説明

車体昇降装置

【課題】車体の長さに拘わらず車体を安定した姿勢で昇降させることができる車体昇降装置を提供することを課題とする。
【解決手段】車体載せ台40の上台53は、車体13の左サイドシル101の下端部102及び右サイドシル103の下端部104を、車体13の車幅方向に挟んで車体13を拘束する左右一対の押し機構110、120を、備える。
【効果】左右一対の押し機構110、120により、車体13の長さに拘わらず、車体13を確実に拘束できる。一対の押し機構110、120で車体13を拘束するので、車体13の姿勢が安定する。したがって、車体13の長さに拘わらず車体13を安定した姿勢で昇降させることができる車体昇降装置20が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱と、支柱に昇降自在に設けられる昇降台と、昇降台に設けられ車体を載せる車体載せ台とからなる車体昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の組立ラインから第2の組立ラインへ車体を昇降させる車体昇降装置が各種提案されている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
図9に示すように、車体昇降装置200は、支柱201に昇降自在に設ける昇降台202に車体203を載せて、車体203を第1のコンベア204の高さから第2のコンベア205の高さへ昇降させる。昇降台202が3段式の摺動フォークになっているため、車体203を第1のコンベア204から受取ることができ、車体203を第2のコンベア205へ移すことができる。
【0004】
しかし、車体203を昇降台202に載せて昇降させるとき、車体203の長さによっては車体203が昇降台202からはみ出す場合があるため、車体203の姿勢が昇降台202の上で不安定になる。
その対策として、昇降台202の更なる大型化が挙げられるが、コストアップに繋がる。
【0005】
そこで、車体の長さに拘わらず車体を安定した姿勢で昇降させることができる車体昇降装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−239447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車体の長さに拘わらず車体を安定した姿勢で昇降させることができる車体昇降装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、基礎又は設備面から上方へ延ばされる支柱と、この支柱に昇降自在に設けられる昇降台と、この昇降台に設けられ車体を載せる車体載せ台とからなる車体昇降装置において、前記車体載せ台は、前記車体の左右両側面の下端部を、前記車体の車幅方向に挟んで前記車体を拘束する一対の押し機構を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、車体載せ台は、車体の左右両側面の下端部を、車体の車幅方向に挟んで車体を拘束する一対の押し機構を備える。
車体の左右両側面の下端部を、一対の押し機構で車幅方向に挟むため、車体の長さに拘わらず、車体を確実に拘束できる。一対の押し機構で車体を拘束するので、車体の姿勢が安定する。したがって、車体の長さに拘わらず車体を安定した姿勢で昇降させることができる車体昇降装置が提供される。
【0010】
車体載せ台に、車体を拘束する一対の押し機構が備えられるため、車体の長さに応じて昇降台を大型化する必要がなく、車体昇降装置を小型化できる。
一対の押し機構は、車体の左右両側面の下端部を車体の車幅方向に挟むだけであり、構造が単純になるため、安価な機構となる。すなわち、車体昇降装置のコストアップが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車体搬送設備の斜視図である。
【図2】本発明に係る車体昇降装置の斜視図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図4の5部拡大図である。
【図6】車体を待機させた状態から車体を拘束するまでの作用を説明する図である。
【図7】車体載せ台と小型車体の相対位置を説明する図である。
【図8】車体載せ台と大型車体の相対位置を説明する図である。
【図9】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。また、以下に記す車体は、溶接組立が完了した車体として説明する。
【実施例】
【0013】
本発明に係る車体昇降装置20が組込まれる車体搬送設備10の一例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、車体搬送設備10は、上流工程に設けられ車体13を作業通路11を通行する作業車両12の進行方向(白抜き矢印)と同方向に搬送する第1車体搬送装置14と、この第1車体搬送装置14の終点部近傍に立てられ車体13を昇降させることができる第1車体昇降装置20と、この第1車体昇降装置20の下流工程に設けられ車体13を昇降させることができる第2車体昇降装置31と、この第2車体昇降装置31の近傍に設けられ車体13を白抜き矢印と逆方向に搬送する第2車体搬送装置32と、第1車体昇降装置20の上端と第2車体昇降装置31の上端とを繋ぎ車体13を第1車体昇降装置20から第2車体昇降装置31へ搬送する連絡車体搬送装置33とからなる。
【0014】
第1車体搬送装置14は、第1ローラ34と第1ベルト35とからなるベルトコンベアが好適である。第1ベルト35上に第1パレット36を介して車体13を載せて、車体13を搬送する。
第1車体昇降装置20は、基礎37から上方へ延ばされる第1支柱38と、この第1支柱38に昇降自在に設けられる第1昇降台39と、この第1昇降台39に設けられ車体13を載せる第1車体載せ台40(詳細後述)とからなる。
【0015】
第2車体昇降装置31は、基礎37から上方へ延ばされる第2支柱41と、この第2支柱41に昇降自在に設けられる第2昇降台42と、この第2昇降台42に設けられ車体13を載せる第2車体載せ台43とからなる。
第2車体搬送装置32は、第2ローラ44と第2ベルト45とからなるベルトコンベアが好適である。第2ベルト45上に第2パレット46を介して車体13を載せて、車体13を搬送する。
【0016】
なお、第1車体搬送装置14及び第2車体搬送装置32は、実施例では、ベルトコンベアを適用したが、チェーンコンベア、フリクションコンベア、台車式搬送装置のいずれかを適用してもよい。また、第1支柱38及び第2支柱41は、実施例では、基礎37上に設けたが、鉄骨等の設備面に設けてもよい。
【0017】
連絡車体搬送装置33は、第1車体昇降装置20の上端と第2車体昇降装置31の上端に設けられる連絡搬送台47と、この連絡搬送台47に設けたローラで駆動され車体13を支持する連絡パレット48とからなるフリクションコンベアである。なお、連絡車体搬送装置33は、実施例では、フリクションコンベアを適用したが、ベルトコンベア、チェーンコンベア、台車式搬送装置のいずれかを適用してもよい。
【0018】
次に車体搬送設備10内での車体10の搬送順序を説明する。
第1車体搬送装置14で搬送される車体13を、矢印(1)のように伸ばした状態の第1車体載せ台40に載せる。
車体13を矢印(2)のように第1昇降台39で上昇させる。
車体13を矢印(3)のように第1車体載せ台40から連絡パレット48へ移す。
【0019】
車体13を矢印(4)のように連絡車体搬送装置33で搬送する。
車体13を矢印(5)のように連絡車体搬送装置33の終点部から第2車体載せ台43へ移す。
【0020】
車体13を矢印(6)のように第2昇降台42で下降させる。
車体13を矢印(7)のように第2車体載せ台43から第2車体搬送装置32上の第2パレット46へ移す。
【0021】
第1車体載せ台40の構成を図2に基づいて説明する。
図2に示すように、第1車体載せ台40は、第1昇降台39に取付けられ第1車体搬送装置(図1、符号14)に平行に延びる下台51と、この下台51に第1車体搬送装置に向けて移動可能に取付けられ下台51と同方向に延びる中間台52と、この中間台52に第1車体搬送装置に向けて移動可能に取付けられ中間台52と同方向に延びる上台53とを有する。下台51に対して、中間台52及び上台53が移動しているため、第1車体載せ台40が移動状態にある。
【0022】
下台51の下面に、中間台52と上台53を第1車体搬送装置側へ移動させるための動力を発生する駆動源54が設けられている。この駆動源54の出力軸に、ベルト式の動力伝達機構55が連結され、この動力伝達機構55の出力軸がギヤボックス56内の入力軸に連結される。なお、駆動源54は、電動モータが好適であるが、油圧モータや空圧モータを適用しても構わない。動力伝達機構55は、実施例ではベルト式を適用したが、チェーン式を適用してもよい。
【0023】
第1車体載せ台40に、車体(図1、符号13)を車幅方向に拘束する一対の押し機構110、120が備えられるため、車体の長さに応じて第1昇降台39を大型化する必要がなく、車体昇降装置20を小型化できる。
加えて、上台53に、車体のサイドシル(後述)を受ける受け台49が4つ設けられる。
【0024】
第1車体載せ台40の構造を図3に基づいて詳細に説明する。なお、図3では、第1車体載せ台40の左、右は、中間台52、上台53の収納方向を基準に定める。
図3に示すように、下台51の下面57にギヤボックス56が設けられる。
さらに、下台51の左側面58の上側に、左案内ローラ59が回転自在に取付けられ、左側面58の下側に、左支持ローラ61が回転自在に取付けられる。そして、下台51の右側面62の上側に、右案内ローラ63が回転自在に取付けられ、右側面62の下側に、右支持ローラ64が回転自在に取付けられる。
【0025】
中間台52は、左支持ローラ61に支持され左案内ローラ59に案内される左端フレーム68と、右支持ローラ64に支持され右案内ローラ63に案内される右端フレーム69と、左端フレーム68に左連結材71を介して連結され右端フレーム69に右連結材72を介して連結される本体部73と、この本体部73の下面中央に設けられているラック83とからなる。
【0026】
上台53は、本体部73の左折曲げ部74に沿って転がる左走行ローラ75と本体部73の右折曲げ部76に沿って転がる右走行ローラ77とを備えるベース78と、このベース78の上面に設けられ左右に延ばされると共に車体(図1、符号13)が載る載せ部79とからなる。
【0027】
ギヤボックス56は、左半体84と、右半体85とからなる。このようなギヤボックス56の下端部に左下軸受86と右下軸受87とが設けられ、これら軸受86、87で入力軸88が回転自在に支持される。この入力軸88の左端に、動力伝達機構55の従動プーリ89が取付けられ、入力軸88の長手方向右側に、駆動ギヤ91が取付けられる。なお、従動プーリ89に巻付けたベルト98は、駆動源(図2、符号54)の出力軸に取付けた駆動プーリ(図2、符号99)にも巻付けられる。
【0028】
加えて、ギヤボックス56の上端部に左上軸受92と右上軸受93とが設けられ、これら軸受92、93で中間軸94が回転自在に支持される。この中間軸94の長手方向中間部に、駆動ギヤ91とラック83に噛合う中間ギヤ95が取付けられる。
【0029】
駆動源(図2、符号54)を起動すると、動力伝達機構55により駆動源の動力が入力軸88に伝達される。動力が入力軸88に入力されると、駆動ギヤ91が回転するため、動力が駆動ギヤ91から中間ギヤ95、ラック83の順に伝達される。
中間ギヤ95の回転運動がラック83の直線運動に変換され、中間台52が下台51に対して移動する。
【0030】
本体部73の左部には、左スプロケット81が回転自在に取付けられ、本体部73の右部には、右スプロケット82が回転自在に取付けられる。加えて、左スプロケット81と上台53の移動方向前端に設けるスプロケットとに左チェーン105が掛けられ、右スプロケット82と下台51の収納方向後端に設けるスプロケットとに右チェーン106が掛けられる。そのため、第1車体載せ台40は、上台53が中間台52の移動速度の2倍の速度で同一方向に移動するように構成されている。
【0031】
上台53に載せた車体(図1、符号13)を拘束する押し機構の構成を図4に基づいて説明する。なお、図4では、車体の左右は、第1車体載せ台40の収納方向に直交する方向を基準に定める。
図4に示すように、第1車体載せ台40の上台53は、車体13の左サイドシル101の下端部102及び右サイドシル103の下端部104を、車体13の車幅方向に挟んで車体13を拘束する左押し機構110及び右押し機構120を、備える。なお、左押し機構110と右押し機構120の構造は同一である。
【0032】
一対の押し機構110、120は、車体13の左サイドシル101の下端部102及び右サイドシル103の下端部104を車体13の車幅方向に挟むだけであり、構造が単純になるため、安価な機構となる。すなわち、車体昇降装置(図2、符号20)のコストアップが抑えられる。
【0033】
上台53の上面に、車体13の底部121に設けた左凸部122と右凸部123が載っている。
図2において、上台53の幅をWとすると、左押し機構110と右押し機構120の設置位置は、W/2となる。つまり、左押し機構110と右押し機構120は、上台53の幅方向中心に配置される。
【0034】
左押し機構110の構成を図5に基づいて説明する。
図5に示すように、左押し機構110は、上台53の上面に取付部材124で取付けられるシリンダ125と、このシリンダ125のピストンロッド126に止め部材127を介して連結され上台53の上面に設けたレール128で摺動自在に支持されるスライド部材129と、このスライド部材129の右面上端に止められスライド部材129の前進方向に延びる左ピン部材131とからなる。この左ピン部材131の先端で、サイドシル(図4、符号101)の下端部(図4、符号102)を押す。
【0035】
以上に述べた第1車体昇降装置20の作用を次に述べる。
図6(a)に示すように、第1パレット36で支持された車体13の下方に、第1車体載せ台40の上台53を矢印(8)のように挿入する。
(b)に示すように、第1車体載せ台40を、矢印(9)のように車体13の底部に向けて上昇させる。
【0036】
(c)に示すように、左押し機構110のシリンダ125で左ピン部材131を、矢印(10)のように左サイドシル101に向けて押出す。また、右押し機構120のシリンダ135で右ピン部材136を、矢印(11)のように右サイドシル103に向けて押出す。
(d)に示すように、左ピン部材131で左サイドシル101の下端部102が押される。
【0037】
(c)において、車体13の左サイドシル101の下端部102及び右サイドシル103の下端部104を、左右一対の押し機構110、120で車幅方向に挟むため、車体13の長さに拘わらず、車体13を確実に拘束できる。一対の押し機構110、120で車体13を拘束するので、車体13の姿勢が安定する。したがって、車体13の長さに拘わらず車体13を安定した姿勢で昇降させることができる車体昇降装置20が提供される。
【0038】
次に、車体13(小型車両)の重心と左ピン部材131の位置関係を図7に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、車体13は、第1パレット36上の位置決め部材137で位置決めされていると共に、第1パレット36上の支持部材133に載っている。また、車体13の下方に、上台53が待機している。このとき、車体13の重心138と上台53の幅中心(図2参照)は一致し、位置決め部材137の中心から重心138までの距離をL1とする。
【0039】
(b)に示すように、車体13を昇降させるとき、車体13の重心138が、上台53の幅中心に配置された左ピン部材131の中心と一致する。そのため、車体13を安定した姿勢で昇降させることができる。
【0040】
次に、車体13よりも大型の車体139(大型車両)の重心と左ピン部材131の位置関係を図8に基づいて説明する。
図8(a)に示すように、車体139は、第1パレット36上の位置決め部材137で位置決めされていると共に、第1パレット36上の支持部材141に載っている。また、車体139の下方に、上台53が待機している。このとき、車体139の重心142から上台53の幅中心(図2参照)までの距離をL2とし、位置決め部材137の中心から重心138までの距離をL1とする。
【0041】
(b)に示すように、車体139を昇降させるとき、車体139の重心142が、左ピン部材131の中心からL2だけ離れているが、重心142と左ピン部材131の中心が近いため、車体13を安定した姿勢で昇降させることができる。
【0042】
尚、本発明の車体昇降装置は、実施の形態では車体の昇降に適用したが、構造物や機械のケーシング等の昇降にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の車体昇降装置は、車体の昇降に好適である。
【符号の説明】
【0044】
10…車体搬送設備、13…車体、20…車体昇降装置、37…基礎、38…支柱、39…昇降台、40…車体載せ台、101…左側面(左サイドシル)、102、104…下端部、103…右側面(右サイドシル)、110…押し機構(左押し機構)、120…押し機構(右押し機構)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎又は設備面から上方へ延ばされる支柱と、この支柱に昇降自在に設けられる昇降台と、この昇降台に設けられ車体を載せる車体載せ台とからなる車体昇降装置において、
前記車体載せ台は、前記車体の左右両側面の下端部を、前記車体の車幅方向に挟んで前記車体を拘束する一対の押し機構を備えていることを特徴とする車体昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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