説明

車体前部構造

【課題】前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両でも、オフセット衝突で生じた衝撃荷重を良好に吸収することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、左フロントサイドフレーム11の外側に左アッパメンバー14が設けられ、左フロントサイドフレーム11の前端部上側に左ヘッドライト22が設けられている。この車体前部構造10は、左アッパメンバー14の前端部14aから左フロントサイドフレーム11の前端上部まで車体前下方に向けて斜め下方に延びる左傾斜ロアメンバー18と、左傾斜ロアメンバー18に設けられ、左ヘッドライト22を支持する衝撃吸収部材20とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられるとともに、フロントサイドフレームの前端部上側にヘッドライト(ヘッドランプ)が設けられた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、通常、車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、フロントサイドフレームの前端部にフロントバンパビームが設けられ、フロントサイドフレームの外側に、フロントピラーから車体前方向に向かって延びるアッパメンバーが設けられ、アッパメンバーから車体前下方向に向かって延びるロアメンバーが設けられている。
そして、このロアメンバーの前端部がフロントサイドフレームの前端外壁部に連結部材を介して連結されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−112173号公報
【0003】
この車体前部構造は、ロアメンバーの前端部を連結部材を介してフロントサイドフレームの前端外壁部に連結することで、フロントサイドフレームの前端部の車体外側に設けることができる。
加えて、ロアメンバーは前端部が上下に拡大されている。
【0004】
よって、万が一、相手車両が左右方向や上下方向にずれてオフセット衝突した場合でも、相手車両に当てることができる。
これにより、ロアメンバーで衝撃荷重を受け、ロアメンバーに作用した衝撃荷重をアッパメンバーに伝えて良好に吸収することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、車体前部構造のなかには、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短いものがある。
この車体前部構造は、フロントサイドフレームの前端部に前輪が近接され、フロントサイドフレームの前端部の車体外側にロアメンバーを設けることが困難とされている。
このため、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両では、相手車両が左右方向や上下方向にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両に当てて衝撃荷重を良好に吸収することが難しい。
【0006】
本発明は、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両でも、オフセット衝突で生じた衝撃荷重を良好に吸収することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、前記フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられ、前記フロントサイドフレームの前端部上側にヘッドライトが設けられた車体前部構造において、前記アッパメンバーの前端部から前記フロントサイドフレームの前端上部まで車体前下方に向けて斜め下方に延びる傾斜ロアメンバーと、前記傾斜ロアメンバーに設けられ、前記ヘッドライトを支持する衝撃吸収部材と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、前輪は、フロントサイドフレームに対して車体外側に設けられている。よって、フロントサイドフレームの前端部の上側(すなわち、前輪の車体内側)に空間を確保することが可能である。
【0009】
そこで、請求項1において、傾斜ロアメンバーをアッパメンバーの前端部からフロントサイドフレームの前端上部まで延ばした。
よって、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両でも、傾斜ロアメンバーの前端部を、フロントサイドフレームの前端部の上側(すなわち、前輪の車体内側)の空間に設けることができる。
【0010】
請求項2において、前記衝撃吸収部材は、前記傾斜ロアメンバーが塑性変形する車体前後方向の衝撃荷重より小さい衝撃荷重で塑性変形するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3において、前記衝撃吸収部材は、複数の細胞状の部位を有するハニカム構造に形成され、前記細胞状の部位の軸線が車体前後方向に向けて配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、傾斜ロアメンバーをアッパメンバーの前端部からフロントサイドフレームの前端上部まで延ばし、傾斜ロアメンバーの前端部を、フロントサイドフレームの前端部の上側(すなわち、前輪の車体内側)の空間に設けた。
【0013】
フロントサイドフレームの前端部の上側(すなわち、前輪の車体内側)の空間に傾斜ロアメンバーを設けることで、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両でも、傾斜ロアメンバーが前輪に干渉することを防ぐことができる。
これにより、相手車両がフロントサイドフレームの前端部にオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を傾斜ロアメンバーに分散させて良好に吸収することができる。
【0014】
さらに、請求項1に係る発明では、傾斜ロアメンバーに衝撃吸収部材を設け、衝撃吸収部材にヘッドライト(ヘッドランプ)を支持した。
よって、衝撃吸収部材をフロントサイドフレームの前端部の上側に設けることができる。
これにより、相手車両がフロントサイドフレームの前端部の上側にオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を衝撃吸収部材で良好に吸収することができる。
【0015】
したがって、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両でも、相手車両がフロントサイドフレームの前端部や、前端部の上側にオフセット衝突した場合に、オフセット衝突で生じた衝撃荷重を良好に吸収することができるという利点がある。
【0016】
請求項2に係る発明では、衝撃吸収部材を傾斜ロアメンバーより小さい衝撃荷重で塑性変形するように形成した。
これにより、衝撃吸収部材に衝撃荷重が作用した場合に、衝撃吸収部材を好適に変形させて、衝撃荷重を良好に吸収することができるという利点がある。
【0017】
請求項3に係る発明では、衝撃吸収部材をハニカム構造に形成することで剛性を高めることができる。
よって、衝撃吸収部材に衝撃荷重が作用した場合に、作用した衝撃荷重を傾斜ロアメンバーに良好に伝えることができる。
これにより、傾斜ロアメンバーに伝わった衝撃荷重を、傾斜ロアメンバーの前端部からフロントサイドフレームに分散させて衝撃荷重を良好に吸収することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
なお、車体前部構造は左右対称の構成部材で構成されている。よって、本実施の形態においては、左側の構成部材について説明して右側の構成部材の説明を省略する。
【0019】
図1は本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す側面図、図2は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側部に設けられた左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)11と、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに設けられたフロントバルクヘッド12と、左右のフロントサイドフレーム(右フロントサイドフレームは図示せず)11の前端部11aに架け渡されたフロントバンパビーム13と、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられた左アッパメンバー(アッパメンバー)14とを備えている。
この車体前部構造10は、フロントバンパビーム13から前輪23までの間隔Lが短く設定されている。
【0020】
加えて、車体前部構造10は、左アッパメンバー14の前端部14aから左フロントサイドフレーム11の前端上部16まで延びる左傾斜ロアメンバー(傾斜ロアメンバー)18と、左傾斜ロアメンバー18に設けられた左衝撃吸収部材(衝撃吸収部材)20と、左衝撃吸収部材20に設けられたヘッドライトとしての左ヘッドライト(ヘッドランプ)22とを備えている。
【0021】
左フロントサイドフレーム11は、車体前後方向を向いて車体前部の左側に配置され、後端部11bが左フロントサイドフレームリヤエンド24を介して左フロアフレーム25に連結されたフレーム部材である。
【0022】
左アッパメンバー14は、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられ、左フロントピラー26から車両前方向に向かって延びる部材である。
さらに、左アッパメンバー14は、左ホイールハウス27を介して左フロントサイドフレーム11に連結されている。
【0023】
図3は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
左傾斜ロアメンバー18は、左アッパメンバー14の前端部14aから左フロントサイドフレーム11の前端上部16まで車体前下方に向けて斜め下方に延出されている。
具体的には、左傾斜ロアメンバー18は、左アッパメンバー14の前端部14aに取り付けられた後端部31と、後端部31から車体前下方に向けて斜め下方に延出された傾斜部32と、傾斜部32に設けられて左フロントサイドフレーム11の前端上部16に取り付けられた前端部33とを備えている。
【0024】
傾斜部32は、平面視において、後端部31に対して車体内側に向けて略く字状に折り曲げられた部位である。
前端部33は、平面視において、傾斜部32に対して車体内側に向けて略く字状に折り曲げられた部位である。
【0025】
左衝撃吸収部材20は、左ヘッドライト22の後部28(図5参照)に一定間隔をおいて一体に設けられた内側衝撃吸収部35および外側衝撃吸収部36を備えている。
左衝撃吸収部材20を内側衝撃吸収部35および外側衝撃吸収部36に2分割することで、左ヘッドライト22のバルブ部(図示せず)を交換するための空間38を確保することができる。
このバルブ部を交換することで、左ヘッドライト22の電球の交換が可能になる。
【0026】
内側衝撃吸収部35は、上面35aに上取付プレート41が設けられ、内面35b(図5も参照)に内取付プレート42が設けられている。
上取付プレート41は、後端部が上面35aから車体後方に向けて突出され、突出した後端部に取付孔41aが形成されている。
【0027】
上取付プレート41の取付孔41aおよび前端部上面33aの取付孔44に上ボルト45が差し込まれ、取付孔44から突出したねじ部45aが上ナット46にねじ結合されている。
上ナット46は、前端部上面33aの裏面に、取付孔44と同軸上に溶接されている。
【0028】
内取付プレート42は、後端部が内面35b(図5も参照)から車体後方に向けて突出され、突出した後端部に取付孔42aが形成されている。
内取付プレート42の取付孔42aおよび前端部内壁33bの取付孔47(図8参照)に内ボルト48が差し込まれ、取付孔47から突出したねじ部48aが内ナット49にねじ結合されている。
【0029】
内ナット49は、前端部内壁33bの裏面に、取付孔47(図8参照)と同軸上に溶接されている。
よって、内側衝撃吸収部35は、上ボルト45・上ナット46および内ボルト48・内ナット49で左傾斜ロアメンバー18の前端部33に取り付けられている。
【0030】
内側衝撃吸収部35は、複数の細胞状の部位51を有するハニカム構造の部材で、全体形状が略矩形体に形成され、図5に示すように、後面35cが左傾斜ロアメンバー18の前端部33の前壁33cに沿って形成されている。
この内側衝撃吸収部35は、細胞状の部位51の軸線52が車体前後方向に向けて配置され、前端部33の前壁33cに沿って接している。
細胞状の部位51は、一例として、矩形状の枠体で中空状に形成された部位である。この細胞状の部位51は、矩形状の枠体に限らないで、六角形などの他の形状に生成することも可能である。
【0031】
外側衝撃吸収部36は、外面36aに外取付プレート54が設けられている。
外取付プレート54は、後端部が傾斜部32の前壁32aに沿って車体外方に向けて突出され、突出した後端部に取付孔54aが形成されている。
外取付プレート54の取付孔54aおよび前壁32aの取付孔56に外ボルト57が差し込まれ、取付孔56から突出したねじ部57aが外ナット58にねじ結合されている。
外ナット58は、前壁32aの裏面に、取付孔56と同軸上に溶接されている。
よって、外側衝撃吸収部36は、外ボルト57および外ナット58で左傾斜ロアメンバー18の傾斜部32に取り付けられている。
【0032】
外側衝撃吸収部36は、複数の細胞状の部位61を有するハニカム構造の部材で、全体形状が略矩形体に形成され、図5に示すように、後面36bが傾斜部32の前壁32aに沿って形成されている。
この外側衝撃吸収部36は、細胞状の部位61の軸線62が車体前後方向に向けて配置され、傾斜部32の前壁32aに沿って接している。
【0033】
細胞状の部位61は、一例として、矩形状の枠体で中空状に形成された部位である。この細胞状の部位61は、矩形状の枠体に限らないで、六角形などの他の形状に生成することも可能である。
内側衝撃吸収部35を前端部33に取り付けるとともに、外側衝撃吸収部36を傾斜部32に取り付けることで、左ヘッドライト22が左傾斜ロアメンバー18の前壁に取り付けられている。
【0034】
ここで、内側衝撃吸収部35および外側衝撃吸収部36は、前述したように、各部材35,36がそれぞれ複数の細胞状の部位51,61を有するハニカム構造とされている。
内側衝撃吸収部35および外側衝撃吸収部36をハニカム構造に形成することで剛性を高めることができる。
【0035】
よって、内側衝撃吸収部35および外側衝撃吸収部36に衝撃荷重が作用した場合に、作用した衝撃荷重を左傾斜ロアメンバー18に良好に伝えることができる。
これにより、左傾斜ロアメンバー18に伝わった衝撃荷重を、左傾斜ロアメンバー18の前端部33から左フロントサイドフレーム11に分散させて衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0036】
加えて、内側衝撃吸収部35および外側衝撃吸収部36は、左傾斜ロアメンバー18が塑性変形する車体前後方向の衝撃荷重より小さい衝撃荷重で塑性変形するように形成されている。
これにより、内側衝撃吸収部35および外側衝撃吸収部36に衝撃荷重が作用した場合に、内側衝撃吸収部35および外側衝撃吸収部36を好適に変形させて、衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0037】
図4は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図、図5は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す平面図である。
左ヘッドライト22は、内側端部22aから外側端部22bに向けて後部28が車体後方に傾斜状に形成され、後部28の略中央部28aからバルブ部(図示せず)が車体後方に向けて突出されている。
【0038】
後部28のうち、左ヘッドライト22の内側端部22a寄りの部位に内側衝撃吸収部35が設けられている。また、後部28のうち、外側端部22b寄りの部位に外側衝撃吸収部36が設けられている。
内側衝撃吸収部35および外側衝撃吸収部36は、図5に示すように、左ヘッドライト22の後部28から車体後方に向けて突出された部材である。
【0039】
前述したように、内側衝撃吸収部35が、上ボルト45・上ナット46(上ナット46は図3参照)および内ボルト48・内ナット49(内ナット49は図3参照)で左傾斜ロアメンバー18の前端部33に取り付けられている。
また、外側衝撃吸収部36が、外ボルト57および外ナット58(外ナット58は図3参照)で左傾斜ロアメンバー18の傾斜部32に取り付けられている。
【0040】
よって、左ヘッドライト22は、内側衝撃吸収部35および外側衝撃吸収部36に支持された状態で、図2に示す左フロントサイドフレーム11の前端部11a(前端上部16)の上側に配置されている。
具体的には、左ヘッドライト22は、内側端部22a寄りの部位が、左フロントサイドフレーム11の前端部11a(前端上部16)の上側に配置されるとともに、フロントバンパビーム13の左端部13aの上側に配置されている。
【0041】
さらに、左ヘッドライト22は、外側端部22b寄りの部位および略中央部が、左フロントサイドフレーム11の前端部11a(前端上部16)から車体外側に張り出されるとともに、フロントバンパビーム13の左端部13aから車体外側に張り出されている。
【0042】
図6は第1実施の形態に係る左傾斜ロアメンバーを示す断面図、図7(a)は図3の7a−7a線断面図、図7(b)は図7(a)を分解した断面図である。
左傾斜ロアメンバー18は、一例として、断面略コ字状のアッパパネル71の下辺71a,71aにロアパネル72の折曲片72a,72aを溶接でそれぞれ接合することで、断面略ロ字状の閉断面に形成されている。
【0043】
この左傾斜ロアメンバー18は、後端部31が、左アッパメンバー14の前端部14a内に挟持されている。
左アッパメンバー14は、図7に示すように、車体内側に配置されたインナパネル74と、インナパネル74に溶接で接合されたアウタパネル75とを備えている。
【0044】
インナパネル74の上下の辺74aにアウタパネル75の上下の辺75aが溶接で接合されている。
インナパネル74の前端部およびアウタパネル75の前端部間に、左傾斜ロアメンバー18の後端部31が挟持され、アッパパネル71の後端部31の内壁71bがインナパネル74の前端部に溶接で接合され、アッパパネル71の後端部31の外壁71cがアウタパネルの前端部の外壁75bに溶接で接合されている。
これにより、左傾斜ロアメンバー18は、後端部31が、左アッパメンバー14の前端部14aに強固に連結されている。
【0045】
図8は図3の8−8線断面図、図9は図8の9−9線断面図である。
左傾斜ロアメンバー18は、前端部33の下辺77,77が水平に折り曲げられ、折り曲げられた下辺77,77がフロントサイドフレーム11の前端上部16に溶接で接合されている。
【0046】
さらに、左傾斜ロアメンバー18は、アッパパネル71の前端部において、前端部上面33aの縁辺から前端部内壁33bが下方に向けて鉛直に張り出されている。
張り出された前端部内壁33bの下辺78は、フロントサイドフレーム11の前端部11aの内壁79に溶接で接合されている。
【0047】
加えて、左傾斜ロアメンバー18は、ロアパネル72の前端部81において、突出片82が下方に向けて鉛直に折り曲げられている。
折り曲げられた突出片82は、フロントサイドフレーム11の前端部11の外壁83に溶接で接合されるとともに、突出片82の近傍の部位82aがフロントサイドフレーム11の前端部11aの外側突片84に溶接で接合されている。
これにより、左傾斜ロアメンバー18は、前端部33が、左フロントサイドフレーム11の前端上部16に強固に連結されている。
【0048】
図2に戻って、前輪23は、左フロントサイドフレーム11に対して車体外側に設けられている。よって、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上側(すなわち、前輪23の車体内側)に空間80(図1参照)を確保することが可能である。
そこで、左傾斜ロアメンバー18を左アッパメンバー14の前端部14aから左フロントサイドフレーム11の前端上部16まで延ばした。
よって、左傾斜ロアメンバー18の前端部33を、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上側(すなわち、前輪23の車体内側)の空間80に設けることができる。
【0049】
このように、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上側(すなわち、前輪23の車体内側)の空間80に設けることで、左傾斜ロアメンバー18が前輪23に干渉することを防ぐことができる。
これにより、相手車両が左フロントサイドフレーム11の前端部11aにオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を左傾斜ロアメンバー18に分散させて良好に吸収することができる。
【0050】
さらに、左傾斜ロアメンバー18に左衝撃吸収部材20を設け、左衝撃吸収部材20に左ヘッドライト22を支持した。
よって、左衝撃吸収部材20を左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上側に設けることができる。
これにより、相手車両が左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上側にオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を左衝撃吸収部材20で良好に吸収することができる。
【0051】
したがって、前輪23からフロントバンパビーム13までの間隔L(図1参照)が短い車両でも、相手車両が左フロントサイドフレーム11の前端部11aや前端部11aの上側にオフセット衝突した場合に、オフセット衝突で生じた衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0052】
図10は第1実施の形態に係る車体前部構造の衝撃荷重を支える領域を示す正面図である。
車体前部構造10は、左傾斜ロアメンバー18の前端部33が、左フロントサイドフレーム11の前端上部16(図3も参照)に強固に連結されている。
よって、図1に示すように、前輪23からフロントバンパビーム13までの間隔Lが短い車両でも、左傾斜ロアメンバー18の前端部33を、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに連結することができる。
【0053】
そして、左傾斜ロアメンバー18に左衝撃吸収部材20が取り付けられ、左衝撃吸収部材20に左ヘッドライト22が支持されることで、左ヘッドライト22が左フロントサイドフレーム11の前端上部16の上側に配置されている。
これにより、相手車両が左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上側(すなわち、P1位置)にオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を左ヘッドライト22を経て衝撃吸収部材20に伝え、衝撃吸収部材20などで良好に吸収することができる。
【0054】
一方、相手車両が左フロントサイドフレーム11の前端部11a(すなわち、P2位置)にオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を左フロントサイドフレーム11などで良好に吸収することができる。
【0055】
つぎに、相手車両86がP1位置、P2位置にオフセット衝突した場合を図11〜図13に基づいて詳しく説明する。
まず、相手車両86が、図10に示すP1位置、すなわち左ヘッドライト22にオフセット衝突した場合を図11〜図12に基づいて説明する。
【0056】
図11(a),(b)は第1実施の形態に係る車体前部構造の左ヘッドライトに相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
(a)において、車高が高い相手車両86が、図10に示すP1位置に前方からオフセット衝突した場合に、相手車両86のフロントサイドフレーム87に左ヘッドライト22を当てることができる。
【0057】
(b)において、車体前部構造10は、前述したように、左フロントサイドフレーム11の前端上部16((a)参照)に左傾斜ロアメンバー18の前端部33が強固に連結され、左傾斜ロアメンバー18に左衝撃吸収部材20を介して左ヘッドライト22が支持されている。
よって、相手車両86のフロントサイドフレーム87から作用した衝撃荷重F1の一部が左衝撃吸収部材20で吸収される。
【0058】
そして、残りの衝撃荷重を、左傾斜ロアメンバー18および左フロントサイドフレーム11の前端上部16に分散することができる。
左フロントサイドフレーム11は、車体前部構造10の主骨格を構成するため剛性が高い部材である。
よって、左フロントサイドフレーム11に分散された衝撃荷重F2は、左フロントサイドフレーム11で良好に吸収することができる。
【0059】
図12は第1実施の形態に係る車体前部構造の左傾斜ロアメンバーから左アッパメンバーに伝わった衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
左傾斜ロアメンバー18に分散された衝撃荷重F3は、左アッパメンバー14に矢印の如く伝わる。
【0060】
ここで、左アッパメンバー14は、左ホイールハウス27を介して左フロントサイドフレーム11に連結されている。よって、左アッパメンバー14は充分に剛性の高い部材である。
よって、左アッパメンバー14に伝えられた衝撃荷重F3を良好に吸収することができる。
これにより、相手車両86のフロントサイドフレーム87からの衝撃荷重F1を、車体前部構造10で良好に吸収することができる。
【0061】
つぎに、相手車両86が、図10に示すP2位置、すなわち、左フロントサイドフレーム11の前端部11aにオフセット衝突した場合を図13に基づいて説明する。
図13は第1実施の形態に係る車体前部構造の左フロントサイドフレームに相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
車高が略同じ高さの相手車両86が、図10に示すP2位置に前方からオフセット衝突した場合に、相手車両86のフロントサイドフレーム87にフロントバンパビーム13の左端部13aを当てることができる。
【0062】
フロントバンパビーム13の左端部13aは、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに設けられている。
よって、相手車両86のフロントサイドフレーム87に左フロントサイドフレーム11の前端部11aを当てたことになる。
【0063】
ここで、車体前部構造10は、前述したように、左フロントサイドフレーム11の前端上部16に左傾斜ロアメンバー18の前端部33が強固に連結されている。
よって、相手車両86のフロントサイドフレーム87からの衝撃荷重F1を、左フロントサイドフレーム11の前端部11aから、左フロントサイドフレーム11に衝撃荷重F4として伝えるとともに、前端部33から左傾斜ロアメンバー18に分散することができる。
【0064】
左フロントサイドフレーム11は、前述したように、車体前部構造10の主骨格を構成するため剛性が高い部材である。
よって、左フロントサイドフレーム11に分散された衝撃荷重F4は、左フロントサイドフレーム11で良好に吸収することができる。
【0065】
一方、左傾斜ロアメンバー18に分散された衝撃荷重F5は、左アッパメンバー14に矢印の如く伝わる。
左アッパメンバー14は、前述したように、左ホイールハウス27を介して左フロントサイドフレーム11に連結されている。すなわち、左アッパメンバー14は充分に剛性の高い部材である。
【0066】
よって、左アッパメンバー14に伝えられた衝撃荷重F5を良好に吸収することができる。
これにより、相手車両86のフロントサイドフレーム87からの衝撃荷重F1を、車体前部構造10で良好に吸収することができる。
【0067】
つぎに、第2実施の形態の車体前部構造100を図14に基づいて説明する。なお、第2実施の形態において、第1実施の形態の車体前部構造10と同一類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0068】
図14は本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)を示す断面図である。
第2実施の形態の車体前部構造100は、左傾斜ロアメンバー18の前端部33をボルト91およびナット92で左フロントサイドフレーム11の前端部11aに取り付けたもので、その他の構成は第1実施の形態の車体前部構造10と同じである。
【0069】
車体前部構造100は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上壁94および下壁95に上下の貫通孔94a,95aが同軸上に形成され、前端部11a内にロアカラー97が上下の貫通孔94a,95aと同軸上に配置され、ロアカラー97の上端部97aが上壁94に溶接で接合され、ロアカラー97の下端部97bが下壁95に溶接で接合されている。
ロアカラー97は中空に形成された筒体である。
【0070】
また、車体前部構造100は、左傾斜ロアメンバー18の前端部33の上壁98および下壁99に上下の貫通孔98a,99aが貫通孔94a,95aと同軸上に形成され、前端部33内にアッパカラー101が上下の貫通孔98a,99aと同軸上に配置され、アッパカラー101の上端部101aが上壁98に溶接で接合され、アッパカラー101の下端部101bが下壁99に溶接で接合されている。
アッパカラー101は中空に形成された筒体である。
【0071】
さらに、車体前部構造100は、左傾斜ロアメンバー18の上壁98の上面に貫通孔98aと同軸上にナット92が溶接で接合されている。
すなわち、下貫通孔95a、ロアカラー97、上貫通孔94a、下貫通孔99a、アッパカラー101、上貫通孔98aおよびナット92が同軸上に設けられている。
【0072】
下貫通孔95a、ロアカラー97、上貫通孔94a、下貫通孔99a、アッパカラー101および上貫通孔98aにボルト91が差し込まれ、ねじ部91aがナット92にねじ結合されている。
これにより、左フロントサイドフレーム11の前端上部16に、左傾斜ロアメンバー18の前端部33がボルト91およびナット92で連結されている。
【0073】
このように、左フロントサイドフレーム11の前端上部16に、左傾斜ロアメンバー18の前端部33を連結することで、第1実施の形態の車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。
加えて、左フロントサイドフレーム11の前端上部16に左傾斜ロアメンバー18の前端部33をボルト91・ナット92で連結することで、溶接作業による接合箇所を減らすことができる。
【0074】
なお、前記第1、第2の実施の形態で示した左フロントサイドフレーム11、左アッパメンバー14、左傾斜ロアメンバー18、左衝撃吸収部材20、左ヘッドライト22などの形状は適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられ、フロントサイドフレームの前端部上側にヘッドライトが設けられた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す側面図である。
【図2】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
【図4】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図である。
【図5】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す平面図である。
【図6】第1実施の形態に係る左傾斜ロアメンバーを示す断面図である。
【図7】(a)は図3の7a−7a線断面図、(b)は図7(a)を分解した断面図である。
【図8】図3の8−8線断面図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【図10】第1実施の形態に係る車体前部構造の衝撃荷重を支える領域を示す正面図である。
【図11】第1実施の形態に係る車体前部構造の左ヘッドライトに相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
【図12】第1実施の形態に係る車体前部構造の左傾斜ロアメンバーから左アッパメンバーに伝わった衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
【図13】第1実施の形態に係る車体前部構造の左フロントサイドフレームに相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
【図14】本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
10,100…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、11a…左フロントサイドフレームの前端部、14…左アッパメンバー(アッパメンバー)、14a…左アッパメンバーの前端部、16…前端上部、18…左傾斜ロアメンバー(傾斜ロアメンバー)、20…左衝撃吸収部材(衝撃吸収部材)、22…左ヘッドライト(ヘッドライト)、31…後端部、32…傾斜部、33…前端部、51,61…細胞状の部位、52,62…軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、前記フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられ、前記フロントサイドフレームの前端部上側にヘッドライトが設けられた車体前部構造において、
前記アッパメンバーの前端部から前記フロントサイドフレームの前端上部まで車体前下方に向けて斜め下方に延びる傾斜ロアメンバーと、
前記傾斜ロアメンバーに設けられ、前記ヘッドライトを支持する衝撃吸収部材と、
を備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、前記傾斜ロアメンバーが塑性変形する車体前後方向の衝撃荷重より小さい衝撃荷重で塑性変形するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記衝撃吸収部材は、
複数の細胞状の部位を有するハニカム構造に形成され、
前記細胞状の部位の軸線が車体前後方向に向けて配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−173047(P2009−173047A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10608(P2008−10608)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】