車体前部通風構造
【課題】車体前部に導入される空気流を乱すことがなく、更に、設計自由度を増すことが可能な車体前部通風構造を提供する。
【解決手段】車体前端部の開口部から車体前部に走行風を導入可能とするグリル、ダクトにシャッター機構が設けられ、このシャッター機構をトルクモータで開閉して車体前部に送られる走行風の量を制御する車体前部通風構造において、開口部側を開閉するために上下方向に間隔を置いてシャッター機構を構成する複数のフィン17が設けられ、これらのフィン17が、車幅方向に延びる回動軸35に対して軸直角方向に回動し、回動軸35が、開口部側を閉じたときにフィン17における車両前方を指向する受風面17aからこの受風面17aの後方に配置された背面17b側に離された位置に設けられる。
【解決手段】車体前端部の開口部から車体前部に走行風を導入可能とするグリル、ダクトにシャッター機構が設けられ、このシャッター機構をトルクモータで開閉して車体前部に送られる走行風の量を制御する車体前部通風構造において、開口部側を開閉するために上下方向に間隔を置いてシャッター機構を構成する複数のフィン17が設けられ、これらのフィン17が、車幅方向に延びる回動軸35に対して軸直角方向に回動し、回動軸35が、開口部側を閉じたときにフィン17における車両前方を指向する受風面17aからこの受風面17aの後方に配置された背面17b側に離された位置に設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部に設けられたラジエータ、エンジンルーム内等に走行風を導く車体前部通風構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車体前部通風構造として、ラジエータの前方に空気流通路を開閉するシャッタ装置を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1の図1〜図3によれば、車体ボディ12に筐体21,22が取付けられ、これらの筐体21,22にそれぞれシャッタ装置41,42が取付けられ、これらのシャッタ装置41,42によって、車体前端部に形成されたグリル開口部14,16に向けて開口する空気流通路28,32を開閉してシャッタ装置41,42の後方に設けられたラジエータ11やエンジンルームへ導かれる走行風量を調整する。
【0003】
シャッタ装置42は、複数の羽根部材43を備える。羽根部材43は、板状の羽根体44と、この羽根体44を支持する支持軸45とからなり、支持軸45は、筐体22の両端部に回動可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−001503公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
支持軸45の外径は、羽根体44の板厚よりも大きく、羽根体44の表面から突出している。従って、羽根部材43に走行風が当たったときに、羽根部材43の表面に沿って流れる空気流が乱れる。この結果、空気抵抗が大きくなったり、風切り音が発生することがある。
また、羽根部材43の表面に支持軸45が突出していると、羽根部材43の表面の設計自由度が制約され、走行風の制御に影響を及ぼすことがある。
【0006】
本発明の目的は、車体前部に導入される空気流を乱すことがなく、更に、設計自由度を増すことが可能な車体前部通風構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前端部に位置している開口部から走行風を導入可能な外気導入部に、開閉手段が設けられ、この開閉手段を駆動手段によって開閉することにより、前記外気導入部から取り入れる前記走行風の風量を制御するようにした、車体前部通風構造であって、前記開閉手段は、前記外気導入部を全閉可能に一列に配列した、複数のフィンによって構成され、この複数のフィンは、それぞれ開閉中心となる軸部を個別に有しており、この複数の軸部は、前記複数のフィンの配列方向に対して直交する方向に且つ全閉状態のフィンに沿う方向へ延びている車体前部通風構造において、前記各々の軸部は、全閉状態の前記各フィンの、前記走行風を受ける受風面に対して露出することなく、前記受風面とは反対側の背面に向かってオフセットしていることを特徴とする。
【0008】
開口部を閉じたときにフィンにおける車両前方を指向する受風面から軸部が背面側に離された位置に設けられ、軸部が受風面に突出しない。このように、受風面には従来のような凹凸が形成されず、平面又は曲面等の滑らかな受風面が形成され、受風面に沿って空気流がスムーズに流れる。
【0009】
請求項2に係る発明は、軸部が、フィンの断面長手方向の中心位置、若しくはフィンの断面長手方向の中心位置よりも、開口部を開けてフィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの前端部側に設けられることを特徴とする。
【0010】
軸部をフィンの断面長手方向の中心位置よりも前端部側に設けた場合、走行風がフィンに当たったときに、フィンを閉める方向に回動させようとする受風面の面積が小さくなるとともに、フィンを開ける方向に回動させようとする受風面の面積が大きくなる。
【0011】
請求項3に係る発明は、受風面が、フィンの断面長手方向の途中に、頂部と、この頂部から前端部に至る第1傾斜面と、頂部から、開口部を開けてフィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの後端部に至る第2傾斜面と、を備え、第1傾斜面は、前端部に向かうにつれて背面に接近するように傾斜して形成され、第2傾斜面は、後端部に向かうにつれて背面に接近するように傾斜して形成されることを特徴とする。
【0012】
フィンが完全に開いた状態から閉める方向に回動し始めた場合、第1傾斜面は第2傾斜面に比べて走行風に対してより直角に近づき、走行風が第1傾斜面に当たってフィンを閉める方向に回動させようとする走行風圧がより大きくなるとともに、走行風が第2斜面に当たってフィンを開ける方向に回動させようとする走行風圧がより小さくなる。この結果、走行風圧によるフィンの閉め側の回動トルクが大きくなる。
【0013】
請求項4に係る発明は、受風面が走行風から受ける走行風圧が最大となるフィンの回動角度では、頂部と軸部とは、走行風の導風方向に沿うように延びる同一直線上に配置されることを特徴とする。
【0014】
受風面に作用する走行風圧が最大となるフィンの回動角度では、第1傾斜面の全面が、頂部と軸部とを通る直線よりも前端部側に位置し、第2傾斜面の全面が、頂部と軸部とを通る直線よりも後端部側に位置する。
【0015】
請求項5に係る発明は、受風面のうち、開口部を閉じたときに走行風を受ける範囲を、有効受風面とし、フィンの前端部を有効前端とし、有効受風面において有効前端とは反対側の端を有効後端とし、有効前端から軸部の中心までの長さと、軸部の中心から有効後端までの長さとの、比が4.8:5.2となる位置から、有効前端までの範囲に、軸部を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、軸部の位置は、比が4.8:5.2から4.5:5.5までの範囲に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、開閉手段は、前記外気導入部を全閉可能に一列に配列した、複数のフィンによって構成され、この複数のフィンは、それぞれ開閉中心となる軸部を個別に有しており、この複数の軸部は、複数のフィンの配列方向に対して直交する方向に且つ全閉状態のフィンに沿う方向へ延びており、各々の軸部は、全閉状態の各フィンの、走行風を受ける受風面に対して露出することなく、受風面とは反対側の背面に向かってオフセットしているので、フィンの受風面に軸部による凹凸面が形成されないため、受風面による走行風の流れを乱すことがなく、ラジエータ及びエンジンルーム内にスムーズに走行風を送ることができる。よって、車体空力性能が向上し、風切り音の発生を防止することができる。また、受風面の設計自由度を増すことができ、走行風の流量調整、送風方向を細かく設定することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、軸部が、フィンの断面長手方向の中心位置、若しくはフィンの断面長手方向の中心位置よりも、開口部を開けてフィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの前端部側に設けられるので、走行風が各フィンに当たったときに、フィンを閉める方向に回動させようとする面の面積を小さくすることができるとともに、フィンを開ける方向に回動させようとする面の面積を大きくすることができ、フィンを開けるときに駆動手段の負荷を小さくすることができる。
車両が水たまりに進入して、フィンが水撃を受けた際、軸前部と軸後部とが受ける水圧に差ができるため、この水圧差によりフィンを閉状態から開状態へと回転させることができ、水撃によるフィンへの過度な負荷を逃がすことができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、受風面が、フィンの断面長手方向の途中に、頂部と、この頂部から前端部に至る第1傾斜面と、頂部から、開口部を開けてフィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの後端部に至る第2傾斜面と、を備え、第1傾斜面は、前端部に向かうにつれて背面に接近するように傾斜して形成され、第2傾斜面は、後端部に向かうにつれて背面に接近するように傾斜して形成されるので、フィンが完全に開いた状態から閉められる方向に回動し始めた場合、第1傾斜面ではフィンを閉める方向に回動させようとする走行風圧をより大きくすることができるとともに、第2傾斜面ではフィンを開ける方向に回動させようとする走行風圧をより小さくすることができ、フィンを閉めるときの駆動手段の負荷をより小さくすることができる。従って、駆動手段の消費電力を抑えることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、受風面が走行風から受ける走行風圧が最大となるフィンの回動角度では、頂部と軸部とは、走行風の導風方向に沿うように延びる同一直線上に配置されるので、受風面に作用する走行風圧が最大となるフィンの回動角度では、全面が直線よりも前端部側に位置する第1傾斜面によって走行風圧によるフィンの閉方向への回動補助力をより大きくすることができるとともに、全面が直線よりも後端部側に位置する第2傾斜面によって走行風圧によるフィンの閉方向への回動阻害力をより小さくすることができる。
【0021】
従って、受風面に作用する走行風圧が最大となるフィンの回動角度では、例えば、受風面が平坦なフィンに比較して、本発明では、フィンを駆動させる駆動手段の負荷をより小さくすることができる。
【0022】
請求項5に係る発明では、有効前端から軸部の中心までの長さと、軸部の中心から有効後端までの長さとの、比が4.8:5.2となる位置から、有効前端までの範囲に、軸部を設けた。どのような水撃であっても、受風面のうち、有効前端から軸部の中心までの面が受ける水撃荷重(水圧)と、軸部の中心から有効後端までの面とが受ける水撃荷重(水圧)とで開く方向に差が生じ、確実にフィンを開けることができるので、フィンが水撃を受けた際、フィンが閉じた状態から開いた状態へと確実にフィンを回転させることができ、水撃によるフィンへの負荷を逃がすことができ、フィンを保護することができる。
【0023】
請求項6に係る発明では、軸部の位置は、比が4.8:5.2から4.5:5.5までの範囲に設けた。軸部の位置がフィンを開いた際のモータ負荷の軽減率が臨界的に下がる位置よりも有効前端側に位置することがなく、またフィン閉鎖時のモータ負荷を高めない位置とすることができるため、通風装置の高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1に係る通風構造を示す車体前部の斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る通風構造のシャッター機構を閉じた状態の断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る通風構造のシャッター機構を開いた状態の断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係るフィンの側面図である。
【図5】本発明の実施例1に係るフィンを傾けた状態の断面図である。
【図6】本発明の実施例1に係るフィンの作用を示す作用図である。
【図7】フィンの比較例の作用を示す作用図である。
【図8】本発明の実施例1に係るフィンの開け側回動トルクとフィン回動角度との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例1に係るトルクモータ負荷とフィン回動角度との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例2に係る全閉時のフィンの正面図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【図12】本発明の実施例2に係るフィンの力の作用を示す作用図である。
【図13】本発明の水を逃がすときのフィンの作用図である。
【図14】本発明の回動軸の位置とフィン開閉及びモータ負荷の関係を示すグラフである。
【図15】本発明の回動軸の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0026】
先ず、本発明の実施例1を説明する。図中の矢印(FRONT)は車両前方を示している。
図1に示すように、車両のフロントボディを構成するバルクヘッド10の前面に、ラジエータ、エンジンルーム内に送られる走行風の量を制御する通風装置11が取付けられている。
通風装置11は、バルクヘッド10の前面に取付けられたシャッター機構13を備える。
【0027】
シャッター機構13は、バルクヘッド10に取付けられたシャッターベース14と、このシャッターベース14に設けられた複数の縦長支持部材16と、これらの縦長支持部材16で開閉自在に支持された複数(本実施例1では3個)のフィン17とを備える。なお、符号14a,14bはシャッターベース14の上部及び下部に設けられた通風口である。
【0028】
図2に示すように、通風装置11は、車体前端部に設けられたグリル21の開口部21aに前端部が接続されるとともに後端部がシャッター機構13に接続されたダクト22と、ラジエータ23の前方に配置されたシャッター機構13と、このシャッター機構13の各フィン17にリンク機構24を介して連結されたトルクモータ26と、このトルクモータ26を制御する制御部27と、リンク機構24の可動部の移動を規制するストッパ部を兼ねるとともにリンク機構24を案内するガイド部材28とからなる。なお、符号31はシャッター機構13の後方で且つラジエータ23の前方に配置されたエアコンディショナ用コンデンサである。
図2ではシャッター機構13の各フィン17は閉じた状態(全閉)にあり、ラジエータ23、エンジンルーム内には走行風が導かれない。
【0029】
図1〜2に示すように、シャッター機構13は、シャッターベース14の縦長部材16で回動自在に支持された複数の回動軸35と、これらの回動軸35にそれぞれ一体的に取付けられたフィン17及びアーム部材36とを備え、各アーム部材36がリンク機構24に連結されている。
【0030】
リンク機構24は、複数のアーム部材36に連結された縦に延びるスライドリンク37と、このスライドリンク37の下端部に一端部が連結ピン38を介して連結されるとともに他端部がトルクモータ26の回転軸33(モータ軸33)に取付けられたアームリンク39とからなる。
【0031】
アーム部材36とスライドリンク37とは、アーム部材36の端部に設けられたアーム軸部36aがスライドリンク37に形成された長穴37aに移動自在に挿入されることで連結されている。
連結ピン38は、スライドリンク37の下端部に形成された長穴37aに移動自在に挿入されている。
【0032】
トルクモータ26は、その回転軸33が制限された回転角度の範囲内で回転し、その回転軸33に発生するトルクを利用する直流モータであり、モータケース43を備え、このモータケース43内に制御部27が収納されている。
【0033】
ガイド部28は、上下にスライドするスライドリンク37の下降を規制するとともにスライドリンク37の下部をスライド自在に支持するロアガイド46と、スライドリンク37の上昇を規制するとともにスライドリンク37の上部をスライド自在に支持するアッパガイド47とからなる。
図2の状態では、スライドリンク37の上部がアッパガイド47の下端に当たっている。
【0034】
図3はシャッター機構13の各フィン17が開いた状態(全開)を示している。この状態で車両が走行中は、グリル21の開口部21aから導入された走行風は、ダクト22を通り、各フィン17間を通ってエアコンディショナ用コンデンサ31及びラジエータ23内を通過することによって熱交換する。更に、走行風はラジエータ23の後方のエンジンルーム内に至る。
図3の状態では、スライドリンク37の下部がロアガイド46の上端に当たっている。
【0035】
図4では、フィン17が、図3に示したのと同様に、断面長手方向が車両前後方向に延びた全開時の状態を示している。ここで、図3及び図4に示すように、回動軸35に対して直角な方向の断面、つまり軸直角の断面に沿って、フィン17を断面したときに、この断面において細長い方をフィン17の長手方向又は断面長手方向といい、短い方をフィン17の厚さ方向ということにする。
フィン17は、厚さ方向に対向する2つの面、即ち、一方の面を形成する受風面17a及び他方の面を形成する背面17bと、断面長手方向の前端部17c(前端17c)と、断面長手方向の後端部17d(後端17d)とを備える。
【0036】
受風面17aは、前側の主受風面17fと、後端部17d側の後端部面17gとからなる。
主受風面17fは、上方に凸となる湾曲した曲面に形成され、前端部17c寄りの位置に厚さ方向に最も突出した(最も高く形成された)頂部17h(黒丸で示された部分である。)が設けられている。
後端部面17gは、主受風面17fに滑らかに連続するようにほぼ平面状に形成されている。
【0037】
主受風面17fの頂部17hよりも前端部17c側の部分は、前下がりに形成された湾曲した第1傾斜面17jであり、頂部17gよりも後端部17d側の部分は、後下がりに形成された湾曲した第2傾斜面17kである。
【0038】
背面17bは、平坦に形成されるとともに、軽量化のための前部凹部17m及び後部凹部17nが形成されている。
前端部17cは、受風面17aに連続する前方に凸となる湾曲した曲面を備え、この曲面は上記の主受風面17fに含まれる。
後端部17dは、厚さが他の部分よりも薄く形成されている。
【0039】
回動軸35、詳しくは回動軸35の軸線35aは、フィン17の最大厚さをTとした時に、最大厚さTの厚さ方向の中心線50に対して背面17b側へ距離d1だけオフセットさせて配置され、且つ、フィン17の断面長手方向の長さ、即ちフィン17の全長をLとしたときに、長手方向の中心線55に対して前端部17c側へ距離d2だけオフセットさせて配置されている。
【0040】
受風面17aの頂部17hは、中心線55に対して前端部17c側へ距離d3だけオフセットさせて配置され、回動軸35の軸線35aよりも更に前端部17c側に配置されている。
【0041】
図5に示すように、フィン17の断面長手方向が、フィン17を閉める側に水平方向に対して、例えば、45°傾いたときには、受風面17aの頂部17hと回動軸35の軸線35aとは、走行風の導風方向に沿う方向、ここでは、前後方向に延びる水平線57上に前後に並ぶように配置される。
このとき、水平線57より下方に第1傾斜面17j、水平線57より上方に第2傾斜面17kが配置される。
【0042】
第1傾斜面17j上の第1の代表点(任意の点)を61、第2傾斜面17k上の第2の代表点(任意の点)を62とし、第1の代表点61を通る第1傾斜面17jの接線を第1接線63、代表点62を通る第2傾斜面17kの接線を第2接線64とする。
【0043】
以上に述べたフィン17の作用を次に説明する。
図6(a)は全開時のフィン17を示している。フィン17の断面の長手方向は車両前後方向に延びている。
【0044】
このとき、走行風の導風方向の流れ、即ち、水平な走行風の流れA1と第1接線63とのなす角度を第1角度α1とすると、この第1角度α1によって、回動軸35には、フィン17を閉めようとする力による閉め側の第1の回動トルクTA1が発生する。
【0045】
図6(b)は図6(a)の状態に対してフィン17が閉じ側に、例えば、45°傾いた状態を示している。このとき、フィン17が走行風から受風面17aに受ける風圧による回動軸35のフィン開け側の回動トルクは、フィン17の受風面17aと回動軸35との位置関係及び受風面17aの形状によって最も大きくなる。
【0046】
このとき、水平な走行風A2と第1接線63とのなす角度を第2角度α2とすると、α2>α1(図6(a)参照)であり、この第2角度α2によって、回動軸35にはフィン17を閉めようとする力による閉め側の回動トルクが発生し、この回動トルクは図6(a)の第1の回動トルクTA1よりも大きくなる。
【0047】
また、水平な走行風の流れA3と接線64とのなす角度を第3角度α3とすると、この第3角度α3によって、回動軸35には、フィン17を開けようとする力による開け側の回動トルクも発生する。
この結果、回動軸35には、これらの第2角度α2による閉め側の回動トルクと第3角度α3による開け側の回動トルクとを合わせた開け側の第2の回動トルクTA2が発生する。
【0048】
図6(c)は全閉時のフィン17を示している。フィン17の断面の長手方向は上下方向に延びている。
水平な走行風の流れA4,A5は、フィン17の第1傾斜面17j及び第2傾斜面17kにそれぞれ当たるが、水平な走行風の流れA4,A5と第1・第2接線63,64とのなす第4角度α4,第5角度α5よりも、回動軸35(詳しくは、軸線35a)から前端部17cまでの距離LF及び回動軸35から後端部17dまでの距離LRの影響(即ち、LR>LFであること)を強く受けて、回動軸35には、フィン17を開けようとする力による開け側の回動トルクTA3が発生する。
【0049】
図7(a)〜(c)はフィン17に対する比較例のフィン101の作用を示している。
図7(a)は全開時のフィン101を示している。
フィン101は、矩形断面に形成され、このフィン101の断面の断面長手方向は前後方向に延びている。
【0050】
フィン101は、厚さ方向に対向する2つの面、即ち、一方の面を形成する受風面101a及び他方の面を形成する背面101bと、断面長手方向の前端部101cと、断面長手方向の後端部101dとを備える。
フィン101の平坦な受風面101aは走行風の流れに沿っているため、フィン101の回動軸102には回動トルクがほとんど発生しない。
【0051】
図7(b)は図7(a)の状態に対してフィン101が閉め側に45°傾いた状態を示している。フィン101の傾き角45°付近では、フィン101が走行風から受風面101aに受ける風圧による回動軸102のフィン開け側の回動トルクは、フィン101の受風面101aと回動軸102との位置関係及び受風面101aの形状によって最も大きくなる。
【0052】
このときの受風面101aを、回動軸102の軸線102aを通る水平線105より下方に位置する下受風面101fと、水平線105より上方に位置する上受風面101gとに分けると、水平な走行風の流れA2と下受風面101fとのなす角度β2、及び水平な走行風の流れA3と上受風面101gとのなす角度β3は、β2=β3=45°である。
【0053】
従って、角度β2によって、回動軸102にはフィン101を閉めようとする力による閉め側の回動トルクが発生し、角度β3によって、回動軸102にはフィン101を開けようとする力による開け側の回動トルクが発生する。
この結果、回動軸102には、角度β2による閉じ側の回動トルクと角度β3による開け側の回動トルクとを合わせた開け側の回動トルクTB2が発生する。
【0054】
図7(c)は全閉時のフィン101を示している。フィン101の断面の長手方向は上下方向に延びている。
走行風の流れA4,A5は、受風面101aにおける回動軸102の軸線102aより下方の位置及び上方の位置にそれぞれ直角に当たり、回動軸102(詳しくは、軸線102a)から前端部101cまでの距離LFと、回動軸102から後端部101dまでの距離LRとの関係から、回動軸102には、フィン101を開けようとする力による開け側の回動トルクTB3が発生する。
【0055】
以上の図6(b)及び図7(b)において、α2>β2であるから、フィン17の方が、フィン101よりも閉めようとする力による回動トルクが大きくなる。
また、α3<β3であるから、フィン17の方が、フィン101よりも開けようとする力による回動トルクが小さくなる。
【0056】
以上より、フィン17の方が、フィン101に対して閉めようとする力による回動トルクが大きく、且つ開けようとする力による回動トルクが小さくなるから、フィン17をフィン101より小さい力で閉めることができる。
従って、トルクモータ26(図1参照)の閉め側の回動トルクを小さくすることができ、トルクモータ26の消費電力を少なくすることができる。
【0057】
また、以上の図6(c)及び図7(c)において、α4<90°であるから、フィン17の方が、フィン101よりも閉めようとする力による回動トルクが小さくなる。
また、α5<90°であるから、フィン17の方が、フィン101よりも開けようとする力による回動トルクが小さくなる。
【0058】
以上より、フィン17の方が、フィン101に対して閉めようとする力による回動トルクが小さく、且つ開けようとする力による回動トルクが小さくなるから、フィン17をフィン101より小さい力で開け閉めすることができる。
従って、フィン101よりもフィン17を開け閉めするときのトルクモータ26(図1参照)に必要なトルクを小さくすることができる。
【0059】
図8は実施例1のフィン17(図6(a)〜(c))及び比較例のフィン101(図7(a)〜(c))における開け側回動トルクとフィン回動角度との関係を示すグラフであり、縦軸は開け側回動トルクTR、横軸はフィン回動角度θ(単位は°)を表している。
実線で示す実施例(図6の実施例1)では、フィン回動角度θがゼロ(全開)及びその近傍、90°(全閉)及びその近傍において開け側回動トルクTRは小さいが、フィン回動角度θが45°に近づくにつれて次第に開け側回動トルクTRは大きくなり、θ=45°で最大になる。
【0060】
一方、破線で示す比較例では、フィン回動角度θがゼロ及びその近傍、90°及びその近傍において開け側回動トルクTRは実施例と同様に小さく、フィン回動角度θが45°近傍に近づくにつれて次第に開け側回動トルクTRは大きくなり、θ=45°より大きいフィン回動角度θで最大になる。
【0061】
フィン回動角度θ=45°では、実施例1の開け側回動トルクTR=t1、比較例の開け側回動トルクTR=t2となり、t1<t2となる。45°以外の角度でもこの関係t1<t2が維持され、45°付近で差が最大になる。
【0062】
図9はトルクモータ26(図1参照)の必要とするモータ負荷とフィン17のフィン回動角度との関係を示すグラフであり、縦軸はトルクモータ26のモータ負荷LD、横軸はフィン17のフィン回動角度θ(単位は°)を表している。
【0063】
モータ負荷LDは、トルクモータ26が複数のフィン17を回動させる際に必要なトルクであり、複数のフィン17に作用する風圧による複数の回動軸35を回動させる回動トルクに、回動軸35が回動する際の回動軸35と回動軸支持部との摩擦力を加味したものである。
【0064】
実線で示す実施例(図6の実施例1)では、フィン17の全開位置からフィン17を閉めるにつれて、モータ負荷LDは次第に大きくなるとともにその単位フィン回動角度θ当たりのモータ負荷LDの増加量も次第に大きくなり、全閉するときにモータ負荷LDは最大になる。
フィン17を全閉して回動が停止したときには、回動軸35と回動軸支持部との摩擦力が発生しなくなるため、モータ負荷LDは、フィン17を閉状態に保持するモータ負荷L3のみで済む。
【0065】
一方、破線で示す比較例では、全開から全閉までのモータ負荷LDの増加傾向は実施例1と同様であるが、モータ負荷LDの値は実施例よりも大きくなる。
実施例1及び比較例のフィン回動角度θ=45°でのモータ負荷LDはそれぞれL1,L2となり、その差(L2−L1)はファン回動角度θ=ゼロ〜90°の範囲で最大になる。
【0066】
従って、実施例1では、比較例に対してモータ負荷LDをフィン回動角度θ=ゼロ〜90°の全範囲で軽減することができ、消費電力を抑えることができる。また、トルクモータ26の容量を小さくすることもでき、トルクモータ26の小型・軽量化、省スペース化、コスト削減を図ることができる。
【0067】
上記の図3、図4に示したように、車体前端部に位置している開口部21aから走行風を導入可能な外気導入部としてのグリル21、ダクト22に、開閉手段としてのシャッター機構13が設けられ、このシャッター機構13を駆動手段としてのトルクモータ26によって開閉することにより、グリル21、ダクト22から取り入れる走行風の風量を制御するようにした、車体前部通風構造であって、シャッター機構13は、グリル21、ダクト22を全閉可能に一列に配列した、複数のフィン17によって構成され、この複数のフィン17は、それぞれ開閉中心となる軸部としての回動軸35を個別に有しており、この複数の回動軸35は、複数のフィン17の配列方向に対して直交する方向に且つ全閉状態のフィン17に沿う方向へ延びている車体前部通風構造において、各々の回動軸35は、全閉状態の各フィン17の、走行風を受ける受風面17aに対して露出することなく、受風面17aとは反対側の背面17bに向かってオフセットしていることを特徴とする。
【0068】
上記構成により、フィン17の受風面17aに回動軸35による凹凸面が形成されないため、受風面17aによる走行風の流れを乱すことがなく、ラジエータ23及びエンジンルーム内にスムーズに走行風を送ることができる。よって、車体空力性能が向上し、風切り音の発生を防止することができる。また、受風面17aの設計自由度を増すことができ、走行風の流量調整、送風方向を細かく設定することができる。
【0069】
また、回動軸35が、フィン17の断面長手方向の中心位置(即ち、中心線55)、若しくはフィン17の断面長手方向の中心位置(中心線55)よりも、開口部21a側を開けてフィン17の断面長手方向を前後方向に向けたときの前端部17c側に設けられるので、走行風が各フィン17に当たったときに、フィン17を閉める方向に回動させようとする面の面積を小さくすることができるとともに、フィン17を開ける方向に回動させようとする面の面積を大きくすることができ、フィン17を開けるときにトルクモータ26の負荷を小さくすることができる。
【0070】
更に、受風面17aが、フィン17の断面長手方向の途中に、頂部17hと、この頂部17hから前端部17cに至る第1傾斜面17jと、頂部17hから、開口部21a側を開けてフィン17の断面長手方向を前後方向に向けたときの後端部17dに至る第2傾斜面17kと、を備え、第1傾斜面17jは、前端部17cに向かうにつれて背面17bに接近するように傾斜して形成され、第2傾斜面17kは、後端部17dに向かうにつれて背面17bに接近するように傾斜して形成されるので、フィン17が完全に開いた状態から閉められる方向に回動し始めた場合、第1傾斜面17jではフィン17を閉める方向に回動させようとする走行風圧をより大きくすることができるとともに、第2傾斜面17kではフィン17を開ける方向に回動させようとする走行風圧をより小さくすることができ、フィン17を閉めるときのトルクモータ26の負荷をより小さくすることができる。従って、トルクモータ26の消費電力を抑えることができる。
【0071】
上記の図5、図8に示したように、受風面17jが走行風から受ける走行風圧が最大となるフィン17の回動角度(例えば、フィン17の全開位置から45°の位置)では、頂部17hと回動軸35とは、走行風の導風方向に沿うように延びる同一直線としての水平線57上に配置されるので、受風面17aに作用する走行風圧が最大となるフィン17の回動角度では、全面が水平線57よりも前端部17c側に位置する第1傾斜面17jによって走行風圧によるフィン17の閉方向への回動補助力をより大きくすることができるとともに、全面が水平線57よりも後端部17d側に位置する第2傾斜面17kによって走行風圧によるフィン17の閉方向への回動阻害力をより小さくすることができる。
【0072】
従って、受風面17aに作用する走行風圧が最大となるフィン17の回動角度では、例えば、受風面101a(図7(a)参照)が平坦なフィン101(図7(a)参照)に比較して、本発明では、フィン17を駆動させるトルクモータ26の負荷をより小さくすることができる。
【実施例2】
【0073】
次に、本発明の実施例2を説明する。なお、図4に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図10に示すように、開口部の全閉状態におけるフィン17は、隣り合うフィン17と回動軸35(軸部35)に沿って一部が重なるラップ部71を有する。
但し、最下段のフィン17の後端部17d付近、及び中段のフィン17の後端部17d付近には、ラップ部71が存在するが、最上段のフィン17の後端部17d付近にはラップ部が存在しない。また、実施例2では、フィンの枚数が3枚であるが、2枚、4枚等、走行風が導入可能であればフィンの枚数が他の枚数であっても差し支えない。
【0074】
次に回動軸35の位置について説明する。
図10及び図11に示すように、開口部を閉じた状態のフィン17において、受風面17aのうち、走行風を受ける範囲Sを、有効受風面72とする。中段及び下段のフィン17は、後端部17d付近において隣接する他のフィン17と重なる範囲Uを、ラップ部71とする。
【0075】
図11に示すように、フィン17の前端部17cを有効前端17cとし、有効受風面72において有効前端17cとは反対側の端を有効後端74とする。有効前端17cから回動軸35(軸部35)の中心75までの長さSaと、回動軸35の中心75から有効後端74までの長さSbとの、比が「4.8:5.2」となる位置76から、有効前端17cまでの範囲に、回動軸35を設けている。つまり、回動軸35は、長さSaの範囲に設けられている。
【0076】
また、より好ましくは、長さSaで示す範囲に回動軸35が設けられていることを条件とした上で、有効前端17cから回動軸35(軸部35)の中心75までの長さScと、回動軸35の中心75から有効後端74までの長さSdとの、比が「4.5:5.5」となる位置77から、有効後端74までの範囲(Sdで示す範囲)に、回動軸35を設けている。すなわち、回動軸35は、比が「4.8:5.2」から「4.5:5.5」の範囲R(斜線で示す領域R)に位置することが、より好ましい。
図11では、走行風を受ける範囲Sの半分の位置に符号78を付した。
但し、最上段のフィン17は、ラップ部71を有していないので、受風面17aの全体が有効受風面72に相当し、後端17cが有効後端に相当する。
【0077】
以上に述べたフィン17の作用を次に述べる。
車両が走行中に水溜まりに入った際は、車輪によって跳ね上げられた水が図2の太い矢印で示すように、外気導入部21から勢いよく浸入することがあり得る。
図12に示すように、水の流れA6,A7は、有効受風面72においてフィン17の回動軸35より有効前端17c側の面81、及び回動軸35より有効後端74側の面82にそれぞれ当たる。しかし、水平な水の流れA6,A7と接線63,64とのなす角度α4,α5よりも、回動軸35(詳しくは、軸線35a)から有効前端17cまでの距離La及び回動軸35から有効後端74までの距離Lbの影響(即ち、Lb>Laであること)を強く受けて、回動軸35には、フィン17を開けようとする力による開け側の回動トルクTA4が発生する。
【0078】
図13(a)は比較例のフィン110の作用図であり、回動軸111の中心112が、有効受風面113の中間点よりも有効後端114側にある。白抜き矢印のように水の流れが有効受風面113に当たっても、フィン110が開く方向に回動トルクが発生しないので、フィン110は開かない。結果、水の流れは押し返され、フィン110に負荷が掛かる。
図13(b)は実施例2のフィン17の作用図であり、水がフィン17に当たると、図12の説明で述べたようにフィン17が開く方向に回動トルクが発生するので、フィン17が開き、白抜き矢印のように水が逃がされる。結果、フィン17の負荷が軽減される。
【0079】
次にフィンにおける回動軸の位置とフィンの負荷の関係について、図14、図15で説明する。図14において、縦軸Pは、フィン開方向への回転時のモータ負荷を示す。直線の傾き角度は、モータ負荷の軽減率を示す(水平に近い程軽減率が低く、垂直に近い程軽減率が高い。)。
図14に示すように、フィン閉鎖時において、有効前端から回動軸の中心までの長さと、回動軸の中心から有効後端までの長さとの、比が4.8:5.2となる位置から、有効前端までの範囲に、回動軸を設けた場合は、水撃によりフィンが開方向へ回転し、フィンへの負荷を逃がす。
すなわち、図15(a)に示すように、回動軸35をフィン17の有効前端17c寄りの位置に設けた場合は、水撃時のフィンが開方向へ回転し易い。
【0080】
一方、図14に示すように、フィン閉鎖時において、有効前端から回動軸の中心までの長さと、回動軸の中心から有効後端までの長さとの、比が4.5:5.5となる位置から、有効後端までの範囲に、回動軸を設けた場合は、モータ負荷の軽減率が高く、モータの負荷が小さい。
すなわち、図15(c)に示すように、回動軸35をフィン17の有効後端74寄りの位置に設けた場合は、モータ負荷の軽減率が高い。
【0081】
上述した領域が重なる部分である領域Rに回動軸35があれば、水撃時、フィンへの負荷を逃がし、且つ、モータの負荷を小さくすることができる。図15(b)に領域Rに回動軸35がある場合を示す。
【0082】
上記の図11、図14に示したように、受風面17aのうち、開口部を閉じたときに走行風を受ける範囲を、有効受風面72とし、フィン17の前端部17cを有効前端17cとし、有効受風面72において有効前端17cとは反対側の端を有効後端74とし、有効前端17cから軸部35の中心75までの長さと、軸部35の中心75から有効後端74までの長さとの、比が4.8:5.2となる位置から、有効前端17cまでの範囲に、軸部35を設けた。
上記構成により、どのような水撃であっても、受風面17aのうち、有効前端17cから軸部35の中心75までの面81が受ける水撃荷重(水圧)と、軸部35の中心75から有効後端74までの面82とが受ける水撃荷重(水圧)とで開く方向に差が生じ、確実にフィン17を開けることができるので、フィン17が水撃を受けた際、フィン17が閉じた状態から開いた状態へと確実にフィン17を回転させることができ、水撃によるフィン17への負荷を逃がすことができ、フィン17を保護することができる。
【0083】
上記の図11、図14に示したように、軸部35の位置は、比が4.8:5.2から4.5:5.5までの範囲に設けた。
上記構成により、軸部35の位置がフィン17を開いた際のモータ負荷の軽減率が臨界的に下がる位置よりも有効前端17c側に位置することがなく、またフィン17閉鎖時のモータ負荷を高めない位置とすることができるため、通風装置の高効率化を図ることができる。
【0084】
尚、実施例1及び2では、図4に示したように、フィン17の長手方向を前後方向に延びるように配置した際に、フィン17の受風面17aにおいて、頂部17hから前端部17cに向かうにつれて背面17bに接近するように傾斜して形成され、頂部17hから後端部17dに向かうにつれて背面17bに接近するように傾斜して形成される面としたが、これに限らず、頂部17hから前端部17cに向かうにつれて背面17bに接近するように傾斜して形成され、頂部17hから後端部17dまでの範囲を傾斜させずに真っすぐに車両後方に延びる面としてもよい。
【0085】
また、請求項1から請求項4までのいづれか1項では、回動軸35を、フィン17の断面長手方向の中心位置である中心線55よりも、前端部17c側に設けたが、これに限らず、フィン17の断面長手方向の中心線55上に設けてもよい。
また、図1に示したように、フィン17は上下方向に間隔をおいて外気導入部に配置される場合に限定されず、外気導入部22を開閉できれば、フィン17が任意の方向に間隔をおいて外気導入部に配置されていても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の車体前部通風構造は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0087】
13…開閉手段(シャッター機構)、17…フィン、17a…受風面、17b…背面、17c…前端部(前端、有効前端)、17d…後端部(後端)、17h…頂部、17j…第1傾斜面、17k…第2傾斜面、21,22…外気導入部(グリル、ダクト)、21a…開口部、26…駆動手段(トルクモータ)、35…軸部(回動軸)、55…フィンの断面長手方向の中心(長手方向の中心線)、57…直線(水平線)、71…ラップ部、72…有効受風面、74…有効後端、75…回動軸の中心、76…比が4.8:5.2となる位置、77…比が4.5:5.5となる位置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部に設けられたラジエータ、エンジンルーム内等に走行風を導く車体前部通風構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車体前部通風構造として、ラジエータの前方に空気流通路を開閉するシャッタ装置を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1の図1〜図3によれば、車体ボディ12に筐体21,22が取付けられ、これらの筐体21,22にそれぞれシャッタ装置41,42が取付けられ、これらのシャッタ装置41,42によって、車体前端部に形成されたグリル開口部14,16に向けて開口する空気流通路28,32を開閉してシャッタ装置41,42の後方に設けられたラジエータ11やエンジンルームへ導かれる走行風量を調整する。
【0003】
シャッタ装置42は、複数の羽根部材43を備える。羽根部材43は、板状の羽根体44と、この羽根体44を支持する支持軸45とからなり、支持軸45は、筐体22の両端部に回動可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−001503公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
支持軸45の外径は、羽根体44の板厚よりも大きく、羽根体44の表面から突出している。従って、羽根部材43に走行風が当たったときに、羽根部材43の表面に沿って流れる空気流が乱れる。この結果、空気抵抗が大きくなったり、風切り音が発生することがある。
また、羽根部材43の表面に支持軸45が突出していると、羽根部材43の表面の設計自由度が制約され、走行風の制御に影響を及ぼすことがある。
【0006】
本発明の目的は、車体前部に導入される空気流を乱すことがなく、更に、設計自由度を増すことが可能な車体前部通風構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前端部に位置している開口部から走行風を導入可能な外気導入部に、開閉手段が設けられ、この開閉手段を駆動手段によって開閉することにより、前記外気導入部から取り入れる前記走行風の風量を制御するようにした、車体前部通風構造であって、前記開閉手段は、前記外気導入部を全閉可能に一列に配列した、複数のフィンによって構成され、この複数のフィンは、それぞれ開閉中心となる軸部を個別に有しており、この複数の軸部は、前記複数のフィンの配列方向に対して直交する方向に且つ全閉状態のフィンに沿う方向へ延びている車体前部通風構造において、前記各々の軸部は、全閉状態の前記各フィンの、前記走行風を受ける受風面に対して露出することなく、前記受風面とは反対側の背面に向かってオフセットしていることを特徴とする。
【0008】
開口部を閉じたときにフィンにおける車両前方を指向する受風面から軸部が背面側に離された位置に設けられ、軸部が受風面に突出しない。このように、受風面には従来のような凹凸が形成されず、平面又は曲面等の滑らかな受風面が形成され、受風面に沿って空気流がスムーズに流れる。
【0009】
請求項2に係る発明は、軸部が、フィンの断面長手方向の中心位置、若しくはフィンの断面長手方向の中心位置よりも、開口部を開けてフィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの前端部側に設けられることを特徴とする。
【0010】
軸部をフィンの断面長手方向の中心位置よりも前端部側に設けた場合、走行風がフィンに当たったときに、フィンを閉める方向に回動させようとする受風面の面積が小さくなるとともに、フィンを開ける方向に回動させようとする受風面の面積が大きくなる。
【0011】
請求項3に係る発明は、受風面が、フィンの断面長手方向の途中に、頂部と、この頂部から前端部に至る第1傾斜面と、頂部から、開口部を開けてフィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの後端部に至る第2傾斜面と、を備え、第1傾斜面は、前端部に向かうにつれて背面に接近するように傾斜して形成され、第2傾斜面は、後端部に向かうにつれて背面に接近するように傾斜して形成されることを特徴とする。
【0012】
フィンが完全に開いた状態から閉める方向に回動し始めた場合、第1傾斜面は第2傾斜面に比べて走行風に対してより直角に近づき、走行風が第1傾斜面に当たってフィンを閉める方向に回動させようとする走行風圧がより大きくなるとともに、走行風が第2斜面に当たってフィンを開ける方向に回動させようとする走行風圧がより小さくなる。この結果、走行風圧によるフィンの閉め側の回動トルクが大きくなる。
【0013】
請求項4に係る発明は、受風面が走行風から受ける走行風圧が最大となるフィンの回動角度では、頂部と軸部とは、走行風の導風方向に沿うように延びる同一直線上に配置されることを特徴とする。
【0014】
受風面に作用する走行風圧が最大となるフィンの回動角度では、第1傾斜面の全面が、頂部と軸部とを通る直線よりも前端部側に位置し、第2傾斜面の全面が、頂部と軸部とを通る直線よりも後端部側に位置する。
【0015】
請求項5に係る発明は、受風面のうち、開口部を閉じたときに走行風を受ける範囲を、有効受風面とし、フィンの前端部を有効前端とし、有効受風面において有効前端とは反対側の端を有効後端とし、有効前端から軸部の中心までの長さと、軸部の中心から有効後端までの長さとの、比が4.8:5.2となる位置から、有効前端までの範囲に、軸部を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、軸部の位置は、比が4.8:5.2から4.5:5.5までの範囲に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、開閉手段は、前記外気導入部を全閉可能に一列に配列した、複数のフィンによって構成され、この複数のフィンは、それぞれ開閉中心となる軸部を個別に有しており、この複数の軸部は、複数のフィンの配列方向に対して直交する方向に且つ全閉状態のフィンに沿う方向へ延びており、各々の軸部は、全閉状態の各フィンの、走行風を受ける受風面に対して露出することなく、受風面とは反対側の背面に向かってオフセットしているので、フィンの受風面に軸部による凹凸面が形成されないため、受風面による走行風の流れを乱すことがなく、ラジエータ及びエンジンルーム内にスムーズに走行風を送ることができる。よって、車体空力性能が向上し、風切り音の発生を防止することができる。また、受風面の設計自由度を増すことができ、走行風の流量調整、送風方向を細かく設定することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、軸部が、フィンの断面長手方向の中心位置、若しくはフィンの断面長手方向の中心位置よりも、開口部を開けてフィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの前端部側に設けられるので、走行風が各フィンに当たったときに、フィンを閉める方向に回動させようとする面の面積を小さくすることができるとともに、フィンを開ける方向に回動させようとする面の面積を大きくすることができ、フィンを開けるときに駆動手段の負荷を小さくすることができる。
車両が水たまりに進入して、フィンが水撃を受けた際、軸前部と軸後部とが受ける水圧に差ができるため、この水圧差によりフィンを閉状態から開状態へと回転させることができ、水撃によるフィンへの過度な負荷を逃がすことができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、受風面が、フィンの断面長手方向の途中に、頂部と、この頂部から前端部に至る第1傾斜面と、頂部から、開口部を開けてフィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの後端部に至る第2傾斜面と、を備え、第1傾斜面は、前端部に向かうにつれて背面に接近するように傾斜して形成され、第2傾斜面は、後端部に向かうにつれて背面に接近するように傾斜して形成されるので、フィンが完全に開いた状態から閉められる方向に回動し始めた場合、第1傾斜面ではフィンを閉める方向に回動させようとする走行風圧をより大きくすることができるとともに、第2傾斜面ではフィンを開ける方向に回動させようとする走行風圧をより小さくすることができ、フィンを閉めるときの駆動手段の負荷をより小さくすることができる。従って、駆動手段の消費電力を抑えることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、受風面が走行風から受ける走行風圧が最大となるフィンの回動角度では、頂部と軸部とは、走行風の導風方向に沿うように延びる同一直線上に配置されるので、受風面に作用する走行風圧が最大となるフィンの回動角度では、全面が直線よりも前端部側に位置する第1傾斜面によって走行風圧によるフィンの閉方向への回動補助力をより大きくすることができるとともに、全面が直線よりも後端部側に位置する第2傾斜面によって走行風圧によるフィンの閉方向への回動阻害力をより小さくすることができる。
【0021】
従って、受風面に作用する走行風圧が最大となるフィンの回動角度では、例えば、受風面が平坦なフィンに比較して、本発明では、フィンを駆動させる駆動手段の負荷をより小さくすることができる。
【0022】
請求項5に係る発明では、有効前端から軸部の中心までの長さと、軸部の中心から有効後端までの長さとの、比が4.8:5.2となる位置から、有効前端までの範囲に、軸部を設けた。どのような水撃であっても、受風面のうち、有効前端から軸部の中心までの面が受ける水撃荷重(水圧)と、軸部の中心から有効後端までの面とが受ける水撃荷重(水圧)とで開く方向に差が生じ、確実にフィンを開けることができるので、フィンが水撃を受けた際、フィンが閉じた状態から開いた状態へと確実にフィンを回転させることができ、水撃によるフィンへの負荷を逃がすことができ、フィンを保護することができる。
【0023】
請求項6に係る発明では、軸部の位置は、比が4.8:5.2から4.5:5.5までの範囲に設けた。軸部の位置がフィンを開いた際のモータ負荷の軽減率が臨界的に下がる位置よりも有効前端側に位置することがなく、またフィン閉鎖時のモータ負荷を高めない位置とすることができるため、通風装置の高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1に係る通風構造を示す車体前部の斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る通風構造のシャッター機構を閉じた状態の断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る通風構造のシャッター機構を開いた状態の断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係るフィンの側面図である。
【図5】本発明の実施例1に係るフィンを傾けた状態の断面図である。
【図6】本発明の実施例1に係るフィンの作用を示す作用図である。
【図7】フィンの比較例の作用を示す作用図である。
【図8】本発明の実施例1に係るフィンの開け側回動トルクとフィン回動角度との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例1に係るトルクモータ負荷とフィン回動角度との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例2に係る全閉時のフィンの正面図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【図12】本発明の実施例2に係るフィンの力の作用を示す作用図である。
【図13】本発明の水を逃がすときのフィンの作用図である。
【図14】本発明の回動軸の位置とフィン開閉及びモータ負荷の関係を示すグラフである。
【図15】本発明の回動軸の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0026】
先ず、本発明の実施例1を説明する。図中の矢印(FRONT)は車両前方を示している。
図1に示すように、車両のフロントボディを構成するバルクヘッド10の前面に、ラジエータ、エンジンルーム内に送られる走行風の量を制御する通風装置11が取付けられている。
通風装置11は、バルクヘッド10の前面に取付けられたシャッター機構13を備える。
【0027】
シャッター機構13は、バルクヘッド10に取付けられたシャッターベース14と、このシャッターベース14に設けられた複数の縦長支持部材16と、これらの縦長支持部材16で開閉自在に支持された複数(本実施例1では3個)のフィン17とを備える。なお、符号14a,14bはシャッターベース14の上部及び下部に設けられた通風口である。
【0028】
図2に示すように、通風装置11は、車体前端部に設けられたグリル21の開口部21aに前端部が接続されるとともに後端部がシャッター機構13に接続されたダクト22と、ラジエータ23の前方に配置されたシャッター機構13と、このシャッター機構13の各フィン17にリンク機構24を介して連結されたトルクモータ26と、このトルクモータ26を制御する制御部27と、リンク機構24の可動部の移動を規制するストッパ部を兼ねるとともにリンク機構24を案内するガイド部材28とからなる。なお、符号31はシャッター機構13の後方で且つラジエータ23の前方に配置されたエアコンディショナ用コンデンサである。
図2ではシャッター機構13の各フィン17は閉じた状態(全閉)にあり、ラジエータ23、エンジンルーム内には走行風が導かれない。
【0029】
図1〜2に示すように、シャッター機構13は、シャッターベース14の縦長部材16で回動自在に支持された複数の回動軸35と、これらの回動軸35にそれぞれ一体的に取付けられたフィン17及びアーム部材36とを備え、各アーム部材36がリンク機構24に連結されている。
【0030】
リンク機構24は、複数のアーム部材36に連結された縦に延びるスライドリンク37と、このスライドリンク37の下端部に一端部が連結ピン38を介して連結されるとともに他端部がトルクモータ26の回転軸33(モータ軸33)に取付けられたアームリンク39とからなる。
【0031】
アーム部材36とスライドリンク37とは、アーム部材36の端部に設けられたアーム軸部36aがスライドリンク37に形成された長穴37aに移動自在に挿入されることで連結されている。
連結ピン38は、スライドリンク37の下端部に形成された長穴37aに移動自在に挿入されている。
【0032】
トルクモータ26は、その回転軸33が制限された回転角度の範囲内で回転し、その回転軸33に発生するトルクを利用する直流モータであり、モータケース43を備え、このモータケース43内に制御部27が収納されている。
【0033】
ガイド部28は、上下にスライドするスライドリンク37の下降を規制するとともにスライドリンク37の下部をスライド自在に支持するロアガイド46と、スライドリンク37の上昇を規制するとともにスライドリンク37の上部をスライド自在に支持するアッパガイド47とからなる。
図2の状態では、スライドリンク37の上部がアッパガイド47の下端に当たっている。
【0034】
図3はシャッター機構13の各フィン17が開いた状態(全開)を示している。この状態で車両が走行中は、グリル21の開口部21aから導入された走行風は、ダクト22を通り、各フィン17間を通ってエアコンディショナ用コンデンサ31及びラジエータ23内を通過することによって熱交換する。更に、走行風はラジエータ23の後方のエンジンルーム内に至る。
図3の状態では、スライドリンク37の下部がロアガイド46の上端に当たっている。
【0035】
図4では、フィン17が、図3に示したのと同様に、断面長手方向が車両前後方向に延びた全開時の状態を示している。ここで、図3及び図4に示すように、回動軸35に対して直角な方向の断面、つまり軸直角の断面に沿って、フィン17を断面したときに、この断面において細長い方をフィン17の長手方向又は断面長手方向といい、短い方をフィン17の厚さ方向ということにする。
フィン17は、厚さ方向に対向する2つの面、即ち、一方の面を形成する受風面17a及び他方の面を形成する背面17bと、断面長手方向の前端部17c(前端17c)と、断面長手方向の後端部17d(後端17d)とを備える。
【0036】
受風面17aは、前側の主受風面17fと、後端部17d側の後端部面17gとからなる。
主受風面17fは、上方に凸となる湾曲した曲面に形成され、前端部17c寄りの位置に厚さ方向に最も突出した(最も高く形成された)頂部17h(黒丸で示された部分である。)が設けられている。
後端部面17gは、主受風面17fに滑らかに連続するようにほぼ平面状に形成されている。
【0037】
主受風面17fの頂部17hよりも前端部17c側の部分は、前下がりに形成された湾曲した第1傾斜面17jであり、頂部17gよりも後端部17d側の部分は、後下がりに形成された湾曲した第2傾斜面17kである。
【0038】
背面17bは、平坦に形成されるとともに、軽量化のための前部凹部17m及び後部凹部17nが形成されている。
前端部17cは、受風面17aに連続する前方に凸となる湾曲した曲面を備え、この曲面は上記の主受風面17fに含まれる。
後端部17dは、厚さが他の部分よりも薄く形成されている。
【0039】
回動軸35、詳しくは回動軸35の軸線35aは、フィン17の最大厚さをTとした時に、最大厚さTの厚さ方向の中心線50に対して背面17b側へ距離d1だけオフセットさせて配置され、且つ、フィン17の断面長手方向の長さ、即ちフィン17の全長をLとしたときに、長手方向の中心線55に対して前端部17c側へ距離d2だけオフセットさせて配置されている。
【0040】
受風面17aの頂部17hは、中心線55に対して前端部17c側へ距離d3だけオフセットさせて配置され、回動軸35の軸線35aよりも更に前端部17c側に配置されている。
【0041】
図5に示すように、フィン17の断面長手方向が、フィン17を閉める側に水平方向に対して、例えば、45°傾いたときには、受風面17aの頂部17hと回動軸35の軸線35aとは、走行風の導風方向に沿う方向、ここでは、前後方向に延びる水平線57上に前後に並ぶように配置される。
このとき、水平線57より下方に第1傾斜面17j、水平線57より上方に第2傾斜面17kが配置される。
【0042】
第1傾斜面17j上の第1の代表点(任意の点)を61、第2傾斜面17k上の第2の代表点(任意の点)を62とし、第1の代表点61を通る第1傾斜面17jの接線を第1接線63、代表点62を通る第2傾斜面17kの接線を第2接線64とする。
【0043】
以上に述べたフィン17の作用を次に説明する。
図6(a)は全開時のフィン17を示している。フィン17の断面の長手方向は車両前後方向に延びている。
【0044】
このとき、走行風の導風方向の流れ、即ち、水平な走行風の流れA1と第1接線63とのなす角度を第1角度α1とすると、この第1角度α1によって、回動軸35には、フィン17を閉めようとする力による閉め側の第1の回動トルクTA1が発生する。
【0045】
図6(b)は図6(a)の状態に対してフィン17が閉じ側に、例えば、45°傾いた状態を示している。このとき、フィン17が走行風から受風面17aに受ける風圧による回動軸35のフィン開け側の回動トルクは、フィン17の受風面17aと回動軸35との位置関係及び受風面17aの形状によって最も大きくなる。
【0046】
このとき、水平な走行風A2と第1接線63とのなす角度を第2角度α2とすると、α2>α1(図6(a)参照)であり、この第2角度α2によって、回動軸35にはフィン17を閉めようとする力による閉め側の回動トルクが発生し、この回動トルクは図6(a)の第1の回動トルクTA1よりも大きくなる。
【0047】
また、水平な走行風の流れA3と接線64とのなす角度を第3角度α3とすると、この第3角度α3によって、回動軸35には、フィン17を開けようとする力による開け側の回動トルクも発生する。
この結果、回動軸35には、これらの第2角度α2による閉め側の回動トルクと第3角度α3による開け側の回動トルクとを合わせた開け側の第2の回動トルクTA2が発生する。
【0048】
図6(c)は全閉時のフィン17を示している。フィン17の断面の長手方向は上下方向に延びている。
水平な走行風の流れA4,A5は、フィン17の第1傾斜面17j及び第2傾斜面17kにそれぞれ当たるが、水平な走行風の流れA4,A5と第1・第2接線63,64とのなす第4角度α4,第5角度α5よりも、回動軸35(詳しくは、軸線35a)から前端部17cまでの距離LF及び回動軸35から後端部17dまでの距離LRの影響(即ち、LR>LFであること)を強く受けて、回動軸35には、フィン17を開けようとする力による開け側の回動トルクTA3が発生する。
【0049】
図7(a)〜(c)はフィン17に対する比較例のフィン101の作用を示している。
図7(a)は全開時のフィン101を示している。
フィン101は、矩形断面に形成され、このフィン101の断面の断面長手方向は前後方向に延びている。
【0050】
フィン101は、厚さ方向に対向する2つの面、即ち、一方の面を形成する受風面101a及び他方の面を形成する背面101bと、断面長手方向の前端部101cと、断面長手方向の後端部101dとを備える。
フィン101の平坦な受風面101aは走行風の流れに沿っているため、フィン101の回動軸102には回動トルクがほとんど発生しない。
【0051】
図7(b)は図7(a)の状態に対してフィン101が閉め側に45°傾いた状態を示している。フィン101の傾き角45°付近では、フィン101が走行風から受風面101aに受ける風圧による回動軸102のフィン開け側の回動トルクは、フィン101の受風面101aと回動軸102との位置関係及び受風面101aの形状によって最も大きくなる。
【0052】
このときの受風面101aを、回動軸102の軸線102aを通る水平線105より下方に位置する下受風面101fと、水平線105より上方に位置する上受風面101gとに分けると、水平な走行風の流れA2と下受風面101fとのなす角度β2、及び水平な走行風の流れA3と上受風面101gとのなす角度β3は、β2=β3=45°である。
【0053】
従って、角度β2によって、回動軸102にはフィン101を閉めようとする力による閉め側の回動トルクが発生し、角度β3によって、回動軸102にはフィン101を開けようとする力による開け側の回動トルクが発生する。
この結果、回動軸102には、角度β2による閉じ側の回動トルクと角度β3による開け側の回動トルクとを合わせた開け側の回動トルクTB2が発生する。
【0054】
図7(c)は全閉時のフィン101を示している。フィン101の断面の長手方向は上下方向に延びている。
走行風の流れA4,A5は、受風面101aにおける回動軸102の軸線102aより下方の位置及び上方の位置にそれぞれ直角に当たり、回動軸102(詳しくは、軸線102a)から前端部101cまでの距離LFと、回動軸102から後端部101dまでの距離LRとの関係から、回動軸102には、フィン101を開けようとする力による開け側の回動トルクTB3が発生する。
【0055】
以上の図6(b)及び図7(b)において、α2>β2であるから、フィン17の方が、フィン101よりも閉めようとする力による回動トルクが大きくなる。
また、α3<β3であるから、フィン17の方が、フィン101よりも開けようとする力による回動トルクが小さくなる。
【0056】
以上より、フィン17の方が、フィン101に対して閉めようとする力による回動トルクが大きく、且つ開けようとする力による回動トルクが小さくなるから、フィン17をフィン101より小さい力で閉めることができる。
従って、トルクモータ26(図1参照)の閉め側の回動トルクを小さくすることができ、トルクモータ26の消費電力を少なくすることができる。
【0057】
また、以上の図6(c)及び図7(c)において、α4<90°であるから、フィン17の方が、フィン101よりも閉めようとする力による回動トルクが小さくなる。
また、α5<90°であるから、フィン17の方が、フィン101よりも開けようとする力による回動トルクが小さくなる。
【0058】
以上より、フィン17の方が、フィン101に対して閉めようとする力による回動トルクが小さく、且つ開けようとする力による回動トルクが小さくなるから、フィン17をフィン101より小さい力で開け閉めすることができる。
従って、フィン101よりもフィン17を開け閉めするときのトルクモータ26(図1参照)に必要なトルクを小さくすることができる。
【0059】
図8は実施例1のフィン17(図6(a)〜(c))及び比較例のフィン101(図7(a)〜(c))における開け側回動トルクとフィン回動角度との関係を示すグラフであり、縦軸は開け側回動トルクTR、横軸はフィン回動角度θ(単位は°)を表している。
実線で示す実施例(図6の実施例1)では、フィン回動角度θがゼロ(全開)及びその近傍、90°(全閉)及びその近傍において開け側回動トルクTRは小さいが、フィン回動角度θが45°に近づくにつれて次第に開け側回動トルクTRは大きくなり、θ=45°で最大になる。
【0060】
一方、破線で示す比較例では、フィン回動角度θがゼロ及びその近傍、90°及びその近傍において開け側回動トルクTRは実施例と同様に小さく、フィン回動角度θが45°近傍に近づくにつれて次第に開け側回動トルクTRは大きくなり、θ=45°より大きいフィン回動角度θで最大になる。
【0061】
フィン回動角度θ=45°では、実施例1の開け側回動トルクTR=t1、比較例の開け側回動トルクTR=t2となり、t1<t2となる。45°以外の角度でもこの関係t1<t2が維持され、45°付近で差が最大になる。
【0062】
図9はトルクモータ26(図1参照)の必要とするモータ負荷とフィン17のフィン回動角度との関係を示すグラフであり、縦軸はトルクモータ26のモータ負荷LD、横軸はフィン17のフィン回動角度θ(単位は°)を表している。
【0063】
モータ負荷LDは、トルクモータ26が複数のフィン17を回動させる際に必要なトルクであり、複数のフィン17に作用する風圧による複数の回動軸35を回動させる回動トルクに、回動軸35が回動する際の回動軸35と回動軸支持部との摩擦力を加味したものである。
【0064】
実線で示す実施例(図6の実施例1)では、フィン17の全開位置からフィン17を閉めるにつれて、モータ負荷LDは次第に大きくなるとともにその単位フィン回動角度θ当たりのモータ負荷LDの増加量も次第に大きくなり、全閉するときにモータ負荷LDは最大になる。
フィン17を全閉して回動が停止したときには、回動軸35と回動軸支持部との摩擦力が発生しなくなるため、モータ負荷LDは、フィン17を閉状態に保持するモータ負荷L3のみで済む。
【0065】
一方、破線で示す比較例では、全開から全閉までのモータ負荷LDの増加傾向は実施例1と同様であるが、モータ負荷LDの値は実施例よりも大きくなる。
実施例1及び比較例のフィン回動角度θ=45°でのモータ負荷LDはそれぞれL1,L2となり、その差(L2−L1)はファン回動角度θ=ゼロ〜90°の範囲で最大になる。
【0066】
従って、実施例1では、比較例に対してモータ負荷LDをフィン回動角度θ=ゼロ〜90°の全範囲で軽減することができ、消費電力を抑えることができる。また、トルクモータ26の容量を小さくすることもでき、トルクモータ26の小型・軽量化、省スペース化、コスト削減を図ることができる。
【0067】
上記の図3、図4に示したように、車体前端部に位置している開口部21aから走行風を導入可能な外気導入部としてのグリル21、ダクト22に、開閉手段としてのシャッター機構13が設けられ、このシャッター機構13を駆動手段としてのトルクモータ26によって開閉することにより、グリル21、ダクト22から取り入れる走行風の風量を制御するようにした、車体前部通風構造であって、シャッター機構13は、グリル21、ダクト22を全閉可能に一列に配列した、複数のフィン17によって構成され、この複数のフィン17は、それぞれ開閉中心となる軸部としての回動軸35を個別に有しており、この複数の回動軸35は、複数のフィン17の配列方向に対して直交する方向に且つ全閉状態のフィン17に沿う方向へ延びている車体前部通風構造において、各々の回動軸35は、全閉状態の各フィン17の、走行風を受ける受風面17aに対して露出することなく、受風面17aとは反対側の背面17bに向かってオフセットしていることを特徴とする。
【0068】
上記構成により、フィン17の受風面17aに回動軸35による凹凸面が形成されないため、受風面17aによる走行風の流れを乱すことがなく、ラジエータ23及びエンジンルーム内にスムーズに走行風を送ることができる。よって、車体空力性能が向上し、風切り音の発生を防止することができる。また、受風面17aの設計自由度を増すことができ、走行風の流量調整、送風方向を細かく設定することができる。
【0069】
また、回動軸35が、フィン17の断面長手方向の中心位置(即ち、中心線55)、若しくはフィン17の断面長手方向の中心位置(中心線55)よりも、開口部21a側を開けてフィン17の断面長手方向を前後方向に向けたときの前端部17c側に設けられるので、走行風が各フィン17に当たったときに、フィン17を閉める方向に回動させようとする面の面積を小さくすることができるとともに、フィン17を開ける方向に回動させようとする面の面積を大きくすることができ、フィン17を開けるときにトルクモータ26の負荷を小さくすることができる。
【0070】
更に、受風面17aが、フィン17の断面長手方向の途中に、頂部17hと、この頂部17hから前端部17cに至る第1傾斜面17jと、頂部17hから、開口部21a側を開けてフィン17の断面長手方向を前後方向に向けたときの後端部17dに至る第2傾斜面17kと、を備え、第1傾斜面17jは、前端部17cに向かうにつれて背面17bに接近するように傾斜して形成され、第2傾斜面17kは、後端部17dに向かうにつれて背面17bに接近するように傾斜して形成されるので、フィン17が完全に開いた状態から閉められる方向に回動し始めた場合、第1傾斜面17jではフィン17を閉める方向に回動させようとする走行風圧をより大きくすることができるとともに、第2傾斜面17kではフィン17を開ける方向に回動させようとする走行風圧をより小さくすることができ、フィン17を閉めるときのトルクモータ26の負荷をより小さくすることができる。従って、トルクモータ26の消費電力を抑えることができる。
【0071】
上記の図5、図8に示したように、受風面17jが走行風から受ける走行風圧が最大となるフィン17の回動角度(例えば、フィン17の全開位置から45°の位置)では、頂部17hと回動軸35とは、走行風の導風方向に沿うように延びる同一直線としての水平線57上に配置されるので、受風面17aに作用する走行風圧が最大となるフィン17の回動角度では、全面が水平線57よりも前端部17c側に位置する第1傾斜面17jによって走行風圧によるフィン17の閉方向への回動補助力をより大きくすることができるとともに、全面が水平線57よりも後端部17d側に位置する第2傾斜面17kによって走行風圧によるフィン17の閉方向への回動阻害力をより小さくすることができる。
【0072】
従って、受風面17aに作用する走行風圧が最大となるフィン17の回動角度では、例えば、受風面101a(図7(a)参照)が平坦なフィン101(図7(a)参照)に比較して、本発明では、フィン17を駆動させるトルクモータ26の負荷をより小さくすることができる。
【実施例2】
【0073】
次に、本発明の実施例2を説明する。なお、図4に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図10に示すように、開口部の全閉状態におけるフィン17は、隣り合うフィン17と回動軸35(軸部35)に沿って一部が重なるラップ部71を有する。
但し、最下段のフィン17の後端部17d付近、及び中段のフィン17の後端部17d付近には、ラップ部71が存在するが、最上段のフィン17の後端部17d付近にはラップ部が存在しない。また、実施例2では、フィンの枚数が3枚であるが、2枚、4枚等、走行風が導入可能であればフィンの枚数が他の枚数であっても差し支えない。
【0074】
次に回動軸35の位置について説明する。
図10及び図11に示すように、開口部を閉じた状態のフィン17において、受風面17aのうち、走行風を受ける範囲Sを、有効受風面72とする。中段及び下段のフィン17は、後端部17d付近において隣接する他のフィン17と重なる範囲Uを、ラップ部71とする。
【0075】
図11に示すように、フィン17の前端部17cを有効前端17cとし、有効受風面72において有効前端17cとは反対側の端を有効後端74とする。有効前端17cから回動軸35(軸部35)の中心75までの長さSaと、回動軸35の中心75から有効後端74までの長さSbとの、比が「4.8:5.2」となる位置76から、有効前端17cまでの範囲に、回動軸35を設けている。つまり、回動軸35は、長さSaの範囲に設けられている。
【0076】
また、より好ましくは、長さSaで示す範囲に回動軸35が設けられていることを条件とした上で、有効前端17cから回動軸35(軸部35)の中心75までの長さScと、回動軸35の中心75から有効後端74までの長さSdとの、比が「4.5:5.5」となる位置77から、有効後端74までの範囲(Sdで示す範囲)に、回動軸35を設けている。すなわち、回動軸35は、比が「4.8:5.2」から「4.5:5.5」の範囲R(斜線で示す領域R)に位置することが、より好ましい。
図11では、走行風を受ける範囲Sの半分の位置に符号78を付した。
但し、最上段のフィン17は、ラップ部71を有していないので、受風面17aの全体が有効受風面72に相当し、後端17cが有効後端に相当する。
【0077】
以上に述べたフィン17の作用を次に述べる。
車両が走行中に水溜まりに入った際は、車輪によって跳ね上げられた水が図2の太い矢印で示すように、外気導入部21から勢いよく浸入することがあり得る。
図12に示すように、水の流れA6,A7は、有効受風面72においてフィン17の回動軸35より有効前端17c側の面81、及び回動軸35より有効後端74側の面82にそれぞれ当たる。しかし、水平な水の流れA6,A7と接線63,64とのなす角度α4,α5よりも、回動軸35(詳しくは、軸線35a)から有効前端17cまでの距離La及び回動軸35から有効後端74までの距離Lbの影響(即ち、Lb>Laであること)を強く受けて、回動軸35には、フィン17を開けようとする力による開け側の回動トルクTA4が発生する。
【0078】
図13(a)は比較例のフィン110の作用図であり、回動軸111の中心112が、有効受風面113の中間点よりも有効後端114側にある。白抜き矢印のように水の流れが有効受風面113に当たっても、フィン110が開く方向に回動トルクが発生しないので、フィン110は開かない。結果、水の流れは押し返され、フィン110に負荷が掛かる。
図13(b)は実施例2のフィン17の作用図であり、水がフィン17に当たると、図12の説明で述べたようにフィン17が開く方向に回動トルクが発生するので、フィン17が開き、白抜き矢印のように水が逃がされる。結果、フィン17の負荷が軽減される。
【0079】
次にフィンにおける回動軸の位置とフィンの負荷の関係について、図14、図15で説明する。図14において、縦軸Pは、フィン開方向への回転時のモータ負荷を示す。直線の傾き角度は、モータ負荷の軽減率を示す(水平に近い程軽減率が低く、垂直に近い程軽減率が高い。)。
図14に示すように、フィン閉鎖時において、有効前端から回動軸の中心までの長さと、回動軸の中心から有効後端までの長さとの、比が4.8:5.2となる位置から、有効前端までの範囲に、回動軸を設けた場合は、水撃によりフィンが開方向へ回転し、フィンへの負荷を逃がす。
すなわち、図15(a)に示すように、回動軸35をフィン17の有効前端17c寄りの位置に設けた場合は、水撃時のフィンが開方向へ回転し易い。
【0080】
一方、図14に示すように、フィン閉鎖時において、有効前端から回動軸の中心までの長さと、回動軸の中心から有効後端までの長さとの、比が4.5:5.5となる位置から、有効後端までの範囲に、回動軸を設けた場合は、モータ負荷の軽減率が高く、モータの負荷が小さい。
すなわち、図15(c)に示すように、回動軸35をフィン17の有効後端74寄りの位置に設けた場合は、モータ負荷の軽減率が高い。
【0081】
上述した領域が重なる部分である領域Rに回動軸35があれば、水撃時、フィンへの負荷を逃がし、且つ、モータの負荷を小さくすることができる。図15(b)に領域Rに回動軸35がある場合を示す。
【0082】
上記の図11、図14に示したように、受風面17aのうち、開口部を閉じたときに走行風を受ける範囲を、有効受風面72とし、フィン17の前端部17cを有効前端17cとし、有効受風面72において有効前端17cとは反対側の端を有効後端74とし、有効前端17cから軸部35の中心75までの長さと、軸部35の中心75から有効後端74までの長さとの、比が4.8:5.2となる位置から、有効前端17cまでの範囲に、軸部35を設けた。
上記構成により、どのような水撃であっても、受風面17aのうち、有効前端17cから軸部35の中心75までの面81が受ける水撃荷重(水圧)と、軸部35の中心75から有効後端74までの面82とが受ける水撃荷重(水圧)とで開く方向に差が生じ、確実にフィン17を開けることができるので、フィン17が水撃を受けた際、フィン17が閉じた状態から開いた状態へと確実にフィン17を回転させることができ、水撃によるフィン17への負荷を逃がすことができ、フィン17を保護することができる。
【0083】
上記の図11、図14に示したように、軸部35の位置は、比が4.8:5.2から4.5:5.5までの範囲に設けた。
上記構成により、軸部35の位置がフィン17を開いた際のモータ負荷の軽減率が臨界的に下がる位置よりも有効前端17c側に位置することがなく、またフィン17閉鎖時のモータ負荷を高めない位置とすることができるため、通風装置の高効率化を図ることができる。
【0084】
尚、実施例1及び2では、図4に示したように、フィン17の長手方向を前後方向に延びるように配置した際に、フィン17の受風面17aにおいて、頂部17hから前端部17cに向かうにつれて背面17bに接近するように傾斜して形成され、頂部17hから後端部17dに向かうにつれて背面17bに接近するように傾斜して形成される面としたが、これに限らず、頂部17hから前端部17cに向かうにつれて背面17bに接近するように傾斜して形成され、頂部17hから後端部17dまでの範囲を傾斜させずに真っすぐに車両後方に延びる面としてもよい。
【0085】
また、請求項1から請求項4までのいづれか1項では、回動軸35を、フィン17の断面長手方向の中心位置である中心線55よりも、前端部17c側に設けたが、これに限らず、フィン17の断面長手方向の中心線55上に設けてもよい。
また、図1に示したように、フィン17は上下方向に間隔をおいて外気導入部に配置される場合に限定されず、外気導入部22を開閉できれば、フィン17が任意の方向に間隔をおいて外気導入部に配置されていても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の車体前部通風構造は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0087】
13…開閉手段(シャッター機構)、17…フィン、17a…受風面、17b…背面、17c…前端部(前端、有効前端)、17d…後端部(後端)、17h…頂部、17j…第1傾斜面、17k…第2傾斜面、21,22…外気導入部(グリル、ダクト)、21a…開口部、26…駆動手段(トルクモータ)、35…軸部(回動軸)、55…フィンの断面長手方向の中心(長手方向の中心線)、57…直線(水平線)、71…ラップ部、72…有効受風面、74…有効後端、75…回動軸の中心、76…比が4.8:5.2となる位置、77…比が4.5:5.5となる位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前端部に位置している開口部から走行風を導入可能な外気導入部に、開閉手段が設けられ、この開閉手段を駆動手段によって開閉することにより、前記外気導入部から取り入れる前記走行風の風量を制御するようにした、車体前部通風構造であって、
前記開閉手段は、前記外気導入部を全閉可能に一列に配列した、複数のフィンによって構成され、
この複数のフィンは、それぞれ開閉中心となる軸部を個別に有しており、
この複数の軸部は、前記複数のフィンの配列方向に対して直交する方向に且つ全閉状態のフィンに沿う方向へ延びている車体前部通風構造において、
前記各々の軸部は、全閉状態の前記各フィンの、前記走行風を受ける受風面に対して露出することなく、前記受風面とは反対側の背面に向かってオフセットしていることを特徴とする車体前部通風構造。
【請求項2】
前記軸部は、前記フィンの断面長手方向の中心位置、若しくは前記フィンの断面長手方向の中心位置よりも、前記開口部を開けて前記フィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの前端部側に設けられることを特徴とする請求項1記載の車体前部通風構造。
【請求項3】
前記受風面は、前記フィンの断面長手方向の途中に、頂部と、この頂部から前記前端部に至る第1傾斜面と、前記頂部から、前記開口部を開けて前記フィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの後端部に至る第2傾斜面と、を備え、
前記第1傾斜面は、前記前端部に向かうにつれて前記背面に接近するように傾斜して形成され、
前記第2傾斜面は、前記後端部に向かうにつれて前記背面に接近するように傾斜して形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部通風構造。
【請求項4】
前記受風面が前記走行風から受ける走行風圧が最大となる前記フィンの回動角度では、前記頂部と前記軸部とは、前記走行風の導風方向に沿うように延びる同一直線上に配置されることを特徴とする請求項3記載の車体前部通風構造。
【請求項5】
前記受風面のうち、前記開口部を閉じたときに走行風を受ける範囲を、有効受風面とし、
前記フィンの前端部を有効前端とし、
前記有効受風面において前記有効前端とは反対側の端を有効後端とし、
前記有効前端から前記軸部の中心までの長さと、前記軸部の中心から前記有効後端までの長さとの、比が4.8:5.2となる位置から前記有効前端までの範囲に、前記軸部を設けたことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の車体前部通風構造。
【請求項6】
前記軸部の位置は、前記比が4.8:5.2から4.5:5.5までの範囲に設けたことを特徴とする請求項5記載の車体前部通風構造。
【請求項1】
車体前端部に位置している開口部から走行風を導入可能な外気導入部に、開閉手段が設けられ、この開閉手段を駆動手段によって開閉することにより、前記外気導入部から取り入れる前記走行風の風量を制御するようにした、車体前部通風構造であって、
前記開閉手段は、前記外気導入部を全閉可能に一列に配列した、複数のフィンによって構成され、
この複数のフィンは、それぞれ開閉中心となる軸部を個別に有しており、
この複数の軸部は、前記複数のフィンの配列方向に対して直交する方向に且つ全閉状態のフィンに沿う方向へ延びている車体前部通風構造において、
前記各々の軸部は、全閉状態の前記各フィンの、前記走行風を受ける受風面に対して露出することなく、前記受風面とは反対側の背面に向かってオフセットしていることを特徴とする車体前部通風構造。
【請求項2】
前記軸部は、前記フィンの断面長手方向の中心位置、若しくは前記フィンの断面長手方向の中心位置よりも、前記開口部を開けて前記フィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの前端部側に設けられることを特徴とする請求項1記載の車体前部通風構造。
【請求項3】
前記受風面は、前記フィンの断面長手方向の途中に、頂部と、この頂部から前記前端部に至る第1傾斜面と、前記頂部から、前記開口部を開けて前記フィンの断面長手方向を前後方向に向けたときの後端部に至る第2傾斜面と、を備え、
前記第1傾斜面は、前記前端部に向かうにつれて前記背面に接近するように傾斜して形成され、
前記第2傾斜面は、前記後端部に向かうにつれて前記背面に接近するように傾斜して形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部通風構造。
【請求項4】
前記受風面が前記走行風から受ける走行風圧が最大となる前記フィンの回動角度では、前記頂部と前記軸部とは、前記走行風の導風方向に沿うように延びる同一直線上に配置されることを特徴とする請求項3記載の車体前部通風構造。
【請求項5】
前記受風面のうち、前記開口部を閉じたときに走行風を受ける範囲を、有効受風面とし、
前記フィンの前端部を有効前端とし、
前記有効受風面において前記有効前端とは反対側の端を有効後端とし、
前記有効前端から前記軸部の中心までの長さと、前記軸部の中心から前記有効後端までの長さとの、比が4.8:5.2となる位置から前記有効前端までの範囲に、前記軸部を設けたことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の車体前部通風構造。
【請求項6】
前記軸部の位置は、前記比が4.8:5.2から4.5:5.5までの範囲に設けたことを特徴とする請求項5記載の車体前部通風構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−143913(P2011−143913A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134522(P2010−134522)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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