説明

車体前部構造

【課題】エンジンルーム内に配置されるキャニスタを、バッテリなどから保護することを可能にする。
【解決手段】蒸発燃料を吸着するキャニスタ42と、このキャニスタ42の前方に配置されたバッテリ44と、車両10の制動力を制御するブレーキ力制御部43と、車両10のエンジン41の前方に配置されて車幅方向に延びるフロントフレーム(フロントバルクヘッド)16と、エンジン41の左右方向にそれぞれ配置されたフロントサイドフレーム15,15と、からなるエンジンルーム13を有する。車体前部構造において、キャニスタ42とブレーキ力制御部43を収容する筺体46とを、エンジンルーム13内に配置し、ブレーキ力制御部43の筺体46の前面46aを、キャニスタ42の前面42aよりも前方に位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルーム内に蒸発燃料を吸着するキャニスタを配置した車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、燃料タンクの直前に、大容量の第1のキャニスタが配置され、この第1のキャニスタが大径の第1ベント配管を介して燃料タンクに接続され、車体の前部のエンジンルーム内にてエンジンとバルクヘッドとの間に、小容量の第2のキャニスタが配置され、この第2のキャニスタが小径の第2ベント配管を介して第1キャニスタの大気ポートに接続されたものである。
【0003】
この車体前部構造によれば、キャニスタを、第1のキャニスタ及び第2のキャニスタに分割構成したので、キャニスタの総容量を小さくしても給油時に発生する多量の蒸留ガスを吸着することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−246966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の車体前部構造は、エンジンルーム内に且つエンジンとバルクヘッドとの間に、第2のキャニスタ(以下「キャニスタ」と記載する)が配置されている。
キャニスタが、車両のレイアウト上、エンジンルーム内に配置したものでは、車両に衝突(前突又は側突)が発生した際に、エンジンルーム内に配置されたアッパメンバやフロントサイドフレームがキャニスタに当接したり、バルクヘッドやフロントサイドメンバに押されてエンジンルーム内のバッテリなどがキャニスタに当たることがある。これにより、キャニスタに過大な衝撃が加わる。従って、エンジンルーム内のバッテリなどからキャニスタの保護を図る必要がある。
【0006】
本発明は、エンジンルーム内に配置されるキャニスタを、バッテリなどから保護することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、蒸発燃料を吸着するキャニスタと、このキャニスタの前方に配置されたバッテリと、車両の制動力を制御するブレーキ力制御部と、車両のエンジンの前方に配置されて車幅方向に延びるフロントフレームと、エンジンの左右方向にそれぞれ配置されたフロントサイドフレームと、からなるエンジンルームを有する車体前部構造において、キャニスタとブレーキ力制御部を収容する筺体とを、エンジンルーム内に配置し、ブレーキ力制御部の筺体の前面を、キャニスタの前面よりも前方に位置させたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、キャニスタを、ブレーキ力制御部の筺体よりも上方で、且つエンジンの後方に配置したダッシュパネルに固定したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、キャニスタの前後方向の長さが、ブレーキ力制御部の筺体の前後方向の長さよりも短いことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、ブレーキ力制御部の筺体が、バッテリが後方に移動した際に、バッテリと面接触するように配置されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、ブレーキ力制御部の筺体が、平面視でキャニスタの車幅外方に位置する側面よりもさらに車幅外方に突出させたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、フロントサイドフレームの車幅外方に設けられ、ダンパユニットを取付けるダンパハウスを備え、キャニスタの一部がダンパハウスと平面視で重なる位置に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、蒸発燃料を吸着するキャニスタと、このキャニスタの前方に配置されたバッテリと、車両の制動力を制御するブレーキ力制御部と、車両のエンジンの前方に配置されて車幅方向に延びるフロントフレームと、エンジンの左右方向にそれぞれ配置されたフロントサイドフレームと、からなるエンジンルームを有する。
キャニスタとブレーキ力制御部を収容する筺体とを、エンジンルーム内に配置し、ブレーキ力制御部の筺体の前面を、キャニスタの前面よりも前方に位置させたので、車両が衝突した際に、ABSユニットやVSAユニットなどのブレーキ力制御部の筺体で、バッテリが後方に移動することを防ぐことができる。この結果、キャニスタを保護することができる。
なお、ABSは、ブレーキング時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキシステムの略であり、VSAは、車体の旋回時の横滑りを抑制するビーグルスタビリティアシストの略である。
【0014】
請求項2に係る発明では、キャニスタを、ブレーキ力制御部の筺体よりも上方で、且つエンジンの後方に配置したダッシュパネルに固定したので、バッテリが後方に移動することをブレーキ力制御部の筺体で防ぐことに加えて、キャニスタを高い位置に配置することで、燃料タンクからの蒸発燃料がキャニスタに吸着し易くなる。この結果、キャニスタの小型化を図ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、キャニスタの前後方向の長さが、ブレーキ力制御部の筺体の前後方向の長さよりも短いので、ブレーキ力制御部の筺体が後方に移動しきった場合でも、キャニスタを保護することができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、ブレーキ力制御部の筺体が、バッテリが後方に移動した際に、バッテリと面接触するように配置されたので、バッテリが後方に移動する力をバッテリ面と、ブレーキ力制御部の筺体面とに当てることができる。これにより、衝撃力を分散させて吸収することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、ブレーキ力制御部の筺体が、平面視でキャニスタの車幅外方に位置する側面よりもさらに車幅外方に突出させたので、車両の側突の際にも、ブレーキ力制御部の筺体によってキャニスタを保護することを防止することができる。
【0018】
請求項6に係る発明では、フロントサイドフレームの車幅外方に設けられ、ダンパユニットを取付けるダンパハウスを備える。
キャニスタの一部がダンパハウスと平面視で重なる位置に配置されたので、キャニスタの車幅内方の空間を稼ぐことができる。これにより、キャニスタのスペース効率を向上させることができる。さらに、側突が発生した際に、キャニスタの車幅内方への移動代を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施例1の車体前部構造の前上方から見た斜視図である。
【図2】図1に示された車体前部構造の前下方から見た斜視図である。
【図3】図1に示された車体前部構造の側面図である。
【図4】図1に示された車体前部構造の平面図である。
【図5】図1に示された車体前部構造の作用説明図である。
【図6】本発明に係る実施例2の車体前部構造の側面図である。
【図7】図6に示された車体前部構造の平面図である。
【図8】図6に示された車体前部構造の前突時の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0021】
本発明に係る車体前部構造(図3参照)は、ブレーキング時の車輪14のロックを防止するABSユニット、及び車体11の旋回時の横滑りを抑制するVSAユニットなどのブレーキ力制御部43の筺体(ケース)46で、蒸発燃料を吸着するキャニスタ42を保護するようにした構造である。以下、詳細に説明する。なお、ABSは、アンチロックブレーキシステムの略であり、VSAは、ビーグルスタビリティアシストの略である。
【0022】
図1〜図5に示されるように、車両10は、車体11の前部に、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム15,15と、左右のフロントサイドフレーム15,15の前端に設けられるとともに、車幅方向に延ばされたフロントバルクヘッド(フロントフレーム)16と、エンジンルーム13と車室12とを仕切るダッシュパネル17と、ダッシュパネル17の側方に設けられ、車室12の前部の骨組みを構成する左右のフロントピラー18,18と、左右のフロントピラー18,18から車体前方に延ばされ、左右のホイールハウス19,19をそれぞれ構成する左右のアッパメンバ21,21と、左右のフロントサイドフレーム15,15及び左右のアッパメンバ21,21にそれぞれ支持される左右のダンパハウス(ダンパハウジング)22,22と、を備える。
図4に示されるように、車両10は、ステアリング29を右に設けた右ハンドルの車両である。また、車両10は、車体11の前席の下方に燃料タンが配置されている。
【0023】
左右のフロントサイドフレーム15,15は、後端から左右のフロントフロアフレーム24,24が延ばされる。
【0024】
フロントバルクヘッド(フロントフレーム)16は、正面視略矩形を呈する部材である。詳細には、下部に配置され車幅方向に延ばされるバルクヘッドロアクロスメンバ25と、上部に配置され車幅方向に延ばされるバルクヘッドアッパフレーム26と、これらのバルクヘッドロアクロスメンバ25及びバルクヘッドアッパフレーム26の左右端部をそれぞれ繋ぐ左右のバルクヘッドサイドメンバ27,27と、からなる。
【0025】
フロントバルクヘッド16には、エンジン41を冷却するラジエータ37と、車室12を空調するエアコンディショナユニット(不図示)の冷媒を冷やすコンデンサ(不図示)が支持される。
【0026】
ダッシュパネル17は、下部が構成されるダッシュボードロアパネル31と、上部が構成されるダッシュボードアッパパネル32と、から構成される。
ダッシュボードロアパネル31は、下部に左右のフロントサイドフレーム15,15に渡されるダッシュボードクロスメンバ33を備え、このダッシュボードクロスメンバ33から車体後方に左右のトンネルフレーム34,34が延ばされる。
【0027】
左右のフロントピラー18,18は、下端から車体後方に左右のサイドシル35,35が延ばされる。左右のフロントピラー18,18の下端と、左右のフロントサイドフレーム15,15とは、それぞれ左右のアウトリガー36,36で接続されている。
左右のダンパハウス22,22には、左右のダンパユニット39,39が支持される。
なお、左右のサイドシル35,35、左右のフロントフロアフレーム24,24及び左右のトンネルフレーム34,34は、車室12の下部骨格を構成する部材である。
【0028】
エンジンルーム13には、フロントサイドフレーム15,15、フロントバルクヘッド16及びダンパハウス22,22の他に、エンジン41と、蒸発燃料を吸着するキャニスタ42と、車両10の制動力を制御するブレーキ力制御部43と、キャニスタ42の前方に配置され、ブレーキ力制御部43を含む車体11の電装部品(不図示)に給電するバッテリ44と、が配置される。
【0029】
ブレーキ力制御部43は、ブレーキング時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキシステム、及び車体11の旋回時の横滑りを抑制するビーグルスタビリティアシストの制御ユニットである。さらに、ブレーキ力制御部43は、筺体46内に納められたユニットである。
【0030】
キャニスタ42の一部がダンパハウス22と平面視で重なる位置に配置された。筺体46はステー部材47を介して、エンジン41側に支持されている。
なお、フロントバルクヘッド16は、車両10のエンジン41の前方に配置され、フロントサイドフレーム15,15は、エンジン41の左右方向にそれぞれ配置され、ダンパハウス22,22は、フロントサイドフレーム15,15の車幅外方に設けられている。
【0031】
図3、図4に示される車体前部構造では、キャニスタ42とブレーキ力制御部43の筺体46とは、先に説明したように、エンジンルーム13内に配置される。図5(a)に示されたように、ブレーキ力制御部43の筺体46の前面46aを、キャニスタ42の前面42aよりも前方に位置させた。
【0032】
キャニスタ42は、ブレーキ力制御部43の筺体46よりも上方で、且つエンジン41の後方に配置したダッシュパネル17(詳細には、ダッシュボードアッパパネル32)に固定される。
【0033】
ブレーキ力制御部43の筺体46の前面(前方側面)46aは、バッテリ44の後面(後方側面)44bに対峙させて配置される。すなわち、ブレーキ力制御部43の筺体46が、バッテリ44が後方に移動した際に、バッテリ44と面接触するように配置される。
【0034】
図5(b)に示されたように、前突荷重が矢印a1の如く発生した場合に、フロントバルクヘッド(フロントフレーム)16が矢印a2の如く後退し、フロントバルクヘッド16でバッテリ44が押され、バッテリ44が矢印a3の如く後退する。ここで、ブレーキ力制御部43の筺体46の前面46aを、キャニスタ42の前面42aよりも前方に位置させたので、バッテリ44の後面44bがキャニスタ42の前面42aに当たる前に、ブレーキ力制御部43の筺体46の前面46aに当たる。これにより、バッテリ44が、さらに後方に移動することを防ぐ。
【0035】
図1〜図5に示されたように、車体前部構造では、蒸発燃料を吸着するキャニスタ42と、このキャニスタ42の前方に配置されたバッテリ44と、車両10の制動力を制御するブレーキ力制御部43と、車両10のエンジン41の前方に配置されて車幅方向に延びるフロントフレーム(フロントバルクヘッド)16と、エンジン41の左右方向にそれぞれ配置されたフロントサイドフレーム15,15と、からなるエンジンルーム13を有する。
【0036】
キャニスタ42とブレーキ力制御部43を収容する筺体46とを、エンジンルーム13内に配置し、ブレーキ力制御部43の筺体46の前面46aを、キャニスタ42の前面42aよりも前方に位置させたので、車両10が衝突した際に、ABSユニットやVSAユニットなどのブレーキ力制御部43の筺体46で、バッテリ44が後方に移動することを防ぐことができる。この結果、キャニスタ42を保護することができる。
【0037】
なお、ABSは、ブレーキング時の車輪14のロックを防止するアンチロックブレーキシステムの略であり、VSAは、車体11の旋回時の横滑りを抑制するビーグルスタビリティアシストの略である。
【0038】
図5(a)に示されたように、車体前部構造では、キャニスタ42を、ブレーキ力制御部43の筺体46よりも上方で、且つエンジン41の後方に配置したダッシュパネル17に固定したので、バッテリ44が後方に移動することをブレーキ力制御部43の筺体46で防ぐことに加えて、キャニスタ42を高い位置に配置することで、図3に示されたように、車体11の前席23の下方に設けられた燃料タンク28からの蒸発燃料がキャニスタ42に吸着し易くなる。この結果、キャニスタ42の小型化を図ることができる。
【0039】
図5(b)に示されたように、車体前部構造では、ブレーキ力制御部43の筺体46が、バッテリ44が後方に移動した際に、バッテリ44と面接触するように配置されたので、バッテリ44が後方に移動する力をバッテリ44の後面44bと、ブレーキ力制御部43の筺体46の前面46aとに当てることができる。これにより、衝撃力を分散させて吸収することができる。
【実施例2】
【0040】
図6〜図8に実施例2の車体前部構造が示される。
実施例2の車体前部構造では、エンジンルーム103には、フロントサイドフレーム105,105と、フロントバルクヘッド(フロントフレーム)106と、ダンパハウス122,122と、エンジン141と、蒸発燃料を吸着するキャニスタ142と、車両100の制動力を制御するブレーキ力制御部143と、キャニスタ142の前方に配置され、ブレーキ力制御部143を含む車体の電装部品(不図示)に給電するバッテリ144と、が配置される。
図7に示されるように、車両100は、ステアリング129を右に設けた右ハンドルの車両である。
【0041】
フロントバルクヘッド106は、正面視略矩形を呈する部材である。フロントバルクヘッド106には、エンジン141を冷却するラジエータ137と、車室を空調するエアコンディショナユニット(不図示)の冷媒を冷やすコンデンサ(不図示)が支持される。
【0042】
ダッシュパネル107は、下部が構成されるダッシュボードロアパネル131と、上部が構成されるダッシュボードアッパパネル132と、から構成される。キャニスタ142は、ダッシュボードアッパパネル132の下部に取付けられる。
左右のダンパハウス122,122には、左右のダンパユニット139,139が支持される。
【0043】
ブレーキ力制御部143は、ブレーキング時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキシステム、及び車体の旋回時の横滑りを抑制するビーグルスタビリティアシストの制御ユニットである。さらに、ブレーキ力制御部143は、筺体(ケース)146内に納められたユニットであり、筺体146はステー部材147を介して、エンジン141側に支持されている。
【0044】
ブレーキ力制御部143の筺体146の前面146aを、キャニスタ142の前面142aよりも前方に位置させた。また、ブレーキ力制御部143の筺体146の車幅外方に位置する側面146bが、平面視でキャニスタ142の車幅外方に位置する側面142bよりもさらに車幅外方に突出させた。
キャニスタ142は、一部がダンパハウス122と平面視で重なる位置に配置された。
【0045】
図8(a)に示されるように、キャニスタ142の前後方向の長さをL1、ブレーキ力制御部143の筺体146の前後方向の長さをL2とするときに、キャニスタ142の前後方向の長さL1が、ブレーキ力制御部143の筺体146の前後方向の長さL2よりも短く設定される(L1<L2)。
【0046】
図8(b)に示されたように、前突荷重が矢印b1の如く発生した場合に、フロントバルクヘッド(フロントメンバ)106が矢印b2の如く後退し、フロントバルクヘッド106でバッテリ144が押され、バッテリ144が矢印b3の如く後退する。ここで、ブレーキ力制御部143の筺体146の前面146aを、キャニスタ142の前面142aよりも前方に位置させたので、バッテリ144の後面144bがキャニスタ142の前面142aに当たる前に、ブレーキ力制御部143の筺体146の前面146aに当たる。これにより、バッテリ144が、さらに後方に移動することを防ぐ。
【0047】
図8(b)に示されたように、車体前部構造では、キャニスタ142の前後方向の長さL1が、ブレーキ力制御部143の筺体146の前後方向の長さL2よりも短いので、ブレーキ力制御部143の二点差線で示す筺体146が後方に移動しきった場合でも、キャニスタ142を保護することができる。
【0048】
実施例2の車体前部構造では、ブレーキ力制御部143の筺体146を、平面視でキャニスタ142の車幅外方に位置する側面142bよりもさらに車幅外方に突出させたので、車両100の側突の際にも、ブレーキ力制御部143の筺体146によってキャニスタ142を保護することができる。
【0049】
図6〜図8に示されたように、フロントサイドフレーム15は、フロントサイドフレー15ムの車幅外方に設けられ、ダンパユニット139を取付けるダンパハウス22を備える。
実施例2の車体前部構造では、キャニスタ142の一部がダンパハウス122と平面視で重なる位置に配置されたので、キャニスタ142の車幅内方の空間を稼ぐことができる。これにより、キャニスタ142のスペース効率を向上させることができる。さらに、側突が発生した際に、キャニスタ142の車幅内方への移動代を増やすことができる。
【0050】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図3及び6に示すように、ブレーキ力制御部43,143は、ブレーキング時の車輪のロックを防止するABSユニット、及び車体の旋回時の横滑りを抑制するVSAユニットであったが、これに限るものではなく、ブレーキ力制御部43,143は、ABSユニット(ABSモジュール)のみであってもよい。
【0051】
本発明に係る車体前部構造は、図4及び図7に示すように、車両10,100は、右ハンドルの車両に採用されたが、これに限るものではなく、左ハンドルの車両に適用されるものであってもよい。この場合に、左ハンドルと右ハンドルとでブレーキ力制御部43,143の左右の位置を変えるものであってもよい。
本発明に係る車体前部構造は、図3に示すように、燃料タンク28が、車体11の前席23の下方に配置されたが、これに限るものではなく、車体後部に若しくは車体後部の下方に配置されたものであってもよい。
【0052】
本発明に係る車体前部構造は、図3及び図6に示すように、ブレーキ力制御部43,143の筺体46,146は、ブレーキ力制御部43,143を支持するステー部材47,147や補強部材を含む。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、蒸発燃料を吸着するキャニスタが設けられ、車両の制動力を制御するブレーキ力制御部が設けられ、このブレーキ力制御部を含む車体の電装部品に給電するバッテリが設けられる車体前部構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0054】
10…車両、11…車体、13…エンジンルーム、15…フロントサイドフレーム、16…フロントフレーム(フロントバルクヘッド)、22…ダンパハウス、39…ダンパユニット、41…エンジン、42…キャニスタ、42a…前面、43…ブレーキ力制御部、44…バッテリ、44b…後面、46…筺体、46a…前面、122…ダンパハウス、139…ダンパユニット、142…キャニスタ、142b…側面、143…ブレーキ力制御部、146…筺体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発燃料を吸着するキャニスタと、このキャニスタの前方に配置されたバッテリと、車両の制動力を制御するブレーキ力制御部と、車両のエンジンの前方に配置されて車幅方向に延びるフロントフレームと、前記エンジンの左右方向にそれぞれ配置されたフロントサイドフレームと、からなるエンジンルームを有する車体前部構造において、
前記キャニスタと前記ブレーキ力制御部を収容する筺体とを、前記エンジンルーム内に配置し、前記ブレーキ力制御部の筺体の前面を、前記キャニスタの前面よりも前方に位置させたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記キャニスタを、前記ブレーキ力制御部の筺体よりも上方で、且つ前記エンジンの後方に配置したダッシュパネルに固定したことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記キャニスタの前後方向の長さは、前記ブレーキ力制御部の筺体の前後方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記ブレーキ力制御部の筺体は、前記バッテリが後方に移動した際に、該バッテリと面接触するように配置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記ブレーキ力制御部の筺体は、平面視で前記キャニスタの車幅外方に位置する側面よりもさらに車幅外方に突出させたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記フロントサイドフレームは、該フロントサイドフレームの車幅外方に設けられ、ダンパユニットを取付けるダンパハウスを備え、
前記キャニスタは、一部が前記ダンパハウスと平面視で重なる位置に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−67630(P2012−67630A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211181(P2010−211181)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】