説明

車体前部構造

【課題】前面衝突時に、壁等の障害物やエンジン等の物体が車室近くに移動することを抑制し、車室に接触するまでの距離を大きく確保できる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造は、車両前部の両側部に配置され、車両前後方向に延在するフロントサイドメンバと、フロントサイドメンバの下方に配置され、車幅方向における両端部にそれぞれ設けられた複数の取付部33,34で車体に取り付けられるサブフレーム30と、サブフレーム30と車輪との間に取り付けられるロアアーム60と、サブフレーム30に一端が固定されるとともに、他端はサブフレーム30から車両前方に延伸しており、車両前後方向の入力に対して変形する変形部50と、を備えている。そして、変形部50は、変形部50の両端部の中心同士を結んだ軸線Lの延長線上にロアアーム60が位置するように、サブフレーム30に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、特に、フロントサイドメンバと当該フロントサイドメンバの下方に配置されるサブフレームとを備えた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、フロントサイドメンバの下方にサブフレームを配置した車体前部構造において、フロントサイドメンバの前端部とサブフレームの前端部とにそれぞれ軸圧縮変形部を設けることにより、車両の前部が壁等の障害物に全面で衝突(以下、「前面衝突」ともいう)した場合に、軸圧縮変形部が潰れるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−216901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、特許文献1には、前記した軸圧縮変形部に加え、サブフレームの後部の車両前後方向中間部に脆弱部が設けられ、前面衝突時の所定荷重で脆弱部を起点にサブフレームが折れ曲がるようにした構成が提案されている。
【0005】
しかし、このように構成した場合、前面衝突時に、フロントサイドメンバ及びサブフレームの前端部にそれぞれ設けられた軸圧縮変形部とサブフレームの脆弱部とが共にまず変形することになる。このため、車体前部構造が車両前後方向に容易に押し縮められてしまい、壁等の障害物やエンジン等の車両前方にある物体が車室近くに移動して来て、車室に接触するまでの距離が短くなる虞がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、前面衝突時に、壁等の障害物やエンジン等の物体が車室近くに移動することを抑制し、車室に接触するまでの距離を大きく確保することができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、車両前部の両側部に配置され、車両前後方向に延在するフロントサイドメンバと、前記フロントサイドメンバの下方に配置され、車幅方向における両端部にそれぞれ設けられた複数の取付部で車体に取り付けられるサブフレームと、前記サブフレームと車輪との間に取り付けられるサスペンションアームと、前記サブフレームに一端が固定されるとともに、他端は前記サブフレームから車両前方に延伸しており、車両前後方向の入力に対して変形する変形部と、を備え、前記変形部は、前記変形部の両端部の中心同士を結んだ軸線の延長線上に前記サスペンションアームが位置するように、前記サブフレームに設けられることを特徴とする車体前部構造である。
【0008】
この発明によれば、車両の前部が壁等の障害物に全面で衝突した場合に、フロントサイドメンバと、サブフレームの前端に設けられた変形部とに衝突荷重が分散されて伝達され、フロントサイドメンバとサブフレームの変形部とが共に変形していく。
このとき、変形部の両端部の中心同士を結んだ軸線の延長線上に、サブフレームに取り付けられたサスペンションアームを配置したので、サスペンションアームがサブフレームの変形に抗してサブフレームの剛性向上に寄与する。これにより、衝突時の衝撃による荷重が変形部に効率よく伝達されて変形部を変形させて衝撃を吸収することができる一方で、サブフレームの変形を抑制することができる。この結果、車体前部構造が車両前後方向に押し縮められることをサブフレームで効果的に抑制することができる。したがって、前面衝突時に、壁等の障害物やエンジン等の物体が車室近くに移動することを抑制し、車室に接触するまでの距離を大きく確保することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体前部構造において、前記サスペンションアームはロアアームであり、前記ロアアームは、車両前後方向に延伸する前後方向アーム部を備え、前記前後方向アーム部の前端部及び後端部は、前記サブフレームにそれぞれ弾性体を介して取り付けられており、前記前後方向アーム部は、前記軸線の延長線上に位置されることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加え、さらに以下の作用効果を奏する。すなわち、前面衝突時には、弾性体が変形代のなくなるまで変形した後に、ロアアームの前後方向アーム部がサブフレームと一体的に機能して、前後方向アーム部の剛性がサブフレームに加わることになり、サブフレームが潰れにくくなる。これにより、変形部を効果的に変形させることができる一方で、サブフレームの変形をより抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造において、前記サスペンションアームには、周辺部よりも上下方向の外方に突出した突出部が形成されており、前記突出部は、前記軸線の延長線上に位置されることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用効果に加え、さらに以下の作用効果を奏する。すなわち、サスペンションアームの剛性が向上する結果、サスペンションアームが取り付けられたサブフレームの剛性がさらに向上する。これにより、変形部を効果的に変形させることができる一方で、サブフレームの変形をより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前面衝突時に、壁等の障害物やエンジン等の物体が車室近くに移動することを抑制し、車室に接触するまでの距離を大きく確保することができる車体前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体前部構造が適用された車両を示す概略側面図である。
【図2】図1の下から見た図である。
【図3】サブフレーム周辺の平面図である。
【図4】サブフレーム周辺の底面図である。
【図5】(a)〜(c)は、前面衝突時のサブフレーム周辺の変形の様子を経時的に順次示す概略部分側面図である。
【図6】(a)〜(c)は、前面衝突時にサブフレームに入力された荷重が分散される様子を経時的に順次示す概略底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車体前部構造が適用された車両を示す概略側面図である。図2は、図1の下から見た図(底面図)である。図3は、サブフレーム周辺の平面図である。図4は、サブフレーム周辺の底面図である。なお、図1〜図4に、車両Vの前後左右上下の方向を矢印で示す。
【0016】
図1及び図2に示すように、車両Vは車体1を有しており、車体1は、エンジンやトランスミッション等を含むパワーユニット2やフロントサスペンション3(図2参照)が取付けられるフロントボディ4と、車室Cの床構造をなすアンダボディ5とを有している。なお、図1では、説明の都合上、パワーユニット2及びフロントサスペンション3は、図示省略されている。
【0017】
フロントボディ4は、車体前部構造10を構成する、フロントサイドメンバ20、及び当該フロントサイドメンバ20の下方に配置されるサブフレーム30を備えている。また、アンダボディ5は、フロントボディ4の内部に形成されるエンジンルームRと車室Cとの隔壁をなすダッシュボードロア6を備えている。
【0018】
フロントサイドメンバ20は、車両V前部の両側部に配置されており、車両前後方向に一対延在している。このフロントサイドメンバ20は、略水平に配置される角管状のサイドメンバ本体21と、サイドメンバ本体21の後端側に形成される傾斜部22とを備えており、傾斜部22においてダッシュボードロア6に溶接されて固定されている。
【0019】
また、フロントサイドメンバ20の下面には、サブフレーム30側に向けて突出するサイドメンバ側マウント部23が設けられている。図2中の符号40は、パワーユニット2を係合するための係合部材を示す。なお、パワーユニット2は、フロントサイドメンバ20に設けられたマウント部(図示せず)に取り付けられている。
【0020】
図3及び図4に示すように、サブフレーム30は、車幅方向(左右方向)に延在するサブフレーム本体31を備えている。サブフレーム本体31は、主として鋼板を各々プレス加工して成形された上部板体35と下部板体36とを溶接により結合することによって構成されている。
【0021】
下部板体36の両側部には、略車両前後方向に沿って、周辺部よりも下方向の外方に突出した線状の突出部37が形成されている。このように構成すれば、サブフレーム30の車両前後方向の剛性が向上する。なお、線状の突出部37は、上部板体35に、上方向外方に突出して形成されてもよい。
【0022】
サブフレーム30の前方側端には、後記するロアアーム60の前端部62を取り付けるための一対の取付壁38(図1及び図4参照)が鉛直方向と平行に形成されており、一対の取付壁38には、車両前後方向に沿う貫通孔がそれぞれ形成されている。一方、サブフレーム30の後方側端には、後記するロアアーム60の後端部63を取り付けるための一対の取付壁39(図1参照)が水平方向と平行に形成されており、一対の取付壁39には、上下方向に沿う貫通孔がそれぞれ形成されている。取付壁38,39は、上部板体35又は下部板体36の一部によって構成されてもよいし、サブフレーム本体31に溶接等により固定される別部材によって構成されてもよい。また、サブフレーム30の前方両端部の上面には、フロントサイドメンバ20側に向けて突出するサブフレーム側マウント部32(図1及び図3参照)が設けられている。
【0023】
サブフレーム本体31の車幅方向における両端部には、サブフレーム30を車体1に取り付けるための複数の取付部33,34がそれぞれ設けられている。取付部33は、サブフレーム30の後方両端部に形成された貫通孔を備えており、当該貫通孔にねじ部材41(図1参照)が挿通されて、フロントサイドメンバ20の傾斜部22の後側に形成された後締結部24(図2参照)に取り付けられる。一方、取付部34は、サブフレーム30の前方両端部に設けられたサブフレーム側マウント部32の上面に形成された貫通孔を備えており、当該貫通孔にねじ部材42(図1参照)が挿通されて、フロントサイドメンバ20のサイドメンバ側マウント部23に取り付けられる。
【0024】
また、車体前部構造10は、サブフレーム30に一端が固定されるとともに、他端はサブフレーム30から車両前方に延伸しており、車両前後方向の荷重入力に対して変形する変形部50を備えている。
【0025】
変形部50は、前側のクラッシュボックス51と後側のアンダロードパス52とを有している。クラッシュボックス51は、車両前後方向に第1の閾値以上の荷重が入力された場合に、車両前後方向に圧壊する構成となっている。また、アンダロードパス52は、例えば角管状を呈しており、略水平に配置される。アンダロードパス52は、車両前後方向に第2の閾値以上の荷重が入力された場合に、例えば屈曲部53において座屈する構成となっている。ここで、第2の閾値は第1の閾値よりも大きく設定されており、車両前後方向の荷重入力に対して、クラッシュボックス51がアンダロードパス52よりも先に変形することになる。
【0026】
さらに、車体前部構造10は、サブフレーム30と車輪7(図2参照)との間に取り付けられるサスペンションアームとしてのロアアーム60を備えている。フロントサスペンション3の構成部品であるロアアーム60は、ここでは、L型アームと呼ばれるものである。
【0027】
本実施形態では、図3及び図4に示すように、変形部50は、当該変形部50の両端部の中心(図心)同士を結んだ軸線Lの延長線上にロアアーム60が位置するように、サブフレーム30に設けられている。また、ロアアーム60の前後方向アーム部69が、変形部50の両端部の中心同士を結んだ軸線Lの延長線上に位置される。
【0028】
ロアアーム60は、鋼板を各々プレス加工して成形された上部材71と下部材72とを溶接により結合して構成されている。ロアアーム60の下部材72には、周辺部よりも下方向の外方に突出した線状の突出部73が形成されており、この突出部73は、変形部50の両端部の中心同士を結んだ軸線Lの延長線上に位置されている。このように構成すれば、ロアアーム60の車両前後方向の剛性が向上する。さらに、線状の突出部73は、車両前後方向に対して所定角度(例えば30度以下)傾斜した方向に沿って延在している。このように構成すれば、ロアアーム60の車両前後方向に直交する断面の断面二次モーメントを大きくすることができ、ロアアーム60の曲げ剛性を高めることができる。なお、線状の突出部73は、上部材71に、上方向外方に突出して形成されてもよい。
【0029】
ロアアーム60は、車幅方向に延伸する車幅方向アーム部68と、当該車幅方向アーム部68から二股状に分かれ、車両前後方向に延伸する前後方向アーム部69とを備えている。車幅方向アーム部68の外方には、ボールジョイント(図示せず)を取り付ける貫通孔を備えた外端部61が形成されている。また、前後方向アーム部69の前方には車両前後方向に沿う貫通孔を備えた前端部62が形成されており、前後方向アーム部69の後方には車両上下方向に沿う貫通孔を備えた後端部63が形成されている。
【0030】
ロアアーム60の外端部61は、ボールジョイント(図示せず)を介して車輪7のホイールを回転自在に支持するナックル(図示せず)に首振り可能に連結される。また、ロアアーム60の前端部62及び後端部63は、ゴムブッシュジョイント64,65を介して、ねじ部材66,67により、サブフレーム30の一対の取付壁38(図1及び図4参照)及び一対の取付壁39(図1参照)の間にそれぞれ連結される。ゴムブッシュジョイント64,65は、振動や衝撃を吸収し得るゴム製の略円筒形状の弾性体を備えている。
【0031】
次に、前記のように構成された車体前部構造10の作用効果について説明する。図5(a)〜(c)は、前面衝突時のサブフレーム周辺の変形の様子を経時的に順次示す概略部分側面図である。
【0032】
図5(a)は、前面衝突前の変形の無い状態を示している。そして、車両Vの前部が壁等の障害物(衝突体)Tに全面で衝突すると、ロアアーム60によって剛性が高められたサブフレーム30よりも変形し易いフロントサイドメンバ20と変形部50とに衝撃荷重が効率よく伝達されて両者が変形し、衝撃が吸収される。
【0033】
サブフレーム30の周辺においては、図5(b)に示すように、まず、アンダロードパス52の座屈荷重である第2の閾値よりも小さい第1の閾値の荷重が作用して、クラッシュボックス51が軸方向に圧縮されて潰れる。続いて、図5(c)に示すように、第2の閾値の荷重が作用して、アンダロードパス52が屈曲部53において座屈して潰れる。
【0034】
このように、前面衝突時には、クラッシュボックス51、アンダロードパス52と、前方から順に変形して潰れることになる。しかし、変形部50(クラッシュボックス51及びアンダロードパス52)が変形している間、ロアアーム60によって剛性が高められたサブフレーム30が変形することはない(図5(b)(c)参照)。
【0035】
図6(a)〜(c)は、前面衝突時にサブフレームに入力された荷重が分散される様子を経時的に順次示す概略底面図である。なお、図6において、サブフレーム等の変形は無視して描かれている。
【0036】
前記の如く、前面衝突時において、衝撃荷重はフロントサイドメンバ20と変形部50とに分散されて伝達される。そして、変形部50が変形する一方で、ロアアーム60によって剛性が高められたサブフレーム30は変形が抑制されて潰れにくくなっている。さらに、本実施形態では、図6(a)〜(c)に示すように、前面衝突時にサブフレーム30に入力された荷重が分散して下流側に伝達されるように構成されており、サブフレーム30の変形をさらに抑制することが可能となっている。
【0037】
具体的には、図6(a)に示すように、前面衝突の初期段階において、変形部50を介した入力荷重81がサブフレーム30に入力され、取付部33を介した出力荷重91、外端部61を介した出力荷重93、及び取付部34を介した出力荷重92として分散して伝達される。続いて、図6(b)に示すように、係合部材40を介したパワーユニット2からの入力荷重82がサブフレーム30に入力され、取付部33を介した出力荷重94として分散して伝達される。続いて、図6(c)に示すように、係合部材40を介したパワーユニット2からの入力荷重83、及びパワーユニット2の制御盤(図示せず)等の他の箇所からの入力荷重84がサブフレーム30に入力され、サブフレーム30とダッシュボードロア6等のアンダボディ5との干渉部を介した出力荷重95、ロアアーム60とダッシュボードロア6等のアンダボディ5との干渉部を介した出力荷重96、及び取付部33を介した出力荷重96として分散して伝達される。
【0038】
前記したように、本実施形態に係る車体前部構造10は、車両V前部の両側部に配置され、車両前後方向に延在するフロントサイドメンバ20と、フロントサイドメンバ20の下方に配置され、車幅方向における両端部にそれぞれ設けられた複数の取付部33,34で車体1に取り付けられるサブフレーム30と、サブフレーム30と車輪7との間に取り付けられるロアアーム60と、サブフレーム30に一端が固定されるとともに、他端はサブフレーム30から車両前方に延伸しており、車両前後方向の入力に対して変形する変形部50と、を備えている。そして、変形部50は、変形部50の両端部の中心同士を結んだ軸線Lの延長線上にロアアーム60が位置するように、サブフレーム30に設けられている。
【0039】
このような本実施形態によれば、車両Vの前部が壁等の障害物Tに全面で衝突した場合に、フロントサイドメンバ20と、サブフレーム30の前端に設けられた変形部50とに衝突荷重が分散されて伝達され、フロントサイドメンバ20とサブフレーム30の変形部50とが共に変形していく。
このとき、変形部50の両端部の中心同士を結んだ軸線Lの延長線上に、サブフレーム30に取り付けられたロアアーム60を配置したので、ロアアーム60がサブフレーム30の変形に抗してサブフレーム30の剛性向上に寄与する。これにより、衝突時の衝撃による荷重が変形部50に効率よく伝達されて変形部50を変形させて衝撃を吸収することができる一方で、サブフレーム30の変形を抑制することができる。この結果、車体前部構造10が車両前後方向に押し縮められることをサブフレーム30で効果的に抑制することができる。したがって、前面衝突時に、壁等の障害物Tやパワーユニット2等の物体が車室C近くに移動することを抑制し、車室Cに接触するまでの距離を大きく確保することができる。
【0040】
また、本実施形態では、サスペンションアームとしてのロアアーム60は、車両前後方向に延伸する前後方向アーム部69を備え、前後方向アーム部69の前端部及び後端部は、サブフレーム30にそれぞれゴムブッシュジョイント64,65の弾性体を介して取り付けられており、前後方向アーム部69は、変形部50の両端部の中心同士を結んだ軸線Lの延長線上に位置されている。このような構成によれば、前面衝突時には、ゴムブッシュジョイント64,65の弾性体が変形代のなくなるまで変形した後に、ロアアーム60の前後方向アーム部69がサブフレーム30と一体的に機能して、前後方向アーム部69の剛性がサブフレーム30に加わることになり、サブフレーム30が潰れにくくなる。これにより、変形部50を効果的に変形させることができる一方で、サブフレーム30の変形をより抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、ロアアーム60には、周辺部よりも上下方向の外方に突出した突出部73が形成されており、突出部73は、変形部50の両端部の中心同士を結んだ軸線Lの延長線上に位置されている。このような構成によれば、ロアアーム60の剛性が向上する結果、ロアアーム60が取り付けられたサブフレーム30の剛性がさらに向上する。これにより、変形部50を効果的に変形させることができる一方で、サブフレーム30の変形をより一層抑制することができる。
【0042】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0043】
例えば、前記実施形態では、変形部50は、クラッシュボックス51とアンダロードパス52とを備えて構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。変形部は、例えばアンダロードパス52のみから構成されていてもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、サブフレーム30は、上部板体35と下部板体36とが結合されてなるサブフレーム本体31を備えて構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。サブフレームは、例えば前後左右4つのビーム部材が結合されてなる井桁状のサブフレームであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 車体
7 車輪
10 車体前部構造
20 フロントサイドメンバ
30 サブフレーム
33,34 取付部
50 変形部
60 ロアアーム(サスペンションアーム)
62 前端部
63 後端部
64,65 弾性体を備えたゴムブッシュジョイント
69 前後方向アーム部
73 突出部
L 軸線
V 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部の両側部に配置され、車両前後方向に延在するフロントサイドメンバと、
前記フロントサイドメンバの下方に配置され、車幅方向における両端部にそれぞれ設けられた複数の取付部で車体に取り付けられるサブフレームと、
前記サブフレームと車輪との間に取り付けられるサスペンションアームと、
前記サブフレームに一端が固定されるとともに、他端は前記サブフレームから車両前方に延伸しており、車両前後方向の入力に対して変形する変形部と、を備え、
前記変形部は、前記変形部の両端部の中心同士を結んだ軸線の延長線上に前記サスペンションアームが位置するように、前記サブフレームに設けられることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記サスペンションアームはロアアームであり、
前記ロアアームは、車両前後方向に延伸する前後方向アーム部を備え、
前記前後方向アーム部の前端部及び後端部は、前記サブフレームにそれぞれ弾性体を介して取り付けられており、
前記前後方向アーム部は、前記軸線の延長線上に位置されることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記サスペンションアームには、周辺部よりも上下方向の外方に突出した突出部が形成されており、
前記突出部は、前記軸線の延長線上に位置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−10419(P2013−10419A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144348(P2011−144348)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】