説明

車体前部構造

【課題】構成の簡素化を図ると共に小型化による車載性に優れ、かつ機能性に優れた可動シャッタ装置を備えた車体前部構造を提供する。
【解決手段】バンパ10及びフロントグリル18とラジエータ5の間に配設する可動シャッタ装置20が、第1、第2縦フレーム24、27及を備えた枠体21と、第1、第2縦フレーム24、27に支持されバンパ上部11に隠蔽される開放位置とエア導入口15に対向する閉止位置との間で移動可能な下部シャッタ25及びバンパ上部11に隠蔽される開放位置とグリル開口部19と対向する閉止位置との間で移動可能な上部シャッタ36とを備える。各シャッタ35、36が開放位置においてラジエータ5の放熱効果が確保でき、かつ各シャッタ35、36が閉止位置においてエンジンルーム2内への空気の流入が遮断されて空気抵抗が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、特にバンパ及びフロントグリルとラジエータとの間に可動シャッタ装置を配置した車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両前面部に配置されるバンパやフロントグリルには、エンジンルーム内に設置されたラジエータの前面に空気を導入する開口部が設けられ、これら開口部から導入された空気によりラジエータ内のエンジン冷却水を冷却する。一方、高速走行時等においてバンパやフロントグリルの開口部からエンジンルーム内に導入される空気の増大に伴って走行抵抗が大きくなり燃費効率の低下が懸念される。また、冬季や寒冷地或いは連続する高速走行時等においてエンジンを過冷却するおそれがある。更に、冬季や寒冷地おいてエンジンの暖機性能や排気ガス浄化装置の触媒活性に影響することが懸念される。
【0003】
この対策として、フロントグリルとラジエータとの間に車速やエンジン冷却水の温度に応じてエンジンルーム内への空気導入を遮断する可動シャッタ装置を配設したものが、例えば特許文献1によって提案されている。
【0004】
特許文献1の可動シャッタ装置を図7を参照して説明する。図7(a)は車体前部の概要を示すもので、エンジンルーム101内にはラジエータ102を配置し、ラジエータ102の前方下部に対応してエア導入口104が開口するバンパ103を車幅方向に延在して配置すると共に、ラジエータ102の前方上方に対応してグリル開口部106が開口するフロントグリル105を配置する。
【0005】
ラジエータ102とバンパ103及びフロントグリル105との間に可動シャッタ装置110を配置する。可動シャッタ装置110は上下に配置された筐体111、121を有し、筐体111にエア導入口104に連通する第1空気流通路112を形成し、筐体121にグリル開口部106に連通する第2空気流通路122を形成する。
【0006】
筐体111内に上下方向に間隔を有して配置された複数の支持軸113によって第1空気流通路112を閉止可能な複数の羽根部材114を回転可能に支持する。各羽根部材114は互いに水平な開放位置において各羽根部材114の相互間に開口を形成して第1空気流通路112を開放する一方、各羽根部材114を図7(b)に仮想線で示すように垂直な閉止位置に回転させると、各羽根部材114の端部が互いに当接して第1空気流通路112を閉止する。
【0007】
各羽根部材114を開閉作動する駆動装置115は、図7(b)に示すように、各支持軸113に一端を結合したリンク部材116の他端を連結ピン117aを介して連結部材117に連結し、これら支持軸113、リンク部材116及び連結部材117によって4リンク機構を構成する。連結部材117にアクチュエータ118の作動軸119を連結ピン119aを介して連結し、アクチュエータ118を筐体111或いは車体本体120に揺動自在に支持する。これにより、車速及びエンジン冷却水の温度に応じて設定された制御装置からのシャッタ開放指令或いはシャッタ閉止指令に基づいてアクチュエータ118の作動軸119が一定ストロークで出没変位すると、各羽根部材114が支持軸113を中心に開放位置と閉止位置との間で回動する。
【0008】
同様に、筐体121内に上下方向に間隔を有して配置された複数の支持軸123によって第2空気流通路122を閉止可能な羽根部材124を回転可能に支持し、アクチュエータによって開放位置と閉止位置との間で回動する。
【0009】
【特許文献1】特開2007−1503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1によると、車速及びエンジン冷却水の温度に基づいて第1空気通路112及び第2空気通路122を閉止することによって、高速走行時における空気抵抗が減少する。また、冬季や寒冷地或いは連続する高速走行時においてエンジンの過冷却が抑制できる。更に、冬季や寒冷地おいてエンジンの暖機性能や排気ガス浄化装置の触媒活性が促進できる。
【0011】
しかし、筐体111、121に回転可能に支持された多数の羽根部材114、124を有し、かつ各羽根部材114、124を駆動するリンク機構からなるアクチュエータ118及び第1空気流通路112、第2空気流通路122を備えることから構成部品が多く複雑である。特に、開放位置における各羽根部材114及び124がほぼ水平となり前後方向に長くなり、これら羽根部材114、124を収容する筐体111、121の車体前後方向の長さが増大し、かつ筐体111、121の外部に隣接してアクチュエータ118等が配置されると共にバンパ103のエア導入口104及びフロントグリル105のグリル開口部106と筐体111及び121を連通する第1及び第2空気流通路112、122を備えることから可動シャッタ装置110の車体前後方向の寸法が増大して大型化する。この可動シャッタ装置110の大型化に伴ってラジエータ102とバンパ103及びフロントグリル105との間における可動シャッタ装置110の車載スペースが大きくなり車体前部が長くなり車体重量が増大する。
【0012】
また、筐体111とエア導入口104を連通する第1空気流通路112及び筐体121とグリル開口106を連通する第1空気有通路122が湾曲形成され、かつ空気を導入する開放位置においても筐体111、121内に複数の羽根部材114、124が延在して筐体111、121の有効開口面積が抑制されることと相俟って、ラジエータ102による冷却性能の低下を招くことが懸念される。この結果、筐体111、121の有効開口面積を確保するために筐体111、121の大型化を要し、かつバンパ103やフロントグリル105の造形が制限される。
【0013】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、構成の簡素化を図ると共に小型化による車載性に優れ、かつ機能性に優れた可動シャッタ装置を備えた車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する請求項1に記載の車体前部構造の発明は、バンパ及び該バンパの上方に配置されたフロントグリルとエンジンルーム内のラジエータとが対向配置され、上記バンパ及びフロントグリルとラジエータとの間に運転状態に応じて上記ラジエータに流入する空気を制御する可動シャッタ装置を備えた車体前部構造において、上記バンパは、車幅方向に延在するバンパビームを備えたバンパ上部及び該バンパ上部の下方に沿って車幅方向に延在するバンパ下部を有すると共に該バンパ上部とバンパ下部との間にエア導入口が開口し、上記フロントグリルは、上記バンパ上部の上方に沿って開口するグリル開口部を備え、上記可動シャッタ装置は、上下に離間して車幅方向に延在する上部フレーム及び下部フレームと、上下方向に延在して上端及び下端が上部フレーム及び下部フレームの各端部に結合する第1縦フレーム及び第2縦フレームを備え下部範囲が上記エア導入口と対向すると共に上部範囲がグリル開口部と対向する矩形の枠体と、車体前方から見た正面視状態において車幅方向に延在する板状で上記バンパ上部に隠蔽される開放位置とエア導入口に対向する閉止位置との間で上下移動可能に上記第1縦フレーム及び第2縦フレームに支持された下部シャッタと、車体前方から見た正面視状態において車幅方向に延在する板状で上記バンパ上部に隠蔽される開放位置とグリル開口部と対向する閉止位置との間で上下移動可能に上記第1縦フレーム及び第2縦フレームに支持された上部シャッタと、下部シャッタ及び上部シャッタを上記開放位置と閉止位置との間で移動せしめる駆動機構とを備えたことを特徴とする。
【0015】
この発明によると、バンパ及びフロントグリルとエンジンルーム内に配置されたラジエータとの間に配置される可動シャッタ装置が、枠体の第1縦フレーム及び第2縦フレームに支持されて車体前方から見た正面視状態においてバンパ上部に隠蔽される閉止位置とエア導入口に対向する閉止位置との間で移動する板状の下側シャッタと、第1縦フレーム及び第2縦フレームに支持されてバンパ上部に隠蔽される開放位置とグリル開口部と対向する閉止位置との間で移動する板状の上側シャッタを備え、下部シャッタ及び上部シャッタをバンパのバンパ上部に隠蔽される開放位置に保持することで、バンパのエア導入口と対向する可動シャッタ装置の下部範囲及びフロントグリルのグリル開口部と対向する上部範囲が大きく開放される。これにより、車両が走行すると、バンパのエア導入口及びフロントグリルのグリル開口部から導入された空気がラジエータの前面に導入してラジエータの放熱効果が確保できる。
【0016】
一方、下部シャッタ及び上部シャッタをそれぞれ閉止位置に移動することで、バンパのエア導入口に対向する枠部の下部範囲が下部シャッタにより閉止し、フロントグリルのグリル開口部に対向する枠部の上部範囲が上部シャッタにより閉止すると共に、下部シャッタと上部シャッタとの間の中間範囲が車体前方から見た正面視状態においてバンパのバンパ上部に隠蔽される。これにより走行時におけるエンジンルーム内への空気の流入が遮断され、走行に伴う空気抵抗が減少して燃費向上が得られる。また、エンジンの過冷却を防止すると共に、エンジンの暖機性能や排気ガス浄化装置の触媒活性を促進することができる。
【0017】
また、可動シャッタ装置が、枠体の第1縦フレーム及び第2縦フレームに支持されてそれぞれ閉止位置と閉止位置との間で移動する板状の下部シャッタ及び上部シャッタと、下部シャッタ及び上部シャッタを開放位置と閉止位置との間で移動させる駆動機構とによる少ない構成部材でかつ簡単な構造で構成され、かつ板状の下部シャッタ及び上部シャッタを昇降可能に配置することで可動シャッタ装置の前後方向の寸法が抑制でき、可動シャッタ装置の優れた車載性及び車載作業性が得られる。
【0018】
また、開放位置における下部シャッタ及び上部シャッタが、バンパビームを有するバンパ上部に対向して配置されることから、車両衝突事故等によってバンパのバンパ上部に衝撃荷重が入力されてもバンパビームによって保護され、下部シャッタ、上部シャッタ等の可動シャッタ装置への影響が回避或いは極めて少なくなる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1の車体前部構造において、上記駆動機構は、上記枠体に支持されたことを特徴とする。
【0020】
この発明によると、駆動機構を枠体に配置することで枠体に下部シャッタ、上部シャッタ、駆動機構の構成部材を車載に先立って予め取り付けることができ、各構成部材の組付精度及び組付作業性が向上すると共に可動シャッタ装置の車載作業の効率化ができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2の車体前部構造において、上記第1縦フレームは、基部及び該基部の両端部から前方に延在すると共に先端がそれぞれ離反する車幅方向に屈曲する一対のガイド部を有する断面ハット状で上下方向に延在する第1駆動側ガイドレールと、該第1駆動側ガイドレールの基部に結合されて第2縦フレーム側が開口する断面コ字形で上下方向に延在する第1従動側ガイドレールとを備え、上記第2縦フレームは、基部及び該基部の両端部から後方に延在すると共に先端がそれぞれ離反する車幅方向に屈曲する一対のガイド部を有する断面ハット状で上下方向に延在する第2駆動側ガイドレールと、該第2駆動側ガイドレールの基部に結合されて第1縦フレーム側が開口する断面コ字形で上下方向に延在する第2従動側ガイドレールを備え、上記下部シャッタは、上記第1駆動側ガイドレールの各ガイド部に摺動自在に嵌合するスライド部を備え該第1駆動側ガイドレールの前面に沿って上下移動する第1スライダに一方端が結合され他端が第2従動ガイドレールに摺動自在に嵌合して上下移動可能に第1駆動側ガイドレール及び第2従動側ガイドレールに支持され、上記下部シャッタは、上記第2駆動側ガイドレールの各ガイド部に摺動自在に嵌合するスライド部を備え該第2駆動側ガイドレールの後面に沿って上下移動する第2スライダに一方端が結合され他端が第1従動ガイドレールに摺動自在に嵌合して上下移動可能に第2駆動側ガイドレール及び第1従動側ガイドレールに支持され、上記駆動機構は第1駆動機構と第2駆動機構を備え、該第1駆動機構は、上記第1スライダを介して下部シャッタを開放位置と閉止位置との間で移動せしめ、上記第2駆動機構は、上記第2スライダを介して上部シャッタを開放位置と閉止位置との間で移動せしめることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、断面ハット状で延在する駆動側ガイドレールと断面コ字状で延在する従動側ガイドレールを結合して第1縦フレーム及び第2縦フレームが形成され、第1縦フレーム及び第2縦フレームの剛性が向上する。
【0023】
更に、下部シャッタの一方端を第1スライダを介して第1駆動側ガイドレールに上下動自在に支持し、他方端を全幅に亘って断面コ字状の第2従動側ガイドレールに移動可能に挟持することで下部シャッタが第1駆動側ガイドレール及び第2従動側ガイドレールに移動可能に強固に保持され、同様に上部シャッタの一方端を第2スライダを介して第2駆動側ガイドレールに上下動自在に支持し、他方端を全幅に亘って断面コ字状の第1従動側ガイドレールに移動可能に挟持することで上部シャッタが第2駆動側ガイドレール及び第1従動側ガイドレールに移動可能に強固に保持できる。
【0024】
更に、矩形板状の下部シャッタ及び上部シャッタが昇降可能に前後に配置されて、可動シャッタ装置の上部範囲とフロントグリルとの離間スペースを小さく設定することが可能になり、フロントグリルの形状の造形への影響が少なくなる。
【0025】
請求項4に記載の発明は、請求項3の車体前部構造において、上記第1駆動機構は、上記第1駆動側ガイドレールの上部前面に回動自在に支持された上部プーリと、上記第1駆動側ガイドレールの下部前面に支持されて第1電動モータによって正逆回転する下部プーリと、該下部プーリと上部プーリに巻回して各端部が第1スライダに締結されたワイヤとを備え、上記第2駆動機構は、上記第2駆動側ガイドレールの上部後面に回動自在に支持された上部プーリと、上記第2駆動側ガイドレールの下部後面に支持されて上記第2電動モータによって正逆回転する下部プーリと、該下部プーリと上部プーリに巻回して各端部が上記第2スライダに締結されたワイヤとを備えたことを特徴とする。
【0026】
この発明によると、第1駆動機構及び第2駆動機構が電動モータによって駆動される下部プーリ、上部プーリ及び下部プーリと上部プーリに巻回されて各端部がスライダに締結されたワイヤとによる簡単な構成で形成できる。また、第1電動モータ及び第2電動モータが枠体の下部に配置されて可動シャッタ装置の上部の前後方向の寸法を抑制することができ、可動シャッタ装置の上部範囲とフロントグリルとの離間スペースを小さく設定することが可能になり、フロントグリルの造形への影響を少なくできる。
【0027】
請求項5に記載の発明は、請求項4の車体前部構造において、上記第1電動モータ及び第2電動モータは、車体前方から見た正面視状態において上記バンパ下部に隠蔽されることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、第1駆動機構及び第2駆動機構の各電動モータがバンパ下部によって車体前方から覆われ、電動モータが雪道や降雪中に地上から舞い上がる雪や水滴、泥水、飛散する小石等から保護される。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項の車体前部構造において、上記可動シャッタ装置は、エンジン冷却水の温度が所定温度以下の時に下部シャッタ及び上部シャッタを閉止位置とする制御装置を有することを特徴とする。
【0030】
この発明によると、エンジン冷却水の温度が所定温度以下の時に下部シャッタ及び上部シャッタを閉止位置とするように制御することで、例えば冬季や寒冷地における低速走行や暖機運転時において、エア導入口及びグリル開口部からエンジンルーム内への空気の流入が遮断され、エンジンの過冷却を防止すると共に、エンジンの暖機性能や排気ガス浄化装置の触媒活性を促進することができる。
【0031】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項の車体前部構造において、上記可動シャッタ装置は、車速が所定速度以上でかつエンジン冷却水の温度が所定温度以下の時に下部シャッタ及び上部シャッタを閉止位置とする制御装置を有することを特徴とする。
【0032】
この発明によると、車速が所定速度以上でかつエンジン冷却水の温度が所定温度以下の時に下部シャッタ及び上部シャッタを閉止位置とするように制御することで、例えば高速走行時においてエンジンルーム内への空気の流入が遮断され、エア導入口及びグリル開口部からエンジンルーム内に流入する空気の乱流が有効的に防止できて走行抵抗の減少による大幅な燃費向上が得られる。また、冷却水の温度が一定値以上になると高速走行時においても、第1スライダ及び第2スライダが開放位置に切り換えられ、エンジン冷却水の温度上昇が抑制できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、下部シャッタ及び上部シャッタを開放位置において空気がバンパのエア導入口及びフロントグリルのグリル開口部から導入されてラジエータの前面に作用してラジエータの放熱効果が確保できる。一方、下部シャッタ及び上部シャッタをそれぞれ閉止位置に移動することで走行時におけるエンジンルーム内への空気の流入が遮断され、走行に伴う空気抵抗が減少して燃費向上が得られる。また、エンジンの過冷却を防止すると共に、エンジンの暖機性能や排気ガス浄化装置の触媒活性を促進することができる。
【0034】
可動シャッタ装置が、枠体の第1縦フレーム及び第2縦フレームに支持されてそれぞれ閉止位置と閉止位置との間で移動する板状の下部シャッタ及び上部シャッタと、下部シャッタ及び上部シャッタを開放位置と閉止位置との間で移動させる駆動機構とによる少ない構成部材でかつ簡単な構成で構成され、かつ板状の下部シャッタ及び上部シャッタを昇降可能に配置することで可動シャッタ装置の前後方向の寸法が抑制でき、優れた車載性及び車載作業性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態を図1乃至図6を参照して説明する。図1は可動シャッタ装置を備えた自動車1の前部斜視図、図2は図1のI矢視図、図3は図2のII−II線断面図、図4は図2のIII−III線断面図、図5は図2のIV−IV線断面図である。各図において矢印Fは車体前方方向を示す。なお、図2において構成を明確にするためにバンパ10及びフロントグリル18は三点鎖線で示してある。
【0036】
自動車1の前部にエンジンルーム2を有し、エンジンルーム2は上方がフード3によって開閉可能に閉蓋する。エンジンルーム2内にエンジン冷却水を冷却するためのラジエータ5を配置する。ラジエータ5はエンジンルーム2の前部において車幅方向に延在するラジエータアッパパネル6及びラジエータロアパネル7に図示しないブラケット等を介して取り付ける。
【0037】
車体前部にラジエータ5の前方下部に対向して車幅方向に延在してバンパ10を配置し、ラジエータ5の前方上部に対向して車幅方向に延在するフロントグリル18を配置する。
【0038】
バンパ10は、バンパ上部11及びバンパ上部11の下方に配置されるバンパ下部14を有する。バンパ上部11は、車幅方向に延在して車体フレームに支持されたバンパビーム12を備え、バンパビーム12の前面に図示しない衝撃吸収材を介して樹脂製のバンパフェイス13を取り付ける。バンパ下部14は、ラジエータロアパネル7とパンパフェイス13との間に介装される図示しない衝撃吸収部材によって形成する。バンパ下部14は、その上下方向の高さ寸法がバンパ上部11の上下方向寸法より小さく、かつ前端がバンパ上部11の前端より車体後方に位置し、軽衝突時においてはバンパ下部14より前方に突出するバンパ上部11によって衝撃荷重を吸収する。バンパ上部11とバンパ下部14との間にエア導入口15が開口する。
【0039】
フロントグリル18は、バンパ10の上部11とフード3の前端との間にラジエータ5の前方上部に対向して配設され、装飾的機能を備えると共に空気を導入するグリル開口部19を備える。
【0040】
次に、バンパ10及びフロントグリル18とラジエータ5との間に可動シャッタ装置20が配置される。可動シャッタ装置20について、図2乃至図5を参照して説明する。
【0041】
可動シャッタ装置20は、フロントグリル18の上部或いはフード3の先端3aとほぼ対応する高さで車幅方向に延在する上部フレーム22と、バンパ10のバンパ下部14とほぼ対応する高さで車幅方向に延在する下部フレーム23と、上下方向に延在して上部フレーム22及び下部フレーム23の各左右の端部間に架設されて上下方向に延在すると共に対向する第1縦フレーム24と第2縦フレーム27とによって矩形に形成された枠体21を有する。また、第1縦フレーム24と第2縦フレーム27とは、フロントグリル18のグリル開口部19及びバンパ10のエア導入口15の車幅方向寸法より若干大きな離間寸法を有し、枠体21の下部範囲21Aがバンパ10のエア導入口15と対向し、上部範囲21Bがフロントグリル18のグリル開口部19と対向し、中央範囲がバンパ10のバンパ上部11と対向する。
【0042】
第1縦フレーム24は、図5に示すように断面形状において車幅方向に延在する基部25a及び基部25aの各端部から前方に延在すると共に先端がそれぞれ離反する車幅方向に屈曲する一対のガイド部25b、25cを有する断面ハット状で上下方向に延在する第1駆動側ガイドレール25と、第1駆動側ガイドレール25の基部25aの後面に結合されて第2縦フレーム27側が開口する断面コ字形で上下方向に延在する第1従動側ガイドレール26によって形成する。
【0043】
第2縦フレーム27は、断面形状において車幅方向に延在する基部28a及び基部28aの各端部から後方に延在すると共に先端がそれぞれ離反する車幅方向に屈曲する一対のガイド部28b、28cを有する断面ハット状で上下方向に延在する第2駆動側ガイドレール28と、第2駆動側ガイドレール28の基部28aの前面に結合されて第1縦フレーム24側が開口する断面コ字形で上下方向に延在する第2従動側ガイドレール29により形成する。ここで、第1駆動側ガイドレール25と第2駆動側ガイドレール28及び第1従動側ガイドレール26と第2従動側ガイドレール29はそれぞれ対称形であって、それぞれ互換性を有する。また、断面ハット状で上下方向に延在する第1駆動側ガイドレール25と断面コ字形で上下方向に第1従動側ガイドレール26とが結合して第1縦フレーム24が形成され、大きな剛性を有する第1縦フレーム24が構成できる。同様に断面ハット状で上下方向に延在する第2駆動側ガイドレール28と断面コ字状で上下方向に延在する第2従動側ガイドレール29とを結合して第2縦フレーム27が形成され、大きな剛性を有する第2縦フレーム27が構成できる。
【0044】
第1縦フレーム24の第1駆動側ガイドレール25に、前面が平坦な基部31及び基部31aに形成されて各ガイド部25b、25cに摺動自在に嵌合するコ字状のスライド部31b、31cを有する第1スライダ31を第1駆動側ガイドレール25の前面に沿って上下動移動可能に配置する。同様に第2縦フレーム27の第2駆動側ガイドレール28に、後面が平坦な基部32a及び基部32aに形成されて各ガイド部28b、28cに摺動自在に嵌合するコ字状のスライド部32b、32cを有する第2スライダ32を第2駆動側ガイドレール28の前面に沿って上下動移動可能に配置する。この第1スライダ31と第2スライダ32は対称形であって、互換性を有する。
【0045】
枠体21の車体前方側となる第1駆動側ガイドレール25と第2従動側ガイドレール29との間に下側シャッタ35を上下動自在に配置し、枠体21の車体後方側となる第2駆動側ガイドレール28と第1従動側ガイドレール26との間に上側シャッタ36を上下動自在に配置する。
【0046】
下部シャッタ35は、上縁35a、下縁35b及び両側縁35c、35dを備えた車幅方向に延在する矩形板体によって形成する。下部シャッタ35の一方端となる側縁35c近傍を第1スライダ31の前面にボルト結合されて第1スライダ31を介して第1駆動側ガイドレール25に上下動自在に支持する一方、他方端となる側縁35dが第2従動ガイドレール29に摺動可能に嵌合する。これにより、下部シャッタ35が第1駆動側ガイドレール25の一対にガイド部25b、25cにスライド部31b、31cが移動可能に挟持する第1スライダ31に一方端となる側縁35c側が結合される共に他方端となる側縁35dがその全幅に亘って断面コ字状の第2従動側ガイドレール29に移動可能に挟持されて下部シャッタ35が第1駆動側ガイドレール25及び第2従動側ガイドレール29に移動可能に強固に保持される。
【0047】
第1縦フレーム24に、図示を省略するが上昇する下部シャッタ35に当接して下部シャッタ35の開放位置に規制する開放位置規制ストッパ、及び下降する下部シャッタ35に当接して閉止位置に規制する閉止位置規制ストッパを備える。
【0048】
開放位置の下部シャッタ35は、車体前方から見た正面視状態にいて枠部21のバンパ10のエア導入口15に対向する枠部21の下部範囲21Aを開放し、かつバンパ10のバンパ上部11に隠蔽されるバンパ上部11とほぼ同じ高さ位置、好ましくはバンパビーム12とほぼ同じ高さ位置となる。閉止位置における下部シャッタ35は、バンパ10のエア導入口15と対向して覆うようにエア導入口15とほぼ同じ高さ位置となる。
【0049】
上部シャッタ36は、上縁36a、下縁36b及び側縁36c、36dを備えた車幅方向に延在する矩形板体によって形成する。上部シャッタ36の一方端となる側縁36c近傍が第2スライダ32の前面にボルト結合されて、第2スライダ32を介して第2駆動側ガイドレール25に上下動自在に支持される一方、他方端となる側縁36dが第1従動ガイドレール26に摺動可能に嵌合する。これにより、上部シャッタ36が第2駆動側ガイドレール28の一対にガイド部28b、28cにスライド部32b、32cが移動可能に挟持する第2スライダ32に側縁36c側が結合されると共に他方端となる側縁36dが全幅に亘って断面コ字状の第1従動側ガイドレール26に移動可能に挟持されて上部シャッタ36が第2駆動側ガイドレール28及び第1従動側ガイドレール26に移動可能に強固に保持される。
【0050】
第2縦フレーム25に、図示を省略するが下降する上部シャッタ36に当接して上部シャッタ36の開放位置に規制する開放位置規制ストッパ、及び上昇する上部シャッタ36に当接して上部シャッタ36の閉止位置を規制する閉位置規制ストッパを有する。
【0051】
開放位置における上部シャッタ36は、車体前方から見た正面視状態においてバンパ10のバンパ上部11に隠蔽されるバンパ上部11とほぼ同じ高さ位置、好ましくはバンパビーム12とほぼ同じ高さ位置となる。一方、上部シャッタ36は閉止位置においてフロントグリル18のグリル開口部19と対向して覆うようにグリル開口部19とほぼ同じ高さ位置となる。
【0052】
下部シャッタ35を閉止位置と開放位置に開閉作動する第1駆動機構41は、第1縦フレーム22の第1駆動側ガイドレール25の下端前面及び上端前面に回転自在に支持された下部プーリ42、上部プーリ43、第1スライダ31の図示しないガイド孔を移動自在に挿通すると共に下部プーリ42及び上部プーリ43に巻回して各端部44a、44bが第1スライダ31に締結されたワイヤ44を備え、下部プーリ42を第1駆動モータ45によって正逆回転することによってワイヤ44を介して第1スライダ31を開放位置と閉止位置との間で第1駆動側ガイドレール25によって昇降する。この第1スライダ31の下降移動に伴って下部シャッタ31が第1駆動側ガイドレール25及び第2従動レール29にガイドされて開放位置から閉止位置に移動し、第1スライダ31の上昇移動に伴って下部シャッタ31が第1駆動側ガイドレール25及び第2従動レール29にガイドされて閉止位置から開放位置に移動する。
【0053】
上部シャッタ36を閉止位置と開放位置に開閉作動する第2駆動機構51は、第2駆動側ガイドレール28の下端前面及び上端前面に回転自在に支持された下部プーリ52、上部プーリ53、第2スライダ32の図示しないガイド孔を移動自在に挿通すると共に下部プーリ52及び上部プーリ53に巻回して各端部54a、54bが第2スライダ32に締結されたワイヤ54を備え、下部プーリ52を第2駆動モータ55によって正逆回転することによってワイヤ54を介して第2スライダ32を開放位置と閉止位置との間で第2駆動側ガイドレール28によって昇降する。この第2スライダ32の上昇移動に伴って上部シャッタ36が第2駆動側ガイドレール28及び第1従動レール26にガイドされて開放位置から閉止位置に移動し、第2スライダ32の下降移動に伴って上部シャッタ36が第2駆動側ガイドレール28及び第1従動レール26にガイドされて閉止位置から開放位置に移動する。
【0054】
第1電動モータ45及び第2電動モータ55は、車体前方から見た正面視状態においてそれぞれバンパ10のエア導入口15と対向しない位置、例えばバンパ下部14とほぼ等しい高さ位置等のバンパ10に隠蔽される位置に設定される。
【0055】
図6は、第1駆動機構41及び第2駆動装置51の第1電動モータ45、第2電動モータ55を制御する制御装置60を示す。制御装置60は制御部61を有し、制御部61に車両速度を検出する車速センサ62、エンジン冷却水の水温を検出する冷却水温度センサ63がそれぞれ接続され、予め設定された一定時間毎、或いは一定走行距離毎に車速センサ62にて検出された車速信号と、冷却水温度センサ63にて検出された温度信号が制御部61に入力され、これら車速信号及び温度信号に基づいてシャッタ開放指令或いはシャッタ閉止指令が駆動ユニット64に出力され、駆動ユニット64は第1電動モータ45及び第2電動モータ55を駆動する。
【0056】
次に可動シャッタ装置20の運転応対に応じた作動について説明する。通常下部シャッタ35及び上部シャッタ36は、第1駆動機構41及び第2駆動機構51によって図2乃至図4に実線で示す開放位置に保持され、バンパ10のエア導入口17に対向する枠部21の下部範囲21A及びフロントグリル18のグリル開口部19に対向する枠部21の上部範囲21Bが開放し、かつ下部シャッタ35及び上部シャッタ36が車体前方から見た正面視状態においてバンパ10のバンパ上部11に隠蔽されるバンパ上部11とほぼ同じ高さ位置に保持する。これにより、バンパ10のバンパ上部11に下部シャッタ35及び上部シャッタ36が隠蔽されて、バンパ10のエア導入口15と対向する可動シャッタ装置20の下部範囲21Aが大きく開放されて有効開口面積が確保され、かつフロントグリル8のグリル開口部9と対向する可動シャッタ装置20の上部範囲21Bが大きく開放されて有効開口面積が確保される。
【0057】
これにより、車両が走行すると、空気がバンパ10のエア導入口17から導入され、可動シャッタ装置20の枠体21の下部範囲21Aを介してラジエータ5の前面に導入し、フロントグリル18のグリル開口部19から可動シャッタ装置20の枠体21の上部範囲21Bを介してラジエータ5の前面に導入し、ラジエータ5の放熱効果を高め、エンジン冷却水の温度上昇を抑制する。
【0058】
車速センサ62にて検出された車速が予め設定された所定速度以上の高速走行で、かつ冷却水温度センサ63にて検出された冷却水温度が所定値以下の場合には、制御部61より駆動ユニット64にシャッタ閉止指令が発せられ、駆動ユニット64によって第1電動モータ45及び第2電動モータ55が作動する。
【0059】
第1電動モータ45の作動による下部プーリ42の回転駆動、例えば下部プーリ42の正回転によってワイヤ44を介して第1スライダ31が開放位置から閉止位置へ第1駆動側ガイドレール25に沿って下降し、第1スライダ31の下降移動に伴って下部シャッタ31が第1駆動側ガイドレール25及び第2従動レール29にガイドされて開放位置から閉止位置に移動し、第1電動モータ45が停止して下部シャッタ31を図2乃至図4に仮想線で示すようにエア導入口15と対向する閉止位置に保持する。同様に第2電動モータ55の作動による下部プーリ52の回転駆動、例えば下部プーリ52の正回転によってワイヤ54を介して第2スライダ32が開放位置から閉止位置へ第2駆動側ガイドレール28に沿って上昇し、第2スライダ32の上昇移動に伴って上部シャッタ36が第2駆動側ガイドレール28及び第1従動レール26にガイドされて開放位置から閉止位置に移動し、第2電動モータ55が停止して上部シャッタ36を図2乃至図4に仮想線で示すようにグリル開口部19と対向する閉止位置に保持する。
【0060】
この下部シャッタ31及び上部シャッタ36が閉止位置に保持されたシャッタ閉止状態では、バンパ10のエア導入口15に対向する枠部21の下部範囲21Aが下部シャッタ35により閉止し、フロントグリル18のグリル開口部19に対向する枠部21の上部範囲21Bが上部シャッタ36により閉止すると共に、下部シャッタ35の上縁35aと上部シャッタ36の下縁36bとの間の中間範囲は車体前方から見た正面視状態においてバンパ10のバンパ上部11に隠蔽される。
【0061】
これにより高速走行時においては、エンジンルーム2内への空気の流入が遮断され、エア導入口15及びグリル開口部19からエンジンルーム2内に流入する空気の乱流が有効的に防止でき、走行に伴う車両に作用する空気抵抗が減少して走行抵抗の減少による大幅な燃費向上が得られる。
【0062】
冷却水温度センサ62で検出された冷却水温度が一定値以上になると、高速走行時においても、制御部61より駆動ユニット64にシャッタ開放指令が発せられ、第1電動モータ45の作動による下部プーリ42の逆回転によってワイヤ44を介して第1スライダ31が閉止位置から開放位置へ第1駆動側ガイドレール25に沿って上昇し、第1スライダ31の上昇移動に伴って下部シャッタ35が第1駆動側ガイドレール25及び第2従動レール29にガイドされて閉止位置から開放位置に移動し、下部シャッタ35が図2乃至図4に示すように車体前方から見た正面視状態においてバンパ10のバンパ上部11に隠蔽される開放位置に移動して停止する。同様に、第2電動モータ55の作動による下部プーリ52の逆回転によってワイヤ54を介して第2スライダ32が閉止位置から開放位置へ第2駆動側ガイドレール28に沿って上昇し、第2スライダ32の上昇移動に伴って上部シャッタ36が第2駆動側ガイドレール28及び第1従動レール26にガイドされて閉止位置から開放位置に移動し、上部シャッタ36が図2乃至図4に示すように車体前方から見た正面視状態においてバンパ10のバンパ上部11に隠蔽される開放位置に移動して停止する。
【0063】
従って、バンパ10のエア導入口15に対向する枠部21の下部範囲21A及びフロントグリル18のグリル開口部19に対向する枠部21の上部範囲21Bが開放され、空気がバンパ10のエア導入口15から導入され、可動シャッタ装置20の枠体21の下部範囲21Aを介してラジエータ5の前面に導入し、フロントグリル18のグリル開口部19から可動シャッタ装置20の枠体21の上部範囲21Bを介してラジエータ5の前面に導入し、エンジン冷却水の温度上昇を抑制する。
【0064】
一方、冬季や寒冷地において、冷却水温度センサ62にて検出された冷却水温度が一定値以下の場合には、車速センサ62にて検出された車速がたとえ低速走行状態においても、制御部61より駆動ユニット64にシャッタ閉止指令が発せられ、第1電動モータ45及び第2電動モータ55が作動して下部シャッタ35及び上部シャッタ36が開放位置から閉止位置に移動する。
【0065】
これによりバンパ10のエア導入口15に対向する枠部21の下部範囲21Aを下部シャッタ35により閉止し、フロントグリル18のグリル開口部19に対向する枠部21の上部範囲21Bが上部シャッタ36により閉止すると共に、下部シャッタ35の上縁35aと上部シャッタ36の下縁36bとの間の中間範囲が車体前方から見た正面視状態においてバンパ10のバンパ上部11に隠蔽されて、エンジンの過冷却を防止すると共に、エンジンの暖機性能や排気ガス浄化装置の触媒活性を促進することができる。
【0066】
上記した実施の形態によると、矩形枠体21の左右の第1縦フレーム24を前後に隣接して結合された断面ハット形状で延在する第1駆動側ガイドレール25と断面コ字状で延在する第1従動側ガイドレール26により兼備し、第2縦フレーム27を前後に隣接して結合された断面ハット状で延在する第2従動側ガイドレール29と断面コ字状で延在する第2駆動側ガイドレール28により兼備することで、第1縦フレーム24及び第2縦フレーム27の剛性が大幅に増大し、開放位置と閉止位置とを昇降する矩形板状の下部シャッタ35及び上部シャッタ36、下部シャッタ35及び上部シャッタ36を昇降する第1駆動機構41及び第2駆動機構51による構成部材の少ない簡単な構成で可動シャッタ装置20が構成できる。更に、矩形板状の下部シャッタ35及び上部シャッタ36を昇降可能に前後に配置し、下部シャッタ35及び上部シャッタ36を昇降する第1駆動機構41及び第2駆動機構51を枠体21に沿って配置することで、可動シャッタ装置20の前後方向の寸法が抑制でき、小型及び軽量化が得られ搭載スペースの削減が可能になる。
【0067】
また、枠体21の上部において可動部となる上部シャッタ36が枠体21の車体後方側となる第1従動側ガイドレール26と第2駆動側ガイドレール28との間に支持され、比較的大きな電動モータ45、55が枠体21の下に部配置されることから、枠体21の上部範囲前側に突出する可動部材がなく、可動シャッタ装置20の上部範囲とフロントグリル18との離間スペースが小さく設定することが可能になり、フロントグリル18の形状の自由度、即ちフロントグリル18の造形への影響を少なくできる。
【0068】
可動シャッタ装置20が、矩形の枠体21と、この枠体21に移動自在に支持された下部シャッタ35、上部シャッタ36及び枠体21に配設された第1駆動機構41、第2駆動機構51によって構成することにより、可動シャッタ装置20の車載に先立って予め枠体21に下部シャッタ35、上部シャッタ36及び第1、第2駆動機構41、51を組み付けることができ、これら構成部材の組み付精度及び組付作業性が向上する。これら下部シャッタ35、上部シャッタ36及び第1、第2駆動機構41、51が枠体21に組み付けられた可動シャッタ装置20をバンパ10及びフロントグリル8とラジエータ5との間に上方から挿入してラジエータアッパパネル6及びラジエータロアパネル7等にブラケット等を介して車載でき、小型及び軽量化と相俟って優れた車載性及び車載作業性が得られる。
【0069】
また、開放位置における下部シャッタ35及び上部シャッタ36が、バンパ10のバンパビーム12と離間して対向配置され、かつ電動モータ45、55が下方のバンパ下部14の後方に配置することから、車両衝突事故等によってバンパ10のバンパ上部11に衝撃荷重が入力されてバンパ上部11が損傷する事態が発生してもバンパビーム12によって保護され、下部シャッタ35、上部シャッタ36並び第1駆動機構41、第2駆動機構51、枠体21等の可動シャッタ装置20への影響が回避或いは極めて少なくなる。
【0070】
更に、第1駆動機構41及び第2駆動機構51の各電動モータ45,55がバンパ下部14及びラジエータロアパネル7等によって車体前方及び下方から覆われ、電動モータ45、55が雪道や降雪中に地上から舞い上がる雪や水滴、泥水、飛散する小石等から保護される。
【0071】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば上記実施の形態では、下部シャッタ35及び上部シャッタ36を開放位置と閉止位置の2位置で切り換えるようにしたが、ラジエータ5の水温等に応じて多段階に制御することも可能であり、また、ラジエータ5の水温等に応じて下部シャッタ35と上部シャッタ36の開閉動作をそれぞれ別個に制御することもできる。
【0072】
また、可動シャッタ装置20の第1縦フレーム22を構成する第1駆動側ガイドレール25及び第1従動側ガイドレール26、第2縦フレーム27を構成する第2駆動側ガイドレール28等を車体前後方向に傾斜して配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施の形態における車体前部構造を説明する自動車の前部斜視図である。
【図2】要部を示す図1のI矢視図である。
【図3】図2のII−II線断面図である。
【図4】図2のIII−III線断面図である。
【図5】図2のIV−IV線断面図である。
【図6】制御装置の概要図である。
【図7】従来の可動シャッタ装置を備えた自動車の説明図であえる。
【符号の説明】
【0074】
1 自動車
2 エンジンルーム
5 ラジエータ
10 バンパ
11 バンパ上部
12 バンパビーム
14 バンパ下部
15 エア導入口
18 フロントグリル
19 グリル開口
20 可動シャッタ装置
21 枠体
21A 下部範囲
21B 上部範囲
22 上部フレーム
23 下部フレーム
24 第1縦フレーム
25 第1駆動側ガイドレール
25a 基部
25b、26c ガイド部
26 第1従動側ガイドレール
27 第2縦フレーム
28 第2駆動側ガイドレール
28a 基部
28b、28c ガイド部
29 第2従動側ガイドレール
31 第1スライダ
31a 基部
31b、31c スライド部
32 第2スライダ
32a 基部
32b、32c スライド部
35 下部シャッタ
35c 側縁(一方端)
35d 側縁(他方端)
36 上部シャッタ
36c 側縁(一方端)
36d 側縁(他方端)
41 第1駆動機構
42 下部プーリ
43 上部プーリ
44 ワイヤ
44a、44b 端部
45 第1駆動モータ
51 第2駆動機構
52 下部プーリ
53 上部プーリ
54 ワイヤ
54a、54b 端部
55 第1駆動モータ
60 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパ及び該バンパの上方に配置されたフロントグリルとエンジンルーム内のラジエータとが対向配置され、上記バンパ及びフロントグリルとラジエータとの間に運転状態に応じて上記ラジエータに流入する空気を制御する可動シャッタ装置を備えた車体前部構造において、
上記バンパは、車幅方向に延在するバンパビームを備えたバンパ上部及び該バンパ上部の下方に沿って車幅方向に延在するバンパ下部を有すると共に該バンパ上部とバンパ下部との間にエア導入口が開口し、
上記フロントグリルは、上記バンパ上部の上方に沿って開口するグリル開口部を備え、
上記可動シャッタ装置は、
上下に離間して車幅方向に延在する上部フレーム及び下部フレームと、上下方向に延在して上端及び下端が上部フレーム及び下部フレームの各端部に結合する第1縦フレーム及び第2縦フレームを備え下部範囲が上記エア導入口と対向すると共に上部範囲がグリル開口部と対向する矩形の枠体と、
車体前方から見た正面視状態において車幅方向に延在する板状で上記バンパ上部に隠蔽される開放位置とエア導入口に対向する閉止位置との間で上下移動可能に上記第1縦フレーム及び第2縦フレームに支持された下部シャッタと、
車体前方から見た正面視状態において車幅方向に延在する板状で上記バンパ上部に隠蔽される開放位置とグリル開口部と対向する閉止位置との間で上下移動可能に上記第1縦フレーム及び第2縦フレームに支持された上部シャッタと、
下部シャッタ及び上部シャッタを上記開放位置と閉止位置との間で移動せしめる駆動機構とを備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
上記駆動機構は、上記枠体に支持されたことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
上記第1縦フレームは、
基部及び該基部の両端部から前方に延在すると共に先端がそれぞれ離反する車幅方向に屈曲する一対のガイド部を有する断面ハット状で上下方向に延在する第1駆動側ガイドレールと、
該第1駆動側ガイドレールの基部に結合されて第2縦フレーム側が開口する断面コ字形で上下方向に延在する第1従動側ガイドレールとを備え、
上記第2縦フレームは、
基部及び該基部の両端部から後方に延在すると共に先端がそれぞれ離反する車幅方向に屈曲する一対のガイド部を有する断面ハット状で上下方向に延在する第2駆動側ガイドレールと、
該第2駆動側ガイドレールの基部に結合されて第1縦フレーム側が開口する断面コ字形で上下方向に延在する第2従動側ガイドレールを備え、
上記下部シャッタは、
上記第1駆動側ガイドレールの各ガイド部に摺動自在に嵌合するスライド部を備え該第1駆動側ガイドレールの前面に沿って上下移動する第1スライダに一方端が結合され他端が第2従動ガイドレールに摺動自在に嵌合して上下移動可能に第1駆動側ガイドレール及び第2従動側ガイドレールに支持され、
上記下部シャッタは、
上記第2駆動側ガイドレールの各ガイド部に摺動自在に嵌合するスライド部を備え該第2駆動側ガイドレールの後面に沿って上下移動する第2スライダに一方端が結合され他端が第1従動ガイドレールに摺動自在に嵌合して上下移動可能に第2駆動側ガイドレール及び第1従動側ガイドレールに支持され、
上記駆動機構は第1駆動機構と第2駆動機構を備え、
該第1駆動機構は、
上記第1スライダを介して下部シャッタを開放位置と閉止位置との間で移動せしめ、
上記第2駆動機構は、
上記第2スライダを介して上部シャッタを開放位置と閉止位置との間で移動せしめる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
上記第1駆動機構は、
上記第1駆動側ガイドレールの上部前面に回動自在に支持された上部プーリと、
上記第1駆動側ガイドレールの下部前面に支持されて第1電動モータによって正逆回転する下部プーリと、
該下部プーリと上部プーリに巻回して各端部が第1スライダに締結されたワイヤとを備え、
上記第2駆動機構は、
上記第2駆動側ガイドレールの上部後面に回動自在に支持された上部プーリと、
上記第2駆動側ガイドレールの下部後面に支持されて上記第2電動モータによって正逆回転する下部プーリと、
該下部プーリと上部プーリに巻回して各端部が上記第2スライダに締結されたワイヤとを備えた、ことを特徴とする請求項3に記載の車体前部構造。
【請求項5】
上記第1電動モータ及び第2電動モータは、
車体前方から見た正面視状態においてバンパ下部に隠蔽されることを特徴とする請求項4に記載の車体前部構造。
【請求項6】
上記可動シャッタ装置は、
エンジン冷却水の温度が所定温度以下の時に下部シャッタ及び上部シャッタを閉止位置とする制御装置を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項7】
上記可動シャッタ装置は、
車速が所定速度以下でかつエンジン冷却水の温度が所定温度以下の時に下部シャッタ及び上部シャッタを閉止位置とする制御装置を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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