説明

車体後部構造

【課題】本発明は、軽量化を図りつつ車体後部の剛性を高めることができる車体後部構造を提供することを課題とする。
【解決手段】車体後部に開けたリヤウインドウ開口部11に、ウインドガラス12が嵌められ、ウインドガラス12より車室内側に、多数の小孔25が開けられている薄い多孔板22が配置されている。リヤウインドウ開口部11の縁11aとしての第1段部23には、多数の小孔25が開けられている薄い多孔板22が嵌められ、この多孔板22は、溶接材料26によって第1段部23に溶接されている。第1段部23よりも車室外側には、第2段部24が形成され、この第2段部24には、ウインドガラス12が嵌められ、目止め機能を有する接着剤27によって取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に開けた開口部に、多数の小孔を有する壁部が取り付けられている車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルームに冷却外気を取り入れる吸気口が形成された樹脂製の枠体に、吸気口からの塵埃の吸引を防止する防塵網を装着することによって、防塵壁の軽量化を図りながら必要な強度を確保する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−225571公報(図4)
【0003】
特許文献1の図4において、作業機としてのコンバインには、搭乗運転部7が設けられ、この搭乗運転部7の側壁20には、吸気口25を有する樹脂製の枠体26が採用され、吸気口25には、塵埃の吸引を防止する防塵網27が装着されている。つまり、搭乗運転部7の側部には、枠体26に防塵網27を装着した防塵壁28が設けられている。
【0004】
ところで、特許文献1の技術は、吸気口25としての開口部を防塵網27で覆ったものであり、防塵機能しか有さない。
また、防塵壁28は、樹脂製の枠体26に防塵網27を装着したものであり、例えば、車体の一部として機能させようと考えた場合には、強度、剛性を確保する上で不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、軽量化を図りつつ車体後部の剛性を高めることができる車体後部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体後部に開けたリヤウインドウ開口部に、ウインドガラスが嵌められている車体後部構造において、ウインドガラスより車室内側に、多数の小孔が開けられている薄い多孔板が配置され、この多孔板がリヤウインドウ開口部の縁に溶接されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、リヤウインドウ開口部には、ウインドガラスより車室内側に、多数の小孔が開けられている薄い多孔板が配置され、この多孔板は、リヤウインドウ開口部の縁に溶接されている。
【0008】
通常、車体のリヤウインドウ開口部には、ウインドガラスが接着剤を介して取り付けられている。ウインドガラスは、車体を構成する部材よりも、厚いものが利用されている。 しかし、ウインドガラスは、車体に接着剤によって取り付けられているので、車体剛性の向上への寄与度は小さいものである。
【0009】
この点、本発明では、ウインドガラスより車室内側に、多数の小孔が開けられている薄い多孔板が配置され、この多孔板がリヤウインドウ開口部の縁に溶接されているので、多孔板の板厚を所定の厚さに設定すれば、車体後部の剛性を高めることが可能になる。
このとき、多孔板を設けることで多少の重量増加が想定される。しかし、ウインドガラスの厚さを所定の遮音性能が得られる程度に薄く設定することによって、リヤウインドウ開口部において、全体としての軽量化を図ることが可能である。
【0010】
また、多孔板には多数の小孔が開けられているので、後方の視界は確保される。加えて、薄い多孔板を介在させることにより、後方からの日差しを遮る遮光機能をもたせることができる。遮光機能をもたせたので、車室内の快適性の向上、夏期における空調エネルギの節減、省燃費化に寄与させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車体後部構造を採用した四輪車の斜視図であり、車体後部構造10において、車体後部に開けたリヤウインドウ開口部11には、ウインドガラス12が嵌められており、この開口部11の周囲は、下方をリッドパネル14で、左右をリヤピラー13L、13Rを含む左右のリヤクオータパネル15L、15Rで、上方をルーフパネル16で囲われている。リヤウインドウ開口部11は、運転者から見て後方に開けられている開口である。
図中、17はリヤバンパ、18Fはフロントドア、18Rはリヤドア、19はフロントフェンダ、20Fは前輪、20Rは後輪である。
【0012】
図2は図1の2−2線断面図であり、リヤウインドウ開口部11の縁11aには、段状部21が階段状に形成されており、この段状部21には、後述する多孔板22が取り付けられる第1段部23と、ウインドガラス12が取り付けられる第2段部24とが形成されている。この段状部21は、薄板の塑性加工における曲げ伸ばしフランジ加工によって、容易に形成可能なものである。
【0013】
リヤウインドウ開口部11の縁11aとしての第1段部23には、多数の小孔25・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)が開けられている薄い多孔板22が嵌められ、この多孔板22は、その周囲がスポット溶接によって第1段部23に溶接されている。図中、スポット溶接部の位置は×にて示されている。
なお、多孔板22をミグ溶接などの連続溶接により取り付けることも可能である。
【0014】
また、第1段部23よりも車室外側には、第2段部24が形成され、この第2段部24には、ウインドガラス12が嵌められ、目止め機能を兼ねる接着剤27によって取り付けられている。つまり、ウインドガラス12より車室内側には、多孔板22が配置されている。多孔板22は、ウインドガラス12により覆われているため、多孔板22が汚れることを少なくできる。
本実施例において、段状部を構成するパネルの板厚は0.7mm、多孔板の板厚は0.5mm、小孔の孔径は3mmである。
【0015】
図3は本発明に係る多孔板に開けられている多数の小孔の配置を説明する平面図であり、小孔25・・・は、丸孔に形成され、千鳥状に配置されている。小孔25・・・は千鳥状に配置されているので、小孔25・・・の中心間ピッチp2を縮めることができる。
小孔25・・・の中心間ピッチp2が縮まるので、多孔板22において、単位面積あたりの開孔部の面積を増やすことができる。開孔部の面積が増えるので、車室内に適度な量の光を取り入れることができる。小孔25・・・の大きさ及びそれらの中心間ピッチp2に影響する角度θを調節することにより、適切な遮光性の確保と良好な視界性の確保を両立させることができる。
【0016】
また、パンチングにより孔開けを行う場合に、円形のパンチを利用するので、非円形のパンチに較べると工具費用を安価に済ますことができる。パンチの費用が安価に済ませられるので、多孔板の加工費用を抑えることができる。
【0017】
本実施例において、多孔板22は鋼板製であるので、例えば、アルミニウムなどの他の金属を利用する場合に較べて、材料費を安く抑えることができる。
なお、本実施例において、多孔板は鋼板製であるが、アルミニウム板など他の金属でも差し支えない。溶接可能であれば、他の材料でも良いものとする。
小孔25・・・は打抜き加工によって開けられたものであるので、量産性が確保され、多孔板の工費を安く抑えることができる。
【0018】
本実施例において、多孔板22には、孔径3mmの小孔25・・・が開けられ、小孔間の中心間ピッチは横方向ピッチ(p1)で5mm、縦方向ピッチ(p2)で2.5mmに設定されている。本実施例において、角度θは45°に設定されている。なお、小孔が千鳥配置でなく上下に並列に配置される場合には角度θは90°である。
通常、多孔板に開けられている小孔の孔径dは、3mm〜5mm程度に設定される。小孔の孔径が3mmのときには、孔の中心間ピッチは4mm〜5mmに設定される。
【0019】
以上に述べた車体後部構造の作用を次に述べる。
図2に戻って、リヤウインドウ開口部11には、ウインドガラス12より車室内側に、多数の小孔25・・・が開けられている薄い多孔板22が配置され、この多孔板22がリヤウインドウ開口部11の縁11aに溶接されている。
【0020】
通常、車体のリヤウインドウ開口部11には、ウインドガラス12が接着剤27を介して取り付けられている。ウインドガラス12は、車体を構成する部材よりも、厚いものが利用されている。しかし、ウインドガラス12は、車体に接着剤27によって取り付けられているので、車体剛性の向上への寄与度は小さいものである。
【0021】
この点、本発明では、ウインドガラス12より車室内側に、多数の小孔25・・・が開けられている薄い多孔板22が配置され、この多孔板22がリヤウインドウ開口部11の縁11aに溶接されているので、多孔板22の板厚を所定の厚さに設定すれば、ウインドガラス12の板厚を薄くしながら、車体後部の剛性を高めることが可能になる。
【0022】
図1を併せて参照して、車体後部の剛性が高められると、リヤピラー13L、13Rに従来のような剛性をもたせる必要はなく、より軽量な構造にすることができる。
【0023】
以下、本発明に係る技術によって、軽量化を図ることができることを説明する。
車体後部に求められる性能として、軽量化の要求と遮音性能の要求がある。これらの要求に合わせるため、ウインドガラス12の板厚を通常の板厚から薄い板厚に変更する場合を検討する。
【0024】
リヤウインドウ開口部11の面積をA、ガラスの比重を2.5、鋼板の比重を7.85とすると、リヤウインドウ開口部11が板厚3.5mmのウインドガラスで覆われている場合におけるウインドガラスの質量は、(3.5×2.5×A)=8.75Aである。
【0025】
一方、本発明にて説明したように、リヤウインドウ開口部11が板厚2.0mmのウインドガラスと板厚0.5mm、開口率30%の鋼製多孔板とにより覆われている場合におけるウインドガラス及び鋼製多孔板の質量は、(2.0×2.5+0.5×7.85×0.7)×A=7.75Aとなる。
従って、(7.75×100/8.75)=88.6(%)となり、約11.4%の軽量化を図ることができる。
【0026】
また、多孔板22には多数の小孔25・・・が開けられているので、後方の視界は確保される。加えて、薄い多孔板22を介在させることにより、後方からの日差しを遮る遮光機能をもたせることができる。遮光機能をもたせたので、車室内の快適性の向上、夏期における空調エネルギの節減、省燃費化に寄与させることができる。
【0027】
尚、本発明は、実施の形態では四輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、四輪車の車体後部構造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る車体後部構造を採用した四輪車の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明に係る多孔板に開けられている多数の小孔の配置を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0030】
10…車体後部構造、11…リヤウインドウ開口部、11a…リヤウインドウ開口部の縁、12…ウインドガラス、22…多孔板、25…小孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に開けたリヤウインドウ開口部に、ウインドガラスが嵌められている車体後部構造において、
前記ウインドガラスより車室内側に、多数の小孔が開けられている薄い多孔板が配置され、この多孔板が前記リヤウインドウ開口部の縁に溶接されていることを特徴とする車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−96348(P2009−96348A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270255(P2007−270255)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】