説明

車体後部構造

【課題】車体重量の増加を抑制しつつ、車両衝突時にバッテリを確実に保護することができる車体後部構造を提供する。
【解決手段】バッテリフレーム9は、バッテリケース11の前壁面21の下部とリアフロア7とを連結するフロントフレーム27と、バッテリケース11の後壁面23の上部とリアフロア7とを連結するリアフレーム29と、バッテリケース11の側壁面25に取り付けられたサイドフレーム31とからなる。前記リアフレーム29はフロントフレーム27よりも上方に配置され、前記サイドフレーム31は、フロントフレーム27の側端部27aとリアフレーム29の側端部29aとを連結すると共に、側面視において、車両後方に向かうに従って斜め上方に傾斜して延在するように配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車等においては、重量の大きな大容量のバッテリを車体後部に配設する構造が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された車体構造においては、サイドシル、リアピラー、リアサイドメンバにそれぞれの端部を結合して車幅方向に延在する4本のクロスメンバを介して前記バッテリを搭載している。また、リアピラー側には、短リンクが回動可能に軸支されており、前記4本のクロスメンバにおける前方下側のクロスメンバの前方には、押圧部材を有するクロスメンバリンクが車幅方向に沿って延設されている。
【0004】
そして、前記短リンクの一端には、前記4本のクロスメンバにおける後方上側のクロスメンバから前方斜め下方に傾斜して延在する伝達リンクの前端が軸支され、短リンクの他端には、クロスメンバリンクの側端が軸支されている。
【0005】
ここで、車両が前面衝突を起こした場合に、バッテリが慣性力で前方移動しようとするため、後方上側のクロスメンバから伝達リンクを介して短リンクの一端に荷重が伝達されて短リンクに回転モーメントが作用する。すると、短リンクの他端に軸支されているクロスメンバリンクが後方移動して押圧部材が前方下側のクロスメンバを後方に押しつける。これによって、バッテリの移動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−305879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載された車体構造においては、4本のクロスメンバに加えて、クロスメンバリンク、伝達リンクおよび短リンク等の種々の部材が必要となり、車体重量が増加するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、車体重量の増加を抑制しつつ、車両衝突時にバッテリを確実に保護することができる車体後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車体後部構造は、バッテリケースをバッテリフレームを介して車体後部のフロアパネルの下側に設けた構造である。前記バッテリフレームは、前記バッテリケースの前壁面の下部とフロアパネルとを連結するフロントフレームと、前記バッテリケースの後壁面の上部とフロアパネルとを連結するリアフレームと、前記バッテリケースの側壁面に取り付けられたサイドフレームとからなる。前記リアフレームはフロントフレームよりも上方に配置されている。前記サイドフレームは、フロントフレームの側端部とリアフレームの側端部とを連結すると共に、側面視において、車両後方に向かうに従って斜め上方に傾斜して延在している。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、例えば後面衝突時のように、車体後端に対して前方に向かう荷重が入力された場合に、バッテリフレームのリアフレームからサイドフレームに伝達される。このため、前方に向かうにつれて斜め下方に荷重が伝わり、フロントフレームで受け止められる。即ち、バッテリフレームには、側面視で反時計回り方向に回転するように、前端を中心にして後端が持ち上がる方向に回転モーメントが作用する。よって、バッテリケースは、フロントフレームを中心にして側面視で反時計回り方向に回転するため、車体重量を増加させることなく、バッテリケースを確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態による車体後部を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるバッテリケースとバッテリフレームを示す斜視図である。
【図3】図1のA−A線による断面図である。
【図4】図1を下側から見た底面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による車体後部に車両後方から衝突荷重が入力された場合における変形挙動を示しており、(a)は衝突荷重の入力前、(b)は衝突初期の状態、(c)は衝突後期の状態を示している。
【図6】本発明の第2実施形態による車体後部を下側から見た底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0013】
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態による車体後部1には、フロントフロア3と、該フロントフロア3の後端部に接合フランジ5を介して接合されたリアフロア7と、該リアフロア7における前部の下側にバッテリフレーム9を介してリアフロア7に結合されたバッテリケース11と、が設けられている。なお、バッテリケース11の内部には、図外のバッテリが収容されている。
【0015】
前記フロントフロア3における車幅方向両端には、車両前後方向に延在するサイドシル13が接合されており、車幅方向中央には、上方に突出すると共に車両前後方向に延在するフロアトンネル15が形成されている。
【0016】
図2,3に示すように、バッテリケース11は、直方体状に形成されており、上側の上壁面17と、下側の底壁面19と、前側の前壁面21と、後側の後壁面23と、左右両側の側壁面25とによって画成されている。そして、前記バッテリフレーム9は、バッテリケース11の外周を取り囲むように取り付けられている。具体的には、バッテリフレーム9は、車幅方向に延在すると共にバッテリケース11の前壁面21の下端部に接合されたフロントフレーム27と、車幅方向に延在すると共にバッテリケース11の後壁面の上端部に接合されたリアフレーム29と、車両前後方向に延在すると共にバッテリケース11の側壁面25に接合されたサイドフレーム31と、から構成されている。また、リアフレーム29は、フロントフレーム27よりも上方に配置されており、サイドフレーム31の前端31aはフロントフレーム27の側端部27aの後面に結合され、サイドフレーム31の後端31bはリアフレーム29の側端部29aの前面に結合されている。これによって、サイドフレーム31は、フロントフレーム27の側端部27aとリアフレーム29の側端部29aとを連結している。以上より、図3に示すように、サイドフレーム31は、側面視において、車両後方に向かうに従って斜め上方に傾斜して延在している。
【0017】
また、図3に示すように、リアフロア7の前部は、上方に突出する断面ハット状の凸部33に形成されており、この凸部33は、前端に配置された接合フランジ5と、該接合フランジ5の後端から屈曲して上方に延びる前面35と、該前面35の上端から斜め後方に延びる傾斜面37と、該傾斜面37の後端から水平状に後方に延びる上面39と、からなる。そして、リアフロア7の凸部33の後側には、下方に凹む収納凹部41が形成されており、該収納凹部41にスペアタイヤ43が収納されている。なお、収納凹部41は、前記凸部33の上面39の後端から下方に延びる前壁45と、該前壁45の下端から後方に延びる底壁47とから画成される。また、スペアタイヤ43は、リムホイール49の外周にタイヤ51を装着して構成され、スペアタイヤ43における前端は収納凹部41を画成する前壁45に近接して配置される。
【0018】
さらに、リアフロア7の凸部33における前面35と傾斜面37の車室外側(前面の車両後方側で傾斜面の下側)には、断面L字状のブラケット53が接合されることによって閉断面構造のリアシートクロスメンバ55が形成されている。また、リアフロア7の凸部33における上面39の車室外側(下側)には、断面ハット状のブラケット57が接合されることによって閉断面構造のリアセンタークロスメンバ59が形成されている。そして、バッテリフレーム9におけるフロントフレーム27の側端部27aは、リアシートクロスメンバ55の下側に第1結合部61を介して結合され、バッテリフレーム9におけるリアフレーム29の側端部29aは、リアセンタークロスメンバ59の下側に第3結合部63を介して結合されている。
【0019】
図4に示すように、リアフロア7の下側には、前後方向に延在するリアサイドメンバ65が左右一対に配置されている。リアサイドメンバ65の前端65aはバッテリフレーム9のフロントフレーム27の前端に対して前後方向で略同一の位置に配置されている。また、リアサイドメンバ65には、平面視で、後方に向かうに従って車幅方向内側に折れ曲がる屈曲部67が形成されている。ここで、リアサイドメンバ65の前端部とリアシートクロスメンバ55の側端部とは、第2結合部69において結合されている。また、リアサイドメンバ65とリアセンタークロスメンバ59の側端部とは、第4結合部71において結合されている。そして、前記第2結合部69は第1結合部61の近傍に配置されており、前記第4結合部71は第3結合部63の近傍に配置されている。また、リアサイドメンバ65における前記屈曲部67は、第2結合部69と第4結合部71との間に配置されている。なお、バッテリフレーム9は、平面視において、平行四辺形の形状に形成されている。即ち、前記フロントフレーム27とリアフレーム29とは車幅方向に沿って略平行に延びており、左右のサイドフレーム31は車両後方に向かうに従って車幅方向内側に傾斜して延びている。従って、フロントフレーム27の長さはリアフレーム29よりも長く形成されている。
【0020】
次いで、図5を用いて車体後部に後方から衝突荷重が入力された場合における変形挙動を説明する。
【0021】
まず、衝突荷重の入力前においては、図5(a)に示すように、車体後部は変形していない。
【0022】
そして、図5(b)に示すように、矢印に示す衝突荷重Fが車両後方から前方に向けて入力されると、スペアタイヤ43の前端が収納凹部41の前壁45に突き当たり、前壁45が上端45aを中心に前方に折れ曲がる変形をする。これとともに、リアセンタークロスメンバ59を介してリアフレーム29からサイドフレーム31にも荷重Fが伝達されるため、サイドフレーム31がフロントフレーム27を中心に側面視で反時計回り方向に回転するモーメントMが作用する。
【0023】
こののち、図5(c)に示すように、バッテリケース11、バッテリフレーム9およびリアフロア7の凸部33がともに一体になった状態で、フロントフレーム27を中心にして反時計回り方向に回転する。即ち、バッテリフレーム9が前端を中心にして後端が上方に持ち上げるように回転しつつ変形すると共に、収納凹部41の前端部も上方に持ち上がる。
【0024】
次いで、本実施形態による作用効果を説明する。
【0025】
(1)内部にバッテリを収容したバッテリケース11を、該バッテリケース11の外周を取り囲むように設けたバッテリフレーム9を介して車体後部のリアフロア7(フロアパネル)の下側に設けた車体後部構造である。前記バッテリフレーム9は、車幅方向に延在すると共に前記バッテリケース11の前壁面21の下部とリアフロア7とを連結するフロントフレーム27と、車幅方向に延在すると共に前記バッテリケース11の後壁面23の上部とリアフロア7とを連結するリアフレーム29と、車両前後方向に延在すると共に前記バッテリケース11の側壁面25に取り付けられたサイドフレーム31とからなる。前記リアフレーム29はフロントフレーム27よりも上方に配置され、前記サイドフレーム31は、フロントフレーム27の側端部27aとリアフレーム29の側端部29aとを連結すると共に、側面視において、車両後方に向かうに従って斜め上方に傾斜して延在するように配設している。
【0026】
従って、例えば後面衝突時のように、車体後端に対して前方に向かう荷重Fが入力された場合に、バッテリフレーム9のリアフレーム29からサイドフレーム31に伝達されるため、前方に向かうにつれて斜め下方に荷重が伝わり、フロントフレーム27で受け止められる。即ち、バッテリフレーム9には、側面視で反時計回り方向に回転するように、前端を中心にして後端が持ち上がる方向に回転モーメントMが作用する。よって、バッテリケース11は、フロントフレーム27を中心にして側面視で反時計回り方向に回転するため、車体重量を増加させることなく、バッテリケース11を確実に保護することができる。
【0027】
(2)前記フロントフレーム27は、リアフロア7の下部に形成した閉断面構造のリアシートクロスメンバ55に結合され、前記リアフレーム29は、リアフロア7の下部に形成した閉断面構造のリアセンタークロスメンバ59に結合されている。
【0028】
このように、リアシートクロスメンバ55およびリアセンタークロスメンバ59は閉断面構造に形成されているため、剛性が高い。従って、バッテリフレーム9のフロントフレーム27およびリアフレーム29の車体側への取付剛性も高くなる。
【0029】
(3)前記リアフロア7の下側には、平面視で車両前後方向に対して斜めに延在する屈曲部67を有するリアサイドメンバ65が設けられ、前記リアシートクロスメンバ55およびリアセンタークロスメンバ59は前記リアサイドメンバ65に結合されており、前記フロントフレーム27とリアシートクロスメンバ55とを結合する第1結合部61は、前記リアサイドメンバ65と前記リアシートクロスメンバ55とを結合する第2結合部69の近傍に配置され、前記リアフレーム29とリアセンタークロスメンバ59とを結合する第3結合部63は、前記リアサイドメンバ65と前記リアセンタークロスメンバ59とを結合する第4結合部71の近傍に配置され、 前記リアサイドメンバ65における屈曲部67は、前記第2結合部69と第4結合部71との間に配置されている。
【0030】
リアサイドメンバ65の屈曲部67は、前後方向の圧縮荷重に対して強度が低く折れ曲がりやすい。このため、第1結合部61と第3結合部63とを連結するサイドフレーム31によって前後方向の圧縮荷重に対する剛性を向上させることができる。
【0031】
[第2の実施形態]
次いで、本発明の第2の実施形態について説明する。ただし、前記第1の実施形態と同一構造については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
本実施形態においては、図6に示すように、フロントフロア3の車室外側(下側)に左右一対のトンネルメンバ81,81を前後方向に沿って延設し、これらのトンネルメンバ81,81の後端部81a,81aとバッテリフレーム9のフロントフレーム27とを連結ブラケット83,83を介して結合している。
【0033】
具体的には、バッテリフレーム9におけるフロントフレーム27の車幅方向中央部には、一対の連結ブラケット83,83が接合されており、これらの連結ブラケット83,83は、フロントフロア3のトンネルメンバ81,81の後端部81a,81aに結合されている。
【0034】
次いで、本実施形態による作用効果を説明する。
【0035】
前記フロントフロア3(フロアパネル)の下側には、車両前後方向に延在する左右一対のトンネルメンバ81,81が配設され、前記フロントフレーム27は、前記トンネルメンバ81,81に連結されている。
【0036】
従って、フロントフレーム27の車体側への取付剛性がさらに向上する。また、フロントフロア3の剛性が向上するため、車両走行時における音振性能が向上する。
【符号の説明】
【0037】
1…車体後部
7…リアフロア(フロアパネル)
9…バッテリフレーム
11…バッテリケース
21…前壁面
23…後壁面
25…側壁面
27…フロントフレーム
29…リアフレーム
31…サイドフレーム
55…リアシートクロスメンバ
59…リアセンタークロスメンバ
61…第1結合部
63…第3結合部
65…リアサイドメンバ
67…屈曲部
69…第2結合部
71…第4結合部
81…トンネルメンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にバッテリを収容したバッテリケースを、該バッテリケースの外周を取り囲むように設けたバッテリフレームを介して車体後部のフロアパネルの下側に設けた車体後部構造であって、
前記バッテリフレームは、車幅方向に延在すると共に前記バッテリケースの前壁面の下部とフロアパネルとを連結するフロントフレームと、車幅方向に延在すると共に前記バッテリケースの後壁面の上部とフロアパネルとを連結するリアフレームと、車両前後方向に延在すると共に前記バッテリケースの側壁面に取り付けられたサイドフレームとからなり、
前記リアフレームはフロントフレームよりも上方に配置され、
前記サイドフレームは、フロントフレームの側端部とリアフレームの側端部とを連結すると共に、側面視において、車両後方に向かうに従って斜め上方に傾斜して延在するように配設したことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車体後部構造であって、
前記フロントフレームは、フロアパネルの下部に形成した閉断面構造のリアシートクロスメンバに結合され、
前記リアフレームは、フロアパネルの下部に形成した閉断面構造のリアセンタークロスメンバに結合されたことを特徴とする車体後部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車体後部構造であって、
前記フロアパネルの下側には、平面視で車両前後方向に対して斜めに延在する屈曲部を有するリアサイドメンバが設けられ、前記リアシートクロスメンバおよびリアセンタークロスメンバは前記リアサイドメンバに結合されており、
前記フロントフレームとリアシートクロスメンバとを結合する第1結合部は、前記リアサイドメンバと前記リアシートクロスメンバとを結合する第2結合部の近傍に配置され、
前記リアフレームとリアセンタークロスメンバとを結合する第3結合部は、前記リアサイドメンバと前記リアセンタークロスメンバとを結合する第4結合部の近傍に配置され、
前記リアサイドメンバにおける屈曲部は、前記第2結合部と第4結合部との間に配置されたことを特徴とする車体後部構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体後部構造であって、
前記フロアパネルの下側には、車両前後方向に延在する左右一対のトンネルメンバが配設され、
前記フロントフレームは、前記トンネルメンバに連結されたことを特徴とする車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67327(P2013−67327A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208776(P2011−208776)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】