説明

車体前部構造

【課題】サイドフレームの前周壁に部品取付ブラケットを取付けても、サイドフレームの衝撃吸収を妨げず、サイドフレームの衝撃吸収を高めた車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造11は車両前部54から車室27まで延びて正面衝突のときに車両後方へ向かって座屈することで衝撃を吸収するサイドフレーム14と、サイドフレーム14の前周壁15に取付けられている第1部品取付ブラケット21、第2部品取付ブラケット22と、を備え、第1・第2部品取付ブラケットはそれぞれ、サイドフレームの長手方向に直交する断面78に平行にそれぞれ溶接軸81、87を設けた第1接合部82、第2接合部88を備えている。第1・第2接合部82、88は、サイドフレームに平行に延ばして面接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両正面の衝撃吸収を行うサイドフレームの前周壁に部品取付ブラケットを設けた車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造には、前輪の上方のフロントフェンダを支持するフェンダ支持部材が、車両正面から車室まで延びるサイドフレーム(サイドメンバー)に取付けられ、正面からの衝撃を主にフェンダ支持部材で吸収できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3791071号公報(第4頁、図1)
【0003】
しかし、特許文献1のようなサイドフレーム(サイドメンバー)の前部にさらに部材を取付けてフェンダ支持部材を支持する必要がある構造では、衝撃吸収するサイドフレームの前周壁が拘束されて、サイドフレームの衝撃吸収の変形を妨げるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、サイドフレームの前周壁に部品取付ブラケットを取付けても、サイドフレームの衝撃吸収を妨げず、サイドフレームの衝撃吸収を高めた車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、車両前部から車室まで延びて正面衝突のときに車両後方へ向かって座屈することで衝撃を吸収するサイドフレームと、サイドフレームの前周壁に取付けられている部品取付ブラケットと、を備えた車体前部構造において、部品取付ブラケットは、サイドフレームの長手方向に直交する断面に平行に溶接軸を設けた接合部を備えていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、接合部は、サイドフレームに平行に延ばして面接触していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、正面衝突のときに座屈することで衝撃を吸収するサイドフレームと、サイドフレームの前周壁に取付けられている部品取付ブラケットと、を備え、部品取付ブラケットは、サイドフレームの長手方向に直交する断面に平行に溶接軸を設けた接合部を備えているので、部品取付ブラケットは、サイドフレームの座屈(潰れ)を妨げないという利点がある。その結果、サイドフレームは部品取付ブラケットに拘束されずに部品取付ブラケットとともに車両後方へ向かって潰れ続けることができ、部品取付ブラケットはサイドフレームの衝撃吸収を高めることができる。
【0008】
また、溶接軸線は接合部を所望の溶接長で溶接したビードのものであり、つまり、接合部の溶接長を長くすることができ、接合部の溶接強度を高めることができる。同時に、溶接のビードはサイドフレームの座屈(潰れ)を妨げない。従って、サイドフレームの衝撃吸収を高めることができる。
【0009】
請求項2に係る発明では、接合部は、サイドフレームに面接触しているので、放熱面積が大きくなり、溶接軸線を有している溶接ビードを施す際の熱を逃がすことができ、接合部に生じる熱影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の車体前部構造を採用したフロントボデーの斜視図である。
図2は、フロントボデーの側面図である。
車体前部構造11は、車体12のフロントボデー13に採用され、サイドフレーム14と、サイドフレーム14の前周壁15に接合している第1部品取付ブラケット21、第2部品取付ブラケット22と、を備える。後で具体的に説明する。
【0011】
車体前部構造11の左側を主体に説明するが、車体前部構造11は車幅方向(X軸方向)の中心軸線Cを基準にほぼ対称である。
【0012】
フロントボデー13は、前に触れたサイドフレーム14、フロントバルクヘッド16と、サスペンション(図に示していない)を支持しているダンパハウジング24と、前輪の上方のホイルハウスアッパメンバ25と、を備える。27は車室である。
【0013】
フロントバルクヘッド16は、上のフロントバルクヘッドアッパ31と、下のフロントバルクヘッドロアー32と、フロントバルクヘッドサイド33と、からなり、フロントバルクヘッドサイド33を上のステー(上ステー)35と下の下ステー36に2分割している。
【0014】
図3は、本発明の車体前部構造の斜視図である。図1を併用して説明する。
車体前部構造11のフロントバルクヘッド16には、前部品37(例えば、コンデンサやラジエータ)が取付けられている。上のフロントバルクヘッドアッパ31に前部品37(コンデンサ)の上部が上取付部材(図に示していない)で取付けられ、前部品37(コンデンサ)の横部41が横取付部材42で第2部品取付ブラケット22を介してサイドフレーム14に取付けられ、フロントバルクヘッドロアー32に前部品37(コンデンサ)の下部43が下取付部材(図に示していない)で取付けられている。
【0015】
サイドフレーム14は、中空形状のアルミニウム押し出し成形材で、上へ向いている上辺部46、下辺部47、車両内側(矢印a2の方向)に向いている内辺部48、車両外側(矢印a3の方向)に向いている外辺部49を有している。そして、サイドフレーム14の軸線51に直交させて上ステー35が立設され、下ステー36が直交して垂下され、外辺部49に、上ステー35の下方に且つ下ステー36より車両前方(矢印a4の方向)に第1部品取付ブラケット21が結合されている。
【0016】
サイドフレーム14の周壁52は、上辺部46、下辺部47、内辺部48、外辺部49がつながり連続したもので、周壁52のうち前側が前周壁15である。
【0017】
図4は、図1の4矢視図である。図3を併用して説明する。
図5は、図3の5部詳細図である。
車体前部構造11は、先に触れた車両前部54から車室27まで延びて正面衝突のときに車両後方へ向かって座屈する(矢印a5の方向)ことで衝撃を吸収するサイドフレーム14と、サイドフレーム14の前周壁15に取付けられている第1部品取付ブラケット21と、第2部品取付ブラケット22と、を備える。
【0018】
第1部品取付ブラケット21は、サイドフレーム14の長手方向(Y軸方向)に直交する断面78に平行に溶接軸81を設けた第1接合部82を備え、第1接合部82の溶接軸81は、車両側面視(図2の視点)で、サイドフレーム14の軸線51に直交(角度β1、β1は約90°)している。
第1部品取付ブラケット21はまた、支持部材84に含まれる。
【0019】
支持部材84は、例えばフェンダフレームであり、フロントフェンダ(図に示していない)を支持する。第1部品取付ブラケット21に結合しているL字形の第1フレーム85と、下ステー36の下端に結合し且つ、上部を第1フレーム85に結合しているL字形の第2フレーム86と、からなる。
【0020】
第2部品取付ブラケット22は、サイドフレーム14の長手方向に直交する断面78に平行に溶接軸87を設けた第2接合部88、第2接合部89を備え、第2接合部88、89の溶接軸87は、車両平面視(図4の裏から見た視点)で、サイドフレーム14の軸線51に直交(角度β2、β2は約90°)している。
第2部品取付ブラケット22は、前部品37(例えば、コンデンサやラジエータ)を支持する。
【0021】
図6は、図5の6矢視図である。図3、図5を併用して説明する。
第1部品取付ブラケット21は、具体的には、サイドフレーム14の外辺部49から外辺部49に平行に距離B1だけ離して配置している第1乖離平板部91が形成され、第1乖離平板部91から直交してサイドフレーム14の外辺部49まで延びて、外辺部49に面接触し且つ、第1乖離平板部91の外方(矢印a6の方向)に延びている第1接合部82が形成され、第1接合部82の縁が第1縁開先部92をなし、第1縁開先部92に溶接のビード93を施すことでサイドフレーム14の外辺部49に接合されている。さらに、第1乖離平板部91の他方に支持部材(フェンダフレーム)84の第1フレーム85を嵌合している嵌合接合部94が形成され、嵌合接合部94の縁が第2縁開先95をなし溶接で接合している。ビード93が溶接軸81を有している。
【0022】
「第1接合部82は、サイドフレーム14に平行に延ばして面接触している」とは、第1乖離平板部91からサイドフレーム14まで延びる脚部97が形成され、脚部97に直交させ且つ、外辺部49に平行に脚当接部98が第1接合部82の板厚t1の約1.6倍の長さLで形成されて、脚当接部98が面接触している。
【0023】
第1乖離平板部91の板厚はt2であり、板厚t2は、第1接合部82の板厚t1より薄く、例えば、t2=0.5×t1である。
【0024】
次に、本発明の車体前部構造の作用を説明する。
図7は、本発明の車体前部構造(第1部品取付ブラケット)の衝撃吸収の機構を説明する図である。
車体前部構造11では、正面衝突したときに、サイドフレーム14が変形することで衝撃を吸収するとともに、サイドフレーム14の衝撃吸収の変形に同期して第1部品取付ブラケット21は変形する。つまり、第1部品取付ブラケット21はサイドフレーム14の座屈変形を妨げない。
【0025】
具体的には、衝突によってサイドフレーム14に圧縮の荷重が矢印a7のように加わると、サイドフレーム14は座屈して潰れつつ荷重を吸収しながら、変形(潰れ)が第1部品取付ブラケット21を取付けている外辺部49の部位49aまで達すると、第1部品取付ブラケット21の第1接合部82間の外辺部49の部位49aでも引き続きほぼ同様に圧縮による変形(潰れ)を続け、衝撃を吸収し続ける。その際、第1乖離平板部91はサイドフレーム14の外辺部49を変形しないよう拘束するが、第1乖離平板部91の板厚t2を薄くしているので、拘束力つまり、変形を妨げる力は極めて小さく、サイドフレーム14の第1部品取付ブラケット21を取付けている部位49aはほぼ自由状態に近い状態で潰れる。
このように、車体前部構造11ではサイドフレーム14を無駄なく潰すことができる。
【0026】
次に、本発明の車体前部構造の第2部品取付ブラケットを説明する。
図8は、図3の8矢視図である。拡大して示している。
図9は、本発明の車体前部構造に採用された第2部品取付ブラケットの斜視図である。
【0027】
第2部品取付ブラケット22は、具体的には、サイドフレーム14から平行に距離B2だけ離して配置している第2乖離平板部101が形成され、第2乖離平板部101から直交してサイドフレーム14の下辺部47まで延びて、下辺部47に面接触し且つ、第2乖離平板部101の外方(矢印a6の方向)及び第2乖離平板部101の内方(矢印a8の方向)に延びている第2接合部88、第2接合部89が形成され、第2接合部88の縁が第2縁開先部102、第2接合部89の角が第2縁開先部103をなしていて、第2縁開先部102に溶接のビード104を施し、第2縁開先部103にビード105を施すことでサイドフレーム14に接合されている。さらに、第2乖離平板部101の他方に支持傾斜部107が形成され、支持傾斜部107に連ね第2乖離平板部101に達する補強辺部108が形成されている。
ビード104、105がそれぞれ溶接軸87を有している。
【0028】
第2接合部88は、第2乖離平板部101からサイドフレーム14まで延びる脚部111が形成され、脚部111に直交させ且つ、下辺部47に平行に脚当接部112が第2接合部88の板厚t3の約1.6倍の長さL1で形成されて、脚当接部112が面接触している。
第2接合部89には、脚部114、脚当接部115が形成され、下辺部47に脚当接部115が面接触している。
【0029】
第2接合部88、89の板厚はt3である。
第2乖離平板部101の板厚はt4であり、板厚t4は、第2接合部88、89の板厚t3より薄く、例えば、t4=0.5×t3である。
【0030】
なお、第2部品取付ブラケット22では、支持傾斜部107に設けためねじ部117にボルト118を所望の軸力(例えば、トルク管理)でねじ込むことで前部品37の横取付部材42を締結している。
【0031】
車体前部構造11では、第2部品取付ブラケット22は、第1部品取付ブラケット21と同様の作用効果を発揮する。つまり、第2部品取付ブラケット22はサイドフレーム14の変形を妨げない。
このように、車体前部構造11ではサイドフレーム14を無駄なく潰すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の車体前部構造は、サイドフレームの前周壁に部品取付ブラケットを取付けた車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の車体前部構造を採用したフロントボデーの斜視図である。
【図2】フロントボデーの側面図である。
【図3】本発明の車体前部構造の斜視図である。
【図4】図1の4矢視図である。
【図5】図3の5部詳細図である。
【図6】図5の6矢視図である。
【図7】本発明の車体前部構造(第1部品取付ブラケット)の衝撃吸収の機構を説明する図である。
【図8】図3の8矢視図である。
【図9】本発明の車体前部構造に採用された第2部品取付ブラケットの斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
11…車体前部構造、12…車体14…サイドフレーム、15…サイドフレームの前周壁、16…フロントバルクヘッド、21…第1部品取付ブラケット、22…第2部品取付ブラケット、27…車室、33…フロントバルクヘッドサイド、54…車両前部、78…サイドフレームの長手方向に直交する断面、81…第1部品取付ブラケットに設けた溶接軸、82…第1接合部、87…第2部品取付ブラケットに設けた溶接軸、88…第2接合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部から車室まで延びて正面衝突のときに車両後方へ向かって座屈することで衝撃を吸収するサイドフレームと、該サイドフレームの前周壁に取付けられている部品取付ブラケットと、を備えた車体前部構造において、
前記部品取付ブラケットは、前記サイドフレームの長手方向に直交する断面に平行に溶接軸を設けた接合部を備えていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記接合部は、前記サイドフレームに平行に延ばして面接触していることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−58586(P2010−58586A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224685(P2008−224685)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】