説明

車体前部構造

【課題】インタクーラの冷却効率を上げること。
【解決手段】バンパフェース開口部50よりインタクーラ100の空気入口100Aへ走行風を導く空気通路56を画定する通気ダクト54を設け、フロントホイールハウスインナフェンダ32にはインタクーラ100の空気出口100Bよりの空気をフロントホイールハウス空間31に排出する排気口46を貫通形成し、サイドアンダカバー部34には車体前側面に走行風が衝突する板状のストレーキ42を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、特に、インタクーラを搭載した自動車の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気冷却を行うインタクーラには、走行風との熱交換によって吸気の冷却を行う空冷式のものがある。このようなインタクーラは、車体前部のエンジンルームに配置され、フロントバンパフェースに形成された開口部より通気ダクトによって導かれた走行風を車体前方側の空気入口に与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−143359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の如き従来のものは、インタクーラの車体後方側にある空気出口がエンジンルームにら開放されている。このため、インタクーラを通過した空気がインタクーラの周囲に分散し、インタクーラの冷却効率が悪い。
【0005】
インタクーラを通過する空気量は、インタクーラの空気入口側と空気出口側との差圧の影響を受け、差圧が大きいほど、通過空気量が増大するが、上述の如き従来のものでは、空気出口側が負圧雰囲気になることは期待できないので、このことによっては通過空気量を増大できず、インタクーラの冷却効率を上げることができない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、インタクーラを通過した空気がインタクーラの周囲に分散することをなくし、併せてインタクーラの空気出口側を負圧雰囲気にしてインタクーラを通過する空気量を増やし、インタクーラの冷却効率を上げることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車体前部構造は、フロントホイールハウスメンバ(32)と、前記フロントホイールハウスメンバ(32)より車体前方に配置され、車体前後方向に貫通するバンパフェース開口部(50)を有するフロントバンパフェース(26)と、前記フロントホイールハウスメンバ(32)と前記フロントバンパフェース(26)との間に配置された板状のアンダカバー(34)とを有し、前記アンダカバー(34)の上方位置にインタクーラ(100)を配置される車両の車体前部構造であって、前記フロントバンパフェース(26)と前記インタクーラ(100)の車体前方側の空気入口(100A)との間に、前記バンパフェース開口部(50)より前記インタクーラ(100)の空気入口(100A)へ走行風を導く空気通路(56)を画定する通気ダクト(54)が配置され、前記フロントホイールハウスメンバ(32)には前記インタクーラ(100)の車体後方側の空気出口(100B)よりの空気を前記フロントホイールハウスメンバ(32)の内側に排出する排気口(46)が貫通形成され、前記アンダカバー(34)には車体幅方向に幅を有して当該アンダカバー(34)の下底面より車体下方に垂下され、車体前側面に走行風が衝突する板状のストレーキ(42)が設けられている。
【0008】
この構成によれば、走行風(床下風)がストレーキ(42)の下方を潜るようにして車体後方へ増速して流れることにより、フロントホイールハウスメンバ(32)の内側が負圧領域になり、この負圧雰囲気は排気口(46)を通ってインタクーラ(100)の空気出口側(100B)にまで及ぶので、インタクーラ(100)の空気出口(100B)側の負圧による吸い込み効果により、インタクーラ(100)を通過した空気(走行風)がインタクーラ(100)の周囲に分散することがなくなり、インタクーラ(100)の冷却効率が向上する。併せて、インタクーラ(100)の空気出口(100B)側の負圧効果によってインタクーラ(100)の空気入口(100A)と空気出口側(100B)との差圧が大きくなり、インタクーラ(100)を通過する空気量が増加する。このことによっても、インタクーラ(100)の冷却効率が向上する。
【0009】
本発明による車体前部構造は、好ましくは、前記通気ダクト(54)には、当該通気ダクト(54)の空気通路(56)と、当該通気ダクト(54)と前記アンダカバー(34)との間に画定されたダクト下方空間(60)とを連通するダクト開口部(62)が形成され、前記アンダカバー(34)には、前記ダクト下方空間(60)と前記アンダカバー(34)の前記ストレーキ(42)の配置位置より車体後方の下方空間(64)とを連通するアンダカバー開口部(66)が形成されている。
【0010】
この構成によれば、走行風(床下風)がストレーキ(42)の下方を潜るようにして車体後方へ増速して流れることにより、ストレーキ(42)の後方領域が負圧になっているので、通気ダクト(54)の空気通路(56)を流れる走行風の一部が、ダクト開口部(62)よりダクト下方空間(60)を経てアンダカバー開口部(66)よりアンダカバー下方空間(64)へ流れる。この空気の流れにより、通気ダクト(54)内においてエジェクタ作用が生じ、通気ダクト(54)の空気通路(56)を流れてインタクーラ(100)の空気入口(100A)に至る走行風の風量が増加するから、インタクーラ(100)の冷却効率が向上する。
【0011】
本発明による車体前部構造は、好ましくは、前記通気ダクト(54)内にフォグランプ(52)が配置されている。
【0012】
この構成によれば、フォグランプ(52)を通気ダクト(54)外に配置してフロントバンパフェース(26)にフォグランプ(52)のための開口部を、走行風取り入れのバンパフェース開口部(50)とは別に設ける場合に比して、フォグランプ(52)のための開口部と走行風取り入れのバンパフェース開口部(50)とを区切る区切り壁分だけ、バンパフェース開口部(50)を大きく設定でき、通気ダクト(54)の空気通路(56)を流れる走行風の風量、ついてはインタクーラ(100)に供給される走行風の風量を増やすことができる。
【0013】
本発明による車体前部構造は、好ましくは、前記ダクト開口部(62)は、前記フォグランプ(52)の配置位置より車体後方に位置する部分を含み、前記フォグランプ(52)のバルブ交換のためのメンテナンス用開口を兼ねている。
【0014】
この構成によれば、ダクト開口部(62)をフォグランプ(52)のバルブ交換のためのメンテナンス用開口として使用することにより、フォグランプ(52)のバルブ交換を簡便に行えるようになる。
【0015】
本発明による車体前部構造は、好ましくは、前記通気ダクト(54)は、前記ダクト開口部(62)の周縁に、当該ダクト開口部(62)の開口方向に起立した周壁部(63)を有する。
【0016】
この構成によれば、周壁部(63)がダクト開口部(62)を流れる空気流の案内を行い、この空気流によるエジェクタ効果が向上する。また、バルブ交換時にダクト開口部(62)に手を入れた時の案内をする。
【発明の効果】
【0017】
本発明による車体前部構造によれば、走行風がストレーキの下方を潜るようにして車体後方へ増速して流れることにより、フロントホイールハウスメンバの内側が負圧領域になり、この負圧雰囲気は排気口を通ってインタクーラの空気出口側にまで及ぶので、インタクーラの空気出口側の負圧による吸い込み効果により、インタクーラを通過した空気がインタクーラの周囲に分散することがなくなり、インタクーラの冷却効率が向上する。併せて、インタクーラの空気出口側の負圧効果によってインタクーラの空気入口と空気出口側との差圧が大きくなり、インタクーラを通過する空気量が増加することによっても、インタクーラの冷却効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による車体前部構造の一つの実施形態を示す正面図。
【図2】本実施形態による車体前部構造の要部の鳥瞰斜視図。
【図3】本実施形態による車体前部構造の要部の俯瞰斜視図。
【図4】本実施形態による車体前部構造の要部の通気ダクト及びインタクーラ取り外し状態の鳥瞰斜視図。
【図5】本実施形態による車体前部構造の要部の下底面図。
【図6】本実施形態による車体前部構造のインタクーラ配置部の俯瞰斜視図。
【図7】図1の線VII部分の断面図。
【図8】図1の線VIII部分の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明による車体前部構造の実施形態を、図1〜図8を参照して説明する。本実施形態による車体前部構造は、過給器付き内燃機関を原動機とする自動車の車体前部構造である。この種の自動車は、走行風との熱交換によって吸気の冷却を行う空冷式のインタクーラ100(図2)を車体前部のエンジンムール内に有する。
【0020】
自動車は、車体前部の骨格構造として、図1、図2に示されているように、バルクヘッドアッパフレーム10と左右のバルクヘッドサイドスティ12とフロントロアクロスメンバ14とにより構成された枠状のバルクヘッド組立体16と、バルクヘッド組立体16の上部左右両側に接続されたバルクヘッドアッパサイドフレーム18と、左右のホイールハウスアッパメンバロア20と、ホイールハウスアッパメンバロア20の先端に取り付けられた外側バンパビームエクステンション22と、図示されていない左右のフロントサイドフレームの各々の先端に取り付けられた内側バンパビームエクステンション24とを含む。これらの骨格構成部材は全て鋼材により構成されている。
【0021】
左右の外側バンパビームエクステンション22および内側バンパビームエクステンション24には車幅方向に水平に延在する鋼材製のフロントバンパビーム(図示省略)の左右端部が接続され、当該フロントバンパビームを覆うようにエラストマ製のフロントバンパフェース26が取り付けられる。なお、図1において、28はフロントバンパフェース26の上側に配置されるヘッドランプを示している。
【0022】
自動車は、左右のフロントピラーロアメンバ(図示省略)より車体前方に設けられるフロントホイールアーチプロテクタ30を有する。フロントホイールアーチプロテクタ30は、フロントホイール(図示省略)を収容するフロントホイールハウス空間31(図7、図8参照))の外郭をなす湾曲切欠形状部分30Aを含む。
【0023】
フロントホイールアーチプロテクタ30の湾曲切欠形状部分30Aの車幅方向内側には、上述のホイールハウスを画定するフロントホイールハウスメンバをなす合成樹脂製のフロントホイールハウスインナフェンダ32が取り付けられている。図2〜図5に示されているように、フロントホイールハウスインナフェンダ32は、車体前側の下端部より車体前方に延出して水平に延在する板状のサイドアンダカバー部34を一体成形されている。サイドアンダカバー部34の車体前縁部は、A点とB点の2箇所を締結ボルト(図示省略)によって取り外し可能にフロントバンパフェース26の底片部26A(図3参照)に固定されている。また、サイドアンダカバー部34は、フロントホイールハウスインナフェンダ32との連続部に近い車幅外側部のC点をクリップ(図示省略)によってフロントホイールアーチプロテクタ30の車体前側下部延長部30Aに取り外し可能に固定されている。更に、サイドアンダカバー部34は、フロントホイールハウスインナフェンダ32との連続部に近い車幅内側部のD点をクリップ(図示省略)によって後述するセンタアンダカバー36に取り外し可能に連結されている。
【0024】
サイドアンダカバー部34は左右のフロントホイールハウスインナフェンダ32の各々に設けられており、この左右のサイドアンダカバー部34間に合成樹脂製の板状のセンタアンダカバー36が取り付けられている。センタアンダカバー36には、センタアンダカバー36に形成されたメンテナンス開口38を閉じるリッド40が着脱可能に取り付けられている。
【0025】
このようにして左右のサイドアンダカバー部34、センタアンダカバー36、リッド40等によってエンジンルームの下方の略全体を塞ぐアンダカバーが構成される。本実施形態では、サイドアンダカバー部34がフロントホイールハウスメンバであるフロントホイールハウスインナフェンダ32とフロントバンパフェース26との間に配置された板状のアンダカバーをなす。
【0026】
サイドアンダカバー部34とセンタアンダカバー36には両者を車体幅方向に跨ってストレーキ42が取り付けられている。ストレーキ42は、鋼板あるいは合成樹脂製で、フロントホイールハウスインナフェンダ32より車体前方、換言すると、フロントホイールハウスに配置されるフロントホイール(前輪タイヤ)の車体前方にあって、車体幅方向に空力上の所要の幅を有する板状のものであり、サイドアンダカバー部34およびセンタアンダカバー36の下底面より車体下方に垂下し、車体前側面に走行風が衝突する構造になっている。なお、ストレーキ42は、E点とF点とG点の3箇所を締結ボルト(図示省略)によって取り外し可能にサイドアンダカバー部34とセンタアンダカバー36とに固定されている。
【0027】
ストレーキ42は、走行風を前輪タイヤの左右に逃がし、前輪タイヤに走行風が直接当たる量を低減して前輪タイヤの空気抵抗を低減する空力効果要素である。ストレーキ42の存在により、走行風はストレーキ42の下方を潜るようにして車体後方へ増速して流れるので、ストレーキ42の後方領域ならびにフロントホイールハウスインナフェンダ32内(フロントホイールハウス空間31)の車体前側部分は負圧領域になる。
【0028】
図2、図7、図8に示されているように、車体正面(前部)より見て右側のフロントホイールハウスインナフェンダ32の車体前方に接近した位置であってサイドアンダカバー部34の上方位置に前述のインタクーラ100が枠状のマウントブラット44によってホイールハウスアッパメンバロア20等より吊り下げ式に固定されている。なお、インタクーラ100は、図6に示されているように、マウントブラット44の底部メンバ44Aに形成された貫通孔44Bに嵌合装着されるゴムブッシュ(図示省略)によって防振構造をもって底部メンバ44上に載置される。
【0029】
インタクーラ100は、冷却風として作用する走行風が車体前後方向に通過できる配置であり、車体前方側が空気入口100A、車体後方側が空気出口100Bになっている。
【0030】
図2、図3、図7、図8に示されているように、フロントホイールハウスインナフェンダ32の車体前側部分であって、車体前後方向で見てインタクーラ100と重なる部位には排気口46が開口形成されている。排気口46は、インタクーラ100を通過した空気出口100Bよりの空気をフロントホイールハウスインナフェンダ32の内側、つまり、フロントホイールハウス空間31に排出する。フロントホイールハウスインナフェンダ32には飛び石等が排気口46よりインタクーラ100へ飛散することを防ぐ合成樹脂製の防御グリル部材48が取り付けられている。
【0031】
図1に示されているように、フロントバンパフェース26の車体前部側の左右両側には車幅方向に長いバンパフェース開口部50が車体前後方向に貫通形成されている。バンパフェース開口部50内の車幅方向外側部分にはフォグランプ(補助灯)52が設けられている。フォグランプ52は交換可能なバルブ53を有しており、バルブ53の交換は、フォグランプ52の後方より行えるようになっている。また、バンパフェース開口部50内の上部には昼間点灯用ライト(DRL)51が配置されている。
【0032】
車体正面(前部)より見て右側のバンパフェース開口部50は、車体前後方向で見てインタクーラ100と重なる部分を含んでいる。図7、図8に示されているように、右側のバンパフェース開口部50とインタクーラ100の空気入口100Aとの間には、合成樹脂製の通気ダクト54が設けられている。通気ダクト54は、バンパフェース開口部50よりインタクーラ100の空気入口100Aへ走行風を導く空気通路56を画定している。
【0033】
通気ダクト54は、サイドアンダカバー部34上にあってマウントブラット44に取り付けられている。これにより、通気ダクト54とインタクーラ100とはマウントブラット44によって連結されたサブアッシィとして取り扱われる。
【0034】
通気ダクト54内、つまり空気通路56に右側のフォグランプ52が入り込んでいる。フロントバンパフェース26には右側のバンパフェース開口部50の前側部分に位置するガーニッシュ58が取り付けられている。ガーニッシュ58は、通気ダクト54の走行風取り入れための編み目状通気部58Aと、フォグランプ52のための開口部58Bとを有する。
【0035】
図8に示されているように、通気ダクト54の下方にはサイドアンダカバー部34との間にダクト下方空間60が画定されている。通気ダクト54の底部には、空気通路56とダクト下方空間60とを連通するダクト開口部62が形成されている。ダクト開口部62は、フォグランプ52の配置位置の真下位置より車体後方に亘って存在し、フォグランプ52のバルブ交換のためのメンテナンス用開口を兼ねている。ダクト開口部62の周縁には、ダクト開口部62の開口方向(上下方向)に起立した周壁部63が一体形成されている。
【0036】
サイドアンダカバー部34には、ダクト下方空間60とストレーキ42の配置位置より車体後方のアンダカバー下方空間(車外)64とを連通するアンダカバー開口部66が貫通形成されている。サイドアンダカバー部34の上面には車体前方側を開けてアンダカバー開口部66の周囲を囲む集風ルーバ部68が一体形成されている。
【0037】
上述の構成によれば、走行中は、走行風が右側のバンパフェース開口部50より通気ダクト54の空気通路56を流れてインタクーラ100の空気入口100Aに導かれる。インタクーラ100の空気入口100Aに導かれた走行風は、インタクーラ100の空気入口100Aと空気出口側100Bとの差圧によってインタクーラ100を通過し、その通過過程で、インタクーラ100内を流れる機関吸気との熱交換によって機関吸気の冷却を行う。そして、走行風は空気出口側100Bより排気口46を通ってフロントホイールハウスインナフェンダ32の車体後方、つまりフロントホイールハウス空間31に排出される。
【0038】
フロントホイールハウス空間31の車体前側部分は、走行風(床下風)がストレーキ42の下方を潜るようにして車体後方へ増速して流れることにより、負圧領域になっており、この負圧雰囲気は排気口46を通ってインタクーラ100の空気出口側100Bにまで及んでいる。これにより、インタクーラ100を通過した走行風は空気出口側100Bより排気口46へ吸い込まれるようにして流れる。
【0039】
この結果、インタクーラ100の空気出口側100Bの真後ろにエンジンルーム外へ空気を排出することができる排気口46があることと相まって、インタクーラ100の空気出口100B側の負圧による吸い込み効果により、インタクーラ100を通過した空気(走行風)がインタクーラ100の周囲に分散することがなくなり、インタクーラ100の冷却効率が向上する。併せて、インタクーラ100の空気出口100B側の負圧効果によってインタクーラ100の空気入口100Aと空気出口側100Bとの差圧が大きくなることにより、インタクーラ100を通過する空気量が増加する。このことによってもインタクーラ100の冷却効率が向上する。
【0040】
このように、インタクーラ100の冷却効率が向上することにより、インタクーラ100の小型化を図ることができる。
【0041】
また、走行風(床下風)がストレーキ42の下方を潜るようにして車体後方へ増速して流れることにより、ストレーキ42の後方領域が負圧になるので、通気ダクト54の空気通路56を流れる走行風の一部が、ダクト開口部62よりダクト下方空間60を経てアンダカバー開口部66よりアンダカバー下方空間64へ流れる。ダクト開口部62の周壁部63は、ダクト開口部62よりダクト下方空間60へ流れる空気流を整流状に案内し、アンダカバー開口部66よりアンダカバー下方空間64へ流れる空気量を増大する。
【0042】
このダクト開口部62よりアンダカバー下方空間64へ向かう空気の流れ(予備空気流)により、通気ダクト54内においてエジェクタ作用が生じ、通気ダクト54の空気通路56を流れてインタクーラ100の空気入口100Aに至る走行風の風量が増加する。このことによってもインタクーラ100の冷却効率が向上する。
【0043】
また、通気ダクト54内にフォグランプ52が配置されているので、フォグランプ52を通気ダクト54外に配置してフロントバンパフェース26にフォグランプ52のための開口部を、走行風取り入れのバンパフェース開口部50とは別に設ける場合に比して、フォグランプ52のための開口部と走行風取り入れのバンパフェース開口部50とを区切る区切り壁分だけ、バンパフェース開口部50を大きく設定でき、通気ダクト54の空気通路56を流れる走行風の風量、ついてはインタクーラ100に供給される走行風の風量を増やすことができる。このことによってもインタクーラ100の冷却効率が向上する。
【0044】
また、上述の構成によれば、フォグランプ52のバルブ53の交換は、A点、B点、更にはC点、D点のクリップ、締結ボルトによる締結を外し、フロントホイールハウスインナフェンダ32との折曲連結線周りにサイドアンダカバー部32を下方に弾性変形させる。これによりダクト下方空間60が下方に開放され、この開放部よりダクト下方空間60、ダクト開口部62に手を入れ、フォグランプ52の後方に手を延ばすことにより行うことができる。
【0045】
これにより、フロントバンパフェース26の取り外し等、大掛かりが取り外し分解作業を要することなく、フォグランプ52のバルブ53の交換を簡便に行うことができる。
【0046】
このバルブ交換作業において、ダクト開口部62の周壁部63は、ダクト下方空間60よりダクト開口部62に手を入れた時の手の案内を行い、ダクト開口部62の板厚相当の縁部が手に当たる場合より、手に痛みを与えることが少なくなる。
【符号の説明】
【0047】
16 バルクヘッド組立体
20 ホイールハウスアッパメンバロア
26 フロントバンパフェース
30 フロントホイールアーチプロテクタ
32 フロントホイールハウスインナフェンダ(フロントホイールハウスメンバ)
34 サイドアンダカバー部
36 センタアンダカバー
42 ストレーキ
46 排気口
48 防御グリル部材
50 バンパフェース開口部
52 フォグランプ
54 通気ダクト
60 ダクト下方空間
62 ダクト開口部
63 周壁部
66 アンダカバー開口部
100 インタクーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントホイールハウスメンバと、前記フロントホイールハウスメンバより車体前方に配置され、車体前後方向に貫通するバンパフェース開口部を有するフロントバンパフェースと、前記フロントホイールハウスメンバと前記フロントバンパフェースとの間に配置された板状のアンダカバーとを有し、前記アンダカバーの上方位置にインタクーラを配置される車両の車体前部構造であって、
前記フロントバンパフェースと前記インタクーラの車体前方側の空気入口との間に、前記バンパフェース開口部より前記インタクーラの空気入口へ走行風を導く空気通路を画定する通気ダクトが配置され、
前記フロントホイールハウスメンバには前記インタクーラの車体後方側の空気出口よりの空気を前記フロントホイールハウスメンバの内側に排出する排気口が貫通形成され、
前記アンダカバーには車体幅方向に幅を有して当該アンダカバーの下底面より車体下方に垂下され、車体前側面に走行風が衝突する板状のストレーキが設けられている車体前部構造。
【請求項2】
前記通気ダクトには、当該通気ダクトの空気通路と、当該通気ダクトと前記アンダカバーとの間に画定されたダクト下方空間とを連通するダクト開口部が形成され、
前記アンダカバーには、前記ダクト下方空間と前記アンダカバーの前記ストレーキの配置位置より車体後方の下方空間とを連通するアンダカバー開口部が形成されている請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記通気ダクト内にフォグランプが配置される請求項1または2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記ダクト開口部は、前記フォグランプの配置位置より車体後方に位置する部分を含み、前記フォグランプのバルブ交換のためのメンテナンス用開口を兼ねている請求項3に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記通気ダクトは、前記ダクト開口部の周縁に、当該ダクト開口部の開口方向に起立した周壁部を有する請求項4に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171481(P2012−171481A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35015(P2011−35015)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】