車体前部構造
【課題】ヘッドライトとバンパフェイスとの見切り合せの建て付けがよく、軽衝突時の衝撃吸収性がよい車体前部構造を提供すること。
【解決手段】フロントバンパビームアッシ4は、ヘッドライト2と、バンパフェイス20とを支持する部材である。フロントバンパビームアッシ4は、ヘッドライト2と前記バンパフェイス10とを支持するフロントアッパビーム41と、このフロントアッパビーム41の車体中心側端部41aに連結されると共に、フロントバルクヘッド5の角部上面5aに固定されたフロントアッパビームブラケット42と、から形成されている。
【解決手段】フロントバンパビームアッシ4は、ヘッドライト2と、バンパフェイス20とを支持する部材である。フロントバンパビームアッシ4は、ヘッドライト2と前記バンパフェイス10とを支持するフロントアッパビーム41と、このフロントアッパビーム41の車体中心側端部41aに連結されると共に、フロントバルクヘッド5の角部上面5aに固定されたフロントアッパビームブラケット42と、から形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体前部には、車両前方を照明するヘッドライトと、衝突時の衝突エネルギーを吸収するためのバンパフェイス等が設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているように、ヘッドライトは、その下部中央寄りが、鋼板製のプレス成形品であるバンパアームに固定されたビームブラケットを介してフロントバルクヘッドに締結され、その下部外端が、サポートブラケットを介してホイールハウスメンバに締結されている。
【0004】
また、フロントバルクヘッド及びホイールハウスメンバには、フロントバンパビームアッシ(バンパアッパビーム)が固定され、このフロントバンパビームアッシによってフロントバンパの上端が保持されている。
【0005】
ビームブラケットは、断面コ字状に形成された薄鋼板のプレス成形品であり、フロントバンパビームアッシの下面に溶接されている。サポートブラケットは、略Z字状に形成された薄鋼板のプレス成形品であり、フロントバンパビームアッシの下面に溶接されている。
【0006】
また、特許文献2には、樹脂製のリインフォースメントによりバンパフェイスとヘッドライトを車体に取り付ける構造が開示されている。
フロントバンパビームアッシは、バンパフェイスとヘッドライトとを車体に取り付ける際に、バンパフェイスとヘッドライトとの見切り合わせの建て付け(隙間管理)の基準となる機能と、車両衝突時の衝突エネルギーを吸収する吸収性と、を兼ね備えている必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−90916号公報(段落[0011]、[0016]及び図2)
【特許文献2】特許第4029379号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の車体前部構造では、ヘッドライトの下面が下向きにく字状にデザインされた車両の場合、鋼板製のフロントバンパビームアッシ(バンパアッパビーム)を折曲形成しなければならないが、く字状に折曲形成するのが困難であるため、二部品を溶接して構成しなければならないという問題点があった。
二部品を溶接してフロントバンパビームアッシを形成する場合には、二部品同士の溶接部がずれてヘッドライトとバンパフェイスとの見切り合せの建て付け(隙間管理)が困難で、建て付けがばらつくという問題点があった。
【0009】
また、特許文献2に記載された従来の車体前部構造は、樹脂製のリインフォースメントを車体に取り付けるための取付片が、軽衝突時の衝撃によって破断し、衝突エネルギーの吸収性が減少するという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、前記問題点を解消すべく発明されたものであり、ヘッドライトとバンパフェイスとの見切り合せの建て付けがよく、軽衝突時の衝撃吸収性がよい車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の車体前部構造は、ヘッドライトと、バンパフェイスとを支持するフロントバンパビームアッシを備えた車体前部構造であって、前記フロントバンパビームアッシは、前記ヘッドライトと前記バンパフェイスとを支持するフロントアッパビームと、当該フロントアッパビームの車体中心側端部に連結されると共に、フロントバルクヘッドの角部上面に固定されたフロントアッパビームブラケットと、から形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、車体前部構造は、フロントバンパビームアッシが、フロントアッパビームの車体中心側端部に、フロントバルクヘッドの角部上面に結合するフロントアッパビームブラケットを位置決めして固定されているため、ヘッドライトとバンパフェイスとの見切り合せの建付けがばらつくのを防止して、隙間の偏差を少なくすることができる。
また、フロントアッパビームブラケットをフロントバルクヘッドの角部上面に固定して、軽衝突時にフロントアッパビームブラケットが変形して衝突エネルギーを吸収するため、安定的な衝突性能を得ることができる。このため、車両が、正面軽衝突した場合、フロントバルクヘッドの変形を抑制することができるので、修理費を低減させることができる。
【0013】
請求項2に記載の車体前部構造は、請求項1に記載の車体前部構造であって、前記フロントバンパビームアッシは、前記フロントアッパビームブラケットの下端部をL字状に折り曲げ、そのL字状の垂直面に形成された位置決め孔に前記フロントアッパビームに形成したボスを嵌合して位置決めし、前記L字状の水平面に形成した締結孔に締結具を装着して前記フロントアッパビームに締結されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、フロントバンパビームアッシは、フロントアッパビームブラケットのL字状の垂直面にある位置決め孔に、フロントアッパビームのボスを嵌合して位置決めした上で、L字状の水平面にある締結孔に締結具を挿入して締結している。このため、フロントバンパビームアッシを車体に取り付ける際の取り付け精度を向上させることができる。
【0015】
請求項3に記載の車体前部構造は、請求項1または請求項2に記載の車体前部構造であって、前記フロントアッパビームは、前記フロントサイドフレーム側に形成した取付片を、前記フロントサイドフレームの前方部に締結していることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、フロントバンパビームアッシには、フロントサイドフレームの前方部に締結する取付片を有することにより、この取付片によって、車体への組付時に、前後方向の位置決めをすることができる。その際に、フロントアッパビームブラケットの上端は、フロントバルクヘッドの角部上面に固定させるため、前後方向の位置決めに支障がなく車体に取り付けることができる。
そして、軽衝突時には、強度の高いフロントサイドフレームによりフロントサイドフレーム側の取付片が破壊するので、フロントサイドフレームの変形がなく、修理費を低減することができる。
【0017】
請求項4に記載の車体前部構造は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車体前部構造であって、前記フロントアッパビームは、フェンダ側に形成した取付片を、アッパメンバに固定されるフェンダ延長部の側面に締結していることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、フロントアッパビームは、フェンダ側の取付片をアッパメンバに固定されるフェンダ延長部の側面に締結したことによって、フロントサイドフレーム側の取付片の前後方向の位置決めに支障なく取り付けることができる。
【0019】
請求項5に記載の車体前部構造は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車体前部構造であって、前記フロントアッパビームブラケットは、断面コ字形状で長手方向に略く字状に屈曲して形成したビード部を有することを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、フロントアッパビームブラケットは、断面コ字形状で長手方向に略く字状に屈曲したビード部を有することによって、車両が軽衝突した際に、ビード部がくの字の開く方向に変形するため、衝突エネルギーを吸収する。
【0021】
請求項6に記載の車体前部構造は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車体前部構造であって、前記フロントアッパビームは、前記ヘッドライトの下面に沿って屈曲した屈曲部を有することを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、フロントアッパビームは、ヘッドライトの下面に沿って屈曲した屈曲部を有することによって、屈局部がヘッドライドの設置を邪魔することがないため、ヘッドライトのデザインを自由に変更することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る車体前部構造によれば、ヘッドライト及びバンパフェイスを車体に取り付ける際に、フロントバンパビームアッシが位置決めして固定されるので、ヘッドライトとバンパフェイスとの見切り合せの建付けがばらつくのを防止して、隙間の偏差を少なくすることができるため、車体に正確に取り付けることができる。
また、フロントバンパビームアッシは、軽衝突時にフロントアッパビームブラケットが変形して衝突エネルギーを吸収することができるので、軽衝突時の衝撃吸収性がよい車体前部構造を提供することができる。このため、車両が正面軽衝突した場合、フロントバルクヘッドの変形を抑制することができるので、修理費を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバンパビームアッシの設置状態を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバンパビームアッシの設置状態を示す要部拡大正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバンパビームアッシの設置状態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバンパビームアッシの設置状態を示す拡大平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントアッパビームブラケットとフロントアッパビームの連結部分の設置状態を示す要部拡大斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバンパビームアッシの設置状態を示す下面から見た斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントアッパビームの係合部とバンパフェイスの上フランジ部との係合状態を示す要部拡大斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバルクヘッドへのフロントアッパビームブラケットの取り付け状態を示す要部拡大斜視図である。
【図9】発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フェンダパネルへのフロントアッパビームブラケットの取り付け状態を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図9を参照して、本発明の実施形態に係る車体前部構造を説明する。
なお、本発明の実施形態では、「前」は車両Cのフロント側、「後」は車両Cのリア側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側、「左右」は車幅方向側とする。
【0026】
≪車両の構成≫
まず、本発明の実施形態に係る車体前部構造を説明する前に、本発明が採用される車両Cについて説明する。
図1に示すように、車両Cは、例えば、車体前部1aにバンパフェイス10(図7参照)、ヘッドライト2(図6参照)等を有する乗用車等であり、特に、車両Cの種類や形状等は限定されない。すなわち、車両Cは、乗用車や作業車等であってもよく、以下、ボンネットBを有する乗用車を例に挙げて説明する。
【0027】
≪車体の構成≫
図1に示すように、車体1は、車両Cの全体を形成するためのものであって、例えば、フロントサイドフレーム6等の種々の金属製車体フレームと、ボンネットB、フェンダパネル7等の金属製車体パネルと、樹脂製または金属製からなるバンパフェイス10(図7参照)等を主に備えている。
車体前部1aには、それぞれ後記するバンパビーム3と、フロントサイドフレーム6,6と、アッパメンバ8,8と、フェンダパネル7,7と、フロントバンパビームエクステンション11,11と、フロントバルクヘッドサイドサポート9,9と、フロントバルクヘッド5と、フロントバンパビームアッシ4と、がそれぞれ左右一対に設けられている。
車体前部1aは、略左右対称であるため、以下、車体1の左側を主に説明して、車体1の右側の説明を適宜省略する。
【0028】
≪バンパフェイス及びバンパビームの構成≫
バンパフェイス10(図7参照)は、衝突時の衝撃を緩和する衝撃緩和材であり、車体1の最前端部に左右方向に向けて延設されている。バンパフェイス10は、弾性を有する合成樹脂、あるいは弾性を有し比較的薄肉の金属等によって形成されている。バンパフェイス10の内部には、エネルギー吸収部材13,14及びバンパビーム3が設置され、バンパフェイス10はこのバンパビーム3に取り付けられている。
図1に示すように、バンパビーム3は、車体前部1aに配置され車幅方向に延在された鋼材からなる骨格部材であり、左右のフロントバンパビームエクステンション11の前端に架設されている。このバンパビーム3の前面には、エネルギー吸収部材13,14が固定されている。
【0029】
≪フロントサイドフレームの構成≫
図1に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム6は、車体1の骨格の一部を形成するフレーム部材であり、車両Cの前後方向に沿って延設されている。このフロントサイドフレーム6は、例えば、断面ロ字状のスチール製角パイプ材等から形成されている。フロントサイドフレーム6の前端部には、フロントバンパビームエクステンション11がボルト締めされている。
【0030】
≪アッパメンバの構成≫
アッパメンバ8は、エンジンルームの上部左右端部及び上部前面部を形成する骨格部材であり、フロントサイドフレーム6の外側上部にそれぞれ設けられた左右一対の部材である。アッパメンバ8は、後記するフロントバルクヘッド5及びフロントバルクヘッドサイドサポート9を含み、例えば、平面視してエンジンルームを囲むように略U字形状に配置される金属製厚板部材によって形成されている。
【0031】
≪フェンダパネルの構成≫
図2に示すように、フェンダパネル7は、アッパメンバ8,8の左右外側にそれぞれ設けられた左右一対のパネル部材であり、エンジンルームの左右外壁を形成している。フェンダパネル7には、このフェンダパネル7をアッパメンバ8及びフロントアッパビーム41に固定するために、車体内側方向に延出形成されたフェンダ延長部7aが形成されている。
【0032】
≪フロントバンパビームエクステンションの構成≫
図1及び図2に示すように、フロントバンパビームエクステンション11は、衝突時に衝撃エネルギーで潰れることによって衝撃を吸収するための衝撃吸収部材であり、フロントサイドフレーム6,6の前端にそれぞれ連結された左右一対の部材からなる。このフロントバンパビームエクステンション11には、フロントアッパビーム41が載設される。
【0033】
≪フロントバルクヘッドサイドサポートの構成≫
図1及び図2に示すように、フロントバルクヘッドサイドサポート9は、アッパメンバ8の前端にそれぞれ連設された左右一対の部材であり、平面視して、フロントアッパビーム41に沿うように円弧状(図1参照)に形成されている。
【0034】
≪フロントバルクヘッドの構成≫
図1に示すように、フロントバルクヘッド5は、アッパメンバ8の前端部位(中央部位)を形成するフレーム部材であり、不図示のラジエータを支持する枠体の上側部分を形成している。このフロントバルクヘッド5は、左右のフロントバルクヘッドサイドサポート9,9の前端部9a,9a間に架設するように介在して連続配置されている。
図8に示すように、フロントバルクヘッド5の角部上面5aには、後記するフロントアッパビームブラケット42の車体中心側後端部に形成されたバルクヘッド締結部42hが締結具T1によって固定される。
【0035】
≪フロントバンパビームアッシの構成≫
図1に示すフロントバンパビームアッシ4は、ヘッドライト2(図6参照)と、バンパフェイス10(図7参照)とを支持する機能と共に、衝突時に、衝突エネルギーを吸収する機能とを備えたフレーム部材である。このフロントバンパビームアッシ4は、樹脂製のフロントアッパビーム41と、金属製のフロントアッパビームブラケット42とを連結して形成されている。このフロントバンパビームアッシ4は、フロントバルクヘッド5及びフェンダパネル7の前側部位と、フロントバンパビームエクステンション11との前方部部位に固定される。
【0036】
図5に示すように、フロントバンパビームアッシ4は、フロントアッパビームブラケット42の下端部42aをL字状に折り曲げ、そのL字状の垂直面42cに形成された位置決め孔42fにフロントアッパビーム41に形成したボス41bを嵌合して位置決めし、L字状の水平面42dに形成した締結孔42gに締結具T2を装着してフロントアッパビーム41に締結することにより、このフロントアッパビーム41とフロントアッパビームブラケット42とを連結している。
【0037】
<フロントアッパビームの構成>
図1に示すフロントアッパビーム41は、前記ヘッドライト2(図6参照)とバンパフェイス10(図7参照)とを支持するためのフレーム部材であり、平面視して円弧状に形成された断面コ字状の樹脂製のフレーム部材からなる。
図2に示すように、フロントアッパビーム41の車幅方向の外側後端は、フェンダパネル7側に形成された取付片41dを、フェンダパネル7の外周部から延設されたフェンダ延長部7aの側面に締結具T3によって締結して固定されている。
【0038】
図6に示すように、フロントアッパビーム41には、前記ボス41bと、フロントサイドフレーム用の取付片41cと、前記フェンダ用の取付片41dと、屈曲部41eと、ヘッドライト用の取付片41fと、係止片41gと、係合部41h(図2及び図7参照)と、締結孔41i(図3及び図6参照)と、リブ41kと、ロ字状部41m(図4参照)と、が一体形成されている。
【0039】
図3に示すように、車体中心側端部41aは、フロントアッパビーム41の車体中心側の部位であり、フロントアッパビームブラケット42が連結される。この車体中心側端部41aは、車両Cの前後方向に延設されている。
【0040】
図5に示すように、前記ボス41bは、車体中心側端部41aの後端面に形成された突起である。このボス41bは、位置決め孔42fに嵌合することによって、フロントアッパビーム41と、フロントアッパビームブラケット42との位置合わせを行う。
【0041】
図3に戻って、取付片41cは、フロントサイドフレーム6の前端部に固定するための縦断面視してコ字状の突出部分であり、車体中心側寄りの位置から後方に向けて延出形成されている。取付片41cの先端部(後端部)は、フロントサイドフレーム6の前端の鍔状部分に固定されている。
【0042】
図9に示すように、前記フェンダ側の取付片41dは、上側を略水平に折曲形成して、縦断面視して略L字状に形成されている。その取付片41dの垂直面部には、フロントアッパビーム41をフェンダパネル7のフェンダ延長部7aに固定するための締結具T3が締結される締結孔41iが形成されている。
【0043】
図3に示すように、屈曲部41eは、ヘッドライト2の車外側の下面を支持する部位であり、ヘッドライト2の下面に沿って屈曲して形成されている(図6参照)。屈曲部41eの上面には、バンパフェイス10(図7参照)の上フランジ10aを係止するための複数の係止片41g(図2及び図4参照)と係合部41hとが、予め設定された適宜な間隔で形成されている。屈曲部41eの下面は、縦断面視してコ字状に形成されると共に、さらに、この屈曲部41eの下面に補強用のリブ41k(図6参照)が予め設定された適宜な間隔で多数形成されて強度が向上されている。
図6に示すように、ヘッドライト用の取付片41fは、ヘッドライト2の下面中央部や、その他の組付品(図示省略)を保持する突出片であり、ボルト締めするためのボルト(図示省略)が挿入される孔が穿設されている。
【0044】
図7に示すように、前記係止片41gは、側面視して鉤状(略L字状)に折曲した状態に形成された弾性係止片であり、バンパフェイス10の上フランジ10aが鉤状の係止片41g内に挿入される。
【0045】
前記係合部41hは、バンパフェイス10の上フランジ10aに形成された係合穴10bが係合することにより、バンパフェイス10をフロントバンパビームアッシ4に係止させるための部位である。図2に示すように、この係合部41hは、係止片41gの近傍に形成されている。
【0046】
図6に示すように、前記リブ41kは、フロントアッパビーム41の下面に全体に亘って短手方向に向けて適宜な間隔で節目状に一体形成された板状のものからなる。
【0047】
図4に示すように、ロ字状部41mは、車体中心側端部41a及び取付片41cを補強するために、平面視して四角形に形成された部位である。ロ字状部41mは、フロントサイドフレーム連結用の取付片41cの強度を向上させる働きがある。
【0048】
<フロントアッパビームブラケットの構成>
図1に示すように、フロントアッパビームブラケット42は、フロントアッパビーム41をフロントバルクヘッド5に固定するため金属製の部材であり、フロントバルクヘッド5から前方に延設されている。フロントアッパビームブラケット42は、一端部(前端部)が、フロントアッパビーム41の車体中心側端部41aに連結され、他端部(後端部)が、フロントバルクヘッド5の角部上面5aに固定される。フロントアッパビームブラケット42は、プレスで帯状の鋼板を折曲加工して形成される。
【0049】
図6に示すように、フロントアッパビームブラケット42には、下端部42aと、折曲部42b(図5参照)と、垂直面42cと、水平面42dと、ビード部42eと、位置決め孔42fと、締結孔42gと、バルクヘッド締結部42hと、補強用折曲部42iと、が形成されている。
【0050】
図5に示すように、前記下端部42aは、フロントアッパビームブラケット42とフロントアッパビーム41とを連結する連結部位であり、平面視してバルクヘッド締結部42h(図4参照)よりも下方に配置されている。
【0051】
前記したように折曲部42bは、前記下端部42aをL字状に折曲した箇所であり、垂直面42cと水平面42dとからなる。折曲部42bは、フロントアッパビーム41の車体中心側端部41aの後方面に宛がうようにして配置される。
垂直面42cの中央には、ボス41bが挿入される位置決め孔42fが穿設されている。
水平面42dの中央には、締結具T2が挿入される締結孔42gが穿設されている。これにより、水平面42dは、車体中心側端部41aの下面に締結される。
【0052】
図6に示すように、ビード部42eは、前記折曲部42bとバルクヘッド締結部42hとの間をいい、断面コ字形状(断面視して凹部状)に形成されることによって補強されると共に、長手方向に略く字状に屈曲して形成されている。
【0053】
図8に示すように、バルクヘッド締結部42hは、フロントアッパビームブラケット42をフロントバルクヘッド5に締結具T1によって締結するための固定部位であり、最上部(最後端部)に形成されている。
【0054】
図5及び図8に示すように、補強用折曲部42iは、フロントアッパビームブラケット42の左右縁部を直角に折曲して補強した部分であり、フロントアッパビームブラケット42に沿って左右縁部に形成されている。
【0055】
≪車体前部構造の作用≫
次に、図1〜図9を参照して本発明の実施形態に係る車体前部構造の作用を説明する。
【0056】
図5に示すように、フロントアッパビーム41とフロントアッパビームブラケット42とは、折曲部42b及び補強用折曲部42iを車体中心側端部41aに宛がうように配置して、ボス41bを位置決め孔42fに挿入した上で、締結具T2で水平面42dを車体中心側端部41aに締結することによって、互いに所定の状態に強固に連結してフロントバンパビームアッシ4を形成することができる。このため、フロントバンパビームアッシ4を車体1に取り付ける際の取り付け精度を向上させることができる。
【0057】
図3に示すように、フロントバンパビームアッシ4は、車体1に取り付ける際に、フロントアッパビーム41をバンパビーム3の上に載置した状態で、一端のバルクヘッド締結部42hをフロントバルクヘッド5に固定できると共に、他端の取付片41dをフェンダパネル7(図2参照)に固定できるため、取付作業が行い易い。
【0058】
フロントバンパビームアッシ4は、車体中心側端部41a側にあるバルクヘッド締結部42hをフロントバルクヘッド5の角部上面5aに締結具T1で締結することによって、フロントアッパビームブラケット42を位置決めしてから所定位置に固定できる。
このため、ヘッドライト2とバンパフェイス10との見切り合せの建付ける際に、、ヘッドライト2とバンパフェイス10とを予め設定した所定位置に正確に隙間無く取り付けることができる。
【0059】
また、フロントバンパビームアッシ4は、フロントアッパビームブラケット42をフロントバルクヘッド5の角部上面5aに固定して、軽衝突時にフロントアッパビームブラケット42が変形して衝突エネルギーを吸収するため、安定的な衝突性能を得ることができる。このため、車両Cが、正面軽衝突した場合、フロントバルクヘッド5の変形を抑制することができるので、修理費を低減させることができる。
【0060】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0061】
前記実施形態では、フロントアッパビームブラケット42を鋼板で形成した場合を説明したが、アルミニウム合金等のその他の金属で形成しても構わない。
【符号の説明】
【0062】
1 車体
2 ヘッドライト
4 フロントバンパビームアッシ
5 フロントバルクヘッド
5a 角部上面
6 フロントサイドフレーム
6a 前方部
7 フェンダパネル
7a フェンダ延長部
8 アッパメンバ
41 フロントアッパビーム
41a 車体中心側端部
41b ボス
41c,41d 取付片
41e 屈曲部
42 フロントアッパビームブラケット
42a 下端部
42c 垂直面
42d 水平面
42f 位置決め孔
42g 締結孔
T1,T2,T3 締結具
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体前部には、車両前方を照明するヘッドライトと、衝突時の衝突エネルギーを吸収するためのバンパフェイス等が設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているように、ヘッドライトは、その下部中央寄りが、鋼板製のプレス成形品であるバンパアームに固定されたビームブラケットを介してフロントバルクヘッドに締結され、その下部外端が、サポートブラケットを介してホイールハウスメンバに締結されている。
【0004】
また、フロントバルクヘッド及びホイールハウスメンバには、フロントバンパビームアッシ(バンパアッパビーム)が固定され、このフロントバンパビームアッシによってフロントバンパの上端が保持されている。
【0005】
ビームブラケットは、断面コ字状に形成された薄鋼板のプレス成形品であり、フロントバンパビームアッシの下面に溶接されている。サポートブラケットは、略Z字状に形成された薄鋼板のプレス成形品であり、フロントバンパビームアッシの下面に溶接されている。
【0006】
また、特許文献2には、樹脂製のリインフォースメントによりバンパフェイスとヘッドライトを車体に取り付ける構造が開示されている。
フロントバンパビームアッシは、バンパフェイスとヘッドライトとを車体に取り付ける際に、バンパフェイスとヘッドライトとの見切り合わせの建て付け(隙間管理)の基準となる機能と、車両衝突時の衝突エネルギーを吸収する吸収性と、を兼ね備えている必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−90916号公報(段落[0011]、[0016]及び図2)
【特許文献2】特許第4029379号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の車体前部構造では、ヘッドライトの下面が下向きにく字状にデザインされた車両の場合、鋼板製のフロントバンパビームアッシ(バンパアッパビーム)を折曲形成しなければならないが、く字状に折曲形成するのが困難であるため、二部品を溶接して構成しなければならないという問題点があった。
二部品を溶接してフロントバンパビームアッシを形成する場合には、二部品同士の溶接部がずれてヘッドライトとバンパフェイスとの見切り合せの建て付け(隙間管理)が困難で、建て付けがばらつくという問題点があった。
【0009】
また、特許文献2に記載された従来の車体前部構造は、樹脂製のリインフォースメントを車体に取り付けるための取付片が、軽衝突時の衝撃によって破断し、衝突エネルギーの吸収性が減少するという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、前記問題点を解消すべく発明されたものであり、ヘッドライトとバンパフェイスとの見切り合せの建て付けがよく、軽衝突時の衝撃吸収性がよい車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の車体前部構造は、ヘッドライトと、バンパフェイスとを支持するフロントバンパビームアッシを備えた車体前部構造であって、前記フロントバンパビームアッシは、前記ヘッドライトと前記バンパフェイスとを支持するフロントアッパビームと、当該フロントアッパビームの車体中心側端部に連結されると共に、フロントバルクヘッドの角部上面に固定されたフロントアッパビームブラケットと、から形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、車体前部構造は、フロントバンパビームアッシが、フロントアッパビームの車体中心側端部に、フロントバルクヘッドの角部上面に結合するフロントアッパビームブラケットを位置決めして固定されているため、ヘッドライトとバンパフェイスとの見切り合せの建付けがばらつくのを防止して、隙間の偏差を少なくすることができる。
また、フロントアッパビームブラケットをフロントバルクヘッドの角部上面に固定して、軽衝突時にフロントアッパビームブラケットが変形して衝突エネルギーを吸収するため、安定的な衝突性能を得ることができる。このため、車両が、正面軽衝突した場合、フロントバルクヘッドの変形を抑制することができるので、修理費を低減させることができる。
【0013】
請求項2に記載の車体前部構造は、請求項1に記載の車体前部構造であって、前記フロントバンパビームアッシは、前記フロントアッパビームブラケットの下端部をL字状に折り曲げ、そのL字状の垂直面に形成された位置決め孔に前記フロントアッパビームに形成したボスを嵌合して位置決めし、前記L字状の水平面に形成した締結孔に締結具を装着して前記フロントアッパビームに締結されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、フロントバンパビームアッシは、フロントアッパビームブラケットのL字状の垂直面にある位置決め孔に、フロントアッパビームのボスを嵌合して位置決めした上で、L字状の水平面にある締結孔に締結具を挿入して締結している。このため、フロントバンパビームアッシを車体に取り付ける際の取り付け精度を向上させることができる。
【0015】
請求項3に記載の車体前部構造は、請求項1または請求項2に記載の車体前部構造であって、前記フロントアッパビームは、前記フロントサイドフレーム側に形成した取付片を、前記フロントサイドフレームの前方部に締結していることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、フロントバンパビームアッシには、フロントサイドフレームの前方部に締結する取付片を有することにより、この取付片によって、車体への組付時に、前後方向の位置決めをすることができる。その際に、フロントアッパビームブラケットの上端は、フロントバルクヘッドの角部上面に固定させるため、前後方向の位置決めに支障がなく車体に取り付けることができる。
そして、軽衝突時には、強度の高いフロントサイドフレームによりフロントサイドフレーム側の取付片が破壊するので、フロントサイドフレームの変形がなく、修理費を低減することができる。
【0017】
請求項4に記載の車体前部構造は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車体前部構造であって、前記フロントアッパビームは、フェンダ側に形成した取付片を、アッパメンバに固定されるフェンダ延長部の側面に締結していることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、フロントアッパビームは、フェンダ側の取付片をアッパメンバに固定されるフェンダ延長部の側面に締結したことによって、フロントサイドフレーム側の取付片の前後方向の位置決めに支障なく取り付けることができる。
【0019】
請求項5に記載の車体前部構造は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車体前部構造であって、前記フロントアッパビームブラケットは、断面コ字形状で長手方向に略く字状に屈曲して形成したビード部を有することを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、フロントアッパビームブラケットは、断面コ字形状で長手方向に略く字状に屈曲したビード部を有することによって、車両が軽衝突した際に、ビード部がくの字の開く方向に変形するため、衝突エネルギーを吸収する。
【0021】
請求項6に記載の車体前部構造は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車体前部構造であって、前記フロントアッパビームは、前記ヘッドライトの下面に沿って屈曲した屈曲部を有することを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、フロントアッパビームは、ヘッドライトの下面に沿って屈曲した屈曲部を有することによって、屈局部がヘッドライドの設置を邪魔することがないため、ヘッドライトのデザインを自由に変更することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る車体前部構造によれば、ヘッドライト及びバンパフェイスを車体に取り付ける際に、フロントバンパビームアッシが位置決めして固定されるので、ヘッドライトとバンパフェイスとの見切り合せの建付けがばらつくのを防止して、隙間の偏差を少なくすることができるため、車体に正確に取り付けることができる。
また、フロントバンパビームアッシは、軽衝突時にフロントアッパビームブラケットが変形して衝突エネルギーを吸収することができるので、軽衝突時の衝撃吸収性がよい車体前部構造を提供することができる。このため、車両が正面軽衝突した場合、フロントバルクヘッドの変形を抑制することができるので、修理費を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバンパビームアッシの設置状態を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバンパビームアッシの設置状態を示す要部拡大正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバンパビームアッシの設置状態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバンパビームアッシの設置状態を示す拡大平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントアッパビームブラケットとフロントアッパビームの連結部分の設置状態を示す要部拡大斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバンパビームアッシの設置状態を示す下面から見た斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントアッパビームの係合部とバンパフェイスの上フランジ部との係合状態を示す要部拡大斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フロントバルクヘッドへのフロントアッパビームブラケットの取り付け状態を示す要部拡大斜視図である。
【図9】発明の実施形態に係る車体前部構造を示す図であり、フェンダパネルへのフロントアッパビームブラケットの取り付け状態を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図9を参照して、本発明の実施形態に係る車体前部構造を説明する。
なお、本発明の実施形態では、「前」は車両Cのフロント側、「後」は車両Cのリア側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側、「左右」は車幅方向側とする。
【0026】
≪車両の構成≫
まず、本発明の実施形態に係る車体前部構造を説明する前に、本発明が採用される車両Cについて説明する。
図1に示すように、車両Cは、例えば、車体前部1aにバンパフェイス10(図7参照)、ヘッドライト2(図6参照)等を有する乗用車等であり、特に、車両Cの種類や形状等は限定されない。すなわち、車両Cは、乗用車や作業車等であってもよく、以下、ボンネットBを有する乗用車を例に挙げて説明する。
【0027】
≪車体の構成≫
図1に示すように、車体1は、車両Cの全体を形成するためのものであって、例えば、フロントサイドフレーム6等の種々の金属製車体フレームと、ボンネットB、フェンダパネル7等の金属製車体パネルと、樹脂製または金属製からなるバンパフェイス10(図7参照)等を主に備えている。
車体前部1aには、それぞれ後記するバンパビーム3と、フロントサイドフレーム6,6と、アッパメンバ8,8と、フェンダパネル7,7と、フロントバンパビームエクステンション11,11と、フロントバルクヘッドサイドサポート9,9と、フロントバルクヘッド5と、フロントバンパビームアッシ4と、がそれぞれ左右一対に設けられている。
車体前部1aは、略左右対称であるため、以下、車体1の左側を主に説明して、車体1の右側の説明を適宜省略する。
【0028】
≪バンパフェイス及びバンパビームの構成≫
バンパフェイス10(図7参照)は、衝突時の衝撃を緩和する衝撃緩和材であり、車体1の最前端部に左右方向に向けて延設されている。バンパフェイス10は、弾性を有する合成樹脂、あるいは弾性を有し比較的薄肉の金属等によって形成されている。バンパフェイス10の内部には、エネルギー吸収部材13,14及びバンパビーム3が設置され、バンパフェイス10はこのバンパビーム3に取り付けられている。
図1に示すように、バンパビーム3は、車体前部1aに配置され車幅方向に延在された鋼材からなる骨格部材であり、左右のフロントバンパビームエクステンション11の前端に架設されている。このバンパビーム3の前面には、エネルギー吸収部材13,14が固定されている。
【0029】
≪フロントサイドフレームの構成≫
図1に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム6は、車体1の骨格の一部を形成するフレーム部材であり、車両Cの前後方向に沿って延設されている。このフロントサイドフレーム6は、例えば、断面ロ字状のスチール製角パイプ材等から形成されている。フロントサイドフレーム6の前端部には、フロントバンパビームエクステンション11がボルト締めされている。
【0030】
≪アッパメンバの構成≫
アッパメンバ8は、エンジンルームの上部左右端部及び上部前面部を形成する骨格部材であり、フロントサイドフレーム6の外側上部にそれぞれ設けられた左右一対の部材である。アッパメンバ8は、後記するフロントバルクヘッド5及びフロントバルクヘッドサイドサポート9を含み、例えば、平面視してエンジンルームを囲むように略U字形状に配置される金属製厚板部材によって形成されている。
【0031】
≪フェンダパネルの構成≫
図2に示すように、フェンダパネル7は、アッパメンバ8,8の左右外側にそれぞれ設けられた左右一対のパネル部材であり、エンジンルームの左右外壁を形成している。フェンダパネル7には、このフェンダパネル7をアッパメンバ8及びフロントアッパビーム41に固定するために、車体内側方向に延出形成されたフェンダ延長部7aが形成されている。
【0032】
≪フロントバンパビームエクステンションの構成≫
図1及び図2に示すように、フロントバンパビームエクステンション11は、衝突時に衝撃エネルギーで潰れることによって衝撃を吸収するための衝撃吸収部材であり、フロントサイドフレーム6,6の前端にそれぞれ連結された左右一対の部材からなる。このフロントバンパビームエクステンション11には、フロントアッパビーム41が載設される。
【0033】
≪フロントバルクヘッドサイドサポートの構成≫
図1及び図2に示すように、フロントバルクヘッドサイドサポート9は、アッパメンバ8の前端にそれぞれ連設された左右一対の部材であり、平面視して、フロントアッパビーム41に沿うように円弧状(図1参照)に形成されている。
【0034】
≪フロントバルクヘッドの構成≫
図1に示すように、フロントバルクヘッド5は、アッパメンバ8の前端部位(中央部位)を形成するフレーム部材であり、不図示のラジエータを支持する枠体の上側部分を形成している。このフロントバルクヘッド5は、左右のフロントバルクヘッドサイドサポート9,9の前端部9a,9a間に架設するように介在して連続配置されている。
図8に示すように、フロントバルクヘッド5の角部上面5aには、後記するフロントアッパビームブラケット42の車体中心側後端部に形成されたバルクヘッド締結部42hが締結具T1によって固定される。
【0035】
≪フロントバンパビームアッシの構成≫
図1に示すフロントバンパビームアッシ4は、ヘッドライト2(図6参照)と、バンパフェイス10(図7参照)とを支持する機能と共に、衝突時に、衝突エネルギーを吸収する機能とを備えたフレーム部材である。このフロントバンパビームアッシ4は、樹脂製のフロントアッパビーム41と、金属製のフロントアッパビームブラケット42とを連結して形成されている。このフロントバンパビームアッシ4は、フロントバルクヘッド5及びフェンダパネル7の前側部位と、フロントバンパビームエクステンション11との前方部部位に固定される。
【0036】
図5に示すように、フロントバンパビームアッシ4は、フロントアッパビームブラケット42の下端部42aをL字状に折り曲げ、そのL字状の垂直面42cに形成された位置決め孔42fにフロントアッパビーム41に形成したボス41bを嵌合して位置決めし、L字状の水平面42dに形成した締結孔42gに締結具T2を装着してフロントアッパビーム41に締結することにより、このフロントアッパビーム41とフロントアッパビームブラケット42とを連結している。
【0037】
<フロントアッパビームの構成>
図1に示すフロントアッパビーム41は、前記ヘッドライト2(図6参照)とバンパフェイス10(図7参照)とを支持するためのフレーム部材であり、平面視して円弧状に形成された断面コ字状の樹脂製のフレーム部材からなる。
図2に示すように、フロントアッパビーム41の車幅方向の外側後端は、フェンダパネル7側に形成された取付片41dを、フェンダパネル7の外周部から延設されたフェンダ延長部7aの側面に締結具T3によって締結して固定されている。
【0038】
図6に示すように、フロントアッパビーム41には、前記ボス41bと、フロントサイドフレーム用の取付片41cと、前記フェンダ用の取付片41dと、屈曲部41eと、ヘッドライト用の取付片41fと、係止片41gと、係合部41h(図2及び図7参照)と、締結孔41i(図3及び図6参照)と、リブ41kと、ロ字状部41m(図4参照)と、が一体形成されている。
【0039】
図3に示すように、車体中心側端部41aは、フロントアッパビーム41の車体中心側の部位であり、フロントアッパビームブラケット42が連結される。この車体中心側端部41aは、車両Cの前後方向に延設されている。
【0040】
図5に示すように、前記ボス41bは、車体中心側端部41aの後端面に形成された突起である。このボス41bは、位置決め孔42fに嵌合することによって、フロントアッパビーム41と、フロントアッパビームブラケット42との位置合わせを行う。
【0041】
図3に戻って、取付片41cは、フロントサイドフレーム6の前端部に固定するための縦断面視してコ字状の突出部分であり、車体中心側寄りの位置から後方に向けて延出形成されている。取付片41cの先端部(後端部)は、フロントサイドフレーム6の前端の鍔状部分に固定されている。
【0042】
図9に示すように、前記フェンダ側の取付片41dは、上側を略水平に折曲形成して、縦断面視して略L字状に形成されている。その取付片41dの垂直面部には、フロントアッパビーム41をフェンダパネル7のフェンダ延長部7aに固定するための締結具T3が締結される締結孔41iが形成されている。
【0043】
図3に示すように、屈曲部41eは、ヘッドライト2の車外側の下面を支持する部位であり、ヘッドライト2の下面に沿って屈曲して形成されている(図6参照)。屈曲部41eの上面には、バンパフェイス10(図7参照)の上フランジ10aを係止するための複数の係止片41g(図2及び図4参照)と係合部41hとが、予め設定された適宜な間隔で形成されている。屈曲部41eの下面は、縦断面視してコ字状に形成されると共に、さらに、この屈曲部41eの下面に補強用のリブ41k(図6参照)が予め設定された適宜な間隔で多数形成されて強度が向上されている。
図6に示すように、ヘッドライト用の取付片41fは、ヘッドライト2の下面中央部や、その他の組付品(図示省略)を保持する突出片であり、ボルト締めするためのボルト(図示省略)が挿入される孔が穿設されている。
【0044】
図7に示すように、前記係止片41gは、側面視して鉤状(略L字状)に折曲した状態に形成された弾性係止片であり、バンパフェイス10の上フランジ10aが鉤状の係止片41g内に挿入される。
【0045】
前記係合部41hは、バンパフェイス10の上フランジ10aに形成された係合穴10bが係合することにより、バンパフェイス10をフロントバンパビームアッシ4に係止させるための部位である。図2に示すように、この係合部41hは、係止片41gの近傍に形成されている。
【0046】
図6に示すように、前記リブ41kは、フロントアッパビーム41の下面に全体に亘って短手方向に向けて適宜な間隔で節目状に一体形成された板状のものからなる。
【0047】
図4に示すように、ロ字状部41mは、車体中心側端部41a及び取付片41cを補強するために、平面視して四角形に形成された部位である。ロ字状部41mは、フロントサイドフレーム連結用の取付片41cの強度を向上させる働きがある。
【0048】
<フロントアッパビームブラケットの構成>
図1に示すように、フロントアッパビームブラケット42は、フロントアッパビーム41をフロントバルクヘッド5に固定するため金属製の部材であり、フロントバルクヘッド5から前方に延設されている。フロントアッパビームブラケット42は、一端部(前端部)が、フロントアッパビーム41の車体中心側端部41aに連結され、他端部(後端部)が、フロントバルクヘッド5の角部上面5aに固定される。フロントアッパビームブラケット42は、プレスで帯状の鋼板を折曲加工して形成される。
【0049】
図6に示すように、フロントアッパビームブラケット42には、下端部42aと、折曲部42b(図5参照)と、垂直面42cと、水平面42dと、ビード部42eと、位置決め孔42fと、締結孔42gと、バルクヘッド締結部42hと、補強用折曲部42iと、が形成されている。
【0050】
図5に示すように、前記下端部42aは、フロントアッパビームブラケット42とフロントアッパビーム41とを連結する連結部位であり、平面視してバルクヘッド締結部42h(図4参照)よりも下方に配置されている。
【0051】
前記したように折曲部42bは、前記下端部42aをL字状に折曲した箇所であり、垂直面42cと水平面42dとからなる。折曲部42bは、フロントアッパビーム41の車体中心側端部41aの後方面に宛がうようにして配置される。
垂直面42cの中央には、ボス41bが挿入される位置決め孔42fが穿設されている。
水平面42dの中央には、締結具T2が挿入される締結孔42gが穿設されている。これにより、水平面42dは、車体中心側端部41aの下面に締結される。
【0052】
図6に示すように、ビード部42eは、前記折曲部42bとバルクヘッド締結部42hとの間をいい、断面コ字形状(断面視して凹部状)に形成されることによって補強されると共に、長手方向に略く字状に屈曲して形成されている。
【0053】
図8に示すように、バルクヘッド締結部42hは、フロントアッパビームブラケット42をフロントバルクヘッド5に締結具T1によって締結するための固定部位であり、最上部(最後端部)に形成されている。
【0054】
図5及び図8に示すように、補強用折曲部42iは、フロントアッパビームブラケット42の左右縁部を直角に折曲して補強した部分であり、フロントアッパビームブラケット42に沿って左右縁部に形成されている。
【0055】
≪車体前部構造の作用≫
次に、図1〜図9を参照して本発明の実施形態に係る車体前部構造の作用を説明する。
【0056】
図5に示すように、フロントアッパビーム41とフロントアッパビームブラケット42とは、折曲部42b及び補強用折曲部42iを車体中心側端部41aに宛がうように配置して、ボス41bを位置決め孔42fに挿入した上で、締結具T2で水平面42dを車体中心側端部41aに締結することによって、互いに所定の状態に強固に連結してフロントバンパビームアッシ4を形成することができる。このため、フロントバンパビームアッシ4を車体1に取り付ける際の取り付け精度を向上させることができる。
【0057】
図3に示すように、フロントバンパビームアッシ4は、車体1に取り付ける際に、フロントアッパビーム41をバンパビーム3の上に載置した状態で、一端のバルクヘッド締結部42hをフロントバルクヘッド5に固定できると共に、他端の取付片41dをフェンダパネル7(図2参照)に固定できるため、取付作業が行い易い。
【0058】
フロントバンパビームアッシ4は、車体中心側端部41a側にあるバルクヘッド締結部42hをフロントバルクヘッド5の角部上面5aに締結具T1で締結することによって、フロントアッパビームブラケット42を位置決めしてから所定位置に固定できる。
このため、ヘッドライト2とバンパフェイス10との見切り合せの建付ける際に、、ヘッドライト2とバンパフェイス10とを予め設定した所定位置に正確に隙間無く取り付けることができる。
【0059】
また、フロントバンパビームアッシ4は、フロントアッパビームブラケット42をフロントバルクヘッド5の角部上面5aに固定して、軽衝突時にフロントアッパビームブラケット42が変形して衝突エネルギーを吸収するため、安定的な衝突性能を得ることができる。このため、車両Cが、正面軽衝突した場合、フロントバルクヘッド5の変形を抑制することができるので、修理費を低減させることができる。
【0060】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0061】
前記実施形態では、フロントアッパビームブラケット42を鋼板で形成した場合を説明したが、アルミニウム合金等のその他の金属で形成しても構わない。
【符号の説明】
【0062】
1 車体
2 ヘッドライト
4 フロントバンパビームアッシ
5 フロントバルクヘッド
5a 角部上面
6 フロントサイドフレーム
6a 前方部
7 フェンダパネル
7a フェンダ延長部
8 アッパメンバ
41 フロントアッパビーム
41a 車体中心側端部
41b ボス
41c,41d 取付片
41e 屈曲部
42 フロントアッパビームブラケット
42a 下端部
42c 垂直面
42d 水平面
42f 位置決め孔
42g 締結孔
T1,T2,T3 締結具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドライトと、バンパフェイスとを支持するフロントバンパビームアッシを備えた車体前部構造であって、
前記フロントバンパビームアッシは、前記ヘッドライトと前記バンパフェイスとを支持するフロントアッパビームと、
当該フロントアッパビームの車体中心側端部に連結されると共に、フロントバルクヘッドの角部上面に固定されたフロントアッパビームブラケットと、から形成されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記フロントバンパビームアッシは、前記フロントアッパビームブラケットの下端部をL字状に折り曲げ、そのL字状の垂直面に形成された位置決め孔に前記フロントアッパビームに形成したボスを嵌合して位置決めし、前記L字状の水平面に形成した締結孔に締結具を装着して前記フロントアッパビームに締結されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記フロントアッパビームは、前記フロントサイドフレーム側に形成した取付片を、前記フロントサイドフレームの前方部に締結していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記フロントアッパビームは、フェンダ側に形成した取付片を、アッパメンバに固定されるフェンダ延長部の側面に締結していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記フロントアッパビームブラケットは、断面コ字形状で長手方向に略く字状に屈曲して形成したビード部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記フロントアッパビームは、前記ヘッドライトの下面に沿って屈曲した屈曲部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項1】
ヘッドライトと、バンパフェイスとを支持するフロントバンパビームアッシを備えた車体前部構造であって、
前記フロントバンパビームアッシは、前記ヘッドライトと前記バンパフェイスとを支持するフロントアッパビームと、
当該フロントアッパビームの車体中心側端部に連結されると共に、フロントバルクヘッドの角部上面に固定されたフロントアッパビームブラケットと、から形成されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記フロントバンパビームアッシは、前記フロントアッパビームブラケットの下端部をL字状に折り曲げ、そのL字状の垂直面に形成された位置決め孔に前記フロントアッパビームに形成したボスを嵌合して位置決めし、前記L字状の水平面に形成した締結孔に締結具を装着して前記フロントアッパビームに締結されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記フロントアッパビームは、前記フロントサイドフレーム側に形成した取付片を、前記フロントサイドフレームの前方部に締結していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記フロントアッパビームは、フェンダ側に形成した取付片を、アッパメンバに固定されるフェンダ延長部の側面に締結していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記フロントアッパビームブラケットは、断面コ字形状で長手方向に略く字状に屈曲して形成したビード部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記フロントアッパビームは、前記ヘッドライトの下面に沿って屈曲した屈曲部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−62017(P2012−62017A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209721(P2010−209721)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]