説明

車体後部構造

【課題】車体重量の増加を抑えつつ強度が必要な部位を補強できるようにする。
【解決手段】リアサイドメンバ1を前部部材3と後部部材5とから構成し、前部部材3は、トレーリングアーム9の前端ボス部9aを取り付けるサスペンション支持部3cを備え、板厚を後部部材5より厚くして強度を高めている。前部部材3の車体外側にはサイドシル7を接合固定し、サイドシル7の後端内側に接合したブラケット15とサスペンション支持部3cとの間にトレーリングアーム9の前端ボス部9aを配置する。また前部部材3とサイドシル7との間には、補強部材となる閉断面形成部材17を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアサイドメンバを備える車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車体後部構造として、例えば下記特許文献1に記載のものは、リアサイドメンバを車体前後方向に延びる一体物として設定してある。
【特許文献1】特開2001−247056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した従来の車体後部構造では、リアサイドメンバの強度が必要な部位を補強するために、一体物のリアサイドメンバ全体の板厚を厚くするか、もしくは補強部材を適宜必要部位に取り付ける必要があるので、車体重量の増加を招くという不具合が発生する。
【0004】
そこで、本発明は、車体重量の増加を抑えつつリアサイドメンバの強度が必要な部位を補強できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車体後部の車幅方向側部に位置して車体前後方向に延びるリアサイドメンバを、車体前方側に位置する前部部材と、この前部部材の車体後部側に結合される後部部材とに分割し、前記前部部材に、リアサスペンションを支持するサスペンション支持部を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リアサイドメンバの強度が必要なサスペンション支持部を備える前部部材のみ板厚を厚くすることで、車体重量の増加を抑えつつ強度が必要な部位を補強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態を示す車体後部構造の斜視図、図2は、その分解斜視図である。なお、図1中の矢印RRで示す方向が車体後方、同矢印UPRで示す方向が車体上方、同矢印OTRで示す方向が車体外方(車幅方向右側)である。
【0009】
図1において、車体後部の車幅方向側部に位置して車体前後方向に延びるリアサイドメンバ1は、車体前方側に位置する前部部材3と、この前部部材3の車体後部側に結合される後部部材5とに分割して構成してあり、前部部材3の車体外側に車体前後方向に延びるサイドシル7を接合固定している。
【0010】
リアサイドメンバ1の後部部材5は、底壁5aと、底壁5aの両側縁から上方に延びる左右両側壁5b,5cと、左側の側壁5bの上端から外側に突出するフランジ5dとをそれぞれ備える。
【0011】
一方、リアサイドメンバ1の前部部材3は、車体内側の縦壁3aと、該縦壁3aの下部の車体前方側ほぼ半分の領域で車体外側に向けて屈曲して延びる底壁3bとをそれぞれ備えている。
【0012】
そして、縦壁3aの底壁3bよりも車体後方に突出した部分の下部に、図1に示すリアサスペンションのトレーリングアーム9を取付支持するサスペンション支持部3cを設けている。サスペンション支持部3cには、取付支持ピン11を挿入する貫通孔3dを設けてあり、取付支持ピン11は、この貫通孔3d及びトレーリングアーム9の前端ボス部9aに形成してある支持孔9bに挿入される。
【0013】
また、縦壁3aの上縁の車体後方側の一部を除いた領域には、車体内側に向けて屈曲するフランジ3eを設けるとともに、縦壁3aの底壁3bよりも車体後方に突出した部分の上部3fは、後部部材5の側壁5bの外側から接合固定しており、この接合状態の前部部材3と後部部材5とで車体前後方向に延びるリアサイドメンバ1を構成する。このとき、前部部材3のフランジ3eと後部部材5のフランジ5dとは、ほぼ同一面を形成し、これら各フランジ3e,5d上に、図1では省略しているフロアパネル13(図3参照)を載置して接合固定する。
【0014】
サイドシル7は、前部部材3の底壁3bの側縁から立設しつつ縦壁3aに対向するように取り付けてあり、縦壁3aに対向する側壁7aと、側壁7aの上下両端から車体外側に向けて屈曲して延びる上壁7b及び下壁7cと、上壁7b及び下壁7cのそれぞれの先端から上方及び下方に延びるフランジ7d及び7eとをそれぞれ備えている。
【0015】
図3(a)は、図1のA−A線断面に相当する断面図で、サイドシル7の下壁7cが前部部材3の底壁3b上に位置して接合固定された状態となっている。図3(b)は、図1のB−B線断面に相当する断面図である。
【0016】
なお、前部部材3及び後部部材5の各フランジ3e及び5d上に接合固定してあるフロアパネル13は、サイドシル7の上壁7bにも載置されて接合固定されている。また、このフロアパネル13における後部部材5の側壁5c側の端部は、図3(b)に示すように、上方に向けて屈曲して延びるフランジ13aとなり、このフランジ13aを側壁5cからさらに上方に突出させた突出フランジ5eに接合固定している。
【0017】
上記したサイドシル7の車体後方側の車体内側には、図4に示すようにブラケット15を接合固定してあり、このブラケット15の後方に突出した突出端部15aを後部部材5の車体外側の側壁5cに外側から接合固定している。つまり、このブラケット15の突出端部15aと前部部材3の上部3fとで、後部部材5の左右両側壁5b,5cを挟持した状態となる。
【0018】
また、サイドシル7とブラケット15の互いの接合部分の下部には、接合状態で互いに整合する貫通孔7fと貫通孔15bを設けてあり、この貫通孔15bを設けた部分がブラケット15におけるサスペンション支持部15cとなる。
【0019】
そして、上記したようなブラケット15の突出端部15aと前部部材3の上部3fとで、後部部材5の左右両側壁5b,5cを挟持固定した状態で、前部部材3側のサスペンション支持部3cと、ブラケット15側のサスペンション支持部15cとの間に、前記図1に示したトレーリングアーム9の前端ボス部9aを配置し、この配置状態で、取付支持ピン11を貫通孔3d,支持孔9bおよび貫通孔15b,7fに順次挿入することで、トレーリングアーム9の前端ボス部9aが、取付支持ピン11に対して回転可能に支持されることになる。
【0020】
図5は、前部部材3とブラケット15との間にトレーリングアーム9の前端ボス部9aを配置した状態を示す斜視図である。なお、このトレーリングアーム9の図示しない後端ボス部は、後輪のリアサスペンションに連結される。
【0021】
また、図3(a)に示すように前部部材3の縦壁3aとサイドシル7の側壁7aとの間の上下方向ほぼ中央位置には、補強部材としての閉断面形成部材17を設けている。閉断面形成部材17は、左右両側にて上方に向けて屈曲するフランジ17a,17bを、前部部材3の縦壁3aとサイドシル7の側壁7aにそれぞれ接合固定し、これにより前部部材3とサイドシル7と補強部材17とで閉断面を形成することになる。
【0022】
上記した閉断面形成部材17の後端は、図1に示すように後部部材5の前端下部に接合固定している。また、閉断面形成部材17の後端の下方における前記した閉断面部分を閉塞するように、補強部材としてのバルクヘッド19を隔壁部材として設けている。
【0023】
すなわち、このバルクヘッド19は、上部フランジ19aを閉断面形成部材17の後端下面に、左フランジ19bを前部部材3の縦壁3aに、右フランジ19cをサイドシル7の側壁7aに、下部フランジ19dを前部部材3の底壁3bに、それぞれ接合固定している。さらに、図5に示すように、右フランジ19cの後面付近を、ブラケット15の前端フランジ15dに接合固定している。
【0024】
また、図3(a)に示すように、前部部材3の底壁3bには、リアサイドメンバ1に対してフロアパネル13などの他の車体部品を組み付ける際の治具受け部となる治具受け孔3gを設けている。この治具受け孔3gに治具21の位置決めピン21aを挿入することで、治具21によりリアサイドメンバ1を支持した状態で、車体部品の組み付け作業を実施する。
【0025】
さらに、上記した治具受け孔3gより車体前方側の底壁3bには、本車体後部構造を備えた車両を、他の運搬用車両で運搬する際に、図示しないフックを引っ掛けるフック引っ掛け孔3hを設けている。なお、このフック引っ掛け孔3hには、貫通孔23aを備えた補強板23を上部から取り付けている。
【0026】
また、後部部材5の車体後方側の下面には、リアサスペンションの図示しないスプリングを支持するスプリング固定用ブラケット25を取り付けている。
【0027】
図3(b)に示すように、後部部材5に対応する位置のフロアパネル13の端縁部付近には、いずれもL字形状のシートベルトアンカ27,29を上下から挟むようにしてボルト・ナット31により取り付けてある。このうち上部のシートベルトアンカ27の上方へ向けて屈曲する取付フランジ27aに、シートベルト33の端部を接続している。下部のシートベルトアンカ29の下方へ向けて屈曲する接続フランジ29aは、後部部材5の側壁5cの内面に接合固定している。
【0028】
また、この後部部材5の側壁5cの外側には、図示しないリアブレーキホースを取り付けるためのブレーキホースブラケット35を接合固定している。
【0029】
以上のような車体後部構造では、リアサイドメンバ1を、車体前方側に位置してサスペンション支持部3cを備える前部部材3と、車体後方側の後部部材5とに分割したので、特に強度が必要なサスペンション支持部3cを備える前部部材3のみ板厚を厚くすることができ、後部部材5については、車体骨格部材としての本来の機能を備えていればよいので、前部部材3ほど板厚を厚くする必要がなく、この結果車体重量の増加を抑えつつ強度が必要な部位を補強することができる。
【0030】
また、前部部材3にサスペンション支持部3cを一体化して設けているので、サスペンション支持用の専用のブラケットを別部材として設ける必要がなく、部品点数の削減に寄与することができるとともに、サスペンション支持部3cの精度管理も容易となる。
【0031】
例えば、サスペンション支持部3cをサスペンション支持ブラケットとしてリアサイドメンバ1(前部部材3)とは別部材として設けた場合には、サスペンション支持ブラケット自身の精度、サスペンション支持ブラケットとリアサイドメンバ1との結合精度、リアサイドメンバ1とフロアパネル13との結合精度と、3工程で精度出しを行う必要があり、累積ばらつきの観点から精度を出しにくいものとなってしまう。
【0032】
また、リアサイドメンバ1の前部部材3は、車体内側の縦壁3aと、該縦壁3aの下部から車体外側に延びる底壁3bとを有し、この底壁3bの側縁から立ち上がるようにして縦壁3aに対向するサイドシル7を接合固定したので、サイドシル7によって前部部材3の車体外側の開放側を塞ぐこととなり、前部部材3の強度が高まり、ひいてはサスペンション支持部3c周辺の強度を高めることができる。
【0033】
前記したサスペンション支持部3cを備える前部部材3の底壁3bに、他の車体部品であるフロアパネル13などを組み付ける際の治具受け部となる治具受け孔3gを設けたので、車体組立工程においてトレーリングアーム9の取付精度を高めることができる。
【0034】
前記したサイドシル7の下部水平面である下壁7cとリアサイドメンバ1の前部部材3の下部水平面である底壁3bとを、図3(a)に示すようにほぼ同一面として互いに接合することで、剛性が向上し、音振,操縦安定性向上に寄与することができる。
【0035】
また、サイドシル7に固定したブラケット15とリアサイドメンバ1の前部部材3とで、サスペンション支持部15c,3cを構成することで、トレーリングアーム9をより確実に支持することができる。
【0036】
さらに、サイドシル7とリアサイドメンバ1の前部部材3との間に、補強部材である閉断面形成部材17及びバルクヘッド19を設けたので、サスペンション支持部3c周辺の強度をより高めることができる。
【0037】
上記した閉断面形成部材17は、前部部材3の底壁3bに対向する位置にあって、前部部材3及びサイドシル7との間で閉断面を形成するので、サスペンション支持部3c周辺の強度をさらに高めることができる。
【0038】
また、補強部材として前記した閉断面を閉塞する隔壁部材であるバルクヘッド19を設けることで、サスペンション支持部3c周辺の強度をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態を示す車体後部構造の斜視図である。
【図2】図1の車体後部構造の分解斜視図である。
【図3】(a)は図1のA−A線断面に相当する断面図、(b)は図1のB−B線断面に相当する断面図である。
【図4】図1の車体後部構造において、サイドシルの車体後方側の車体内側にブラケットを接合固定した状態を示す斜視図である。
【図5】図1の車体後部構造において、前部部材とブラケットとの間にトレーリングアームの前端ボス部を配置した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 リアサイドメンバ
3 リアサイドメンバの前部部材
3a 前部部材の縦壁
3b 前部部材の底壁(前部部材の下部水平面)
3c 前部部材のサスペンション支持部
3g 前部部材の治具受け孔(治具受け部)
5 リアサイドメンバの後部部材
7 サイドシル
7c サイドシルの下壁(サイドシルの下部水平面)
9 トレーリングアーム(リアサスペンション)
13 フロアパネル(他の車体部品)
15 ブラケット
15c ブラケットのサスペンション支持部
17 閉断面形成部材(補強部材)
19 バルクヘッド(隔壁部材,補強部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の車幅方向側部に位置して車体前後方向に延びるリアサイドメンバを、車体前方側に位置する前部部材と、この前部部材の車体後部側に結合される後部部材とに分割し、前記前部部材に、リアサスペンションを支持するサスペンション支持部を設けたことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記前部部材を後部部材よりも強度を高めたことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記前部部材は、車体内側の縦壁と、該縦壁の下部から車体外側に延びる底壁とを有し、この底壁の側縁から立ち上がるようにして前記縦壁に対向するサイドシルを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記サスペンション支持部を備える前部部材に、他の車体部品を組み付ける際の治具受け部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記サイドシルの下部水平面と前記リアサイドメンバの前部部材の下部水平面とをほぼ同一面としたことを特徴とする請求項3または4に記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記サイドシルに固定したブラケットと前記リアサイドメンバの前部部材とで、前記サスペンション支持部を構成したことを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【請求項7】
前記サイドシルと前記リアサイドメンバの前部部材との間に補強部材を設けたことを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【請求項8】
前記補強部材は、前記前部部材の底壁に対向する位置にあって、前記前部部材およびサイドシルとで閉断面を形成する閉断面形成部材であることを特徴とする請求項7に記載の車体後部構造。
【請求項9】
前記補強部材は、前記閉断面を閉塞する隔壁部材であることを特徴とする請求項7または8に記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−56926(P2009−56926A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225696(P2007−225696)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】