車体前部構造
【課題】ラジエータユニットの組付け性を確保しつつ、衝突時のシュラウド部材によるエネルギ吸収を可能とし、結合部の折れ変形に対する耐力の向上を図る車体前部構造を提供する。
【解決手段】シュラウド部材30を、ラジエータユニット20の上部で車幅方向に延びる丸パイプ部材31と、丸パイプ部材31とエプロンレインとを連結する角パイプ部材32とで構成し、角パイプ部材32の上部に丸パイプ部材31の潰し端部31cを、間隔を隔てて結合し、潰し端部31cは丸パイプ部材31のパイプ部31aに傾斜部31bを介して形成し、両パイプ部材31,32の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材32の端部と、丸パイプ部材31の傾斜部31bとが干渉するように角パイプ部材32の端部を、丸パイプ部材31の傾斜部31b下方とオーバラップする位置まで延設したことを特徴とする。
【解決手段】シュラウド部材30を、ラジエータユニット20の上部で車幅方向に延びる丸パイプ部材31と、丸パイプ部材31とエプロンレインとを連結する角パイプ部材32とで構成し、角パイプ部材32の上部に丸パイプ部材31の潰し端部31cを、間隔を隔てて結合し、潰し端部31cは丸パイプ部材31のパイプ部31aに傾斜部31bを介して形成し、両パイプ部材31,32の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材32の端部と、丸パイプ部材31の傾斜部31bとが干渉するように角パイプ部材32の端部を、丸パイプ部材31の傾斜部31b下方とオーバラップする位置まで延設したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラジエータシュラウドとラジエータとから成るラジエータユニットを、エプロンレインフォースメントに結合するシュラウド部材を備えたような車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車体前部構造としては、特許文献1に開示されたものがある。
すなわち、エンジンルームの下方において車体の前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを設け、これら左右の各フロントサイドフレームの前端部には、フランジ(面部参照)を介してクラッシュカンをそれぞれ取付けると共に、これら左右のクラッシュカン相互間には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメントを横架している。
【0003】
また、ラジエータユニットの上部に対応して、車幅方向に延びるシュラウドアッパ部と、このシュラウドアッパ部の左右両サイドから斜め後方に延びるシュラウドサイド部と、を備えたシュラウド部材を設け、このシュラウド部材の後端部をエプロンレインフォースメントに連結したものであり、ここで、上述のシュラウド部材は平板部材を折り曲げて断面門形状に形成したものであって、衝突荷重、特に高速前突時の衝突荷重を受ける構造にはなっていない。
【0004】
要するに、特許文献1に開示された構造は、エンジンルームの下方における左右一対のフロントサイドフレームで衝突荷重を受けて、その衝撃エネルギを吸収することはできるが、エンジンルームの上部、詳しくは、ラジエータユニットの上部と対応する高さ位置においては衝突荷重を受けて、エネルギ吸収を図ることができず、衝突初期より広い面積にて衝撃を吸収することができない問題点があった。
【0005】
また、上記特許文献1に開示されたシュラウド部材は、シュラウドアッパ部と左右のシュラウドサイド部とを一体形成したものであり、ラジエータユニットを車両の上方から下方に降下させて組付ける車両に対しては適用することができない問題点があった。
そこで、ラジエータユニットの上方からの組付け性と、衝突時のシュラウド部材によるエネルギ吸収とを考慮すると、図9、図10に示す比較例1と、図11、図12に示す比較例2とが考えられる。
【0006】
図9、図10に示す比較例1は、ラジエータ70とラジエータシュラウド71とを備えたラジエータユニット72を設ける一方、ラジエータユニット72の上部で車幅方向に延設された丸パイプ部材73と、この丸パイプ部材73とエプロンレインフォースメント(図示せず)とを前後方向に連結する別の丸パイプ部材74,74と、でシュラウド部材75を構成し、シュラウドアッパメンバに相当する丸パイプ部材73の両端部と、シュラウドサイドメンバに相当する丸パイプ部材74,74の前端部と、にパイプ部材73,74を偏平に潰した取付け部73a,74aをそれぞれ形成し、各取付け部73a,74aを片側一対のボルト76,ナット77で結合すべく構成したものである。
【0007】
ここで、上述のナット77は取付け部74aの下面に溶接固定し、ボルト76を上方から締結するように構成したものである。
このように構成すると、左右一対の丸パイプ部材74を車体に固定した状態下において、シュラウドアッパメンバに相当する丸パイプ部材73の着脱が可能となるので、ラジエータユニット72の上方からの組付けが可能となる。
【0008】
しかしながら、各丸パイプ部材73,74を組付けた状態下において、衝突荷重が入力すると、取付け部73a,74aの基部73b,74bの強度が弱い関係上、丸パイプ部材73,74の接続部分は、図10に仮想線で示すように山折れ変形して、衝撃エネルギの吸収が不可能となる問題点があった。
【0009】
図11、図12に示す比較例2は、ラジエータ80とラジエータシュラウド81とを備えたラジエータユニット82を設ける一方、ラジエータユニット82の上部で車幅方向に延設された角パイプ部材83と、この角パイプ部材83とエプロンレインフォースメント(図示せず)とを前後方向に連結する別の角パイプ部材84,84と、でシュラウド部材85を構成し、シュラウドアッパメンバに相当する角パイプ部材83の両端部と、シュラウドサイドメンバに相当する角パイプ部材84の前端部とを、上下一対かつ断面コ字状のプレート86,86と、一対のボルト87、ナット88とをそれぞれ用いて、結合したものである。
【0010】
ここで、上述のナット88は上下一対のプレート86,86のうち下側のプレート86の下面に溶接固定し、ボルト87を上方から締結するように構成したものである。
このように構成すると、左右一対の角パイプ部材84,84を車体に固定した状態下において、シュラウドアッパメンバに相当する角パイプ83の着脱が可能となるのでラジエータユニット82の上方からの組付けが可能となる。
【0011】
しかしながら、それぞれの角パイプ部材83,84を組付けた状態下において、衝突荷重が入力すると、これら両パイプ部材83,84の接続部分の中でパイプ分断部89の強度が弱い関係上、該パイプ分断部89にて、図12に仮想線(但し、図12の仮想線においては山折れの頂部が車両後方に相当し、山折れの谷部が車両前方に相当する)で示すように山折れ変形して、衝撃エネルギの吸収が不可能となる問題点があった。
【特許文献1】特開2005−231435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明は、ラジエータユニットの上部で車幅方向に延設する丸パイプ部材と、この丸パイプ部材とエプロンレインフォースメントとを前後方向に連結する角パイプ部材と、でシュラウド部材を構成し、角パイプ部材の上部に丸パイプ部材の潰し端部を、間隔を隔てて結合すると共に、該潰し端部は丸パイプ部材のパイプ部に傾斜部を介して形成し、両パイプ部材の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するように上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部下方とオーバラップする位置まで延設することで、ラジエータユニットの車両上方からの組付け性を確保しつつ、衝突時(特に高速前突時)のシュラウド部材による衝撃エネルギ吸収を可能にすると共に、結合部の折れ変形に対する耐力の向上を図ることができる車体前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明による車体前部構造は、ラジエータユニットをエプロンレインフォースメントに結合するシュラウド部材を備えた車体前部構造であって、上記シュラウド部材を、ラジエータユニットの上部で車幅方向に延設された丸パイプ部材と、該丸パイプ部材とエプロンレインフォースメントとを前後方向に連結する角パイプ部材とで構成し、上記角パイプ部材の上部に丸パイプ部材の潰し端部を、間隔を隔てて結合すると共に、該潰し端部は丸パイプ部材のパイプ部に傾斜部を介して形成され、両パイプ部材の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するように上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部下方とオーバラップする位置まで延設したものである。
【0014】
上記構成によれば、シュラウドサイドメンバに相当する角パイプ部材の上部に、シュラウドアッパメンバに相当する丸パイプ部材を設けたので、ラジエータユニットの上方からの組付け性を確保することができる。
しかも、車両の衝突時(特に高速前突時)に、両パイプ部材の結合部が山折れ変形しても、この山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するので、この干渉により結合部の折れ変形に対する耐力の向上を図って、シュラウド部材による衝撃エネルギの吸収を可能とすることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記角パイプ部材に固定される締結部材固定プレートにより両パイプ部材を、間隔を隔てて結合したものである。
上記構成によれば、締結部材固定プレートを利用して、両パイプ部材間に間隔を有する結合状態が達成できる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記角パイプ部材に固定されるリベットナットのフランジ部により両パイプ部材を、間隔を隔てて結合したものである。
上記構成によれば、リベットナットのフランジ部を利用して、両パイプ部材間に間隔を有する結合状態が達成できる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部に対応した傾斜形状と成したものである。
上記構成によれば、上述の傾斜形状により、結合部の山折れ変形時の干渉量を拡大して、折れ変形に対する耐力の向上を図ることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記丸パイプ部材の潰し端部と傾斜部との間に、山折れ変形の癖を付けた状態で、丸パイプ部材を角パイプ部材に固定した
ものである。
上記構成によれば、上記丸パイプ部材に山折れ変形の癖を付けたので、両パイプ部材が干渉して、折れ変形に対する耐力が向上する山折れ方向への変形を誘発することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、ラジエータユニットの上部で車幅方向に延設する丸パイプ部材と、この丸パイプ部材とエプロンレインフォースメントとを前後方向に連結する角パイプ部材と、でシュラウド部材を構成し、角パイプ部材の上部に丸パイプ部材の潰し端部を、間隔を隔てて結合すると共に、該潰し端部は丸パイプ部材のパイプ部に傾斜部を介して形成し、両パイプ部材の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するように上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部下方とオーバラップする位置まで延設したので、ラジエータユニットの車両上方からの組付け性を確保しつつ、衝突時(特に高速前突時)のシュラウド部材による衝撃エネルギ吸収を可能にすると共に、結合部の折れ変形に対する耐力の向上を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ラジエータユニットの組付け性を確保しつつ、衝突時のシュラウド部材による衝撃エネルギ吸収を可能にすると共に、結合部の折れ変形に対する耐力の向上を図るという目的を、ラジエータユニットをエプロンレインフォースメントに結合するシュラウド部材を備えた車体前部構造であって、上記シュラウド部材を、ラジエータユニットの上部で車幅方向に延設された丸パイプ部材と、該丸パイプ部材とエプロンレインフォースメントとを前後方向に連結する角パイプ部材とで構成し、上記角パイプ部材の上部に丸パイプ部材の潰し端部を、間隔を隔てて結合すると共に、該潰し端部は丸パイプ部材のパイプ部に傾斜部を介して形成され、両パイプ部材の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するように上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部下方とオーバラップする位置まで延設するという構造にて実現した。
【実施例1】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車体前部構造を示し、図1において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設けている。
【0022】
このダッシュロアパネル3の下部には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル(図示せず)を接合すると共に、上述のダッシュロアパネル3およびフロアパネルの車幅方向中央部には、車室2内に突出して車体の前後方向に延びるトンネル部4を、一体または一体的に形成している。このトンネル部4は車体剛性の中心となるものである。
【0023】
上述のダッシュロアパネル3の上部には、ダッシュアッパパネル5を接合固定し、このダッシュアッパパネル5の後側上部と底片部との間には断面略逆L字状のカウルパネル6を接合固定すると共に、車幅方向に延びるダッシュアッパパネル5と、車幅方向に延びるカウルパネル6と、左右両サイド部において前後方向に延びるカウルサイドパネル7,7と、によりカウル部8を構成している。
【0024】
上述のカウル部8の前方延出部9(ダッシュアッパパネル5の前方延出部、または、カウルフロントパネル)の車幅方向両サイド部はサスタワー10,10の後部に接合固定されている。
このサスタワー10は、フロントサスペンションのダンパおよびコイルスプリング等を支持するもので、該サスタワー10の前後両部にはホイールアーチ部11,12が、一体または一体的に形成されている。
【0025】
また、上述の各サスタワー10,10の上部車外側には、エプロンレインインナとエプロンレインアウタとを備えたエプロンレインフォースメント13,13がそれぞれ接合固定されている。これら左右一対のエプロンレインフォースメント13,13は車体の前後方向に延びる車体部材である。
【0026】
さらに、上述のダッシュロアパネル3からエンジンルーム1の下方両サイドにおいて、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム14,14を設けている。このフロントサイドフレーム14は、フロントサイドフレームインナと、フロントサイドフレームアウタと、を接合して前後方向に延びる閉断面を備えた車体剛性部材であって、フロントサイドフレームインナの接合フランジ部15は、前後のホイールアーチ部11,12およびサスタワー10の車幅方向内側の面に接合固定されている。
【0027】
上述の各フロントサイドフレーム14,14の前端部には、フランジ部16,16を介してクラッシュカン17,17(衝撃エネルギ吸収部材)がそれぞれ接続されており、これら左右一対のクラッシュカン17,17相互間にはバンパレインフォースメント18が車幅方向に延びるように取付けられている。
上述のバンパレインフォースメント18において、クラッシュカン17と前後方向に対向する部位には、プリクラッシュカン19,19が一体形成されている。
【0028】
上述のバンパレインフォースメント18には、車両後方が開口する開口部が形成されており、バンパレインフォースメント18のリヤ側の面に接合固定して上記開口部を閉塞するクロージングプレート(図示せず)には、ラジエータユニット20の前部が取付けられている。
【0029】
このラジエータユニット20は、エンジン冷却水を走行風で空冷するラジエータ21と、ラジエータシュラウド22とを備えており、また、該ラジエータシュラウド22は、上片部22Uと、下片部22Lと、左右の側片部22S,22Sとを方形枠状に組合せた合成樹脂製のシュラウドである。
このラジエータユニット20の上部を上述のエプロンレインフォースメント13に結合するシュラウド部材30(シュラウドメンバ)を備えている。
【0030】
図2は、図1の要部のみを抽出して示す斜視図であって、図1、図2に示すように、上述のシュラウド部材30は、ラジエータユニット20の上部で車幅方向に延設されて、シュラウドアッパメンバに相当する丸パイプ部材31と、この丸パイプ部材31の左右両端部と上述のエプロンレインフォースメント13の前部とを前後方向に連結しシュラウドサイドメンバに相当する左右一対の角パイプ部材32,32と、で構成されている。
【0031】
次に、図3、図4を参照して、丸パイプ部材31と角パイプ部材32との結合構造について説明する。図3、図4は車両左側の両パイプ部材31,32の結合構造を示すが、車両右側の結合構造は、左側のそれと左右対称に構成されている。
【0032】
図3、図4に示すように、上述の丸パイプ部材31のパイプ部31aの端部には傾斜部31bを介して、偏平な潰し端部31cが一体形成されている。
【0033】
図3に示すように、角パイプ部材32の上部に丸パイプ部材31の偏平な潰し端部31cを、間隔Lを隔てて結合するが、この実施例1では、角パイプ部材32に固定される締結部材固定プレートとしてのナットプレート33により、両パイプ部材31,32を、間隔Lを隔てて結合するように構成している。
【0034】
このため、図4に示すナットプレート33を設けている。このナットプレート33は、上片33aと前後の側片33b,33bとを一体形成した断面門形状のプレートであって、該ナットプレート33の上片33aには、一対のボルト挿通孔34,34を形成すると共に、このボルト挿通孔34に連続するように、上片33aの下面には、一対のナット35,35を溶接固定している。
上述のナット35を有するナットプレート33を、角パイプ部材32の前端部に取付ける関係上、該角パイプ部材32の上面部には、大径のナット配設孔36,36を一体形成している。
【0035】
そして、図4に示す分解状態から図3に示すように、角パイプ32の前端部に、一対のナット35,35をもったナットプレート33を装着し、ナットプレート33の側片33bと角パイプ32の前後の外側面部とを、アーク溶接して、これら両者32,33を一体的に固定したものである。
【0036】
また、丸パイプ部材31の潰し端部31cには、上記一対のナット35,35に対応して、一対のボルト挿通孔37,37を形成し、ナットプレート33上面に丸パイプ部材31の潰し端部31cを載置した後に、一対のボルト38,38を、上下に一致するボルト挿通孔37,34を介して、ナットプレート33のナット35に締結することで、両パイプ部材31,32を結合したものである。
【0037】
ここで、図3に示すように、角パイプ部材32の端部32aは、丸パイプ部材31の傾斜部31b下方とオーバラップする位置まで車幅方向内方へ延設されると共に、丸パイプ部材31の潰し端部31cと傾斜部31bとの間には、山折れ変形の癖を付けた状態で、丸パイプ部材31を角パイプ部材32に固定したものである。
【0038】
図5に仮想線βで示すように、潰し端部31cをその基部に対して車外側端部が下方に位置するように、予め該潰し端部31cをスラント形成し、組付け完了時に図5の実線状態に成るように形成すると、山折れ変形の癖を付与することができる。
【0039】
そして、図3に示すように、丸パイプ部材31を角パイプ部材32に組付けた後、車両衝突時において、両パイプ部材31,32の結合部αが山折れ変形した時、角パイプ部材32の端部と、丸パイプ部材31の傾斜部31bとが互いに干渉して、衝突耐力の向上を図るように構成したものである。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0040】
このように、図1〜図5で示した実施例の車体前部構造は、ラジエータユニット20をエプロンレインフォースメント13に結合するシュラウド部材30を備えた車体前部構造であって、上記シュラウド部材30を、ラジエータユニット20の上部で車幅方向に延設された丸パイプ部材31と、該丸パイプ部材31とエプロンレインフォースメント13とを前後方向に連結する角パイプ部材32とで構成し、上記角パイプ部材32の上部に丸パイプ部材31の潰し端部31cを、間隔Lを隔てて結合すると共に、該潰し端部31cは丸パイプ部材31のパイプ部31aに傾斜部31bを介して形成され、両パイプ部材31,32の結合部αの山折れ変形時に、角パイプ部材32の端部32aと、丸パイプ部材31の傾斜部31bとが干渉するように上記角パイプ部材32の端部32aを、丸パイプ部材31の傾斜部31b下方とオーバラップする位置まで延設したものである(図1、図3参照)。
【0041】
この構成によれば、シュラウドサイドメンバに相当する角パイプ部材32の上部に、シュラウドアッパメンバに相当する丸パイプ部材31を設けたので、ラジエータユニット20の上方からの組付け性を確保することができる。
しかも、車両の衝突時(特に高速前突時)に、両パイプ部材31,32の結合部αが山折れ変形しても、この山折れ変形時に、角パイプ部材32の端部32aと、丸パイプ部材31の傾斜部31bとが干渉するので、この干渉により結合部αの折れ変形に対する耐力の向上を図って、シュラウド部材30による衝撃エネルギの吸収を可能とすることができる。
【0042】
さらに、フロントサイドフレーム14はエンジンルーム1の下方に位置し、シュラウド部材30はエンジンルーム1の上方、詳しくはラジエータユニット20の上部と対応する高さ位置に存在するので、エンジンルーム1の上下両位置にそれぞれ配設されたフロントサイドフレーム14と、シュラウド部材30とにより、衝突初期より広い面積で衝撃エネルギを吸収することができる。
【0043】
また、丸パイプ部材31および角パイプ部材32の何れもが閉断面部材であるから、ラジエータユニット20の支持剛性の向上を図ることもでき、荷重伝達性能も向上する。
【0044】
また、上記角パイプ部材32に固定される締結部材固定プレート(ナットプレート33参照)により両パイプ部材31,32を、間隔Lを隔てて結合したものである(図3参照)。
この構成によれば、締結部材固定プレート(ナットプレート33参照)を利用して、両パイプ部材31,32間に間隔Lを有する結合状態が達成できる。換言すれば、ナットプレート33を、間隔L確保用の高さ調整部材として用いることができる。
【0045】
加えて、上記丸パイプ部材31の潰し端部31cと傾斜部31bとの間に、山折れ変形の癖(図5の仮想線β参照)を付けた状態で、丸パイプ部材31を角パイプ部材32に固定したものである(図5参照)。
この構成によれば、上記丸パイプ部材31に山折れ変形の癖を付けたので、両パイプ部材31,32が干渉して、折れ変形に対する耐力が向上する山折れ方向への変形を誘発することができる。
【実施例2】
【0046】
図6は車体前部構造の他の実施例を示し、先の実施例1ではナットプレート33により両パイプ部材31,32を、間隔を隔てて結合したが、図6に示すこの実施例2では、筒体から成るスペーサ40により両パイプ部材31,32を、間隔を隔てて結合すべく構成したものである。
【0047】
すなわち、角パイプ部材32の上面部には、一対のスペーサ挿通孔41,41を形成し、所定長さのスペーサ40を該スペーサ挿通孔41から角パイプ部材32内に挿入して、スペーサ40の下端を、角パイプ部材32の内底部に当接させ、スペーサ40の上部を角パイプ部材32の上面部から所定量上方に突出させ、さらに、スペーサ挿通孔41の口縁上部においてスペーサ40の全外周を角パイプ部材32に溶接固定したものである。
また、上記スペーサ40と対応して角パイプ部材32の下部には、一対のナット42,42を溶接固定している。
【0048】
そして、角パイプ部材32から上方に突出するスペーサ40,40上に丸パイプ31の潰し端部31cを上戴し、一対のボルト38を、ボルト挿通孔37およびスペーサ40の内部を介して、ナット42に締結することで、両パイプ部材31,32を、間隔Lを隔てて結合したものである。この間隔Lはスペーサ40の角パイプ部材32からの突出量と等しくなるため、間隔Lの設定が容易となる。
【0049】
このように構成しても、その他の構成、作用、効果については先の実施例1と同様であるから、図6において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0050】
図7、図8は車体前部構造のさらに他の実施例を示すものである。
この実施例においては、図8に示すように、角パイプ部材32の上面部に固定される一対のリベットナット50のフランジ部50aにより、両パイプ31,32を間隔Lを隔てて結合したものである。
【0051】
また、図7、図8に示すように、角パイプ部材32の端部を、丸パイプ部材31の傾斜部31bに対応した傾斜形状と成し、該角パイプ部材32に車幅方向内方が低く、車幅方向外方が高くなるスラント部32Sを形成したものである。
【0052】
そして、角パイプ部材32から上方に突出するリベットナット50のフランジ部50a,50a上に丸パイプ31の潰し端部31c上戴し、一対のボルト38,38を、ボルト挿通孔37,37を介して、リベットナット50,50に締結することで、両パイプ部材31,32を、間隔Lを隔てて結合したものである。この間隔Lはリベットナット50のフランジ部50aの高さと等しくなる。
【0053】
このように、図7、図8で示した実施例においては、上記角パイプ部材32に固定されるリベットナット50のフランジ部50aにより両パイプ部材31,32を、間隔Lを隔てて結合したものである(図8参照)。
この構成によれば、リベットナット50のフランジ部50aを利用して、両パイプ部材31,32間に間隔Lを有する結合状態が達成できる。
【0054】
さらに、上記角パイプ部材32の端部を、丸パイプ部材31の傾斜部31bに対応した傾斜形状と成したものである(図8参照)。
この構成によれば、上述の傾斜形状(スラント部32S参照)により、結合部αの山折れ変形時の両パイプ部材31,32干渉量を拡大して、折れ変形に対する耐力の向上を図ることができる。
【0055】
図7、図8で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図7、図8において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0056】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の締結部材固定プレートは、実施例のナットプレート33に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の車体前部構造を示す斜視図
【図2】図1の要部拡大斜視図
【図3】両パイプ部材の結合構造を示す正面図
【図4】図3の分解斜視図
【図5】山折れ変形の癖を付与した丸パイプの説明図
【図6】車体前部構造の他の実施例を示す正面図
【図7】車体前部構造のさらに他の実施例を示す要部の斜視図
【図8】図7の両パイプ部材の結合構造を示す正面図
【図9】比較例を示す要部斜視図
【図10】図9の両パイプ部材の結合構造を示す正面図
【図11】他の比較例を示す要部の斜視図
【図12】図11の両パイプ部材の結合構造を示す正面図
【符号の説明】
【0058】
13…エプロンレインフォースメント
20…ラジエータユニット
30…シュラウド部材
31…丸パイプ部材
31a…パイプ部
31b…傾斜部
31c…潰し端部
32…角パイプ部材
33…ナットプレート(締結部材固定プレート)
50…リベットナット
50a…フランジ部
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラジエータシュラウドとラジエータとから成るラジエータユニットを、エプロンレインフォースメントに結合するシュラウド部材を備えたような車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車体前部構造としては、特許文献1に開示されたものがある。
すなわち、エンジンルームの下方において車体の前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを設け、これら左右の各フロントサイドフレームの前端部には、フランジ(面部参照)を介してクラッシュカンをそれぞれ取付けると共に、これら左右のクラッシュカン相互間には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメントを横架している。
【0003】
また、ラジエータユニットの上部に対応して、車幅方向に延びるシュラウドアッパ部と、このシュラウドアッパ部の左右両サイドから斜め後方に延びるシュラウドサイド部と、を備えたシュラウド部材を設け、このシュラウド部材の後端部をエプロンレインフォースメントに連結したものであり、ここで、上述のシュラウド部材は平板部材を折り曲げて断面門形状に形成したものであって、衝突荷重、特に高速前突時の衝突荷重を受ける構造にはなっていない。
【0004】
要するに、特許文献1に開示された構造は、エンジンルームの下方における左右一対のフロントサイドフレームで衝突荷重を受けて、その衝撃エネルギを吸収することはできるが、エンジンルームの上部、詳しくは、ラジエータユニットの上部と対応する高さ位置においては衝突荷重を受けて、エネルギ吸収を図ることができず、衝突初期より広い面積にて衝撃を吸収することができない問題点があった。
【0005】
また、上記特許文献1に開示されたシュラウド部材は、シュラウドアッパ部と左右のシュラウドサイド部とを一体形成したものであり、ラジエータユニットを車両の上方から下方に降下させて組付ける車両に対しては適用することができない問題点があった。
そこで、ラジエータユニットの上方からの組付け性と、衝突時のシュラウド部材によるエネルギ吸収とを考慮すると、図9、図10に示す比較例1と、図11、図12に示す比較例2とが考えられる。
【0006】
図9、図10に示す比較例1は、ラジエータ70とラジエータシュラウド71とを備えたラジエータユニット72を設ける一方、ラジエータユニット72の上部で車幅方向に延設された丸パイプ部材73と、この丸パイプ部材73とエプロンレインフォースメント(図示せず)とを前後方向に連結する別の丸パイプ部材74,74と、でシュラウド部材75を構成し、シュラウドアッパメンバに相当する丸パイプ部材73の両端部と、シュラウドサイドメンバに相当する丸パイプ部材74,74の前端部と、にパイプ部材73,74を偏平に潰した取付け部73a,74aをそれぞれ形成し、各取付け部73a,74aを片側一対のボルト76,ナット77で結合すべく構成したものである。
【0007】
ここで、上述のナット77は取付け部74aの下面に溶接固定し、ボルト76を上方から締結するように構成したものである。
このように構成すると、左右一対の丸パイプ部材74を車体に固定した状態下において、シュラウドアッパメンバに相当する丸パイプ部材73の着脱が可能となるので、ラジエータユニット72の上方からの組付けが可能となる。
【0008】
しかしながら、各丸パイプ部材73,74を組付けた状態下において、衝突荷重が入力すると、取付け部73a,74aの基部73b,74bの強度が弱い関係上、丸パイプ部材73,74の接続部分は、図10に仮想線で示すように山折れ変形して、衝撃エネルギの吸収が不可能となる問題点があった。
【0009】
図11、図12に示す比較例2は、ラジエータ80とラジエータシュラウド81とを備えたラジエータユニット82を設ける一方、ラジエータユニット82の上部で車幅方向に延設された角パイプ部材83と、この角パイプ部材83とエプロンレインフォースメント(図示せず)とを前後方向に連結する別の角パイプ部材84,84と、でシュラウド部材85を構成し、シュラウドアッパメンバに相当する角パイプ部材83の両端部と、シュラウドサイドメンバに相当する角パイプ部材84の前端部とを、上下一対かつ断面コ字状のプレート86,86と、一対のボルト87、ナット88とをそれぞれ用いて、結合したものである。
【0010】
ここで、上述のナット88は上下一対のプレート86,86のうち下側のプレート86の下面に溶接固定し、ボルト87を上方から締結するように構成したものである。
このように構成すると、左右一対の角パイプ部材84,84を車体に固定した状態下において、シュラウドアッパメンバに相当する角パイプ83の着脱が可能となるのでラジエータユニット82の上方からの組付けが可能となる。
【0011】
しかしながら、それぞれの角パイプ部材83,84を組付けた状態下において、衝突荷重が入力すると、これら両パイプ部材83,84の接続部分の中でパイプ分断部89の強度が弱い関係上、該パイプ分断部89にて、図12に仮想線(但し、図12の仮想線においては山折れの頂部が車両後方に相当し、山折れの谷部が車両前方に相当する)で示すように山折れ変形して、衝撃エネルギの吸収が不可能となる問題点があった。
【特許文献1】特開2005−231435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明は、ラジエータユニットの上部で車幅方向に延設する丸パイプ部材と、この丸パイプ部材とエプロンレインフォースメントとを前後方向に連結する角パイプ部材と、でシュラウド部材を構成し、角パイプ部材の上部に丸パイプ部材の潰し端部を、間隔を隔てて結合すると共に、該潰し端部は丸パイプ部材のパイプ部に傾斜部を介して形成し、両パイプ部材の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するように上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部下方とオーバラップする位置まで延設することで、ラジエータユニットの車両上方からの組付け性を確保しつつ、衝突時(特に高速前突時)のシュラウド部材による衝撃エネルギ吸収を可能にすると共に、結合部の折れ変形に対する耐力の向上を図ることができる車体前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明による車体前部構造は、ラジエータユニットをエプロンレインフォースメントに結合するシュラウド部材を備えた車体前部構造であって、上記シュラウド部材を、ラジエータユニットの上部で車幅方向に延設された丸パイプ部材と、該丸パイプ部材とエプロンレインフォースメントとを前後方向に連結する角パイプ部材とで構成し、上記角パイプ部材の上部に丸パイプ部材の潰し端部を、間隔を隔てて結合すると共に、該潰し端部は丸パイプ部材のパイプ部に傾斜部を介して形成され、両パイプ部材の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するように上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部下方とオーバラップする位置まで延設したものである。
【0014】
上記構成によれば、シュラウドサイドメンバに相当する角パイプ部材の上部に、シュラウドアッパメンバに相当する丸パイプ部材を設けたので、ラジエータユニットの上方からの組付け性を確保することができる。
しかも、車両の衝突時(特に高速前突時)に、両パイプ部材の結合部が山折れ変形しても、この山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するので、この干渉により結合部の折れ変形に対する耐力の向上を図って、シュラウド部材による衝撃エネルギの吸収を可能とすることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記角パイプ部材に固定される締結部材固定プレートにより両パイプ部材を、間隔を隔てて結合したものである。
上記構成によれば、締結部材固定プレートを利用して、両パイプ部材間に間隔を有する結合状態が達成できる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記角パイプ部材に固定されるリベットナットのフランジ部により両パイプ部材を、間隔を隔てて結合したものである。
上記構成によれば、リベットナットのフランジ部を利用して、両パイプ部材間に間隔を有する結合状態が達成できる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部に対応した傾斜形状と成したものである。
上記構成によれば、上述の傾斜形状により、結合部の山折れ変形時の干渉量を拡大して、折れ変形に対する耐力の向上を図ることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記丸パイプ部材の潰し端部と傾斜部との間に、山折れ変形の癖を付けた状態で、丸パイプ部材を角パイプ部材に固定した
ものである。
上記構成によれば、上記丸パイプ部材に山折れ変形の癖を付けたので、両パイプ部材が干渉して、折れ変形に対する耐力が向上する山折れ方向への変形を誘発することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、ラジエータユニットの上部で車幅方向に延設する丸パイプ部材と、この丸パイプ部材とエプロンレインフォースメントとを前後方向に連結する角パイプ部材と、でシュラウド部材を構成し、角パイプ部材の上部に丸パイプ部材の潰し端部を、間隔を隔てて結合すると共に、該潰し端部は丸パイプ部材のパイプ部に傾斜部を介して形成し、両パイプ部材の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するように上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部下方とオーバラップする位置まで延設したので、ラジエータユニットの車両上方からの組付け性を確保しつつ、衝突時(特に高速前突時)のシュラウド部材による衝撃エネルギ吸収を可能にすると共に、結合部の折れ変形に対する耐力の向上を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ラジエータユニットの組付け性を確保しつつ、衝突時のシュラウド部材による衝撃エネルギ吸収を可能にすると共に、結合部の折れ変形に対する耐力の向上を図るという目的を、ラジエータユニットをエプロンレインフォースメントに結合するシュラウド部材を備えた車体前部構造であって、上記シュラウド部材を、ラジエータユニットの上部で車幅方向に延設された丸パイプ部材と、該丸パイプ部材とエプロンレインフォースメントとを前後方向に連結する角パイプ部材とで構成し、上記角パイプ部材の上部に丸パイプ部材の潰し端部を、間隔を隔てて結合すると共に、該潰し端部は丸パイプ部材のパイプ部に傾斜部を介して形成され、両パイプ部材の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するように上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部下方とオーバラップする位置まで延設するという構造にて実現した。
【実施例1】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車体前部構造を示し、図1において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設けている。
【0022】
このダッシュロアパネル3の下部には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル(図示せず)を接合すると共に、上述のダッシュロアパネル3およびフロアパネルの車幅方向中央部には、車室2内に突出して車体の前後方向に延びるトンネル部4を、一体または一体的に形成している。このトンネル部4は車体剛性の中心となるものである。
【0023】
上述のダッシュロアパネル3の上部には、ダッシュアッパパネル5を接合固定し、このダッシュアッパパネル5の後側上部と底片部との間には断面略逆L字状のカウルパネル6を接合固定すると共に、車幅方向に延びるダッシュアッパパネル5と、車幅方向に延びるカウルパネル6と、左右両サイド部において前後方向に延びるカウルサイドパネル7,7と、によりカウル部8を構成している。
【0024】
上述のカウル部8の前方延出部9(ダッシュアッパパネル5の前方延出部、または、カウルフロントパネル)の車幅方向両サイド部はサスタワー10,10の後部に接合固定されている。
このサスタワー10は、フロントサスペンションのダンパおよびコイルスプリング等を支持するもので、該サスタワー10の前後両部にはホイールアーチ部11,12が、一体または一体的に形成されている。
【0025】
また、上述の各サスタワー10,10の上部車外側には、エプロンレインインナとエプロンレインアウタとを備えたエプロンレインフォースメント13,13がそれぞれ接合固定されている。これら左右一対のエプロンレインフォースメント13,13は車体の前後方向に延びる車体部材である。
【0026】
さらに、上述のダッシュロアパネル3からエンジンルーム1の下方両サイドにおいて、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム14,14を設けている。このフロントサイドフレーム14は、フロントサイドフレームインナと、フロントサイドフレームアウタと、を接合して前後方向に延びる閉断面を備えた車体剛性部材であって、フロントサイドフレームインナの接合フランジ部15は、前後のホイールアーチ部11,12およびサスタワー10の車幅方向内側の面に接合固定されている。
【0027】
上述の各フロントサイドフレーム14,14の前端部には、フランジ部16,16を介してクラッシュカン17,17(衝撃エネルギ吸収部材)がそれぞれ接続されており、これら左右一対のクラッシュカン17,17相互間にはバンパレインフォースメント18が車幅方向に延びるように取付けられている。
上述のバンパレインフォースメント18において、クラッシュカン17と前後方向に対向する部位には、プリクラッシュカン19,19が一体形成されている。
【0028】
上述のバンパレインフォースメント18には、車両後方が開口する開口部が形成されており、バンパレインフォースメント18のリヤ側の面に接合固定して上記開口部を閉塞するクロージングプレート(図示せず)には、ラジエータユニット20の前部が取付けられている。
【0029】
このラジエータユニット20は、エンジン冷却水を走行風で空冷するラジエータ21と、ラジエータシュラウド22とを備えており、また、該ラジエータシュラウド22は、上片部22Uと、下片部22Lと、左右の側片部22S,22Sとを方形枠状に組合せた合成樹脂製のシュラウドである。
このラジエータユニット20の上部を上述のエプロンレインフォースメント13に結合するシュラウド部材30(シュラウドメンバ)を備えている。
【0030】
図2は、図1の要部のみを抽出して示す斜視図であって、図1、図2に示すように、上述のシュラウド部材30は、ラジエータユニット20の上部で車幅方向に延設されて、シュラウドアッパメンバに相当する丸パイプ部材31と、この丸パイプ部材31の左右両端部と上述のエプロンレインフォースメント13の前部とを前後方向に連結しシュラウドサイドメンバに相当する左右一対の角パイプ部材32,32と、で構成されている。
【0031】
次に、図3、図4を参照して、丸パイプ部材31と角パイプ部材32との結合構造について説明する。図3、図4は車両左側の両パイプ部材31,32の結合構造を示すが、車両右側の結合構造は、左側のそれと左右対称に構成されている。
【0032】
図3、図4に示すように、上述の丸パイプ部材31のパイプ部31aの端部には傾斜部31bを介して、偏平な潰し端部31cが一体形成されている。
【0033】
図3に示すように、角パイプ部材32の上部に丸パイプ部材31の偏平な潰し端部31cを、間隔Lを隔てて結合するが、この実施例1では、角パイプ部材32に固定される締結部材固定プレートとしてのナットプレート33により、両パイプ部材31,32を、間隔Lを隔てて結合するように構成している。
【0034】
このため、図4に示すナットプレート33を設けている。このナットプレート33は、上片33aと前後の側片33b,33bとを一体形成した断面門形状のプレートであって、該ナットプレート33の上片33aには、一対のボルト挿通孔34,34を形成すると共に、このボルト挿通孔34に連続するように、上片33aの下面には、一対のナット35,35を溶接固定している。
上述のナット35を有するナットプレート33を、角パイプ部材32の前端部に取付ける関係上、該角パイプ部材32の上面部には、大径のナット配設孔36,36を一体形成している。
【0035】
そして、図4に示す分解状態から図3に示すように、角パイプ32の前端部に、一対のナット35,35をもったナットプレート33を装着し、ナットプレート33の側片33bと角パイプ32の前後の外側面部とを、アーク溶接して、これら両者32,33を一体的に固定したものである。
【0036】
また、丸パイプ部材31の潰し端部31cには、上記一対のナット35,35に対応して、一対のボルト挿通孔37,37を形成し、ナットプレート33上面に丸パイプ部材31の潰し端部31cを載置した後に、一対のボルト38,38を、上下に一致するボルト挿通孔37,34を介して、ナットプレート33のナット35に締結することで、両パイプ部材31,32を結合したものである。
【0037】
ここで、図3に示すように、角パイプ部材32の端部32aは、丸パイプ部材31の傾斜部31b下方とオーバラップする位置まで車幅方向内方へ延設されると共に、丸パイプ部材31の潰し端部31cと傾斜部31bとの間には、山折れ変形の癖を付けた状態で、丸パイプ部材31を角パイプ部材32に固定したものである。
【0038】
図5に仮想線βで示すように、潰し端部31cをその基部に対して車外側端部が下方に位置するように、予め該潰し端部31cをスラント形成し、組付け完了時に図5の実線状態に成るように形成すると、山折れ変形の癖を付与することができる。
【0039】
そして、図3に示すように、丸パイプ部材31を角パイプ部材32に組付けた後、車両衝突時において、両パイプ部材31,32の結合部αが山折れ変形した時、角パイプ部材32の端部と、丸パイプ部材31の傾斜部31bとが互いに干渉して、衝突耐力の向上を図るように構成したものである。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0040】
このように、図1〜図5で示した実施例の車体前部構造は、ラジエータユニット20をエプロンレインフォースメント13に結合するシュラウド部材30を備えた車体前部構造であって、上記シュラウド部材30を、ラジエータユニット20の上部で車幅方向に延設された丸パイプ部材31と、該丸パイプ部材31とエプロンレインフォースメント13とを前後方向に連結する角パイプ部材32とで構成し、上記角パイプ部材32の上部に丸パイプ部材31の潰し端部31cを、間隔Lを隔てて結合すると共に、該潰し端部31cは丸パイプ部材31のパイプ部31aに傾斜部31bを介して形成され、両パイプ部材31,32の結合部αの山折れ変形時に、角パイプ部材32の端部32aと、丸パイプ部材31の傾斜部31bとが干渉するように上記角パイプ部材32の端部32aを、丸パイプ部材31の傾斜部31b下方とオーバラップする位置まで延設したものである(図1、図3参照)。
【0041】
この構成によれば、シュラウドサイドメンバに相当する角パイプ部材32の上部に、シュラウドアッパメンバに相当する丸パイプ部材31を設けたので、ラジエータユニット20の上方からの組付け性を確保することができる。
しかも、車両の衝突時(特に高速前突時)に、両パイプ部材31,32の結合部αが山折れ変形しても、この山折れ変形時に、角パイプ部材32の端部32aと、丸パイプ部材31の傾斜部31bとが干渉するので、この干渉により結合部αの折れ変形に対する耐力の向上を図って、シュラウド部材30による衝撃エネルギの吸収を可能とすることができる。
【0042】
さらに、フロントサイドフレーム14はエンジンルーム1の下方に位置し、シュラウド部材30はエンジンルーム1の上方、詳しくはラジエータユニット20の上部と対応する高さ位置に存在するので、エンジンルーム1の上下両位置にそれぞれ配設されたフロントサイドフレーム14と、シュラウド部材30とにより、衝突初期より広い面積で衝撃エネルギを吸収することができる。
【0043】
また、丸パイプ部材31および角パイプ部材32の何れもが閉断面部材であるから、ラジエータユニット20の支持剛性の向上を図ることもでき、荷重伝達性能も向上する。
【0044】
また、上記角パイプ部材32に固定される締結部材固定プレート(ナットプレート33参照)により両パイプ部材31,32を、間隔Lを隔てて結合したものである(図3参照)。
この構成によれば、締結部材固定プレート(ナットプレート33参照)を利用して、両パイプ部材31,32間に間隔Lを有する結合状態が達成できる。換言すれば、ナットプレート33を、間隔L確保用の高さ調整部材として用いることができる。
【0045】
加えて、上記丸パイプ部材31の潰し端部31cと傾斜部31bとの間に、山折れ変形の癖(図5の仮想線β参照)を付けた状態で、丸パイプ部材31を角パイプ部材32に固定したものである(図5参照)。
この構成によれば、上記丸パイプ部材31に山折れ変形の癖を付けたので、両パイプ部材31,32が干渉して、折れ変形に対する耐力が向上する山折れ方向への変形を誘発することができる。
【実施例2】
【0046】
図6は車体前部構造の他の実施例を示し、先の実施例1ではナットプレート33により両パイプ部材31,32を、間隔を隔てて結合したが、図6に示すこの実施例2では、筒体から成るスペーサ40により両パイプ部材31,32を、間隔を隔てて結合すべく構成したものである。
【0047】
すなわち、角パイプ部材32の上面部には、一対のスペーサ挿通孔41,41を形成し、所定長さのスペーサ40を該スペーサ挿通孔41から角パイプ部材32内に挿入して、スペーサ40の下端を、角パイプ部材32の内底部に当接させ、スペーサ40の上部を角パイプ部材32の上面部から所定量上方に突出させ、さらに、スペーサ挿通孔41の口縁上部においてスペーサ40の全外周を角パイプ部材32に溶接固定したものである。
また、上記スペーサ40と対応して角パイプ部材32の下部には、一対のナット42,42を溶接固定している。
【0048】
そして、角パイプ部材32から上方に突出するスペーサ40,40上に丸パイプ31の潰し端部31cを上戴し、一対のボルト38を、ボルト挿通孔37およびスペーサ40の内部を介して、ナット42に締結することで、両パイプ部材31,32を、間隔Lを隔てて結合したものである。この間隔Lはスペーサ40の角パイプ部材32からの突出量と等しくなるため、間隔Lの設定が容易となる。
【0049】
このように構成しても、その他の構成、作用、効果については先の実施例1と同様であるから、図6において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0050】
図7、図8は車体前部構造のさらに他の実施例を示すものである。
この実施例においては、図8に示すように、角パイプ部材32の上面部に固定される一対のリベットナット50のフランジ部50aにより、両パイプ31,32を間隔Lを隔てて結合したものである。
【0051】
また、図7、図8に示すように、角パイプ部材32の端部を、丸パイプ部材31の傾斜部31bに対応した傾斜形状と成し、該角パイプ部材32に車幅方向内方が低く、車幅方向外方が高くなるスラント部32Sを形成したものである。
【0052】
そして、角パイプ部材32から上方に突出するリベットナット50のフランジ部50a,50a上に丸パイプ31の潰し端部31c上戴し、一対のボルト38,38を、ボルト挿通孔37,37を介して、リベットナット50,50に締結することで、両パイプ部材31,32を、間隔Lを隔てて結合したものである。この間隔Lはリベットナット50のフランジ部50aの高さと等しくなる。
【0053】
このように、図7、図8で示した実施例においては、上記角パイプ部材32に固定されるリベットナット50のフランジ部50aにより両パイプ部材31,32を、間隔Lを隔てて結合したものである(図8参照)。
この構成によれば、リベットナット50のフランジ部50aを利用して、両パイプ部材31,32間に間隔Lを有する結合状態が達成できる。
【0054】
さらに、上記角パイプ部材32の端部を、丸パイプ部材31の傾斜部31bに対応した傾斜形状と成したものである(図8参照)。
この構成によれば、上述の傾斜形状(スラント部32S参照)により、結合部αの山折れ変形時の両パイプ部材31,32干渉量を拡大して、折れ変形に対する耐力の向上を図ることができる。
【0055】
図7、図8で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図7、図8において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0056】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の締結部材固定プレートは、実施例のナットプレート33に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の車体前部構造を示す斜視図
【図2】図1の要部拡大斜視図
【図3】両パイプ部材の結合構造を示す正面図
【図4】図3の分解斜視図
【図5】山折れ変形の癖を付与した丸パイプの説明図
【図6】車体前部構造の他の実施例を示す正面図
【図7】車体前部構造のさらに他の実施例を示す要部の斜視図
【図8】図7の両パイプ部材の結合構造を示す正面図
【図9】比較例を示す要部斜視図
【図10】図9の両パイプ部材の結合構造を示す正面図
【図11】他の比較例を示す要部の斜視図
【図12】図11の両パイプ部材の結合構造を示す正面図
【符号の説明】
【0058】
13…エプロンレインフォースメント
20…ラジエータユニット
30…シュラウド部材
31…丸パイプ部材
31a…パイプ部
31b…傾斜部
31c…潰し端部
32…角パイプ部材
33…ナットプレート(締結部材固定プレート)
50…リベットナット
50a…フランジ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータユニットをエプロンレインフォースメントに結合するシュラウド部材を備えた車体前部構造であって、
上記シュラウド部材を、ラジエータユニットの上部で車幅方向に延設された丸パイプ部材と、
該丸パイプ部材とエプロンレインフォースメントとを前後方向に連結する角パイプ部材とで構成し、
上記角パイプ部材の上部に丸パイプ部材の潰し端部を、間隔を隔てて結合すると共に、
該潰し端部は丸パイプ部材のパイプ部に傾斜部を介して形成され、
両パイプ部材の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するように上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部下方とオーバラップする位置まで延設した
車体前部構造。
【請求項2】
上記角パイプ部材に固定される締結部材固定プレートにより両パイプ部材を、間隔を隔てて結合した
請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
上記角パイプ部材に固定されるリベットナットのフランジ部により両パイプ部材を、間隔を隔てて結合した
請求項1記載の車体前部構造。
【請求項4】
上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部に対応した傾斜形状と成した
請求項1〜3の何れか1に記載の車体前部構造。
【請求項5】
上記丸パイプ部材の潰し端部と傾斜部との間に、山折れ変形の癖を付けた状態で、丸パイプ部材を角パイプ部材に固定した
請求項1〜4の何れか1に記載の車体前部構造。
【請求項1】
ラジエータユニットをエプロンレインフォースメントに結合するシュラウド部材を備えた車体前部構造であって、
上記シュラウド部材を、ラジエータユニットの上部で車幅方向に延設された丸パイプ部材と、
該丸パイプ部材とエプロンレインフォースメントとを前後方向に連結する角パイプ部材とで構成し、
上記角パイプ部材の上部に丸パイプ部材の潰し端部を、間隔を隔てて結合すると共に、
該潰し端部は丸パイプ部材のパイプ部に傾斜部を介して形成され、
両パイプ部材の結合部の山折れ変形時に、角パイプ部材の端部と、丸パイプ部材の傾斜部とが干渉するように上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部下方とオーバラップする位置まで延設した
車体前部構造。
【請求項2】
上記角パイプ部材に固定される締結部材固定プレートにより両パイプ部材を、間隔を隔てて結合した
請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
上記角パイプ部材に固定されるリベットナットのフランジ部により両パイプ部材を、間隔を隔てて結合した
請求項1記載の車体前部構造。
【請求項4】
上記角パイプ部材の端部を、丸パイプ部材の傾斜部に対応した傾斜形状と成した
請求項1〜3の何れか1に記載の車体前部構造。
【請求項5】
上記丸パイプ部材の潰し端部と傾斜部との間に、山折れ変形の癖を付けた状態で、丸パイプ部材を角パイプ部材に固定した
請求項1〜4の何れか1に記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−214569(P2009−214569A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57306(P2008−57306)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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