説明

車体後部構造

【課題】車体後部の剛性および強度を向上することのできる車体後部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】ホイールハウスアウタパネル1161およびホイールハウスインナパネル1162と、互いに接合されたフランジ部1161a、1161bと、フランジ部に接合されたリヤピラー112と、リヤピラー112の下端部からホイールハウスアウタパネル1161に沿って延設されたピラー延設部1122と、ピラー延設部1122と重なるようにホイールハウスアウタパネル1161の下面からホイールハウスインナパネル1162の下面に亘って配設された補強部材120とを有し、ピラー延設部1122と補強部材120とを、ホイールハウスアウタパネル1161を挟んで一体的に接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後輪の上部を取り巻くアーチ状の断面を有するホイールハウスを有する車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車体後部のリヤホイールハウスの車外側および車内側をそれぞれ構成するホイールハウスアウタパネルおよびホイールハウスインナパネルは、それぞれの結合フランジ部がスポット溶接により接合されている。
【0003】
また、例えば、特許文献1(従来技術の欄)には、ホイールハウスアウタパネルからホイールハウスインナパネルに亘って補強部材を追加して、リヤホイールハウスを強化することが開示されている。
【0004】
すなわち特許文献1は、タイヤからの荷重がストラットを介してストラットサポート部材に伝達されたとしても、ホイールハウスアウタパネルとホイールハウスインナパネルとの合わせ目部分の強度が維持可能というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−254822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、補強部材を追加すれば、ホイールハウスアウタパネルとホイールハウスインナパネルとの接合部分は強化される。しかしながら、車室内側から外側へ荷重が加わった場合の強度は充分とはいえない。
【0007】
一方、仮にホイールハウスアウタパネルおよびホイールハウスインナパネルの結合フランジ部にスポット溶接を追加したとしても、強度確保の点では効果が薄い。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、車体後部の剛性および強度を向上することのできる車体後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体後部構造の代表的な構成は、車両前後方向視において車両後輪の上部を取り巻くアーチ状の断面を有するホイールハウスを有する車体後部構造において、ホイールハウスの車外側および車内側をそれぞれ構成するホイールハウスアウタパネルおよびホイールハウスインナパネルと、ホイールハウスの頂部にてホイールハウスアウタパネルおよびホイールハウスインナパネルのそれぞれから連続して上方に延び互いに接合された2つのフランジ部と、接合された2つのフランジ部の車外側に接合された上下方向に延びるリヤピラーと、リヤピラーの下端部から連続してホイールハウスアウタパネルに沿って車外側に延設されたピラー延設部と、ピラー延設部が延設された領域に重なるようにホイールハウスアウタパネルの下面からホイールハウスインナパネルの下面に亘って配設された補強部材とをさらに有し、ピラー延設部と補強部材とを、ホイールハウスアウタパネルを挟んで一体的に接合したことを特徴とする。
【0010】
上記構成により、ピラー延設部と補強部材がホイールハウスアウタパネルに接合されているので、ホイールハウスアウタパネルの剛性および強度が向上する。すなわち、リヤピラーを利用して関連部材の強化を図ることで、強度が確保できる。また、例えば後輪からサスペンションを介してホイールハウスインナパネルに引張力が作用したとしても、その引張力は、ピラー延設部、補強部材、およびホイールハウスアウタパネルの3部材に分散されるので、接合部での剥離等のおそれが効果的に回避される。
【0011】
また、ホイールハウスインナパネルと補強部材とを一体的に接合するとよい。この構成により、ホイールハウスインナパネルに作用した応力をホイールハウスインナパネルと補強部材とが協働で受け持つことになるので、全体としてホイールハウスインナパネルの強度等が向上する。すなわち、補強部材を用いることでホイールハウスインナパネルの強化が図られる。
【0012】
また、本発明にかかる車体後部構造の代表的な構成は、車両前後方向視において車両後輪の上部を取り巻くアーチ状の断面を有するホイールハウスを有する車体後部構造において、ホイールハウスの車外側および車内側をそれぞれ構成するホイールハウスアウタパネルおよびホイールハウスインナパネルと、ホイールハウスの頂部にてホイールハウスアウタパネルおよびホイールハウスインナパネルのそれぞれから連続して上方に延び互いに接合された2つのフランジ部と、接合された2つのフランジ部の車内側に接合された上下方向に延びるリヤピラーと、リヤピラーの下端部から連続してホイールハウスインナパネルに沿って車内側に延設されたピラー延設部と、ピラー延設部が延設された領域に重なるようにホイールハウスインナパネルの下面からホイールハウスアウタパネルの下面に亘って配設された補強部材とをさらに有し、ピラー延設部と補強部材とを、ホイールハウスインナパネルを挟んで一体的に接合したことを特徴とする。
【0013】
上記構成は、ホイールハウスアウタパネルが強化される既に述べた構成と対称なものである。したがって、この構成によれば、ホイールハウスインナパネルの剛性および強度が向上する。また、例えば後輪からサスペンションを介してホイールハウスインナパネルに引張力が作用したとしても、既に述べた構成と同様に、その引張力は3部材に分散されるので、接合部での剥離等のおそれが効果的に回避される。
【0014】
また、ホイールハウスアウタパネルと補強部材とを一体的に接合するとよい。この構成により、ホイールハウスアウタパネルに作用した応力をホイールハウスアウタパネルと補強部材とが協働で受け持つことになるので、全体としてホイールハウスアウタパネルの強度等が向上する。
【0015】
さらに、2つのフランジ部の接合面にリヤピラーの下端部を一体的に接合するとよい。上記構成により、リヤピラーの下端部に2つのフランジ部が接合されるので、特にリヤピラーの剛性および強度の向上が図られる。
【0016】
また、リヤピラーを、上下方向の上部よりも下部の板厚を大きくしたテーラードブランク材で構成するとよい。リヤピラーにテーラードブランク材を用いることで、強度が必要な部位だけを厚くして強くし、それ以外の部分は薄板にして車体の軽量化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車体後部の剛性および強度を向上することのできる車体後部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の車体後部構造が適用された車両を車室内から見た斜視図である。
【図2】図1のそのII−II線に沿う断面図である。
【図3】リヤピラーおよび補強部材の接合関係を示す外観図である。
【図4】リヤピラーとホイールハウスアウタパネルとの接合関係を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態の車体後部の断面図であり、図2に相当する図面である。
【図6】変形例1の車体後部の断平面図であり、図1のX−X線に沿う断面図である。
【図7】変形例2の車体後部の断平面図であり、図1のX−X線に沿う断面図である。
【図8】変形例3の車体後部の断平面図であり、図1のX−X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0020】
なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、本実施形態において、説明の便宜上、「上」は鉛直上方、「下」は鉛直下方、「左右」は車幅方向とする。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の車体後部構造が適用された車両を車室内から見た斜視図、図2は、そのII−II線に沿う断面図である。なお、本実施形態では、主としてスライド式のリヤドアを備えた車両を想定して説明するが、必ずしもこれに限らない。例えば、スイングドアを備えた車両に本実施形態を適用することも可能である。
【0022】
図1において、車両100には、車体後側部のサイドパネル109と、サイドパネル109の前部に位置し上下方向に延びるリヤピラー112とが設けられている。さらに、車体最後部にはバックドア(ハッチバック式)114が上下に開閉可能に設けられている。
【0023】
図2において、車体後部には、車両前後方向視において後輪118の上部を取り巻くアーチ状の断面を有するホイールハウス116が設けられている。このホイールハウス116は、その車外側および車内側をそれぞれ構成するホイールハウスアウタパネル1161およびホイールハウスインナパネル1162を有している。
【0024】
また、ホイールハウス116の頂部において、ホイールハウスアウタパネル1161およびホイールハウスインナパネル1162のそれぞれから連続して上方に延びる2つのフランジ部1161a、1162aが互いに接合されている。なお、後輪118からの上方向荷重は、サスペンション119とストラット支持部(図示せず)を介して、ホイールハウスインナパネル1162に伝達される。
【0025】
さらに、接合された2つのフランジ部1161a、1162aの車外側には、上下方向に延びるリヤピラー112が接合されている。このリヤピラー112は、その下端部1121から連続してホイールハウスアウタパネル1161に沿ってピラー延設部1122が車外側に向けて延設されている。このピラー延設部1122は、リヤピラー112の下端部1121から車外側に略直角に折り曲げられて形成されている。
【0026】
また、ピラー延設部1122が延設された領域に重なるように、ホイールハウスアウタパネル1161の下面からホイールハウスインナパネル1162の下面に亘って補強部材120が配設されている。この補強部材120は、矩形状の薄板の金属板からなっている。金属板を用いたのは、溶接により他部材と接合するためである。
【0027】
ここで、本実施形態では、ピラー延設部1122と補強部材120とを、中間にホイールハウスアウタパネル1161を挟んで一体的に接合したものである。この場合の接合手段としては(接合点A)、スポット溶接を用いることで3枚の金属板を一体的に接合(いわゆる共打ち)した。ただし、スポット溶接に限らず他の溶接法や、リベット締め、ボルト締め等を用いてもよい。
【0028】
本実施形態によれば、1つの補強部材120を追加し、さらにリヤピラー112の下端側を折り曲げてピラー延設部1122を形成し、3枚をまとめてスポット溶接により接合したので、部品点数および作業性の向上を図りつつホイールハウスアウタパネル1161とリヤピラー112の強度および剛性を高めることができる。
【0029】
また、図2において、例えばサスペンション119からホイールハウス116に加わる荷重をFとすると、ホイールハウスアウタパネル1161にはT1方向の引張力が作用する。このとき、接合点Aでの溶接による接合方向はT1方向に対して略直交方向となるので、A点接合により十分な強度を確保することができる。しかも、作用する引張力は、ピラー延設部1122、補強部材120、およびホイールハウスアウタパネル1161に分散されるので、大きな力に対抗することができる。
【0030】
また、本実施形態では、リヤピラー112よりも車内側にて、ホイールハウスインナパネル1162と補強部材120との2枚を一体的に接合した。この場合の接合手段(接合点B)も、スポット溶接を用いた。
【0031】
このように、ホイールハウスインナパネル1162と補強部材120とを、接合点Bで接合することにより、まずホイールハウスインナパネル1162の剛性が高められる。すなわち、補強部材120を用いることでホイールハウスインナパネル1162の強化が図られ、前述した法規要件を満たすことができる。
【0032】
また、前記と同様に、接合点Bでの溶接による接合方向はT2方向の引張力に対して略直交方向なので、十分な強度を確保することができる。さらに、ホイールハウスインナパネル1162に加わった応力を、ホイールハウスインナパネル1162と補強部材120とが協働で受け持つことになるので、全体としてホイールハウスインナパネル1162の強度等が向上する。
【0033】
さらに、本実施形態では、2つのフランジ部1161a、1162aの接合面に、リヤピラー112の下端部1121を一体的に接合した。この場合の接合(接合点C)も、スポット溶接を用いた。
【0034】
これにより、2つのフランジ部1161a、1162aの接合面の剛性が高められるとともに、併せてリヤピラー112の下端側の剛性も高められる。さらに、2つのフランジ部1161a、1162aとリヤピラー112とを一体的に接合したので、接合点Cの接合強度も確保することができる。
【0035】
図3は、リヤピラー112および補強部材120の接合関係を示す外観図である。なお、この図3では、構成を明確にするため、ホイールハウスアウタパネル1161と2つのフランジ部1161a、1162aを除いて示している。
【0036】
同図3に示すように、ピラー延設部1122と補強部材120とは、不図示のホイールハウスアウタパネル1161を挟んでA点でスポット溶接により一体的に接合されている。図3では、紙面の表裏方向がA点での接合方向である。また、C点は、不図示の2つのフランジ部1161a、1162aの接合面と、リヤピラー112の下端部1121との接合点を示している。この場合、紙面に平行な方向がC点での接合方向である。すなわち、A点とC点の接合方向は直交している。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、リヤピラー112およびホイールハウス116を含む車体後部の剛性および強度の向上を図ることができる。すなわち、ピラー延設部1122と補強部材120がホイールハウスアウタパネル1161に接合されているので、ホイールハウスアウタパネル1161の剛性および強度を向上させることができる。また、本実施形態では、部品の追加は補強部材120の1点のみであり、また、スポット溶接箇所の追加も少なくて済み(A点〜C点の3箇所)、リヤピラー112の形状変更(ピラー延設部1122の形成)も必要最低限に抑制することができた。
【0038】
次に、図4は、リヤピラー112とホイールハウスアウタパネル1161との接合関係を示す斜視図である。同図4に示すように、本実施形態では、リヤピラー112として、テーラードブランク材(Tailor Welded Blank)を用いている。すなわち、板厚や材質の異なる複数の鋼板をプレス成形前に溶接し、1枚のブランク(半加工品)としたものを用いている。このテーラードブランク材は、環境や安全性強化の面から、車体の軽量化および高剛性化のために適用されたものである。
【0039】
具体的には、リヤピラー112は、上下方向に延びる上部112−1と下部112−2とを有し、上部112−1の板厚t1(例えば0.8mm)よりも下部112−2の板厚t2(例えば1.2mm)を大きくしている。なお、このリヤピラー112の下部には、ドアストライカ取付部130が設けられている。
【0040】
こうして、本実施形態によれば、リヤピラー112については強度が必要な部位だけを厚くして強くし、それ以外の部分は薄板にして軽量化を図ることができる。また、このようなテーラードブランク材を用いることにより、補強に必要な追加部品数を減らすことができ、かつサイズを小さくすることができる。こうして、車室内空間を最大限に確保することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態の車体後部の断面図であり、第1実施形態の図2に相当する図面である。なお、図5では、図2に示した後輪118やサスペンション119の図示は省略している。
【0042】
この第2実施形態では、第1実施形態でホイールハウスアウタパネル1161が強化されるという構成と対称なものである。すなわち、本実施形態では、互いに接合された2つのフランジ部1161a、1162aの車内側に、リヤピラー112を接合するとともに、このリヤピラー112の下端部1123をホイールハウスインナパネル1162に沿って車内側に延設した点が、第1実施形態と相違している。なお、このように、第1実施形態と違って、リヤピラー112をフランジ部1161a、1162aの車内側に配置したのは、部材間の単なるレイアウト上の違いに起因するものである。
【0043】
本実施形態では、接合された2つのフランジ部1161a、1162aの車内側には、上下方向に延びるリヤピラー112が接合されている。このリヤピラー112は、その下端部1123から連続してホイールハウスインナパネル1162に沿ってピラー延設部1124が車内側に延設されている。このピラー延設部1124は、リヤピラー112の下端部1123から車内側に略直角に折り曲げて形成されている。
【0044】
さらに、ピラー延設部1124が延設された領域に重なるように、ホイールハウスインナパネル1162の下面からホイールハウスアウタパネル1161の下面に亘って補強部材121が配設されている。この補強部材121は、矩形状の薄板の金属板からなっている。金属板を用いたのは、溶接により他部材と接合するためである。
【0045】
ここで、本実施形態では、ピラー延設部1124と補強部材121とを、ホイールハウスインナパネル1162を挟んで一体的に接合したものである。この場合の接合(接合点A)は、スポット溶接を用いることで、3枚の金属板を一体的に接合(いわゆる共打ち)した。本実施形態によれば、1つの補強部材121を追加し、さらにリヤピラー112の下端側を折り曲げてピラー延設部1122を形成し、3枚をまとめてスポット溶接により接合したので、部品点数および作業性の向上を図りつつホイールハウスインナパネル1162とリヤピラー112の強度および剛性を高めることができる。なお、その他の構成、効果、および接合方法等については、基本的に第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0046】
また、本実施形態では、リヤピラー112よりも車外側にて、ホイールハウスアウタパネル1161と補強部材121との2枚を一体的に接合した。さらに、2つのフランジ部1161a、1162aの接合面に、リヤピラー112の下端部1121を一体的に接合した。また、これらの場合の接合(接合点B、接合点C)も、スポット溶接を用いた。
【0047】
なお、これらの構成による作用および効果も、基本的に第1実施形態で説明したものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0048】
このように、第1実施形態および第2実施形態では、リヤピラー112およびホイールハウス116を含む車体後部の剛性および強度の向上を図ったものである。次に、サイドボディー周辺の強化のための変形例1〜変形例3について説明する。
【0049】
[変形例1]
図6は、変形例1の車体後部の断平面図であり、図1のX−X線に沿う断面図である。詳しくは、図6は、リヤドア132の後部に配置されたサイドパネル109を含む車室内構造の断平面図である。サイドパネル109は、サイドボディアウタパネル110およびサイドボディインナパネル111を有し、このサイドボディインナパネル111の車室内側に、補強部材134を追加したものである。この場合、補強部材134はサイドボディインナパネル111と協働で袋形状の断面を形成し、強固な構造とすることができる。
【0050】
しかし、このまま補強部材134を追加したのでは、リヤシート用ドリンクホルダ136を図6の位置よりも車室内に移動しなければならない。また、リヤシート用ドリンクホルダ136が車室内に突出するように移動すると室内空間を圧迫する等、レイアウトが困難となる。そこで、次の変形例2では、リヤシート用ドリンクホルダ136を移動しないように構成した。
【0051】
[変形例2]
図7は、変形例2の車体後部の断平面図であり、図1のX−X線に沿う断面図である。本変形例では、サイドボディインナパネル111に沿わせて薄い板厚の補強部材135を追加することとした。これは、車体後部の強度等の向上に関し、第1実施形態および第2実施形態において、リヤピラー112の補強を行ったことを条件とすれば、変形例1(図6)に示したような強固な構造としなくてもよくなったためである。本変形例によれば、車体後部の強度等を向上させつつ室内空間を大きく確保することができる。
【0052】
[変形例3]
図8は、変形例3の車体後部の断平面図であり、図1のX−X線に沿う断面図である。この変形例3では、サイドボディアウタパネル110と対向するリヤドア132の後端部に、掛止部材138を取り付けたものである。さらに、このリヤドア132に対向するサイドボディアウタパネル110には、掛止部材138を挿入可能な開口部140を形成している。この掛止部材138は、先端部が屈曲した引っ掛け構造を有している。
【0053】
この掛止部材138は、スライド式のリヤドア132を開閉する際の障害にはならないが、車室内側から外側へ水平横方向に荷重を負荷したときに、リヤドア132は車外方向に変位する。しかし、このとき、掛止部材138が開口部140に当接して、それ以上の変位を規制する。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、車両後輪の上部を取り巻くアーチ状の断面を有するホイールハウスを有する車体後部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
100…車両、109…クォータパネル、110…サイドボディアウタパネル、111…サイドボディインナパネル、112…リヤピラー、112−1…上部、112−2…下部、1121…下端部、1122…ピラー延設部、1123…下端部、1124…ピラー延設部、114…バックドア、116…ホイールハウス、1161…ホイールハウスアウタパネル、1161a…フランジ部、1162…ホイールハウスインナパネル、1162a…フランジ部、119…サスペンション、120…補強部材、121…補強部材、130…ドアストライカ取付部、132…リヤドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向視において車両後輪の上部を取り巻くアーチ状の断面を有するホイールハウスを有する車体後部構造において、
前記ホイールハウスの車外側および車内側をそれぞれ構成するホイールハウスアウタパネルおよびホイールハウスインナパネルと、
前記ホイールハウスの頂部にて前記ホイールハウスアウタパネルおよびホイールハウスインナパネルのそれぞれから連続して上方に延び互いに接合された2つのフランジ部と、
前記接合された2つのフランジ部の車外側に接合された上下方向に延びるリヤピラーと、
前記リヤピラーの下端部から連続して前記ホイールハウスアウタパネルに沿って車外側に延設されたピラー延設部と、
前記ピラー延設部が延設された領域に重なるように前記ホイールハウスアウタパネルの下面から前記ホイールハウスインナパネルの下面に亘って配設された補強部材とをさらに有し、
前記ピラー延設部と前記補強部材とを、前記ホイールハウスアウタパネルを挟んで一体的に接合したことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記ホイールハウスインナパネルと前記補強部材とを一体的に接合したことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
車両前後方向視において車両後輪の上部を取り巻くアーチ状の断面を有するホイールハウスを有する車体後部構造において、
前記ホイールハウスの車外側および車内側をそれぞれ構成するホイールハウスアウタパネルおよびホイールハウスインナパネルと、
前記ホイールハウスの頂部にて前記ホイールハウスアウタパネルおよびホイールハウスインナパネルのそれぞれから連続して上方に延び互いに接合された2つのフランジ部と、
前記接合された2つのフランジ部の車内側に接合された上下方向に延びるリヤピラーと、
前記リヤピラーの下端部から連続して前記ホイールハウスインナパネルに沿って車内側に延設されたピラー延設部と、
前記ピラー延設部が延設された領域に重なるように前記ホイールハウスインナパネルの下面から前記ホイールハウスアウタパネルの下面に亘って配設された補強部材とをさらに有し、
前記ピラー延設部と前記補強部材とを、前記ホイールハウスインナパネルを挟んで一体的に接合したことを特徴とする車体後部構造。
【請求項4】
前記ホイールハウスアウタパネルと前記補強部材とを一体的に接合したことを特徴とする請求項3に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記2つのフランジ部の接合面に前記リヤピラーの下端部を一体的に接合したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記リヤピラーを、上下方向の上部よりも下部の板厚を大きくしたテーラードブランク材で構成したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−131371(P2012−131371A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285133(P2010−285133)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】