説明

車体前部構造

【課題】横通メンバを薄くした場合であってもクレードルの剛性を確保可能な車体前部構造を提供する。
【解決手段】メインフレーム130及びその下部に取り付けられたクレードル200を備える車体前部構造を、クレードルは、左右のメインフレームの下部にそれぞれ結合される一対の縦通メンバ210と、縦通メンバにわたして設けられた前側横通メンバ220及び後側横通メンバ230と、車幅方向に離間して配置され、前側横通メンバの中間部と後側横通メンバの中間部とを連結する一対の連結部材240とを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車体の前部構造に関し、特にメインフレーム下部に結合されエンジン、サスペンション等の各種部品が装着されるクレードルを有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車体の前部構造として、車室前部隔壁からエンジンルームの左右側部に沿って前方側へ伸びたメインフレーム、及び、左右のメインフレームの下部を連結する横梁状のクロスメンバを設けて、このクロスメンバにエンジンマウント、ステアリングギアボックス、サスペンションアームの車体側支持部等の各種部品を装着する構成が知られている。
このような車体前部構造に関する従来技術として、例えば特許文献1には、プレート状の本体部の前後に閉断面部を形成して補強したクロスメンバにエンジン等を搭載することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−284894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行性能を向上するため、エンジン等のパワーユニットをより低い位置に搭載して車両の低重心化を図ることが要望されている。エンジンの搭載位置を下げかつ車両の最低地上高を確保するためには、クロスメンバ等のエンジン搭載部材を薄く形成する必要があるが、例えば特許文献1に記載の技術において、単にクロスメンバを薄く形成した場合、剛性の確保が困難となる。
【0005】
また、近年ではメインフレームの下部に枠状のクレードルを設けて、このクレードルにエンジン等を搭載することも提案されているが、クレードルを用いた構造としても、エンジンの搭載位置を下げるためにはクレードルの横通メンバを薄くする必要があり、剛性の確保は困難となる。
本発明の課題は、横通メンバを薄くした場合であってもクレードルの剛性を確保可能な車体前部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、車室前部隔壁から前方へ突き出しかつエンジンルームの左右側部にそれぞれ配置されたメインフレームと、前記メインフレームの下部に取り付けられたクレードルとを備える車体前部構造であって、前記クレードルは、車両前後方向に略沿って延びかつ車幅方向に離間して配置され、左右の前記メインフレームの下部にそれぞれ結合される一対の縦通メンバと、車幅方向に略沿って延びかつ前記縦通メンバにわたして設けられた前側横通メンバと、車幅方向に略沿って延びかつ前記縦通メンバにわたして設けられ、前記前側横通メンバとの後方側に間隔を隔てて配置された後側横通メンバと、車両前後方向に略沿って延びかつ車幅方向に離間して配置され、前記前側横通メンバの中間部と前記後側横通メンバの中間部とを連結する一対の連結部材とを有することを特徴とする車体前部構造である。
【0007】
請求項2の発明は、前記クレードルに揺動可能に取り付けられたサスペンションアームを備え、前記サスペンションアームの取付部の少なくとも一部を、前記縦通メンバと前記前側横通メンバとの接続部近傍、又は、前記縦通メンバと前記後側横通メンバとの接続部近傍に配置したことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造である。
請求項3の発明は、前記前側横通メンバに設けられエンジンが取り付けられるエンジンマウントと、前記後側横通メンバに取り付けられたステアリングギアボックスとを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造である。
請求項4の発明は、前記エンジンマウントを前記前側横通メンバと前記連結部材との接合部近傍に配置したことを特徴とする請求項3に記載の車体前部構造である。
請求項5の発明は、前記連結部材は前記前側横通メンバ及び前記後側横通メンバとの接続部近傍における断面形状を中間部に対して連続的に拡大して形成したことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車体前部構造である。
請求項6の発明は、左右の前記連結部材の間隔にエンジンの排ガスを後処理する触媒コンバータの少なくとも一部を配置したことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車体前部構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)左右の縦通メンバ間を前側横通メンバ及び後側横通メンバで連結し、前後の横通メンバ間を連結部材で連結することによって、一方の横通メンバに入力した荷重を前後の横通メンバに分散して受け持たせて左右の縦通メンバに効率よく伝達することができる。このため、エンジン等の搭載位置を下げるため横通メンバの断面を高さ方向に小さくした場合であっても剛性の確保が容易となる。これによって、車両の低重心化を図って走行性能を向上することができる。また、例えば排気管等の他部品との干渉を防止するため各横通メンバを湾曲した形状とした場合には、横方向の引張荷重によってメンバの伸び変形が生じたり、あるいは圧縮荷重によってメンバの曲げ変形が生じる懸念があるが、このような場合にも前後のメンバで荷重を負担することによって、メンバの変形を抑制できる。
(2)サスペンションアームの取付部の少なくとも一部を縦通メンバと前後いずれかの横通メンバとの接続部近傍に配置することによって、サスペンションアームから縦通メンバに作用する横方向の入力を反対側の縦通メンバに伝達することができ、サスペンションアームの取付部剛性を向上し、車両の走行性能をより向上できる。
(3)前側横通メンバにエンジンマウントを設け、後側横通メンバにステアリングギアボックスを取り付けることによって、前後の横通メンバの負担を分散して軽量な構造としつつ、荷重の入力時には連結部材によって前後の横通メンバ間で荷重伝達を行うことによって剛性を確保できる。
(4)エンジンマウントを前側横通メンバと連結部材との接合部近傍に配置したことによって、エンジンマウントから前側横通メンバに入力する荷重を効率よく連結部材に入力することができる。
(5)連結部材の各横通メンバとの接続部近傍における断面形状を中間部に対して連続的に拡大して形成したことによって、荷重を効率よく伝達することができる。
(6)左右の連結部材の間隔にエンジンの排ガスを後処理する触媒コンバータの少なくとも一部を配置したことによって、デッドスペースを有効に活用しつつ触媒コンバータの搭載位置を高くして最低地上高を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用した車体前部構造の実施例の斜視図である。
【図2】実施例の車体前部構造における車体本体及びクレードルの斜視図である。
【図3】実施例の車体前部構造における車体本体の斜視図である。
【図4】実施例の車体前部構造におけるクレードルの斜視図である。
【図5】図4のクレードルに排気管等を搭載した状態を示す斜視図である。
【図6】実施例の車体前部構造の平面図である。
【図7】実施例の車体前部構造の模式的断面図であって、図7(a)、図7(b)、図7(c)は、それぞれ図6のa−a部、b−b部、c−c部矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、横通メンバを薄くした場合であってもクレードルの剛性を確保可能な車体前部構造を提供する課題を、左右一対の縦通メンバ間を前後一対の横通メンバで連結し、さらに前後の横通メンバ間を左右一対の連結部材で連結することによって解決した。
【実施例】
【0011】
以下、本発明を適用した車体前部構造の実施例について説明する。実施例の車体前部構造は、例えばフロントエンジンの乗用車等の自動車に適用されるものである。
車体前部構造は、車体本体100、クレードル200を有し、さらに、エンジンマウント310、排気管320、ステアリングギアボックス330、サスペンションアーム340等が取り付けられている。
【0012】
車体本体100は、例えば鋼板モノコック構造の車室を有するホワイトボディ(未艤装車体)であって、主に鋼板をプレス加工した部材を集成し、スポット溶接やレーザ溶接等によって接合して形成されている。
図1等に示すように、車体本体100は、トーボード110、フロアパネル120、メインフレーム130、アッパフレーム140、サスペンション支持部150、バンパビーム160、ラジエータアッパサポート170、ラジエータロワサポート180等を備えている。
【0013】
トーボード110は、図示しない車室(キャビン)前方に設けられ、車室とその前方のエンジンルームとを区画する隔壁である。
フロアパネル120は、車室の床面を構成する部分であって、トーボード110の下端部から車両後方側へ伸びている。
フロアパネル120の車幅方向における中央部には、車両前後方向に延びたフロアトンネル121が形成されている。フロアトンネル121は、上方に張り出して形成され、その内部(床下側)には、トランスミッション、プロペラシャフト、排気管の一部等が収容される。
【0014】
メインフレーム130は、エンジンルームの左右に設けられ車両の前後方向に略沿って延びた構造部材である。メインフレーム130は、略矩形の横断面を有する閉断面の梁状部材である。なお、本明細書等において、横断面とは梁状の部材をその長手方向と直交する平面で切って見た断面を示すものとする。メインフレーム130の前半部は、トーボード110の下部から車両前方側へ突き出して配置されている。メインフレーム130の後半部は、車幅方向から見た形状がS字状となるように湾曲し、トーボード110の下部からフロアパネル120の下面に沿って配置され、これらと溶接等によって結合されている。
【0015】
メインフレーム130は、クレードル200が結合される前側ブラケット131及び後側ブラケット132を備えている。前側ブラケット131及び後側ブラケット132は、メインフレーム130の前端部及び中間部にそれぞれ設けられ、メインフレーム130の下面部から下方へ突き出して形成されている。前側ブラケット131及び後側ブラケット132は、水平面で切って見た断面が略矩形状の閉断面となっている。
また、メインフレーム130の中間部における車幅方向外側の側面部には、必要に応じて大舵角転舵時における前輪との干渉を防止する逃げ凹部が形成される。
【0016】
アッパフレーム140は、トーボード110におけるメインフレーム130との結合箇所よりも上方かつ車幅方向外側の部分から車両前方側に延びた部材である。アッパフレーム140は、図示しないAピラーの基部から、図示しないフードの両側部に沿って配置されている。アッパフレーム140は、略矩形の横断面を有する閉断面の梁状部材である。
アッパフレーム140の中間部から後端部にかけての領域は、車両の前後方向に略沿って配置されている。この領域は、メインフレーム130に対して上方かつ車幅方向外側に配置されている。
アッパフレーム140の前端部近傍の領域は、前端部が下がりかつ車幅方向内側にオフセットするように、車両前後方向に対して傾斜して配置されている。
【0017】
図7(c)に示すように、アッパフレーム140の前端部における車幅方向内側の側面部は、メインフレーム130の車幅方向外側の側面部に結合されている。
また、図1等に示すように、この結合部の直前には、上述した前側ブラケット131が配置されている。
【0018】
サスペンション支持部150は、前輪用サスペンションであるマクファーソンストラット型サスペンションのストラット上端部を支持するブラケットを備えている。サスペンション支持部150は、図7(a)等に示すように、メインフレーム130とアッパフレーム140との間に、これらにわたして配置されている。また、サスペンション支持部150には、メインフレーム130とアッパフレーム140とを連結する図示しない閉断面部が形成されている。
【0019】
バンパビーム160は、メインフレーム130の前端部に取り付けられ、車幅方向に略沿って延びた横梁状の部材であって、図示しないバンパフェイスの内側に配置されている。
ラジエータアッパサポート170及びラジエータロワサポート180は、図示しないラジエータコア及びエアコンディショナ用のコンデンサコアの上端部及び下端部を支持する部材である。
ラジエータアッパサポート170は、左右のアッパフレーム140の間にわたして設けられている。
ラジエータロワサポート180は、左右のメインフレーム130の前側ブラケット131の下端部間にわたして設けられている。
【0020】
クレードル200は、車体本体100のメインフレーム130の下側に取り付けられ、各種部品が搭載される構造部材(サブフレーム)である。
図4等に示すように、クレードル200は、縦通メンバ210、前側横通メンバ220、後側横通メンバ230、連結部材240、前端部メンバ250、ロワメンバ260(図4には図示しない。図1等参照。)等を備えて構成されている。
【0021】
縦通メンバ210は、左右のメインフレーム130の下側にそれぞれ設けられ、車両前後方向に略沿って延びた部材である。縦通メンバ210の横断面形状は、略矩形状の閉断面となっている。縦通メンバ210は、ブラケット211、前側アーム取付部212、後側アーム取付部213等を備えている。
ブラケット211は、縦通メンバ210の中間部から上方へ突き出して形成されている。ブラケット211の上端部には、メインフレーム130の後側ブラケット132の下端部が接続される。
前側アーム取付部212及び後側アーム取付部213は、縦通メンバ210の車幅方向外側の側面部に前後方向に離間して設けられている。前側アーム取付部212及び後側アーム取付部213には、サスペンションアーム340の前側ブッシュ341及び後側ブッシュ342がそれぞれ取り付けられる。
図4等に示すように、前側アーム取付部212は縦通メンバ210の中間部(メインフレーム130の前側ブラケット131との接合部近傍)に配置され、後側アーム取付部213は縦通メンバ210の後端部近傍に配置されている。
また、縦通メンバ210の後方の領域は、後端部が他の部分よりも高くなるように立ち上げられている。
【0022】
前側横通メンバ220は、車幅方向に略沿って延び、左右の縦通メンバ210を連結する部材である。前側横通メンバ220の横断面形状は、略矩形状の閉断面となっている。前側横通メンバ220の縦通メンバ210との接合部は、ブラケット211の近傍に配置されている。
なお、このような構成とした結果、アッパフレーム140とメインフレーム130とをサスペンション支持部150により連結し、その下部において後側ブラケット132及びブラケット211によりメインフレーム130とクレードルの縦通メンバ210とを連結し、さらにその近傍で前側横通メンバ220により左右の縦通メンバ210を連結することができ、メインフレーム130の中間部近傍に、車両前方から見たときに略U字状となる連続した強固な補剛構造体が形成される。
【0023】
後側横通メンバ230は、車幅方向に略沿って延び、左右の縦通メンバ210を連結する部材である。後側横通メンバ230の横断面形状は、略矩形状の閉断面となっている。後側横通メンバ230は、前側横通メンバ220の後方側に、前後方向に間隔を隔てて配置されている。後側横通メンバ230の縦通メンバ210との接合部は、後側アーム取付部213の近傍に配置されている。
これらの前側横通メンバ220及び後側横通メンバ230の横断面形状は、中間部に対して縦通メンバ210との接合部付近が拡大されている。
また、前側横通メンバ220及び後側横通メンバ230は、その中央部における下側に排気管320を通すため、中央部が持ち上がるように湾曲して形成されている。
【0024】
連結部材240は、車両の前後方向に略沿って延び、前側横通メンバ220の中間部と後側横通メンバ230の中間部との間を連結する部材である。連結部材の横断面形状は、略矩形状の閉断面となっている。連結部材240は、例えば車幅方向に離間して一対が設けられる。連結部材240の横断面形状は、中間部に対して前側横通メンバ220及び後側横通メンバ230との接合部付近が拡大されている。この閉断面の拡大は徐々にかつ連続的に行われ、その結果連結部材240の両端部は、テーパ状に広がって形成されている。
【0025】
前端部メンバ250は、左右の縦通メンバ210の先端部間を連結する横梁状の部材である。
【0026】
図1等に示すロワメンバ260は、縦通メンバ210の後部における下面部とフロアパネル120の下面に沿って配置されたメインフレーム130の下面部との間にわたして設けられる縦梁状の部材である。縦通メンバ210の後端部下面とロワメンバ260の上面部との間には隙間が形成され、ステアリングギアボックス330の両端部はこの隙間を通されている。
なお、縦通メンバ210、前側横通メンバ220、後側横通メンバ230、連結部材240、前端部メンバ250は、溶接等によって接合され1部品とされており、ロワメンバ260は、別体に形成され、ボルトナット等によって締結されている。
【0027】
エンジンマウント310は、図示しないエンジンを防振性を有するゴムを介して支持するものである。エンジンマウント310は、例えば左右一対設けられ、クレードル200の前側横通メンバ220の上面部における連結部材240との接合部近傍に固定されている。
本実施例では、エンジンは例えば縦置き搭載される下方排気の水平対向エンジンである。
【0028】
排気管320は、エンジン下部の排気ポートから排出される排ガスを車両後方側から排出するものである。
排気管320は、図5等に示すように、フランジ321、第1触媒コンバータ322、第2触媒コンバータ323等を備えて構成されている。また、排気管320は、エンジンから第2触媒コンバータ323まではエンジンの左右バンク毎に左右略対象に一対設けられ、第2触媒コンバータ323の後方側で合流している。
【0029】
フランジ321は、エンジンの排気ポートに接続される部分である。
第1触媒コンバータ322及び第2触媒コンバータ323は、それぞれアルミナ系等の担体に、触媒成分として白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属を担持させた三元触媒である。上流側に配置された第1触媒コンバータ322は、その上部がクレードル200における左右の連結部材240の間隔の空間部内に収容されている。また、下流側に配置された第2触媒コンバータ323は、フロアパネル120の下方に配置されている。
【0030】
ステアリングギアボックス330は、図示しないステアリングホイールの回転が図示しないステアリングシャフト等を介して入力され、この回転運動を車幅方向の往復運動に変換するラックアンドピニオン機構等を備えている。
ステアリングギアボックス330の左右端部には、それぞれタイロッド331が設けられている。
タイロッド331は、ステアリングギアボックス330内の図示しないステアリングラックと、左右前輪の図示しないハウジングに形成されたナックルアームとを連結する伝達軸である。タイロッド331は、ドライバによる操舵操作時にナックルアームを押し引きして前輪を操向するとともに、前輪からのステア反力をドライバ側に伝達する。
【0031】
サスペンションアーム340は、クレードル200に対して車両の前後方向に略沿った軸回りに揺動可能に取り付けられ、前輪のハウジング下端部をボールジョイントを介して支持するものである。
サスペンションアーム340は、車体側の端部に、前後方向に離間して配置された前側ブッシュ341及び後側ブッシュ342を備えている。
前側ブッシュ341及び後側ブッシュ342は、クレードル200における縦通メンバ210の前側アーム取付部212及び後側アーム取付部213にそれぞれボルトナット等を用いて取付られる。
【0032】
以上説明したように、実施例によれば以下の効果を得ることができる。
(1)左右の縦通メンバ210間を前側横通メンバ220及び後側横通メンバ230で連結し、前後の横通メンバ220,230間を連結部材240で連結することによって、一方の横通メンバに入力した荷重を前後の横通メンバに分散して受け持たせて左右の縦通メンバ210に効率よく伝達することができる。このため、エンジンの搭載位置を下げるため横通メンバを薄くした場合であっても剛性の確保が容易となる。これによって、車両の低重心化を図って走行性能を向上することができる。また、サスペンションアーム340から入力される横方向の引張荷重によって、湾曲して形成された後側横通メンバ230の伸び変形が生じたり、あるいは圧縮荷重によって後側横通メンバ230の曲げ変形が生じる懸念があるが、このような場合にも連結部材240を介して前側横通メンバ220でも荷重を負担することによって、後側横通メンバ230の変形を抑制し、サスペンションジオメトリの変化を低減してサスペンション性能を向上できる。
(2)サスペンションアーム340の後側ブッシュ342を縦通メンバ210と後側横通メンバ230との接続部近傍に配置することによって、サスペンションアーム340から縦通メンバ210に作用する横方向の入力を反対側の縦通メンバ210に伝達することができ、サスペンションアーム340の取付部剛性を向上し、車両の走行性能をより向上できる。
(3)前側横通メンバ220にエンジンマウント310を設け、後側横通メンバ230にステアリングギアボックス330を取り付けることによって、前後の横通メンバ220,230の負担を分散して軽量な構造としつつ、荷重の入力時には連結部材240によって前後の横通メンバ220,230間で荷重伝達を行うことによって剛性を確保できる。
(4)エンジンマウント310を前側横通メンバ220と連結部材240との接合部近傍に配置したことによって、エンジンマウント310から前側横通メンバ220に入力する荷重を効率よく連結部材240に入力することができる。
(5)連結部材240の各横通メンバ220,230との接続部近傍における断面形状を中間部に対して連続的に拡大して形成したことによって、荷重を効率よく伝達することができる。
(6)左右の連結部材240の間隔に第1触媒コンバータ322の上部を配置したことによって、デッドスペースを有効に活用しつつ第1触媒コンバータ322の搭載位置を高くして最低地上高を確保できる。
【0033】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)車体前部構造の詳細な構造は上述した実施例のものに限定されず、適宜変更することができる。例えば、各部材の形状、材質、製法等は適宜変更することができる。
(2)実施例のクレードルは、縦通メンバ、横通メンバ、連結部材をそれぞれ一対ずつ有しているが、本発明はこれに限らず、例えば3本以上の縦通メンバ、横通メンバ、連結部材等を設けてもよい。また、それ以外のメンバを付加してもよい。
(3)実施例では、クレードルの前側横通メンバにエンジンマウントを設け、後側横通メンバにステアリングギアボックスを取り付けているが、これらの各部品の配置はこれに限定されない。例えば、エンジンマウントを後側横通メンバに設けたり、ステアリングギアボックスやその他の部品を前側横通メンバに取り付けてもよい。
(4)実施例では、クレードルにおける左右の連結部材間の隙間に触媒コンバータの一部を収容する構成としているが、これに限らず、例えばエンジンのオイルパンやトランスアクスルケースのディファレンシャル部における突出部等を収容するようにしてもよい。また、連結部材と縦通メンバとの隙間にも他部品を収容することができる。
【符号の説明】
【0034】
100 車体本体 110 トーボード
120 フロアパネル 121 フロアトンネル
130 メインフレーム 131 前側ブラケット
132 後側ブラケット 140 アッパフレーム
150 サスペンション支持部 160 バンパビーム
170 ラジエータアッパサポート 180 ラジエータロワサポート
200 クレードル 210 縦通メンバ
211 ブラケット 212 前側アーム取付部
213 後側アーム取付部 220 前側横通メンバ
230 後側横通メンバ 240 連結部材
250 前端部メンバ 260 ロワメンバ
310 エンジンマウント 320 排気管
321 フランジ 322 第1触媒コンバータ
323 第2触媒コンバータ 330 ステアリングギアボックス
331 タイロッド 340 サスペンションアーム
341 前側ブッシュ 342 後側ブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部隔壁から前方へ突き出しかつエンジンルームの左右側部にそれぞれ配置されたメインフレームと、
前記メインフレームの下部に取り付けられたクレードルと
を備える車体前部構造であって、
前記クレードルは、
車両前後方向に略沿って延びかつ車幅方向に離間して配置され、左右の前記メインフレームの下部にそれぞれ結合される一対の縦通メンバと、
車幅方向に略沿って延びかつ前記縦通メンバにわたして設けられた前側横通メンバと、
車幅方向に略沿って延びかつ前記縦通メンバにわたして設けられ、前記前側横通メンバとの後方側に間隔を隔てて配置された後側横通メンバと、
車両前後方向に略沿って延びかつ車幅方向に離間して配置され、前記前側横通メンバの中間部と前記後側横通メンバの中間部とを連結する一対の連結部材とを有すること
を特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記クレードルに揺動可能に取り付けられたサスペンションアームを備え、
前記サスペンションアームの取付部の少なくとも一部を、前記縦通メンバと前記前側横通メンバとの接続部近傍、又は、前記縦通メンバと前記後側横通メンバとの接続部近傍に配置したこと
を特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記前側横通メンバに設けられエンジンが取り付けられるエンジンマウントと、
前記後側横通メンバに取り付けられたステアリングギアボックスとを備えること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記エンジンマウントを前記前側横通メンバと前記連結部材との接合部近傍に配置したこと
を特徴とする請求項3に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記連結部材は前記前側横通メンバ及び前記後側横通メンバとの接続部近傍における断面形状を中間部に対して連続的に拡大して形成したこと
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項6】
左右の前記連結部材の間隔にエンジンの排ガスを後処理する触媒コンバータの少なくとも一部を配置したこと
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−264774(P2010−264774A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115180(P2009−115180)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】