説明

車体前部構造

【課題】ダッシュボードクロスメンバーとフロントサイドフレームとの溶接作業が容易で、接合強度を向上させ、軽量化を図り、フロントサイドフレームの衝撃吸収変形モードを安定化させた車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造11ではダンパーハウジング26はフロントサイドフレーム25内を、斜めエンジンルーム34の内方へ向いて仕切っているバルクヘッド74を備え、フロントサイドフレーム25は、前から順に前部変形部91と、内側壁部64に設けた内曲げ用の内脆弱92と、外側壁部65に凹状に形成した外曲げ用の外脆弱93と、外脆弱93より車両後方の外側壁部65と外側壁部65より車両外方に延設されているダッシュボードクロスメンバー33の外側部101とを連結している支持部材102とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の前壁をなすダッシュボード側から車両前方へ延設した左右のフロントサイドフレームを有する車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造では、エンジンルームの左右に配置されたフロントサイドフレームを取付けているダッシュボードの車室内側に車幅方向へ延びるダッシュボードクロスメンバーが設けられているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開昭63−972号公報(第1図)
【0003】
しかし、特許文献1の車体前部構造では、車両の前面に衝突の荷重が加わった際に、左右のフロントサイドフレームからダッシュボードクロスメンバーに荷重を伝達させるが、ダッシュボードクロスメンバーとフロントサイドフレームとが直交する交差部の強度不足が考えられる。
例えば、ダッシュボードクロスメンバーとフロントサイドフレームとの交差部にタイヤの上方をカバーするホイールハウスを取付けることで、補強を兼ねている技術もあるが、当然、交差部の上方をカバーする構造となり、交差部を溶接する際に、ホイールハウスが邪魔になり、製造し難いという問題がある。
【0004】
また、車両の前面に荷重が作用した際に、フロントサイドフレームが変形することで衝撃を吸収することは可能であるが、フロントサイドフレームの変形形態が不規則で安定せず、衝撃の吸収量のばらつきが大きくなるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ダッシュボードクロスメンバーとフロントサイドフレームとの溶接作業が容易で、ダッシュボードクロスメンバーとフロントサイドフレームとの接合強度を向上させ、軽量化を図り、フロントサイドフレームの衝撃吸収変形モードを安定化させた車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車室の前壁をなすダッシュボードロアの下部に連なるダッシュボードクロスメンバーと、ダッシュボードクロスメンバーから車両前方へ延設しエンジンルームの左右に配置されたフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームに取付けられているダンパーハウジングと、を備える車体前部構造において、ダンパーハウジングは、車両前方へ向いている前壁部に連なりフロントサイドフレーム内を、斜めエンジンルームの内方へ向いて仕切っているバルクヘッドを備え、フロントサイドフレームは、バルクヘッドより車両前方に設けた前部変形部と、バルクヘッドより車両後方でエンジンルームへ向いている内側壁部に設けた内曲げ用の内脆弱と、ダンパーハウジングより車両後方で内側壁部に対向している外側壁部に凹状に形成した外曲げ用の外脆弱と、外脆弱より車両後方の外側壁部と外側壁部より車両外方に延設されているダッシュボードクロスメンバーの外側部とを連結している支持部材と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、フロントサイドフレームの外脆弱より車両後方の外側壁部と外側壁部より車両外方に延設されているダッシュボードクロスメンバーの外側部とを連結している支持部材と、を備えているので、ダッシュボードクロスメンバーにフロントサイドフレームの外側壁部をスポット溶接する溶接作業のとき、上方から外側壁部まで移動させるスポット溶接の電極の動きを遮るものが無く、ダッシュボードクロスメンバーとフロントサイドフレームとの溶接作業は容易であるという利点がある。
【0008】
また、請求項1に係る発明では、フロントサイドフレームの外脆弱より車両後方の外側壁部と外側壁部より車両外方に延設されているダッシュボードクロスメンバーの外側部とを連結している支持部材と、を備えているので、支持部材によってフロントサイドフレームの接合側に加わる荷重をダッシュボードクロスメンバーに分散させることができ、ダッシュボードクロスメンバーとフロントサイドフレームとの接合強度を向上させることができる。
【0009】
さらに、支持部材によってダッシュボードクロスメンバーとフロントサイドフレームとの接合強度を向上させることができ、支持部材に比べ大きなホイールハウスを用いる必要がなくなり、軽量化を図ることができる。
【0010】
また、請求項1に係る発明では、ダンパーハウジングは、フロントサイドフレーム内を、斜めエンジンルームの内方へ向いて仕切っているバルクヘッドを備え、フロントサイドフレームは、バルクヘッドより車両前方に設けた前部変形部と、バルクヘッドより車両後方でエンジンルームへ向いている内側壁部に設けた内曲げ用の内脆弱と、外側壁部に凹状に形成した外曲げ用の外脆弱と、外脆弱より車両後方の外側壁部と外側壁部より車両外方に延設されているダッシュボードクロスメンバーの外側部とを連結している支持部材と、を備えているので、車両前方に荷重が加わると、フロントサイドフレームを順に前部変形部を変形させ、次に内脆弱で曲げ、最後に外脆弱で曲げて荷重を吸収することができる。その際、変形を続けている前部変形部を外脆弱によって車両の外方、すなわち、エンジンから離れる方向へ向かって曲げることができ、吸収が引き続き持続する。
従って、フロントサイドフレームの衝撃吸収変形モードを安定化させることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の車体前部構造(第1実施の形態)の斜視図である。
車体前部構造11は、車両12の車体13の前部で、前輪14が取付けられているフロントサスペンション15や図に示していないエンジンを支持している。具体的には後述する。
【0012】
車体13は、車室17の側壁をなすサイドボデー21と、車室17の床をなすアンダボデー22と、フロントボデー23とを備える。
フロントボデー23は、アンダボデー22のフロントフロアフレーム24に連なる左右のフロントサイドフレーム25と、フロントサイドフレーム25に取付けられているダンパーハウジング26と、サブフレーム27と、車体前部構造11と、を備える。
【0013】
また、フロントボデー23は、車室17の前壁をなすダッシュボードロア31の下部32に連なるダッシュボードクロスメンバー33と、を備え、ダッシュボードクロスメンバー33から車両12の前方(矢印a1の方向)へフロントサイドフレーム25を延設してエンジンルーム34の左右に配置している。
【0014】
サブフレーム27は、既存の構成であり、第1フレーム35〜第4フレーム38で矩形を形成し、エンジンやフロントサスペンション15が取付けられ、フロントボデー23の下方から矢印a2のように上昇させて、フロントサイドフレーム25に設けた前のカラーナット41、後のカラーナット42に締結部材43で取付けられる。
【0015】
ダンパーハウジング26は、フロントサスペンション15のフロントダンパー45に設けられた上部取付け部46を取付けるダンパーベース部47を有し、ボルト・ナットで取付けている。ボルト・ナットで締結する構造は既存の構成である。
なお、車体前部構造11は、車両12の中心Cを基準にほぼ対称であり、左側の部位を主体に説明する。
【0016】
図2は、本発明の車体前部構造が備えるダンパーハウジング及びフロントサイドフレームの斜視図である。図1を併用して説明する。
図3は、本発明の車体前部構造が備えるフロントサイドフレーム及びダッシュボードクロスメンバーの斜視図である。図1を併用して説明する。
【0017】
車体前部構造11は、具体的には、左のフロントサイドフレーム25にダンパーハウジング連結ブラケット51が複数のスポット溶接部52で取付けられ、ダンパーハウジング連結ブラケット51にダンパーハウジング26の下接合部53が複数のスポット溶接部52で取付けられ、フロントサイドフレーム25内に後のカラーナット42が立設され、ダンパーハウジング26の上部がホイールハウスアッパメンバ55に取付けられ、それがバルクヘッドアッパメンバ56に取付けられている。
【0018】
フロントサイドフレーム25は、サイドフレーム本体57に蓋部材61が複数のスポット溶接部52で取付けられ、蓋部材61の下方に中間仕切部材62が配置されて、サイドフレーム本体57に複数のスポット溶接部52で取付けられている。
サイドフレーム本体57は、長尺で、断面コ字状が内側壁部64、外側壁部65、底部66とで形成されている。
【0019】
ダンパーハウジング連結ブラケット51は、車両12の前方側に配置している前角部材71と、前角部材71から車両12の後方へ所定距離だけ離して配置した後角部材72とからなる。
なお、実施の形態では、前角部材71と後角部材72は別体としたが、前角部材71と後角部材72を一体に形成した一体形状でもよい。
【0020】
ダンパーハウジング26はまた、ダンパーハウジング前下部74がサイドフレーム本体57内に嵌合して、複数のスポット溶接部52で取付けられ、ダンパーハウジング後下部75がサイドフレーム本体57内に嵌合して、複数のスポット溶接部52で取付けられている。
【0021】
ダンパーハウジング前下部74は、ダンパーハウジング連結ブラケット51の前角部材71の下部で、壁状のバルクヘッドでもある。
ダンパーハウジング後下部75は、ダンパーハウジング連結ブラケット51の後角部材72の下部で、バルクヘッド構造でもある。
バルクヘッド構造及びバルクヘッドはともに、フロントサイドフレーム25の内側壁部64に一端が取付けられ、外側壁部65に他端が取付けられた壁をなす板であり、フロントサイドフレーム25内を仕切っている。
【0022】
前角部材71は、鋼板を断面略Z字状に折り曲げたもので、内側壁部64と外側壁部65との間に嵌る幅で形成されたバルクヘッド部76を備える。
後角部材72は、前角部材71とほぼ同様であり、内側壁部64と外側壁部65との間に嵌る幅で形成されたバルクヘッド部77を備える。
【0023】
ダンパーハウジング26は、具体的には、一体に塑性加工されたもので、フロントダンパー45を締結するダンパーベース部47に連ねて内壁部81が成形され、内壁部81に連ねて前壁部82及び後壁部83が成形されている。そして、前壁部82にバルクヘッド部76が連なっている。
【0024】
図4は、本発明の車体前部構造の平面図である。図1〜図3を併用して説明する。なお、図4では、ダンパーハウジング26は、一部、フロントサイドフレーム25側が省略されて、ダンパーハウジング連結ブラケット51(前角部材71、後角部材72)が示されている。
【0025】
前角部材71は、前述したバルクヘッド部76が内側壁部64と外側壁部65との間に挿入されている。
バルクヘッド部76は、角度θだけ斜めエンジンルーム34の内方(矢印a3の方向)へ向いてフロントサイドフレーム25内を仕切っている。
【0026】
フロントサイドフレーム25は、具体的には、前から順に、前部変形部91、内曲げ用の内脆弱92、外曲げ用の外脆弱93を有し、前部変形部91がフロントサイドフレーム25の前端94からダンパーハウジング連結ブラケット51の前角部材71、つまりバルクヘッド部76までの間に設けられ、内曲げ用の内脆弱92が前部変形部91より車両12の後方(矢印a4の方向)に取付けられているダンパーハウジング26の内方に位置するフロントサイドフレーム25の内側壁部64に形成され、外曲げ用の外脆弱93が内曲げ用の内脆弱92より車両12の後方に位置するダンパーハウジング26の後壁部83(後角部材72)からダッシュボードクロスメンバー33までの間に位置するフロントサイドフレーム25の外側壁部65に形成されている。
【0027】
また、内脆弱92が中央部変形部96に形成され、外脆弱93が後部変形部97に形成されている。
フロントサイドフレーム25はさらに、前端94に対向している後端98がダッシュボードクロスメンバー33に複数のスポット溶接部52(図2参照)で連結され、外曲げ用の外脆弱93からダッシュボードクロスメンバー33までの間に位置するフロントサイドフレーム25の外側壁部65の中央とダッシュボードクロスメンバー33の外側部101が支持部材であるところのガセット102で連結されている。
前端94には、図に示していない前バンパーが取付けられている。
【0028】
前部変形部91は、フロントサイドフレーム25のうちで圧縮荷重に対して最も強度の低い部位であり、圧縮荷重で蛇腹状に変形する。強度を低下させる構成は任意であり、例えば、前部変形部91の板厚を他の部位より薄くしてもよく、他の部位を補強してもよく、スポット溶接の強度(数)を低下させてもよく、切り欠き部を形成することも可能である。
【0029】
中央部変形部96は、内曲げ用の内脆弱92を有し、ダンパーハウジング26内の部位で、ダンパーハウジング26で補強されているため、前部変形部91に比べ、強度が高い部位である。言い換えると、ダンパーハウジング連結ブラケット51内の部位で、ダンパーハウジング連結ブラケット51で補強されている。
【0030】
後部変形部97は、外曲げ用の外脆弱93を有し、中央部変形部96より後方の部位で、ガセット102で補強されているため、前部変形部91に比べ、強度が高い部位である。
【0031】
内脆弱92は、断面U字形の溝で、条件によって所望の深さ、幅に設定される。
外脆弱93は、断面U字形の溝で、条件によって所望の深さ、幅に設定される。
なお、各脆弱は、1箇所に形成しているが、2箇所以上、例えば、外脆弱93の近傍にさらに並列に外脆弱93を形成することも可能である。
【0032】
ダッシュボードクロスメンバー33は、車幅方向(図1のX軸方向)に延びる長尺な角管状で、車両12の前方(矢印a1の方向)へ向いている断面コ字状の前面部104と、前面部104に対向して前面部104との縁同士を接合している断面コ字状の後面部105とからなり、両端がそれぞれサイドボデー21のフロントピラー106(図1参照)に連結している。そして、前面部104に設けたサイドフレーム連結部107にフロントサイドフレーム25の後端98を連結して、サイドフレーム連結部107より車両12の外側(矢印a5の方向)に位置する前面部104にガセット102を介してフロントサイドフレーム25の外側壁部65を連結している。
【0033】
支持部材(ガセット)102は、板状で、面を車両12の外側へ向けて配置することで、平面視で、ダッシュボードクロスメンバー33とフロントサイドフレーム25との3部材で、三角形の開口111を上方へ向け形成している。そして、車両12の外側に向いているフロントサイドフレーム25の外側壁部65に形成されている外脆弱93からダッシュボードクロスメンバー33側へ所望の距離だけ離した中央保持部112に、角度α(約45°)でフロントサイドフレーム25から車両12の外方へ延びるダッシュボードクロスメンバー33の外側部101に向けて延ばして一端が取付けられ、他端が外側部101に取付けられている。
なお、外脆弱93から所望の距離だけ離して一端を取付けたが、外脆弱93の近傍に一端を取付けることも可能である。
【0034】
次に、本発明の車体前部構造の作用を説明する。
図5は、本発明の車体前部構造が備える支持部材とフロントサイドフレームとダッシュボードクロスメンバーとの組み付け関係を説明する図である。
車体前部構造11は、フロントサイドフレーム25とダッシュボードクロスメンバー33をスポット溶接で接合している。この組み付けの溶接作業では、支持部材(ガセット)102は、予めスポット溶接で接合されているので、フロントサイドフレーム25の後端98に形成した溶接用重ね部114にスポット溶接の第1電極116を当てるときには、溶接用重ね部114の上方から第1電極116を矢印b1のように下降(Z軸方向)させるとともに、支持部材(ガセット)102で形成した開口111に入れることで、溶接用重ね部114に当接させることができる。
【0035】
引き続き、第1電極116を移動(Y軸方向)させるとともに、ダッシュボードクロスメンバー33に第2電極117を当てる。そして、重ね合わせてある溶接用重ね部114とダッシュボードクロスメンバー33を押圧して、溶接を施すことができる。
【0036】
このように、車体前部構造11では、支持部材(ガセット)102によって、フロントサイドフレーム25の後端98とダッシュボードクロスメンバー33との溶接箇所の上方に開口111を形成することができ、ダッシュボードクロスメンバー33とフロントサイドフレーム25との溶接作業が容易になる。
【0037】
また、支持部材(ガセット)102によって、フロントサイドフレーム25の後端98を起点にフロントサイドフレーム25を車両12の外方へ曲げる荷重に対する反力を高めることができる。従って、ダッシュボードクロスメンバー33とフロントサイドフレーム25との接合強度を向上させることができる。
【0038】
支持部材(ガセット)102を採用したことで、補強のために、支持部材(ガセット)102より大きいホイールハウスを用いる必要がなくなり、軽量化を図ることができる。
【0039】
図6は、本発明の車体前部構造の衝撃吸収の機構を説明する図である。前バンパーなどの装置・部品は省略されている。
車体前部構造11では、車両12の前面に荷重、例えば、衝突の荷重が矢印b2のように加わると、フロントサイドフレーム25の前部変形部91が車両12の後方へ向かって変形して、荷重を吸収する。
【0040】
図7は、図6の続きを説明する図である。
前部変形部91が、荷重を吸収しつつダンパーハウジング26及び中央部変形部96に伝えると、フロントサイドフレーム25は内脆弱92を起点にして車両12の内側へ矢印b3のように折れ曲がる。そして、荷重を吸収する。
また、ダンパーハウジング26の前壁部82(前角部材71)が斜めにエンジンルーム34へ向いているので、フロントサイドフレーム25は車両12の内側へ矢印b3のように折れ曲がりやすい。
【0041】
具体的には、ダンパーハウジング26の前壁部82、すなわちダンパーハウジング連結ブラケット51の前角部材71は内側へ向け傾斜(角度θ)しているので、直交で仕切ったものに比べ、内側に倒れることになる。
さらに、内曲げ用の内脆弱92に荷重が集中するので、内脆弱92から内側壁部64が座屈する。
【0042】
図8は、図7の続きを説明する図である。
中央部変形部96が、荷重を吸収しつつ後部変形部97に伝えると、後部変形部97に設けた支持部材(ガセット)102及び外脆弱93によって、フロントサイドフレーム25は車両12の外側へ矢印b4のように折れ曲がる。そして、さらに荷重を吸収することができる。
【0043】
具体的には、後部変形部97は、荷重が加わると、支持部材(ガセット)102が取付けられているフロントサイドフレーム25の外側壁部65の中央保持部112に荷重が集中するので、後部変形部97には、中央保持部112や中央保持部112辺りを起点にフロントサイドフレーム25を車両12の外側へ矢印b4のように折り曲げる力が生じる。
また、外曲げ用の外脆弱93に荷重が集中するので、外脆弱93を起点にフロントサイドフレーム25は車両12の外側へ矢印b4のように折れ曲がる。
その結果、フロントサイドフレーム25を車両12の外側へ矢印b4のように折れ曲げることができ、エンジン121との干渉が起きず、前部変形部91の変形を阻害しないという利点がある。
【0044】
このように、車体前部構造11では、ダンパーハウジング26は、フロントサイドフレーム25内を、斜めエンジンルーム34の内方へ向いて仕切っているバルクヘッド(ダンパーハウジング前下部)74を備え、フロントサイドフレーム25は、前から順に、前部変形部91と、内側壁部64に設けた内曲げ用の内脆弱92と、外側壁部65に凹状に形成した外曲げ用の外脆弱93と、外脆弱93より車両後方の外側壁部65と外側壁部65より車両外方に延設されているダッシュボードクロスメンバー33の外側部101とを連結している支持部材(ガセット)102と、を備えているので、フロントサイドフレーム25を前部変形部91、内脆弱92、外脆弱93でそれぞれ変形させることができ、フロントサイドフレーム25の衝撃吸収変形モードを安定化させることができる。
【0045】
尚、本発明の車体前部構造は、実施の形態では車両に採用したが、車両以外、例えば長尺なフレームに装置を取付ける構造にも採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の車体前部構造は、車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の車体前部構造(第1実施の形態)の斜視図である。
【図2】本発明の車体前部構造が備えるダンパーハウジング及びフロントサイドフレームの斜視図である。
【図3】本発明の車体前部構造が備えるフロントサイドフレーム及びダッシュボードクロスメンバーの斜視図である。
【図4】本発明の車体前部構造の平面図である。
【図5】本発明の車体前部構造が備える支持部材とフロントサイドフレームとダッシュボードクロスメンバーとの組み付け関係を説明する図である。
【図6】本発明の車体前部構造の衝撃吸収の機構を説明する図である。
【図7】図6の続きを説明する図である。
【図8】図7の続きを説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
11…車体前部構造、12…車両、17…車室、25…フロントサイドフレーム、26…ダンパーハウジング、31…ダッシュボードロア、33…ダッシュボードクロスメンバー、34…エンジンルーム、64…内側壁部、65…外側壁部、74…バルクヘッド(ダンパーハウジング前下部)、82…前壁部、91…前部変形部、92…内脆弱、93…外脆弱、101…外側部、102…支持部材(ガセット)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前壁をなすダッシュボードロアの下部に連なるダッシュボードクロスメンバーと、該ダッシュボードクロスメンバーから車両前方へ延設しエンジンルームの左右に配置されたフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームに取付けられているダンパーハウジングと、を備える車体前部構造において、
前記ダンパーハウジングは、車両前方へ向いている前壁部に連なりフロントサイドフレーム内を、斜めエンジンルームの内方へ向いて仕切っているバルクヘッドを備え、
前記フロントサイドフレームは、前記バルクヘッドより車両前方に設けた前部変形部と、前記バルクヘッドより車両後方で前記エンジンルームへ向いている内側壁部に設けた内曲げ用の内脆弱と、前記ダンパーハウジングより車両後方で前記内側壁部に対向している外側壁部に凹状に形成した外曲げ用の外脆弱と、該外脆弱より車両後方の前記外側壁部と該外側壁部より車両外方に延設されている前記ダッシュボードクロスメンバーの外側部とを連結している支持部材と、を備えていることを特徴とする車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−255883(P2009−255883A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110491(P2008−110491)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】