車体前部構造
【課題】衝突体が上方からフードに衝突した場合に、衝突体に対して与える反力を低減させると共に衝突エネルギーの吸収量を向上させることができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】エンジンルーム内の左右両側に互いに離間して対向配置された一対のストラットタワー9,9と、これらのストラットタワー同士9,9を車幅方向に沿って橋渡しするタワーバー11とを備え、該タワーバー11は、前記ストラットタワー9に取り付けられた支持部材17と、両端部が左右の支持部材に固定された連結体19とからなる車体前部構造であって、前記連結体19に下方へ向かう荷重が入力されたときに、前記支持部材に設けられた連結軸部25を中心にして連結体19を回転させるように構成している。
【解決手段】エンジンルーム内の左右両側に互いに離間して対向配置された一対のストラットタワー9,9と、これらのストラットタワー同士9,9を車幅方向に沿って橋渡しするタワーバー11とを備え、該タワーバー11は、前記ストラットタワー9に取り付けられた支持部材17と、両端部が左右の支持部材に固定された連結体19とからなる車体前部構造であって、前記連結体19に下方へ向かう荷重が入力されたときに、前記支持部材に設けられた連結軸部25を中心にして連結体19を回転させるように構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、更に詳しくは、エンジンルーム内に配設されたストラットタワー同士を連結部材によって連結した車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のエンジンルームの左右両端部には、ストラットタワーが一対に対向して配置されている。そして、車両の操縦安定性および乗り心地を向上させるために、前記一対のストラットタワー同士を回転許容機構を介して連結する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された回転許容機構は、左右両端部に設けられた固定部と、これらの固定部同士を結ぶ直線状のバー本体と、該バー本体に設けられて軸方向の長さを可変させるシリンダーとを備えている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−182133公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記背景技術に示された車体前部構造では、衝突体が上方からフードに衝突し、フードを変形させて前記バー本体に当たった場合、衝突体に対して大きな反力を与えるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、衝突体が上方からフードに衝突した場合に、衝突体に対して与える反力を低減させると共に衝突エネルギーの吸収量を向上させることができる車体前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、エンジンルーム内の左右両側に、一対のストラットタワーを互いに離間して対向配置させると共に、これらのストラットタワー同士をタワーバーを介して車幅方向に沿って連結した車体前部構造であって、前記タワーバーは、前記ストラットタワーに取り付けられた支持部材と、両端部が左右の支持部材に固定された連結体とからなり、前記連結体に下方へ向かう荷重が入力されたときに、前記支持部材に設けられた連結軸部を中心にして連結体を回転させるように構成している。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車体前部構造によれば、フードに向かって衝突体が衝突し、タワーバーの連結体に荷重が入力された場合に、支持部材に設けられた連結軸部を中心にして連結体を回転させる。このため、衝突体が連結体の高さ位置よりもさらに下方へ移動し、フードの変形量が大幅に向上するので、衝突エネルギーの吸収量が向上すると共に、衝突体に対する反力も低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態によるタワーバーを配設した車体前部を示す斜視図である。
【0011】
車体前部1には、エンジンルーム3が配設されており、該エンジンルーム3の左右両端には、車両前後方向に沿ってフードリッジメンバ5が延設されている。また、エンジンルーム3の前端には、車幅方向に沿ってラジエータサポートメンバ7が配設されている。前記フードリッジメンバ5の車幅方向内側には、ストラットタワー9,9が左右一対に離間して対向配置されている。これらのストラットタワー9,9同士は、車幅方向に沿って延びるタワーバー11によって連結されている。
【0012】
図2は図1のA部を拡大した斜視図、図3は図1におけるタワーバーの支持部材を拡大した斜視図である。
【0013】
図2に示すように、ストラットタワー9の上部には、略水平状に延びる上面13と、該上面13の周縁から下方に屈曲して延びる縦壁面15とを備えている。この上面13における車幅方向内側部は、平面視略半円状に形成されており、前記縦壁面15における車幅方向内側部は、側面視で略円筒状に形成されている。また、タワーバー11は、ストラットタワー9に取り付けられる支持部材17と、両端部が支持部材17に固定され、車幅方向に延びる平面視略矩形状に形成された平板状の連結体19とから構成されている。
【0014】
図3に示すように、支持部材17は、ストラットタワー9に支持されるタワー用取付部21と、連結体19に結合される連結体用取付部23と、これらのタワー用取付部21および連結体用取付部23の前後の中心部同士を連結する連結軸部25と、該連結軸部25の前後に配置された連接部27とが一体に形成されている。
【0015】
前記タワー用取付部21は、平面視略円弧状に形成されてストラットタワー9の上面13に取り付けられるタワー上面取付部29と、該タワー上面取付部29の車幅方向内側の周縁から下方に屈曲して延びてストラットタワー9の縦壁面15に取り付けられる前後一対のタワー縦壁面取付部31とから一体に形成されている。前記タワー上面取付部29の前端部および後端部には、取付孔33,33が穿設されており、該取付孔33,33に図外のボルトを挿入してストラットタワー9の上面13に締結する。
【0016】
前記連結軸部25は、平面視略矩形状に形成されて車幅方向に延び、タワー上面取付部の車幅方向内側の前後方向中央部と連結体用取付部23の前後方向中央部とを一体に連結している。
【0017】
また、連結軸部25の前後には、連接部27,27が前後一対に設けられている。この連接部27は、前記タワー縦壁面取付部31の下端縁から車幅方向内側に向かうにつれて徐々に斜め下方に延びたのち上方に延びて、前記連結体用取付部23の車幅方向外側縁に至る。従って、連接部27における前端又は後端は、車両前方から見て略J字状に湾曲して形成されている。そして、図3に矢印で示すように、連接部27の車幅方向外側端から上端に至る周長Laは、連結軸部25の車幅方向に沿った長さlよりも長く形成されている。
【0018】
前記連結体用取付部23は、平面視で前後方向に細長く延びる矩形状に形成されている。そして、連結体19の両端部は、連結体用取付部23にスポット溶接等によって接合されている。
【0019】
図4は、衝突体がフードに当たった場合のタワーバーの変形状態を概略的に示す側面図である。この図4において、実線は衝突体35がフード37に当たる前の状態を示し、二点鎖線は衝突体35がフード37に当たって連結体19が回転した状態を示している。
【0020】
このように、例えば球状の衝突体35がフード37に当たると、フード37は塑性変形を起こして下方に凹む。フード37の下側には、タワーバー11を構成する連結体19が配置されているため、衝突体35が連結体19に当たり連結体19に荷重が入力されると、該連結体19は、連結軸部25を中心として図4の矢印方向に回転する。
【0021】
図5は、本発明の第1実施形態による支持部材の変形例を示す斜視図である。
【0022】
この支持部材41は、図3に示す支持部材17に対して、連結軸部25の高さを低く設定している。具体的には、タワー上面取付部29と連結体用取付部23とは、同一高さであるが、連結軸部25は、これらのタワー上面取付部29および連結体用取付部23よりも一段低く設定されている。
【0023】
図6は、本発明の第1実施形態による支持部材の他の変形例を示す斜視図である。
【0024】
この支持部材43は、図3に示す支持部材17に対して、連接部45の形状を、車両前方から見て略W字状の波形に湾曲させている。これによって、図3に示す略J字状の場合よりも、車幅方向に沿った周長Lbを長く設定している。
【0025】
図7は、本発明の第1実施形態によるタワーバーの支持部材の更に他の変形例を示す斜視図である。
【0026】
この支持部材47は、図3に示す支持部材17に対して、連接部49における車幅方向外側と内側に段差部をそれぞれ設けている。具体的には、タワー縦壁面取付部31の下端位置を、図3よりも上側に配置し、この下端位置に略水平状に延びるタワー側段差部51を形成している。また、連接部49におけるタワー側段差部51に対向する部位で、かつ、タワー側段差部51と同一高さ位置に連結体側段差部53を形成している。
【0027】
図8は、本発明の第1実施形態による支持部材の更に他の変形例を示す斜視図である。
【0028】
この支持部材55においては、タワー縦壁面取付部31に、車幅方向内側に凸状に形成された断面矩形状のタワー側屈曲部57が設けられており、連接部59における縦面に車幅方向外側に凸状に形成された断面矩形状の連結体側屈曲部61が設けられている。
【0029】
以下に、本発明の第1実施形態による車体前部の作用効果を説明する。
【0030】
前記支持部材17,41,43,47,55は、ストラットタワー9,9に取り付けられたタワー用取付部21と、連結体19に取り付けられた連結体用取付部23と、これらのタワー用取付部21および連結体用取付部23を車幅方向に沿って連結する前記連結軸部25と、該連結軸部25の前後に設けられ、タワー用取付部21および連結体用取付部23を結ぶと共に、車幅方向に沿った周長La,Lbが前記連結軸部25の車幅方向長さlよりも長く設定された連接部27,45,49,59とを備えている。
【0031】
従って、図4に示すように、衝突体35がフード37に衝突し、フード37を介して連結体19に当たって場合、連結体19は連結軸部25を中心に回転する。ここで、連接部27,45,49,59は、車幅方向に沿った周長La,Lbが前記連結軸部25の車幅方向長さlよりも長く設定されているため、連結体19は連結軸部25を中心に効率的に回転する。また、連接部27,45,49,59が設けられているため、連結体19の回転を所定角度分に予め設定することができる。なお、連接部27,45,49,59によって、支持部材17,41,43,47,55の剛性を高めることができる。
【0032】
前記連接部27は、車両前方から見て略J字状に湾曲しているため、連結軸部25を中心として連結体19が回転するときに、連接部27が円滑に伸縮変形するので、連結体19をスムーズに回転させることができる。
【0033】
前記連結軸部25は、ストラットタワー9の上面13よりも下側に配置されているため、衝突体35が連結軸部25に当たることがなく、衝突体35に局部的な反力を与えることがない。
【0034】
[第2の実施形態]
次いで、第2の実施形態によるタワーバーについて説明するが、前記第1の実施形態と同一構造の部位には、同一符号を付けて説明を省略する。
【0035】
図9は、本発明の第2実施形態によるタワーバーを配設した車体前部を示す斜視図である。
【0036】
このタワーバー71を構成する連結体は、平面視で、いわゆる梯子状に形成されている。外周側が略矩形状の外枠部73によって囲まれており、車両前後方向に沿って延びる連結脚75が複数配設されている。具体的には、車両前側には、前側枠77が車幅方向に沿って延びており、該前側枠77から車両後方側に離間して前側枠77とほぼ平行に延びる後側枠79が設けられている。そして、これらの前側枠77と後側枠79とを、前後方向に延びる連結脚75によって連結しており、これらの連結脚75は、車幅方向に沿って所定間隔をおいて合計4本配設されている。
【0037】
以下に、本発明の第2実施形態による車体前部の作用効果を説明する。
【0038】
本実施形態では、タワーバー71を構成する連結体は、いわゆる梯子状に形成されているため、タワーバー11の軽量化を図りつつ、車両前後方向の幅寸法を拡大することができる。これによって、衝突体35(図4参照)がフード37に当たった場合に、該衝突体35の衝撃力を広い範囲で受け止めて吸収することができる。
【0039】
[第3の実施形態]
次いで、第3の実施形態によるタワーバーについて説明するが、前記第1および第2の実施形態と同一構造の部位には、同一符号を付けて説明を省略する。
【0040】
図10は、本発明の第3実施形態によるタワーバーを配設した車体前部を示す斜視図である。
【0041】
このタワーバー81を構成する連結体は、平面視略楕円状に形成された2つの外枠部同士83,85を車幅方向に沿って配置し、この状態で、外枠部同士83,85を結合するものである。それぞれの外枠部83,85の内方には、車両前後方向に沿って延びる2本の連結脚75が設けられている。
【0042】
以下に、本発明の第3実施形態による車体前部の作用効果を説明する。
【0043】
本実施形態によれば、複数の外枠部同士83,85を結合すれば良いため、車幅寸法が車両の種類によって変化した場合でも、組み合わせる外枠部83,85の数や外枠部83,85の寸法を変更すれば良いため、汎用性に優れる。
【0044】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の技術思想に基づいて種々の変更および変形が可能である。
【0045】
例えば、図示を省略したが、連結軸部は、連結体の前後方向中心よりも車両後方側にオフセットして配置させることができる。
【0046】
これによれば、連結体の前部に衝突体が当たった場合、連結体を連結軸部を中心にして効率的に回転させることができる。
【0047】
また、例えば、図11および図12に示すように、ドア87のガードバー89に本発明の構造を応用することができる。
【0048】
図11は本発明の他の実施形態によるガードバーを配設したドアインナーを示す斜視図、図12は図11のガードバーを配設したドアに対して、側方から衝突体が衝突した場合のガードバーの変形状態を概略的に示す側面図である。
【0049】
図11に示すように、ドアインナー91の側壁93の上端同士をガードバー89を介して連結している。このガードバー89は、側壁93の上端に取り付けた一対の支持部材95,95と、両端部97a,97aがこれらの支持部材95,95に固定された連結体97とから構成されている。この支持部材95は、前述した実施形態とほぼ同様の構造を有するため、連結軸部25を中心にして連結体97が回動可能に支持されている。
【0050】
従って、図12に示すように、ドアインナー91の外側にドアアウター99が取り付けられたドア87のドアアウター99に向けて衝突体101が衝突し、該衝突体101の上部がドアアウター99を介してガードバー89の連結体97の下部に当たった場合、連結体97は連結軸部25を中心に矢印方向に回動する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態によるタワーバー11を配設した車体前部1を示す斜視図である。
【図2】図1のA部を拡大した斜視図である。
【図3】図1におけるタワーバー11の支持部材を拡大した斜視図である。
【図4】衝突体がフードに当たった場合のタワーバー11の変形状態を概略的に示す側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるタワーバー11の支持部材の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態によるタワーバー11の支持部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるタワーバー11の支持部材の更に他の変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるタワーバー11の支持部材の更に他の変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態によるタワーバー11を配設した車体前部1を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態によるタワーバー11を配設した車体前部1を示す斜視図である。
【図11】本発明の他の実施形態によるガードバーを配設したドアインナーを示す斜視図である。
【図12】図11のガードバーを配設したドアに対して、側方から衝突体が衝突した場合のガードバーの変形状態を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
La,Lb…周長
1…車体前部
3…エンジンルーム
7…ラジエータサポートメンバ
9…ストラットタワー
11,71,81…タワーバー
13…上面
15…縦壁面
17,41,43,47,55…支持部材
19…連結体
21…タワー用取付部
23…連結体用取付部
25…連結軸部
27,45,49,59…連接部
33,33…取付孔
73,83,85…外枠部
75…連結脚
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、更に詳しくは、エンジンルーム内に配設されたストラットタワー同士を連結部材によって連結した車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のエンジンルームの左右両端部には、ストラットタワーが一対に対向して配置されている。そして、車両の操縦安定性および乗り心地を向上させるために、前記一対のストラットタワー同士を回転許容機構を介して連結する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された回転許容機構は、左右両端部に設けられた固定部と、これらの固定部同士を結ぶ直線状のバー本体と、該バー本体に設けられて軸方向の長さを可変させるシリンダーとを備えている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−182133公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記背景技術に示された車体前部構造では、衝突体が上方からフードに衝突し、フードを変形させて前記バー本体に当たった場合、衝突体に対して大きな反力を与えるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、衝突体が上方からフードに衝突した場合に、衝突体に対して与える反力を低減させると共に衝突エネルギーの吸収量を向上させることができる車体前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、エンジンルーム内の左右両側に、一対のストラットタワーを互いに離間して対向配置させると共に、これらのストラットタワー同士をタワーバーを介して車幅方向に沿って連結した車体前部構造であって、前記タワーバーは、前記ストラットタワーに取り付けられた支持部材と、両端部が左右の支持部材に固定された連結体とからなり、前記連結体に下方へ向かう荷重が入力されたときに、前記支持部材に設けられた連結軸部を中心にして連結体を回転させるように構成している。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車体前部構造によれば、フードに向かって衝突体が衝突し、タワーバーの連結体に荷重が入力された場合に、支持部材に設けられた連結軸部を中心にして連結体を回転させる。このため、衝突体が連結体の高さ位置よりもさらに下方へ移動し、フードの変形量が大幅に向上するので、衝突エネルギーの吸収量が向上すると共に、衝突体に対する反力も低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態によるタワーバーを配設した車体前部を示す斜視図である。
【0011】
車体前部1には、エンジンルーム3が配設されており、該エンジンルーム3の左右両端には、車両前後方向に沿ってフードリッジメンバ5が延設されている。また、エンジンルーム3の前端には、車幅方向に沿ってラジエータサポートメンバ7が配設されている。前記フードリッジメンバ5の車幅方向内側には、ストラットタワー9,9が左右一対に離間して対向配置されている。これらのストラットタワー9,9同士は、車幅方向に沿って延びるタワーバー11によって連結されている。
【0012】
図2は図1のA部を拡大した斜視図、図3は図1におけるタワーバーの支持部材を拡大した斜視図である。
【0013】
図2に示すように、ストラットタワー9の上部には、略水平状に延びる上面13と、該上面13の周縁から下方に屈曲して延びる縦壁面15とを備えている。この上面13における車幅方向内側部は、平面視略半円状に形成されており、前記縦壁面15における車幅方向内側部は、側面視で略円筒状に形成されている。また、タワーバー11は、ストラットタワー9に取り付けられる支持部材17と、両端部が支持部材17に固定され、車幅方向に延びる平面視略矩形状に形成された平板状の連結体19とから構成されている。
【0014】
図3に示すように、支持部材17は、ストラットタワー9に支持されるタワー用取付部21と、連結体19に結合される連結体用取付部23と、これらのタワー用取付部21および連結体用取付部23の前後の中心部同士を連結する連結軸部25と、該連結軸部25の前後に配置された連接部27とが一体に形成されている。
【0015】
前記タワー用取付部21は、平面視略円弧状に形成されてストラットタワー9の上面13に取り付けられるタワー上面取付部29と、該タワー上面取付部29の車幅方向内側の周縁から下方に屈曲して延びてストラットタワー9の縦壁面15に取り付けられる前後一対のタワー縦壁面取付部31とから一体に形成されている。前記タワー上面取付部29の前端部および後端部には、取付孔33,33が穿設されており、該取付孔33,33に図外のボルトを挿入してストラットタワー9の上面13に締結する。
【0016】
前記連結軸部25は、平面視略矩形状に形成されて車幅方向に延び、タワー上面取付部の車幅方向内側の前後方向中央部と連結体用取付部23の前後方向中央部とを一体に連結している。
【0017】
また、連結軸部25の前後には、連接部27,27が前後一対に設けられている。この連接部27は、前記タワー縦壁面取付部31の下端縁から車幅方向内側に向かうにつれて徐々に斜め下方に延びたのち上方に延びて、前記連結体用取付部23の車幅方向外側縁に至る。従って、連接部27における前端又は後端は、車両前方から見て略J字状に湾曲して形成されている。そして、図3に矢印で示すように、連接部27の車幅方向外側端から上端に至る周長Laは、連結軸部25の車幅方向に沿った長さlよりも長く形成されている。
【0018】
前記連結体用取付部23は、平面視で前後方向に細長く延びる矩形状に形成されている。そして、連結体19の両端部は、連結体用取付部23にスポット溶接等によって接合されている。
【0019】
図4は、衝突体がフードに当たった場合のタワーバーの変形状態を概略的に示す側面図である。この図4において、実線は衝突体35がフード37に当たる前の状態を示し、二点鎖線は衝突体35がフード37に当たって連結体19が回転した状態を示している。
【0020】
このように、例えば球状の衝突体35がフード37に当たると、フード37は塑性変形を起こして下方に凹む。フード37の下側には、タワーバー11を構成する連結体19が配置されているため、衝突体35が連結体19に当たり連結体19に荷重が入力されると、該連結体19は、連結軸部25を中心として図4の矢印方向に回転する。
【0021】
図5は、本発明の第1実施形態による支持部材の変形例を示す斜視図である。
【0022】
この支持部材41は、図3に示す支持部材17に対して、連結軸部25の高さを低く設定している。具体的には、タワー上面取付部29と連結体用取付部23とは、同一高さであるが、連結軸部25は、これらのタワー上面取付部29および連結体用取付部23よりも一段低く設定されている。
【0023】
図6は、本発明の第1実施形態による支持部材の他の変形例を示す斜視図である。
【0024】
この支持部材43は、図3に示す支持部材17に対して、連接部45の形状を、車両前方から見て略W字状の波形に湾曲させている。これによって、図3に示す略J字状の場合よりも、車幅方向に沿った周長Lbを長く設定している。
【0025】
図7は、本発明の第1実施形態によるタワーバーの支持部材の更に他の変形例を示す斜視図である。
【0026】
この支持部材47は、図3に示す支持部材17に対して、連接部49における車幅方向外側と内側に段差部をそれぞれ設けている。具体的には、タワー縦壁面取付部31の下端位置を、図3よりも上側に配置し、この下端位置に略水平状に延びるタワー側段差部51を形成している。また、連接部49におけるタワー側段差部51に対向する部位で、かつ、タワー側段差部51と同一高さ位置に連結体側段差部53を形成している。
【0027】
図8は、本発明の第1実施形態による支持部材の更に他の変形例を示す斜視図である。
【0028】
この支持部材55においては、タワー縦壁面取付部31に、車幅方向内側に凸状に形成された断面矩形状のタワー側屈曲部57が設けられており、連接部59における縦面に車幅方向外側に凸状に形成された断面矩形状の連結体側屈曲部61が設けられている。
【0029】
以下に、本発明の第1実施形態による車体前部の作用効果を説明する。
【0030】
前記支持部材17,41,43,47,55は、ストラットタワー9,9に取り付けられたタワー用取付部21と、連結体19に取り付けられた連結体用取付部23と、これらのタワー用取付部21および連結体用取付部23を車幅方向に沿って連結する前記連結軸部25と、該連結軸部25の前後に設けられ、タワー用取付部21および連結体用取付部23を結ぶと共に、車幅方向に沿った周長La,Lbが前記連結軸部25の車幅方向長さlよりも長く設定された連接部27,45,49,59とを備えている。
【0031】
従って、図4に示すように、衝突体35がフード37に衝突し、フード37を介して連結体19に当たって場合、連結体19は連結軸部25を中心に回転する。ここで、連接部27,45,49,59は、車幅方向に沿った周長La,Lbが前記連結軸部25の車幅方向長さlよりも長く設定されているため、連結体19は連結軸部25を中心に効率的に回転する。また、連接部27,45,49,59が設けられているため、連結体19の回転を所定角度分に予め設定することができる。なお、連接部27,45,49,59によって、支持部材17,41,43,47,55の剛性を高めることができる。
【0032】
前記連接部27は、車両前方から見て略J字状に湾曲しているため、連結軸部25を中心として連結体19が回転するときに、連接部27が円滑に伸縮変形するので、連結体19をスムーズに回転させることができる。
【0033】
前記連結軸部25は、ストラットタワー9の上面13よりも下側に配置されているため、衝突体35が連結軸部25に当たることがなく、衝突体35に局部的な反力を与えることがない。
【0034】
[第2の実施形態]
次いで、第2の実施形態によるタワーバーについて説明するが、前記第1の実施形態と同一構造の部位には、同一符号を付けて説明を省略する。
【0035】
図9は、本発明の第2実施形態によるタワーバーを配設した車体前部を示す斜視図である。
【0036】
このタワーバー71を構成する連結体は、平面視で、いわゆる梯子状に形成されている。外周側が略矩形状の外枠部73によって囲まれており、車両前後方向に沿って延びる連結脚75が複数配設されている。具体的には、車両前側には、前側枠77が車幅方向に沿って延びており、該前側枠77から車両後方側に離間して前側枠77とほぼ平行に延びる後側枠79が設けられている。そして、これらの前側枠77と後側枠79とを、前後方向に延びる連結脚75によって連結しており、これらの連結脚75は、車幅方向に沿って所定間隔をおいて合計4本配設されている。
【0037】
以下に、本発明の第2実施形態による車体前部の作用効果を説明する。
【0038】
本実施形態では、タワーバー71を構成する連結体は、いわゆる梯子状に形成されているため、タワーバー11の軽量化を図りつつ、車両前後方向の幅寸法を拡大することができる。これによって、衝突体35(図4参照)がフード37に当たった場合に、該衝突体35の衝撃力を広い範囲で受け止めて吸収することができる。
【0039】
[第3の実施形態]
次いで、第3の実施形態によるタワーバーについて説明するが、前記第1および第2の実施形態と同一構造の部位には、同一符号を付けて説明を省略する。
【0040】
図10は、本発明の第3実施形態によるタワーバーを配設した車体前部を示す斜視図である。
【0041】
このタワーバー81を構成する連結体は、平面視略楕円状に形成された2つの外枠部同士83,85を車幅方向に沿って配置し、この状態で、外枠部同士83,85を結合するものである。それぞれの外枠部83,85の内方には、車両前後方向に沿って延びる2本の連結脚75が設けられている。
【0042】
以下に、本発明の第3実施形態による車体前部の作用効果を説明する。
【0043】
本実施形態によれば、複数の外枠部同士83,85を結合すれば良いため、車幅寸法が車両の種類によって変化した場合でも、組み合わせる外枠部83,85の数や外枠部83,85の寸法を変更すれば良いため、汎用性に優れる。
【0044】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の技術思想に基づいて種々の変更および変形が可能である。
【0045】
例えば、図示を省略したが、連結軸部は、連結体の前後方向中心よりも車両後方側にオフセットして配置させることができる。
【0046】
これによれば、連結体の前部に衝突体が当たった場合、連結体を連結軸部を中心にして効率的に回転させることができる。
【0047】
また、例えば、図11および図12に示すように、ドア87のガードバー89に本発明の構造を応用することができる。
【0048】
図11は本発明の他の実施形態によるガードバーを配設したドアインナーを示す斜視図、図12は図11のガードバーを配設したドアに対して、側方から衝突体が衝突した場合のガードバーの変形状態を概略的に示す側面図である。
【0049】
図11に示すように、ドアインナー91の側壁93の上端同士をガードバー89を介して連結している。このガードバー89は、側壁93の上端に取り付けた一対の支持部材95,95と、両端部97a,97aがこれらの支持部材95,95に固定された連結体97とから構成されている。この支持部材95は、前述した実施形態とほぼ同様の構造を有するため、連結軸部25を中心にして連結体97が回動可能に支持されている。
【0050】
従って、図12に示すように、ドアインナー91の外側にドアアウター99が取り付けられたドア87のドアアウター99に向けて衝突体101が衝突し、該衝突体101の上部がドアアウター99を介してガードバー89の連結体97の下部に当たった場合、連結体97は連結軸部25を中心に矢印方向に回動する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態によるタワーバー11を配設した車体前部1を示す斜視図である。
【図2】図1のA部を拡大した斜視図である。
【図3】図1におけるタワーバー11の支持部材を拡大した斜視図である。
【図4】衝突体がフードに当たった場合のタワーバー11の変形状態を概略的に示す側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるタワーバー11の支持部材の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態によるタワーバー11の支持部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるタワーバー11の支持部材の更に他の変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるタワーバー11の支持部材の更に他の変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態によるタワーバー11を配設した車体前部1を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態によるタワーバー11を配設した車体前部1を示す斜視図である。
【図11】本発明の他の実施形態によるガードバーを配設したドアインナーを示す斜視図である。
【図12】図11のガードバーを配設したドアに対して、側方から衝突体が衝突した場合のガードバーの変形状態を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
La,Lb…周長
1…車体前部
3…エンジンルーム
7…ラジエータサポートメンバ
9…ストラットタワー
11,71,81…タワーバー
13…上面
15…縦壁面
17,41,43,47,55…支持部材
19…連結体
21…タワー用取付部
23…連結体用取付部
25…連結軸部
27,45,49,59…連接部
33,33…取付孔
73,83,85…外枠部
75…連結脚
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内の左右両側に互いに離間して対向配置された一対のストラットタワーと、これらのストラットタワー同士を車幅方向に沿って橋渡しするタワーバーとを備え、
該タワーバーは、前記ストラットタワーに取り付けられた支持部材と、両端部が左右の支持部材に固定された連結体とからなる車体前部構造であって、
前記連結体に下方へ向かう荷重が入力されたときに、前記支持部材に設けられた連結軸部を中心にして連結体を回転させるように構成したことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記支持部材は、ストラットタワーに取り付けられたタワー用取付部と、連結体に取り付けられた連結体用取付部と、これらのタワー用取付部および連結体用取付部を車幅方向に沿って連結する前記連結軸部と、該連結軸部の前後に設けられ、タワー用取付部および連結体用取付部を結ぶと共に、車幅方向に沿った周長が前記連結軸部の車幅方向長さよりも長く設定された連接部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記連接部は、車両前方から見て略J字状に湾曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記連結軸部は、ストラットタワーの上面よりも下側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記連結軸部は、前記連結体の前後方向中心よりも車両後方側にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記連結体は、外周を取り囲む外枠部と、該外枠部の内方に配置されて前後方向に延びる連結脚とを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項1】
エンジンルーム内の左右両側に互いに離間して対向配置された一対のストラットタワーと、これらのストラットタワー同士を車幅方向に沿って橋渡しするタワーバーとを備え、
該タワーバーは、前記ストラットタワーに取り付けられた支持部材と、両端部が左右の支持部材に固定された連結体とからなる車体前部構造であって、
前記連結体に下方へ向かう荷重が入力されたときに、前記支持部材に設けられた連結軸部を中心にして連結体を回転させるように構成したことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記支持部材は、ストラットタワーに取り付けられたタワー用取付部と、連結体に取り付けられた連結体用取付部と、これらのタワー用取付部および連結体用取付部を車幅方向に沿って連結する前記連結軸部と、該連結軸部の前後に設けられ、タワー用取付部および連結体用取付部を結ぶと共に、車幅方向に沿った周長が前記連結軸部の車幅方向長さよりも長く設定された連接部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記連接部は、車両前方から見て略J字状に湾曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記連結軸部は、ストラットタワーの上面よりも下側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記連結軸部は、前記連結体の前後方向中心よりも車両後方側にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記連結体は、外周を取り囲む外枠部と、該外枠部の内方に配置されて前後方向に延びる連結脚とを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−58738(P2010−58738A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228465(P2008−228465)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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