車体前部構造
【課題】衝撃吸収部(エクステンション)に対して角度を持った荷重が入力された場合でも、衝撃吸収性を良好にすることを可能にするとともに、構造が簡単で車体取付性を確保することを可能にする。
【解決手段】フロントサイドフレーム15の前端部15aとロアフレーム21の前端部21aとを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部15a,21aを互いに連結して車体幅方向に延びる横長形状部22を形成し、この横長形状部22の前面全域に亘って衝撃吸収部50を設け、この衝撃吸収部50にバンパビーム23を取付けてなり、衝撃吸収部50が、断面多角形の横長筒状体58であり、ロアフレーム21の縦壁42の延長線上に衝撃吸収部50の外側面71が配置された。
【解決手段】フロントサイドフレーム15の前端部15aとロアフレーム21の前端部21aとを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部15a,21aを互いに連結して車体幅方向に延びる横長形状部22を形成し、この横長形状部22の前面全域に亘って衝撃吸収部50を設け、この衝撃吸収部50にバンパビーム23を取付けてなり、衝撃吸収部50が、断面多角形の横長筒状体58であり、ロアフレーム21の縦壁42の延長線上に衝撃吸収部50の外側面71が配置された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームにエクステンション(衝撃吸収部)を介してバンパビームを取付けた車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、バンパビームに作用する荷重を、エクステンション(衝撃吸収部部)を介してフロントサイドフレーム、アッパメンバ若しくはロアメンバなどに伝達するものが知られている。
この種の車体前部構造は、衝撃吸収性能と伝達性能とを配慮し、車両の大きさや用途によって適宜設計がなされるものであった。
【0003】
このような車体前部構造として、フロントサイドフレームの前端部にエクステンションを設けたものや、フロントサイドフレームの前端部とロアフレームの前端部との双方にエクステンションを設けたものが知られている(例えば、特許文献1−2参照。)。
【特許文献1】特開2005−112173公報
【特許文献2】特開2007−190964公報
【0004】
特許文献1の車体前部構造は、フロントサイドフレームの前端部に衝撃吸収部(エクステンション部材)を設け、この衝撃吸収部をバンパの裏側近傍まで延ばし、前面衝突時の衝撃を早期に車体フレームへ伝達させて、衝撃吸収性能を向上させるものである。
【0005】
特許文献2の車体前部構造は、フロントサイドフレームの前端部及びロアフレームの前端部に2部品構成の衝撃吸収部(エクステンション部材)を設け、これらの衝撃吸収部の前面にバンパビームを設けたものであり、バンパビームに対して角度を持った入力(多方向からの入力)に対して衝撃吸収部の倒れを防止し、角度を持った荷重に対して有効な構造としたものである。
【0006】
しかし、特許文献1の車体前部構造では、フロントサイドフレームの前端に設けられた衝撃吸収部(エクステンション部材)は、前後方向(軸方向)の荷重に対しては安定した荷重吸収及び荷重伝達が行われるが、衝撃吸収部に対して角度を持った入力に対しては、衝撃吸収部(エクステンション部材)が倒れて機能を果たせない。
例えば、倒れを防止するために衝撃吸収部の板厚を厚くすることが考えられるが、板厚を厚くすると、衝撃吸収部(エクステンション部材)の剛性が高くなり、衝撃吸収部としての好ましい作用が得ることができず、重量の増加若しくは製造コストの高騰にもつながるという課題があった。
【0007】
また、特許文献2の車体前部構造では、衝撃吸収部の構成が複雑になり、例えば、国によっては、自車より大型の車両が少ない場合もあり、衝撃吸収部を2部品構成として潰れ荷重(エネルギー吸収量)を大きく設定する必要がない場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、衝撃吸収部(エクステンション)に対して角度を持った荷重が入力された場合でも、衝撃吸収性がよいとともに、構造が簡単で車体取付性がよい車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、このフロントサイドフレームの後方にフロントピラーを設け、このフロントピラーの下端部から前方に向けてロアフレームを延ばすとともに、このロアフレームをフロントサイドフレームの外側に配置した車体前部構造において、フロントサイドフレームの前端部とロアフレームの前端部とを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部を互いに連結して車体幅方向に延びる横長形状部を形成し、この横長形状部の前面全域に亘って衝撃吸収部を設け、この衝撃吸収部にバンパビームを取付けてなり、衝撃吸収部が、断面多角形の横長筒状体であり、ロアフレームの縦壁の延長線上に衝撃吸収部の外側面が配置されたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、衝撃吸収部が、内部材と外部材とに2分割構成され、内部材及び外部材の上下の接続部は互いに重ね合わせて接続され、その重ね合わされた重ね合わせ部を車幅方向内側へオフセットしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、隔壁が、断面視で複数の角部を有し、内部材とで多角形の閉断面を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、隔壁が、内部材若しくは外部材に接合される上下の折り曲げ部を備え、これらの折り曲げ部は、重ね合せ部に重ねて接合されることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、衝撃吸収部が、フロントサイドフレームの外壁の延長線上に且つ車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁が配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、このフロントサイドフレームの後方にフロントピラーを設け、このフロントピラーの下端部から前方に向けてロアフレームを延ばすとともに、このロアフレームをフロントサイドフレームの外側に配置する。
さらに、フロントサイドフレームの前端部とロアフレームの前端部とを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部を互いに連結して車体幅方向に延びる横長形状部を形成し、この横長形状部の前面全域に亘って衝撃吸収部を設ける。
衝撃吸収部を、断面多角形の横長筒状体に構成したので、角度を持った荷重の入力に対しても衝撃吸収部の倒れを防止することができ、角度を持った荷重が入力された場合でも、良好な衝撃吸収性を確保することができる。
例えば、衝撃吸収部を、2つの構成部品で構成する場合に比べて、簡単な構成にすることができるとともに、1部品で構成されたので車体取付性がよい。さらに、衝撃吸収部を、2つの構成部品で構成する場合に比べて、衝撃吸収部の稜線を減らすことができ、潰れ易くエネルギー吸収性が良好となる。
また、衝撃吸収部を、断面多角形の横長筒状体に構成することで、車体前後方向の断面2次モーメントを増大することができ、潰れ荷重(エネルギー吸収量)を大きく設定することができる。
ロアフレームの縦壁の延長線上に衝撃吸収部の外側面を配置することで、バンパビームに入力された荷重の一部を、ロアフレームにも分散させて伝達することができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、衝撃吸収部は、内部材と外部材とに2分割構成され、内部材及び外部材の上下の接続部は互いに重ね合わせて接続され、その重ね合わされた重ね合わせ部を車幅方向内側へオフセットしたので、強度の高くなった重ね合わせ部を車幅方向内側のフロントサイドフレーム側に寄せることができる。この結果、バンパビームに入力された荷重を強度の高いフロントサイドフレームへ優先的に伝達することができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、衝撃吸収部は、フロントサイドフレームの外壁の延長線上に且つ車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁が配置されたので、フロントサイドフレームの外壁に隔壁からバンパビームに入力された荷重を直接的に伝達することができ、荷重伝達効率の向上を図ることができる。
衝撃吸収部の車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁が配置されたので、衝撃吸収部の座屈方向に直交する断面を略矩形とし、断面の長さ若しくは幅を座屈波長と定義するときに、座屈波長の間にエネルギー吸収する領域を作ることができ、エネルギー吸収量を増大することができる。さらに、衝撃吸収部に隔壁が配置されたので、衝撃吸収部の座屈波長を小さくすることができ、均一なエネルギー吸収を図ることができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、隔壁は、断面視で複数の角部を有し、内部材とで多角形の閉断面を形成したので、隔壁の稜線を増やすことができる。さらに、衝撃吸収効果を高めることができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、隔壁は、内部材若しくは外部材に接合される上下の折り曲げ部を備え、これらの折り曲げ部は、重ね合せ部に重ねて接合されたので、衝撃吸収部材のフロントサイドフレーム側の強度を高くできる。これにより、フロントサイドフレームへの荷重伝達効率を、さらに向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車体前部構造を採用した車体の平面図であり、図2は図1に示された車体の側面図であり、図3は本発明に係る車体前部構造の分解斜視図である。
【0020】
車体前部構造10は、車室12とエンジンルーム13を隔てるダッシュボードロア14と、車体前後方向に延ばされたフロントサイドフレーム15と、このフロントサイドフレーム15の前端部15a廻りに設けられ、ラジエータ(不図示)及びコンデンサを支持するフロントバルクヘッド17(図2参照)と、フロントサイドフレーム15の後方で車幅外方に設けられたフロントピラー18と、このフロントピラー18の下端部19から前方に延ばされるとともに、フロントサイドフレーム15の車幅方向に関して外側に配置されるロアフレーム21と、これらのロアフレーム21の前端部21aとフロントサイドフレーム15の前端部15aとを連結する連結ブラケット22と、連結ブラケット22の前面に設けられ、荷重伝達をするとともに荷重吸収をする衝撃吸収部(エクステンション)50と、この衝撃吸収部50の前面に設けられるバンパビーム23と、ロアフレーム21とフロントサイドフレーム15とに渡され、フロントダンパ(不図示)を支持するダンパハウジング24とから構成される。
【0021】
連結ブラケット22は、フロントサイドフレーム15の前端部15aとロアフレーム21の前端部21aとを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部15a,21aを互いに連結して車体幅方向に延ばした横長形状部である。
【0022】
図4は図3に示された車体前部構造の衝撃吸収部の分解斜視図であり、図5は図1の5−5線断面図であり、図6は図1の6−6線断面図である。
図6に示されるように、フロントサイドフレーム15は、インナ部材27にアウタ部材28が接合されたフレームであり、インナ部材27に、上面壁31と、内壁32と、内側下面壁33とが形成され、アウタ部材28に、外壁34と、外側下面壁35とが形成される。なお、内側下面壁33と外側下面壁35とで、下面壁36が構成される。
【0023】
図6に示されるように、ロアフレーム21は、インナパネル37にアウタパネル38が接合されたフレームであり、インナパネル37に、上壁41と、内側の縦壁42と、下壁43とが形成され、アウタパネル38に、外側の縦壁44が形成される。
【0024】
さらに、フロントサイドフレーム15は、ロアフレーム21に向けてフロントサイドフレーム側接続ブラケット46が延出され、ロアフレーム21は、フロントサイドフレーム15に向けてロアフレーム側接続ブラケット47が延出され、これらの接続ブラケット46,47が接続されることにより、ロアフレーム21の前端部21aとフロントサイドフレーム15の前端部15aとが連結されている。
【0025】
図4に示されるように、衝撃吸収部50は、連結ブラケット22に接合される基部51と、この基部51から前方に延出される外側筒状分割体(外部材)52と、基部51から前方に延出される内側筒状分割体(内部材)53と、これらの筒状分割体52,53の前端に被せる蓋部材54とからなる。
【0026】
基部51は、連結ブラケット22に接合される本体部56と、この本体部56の周りに形成され、剛性を増すフランジ部57とからなる。
外側筒状分割体(外部材)52と内側筒状分割体(内部材)53とで断面多角形の横長筒状体58が形成される。
【0027】
蓋部材54は、バンパビーム23が接合される蓋本体61と、この蓋本体61から折り曲げられ、横長筒状体58に接合される上接合片62と、蓋本体61から折り曲げられ、横長筒状体58に接合される下接合片(不図示)と、蓋本体61から折り曲げられ、横長筒状体58に接合される外接合片64と、蓋本体61から折り曲げられ、横長筒状体58に接合される内接合片65とからなる。
【0028】
外側筒状分割体52は、車幅方向外方に形成される外側面71と、この外側面71から上・下コーナ部72,73を介して折り曲げられ、内方に延ばされる上・下壁面部74,75と、これらの上・下壁面部74,75にそれぞれ設けられ、内側筒状分割体53に接合される上下の接合部76,77とからなる。
【0029】
外側筒状分割体52の外側面71は、図1に示されるように、ロアフレーム21の内側の縦壁42に沿わせて配置される。
上コーナ部72は、外側面71と上壁面部74とに対して略C面取り状に形成され、下コーナ部73は、外側面71と下壁面部75とに対して略C面取り状に形成される。
上下の接合部76,77は、それぞれに内側筒状分割体53に対して嵌合を容易にすることができる上・下案内面78,79が形成される。
【0030】
内側筒状分割体53は、車幅方向内方に形成される内側面81と、この内側面81から上・下コーナ部82,83を介して折り曲げられ、外側筒状分割体52に接合される上下の接合部86,87とからなる。
【0031】
内側筒状分割体53の内側面81は、図1に示されるように、フロントサイドフレーム15の内壁32に沿わせて配置される。
上コーナ部82は、内側面81と内側の上接合部86とに対して略C面取り状に形成され、下コーナ部83は、内側面81と内側の下接合部87とに対して略C面取り状に形成される。
【0032】
外側の上接合部76と内側の上接合部86とで上の重ね合わせ部88が形成され、外側の下接合部77と内側の下接合部87とで下の重ね合わせ部89が形成され、これらの重ね合わせ部88,89は、横長筒状体58の中心C1に対して車幅方向内側にオフセットされている。
【0033】
図7(a),(b)は本発明に係る車体前部構造の比較検討図である。
(a)において、比較例の車体前部構造200が示され、車体前部構造200は、フロントサイドフレーム201の前端部及びロアフレーム202の前端部に、内側衝撃吸収部203及び外側衝撃吸収部204からなる2部品構成の衝撃吸収部(エクステンション部材)を設け、これらの衝撃吸収部203,204の前面にバンパビーム205を設けたものであり、バンパビーム205に作用する車体前後方向の入力に対して車幅方向に角度を持った入力による衝撃吸収部203,204の倒れを防止でき、角度を持った入力(多方向からの入力)に対して有効な構造としたものである。
【0034】
しかし、車体前部構造200では、衝撃吸収部の構成が複雑になり、例えば、国によっては、自車より大型の車両が少ない場合もあり、衝撃吸収部を2部品構成として潰れ荷重(エネルギー吸収量)を大きく設定する必要がない場合もある。
【0035】
(b)において、実施例の車体前部構造10が示され、車体前部構造10では、車体前後方向にフロントサイドフレーム15を延ばし、このフロントサイドフレーム15の後方にフロントピラー18を設け、このフロントピラー18(図2参照)の下端部19から前方に向けてロアフレーム21を延ばすとともに、このロアフレーム21をフロントサイドフレーム15の外側に配置する。
【0036】
さらに、フロントサイドフレーム15の前端部15aとロアフレーム21の前端部21aとを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部15a,21aを互いに連結して車体幅方向に延びる横長形状部(連結ブラケット)22を形成し、この横長形状部22の前面全域に亘って衝撃吸収部50を設ける。
【0037】
衝撃吸収部50を、断面多角形の横長筒状体58に構成したので、角度を持った荷重の入力に対しても衝撃吸収部50の倒れを防止することができ、車幅方向に角度を持った荷重が入力された場合でも、良好な衝撃吸収性を確保することができる。
【0038】
例えば、衝撃吸収部を、2つの構成部品で構成する場合に比べて、簡単な構成にすることができるとともに、1部品で構成されたので車体取付性がよい。さらに、衝撃吸収部50を、2つの構成部品で構成する場合に比べて、衝撃吸収部50の稜線を減らすことができ、潰れ易くエネルギー吸収性が良好となる。
【0039】
また、衝撃吸収部50を、断面多角形の横長筒状体58に構成することで、単なる筒状のものに比べて、車体前後方向の断面2次モーメントを増大することができ、潰れ荷重(エネルギー吸収量)を大きく設定することができる。
【0040】
ロアフレーム21の縦壁42の延長線上に衝撃吸収部50の外側面71を配置することで、バンパビーム23に入力された荷重の一部を、ロアフレーム21にも分散させて伝達することができる。
【0041】
車体前部構造10では、図5に示されたように、衝撃吸収部50が、内側筒状分割体(内部材)53と外側筒状分割体(外部材)52とに2分割構成され、内部材53及び外部材52の上下の接合部76,77及び上下の接合部86,87は互いに重ね合わせて接続され、その重ね合わされた重ね合わせ部88,89を車幅方向内側へオフセットしたので、強度の高くなった重ね合わせ部88,89を車幅方向内側のフロントサイドフレーム15側に寄せることができる。この結果、バンパビーム23に入力された荷重を強度の高いフロントサイドフレーム15へ優先的に伝達することができる。
【0042】
図8は本発明に係る第2実施例の車体前部構造を採用した車体の平面図である。なお、車体前部構造に使用した部材と同一部品は同一符号を用いて詳細な説明は省略する。
車体前部構造100は、ダッシュボードロア14と、フロントサイドフレーム15と、
フロントバルクヘッド17(図2参照)と、フロントピラー18(図2参照)と、ロアフレーム21と、連結ブラケット22と、連結ブラケット22の前面に設けられ、荷重伝達をするとともに荷重吸収をする衝撃吸収部(エクステンション)110と、この衝撃吸収部110の前面に設けられるバンパビーム23と、ダンパハウジング24とから構成される。
【0043】
図9は図8に示された車体前部構造の衝撃吸収部の分解斜視図であり、図10は図8の10−10線断面図である。
衝撃吸収部110は、連結ブラケット22に接合される基部111と、この基部111から前方に延出される外側筒状分割体(外部材)112と、基部111から前方に延出される内側筒状分割体(内部材)113と、これらの筒状分割体112,113の前端に被せる蓋部材114と、基部111、外側筒状分割体112、内側筒状分割体113及び蓋部材114で形成された内部空間119を車体前後方向に仕切る隔壁(バルクヘッド)115とからなる。
【0044】
外側筒状分割体(外部材)112と内側筒状分割体(内部材)113とで断面多角形の横長筒状体118が形成される。
なお、基部111、外側筒状分割体112、内側筒状分割体113及び蓋部材114は、車体前部構造10(図3及び図4参照)の基部51、外側筒状分割体52、内側筒状分割体53及び蓋部材54にそれぞれ同一構成の部材である。
【0045】
隔壁115は、内部空間119を前後方向に仕切る隔壁本体121と、この隔壁本体121から折り曲げ形成され、外側の上・下壁面124,125にそれぞれ接合される上・下折り曲げ部122,123とからなる。なお、隔壁115は、断面視で2個(2本)の角部(稜線)126,127を備える。
隔壁115の隔壁本体121は、フロントサイドフレーム15の外壁34の延長線上に配置される。
【0046】
第2実施例の車体前部構造100では、衝撃吸収部110が、フロントサイドフレーム15の外壁34の延長線上に且つ車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁115が配置されたので、フロントサイドフレーム15の外壁34に隔壁115からバンパビーム23に入力された荷重を直接的に伝達することができ、荷重伝達効率の向上を図ることができる。
【0047】
衝撃吸収部110の車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁115が配置されたので、衝撃吸収部110の座屈方向に直交する断面を略矩形とし、断面の長さ若しくは幅を座屈波長と定義するときに、座屈波長の間にエネルギー吸収する領域を作ることができ、エネルギー吸収量を増大することができる。さらに、衝撃吸収部110に隔壁115が配置されたので、衝撃吸収部110の座屈波長を小さくすることができ、均一なエネルギー吸収を図ることができる。
【0048】
図11は図8に示される第2実施例の車体前部構造の別実施例の衝撃吸収部の断面図である。なお、第2実施例の車体前部構造100(図9参照)に使用した部材と同一部品は同一符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0049】
衝撃吸収部140は、図9に示された基部111に略同一構成の基部と、この基部から前方に延出される外側筒状分割体(外部材)142と、基部から前方に延出される内側筒状分割体(内部材)143と、図9に示された蓋部材114に略同一構成の蓋部材と、基部、外側筒状分割体142、内側筒状分割体143及び蓋部材で形成された内部空間149を車体前後方向に仕切る隔壁(バルクヘッド)145とからなる。
【0050】
外側筒状分割体(外部材)142と内側筒状分割体(内部材)143とで断面多角形の横長筒状体148が形成される。
【0051】
外側筒状分割体142は、車幅方向外方に形成される外側面151と、この外側面151から上・下コーナ部152,153を介して折り曲げられ、内方に延ばされる上・下壁面部154,155と、これらの上・下壁面部154,155にそれぞれ設けられ、内側筒状分割体143に接合される上下の接合部156,157とからなる。
【0052】
内側筒状分割体143は、車幅方向内方に形成される内側面161と、この内側面161から上・下コーナ部162,163を介して折り曲げられ、外側筒状分割体142に接合される上下の接合部166,167とからなる。
【0053】
外側の上接合部156と内側の上接合部166とで上の重ね合わせ部168が形成され、外側の下接合部157と内側の下接合部167とで下の重ね合わせ部169が形成されている。
【0054】
隔壁145は、内部空間149を前後方向に仕切る隔壁本体171と、この隔壁本体171から折り曲げ形成され、外側の上・下接合部156,157にそれぞれ接合される上・下折り曲げ部172,173と、隔壁本体171と上折り曲げ部172との間に形成される上コーナ部174と、隔壁本体171と下折り曲げ部173との間に形成される下コーナ部175とからなる。
【0055】
なお、上・下折り曲げ部172,173は、外側の上・下接合部156,157にそれぞれ接合されているので、上下の重ね合わせ部168,169に接合されるものとも言える。
また、隔壁145は、上・下コーナ部174,176が形成されることで、断面視で複数の角部(稜線)176〜179を有し、内側筒状分割体(内部材)143とで多角形の閉断面を形成する。図10に示される隔壁115よりも角部(稜線)176〜179の数が増加させた。
【0056】
別実施例の衝撃吸収部140では、隔壁145は、断面視で複数の角部176〜179を有し、内側筒状分割体(内部材)143とで多角形の閉断面を形成したので、隔壁145の角部(稜線)176〜179を増やすことができる。さらに、衝撃吸収効果を高めることができる。
【0057】
別実施例の衝撃吸収部140では、隔壁145は、内側筒状分割体(内部材)143に接合される上下の折り曲げ部172,173を備え、これらの折り曲げ部172,173は、重ね合せ部168,169に重ねて接合されたので、衝撃吸収部材140のフロントサイドフレーム15(図1参照)側の強度を高くできる。これにより、フロントサイドフレーム15への荷重伝達効率を、さらに向上することができる。
【0058】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図9に示すように、衝撃吸収部110に1枚の隔壁115を設けたが、隔壁は1枚に限るものではなく、複数枚を組み合わせるものであってもよい。また、隔壁に、リブや逃げ孔等を形成して隔壁の剛性を調整することを妨げるものではない。
【0059】
図11に示すように、衝撃吸収部140では、隔壁145の上下の折り曲げ部172,173は、内側筒状分割体(内部材)143に接合されたが、これに限るものではなく、外部材に接合されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る車体前部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る車体前部構造を採用した車体の平面図である。
【図2】図1に示された車体の側面図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造の分解斜視図である。
【図4】図3に示された車体前部構造の衝撃吸収部の分解斜視図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図1の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係る車体前部構造の比較検討図である。
【図8】本発明に係る第2実施例の車体前部構造を採用した車体の平面図である。
【図9】図8に示された車体前部構造の衝撃吸収部の分解斜視図である。
【図10】図8の10−10線断面図である。
【図11】図8に示される第2実施例の車体前部構造の別実施例の衝撃吸収部の断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10,100…車体前部構造、15…フロントサイドフレーム、15a…前端部、18…フロントピラー、19…下端部、21…ロアフレーム、21a…前端部、22…横長形状部(連結ブラケット)、23…バンパビーム、34…外壁、42…内側の縦壁、50,110,140…衝撃吸収部、58…横長筒状体、71…外側面、76,77…上下の接合部、86,87…上下の接合部、88,89…上下の重ね合わせ部、115,145…隔壁(バルクヘッド)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームにエクステンション(衝撃吸収部)を介してバンパビームを取付けた車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、バンパビームに作用する荷重を、エクステンション(衝撃吸収部部)を介してフロントサイドフレーム、アッパメンバ若しくはロアメンバなどに伝達するものが知られている。
この種の車体前部構造は、衝撃吸収性能と伝達性能とを配慮し、車両の大きさや用途によって適宜設計がなされるものであった。
【0003】
このような車体前部構造として、フロントサイドフレームの前端部にエクステンションを設けたものや、フロントサイドフレームの前端部とロアフレームの前端部との双方にエクステンションを設けたものが知られている(例えば、特許文献1−2参照。)。
【特許文献1】特開2005−112173公報
【特許文献2】特開2007−190964公報
【0004】
特許文献1の車体前部構造は、フロントサイドフレームの前端部に衝撃吸収部(エクステンション部材)を設け、この衝撃吸収部をバンパの裏側近傍まで延ばし、前面衝突時の衝撃を早期に車体フレームへ伝達させて、衝撃吸収性能を向上させるものである。
【0005】
特許文献2の車体前部構造は、フロントサイドフレームの前端部及びロアフレームの前端部に2部品構成の衝撃吸収部(エクステンション部材)を設け、これらの衝撃吸収部の前面にバンパビームを設けたものであり、バンパビームに対して角度を持った入力(多方向からの入力)に対して衝撃吸収部の倒れを防止し、角度を持った荷重に対して有効な構造としたものである。
【0006】
しかし、特許文献1の車体前部構造では、フロントサイドフレームの前端に設けられた衝撃吸収部(エクステンション部材)は、前後方向(軸方向)の荷重に対しては安定した荷重吸収及び荷重伝達が行われるが、衝撃吸収部に対して角度を持った入力に対しては、衝撃吸収部(エクステンション部材)が倒れて機能を果たせない。
例えば、倒れを防止するために衝撃吸収部の板厚を厚くすることが考えられるが、板厚を厚くすると、衝撃吸収部(エクステンション部材)の剛性が高くなり、衝撃吸収部としての好ましい作用が得ることができず、重量の増加若しくは製造コストの高騰にもつながるという課題があった。
【0007】
また、特許文献2の車体前部構造では、衝撃吸収部の構成が複雑になり、例えば、国によっては、自車より大型の車両が少ない場合もあり、衝撃吸収部を2部品構成として潰れ荷重(エネルギー吸収量)を大きく設定する必要がない場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、衝撃吸収部(エクステンション)に対して角度を持った荷重が入力された場合でも、衝撃吸収性がよいとともに、構造が簡単で車体取付性がよい車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、このフロントサイドフレームの後方にフロントピラーを設け、このフロントピラーの下端部から前方に向けてロアフレームを延ばすとともに、このロアフレームをフロントサイドフレームの外側に配置した車体前部構造において、フロントサイドフレームの前端部とロアフレームの前端部とを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部を互いに連結して車体幅方向に延びる横長形状部を形成し、この横長形状部の前面全域に亘って衝撃吸収部を設け、この衝撃吸収部にバンパビームを取付けてなり、衝撃吸収部が、断面多角形の横長筒状体であり、ロアフレームの縦壁の延長線上に衝撃吸収部の外側面が配置されたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、衝撃吸収部が、内部材と外部材とに2分割構成され、内部材及び外部材の上下の接続部は互いに重ね合わせて接続され、その重ね合わされた重ね合わせ部を車幅方向内側へオフセットしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、隔壁が、断面視で複数の角部を有し、内部材とで多角形の閉断面を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、隔壁が、内部材若しくは外部材に接合される上下の折り曲げ部を備え、これらの折り曲げ部は、重ね合せ部に重ねて接合されることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、衝撃吸収部が、フロントサイドフレームの外壁の延長線上に且つ車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁が配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、このフロントサイドフレームの後方にフロントピラーを設け、このフロントピラーの下端部から前方に向けてロアフレームを延ばすとともに、このロアフレームをフロントサイドフレームの外側に配置する。
さらに、フロントサイドフレームの前端部とロアフレームの前端部とを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部を互いに連結して車体幅方向に延びる横長形状部を形成し、この横長形状部の前面全域に亘って衝撃吸収部を設ける。
衝撃吸収部を、断面多角形の横長筒状体に構成したので、角度を持った荷重の入力に対しても衝撃吸収部の倒れを防止することができ、角度を持った荷重が入力された場合でも、良好な衝撃吸収性を確保することができる。
例えば、衝撃吸収部を、2つの構成部品で構成する場合に比べて、簡単な構成にすることができるとともに、1部品で構成されたので車体取付性がよい。さらに、衝撃吸収部を、2つの構成部品で構成する場合に比べて、衝撃吸収部の稜線を減らすことができ、潰れ易くエネルギー吸収性が良好となる。
また、衝撃吸収部を、断面多角形の横長筒状体に構成することで、車体前後方向の断面2次モーメントを増大することができ、潰れ荷重(エネルギー吸収量)を大きく設定することができる。
ロアフレームの縦壁の延長線上に衝撃吸収部の外側面を配置することで、バンパビームに入力された荷重の一部を、ロアフレームにも分散させて伝達することができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、衝撃吸収部は、内部材と外部材とに2分割構成され、内部材及び外部材の上下の接続部は互いに重ね合わせて接続され、その重ね合わされた重ね合わせ部を車幅方向内側へオフセットしたので、強度の高くなった重ね合わせ部を車幅方向内側のフロントサイドフレーム側に寄せることができる。この結果、バンパビームに入力された荷重を強度の高いフロントサイドフレームへ優先的に伝達することができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、衝撃吸収部は、フロントサイドフレームの外壁の延長線上に且つ車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁が配置されたので、フロントサイドフレームの外壁に隔壁からバンパビームに入力された荷重を直接的に伝達することができ、荷重伝達効率の向上を図ることができる。
衝撃吸収部の車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁が配置されたので、衝撃吸収部の座屈方向に直交する断面を略矩形とし、断面の長さ若しくは幅を座屈波長と定義するときに、座屈波長の間にエネルギー吸収する領域を作ることができ、エネルギー吸収量を増大することができる。さらに、衝撃吸収部に隔壁が配置されたので、衝撃吸収部の座屈波長を小さくすることができ、均一なエネルギー吸収を図ることができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、隔壁は、断面視で複数の角部を有し、内部材とで多角形の閉断面を形成したので、隔壁の稜線を増やすことができる。さらに、衝撃吸収効果を高めることができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、隔壁は、内部材若しくは外部材に接合される上下の折り曲げ部を備え、これらの折り曲げ部は、重ね合せ部に重ねて接合されたので、衝撃吸収部材のフロントサイドフレーム側の強度を高くできる。これにより、フロントサイドフレームへの荷重伝達効率を、さらに向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車体前部構造を採用した車体の平面図であり、図2は図1に示された車体の側面図であり、図3は本発明に係る車体前部構造の分解斜視図である。
【0020】
車体前部構造10は、車室12とエンジンルーム13を隔てるダッシュボードロア14と、車体前後方向に延ばされたフロントサイドフレーム15と、このフロントサイドフレーム15の前端部15a廻りに設けられ、ラジエータ(不図示)及びコンデンサを支持するフロントバルクヘッド17(図2参照)と、フロントサイドフレーム15の後方で車幅外方に設けられたフロントピラー18と、このフロントピラー18の下端部19から前方に延ばされるとともに、フロントサイドフレーム15の車幅方向に関して外側に配置されるロアフレーム21と、これらのロアフレーム21の前端部21aとフロントサイドフレーム15の前端部15aとを連結する連結ブラケット22と、連結ブラケット22の前面に設けられ、荷重伝達をするとともに荷重吸収をする衝撃吸収部(エクステンション)50と、この衝撃吸収部50の前面に設けられるバンパビーム23と、ロアフレーム21とフロントサイドフレーム15とに渡され、フロントダンパ(不図示)を支持するダンパハウジング24とから構成される。
【0021】
連結ブラケット22は、フロントサイドフレーム15の前端部15aとロアフレーム21の前端部21aとを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部15a,21aを互いに連結して車体幅方向に延ばした横長形状部である。
【0022】
図4は図3に示された車体前部構造の衝撃吸収部の分解斜視図であり、図5は図1の5−5線断面図であり、図6は図1の6−6線断面図である。
図6に示されるように、フロントサイドフレーム15は、インナ部材27にアウタ部材28が接合されたフレームであり、インナ部材27に、上面壁31と、内壁32と、内側下面壁33とが形成され、アウタ部材28に、外壁34と、外側下面壁35とが形成される。なお、内側下面壁33と外側下面壁35とで、下面壁36が構成される。
【0023】
図6に示されるように、ロアフレーム21は、インナパネル37にアウタパネル38が接合されたフレームであり、インナパネル37に、上壁41と、内側の縦壁42と、下壁43とが形成され、アウタパネル38に、外側の縦壁44が形成される。
【0024】
さらに、フロントサイドフレーム15は、ロアフレーム21に向けてフロントサイドフレーム側接続ブラケット46が延出され、ロアフレーム21は、フロントサイドフレーム15に向けてロアフレーム側接続ブラケット47が延出され、これらの接続ブラケット46,47が接続されることにより、ロアフレーム21の前端部21aとフロントサイドフレーム15の前端部15aとが連結されている。
【0025】
図4に示されるように、衝撃吸収部50は、連結ブラケット22に接合される基部51と、この基部51から前方に延出される外側筒状分割体(外部材)52と、基部51から前方に延出される内側筒状分割体(内部材)53と、これらの筒状分割体52,53の前端に被せる蓋部材54とからなる。
【0026】
基部51は、連結ブラケット22に接合される本体部56と、この本体部56の周りに形成され、剛性を増すフランジ部57とからなる。
外側筒状分割体(外部材)52と内側筒状分割体(内部材)53とで断面多角形の横長筒状体58が形成される。
【0027】
蓋部材54は、バンパビーム23が接合される蓋本体61と、この蓋本体61から折り曲げられ、横長筒状体58に接合される上接合片62と、蓋本体61から折り曲げられ、横長筒状体58に接合される下接合片(不図示)と、蓋本体61から折り曲げられ、横長筒状体58に接合される外接合片64と、蓋本体61から折り曲げられ、横長筒状体58に接合される内接合片65とからなる。
【0028】
外側筒状分割体52は、車幅方向外方に形成される外側面71と、この外側面71から上・下コーナ部72,73を介して折り曲げられ、内方に延ばされる上・下壁面部74,75と、これらの上・下壁面部74,75にそれぞれ設けられ、内側筒状分割体53に接合される上下の接合部76,77とからなる。
【0029】
外側筒状分割体52の外側面71は、図1に示されるように、ロアフレーム21の内側の縦壁42に沿わせて配置される。
上コーナ部72は、外側面71と上壁面部74とに対して略C面取り状に形成され、下コーナ部73は、外側面71と下壁面部75とに対して略C面取り状に形成される。
上下の接合部76,77は、それぞれに内側筒状分割体53に対して嵌合を容易にすることができる上・下案内面78,79が形成される。
【0030】
内側筒状分割体53は、車幅方向内方に形成される内側面81と、この内側面81から上・下コーナ部82,83を介して折り曲げられ、外側筒状分割体52に接合される上下の接合部86,87とからなる。
【0031】
内側筒状分割体53の内側面81は、図1に示されるように、フロントサイドフレーム15の内壁32に沿わせて配置される。
上コーナ部82は、内側面81と内側の上接合部86とに対して略C面取り状に形成され、下コーナ部83は、内側面81と内側の下接合部87とに対して略C面取り状に形成される。
【0032】
外側の上接合部76と内側の上接合部86とで上の重ね合わせ部88が形成され、外側の下接合部77と内側の下接合部87とで下の重ね合わせ部89が形成され、これらの重ね合わせ部88,89は、横長筒状体58の中心C1に対して車幅方向内側にオフセットされている。
【0033】
図7(a),(b)は本発明に係る車体前部構造の比較検討図である。
(a)において、比較例の車体前部構造200が示され、車体前部構造200は、フロントサイドフレーム201の前端部及びロアフレーム202の前端部に、内側衝撃吸収部203及び外側衝撃吸収部204からなる2部品構成の衝撃吸収部(エクステンション部材)を設け、これらの衝撃吸収部203,204の前面にバンパビーム205を設けたものであり、バンパビーム205に作用する車体前後方向の入力に対して車幅方向に角度を持った入力による衝撃吸収部203,204の倒れを防止でき、角度を持った入力(多方向からの入力)に対して有効な構造としたものである。
【0034】
しかし、車体前部構造200では、衝撃吸収部の構成が複雑になり、例えば、国によっては、自車より大型の車両が少ない場合もあり、衝撃吸収部を2部品構成として潰れ荷重(エネルギー吸収量)を大きく設定する必要がない場合もある。
【0035】
(b)において、実施例の車体前部構造10が示され、車体前部構造10では、車体前後方向にフロントサイドフレーム15を延ばし、このフロントサイドフレーム15の後方にフロントピラー18を設け、このフロントピラー18(図2参照)の下端部19から前方に向けてロアフレーム21を延ばすとともに、このロアフレーム21をフロントサイドフレーム15の外側に配置する。
【0036】
さらに、フロントサイドフレーム15の前端部15aとロアフレーム21の前端部21aとを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部15a,21aを互いに連結して車体幅方向に延びる横長形状部(連結ブラケット)22を形成し、この横長形状部22の前面全域に亘って衝撃吸収部50を設ける。
【0037】
衝撃吸収部50を、断面多角形の横長筒状体58に構成したので、角度を持った荷重の入力に対しても衝撃吸収部50の倒れを防止することができ、車幅方向に角度を持った荷重が入力された場合でも、良好な衝撃吸収性を確保することができる。
【0038】
例えば、衝撃吸収部を、2つの構成部品で構成する場合に比べて、簡単な構成にすることができるとともに、1部品で構成されたので車体取付性がよい。さらに、衝撃吸収部50を、2つの構成部品で構成する場合に比べて、衝撃吸収部50の稜線を減らすことができ、潰れ易くエネルギー吸収性が良好となる。
【0039】
また、衝撃吸収部50を、断面多角形の横長筒状体58に構成することで、単なる筒状のものに比べて、車体前後方向の断面2次モーメントを増大することができ、潰れ荷重(エネルギー吸収量)を大きく設定することができる。
【0040】
ロアフレーム21の縦壁42の延長線上に衝撃吸収部50の外側面71を配置することで、バンパビーム23に入力された荷重の一部を、ロアフレーム21にも分散させて伝達することができる。
【0041】
車体前部構造10では、図5に示されたように、衝撃吸収部50が、内側筒状分割体(内部材)53と外側筒状分割体(外部材)52とに2分割構成され、内部材53及び外部材52の上下の接合部76,77及び上下の接合部86,87は互いに重ね合わせて接続され、その重ね合わされた重ね合わせ部88,89を車幅方向内側へオフセットしたので、強度の高くなった重ね合わせ部88,89を車幅方向内側のフロントサイドフレーム15側に寄せることができる。この結果、バンパビーム23に入力された荷重を強度の高いフロントサイドフレーム15へ優先的に伝達することができる。
【0042】
図8は本発明に係る第2実施例の車体前部構造を採用した車体の平面図である。なお、車体前部構造に使用した部材と同一部品は同一符号を用いて詳細な説明は省略する。
車体前部構造100は、ダッシュボードロア14と、フロントサイドフレーム15と、
フロントバルクヘッド17(図2参照)と、フロントピラー18(図2参照)と、ロアフレーム21と、連結ブラケット22と、連結ブラケット22の前面に設けられ、荷重伝達をするとともに荷重吸収をする衝撃吸収部(エクステンション)110と、この衝撃吸収部110の前面に設けられるバンパビーム23と、ダンパハウジング24とから構成される。
【0043】
図9は図8に示された車体前部構造の衝撃吸収部の分解斜視図であり、図10は図8の10−10線断面図である。
衝撃吸収部110は、連結ブラケット22に接合される基部111と、この基部111から前方に延出される外側筒状分割体(外部材)112と、基部111から前方に延出される内側筒状分割体(内部材)113と、これらの筒状分割体112,113の前端に被せる蓋部材114と、基部111、外側筒状分割体112、内側筒状分割体113及び蓋部材114で形成された内部空間119を車体前後方向に仕切る隔壁(バルクヘッド)115とからなる。
【0044】
外側筒状分割体(外部材)112と内側筒状分割体(内部材)113とで断面多角形の横長筒状体118が形成される。
なお、基部111、外側筒状分割体112、内側筒状分割体113及び蓋部材114は、車体前部構造10(図3及び図4参照)の基部51、外側筒状分割体52、内側筒状分割体53及び蓋部材54にそれぞれ同一構成の部材である。
【0045】
隔壁115は、内部空間119を前後方向に仕切る隔壁本体121と、この隔壁本体121から折り曲げ形成され、外側の上・下壁面124,125にそれぞれ接合される上・下折り曲げ部122,123とからなる。なお、隔壁115は、断面視で2個(2本)の角部(稜線)126,127を備える。
隔壁115の隔壁本体121は、フロントサイドフレーム15の外壁34の延長線上に配置される。
【0046】
第2実施例の車体前部構造100では、衝撃吸収部110が、フロントサイドフレーム15の外壁34の延長線上に且つ車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁115が配置されたので、フロントサイドフレーム15の外壁34に隔壁115からバンパビーム23に入力された荷重を直接的に伝達することができ、荷重伝達効率の向上を図ることができる。
【0047】
衝撃吸収部110の車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁115が配置されたので、衝撃吸収部110の座屈方向に直交する断面を略矩形とし、断面の長さ若しくは幅を座屈波長と定義するときに、座屈波長の間にエネルギー吸収する領域を作ることができ、エネルギー吸収量を増大することができる。さらに、衝撃吸収部110に隔壁115が配置されたので、衝撃吸収部110の座屈波長を小さくすることができ、均一なエネルギー吸収を図ることができる。
【0048】
図11は図8に示される第2実施例の車体前部構造の別実施例の衝撃吸収部の断面図である。なお、第2実施例の車体前部構造100(図9参照)に使用した部材と同一部品は同一符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0049】
衝撃吸収部140は、図9に示された基部111に略同一構成の基部と、この基部から前方に延出される外側筒状分割体(外部材)142と、基部から前方に延出される内側筒状分割体(内部材)143と、図9に示された蓋部材114に略同一構成の蓋部材と、基部、外側筒状分割体142、内側筒状分割体143及び蓋部材で形成された内部空間149を車体前後方向に仕切る隔壁(バルクヘッド)145とからなる。
【0050】
外側筒状分割体(外部材)142と内側筒状分割体(内部材)143とで断面多角形の横長筒状体148が形成される。
【0051】
外側筒状分割体142は、車幅方向外方に形成される外側面151と、この外側面151から上・下コーナ部152,153を介して折り曲げられ、内方に延ばされる上・下壁面部154,155と、これらの上・下壁面部154,155にそれぞれ設けられ、内側筒状分割体143に接合される上下の接合部156,157とからなる。
【0052】
内側筒状分割体143は、車幅方向内方に形成される内側面161と、この内側面161から上・下コーナ部162,163を介して折り曲げられ、外側筒状分割体142に接合される上下の接合部166,167とからなる。
【0053】
外側の上接合部156と内側の上接合部166とで上の重ね合わせ部168が形成され、外側の下接合部157と内側の下接合部167とで下の重ね合わせ部169が形成されている。
【0054】
隔壁145は、内部空間149を前後方向に仕切る隔壁本体171と、この隔壁本体171から折り曲げ形成され、外側の上・下接合部156,157にそれぞれ接合される上・下折り曲げ部172,173と、隔壁本体171と上折り曲げ部172との間に形成される上コーナ部174と、隔壁本体171と下折り曲げ部173との間に形成される下コーナ部175とからなる。
【0055】
なお、上・下折り曲げ部172,173は、外側の上・下接合部156,157にそれぞれ接合されているので、上下の重ね合わせ部168,169に接合されるものとも言える。
また、隔壁145は、上・下コーナ部174,176が形成されることで、断面視で複数の角部(稜線)176〜179を有し、内側筒状分割体(内部材)143とで多角形の閉断面を形成する。図10に示される隔壁115よりも角部(稜線)176〜179の数が増加させた。
【0056】
別実施例の衝撃吸収部140では、隔壁145は、断面視で複数の角部176〜179を有し、内側筒状分割体(内部材)143とで多角形の閉断面を形成したので、隔壁145の角部(稜線)176〜179を増やすことができる。さらに、衝撃吸収効果を高めることができる。
【0057】
別実施例の衝撃吸収部140では、隔壁145は、内側筒状分割体(内部材)143に接合される上下の折り曲げ部172,173を備え、これらの折り曲げ部172,173は、重ね合せ部168,169に重ねて接合されたので、衝撃吸収部材140のフロントサイドフレーム15(図1参照)側の強度を高くできる。これにより、フロントサイドフレーム15への荷重伝達効率を、さらに向上することができる。
【0058】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図9に示すように、衝撃吸収部110に1枚の隔壁115を設けたが、隔壁は1枚に限るものではなく、複数枚を組み合わせるものであってもよい。また、隔壁に、リブや逃げ孔等を形成して隔壁の剛性を調整することを妨げるものではない。
【0059】
図11に示すように、衝撃吸収部140では、隔壁145の上下の折り曲げ部172,173は、内側筒状分割体(内部材)143に接合されたが、これに限るものではなく、外部材に接合されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る車体前部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る車体前部構造を採用した車体の平面図である。
【図2】図1に示された車体の側面図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造の分解斜視図である。
【図4】図3に示された車体前部構造の衝撃吸収部の分解斜視図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図1の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係る車体前部構造の比較検討図である。
【図8】本発明に係る第2実施例の車体前部構造を採用した車体の平面図である。
【図9】図8に示された車体前部構造の衝撃吸収部の分解斜視図である。
【図10】図8の10−10線断面図である。
【図11】図8に示される第2実施例の車体前部構造の別実施例の衝撃吸収部の断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10,100…車体前部構造、15…フロントサイドフレーム、15a…前端部、18…フロントピラー、19…下端部、21…ロアフレーム、21a…前端部、22…横長形状部(連結ブラケット)、23…バンパビーム、34…外壁、42…内側の縦壁、50,110,140…衝撃吸収部、58…横長筒状体、71…外側面、76,77…上下の接合部、86,87…上下の接合部、88,89…上下の重ね合わせ部、115,145…隔壁(バルクヘッド)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、このフロントサイドフレームの後方にフロントピラーを設け、このフロントピラーの下端部から前方に向けてロアフレームを延ばすとともに、このロアフレームを前記フロントサイドフレームの外側に配置した車体前部構造において、
前記フロントサイドフレームの前端部と前記ロアフレームの前端部とを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部を互いに連結して車体幅方向に延びる横長形状部を形成し、この横長形状部の前面全域に亘って衝撃吸収部を設け、この衝撃吸収部にバンパビームを取付けてなり、
前記衝撃吸収部は、断面多角形の横長筒状体であり、前記ロアフレームの縦壁の延長線上に前記衝撃吸収部の外側面が配置されたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収部は、内部材と外部材とに2分割構成され、前記内部材及び前記外部材の上下の接続部は互いに重ね合わせて接続され、その重ね合わされた重ね合わせ部を車幅方向内側へオフセットしたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記衝撃吸収部は、前記フロントサイドフレームの外壁の延長線上に且つ車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁が配置されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記隔壁は、断面視で複数の角部を有し、前記内部材とで多角形の閉断面を形成することを特徴とする請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記隔壁は、前記前記内部材若しくは前記外部材に接合される上下の折り曲げ部を備え、これらの折り曲げ部は、前記重ね合せ部に重ねて接合されることを特徴とする請求項4に記載の車体前部構造。
【請求項1】
車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、このフロントサイドフレームの後方にフロントピラーを設け、このフロントピラーの下端部から前方に向けてロアフレームを延ばすとともに、このロアフレームを前記フロントサイドフレームの外側に配置した車体前部構造において、
前記フロントサイドフレームの前端部と前記ロアフレームの前端部とを車体幅方向に向けて配置するとともに、それぞれの前端部を互いに連結して車体幅方向に延びる横長形状部を形成し、この横長形状部の前面全域に亘って衝撃吸収部を設け、この衝撃吸収部にバンパビームを取付けてなり、
前記衝撃吸収部は、断面多角形の横長筒状体であり、前記ロアフレームの縦壁の延長線上に前記衝撃吸収部の外側面が配置されたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収部は、内部材と外部材とに2分割構成され、前記内部材及び前記外部材の上下の接続部は互いに重ね合わせて接続され、その重ね合わされた重ね合わせ部を車幅方向内側へオフセットしたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記衝撃吸収部は、前記フロントサイドフレームの外壁の延長線上に且つ車体前後方向にエネルギー吸収量の増加を図る隔壁が配置されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記隔壁は、断面視で複数の角部を有し、前記内部材とで多角形の閉断面を形成することを特徴とする請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記隔壁は、前記前記内部材若しくは前記外部材に接合される上下の折り曲げ部を備え、これらの折り曲げ部は、前記重ね合せ部に重ねて接合されることを特徴とする請求項4に記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−125884(P2010−125884A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299673(P2008−299673)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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