部材35に代えて中実のロッド部材を用いることも可能である。
【0059】
また、前記第1、第2の実施の形態で示したパイプ部材35、内外のフランジ36,37、傾斜部41、屈曲部42、水平部43、支持ブラケット45、円筒部材74の形状は適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、アッパメンバーがロアメンバーを介してフロントサイドフレームに連結された車体前部構造を備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る車体前部構造の左ロアメンバーを示す斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係る左アッパメンバーに左ロアメンバーを溶接した状態を示す断面図である。
【図4】図3を分解した状態を示す分解図である。
【図5】第1実施の形態に係る左フロントサイドフレームに左ロアメンバーを連結した状態を示す断面図である。
【図6】図5を分解した状態を示す分解図である。
【図7】第1実施の形態に係る左ロアメンバーに相手車両が正面からオフセット衝突した場合を説明する図である。
【図8】第1実施の形態に係る左ロアメンバーに相手車両が斜め前面からオフセット衝突した場合を説明する図である。
【図9】本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10,100…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、11a…左フロントサイドフレームの前端部、12…右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、12a…右フロントサイドフレームの前端部、14…左アッパメンバー(アッパメンバー)、14a…左アッパメンバーの前端部、15…右アッパメンバー(アッパメンバー)、15a…右アッパメンバーの前端部、16…左ロアメンバー(ロアメンバー)、17…右ロアメンバー(ロアメンバー)、31…左フロントピラー(フロントピラー)、32…右フロントピラー(フロントピラー)、35…パイプ部材、36,37…内外のフランジ(一対のフランジ)、41…傾斜部、41b…基端部、42…屈曲部、43…水平部、45…支持ブラケット、74…円筒部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、前記フロントサイドフレームの外側に、フロントピラーから車体前方向に向かって延びるアッパメンバーが設けられ、前記アッパメンバーがロアメンバーを介して前記フロントサイドフレームの前端部に連結された車体前部構造において、
前記ロアメンバーは、
前記アッパメンバーから傾斜部が前下方へ傾斜され、前記傾斜部から屈曲部が車体内側に向けて曲げられ、前記屈曲部から前記フロントサイドフレームの前端部まで水平部が略水平に延出され、前記水平部が前記フロントサイドフレームの前端部を車体幅方向に貫通されたパイプ部材と、
前記水平部に設けられ、前記前端部の両側壁を挟持する一対のフランジと、
を備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記フロントサイドフレームは、前記前端部に前記水平部が貫通する円筒部材が設けられたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記傾斜部は、基端部が、前記アッパメンバーの前端部内に接合される支持ブラケットに設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−171032(P2009−171032A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4512(P2008−4512)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】