車体構造
【課題】 車体フロアにおける燃料タンクの上方位置に車体フロアを貫通する部品取付ボルトを配設しても、燃料タンクのスペース的な制約を極力排除することで、タンク容量を確保することができる車体構造の提供。
【解決手段】 車体フロア38の下側に燃料タンク63を配設し、車体フロア38における燃料タンク63の上方位置に車体フロア38を貫通する部品取付ボルト112,125を配設した構造であって、車体フロア38の下面に、部品取付ボルト112,125の車体フロア38から突出する突出部113,126と燃料タンク63との間に介在するカバー部材91を固定し、カバー部材91に燃料タンク63の当て面117,118を設ける。
【解決手段】 車体フロア38の下側に燃料タンク63を配設し、車体フロア38における燃料タンク63の上方位置に車体フロア38を貫通する部品取付ボルト112,125を配設した構造であって、車体フロア38の下面に、部品取付ボルト112,125の車体フロア38から突出する突出部113,126と燃料タンク63との間に介在するカバー部材91を固定し、カバー部材91に燃料タンク63の当て面117,118を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの配設スペースを確保可能な車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、例えば後部座席を座席として使用しない場合に、荷室スペースを拡大する等の目的から、後部座席を折り畳んで前方の足元スペースに収納する、いわゆるダイブダウン収納を可能とするものがある。このようなダイブダウン収納を可能とするためには、後部座席にダイブダウン収納のための機構を設ける必要があり、後部座席のダイブダウン収納時の移動軌跡やダイブダウン収納のための機構との干渉の問題から、通常後部座席の下方に配設される燃料タンクのための配設スペースに制約を生じタンク容量を確保できないことがある。このような制約を排除するために前部座席の下側に燃料タンクを配設するレイアウトを採用したものがある(例えば特許公報1参照)。
【特許文献1】特開2000−85382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、車両によっては、上記のようなレイアウトを採用することができない場合もあり、その場合には、従来通り後部座席の下方に燃料タンクを配設することになる。この場合、後部座席のダイブダウン収納のための機構用の部品取付ボルトが車体フロアにおける後部座席の下方位置に取り付けられることがあり、そのさらに下方位置に配設される燃料タンクの配設スペースに制約を生じ、タンク容量を確保できない可能性があった。勿論、この問題は、ダイブダウン収納のための機構に限らず、何らかの部品取付ボルトを車体フロアにおける燃料タンクの上方位置に設ける必要がある場合には常に生じる問題である。
【0004】
したがって、本発明は、車体フロアにおける燃料タンクの上方位置に車体フロアを貫通する部品取付ボルトを配設しても、燃料タンクのスペース的な制約を極力排除することで、タンク容量を確保することができる車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車体フロア(例えば実施形態における車体フロア38)の下側に燃料タンク(例えば実施形態における燃料タンク63)を配設し、前記車体フロアにおける前記燃料タンクの上方位置に前記車体フロアを貫通する部品取付ボルト(例えば実施形態における部品取付ボルト112,125)を配設した車体構造であって、前記車体フロアの下面に、前記部品取付ボルトの前記車体フロアから突出する突出部(例えば実施形態における突出部113,126)と前記燃料タンクとの間に介在するカバー部材(例えば実施形態におけるシートスティフナ91)を固定し、該カバー部材に前記燃料タンクの当て面(例えば実施形態における当て面117,118)を設けてなることを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記カバー部材は前記車体フロアとで閉断面構造をなすことを特徴としている。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記カバー部材の前または後で車幅方向に延びる車体骨格部(例えば実施形態における車体骨格部67)に前記カバー部材を結合してなることを特徴としている。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記カバー部材および前記車体骨格部は、車体フロアに沿って枠状に連結されることで車体フロアを補強する枠状フロア補強部(例えば実施形態における枠状フロア補強部105)の一部を構成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、燃料タンクの上方位置において車体フロアを貫通する部品取付ボルトの車体フロアから突出する突出部と燃料タンクとの間に介在するカバー部材を車体フロアの下面に固定しているため、燃料タンクを部品取付ボルト側まで張り出す形状としても車両衝突時等における燃料タンクと部品取付ボルトの突出部との干渉をカバー部材で防止できる。しかも、このカバー部材に燃料タンクの当て面を設けているため、このカバー部材を燃料タンクの取り付けの基準にでき、燃料タンクの形状等のバラツキに対する余裕を持たせることなく燃料タンクを部品取付ボルト側まで張り出す形状にすることができる。したがって、燃料タンクのスペース的な制約を極力排除することができ、タンク容量を確保することができる。しかも、カバー部材と燃料タンクの当て面を設ける部材とを兼用でき、コストダウンを図ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、カバー部材は前記車体フロアとで閉断面構造をなすため、車体強度を向上させることができるとともに、カバー部材の当て面に当接する燃料タンクを安定的に支持することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、カバー部材の前または後で車幅方向に延びる車体骨格部にカバー部材を結合してなるため、車幅方向に延びる車体骨格部からカバー部材が突出することになり車体強度を向上させることができるとともに、カバー部材の当て面に当接する燃料タンクをさらに安定的に支持することができる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、カバー部材および車体骨格部が、車体フロアに沿って枠状に連結されることで車体フロアを補強する枠状フロア補強部の一部を構成するため、カバー部材を枠状フロア補強部の一部として有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態の車体構造を図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において用いる前後左右は車体における前後左右である。
【0014】
本実施形態の車体構造が適用される車両の車室内には、図1に示すように、前から一列目の前部座席10が左右両側に配置される一対の側部シート11とこれら側部シート11の間に配置される中央シート12とで構成され、前から二列目の後部座席20も左右両側に配置される一対の側部シート21とこれら側部シート21の間に配置される中央シート22とで構成されており、6人乗りが可能となっている。また、後部座席20の直後位置には荷室30が設けられている。
【0015】
前部座席10の左右一対の側部シート11は、それぞれ、シートクッション13とシートバック14とを有しており、それぞれ単独で、シートクッション13の下側に設けられたスライド機構15によって前後スライド可能となっている。また、前部座席10の両側部シート11の間に設けられる中央シート12は、シートクッション17とシートバック18とを有しており、シートクッション17の下側に設けられたスライド機構19によって単独で前後スライド可能となっている。
【0016】
ここで、中央シート12はスライド機構19による前後スライドの範囲が側部シート11のスライド機構15によるスライド範囲に対し後側にずれており、図1に実線で示すように一対の側部シート11よりも中央シート12を後側にずらすV字レイアウトと、図1に二点鎖線で示すように両側の側部シート11と中央シート12とが前後に位置を合わせる直線レイアウトとが可能となっている。
【0017】
後部座席20の左右一対の側部シート21は、それぞれ、シートクッション23とシートバック24とを有しており、乗員の着席が可能な着席可能状態では位置固定すなわち前後スライド不可となっている。また、後部座席20の両側部シート21の間に設けられる中央シート22は、シートクッション27とシートバック28とを有しており、シートクッション27の下側に設けられたスライド機構29によって単独で前後スライド可能となっている。
【0018】
ここで、中央シート22はスライド機構29による前後スライドの範囲が位置固定の側部シート21から後側に延びており、図1に実線で示すように一対の側部シート21よりも中央シート22を後側にずらすV字レイアウトと、図1に二点鎖線で示すように両側の側部シート21と中央シート22とが前後に位置を合わせる直線レイアウトとが可能となっている。
【0019】
後部座席20のスライド不可な両側部シート21は、図2および図3の着席可能状態および図4のダイブダウン収納状態に示すように、シートバック24の前倒に連動してシートクッション23が前方に移動しつつ下方に沈み込むダイブダウン収納が可能とされている。両側部シート21のそれぞれのシートバック24の下部は荷室側のフロアマット31の両側部延出部32の前端部が連結されている。
【0020】
後部座席20の中央シート22は、図2の着席可能状態でのスライド前端位置から図3の着席可能状態でのスライド後端位置までの間で前後スライド可能であり、また、図2の着席可能状態でのスライド前端位置および図4のダイブダウン収納状態に示すように、スライド前端位置からシートバック28が前倒し、この前倒に連動してシートクッション27が前方に移動しつつ下方に沈み込むダイブダウン収納が可能とされている。
【0021】
ここで、中央シート22は前後スライド可能とされていることから、荷室側のフロアマット31には、スライドを許容するための開口部33が両側部延出部32の間に形成されており、この開口部33を閉塞させる板状のセンタフロアリッド35が、中央シート22に一体的にスライド可能に連結されている。
【0022】
次に、後部座席20の前後スライド可能かつダイブダウン収納可能な中央シート22についてさらに説明する。
【0023】
後部座席20の中央シート22は、図5に示すように、低位フロア36の後側に、この低位フロア36より高い高位フロア37が形成された段差状の車体フロア38の段差部分に設けられている。
【0024】
中央シート22のシートバック28は、クッション性を有し乗員の背部を支承するシートバックパッド45と、このシートバックパッド45を保持するシートバックフレーム46とを有している。また、中央シート22のシートクッション27は、クッション性を有し乗員の臀部を支承するシートクッションパッド48と、このシートクッションパッド48を保持するシートクッションフレーム49とを有している。
【0025】
そして、高位フロア37上には、車体前後方向に沿うシートスライドレール51が左右に離間して一対設けられており、これらシートスライドレール51は、それぞれ前後方向にのみスライド可能にスライダ52を保持している。これらシートスライドレール51およびスライダ52はスライド機構29を構成している。
【0026】
シートバックフレーム46は、その一端側が左右方向に中心軸線を配置した回動軸54を介してスライダ52に支持されており、これにより回動軸54を中心に略鉛直に沿う立設状態から前傾可能となっている。その結果、シートスライドレール51で案内されてスライドするスライダ52にシートバック28が前傾可能に軸支されている。
【0027】
立設状態にあるシートバックフレーム46の回動軸54よりも所定量上側となる位置に、左右方向に中心軸線を配置した支持軸55が取り付けられており、支持軸55には、シートクッションフレーム49の後部が回動可能に軸支されている。シートクッションフレーム49は、支持軸55から下方に延出したのち前方に延出する概略形状をなしている。
【0028】
シートクッションフレーム49の前端には支持部材56が固定されており、支持部材56には、左右方向に中心軸線を配置した回動軸57を介してリンクアーム58の一端が回動可能に連結されている。このリンクアーム58の他端側は、低位フロア36に設けられたフロア側支持部材59に回動可能に支持されている。これにより、シートクッションフレーム49の前部が低位フロア36とリンク結合されている。
【0029】
このような中央シート22が、通常の乗員が着座可能な着席可能状態にあるとき、必要によりスライダ52がシートスライドレール51に沿って摺動することになるが、スライダ52は、スライドロック機構60によりシートスライドレール51に対し複数の位置において固定可能および固定解除可能となっている。
【0030】
そして、スライダ52が、例えば図3および図6に示すようにスライド範囲の後端位置に位置する状態から図2および図5に示すようにスライド範囲の前端位置に位置する状態までシートスライドレール51で案内されてスライドすると、スライダ52に固定された状態のシートバック28はそのままの姿勢でスライドする一方、シートバック28の支持軸55に回動可能に連結されたシートクッション27は、前部の回動軸57に回動可能に連結されたリンクアーム58を、フロア側支持部材59を中心に回動させることにより、前部側を若干円弧状の軌跡を描かせるように上下させながらスライドする。また、後方にスライドする場合は上記とは逆の作動を行う。
【0031】
また、ダイブダウン収納時には、スライダ52が、図2および図5に示すスライド範囲の前端位置に位置する状態で、シートバック28を回動軸54を中心に回動させて前倒させると、シートバック28において回動軸54よりも上側に位置していた支持軸55が前側かつ下側に移動し、その結果、図7に示すように、シートクッションフレーム49は、支持軸55に連結されている後部側が前側かつ下側に移動するとともに、前部の回動軸57に回動可能に連結されたリンクアーム58がフロア側支持部材59を中心に前傾することで、前部側も前側かつ下側に移動し、その結果、全体として前側かつ下側に移動して、保持するシートクッションパッド48を前側かつ下側に移動させて低位フロア36側に落とし込む。このとき、シートバック28は図4にも示すようにシートクッション27に重なり合って背面が略水平となる。
【0032】
以上のようなダイブダウン収納時におけるシートクッション27の移動を許容するために、車体フロア38は、低位フロア36と高位フロア37との間に前側ほど低くなるように傾斜してこれらを結ぶ傾斜フロア62が設けられている。
【0033】
そして、本実施形態においては、後部座席20の下方であって車体フロア38の傾斜フロア62および高位フロア37の下側に燃料タンク63が配設されることになる。このため、燃料タンク63は高位フロア37の下面に沿う上面部64と、傾斜フロア62の下面(後面)に沿うように全体として前側ほど下側に位置するように傾斜する傾斜面部65とを有している。
【0034】
図8に示すように、車体フロア38には、燃料タンク63の前方位置に車幅方向(左右方向)に延びる閉断面構造の車体骨格部(前部車体骨格部)67が配設されており、燃料タンク63の後方位置にも車幅方向に延びる閉断面構造の車体骨格部(後部車体骨格部)68が配設されている。
【0035】
車体骨格部67は、下板部70と下板部70の前後両端縁部から上側に屈曲する立板部71と各立板部71の上端縁部からそれぞれ前後方向に相反して屈曲する一対のフランジ部72とを有するハット型断面形状をなす鋼板からなるミッドフロアクロスメンバ73と、ミッドフロアクロスメンバ73の車幅方向の中間所定範囲にフランジ部72間を結ぶように溶接により接合される鋼板からなるクロスメンバスティフナ74とを有している。そして、ミッドフロアクロスメンバ73のフランジ部72およびクロスメンバスティフナ74が車体フロア38の鋼板からなるフロアパネル76の下面に溶接により接合されると、これらミッドフロアクロスメンバ73、クロスメンバスティフナ74およびフロアパネル76で車体骨格部67が形成される。
【0036】
車体骨格部68は、図9に示すように、上板部77と上板部77の前後両端縁部から下側に屈曲する立板部78と各立板部78の下端縁部からそれぞれ前後方向に相反して屈曲する一対のフランジ部79とを有するハット型断面形状をなす鋼板からなる上部クロスメンバ80を有している。
【0037】
また、車体骨格部68は、下板部81と下板部81の前後両端縁部から上側に屈曲する立板部82と各立板部82の上端縁部からそれぞれ前後方向に相反して屈曲する一対のフランジ部83とを有するハット型断面形状をなす鋼板からなる下部クロスメンバ84を有している。
【0038】
そして、上部クロスメンバ80が各フランジ部79においてフロアパネル76の上面に溶接により接合され、下部クロスメンバ84が各フランジ部83において各フランジ部79とでフロアパネル76を挟むようにフロアパネル76の下面に溶接により接合されると、これら上部クロスメンバ80、フロアパネル76および下部クロスメンバ84で車体骨格部68が形成される。
【0039】
また、図8に示すように、車体フロア38には、燃料タンク63の左右の両側方となる位置に車体前後方向に延びる閉断面構造の一対の車体骨格部(側部車体骨格部)85が配設されている。
【0040】
車体骨格部85は、下板部86と下板部86の車幅方向の両端縁部から上側に屈曲する一対の側板部87とこれら側板部87の上端縁部からそれぞれ車幅方向に相反して屈曲する一対のフランジ部88とを有するハット型断面形状をなす鋼板からなるリアフロアフレーム89と、リアフロアフレーム89の前後方向の中間所定範囲にフランジ部88間を結ぶように溶接により接合される鋼板からなるフレームスティフナ90とを有している。そして、リアフロアフレーム89のフランジ部88およびフレームスティフナ90が車体フロア38のフロアパネル76の下面に溶接により接合されると、これらリアフロアフレーム89、フレームスティフナ90およびフロアパネル76で車体骨格部85が形成される。
【0041】
ここで、車幅方向に沿う車体骨格部67および車体骨格部68は、それぞれの両端部が車体前後方向に沿う一対の車体骨格部85に連結されており、これにより枠状をなして燃料タンク63を水平四方向で囲むようになっている。また、車体骨格部67は低位フロア36に設けられ、車体骨格部68は高位フロア37に設けられることから、車体骨格部67よりも車体骨格部68の方が上側に配設されている。
【0042】
本実施形態において、車体フロア38には、車体骨格部67の中央側の複数カ所から傾斜フロア62に沿って斜めに延出する複数具体的には二つの鋼板からなるシートスティフナ(カバー部材)91が設けられている。
【0043】
各シートスティフナ91は、図10にも示すように、車幅方向の中間部にあって傾斜フロア62に沿って斜めに延出する傾斜板部92と、傾斜板部92の後端縁部から後方に延出するように屈曲する後方延出板部93と、傾斜板部92および後方延出板部93の周縁部から上側に屈曲する環状板部94と、環状板部94の傾斜板部92および後方延出板部93とは反対側の周縁部から外側に屈曲する環状のフランジ部95とを有するハット型断面形状をなしており、フランジ部95において車体フロア38のフロアパネル76の傾斜フロア62を形成する部分および高位フロア37を形成する部分の下面に溶接により接合されてこの部分とで閉断面構造を形成する。ここで、各シートスティフナ91は、それぞれの前で車幅方向に延びる車体骨格部67の後部のフランジ部72に結合されることになり、その結果、それぞれが車体骨格部67から後ろ上がりに傾斜して延出する車体骨格部96をフロアパネル76とで構成する。この車体骨格部96は、燃料タンク63の前部上方に傾斜面部65に沿って配設されている。
【0044】
ここで、各シートスティフナ91には、図11にも示すように、それぞれ、前後方向の中間所定範囲にフランジ部95を車幅方向に結ぶように配設される鋼板からなるシートプレート98が両フランジ部95に溶接により接合されている。各シートプレート98は図10に示すようにシートスティフナ91のフランジ部95とともにフロアパネル76の下面に溶接により接合される。
【0045】
また、図8および図11に示すように、シートスティフナ91の後部所定範囲には、フランジ部95を車幅方向に結びさらには車幅方向に隣り合うシートスティフナ91同士を結ぶように鋼板からなるシートパッチ100が溶接により接合されている。このシートパッチ100も、図10に示すようにシートスティフナ91のフランジ部95とともにフロアパネル76の下面に溶接により接合される。よって、上記した車体骨格部96は、シートプレート98の位置においては、シートスティフナ91とシートプレート98とフロアパネル76とで構成され、シートパッチ100の位置においてはシートスティフナ91とシートパッチ100とフロアパネル76とで構成される。
【0046】
シートパッチ100は、フロアパネル76における傾斜フロア62を構成する部分の高位フロア37側の端縁部に接合される傾斜板部101と、フロアパネル76における高位フロア37を構成する部分の傾斜フロア62側の端縁部に接合される上板部102とを有する屈曲形状をなしている。このシートパッチ100はフロアパネル76に接合されることでフロアパネル76の屈曲部において板厚を厚くして車体フロア38を補強するフロア補強部103を形成する。
【0047】
そして、図8に示すように、閉断面構造の車体骨格部67と、車体骨格部67から延出する左右一対の車体骨格部96と、これら車体骨格部96の車体骨格部67とは反対側同士を連結させるシートパッチ100を含むフロア補強部103とで、車体フロア38に沿って枠状に連結されて車体フロア38を補強する枠状フロア補強部105が構成されている。
【0048】
よって、シートスティフナ91を含む車体骨格部96は、車体フロア38に沿って枠状に連結されることで車体フロア38を補強する枠状フロア補強部105の一部を構成することになり、シートスティフナ91の前で車幅方向に延びる車体骨格部67もこの枠状フロア補強部105の一部を構成することになる。
【0049】
この枠状フロア補強部105は、燃料タンク63の傾斜面部65に対向する車体フロア38の傾斜フロア62に配設されており、平面視で燃料タンク63と重なり合わない位置にある高剛性の車体骨格部67から、平面視で燃料タンク63と重なり合うように厚みを抑えた一対の車体骨格部96を延出させ、これらの先端側の平面視で燃料タンク63と重なり合う部分を厚みをさらに抑えたフロア補強部103で連結させることで車体フロア38の剛性を確保しつつ燃料タンク63の容量低下を抑制するようになっている。
【0050】
各シートプレート98には、図11に示すように、それぞれ取り付けられるシートスティフナ91の環状板部94の内側となる位置に、取付穴107が左右に二カ所形成されており、各シートプレート98の下面には、図10および図12に示すように、各取付穴107と同軸をなしてウェルドナット108が固定されている。そして、上記した後部座席20の中央シート22のダイブダウンのための左右のリンクアーム58を支持する左右のフロア側支持部材59が、それぞれ、取付部109に形成された左右二カ所の取付穴110とシートプレート98の各取付穴107に同軸をなしてフロアパネル76に形成された左右二カ所の取付穴111と各シートプレート98の左右二カ所の取付穴107とに挿入されて左右二カ所のウェルドナット108に螺合される二本の部品取付ボルト112で車体フロア38側に固定される。このとき、シートスティフナ91が、部品取付ボルト112の車体フロア38から突出する突出部113をその軸線方向先方で覆うことになる。
【0051】
ここで、図10に示すように車体フロア38のフロアパネル76の取付穴111を貫通する部品取付ボルト112は、車体フロア38における燃料タンク63の上方位置に配設されており、その結果、フロアパネル76の下面に固定されるシートスティフナ91が、部品取付ボルト112の車体フロア38から突出する突出部113と燃料タンク63との間に介在することになる。
【0052】
図10および図12に示すように、シートスティフナ91の後ろ上がりに傾斜する傾斜板部92は、燃料タンク63の傾斜面部65と対向することになり、燃料タンク63の傾斜面部65の各傾斜板部92と対向する部分には、それぞれクッション取付面部114が形成されている。
【0053】
また、図10に示すように、各シートスティフナ91の傾斜板部92の後端から後方に延出する後方延出板部93は、燃料タンク63の上面部64と対向することになり、燃料タンク63の上面部64の各後方延出板部93と対向する部分にも、それぞれクッション取付面部115が形成されている。
【0054】
そして、燃料タンク63は、これらのクッション取付面部114,115にゴム等からなるクッション部材116が接合され、これらのクッション部材116を傾斜板部92および後方延出板部93に当接させた状態で車体側に接合される。よって、傾斜板部92の燃料タンク63側の面が燃料タンク63の当て面117となっており、後方延出板部93の燃料タンク63側の面も燃料タンク63の当て面118となっている。
【0055】
そして、図8に示すように、上記した左右のシートスティフナ91とで車体骨格部96を構成するシートパッチ100と車体骨格部68とを結ぶように後部座席20の中央シート22の左右のシートスライドレール51が配設されている。ここで、シートスライドレール51は車体骨格部96と車幅方向の位置を合わせて車体前後方向に直列に連結されている。また、前部座席10の中央シート22のシートスライドレール119も車体骨格部96と車幅方向の位置を合わせており車体骨格部67を介して車体前後方向に直列に連結されている。
【0056】
図11および図13に示すように、シートパッチ100の傾斜板部101には、車幅方向における各シートスティフナ91のそれぞれの環状板部94の内側となる位置に取付穴120が形成されており、図10および図13に示すように、シートパッチ100の傾斜板部101の下面には各取付穴120と同軸をなしてウェルドナット121がそれぞれ固定されている。そして、上記した各シートスライドレール51が、それぞれ、前端の取付部122に形成された取付穴123とシートパッチ100の取付穴120に同軸をなしてフロアパネル76に形成された取付穴124とシートパッチ100の取付穴120とに挿入されてウェルドナット121に螺合される部品取付ボルト125によって車体フロア38側に固定される。このとき、各シートスティフナ91が各部品取付ボルト125の車体フロア38から突出する突出部126をその軸線方向先方で覆うことになる。
【0057】
ここで、図10に示すようにこれらの部品取付ボルト125も、上記と同様、車体フロア38における燃料タンク63の上方位置に配設されており、その結果、フロアパネル76の下面に固定される各シートスティフナ91が、これら部品取付ボルト125の車体フロア38から突出する突出部126と燃料タンク63との間に介在することになる。
【0058】
また、図14に示すように、車体骨格部68の上部クロスメンバ80の前側のフランジ部79には取付穴129が形成されており、後部座席20の中央シート22のシートスライドレール51にはその後端の取付部131に取付穴132が形成され、この取付部131の上面には取付穴132と同軸をなしてウェルドナット130が固定されている。そして、後部座席20の中央シート22のシートスライドレール51が、フロアパネル76の下側から、フランジ部79の取付穴129に同軸をなしてフロアパネル76に形成された取付穴133とフランジ部79の取付穴129と取付部131に形成された取付穴132とに挿入されてウェルドナット130に螺合される取付ボルト134によって車体フロア38側に固定される。このとき、取付ボルト134は燃料タンク63に対し前後方向にずれている。
【0059】
なお、図8に示すように、左右のシートスライドレール51の間となる位置に燃料タンク63のメンテナンスが必要な図示略のポンプ等が配置されるメンテナンス穴137が形成されている。また、燃料タンク63の左右のシートスライドレール51の間であってメンテナンス穴137の外側部分は図5〜図7にも示すようにシートスライドレール51よりも高さが高くされた嵩上部138とされており、燃料タンク63の容量を増加させている、
【0060】
そして、図8に示すように、シートスライドレール51の左右両側外側に、それぞれが燃料タンク63の前後の車体骨格部96と車体骨格部68とを結ぶとともに車幅方向同側に配置された一方の車体骨格部85に連結される一対の連結部材140が配設されている。
【0061】
連結部材140は、図15にも示すように、両端部が板状に閉塞されて取付部141とされた鋼管からなる閉断面構造のパイプ(閉断面構造部)142と、下板部144と下板部144の幅方向の両端縁部から上側に屈曲する一対の立板部145と各立板部145の上端縁部から相反方向に屈曲する一対のフランジ部146とを有するハット型断面形状の鋼板からなる下部分割体147と、上板部149と上板部149の幅方向の両端縁部から下側に屈曲する一対の立板部150と各立板部150の下端縁部からそれぞれ相反方向に屈曲する一対のフランジ部151とを有するハット型断面形状の鋼板からなる上部分割体152とを有している。
【0062】
下部分割体147と上部分割体152とがそれぞれの対応するフランジ部146,151同士を溶接により接合させることで閉断面構造部153を形成している。そして、この閉断面構造部153が、その長さ方向の一端部においてパイプ142の中間部に、自らの一端開口部を閉塞させかつパイプ142と垂直をなすようにして溶接により接合されている。
【0063】
そして、図8に示すように、右側の連結部材140がパイプ142を前後方向に配置しかつ閉断面構造部153をパイプ142から右方向に延出させた状態で、パイプ142の前端の取付部141をシートパッチ100の右側に連結させ、パイプ142の後端の取付部141を車体骨格部68の上板部77の右側に連結させ、さらに閉断面構造部153の延出先端側を右側の車体骨格部85のフレームスティフナ90に連結させている。
【0064】
左側の連結部材140はパイプ142を前後方向に配置しかつ閉断面構造部153をパイプ142から左方向に延出させた状態で、パイプ142の前端の取付部141をシートパッチ100の左側に連結させ、パイプ142の後端の取付部141を車体骨格部68の上板部77の左側に連結させ、さらに閉断面構造部153の延出先端側を左側の車体骨格部85のフレームスティフナ90に連結させている。
【0065】
つまり、図11に示すように、シートパッチ100の傾斜板部101の各シートスティフナ91よりも車幅方向外側には、それぞれ取付穴156が形成されており、図16に示すようにシートパッチ100の傾斜板部101の下面には取付穴156と同軸をなしてウェルドナット157が固定されている。そして、パイプ142の前端の取付部141が、これに形成された取付穴158とシートパッチ100の取付穴156に同軸をなしてフロアパネル76に形成された取付穴159とシートパッチ100の取付穴156とに挿入されてウェルドナット157に螺合される取付ボルト160で車体フロア38側に固定される。このとき、取付ボルト160の車体フロア38から突出する部分は燃料タンク63から比較的大きく離間している。
【0066】
また、車体骨格部68の上板部77には取付穴163が形成されており、上板部77の下面には取付穴163と同軸をなしてウェルドナット164が固定されている。そして、パイプ142の後端の取付部141が、これに形成された取付穴158と上板部77の取付穴163とに挿入されてウェルドナット164に螺合される取付ボルト166で車体フロア38側に固定される。
【0067】
さらに、図17に示すように、フレームスティフナ90におけるリアフロアフレーム89の両側板部87間となる位置の車幅方向内側寄りには取付穴168が形成されており、フレームスティフナ90の下面には取付穴168と同軸をなしてウェルドナット170が固定されている。そして、閉断面構造部153の下板部144が、これに形成された取付穴171とフレームスティフナ90の取付穴168に同軸をなしてフロアパネル76に形成された取付穴172とフレームスティフナ90の取付穴168とに挿入されてウェルドナット170に螺合される取付ボルト173で車体フロア38側に固定される。なお、閉断面構造部153の上板部149には、下板部144の取付穴171と同軸をなして図示略の工具等が挿入される挿入穴174が形成されている。
【0068】
そして、このようにして車体フロア38に取り付けられた各連結部材140のそれぞれの車幅方向に沿う閉断面構造部153に後部座席20の側部シート21がそれぞれ固定される。つまり、図15に示すように、閉断面構造部153の上板部149には左右二カ所に取付穴177が形成されており、上板部149の下面には各取付穴177と同軸をなして図18に示すウェルドナット178が固定されている。そして、側部シート21の下部の取付部179が、これに形成された取付穴180と上板部149の取付穴177とに挿入されてウェルドナット178に螺合される取付ボルト182で連結部材140に固定される。
【0069】
また、図15に示すように、連結部材140の閉断面構造部153の上板部149にはパイプ142に近接して取付穴189が形成されており、図19に示すアンカプレート185とアンカボルト186とからなるシートベルトアンカ187がこの取付穴189に締結される。つまり、閉断面構造部153の上板部149の下面には取付穴189と同軸をなしてウェルドナット190が固定されており、アンカプレート185が、これに形成された取付穴191と上板部149の取付穴189とに挿入されてウェルドナット190に螺合されるアンカボルト186で車体フロア38側に固定される。そして、このシートベルトアンカ187のアンカプレート185にシートベルト193が支持される。
【0070】
以上に述べた本実施形態によれば、燃料タンク63の上方位置において車体フロア38を貫通する部品取付ボルト112,125の車体フロア38から突出する突出部113,126と燃料タンク63との間に介在するシートスティフナ91を車体フロア38の下面に固定しているため、燃料タンク63を部品取付ボルト112,125側まで張り出す形状としても車両衝突時等における燃料タンク63と部品取付ボルト112,125の突出部113,126との干渉をシートスティフナ91で防止できる。しかも、このシートスティフナ91に燃料タンク63の当て面117,118を設けているため、このシートスティフナ91を燃料タンク63の取り付けの基準にでき、燃料タンク63の形状等のバラツキに対する余裕を持たせることなく燃料タンク63を部品取付ボルト112,125側まで張り出す形状にすることができる。したがって、燃料タンク63のスペース的な制約を極力排除することができ、タンク容量を確保することができる。しかも、部品取付ボルト112,125を覆うシートスティフナ91と燃料タンク63の当て面117,118を設ける部材とを兼用でき、コストダウンを図ることができる。
【0071】
また、シートスティフナ91は車体フロア38のフロアパネル76とで閉断面構造をなすため、車体強度を向上させることができるとともに、シートスティフナ91の当て面117,118に当接する燃料タンク63を安定的に支持することができる。
【0072】
さらに、シートスティフナ91の前で車幅方向に延びる車体骨格部67にシートスティフナ91を結合してなるため、車幅方向に延びる車体骨格部67からシートスティフナ91が突出することになり、車体強度を向上させることができるとともに、シートスティフナ91の当て面117,118に当接する燃料タンク63をさらに安定的に支持することができる。なお、シートスティフナ91の後ろで車幅方向に延びる車体骨格部が設けられている場合には、これにシートスティフナ91を連結させても同様の効果が得られる。
【0073】
加えて、シートスティフナ91および車体骨格部67が、車体フロア38に沿って枠状に連結されることで車体フロア38を補強する枠状フロア補強部105の一部を構成するため、シートスティフナ91を枠状フロア補強部105の一部として有効利用できる。
【0074】
なお、図20に示すように、上記した連結部材140の下方に、燃料タンク63のメンテナンスが必要なポンプ等が配置されるメンテナンス穴195が形成されている場合、連結部材140が上記のように細いパイプ142を備えているため、作業のための隙間を良好に確保することができる。
また、上記したフロア補強部103に換えて閉断面の車体骨格部を配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両の車室内を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席が直線レイアウトとされた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席がV字レイアウトとされた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席がダイブダウン収納された状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席の中央シートが前端位置にある状態を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席の中央シートが後端位置にある状態を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席の中央シートのダイブダウン収納状態を示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態の車体構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態の車体構造における後部の車体骨格部を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の車体構造におけるシートスティフナ周辺の断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の車体構造におけるシートスティフナ、シートプレートおよびシートパッチの組付状態の斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態の車体構造におけるシートスティフナおよびシートプレートのフロアパネルへの取り付けを示す断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の車体構造におけるシートスティフナおよびシートパッチのフロアパネルへの取り付けを示す断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の車体構造におけるシートスライドレール後端の車体骨格部への取り付けを示す断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材を示す斜視図である。
【図16】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材のパイプの車体側への取り付けを示す断面図である。
【図17】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材の閉断面構造部の車体側への取り付けを示す断面図である。
【図18】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材の閉断面構造部への側部シートの取り付けを示す断面図である。
【図19】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材の閉断面構造部へのシートベルトアンカの取り付けを示す断面図である。
【図20】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材の四輪駆動車への取付例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0076】
38 車体フロア
63 燃料タンク
91 シートスティフナ(カバー部材)
96 車体骨格部
105 枠状フロア補強部
112,125 部品取付ボルト
113,126 突出部
117,118 当て面
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの配設スペースを確保可能な車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、例えば後部座席を座席として使用しない場合に、荷室スペースを拡大する等の目的から、後部座席を折り畳んで前方の足元スペースに収納する、いわゆるダイブダウン収納を可能とするものがある。このようなダイブダウン収納を可能とするためには、後部座席にダイブダウン収納のための機構を設ける必要があり、後部座席のダイブダウン収納時の移動軌跡やダイブダウン収納のための機構との干渉の問題から、通常後部座席の下方に配設される燃料タンクのための配設スペースに制約を生じタンク容量を確保できないことがある。このような制約を排除するために前部座席の下側に燃料タンクを配設するレイアウトを採用したものがある(例えば特許公報1参照)。
【特許文献1】特開2000−85382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、車両によっては、上記のようなレイアウトを採用することができない場合もあり、その場合には、従来通り後部座席の下方に燃料タンクを配設することになる。この場合、後部座席のダイブダウン収納のための機構用の部品取付ボルトが車体フロアにおける後部座席の下方位置に取り付けられることがあり、そのさらに下方位置に配設される燃料タンクの配設スペースに制約を生じ、タンク容量を確保できない可能性があった。勿論、この問題は、ダイブダウン収納のための機構に限らず、何らかの部品取付ボルトを車体フロアにおける燃料タンクの上方位置に設ける必要がある場合には常に生じる問題である。
【0004】
したがって、本発明は、車体フロアにおける燃料タンクの上方位置に車体フロアを貫通する部品取付ボルトを配設しても、燃料タンクのスペース的な制約を極力排除することで、タンク容量を確保することができる車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車体フロア(例えば実施形態における車体フロア38)の下側に燃料タンク(例えば実施形態における燃料タンク63)を配設し、前記車体フロアにおける前記燃料タンクの上方位置に前記車体フロアを貫通する部品取付ボルト(例えば実施形態における部品取付ボルト112,125)を配設した車体構造であって、前記車体フロアの下面に、前記部品取付ボルトの前記車体フロアから突出する突出部(例えば実施形態における突出部113,126)と前記燃料タンクとの間に介在するカバー部材(例えば実施形態におけるシートスティフナ91)を固定し、該カバー部材に前記燃料タンクの当て面(例えば実施形態における当て面117,118)を設けてなることを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記カバー部材は前記車体フロアとで閉断面構造をなすことを特徴としている。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記カバー部材の前または後で車幅方向に延びる車体骨格部(例えば実施形態における車体骨格部67)に前記カバー部材を結合してなることを特徴としている。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記カバー部材および前記車体骨格部は、車体フロアに沿って枠状に連結されることで車体フロアを補強する枠状フロア補強部(例えば実施形態における枠状フロア補強部105)の一部を構成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、燃料タンクの上方位置において車体フロアを貫通する部品取付ボルトの車体フロアから突出する突出部と燃料タンクとの間に介在するカバー部材を車体フロアの下面に固定しているため、燃料タンクを部品取付ボルト側まで張り出す形状としても車両衝突時等における燃料タンクと部品取付ボルトの突出部との干渉をカバー部材で防止できる。しかも、このカバー部材に燃料タンクの当て面を設けているため、このカバー部材を燃料タンクの取り付けの基準にでき、燃料タンクの形状等のバラツキに対する余裕を持たせることなく燃料タンクを部品取付ボルト側まで張り出す形状にすることができる。したがって、燃料タンクのスペース的な制約を極力排除することができ、タンク容量を確保することができる。しかも、カバー部材と燃料タンクの当て面を設ける部材とを兼用でき、コストダウンを図ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、カバー部材は前記車体フロアとで閉断面構造をなすため、車体強度を向上させることができるとともに、カバー部材の当て面に当接する燃料タンクを安定的に支持することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、カバー部材の前または後で車幅方向に延びる車体骨格部にカバー部材を結合してなるため、車幅方向に延びる車体骨格部からカバー部材が突出することになり車体強度を向上させることができるとともに、カバー部材の当て面に当接する燃料タンクをさらに安定的に支持することができる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、カバー部材および車体骨格部が、車体フロアに沿って枠状に連結されることで車体フロアを補強する枠状フロア補強部の一部を構成するため、カバー部材を枠状フロア補強部の一部として有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態の車体構造を図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において用いる前後左右は車体における前後左右である。
【0014】
本実施形態の車体構造が適用される車両の車室内には、図1に示すように、前から一列目の前部座席10が左右両側に配置される一対の側部シート11とこれら側部シート11の間に配置される中央シート12とで構成され、前から二列目の後部座席20も左右両側に配置される一対の側部シート21とこれら側部シート21の間に配置される中央シート22とで構成されており、6人乗りが可能となっている。また、後部座席20の直後位置には荷室30が設けられている。
【0015】
前部座席10の左右一対の側部シート11は、それぞれ、シートクッション13とシートバック14とを有しており、それぞれ単独で、シートクッション13の下側に設けられたスライド機構15によって前後スライド可能となっている。また、前部座席10の両側部シート11の間に設けられる中央シート12は、シートクッション17とシートバック18とを有しており、シートクッション17の下側に設けられたスライド機構19によって単独で前後スライド可能となっている。
【0016】
ここで、中央シート12はスライド機構19による前後スライドの範囲が側部シート11のスライド機構15によるスライド範囲に対し後側にずれており、図1に実線で示すように一対の側部シート11よりも中央シート12を後側にずらすV字レイアウトと、図1に二点鎖線で示すように両側の側部シート11と中央シート12とが前後に位置を合わせる直線レイアウトとが可能となっている。
【0017】
後部座席20の左右一対の側部シート21は、それぞれ、シートクッション23とシートバック24とを有しており、乗員の着席が可能な着席可能状態では位置固定すなわち前後スライド不可となっている。また、後部座席20の両側部シート21の間に設けられる中央シート22は、シートクッション27とシートバック28とを有しており、シートクッション27の下側に設けられたスライド機構29によって単独で前後スライド可能となっている。
【0018】
ここで、中央シート22はスライド機構29による前後スライドの範囲が位置固定の側部シート21から後側に延びており、図1に実線で示すように一対の側部シート21よりも中央シート22を後側にずらすV字レイアウトと、図1に二点鎖線で示すように両側の側部シート21と中央シート22とが前後に位置を合わせる直線レイアウトとが可能となっている。
【0019】
後部座席20のスライド不可な両側部シート21は、図2および図3の着席可能状態および図4のダイブダウン収納状態に示すように、シートバック24の前倒に連動してシートクッション23が前方に移動しつつ下方に沈み込むダイブダウン収納が可能とされている。両側部シート21のそれぞれのシートバック24の下部は荷室側のフロアマット31の両側部延出部32の前端部が連結されている。
【0020】
後部座席20の中央シート22は、図2の着席可能状態でのスライド前端位置から図3の着席可能状態でのスライド後端位置までの間で前後スライド可能であり、また、図2の着席可能状態でのスライド前端位置および図4のダイブダウン収納状態に示すように、スライド前端位置からシートバック28が前倒し、この前倒に連動してシートクッション27が前方に移動しつつ下方に沈み込むダイブダウン収納が可能とされている。
【0021】
ここで、中央シート22は前後スライド可能とされていることから、荷室側のフロアマット31には、スライドを許容するための開口部33が両側部延出部32の間に形成されており、この開口部33を閉塞させる板状のセンタフロアリッド35が、中央シート22に一体的にスライド可能に連結されている。
【0022】
次に、後部座席20の前後スライド可能かつダイブダウン収納可能な中央シート22についてさらに説明する。
【0023】
後部座席20の中央シート22は、図5に示すように、低位フロア36の後側に、この低位フロア36より高い高位フロア37が形成された段差状の車体フロア38の段差部分に設けられている。
【0024】
中央シート22のシートバック28は、クッション性を有し乗員の背部を支承するシートバックパッド45と、このシートバックパッド45を保持するシートバックフレーム46とを有している。また、中央シート22のシートクッション27は、クッション性を有し乗員の臀部を支承するシートクッションパッド48と、このシートクッションパッド48を保持するシートクッションフレーム49とを有している。
【0025】
そして、高位フロア37上には、車体前後方向に沿うシートスライドレール51が左右に離間して一対設けられており、これらシートスライドレール51は、それぞれ前後方向にのみスライド可能にスライダ52を保持している。これらシートスライドレール51およびスライダ52はスライド機構29を構成している。
【0026】
シートバックフレーム46は、その一端側が左右方向に中心軸線を配置した回動軸54を介してスライダ52に支持されており、これにより回動軸54を中心に略鉛直に沿う立設状態から前傾可能となっている。その結果、シートスライドレール51で案内されてスライドするスライダ52にシートバック28が前傾可能に軸支されている。
【0027】
立設状態にあるシートバックフレーム46の回動軸54よりも所定量上側となる位置に、左右方向に中心軸線を配置した支持軸55が取り付けられており、支持軸55には、シートクッションフレーム49の後部が回動可能に軸支されている。シートクッションフレーム49は、支持軸55から下方に延出したのち前方に延出する概略形状をなしている。
【0028】
シートクッションフレーム49の前端には支持部材56が固定されており、支持部材56には、左右方向に中心軸線を配置した回動軸57を介してリンクアーム58の一端が回動可能に連結されている。このリンクアーム58の他端側は、低位フロア36に設けられたフロア側支持部材59に回動可能に支持されている。これにより、シートクッションフレーム49の前部が低位フロア36とリンク結合されている。
【0029】
このような中央シート22が、通常の乗員が着座可能な着席可能状態にあるとき、必要によりスライダ52がシートスライドレール51に沿って摺動することになるが、スライダ52は、スライドロック機構60によりシートスライドレール51に対し複数の位置において固定可能および固定解除可能となっている。
【0030】
そして、スライダ52が、例えば図3および図6に示すようにスライド範囲の後端位置に位置する状態から図2および図5に示すようにスライド範囲の前端位置に位置する状態までシートスライドレール51で案内されてスライドすると、スライダ52に固定された状態のシートバック28はそのままの姿勢でスライドする一方、シートバック28の支持軸55に回動可能に連結されたシートクッション27は、前部の回動軸57に回動可能に連結されたリンクアーム58を、フロア側支持部材59を中心に回動させることにより、前部側を若干円弧状の軌跡を描かせるように上下させながらスライドする。また、後方にスライドする場合は上記とは逆の作動を行う。
【0031】
また、ダイブダウン収納時には、スライダ52が、図2および図5に示すスライド範囲の前端位置に位置する状態で、シートバック28を回動軸54を中心に回動させて前倒させると、シートバック28において回動軸54よりも上側に位置していた支持軸55が前側かつ下側に移動し、その結果、図7に示すように、シートクッションフレーム49は、支持軸55に連結されている後部側が前側かつ下側に移動するとともに、前部の回動軸57に回動可能に連結されたリンクアーム58がフロア側支持部材59を中心に前傾することで、前部側も前側かつ下側に移動し、その結果、全体として前側かつ下側に移動して、保持するシートクッションパッド48を前側かつ下側に移動させて低位フロア36側に落とし込む。このとき、シートバック28は図4にも示すようにシートクッション27に重なり合って背面が略水平となる。
【0032】
以上のようなダイブダウン収納時におけるシートクッション27の移動を許容するために、車体フロア38は、低位フロア36と高位フロア37との間に前側ほど低くなるように傾斜してこれらを結ぶ傾斜フロア62が設けられている。
【0033】
そして、本実施形態においては、後部座席20の下方であって車体フロア38の傾斜フロア62および高位フロア37の下側に燃料タンク63が配設されることになる。このため、燃料タンク63は高位フロア37の下面に沿う上面部64と、傾斜フロア62の下面(後面)に沿うように全体として前側ほど下側に位置するように傾斜する傾斜面部65とを有している。
【0034】
図8に示すように、車体フロア38には、燃料タンク63の前方位置に車幅方向(左右方向)に延びる閉断面構造の車体骨格部(前部車体骨格部)67が配設されており、燃料タンク63の後方位置にも車幅方向に延びる閉断面構造の車体骨格部(後部車体骨格部)68が配設されている。
【0035】
車体骨格部67は、下板部70と下板部70の前後両端縁部から上側に屈曲する立板部71と各立板部71の上端縁部からそれぞれ前後方向に相反して屈曲する一対のフランジ部72とを有するハット型断面形状をなす鋼板からなるミッドフロアクロスメンバ73と、ミッドフロアクロスメンバ73の車幅方向の中間所定範囲にフランジ部72間を結ぶように溶接により接合される鋼板からなるクロスメンバスティフナ74とを有している。そして、ミッドフロアクロスメンバ73のフランジ部72およびクロスメンバスティフナ74が車体フロア38の鋼板からなるフロアパネル76の下面に溶接により接合されると、これらミッドフロアクロスメンバ73、クロスメンバスティフナ74およびフロアパネル76で車体骨格部67が形成される。
【0036】
車体骨格部68は、図9に示すように、上板部77と上板部77の前後両端縁部から下側に屈曲する立板部78と各立板部78の下端縁部からそれぞれ前後方向に相反して屈曲する一対のフランジ部79とを有するハット型断面形状をなす鋼板からなる上部クロスメンバ80を有している。
【0037】
また、車体骨格部68は、下板部81と下板部81の前後両端縁部から上側に屈曲する立板部82と各立板部82の上端縁部からそれぞれ前後方向に相反して屈曲する一対のフランジ部83とを有するハット型断面形状をなす鋼板からなる下部クロスメンバ84を有している。
【0038】
そして、上部クロスメンバ80が各フランジ部79においてフロアパネル76の上面に溶接により接合され、下部クロスメンバ84が各フランジ部83において各フランジ部79とでフロアパネル76を挟むようにフロアパネル76の下面に溶接により接合されると、これら上部クロスメンバ80、フロアパネル76および下部クロスメンバ84で車体骨格部68が形成される。
【0039】
また、図8に示すように、車体フロア38には、燃料タンク63の左右の両側方となる位置に車体前後方向に延びる閉断面構造の一対の車体骨格部(側部車体骨格部)85が配設されている。
【0040】
車体骨格部85は、下板部86と下板部86の車幅方向の両端縁部から上側に屈曲する一対の側板部87とこれら側板部87の上端縁部からそれぞれ車幅方向に相反して屈曲する一対のフランジ部88とを有するハット型断面形状をなす鋼板からなるリアフロアフレーム89と、リアフロアフレーム89の前後方向の中間所定範囲にフランジ部88間を結ぶように溶接により接合される鋼板からなるフレームスティフナ90とを有している。そして、リアフロアフレーム89のフランジ部88およびフレームスティフナ90が車体フロア38のフロアパネル76の下面に溶接により接合されると、これらリアフロアフレーム89、フレームスティフナ90およびフロアパネル76で車体骨格部85が形成される。
【0041】
ここで、車幅方向に沿う車体骨格部67および車体骨格部68は、それぞれの両端部が車体前後方向に沿う一対の車体骨格部85に連結されており、これにより枠状をなして燃料タンク63を水平四方向で囲むようになっている。また、車体骨格部67は低位フロア36に設けられ、車体骨格部68は高位フロア37に設けられることから、車体骨格部67よりも車体骨格部68の方が上側に配設されている。
【0042】
本実施形態において、車体フロア38には、車体骨格部67の中央側の複数カ所から傾斜フロア62に沿って斜めに延出する複数具体的には二つの鋼板からなるシートスティフナ(カバー部材)91が設けられている。
【0043】
各シートスティフナ91は、図10にも示すように、車幅方向の中間部にあって傾斜フロア62に沿って斜めに延出する傾斜板部92と、傾斜板部92の後端縁部から後方に延出するように屈曲する後方延出板部93と、傾斜板部92および後方延出板部93の周縁部から上側に屈曲する環状板部94と、環状板部94の傾斜板部92および後方延出板部93とは反対側の周縁部から外側に屈曲する環状のフランジ部95とを有するハット型断面形状をなしており、フランジ部95において車体フロア38のフロアパネル76の傾斜フロア62を形成する部分および高位フロア37を形成する部分の下面に溶接により接合されてこの部分とで閉断面構造を形成する。ここで、各シートスティフナ91は、それぞれの前で車幅方向に延びる車体骨格部67の後部のフランジ部72に結合されることになり、その結果、それぞれが車体骨格部67から後ろ上がりに傾斜して延出する車体骨格部96をフロアパネル76とで構成する。この車体骨格部96は、燃料タンク63の前部上方に傾斜面部65に沿って配設されている。
【0044】
ここで、各シートスティフナ91には、図11にも示すように、それぞれ、前後方向の中間所定範囲にフランジ部95を車幅方向に結ぶように配設される鋼板からなるシートプレート98が両フランジ部95に溶接により接合されている。各シートプレート98は図10に示すようにシートスティフナ91のフランジ部95とともにフロアパネル76の下面に溶接により接合される。
【0045】
また、図8および図11に示すように、シートスティフナ91の後部所定範囲には、フランジ部95を車幅方向に結びさらには車幅方向に隣り合うシートスティフナ91同士を結ぶように鋼板からなるシートパッチ100が溶接により接合されている。このシートパッチ100も、図10に示すようにシートスティフナ91のフランジ部95とともにフロアパネル76の下面に溶接により接合される。よって、上記した車体骨格部96は、シートプレート98の位置においては、シートスティフナ91とシートプレート98とフロアパネル76とで構成され、シートパッチ100の位置においてはシートスティフナ91とシートパッチ100とフロアパネル76とで構成される。
【0046】
シートパッチ100は、フロアパネル76における傾斜フロア62を構成する部分の高位フロア37側の端縁部に接合される傾斜板部101と、フロアパネル76における高位フロア37を構成する部分の傾斜フロア62側の端縁部に接合される上板部102とを有する屈曲形状をなしている。このシートパッチ100はフロアパネル76に接合されることでフロアパネル76の屈曲部において板厚を厚くして車体フロア38を補強するフロア補強部103を形成する。
【0047】
そして、図8に示すように、閉断面構造の車体骨格部67と、車体骨格部67から延出する左右一対の車体骨格部96と、これら車体骨格部96の車体骨格部67とは反対側同士を連結させるシートパッチ100を含むフロア補強部103とで、車体フロア38に沿って枠状に連結されて車体フロア38を補強する枠状フロア補強部105が構成されている。
【0048】
よって、シートスティフナ91を含む車体骨格部96は、車体フロア38に沿って枠状に連結されることで車体フロア38を補強する枠状フロア補強部105の一部を構成することになり、シートスティフナ91の前で車幅方向に延びる車体骨格部67もこの枠状フロア補強部105の一部を構成することになる。
【0049】
この枠状フロア補強部105は、燃料タンク63の傾斜面部65に対向する車体フロア38の傾斜フロア62に配設されており、平面視で燃料タンク63と重なり合わない位置にある高剛性の車体骨格部67から、平面視で燃料タンク63と重なり合うように厚みを抑えた一対の車体骨格部96を延出させ、これらの先端側の平面視で燃料タンク63と重なり合う部分を厚みをさらに抑えたフロア補強部103で連結させることで車体フロア38の剛性を確保しつつ燃料タンク63の容量低下を抑制するようになっている。
【0050】
各シートプレート98には、図11に示すように、それぞれ取り付けられるシートスティフナ91の環状板部94の内側となる位置に、取付穴107が左右に二カ所形成されており、各シートプレート98の下面には、図10および図12に示すように、各取付穴107と同軸をなしてウェルドナット108が固定されている。そして、上記した後部座席20の中央シート22のダイブダウンのための左右のリンクアーム58を支持する左右のフロア側支持部材59が、それぞれ、取付部109に形成された左右二カ所の取付穴110とシートプレート98の各取付穴107に同軸をなしてフロアパネル76に形成された左右二カ所の取付穴111と各シートプレート98の左右二カ所の取付穴107とに挿入されて左右二カ所のウェルドナット108に螺合される二本の部品取付ボルト112で車体フロア38側に固定される。このとき、シートスティフナ91が、部品取付ボルト112の車体フロア38から突出する突出部113をその軸線方向先方で覆うことになる。
【0051】
ここで、図10に示すように車体フロア38のフロアパネル76の取付穴111を貫通する部品取付ボルト112は、車体フロア38における燃料タンク63の上方位置に配設されており、その結果、フロアパネル76の下面に固定されるシートスティフナ91が、部品取付ボルト112の車体フロア38から突出する突出部113と燃料タンク63との間に介在することになる。
【0052】
図10および図12に示すように、シートスティフナ91の後ろ上がりに傾斜する傾斜板部92は、燃料タンク63の傾斜面部65と対向することになり、燃料タンク63の傾斜面部65の各傾斜板部92と対向する部分には、それぞれクッション取付面部114が形成されている。
【0053】
また、図10に示すように、各シートスティフナ91の傾斜板部92の後端から後方に延出する後方延出板部93は、燃料タンク63の上面部64と対向することになり、燃料タンク63の上面部64の各後方延出板部93と対向する部分にも、それぞれクッション取付面部115が形成されている。
【0054】
そして、燃料タンク63は、これらのクッション取付面部114,115にゴム等からなるクッション部材116が接合され、これらのクッション部材116を傾斜板部92および後方延出板部93に当接させた状態で車体側に接合される。よって、傾斜板部92の燃料タンク63側の面が燃料タンク63の当て面117となっており、後方延出板部93の燃料タンク63側の面も燃料タンク63の当て面118となっている。
【0055】
そして、図8に示すように、上記した左右のシートスティフナ91とで車体骨格部96を構成するシートパッチ100と車体骨格部68とを結ぶように後部座席20の中央シート22の左右のシートスライドレール51が配設されている。ここで、シートスライドレール51は車体骨格部96と車幅方向の位置を合わせて車体前後方向に直列に連結されている。また、前部座席10の中央シート22のシートスライドレール119も車体骨格部96と車幅方向の位置を合わせており車体骨格部67を介して車体前後方向に直列に連結されている。
【0056】
図11および図13に示すように、シートパッチ100の傾斜板部101には、車幅方向における各シートスティフナ91のそれぞれの環状板部94の内側となる位置に取付穴120が形成されており、図10および図13に示すように、シートパッチ100の傾斜板部101の下面には各取付穴120と同軸をなしてウェルドナット121がそれぞれ固定されている。そして、上記した各シートスライドレール51が、それぞれ、前端の取付部122に形成された取付穴123とシートパッチ100の取付穴120に同軸をなしてフロアパネル76に形成された取付穴124とシートパッチ100の取付穴120とに挿入されてウェルドナット121に螺合される部品取付ボルト125によって車体フロア38側に固定される。このとき、各シートスティフナ91が各部品取付ボルト125の車体フロア38から突出する突出部126をその軸線方向先方で覆うことになる。
【0057】
ここで、図10に示すようにこれらの部品取付ボルト125も、上記と同様、車体フロア38における燃料タンク63の上方位置に配設されており、その結果、フロアパネル76の下面に固定される各シートスティフナ91が、これら部品取付ボルト125の車体フロア38から突出する突出部126と燃料タンク63との間に介在することになる。
【0058】
また、図14に示すように、車体骨格部68の上部クロスメンバ80の前側のフランジ部79には取付穴129が形成されており、後部座席20の中央シート22のシートスライドレール51にはその後端の取付部131に取付穴132が形成され、この取付部131の上面には取付穴132と同軸をなしてウェルドナット130が固定されている。そして、後部座席20の中央シート22のシートスライドレール51が、フロアパネル76の下側から、フランジ部79の取付穴129に同軸をなしてフロアパネル76に形成された取付穴133とフランジ部79の取付穴129と取付部131に形成された取付穴132とに挿入されてウェルドナット130に螺合される取付ボルト134によって車体フロア38側に固定される。このとき、取付ボルト134は燃料タンク63に対し前後方向にずれている。
【0059】
なお、図8に示すように、左右のシートスライドレール51の間となる位置に燃料タンク63のメンテナンスが必要な図示略のポンプ等が配置されるメンテナンス穴137が形成されている。また、燃料タンク63の左右のシートスライドレール51の間であってメンテナンス穴137の外側部分は図5〜図7にも示すようにシートスライドレール51よりも高さが高くされた嵩上部138とされており、燃料タンク63の容量を増加させている、
【0060】
そして、図8に示すように、シートスライドレール51の左右両側外側に、それぞれが燃料タンク63の前後の車体骨格部96と車体骨格部68とを結ぶとともに車幅方向同側に配置された一方の車体骨格部85に連結される一対の連結部材140が配設されている。
【0061】
連結部材140は、図15にも示すように、両端部が板状に閉塞されて取付部141とされた鋼管からなる閉断面構造のパイプ(閉断面構造部)142と、下板部144と下板部144の幅方向の両端縁部から上側に屈曲する一対の立板部145と各立板部145の上端縁部から相反方向に屈曲する一対のフランジ部146とを有するハット型断面形状の鋼板からなる下部分割体147と、上板部149と上板部149の幅方向の両端縁部から下側に屈曲する一対の立板部150と各立板部150の下端縁部からそれぞれ相反方向に屈曲する一対のフランジ部151とを有するハット型断面形状の鋼板からなる上部分割体152とを有している。
【0062】
下部分割体147と上部分割体152とがそれぞれの対応するフランジ部146,151同士を溶接により接合させることで閉断面構造部153を形成している。そして、この閉断面構造部153が、その長さ方向の一端部においてパイプ142の中間部に、自らの一端開口部を閉塞させかつパイプ142と垂直をなすようにして溶接により接合されている。
【0063】
そして、図8に示すように、右側の連結部材140がパイプ142を前後方向に配置しかつ閉断面構造部153をパイプ142から右方向に延出させた状態で、パイプ142の前端の取付部141をシートパッチ100の右側に連結させ、パイプ142の後端の取付部141を車体骨格部68の上板部77の右側に連結させ、さらに閉断面構造部153の延出先端側を右側の車体骨格部85のフレームスティフナ90に連結させている。
【0064】
左側の連結部材140はパイプ142を前後方向に配置しかつ閉断面構造部153をパイプ142から左方向に延出させた状態で、パイプ142の前端の取付部141をシートパッチ100の左側に連結させ、パイプ142の後端の取付部141を車体骨格部68の上板部77の左側に連結させ、さらに閉断面構造部153の延出先端側を左側の車体骨格部85のフレームスティフナ90に連結させている。
【0065】
つまり、図11に示すように、シートパッチ100の傾斜板部101の各シートスティフナ91よりも車幅方向外側には、それぞれ取付穴156が形成されており、図16に示すようにシートパッチ100の傾斜板部101の下面には取付穴156と同軸をなしてウェルドナット157が固定されている。そして、パイプ142の前端の取付部141が、これに形成された取付穴158とシートパッチ100の取付穴156に同軸をなしてフロアパネル76に形成された取付穴159とシートパッチ100の取付穴156とに挿入されてウェルドナット157に螺合される取付ボルト160で車体フロア38側に固定される。このとき、取付ボルト160の車体フロア38から突出する部分は燃料タンク63から比較的大きく離間している。
【0066】
また、車体骨格部68の上板部77には取付穴163が形成されており、上板部77の下面には取付穴163と同軸をなしてウェルドナット164が固定されている。そして、パイプ142の後端の取付部141が、これに形成された取付穴158と上板部77の取付穴163とに挿入されてウェルドナット164に螺合される取付ボルト166で車体フロア38側に固定される。
【0067】
さらに、図17に示すように、フレームスティフナ90におけるリアフロアフレーム89の両側板部87間となる位置の車幅方向内側寄りには取付穴168が形成されており、フレームスティフナ90の下面には取付穴168と同軸をなしてウェルドナット170が固定されている。そして、閉断面構造部153の下板部144が、これに形成された取付穴171とフレームスティフナ90の取付穴168に同軸をなしてフロアパネル76に形成された取付穴172とフレームスティフナ90の取付穴168とに挿入されてウェルドナット170に螺合される取付ボルト173で車体フロア38側に固定される。なお、閉断面構造部153の上板部149には、下板部144の取付穴171と同軸をなして図示略の工具等が挿入される挿入穴174が形成されている。
【0068】
そして、このようにして車体フロア38に取り付けられた各連結部材140のそれぞれの車幅方向に沿う閉断面構造部153に後部座席20の側部シート21がそれぞれ固定される。つまり、図15に示すように、閉断面構造部153の上板部149には左右二カ所に取付穴177が形成されており、上板部149の下面には各取付穴177と同軸をなして図18に示すウェルドナット178が固定されている。そして、側部シート21の下部の取付部179が、これに形成された取付穴180と上板部149の取付穴177とに挿入されてウェルドナット178に螺合される取付ボルト182で連結部材140に固定される。
【0069】
また、図15に示すように、連結部材140の閉断面構造部153の上板部149にはパイプ142に近接して取付穴189が形成されており、図19に示すアンカプレート185とアンカボルト186とからなるシートベルトアンカ187がこの取付穴189に締結される。つまり、閉断面構造部153の上板部149の下面には取付穴189と同軸をなしてウェルドナット190が固定されており、アンカプレート185が、これに形成された取付穴191と上板部149の取付穴189とに挿入されてウェルドナット190に螺合されるアンカボルト186で車体フロア38側に固定される。そして、このシートベルトアンカ187のアンカプレート185にシートベルト193が支持される。
【0070】
以上に述べた本実施形態によれば、燃料タンク63の上方位置において車体フロア38を貫通する部品取付ボルト112,125の車体フロア38から突出する突出部113,126と燃料タンク63との間に介在するシートスティフナ91を車体フロア38の下面に固定しているため、燃料タンク63を部品取付ボルト112,125側まで張り出す形状としても車両衝突時等における燃料タンク63と部品取付ボルト112,125の突出部113,126との干渉をシートスティフナ91で防止できる。しかも、このシートスティフナ91に燃料タンク63の当て面117,118を設けているため、このシートスティフナ91を燃料タンク63の取り付けの基準にでき、燃料タンク63の形状等のバラツキに対する余裕を持たせることなく燃料タンク63を部品取付ボルト112,125側まで張り出す形状にすることができる。したがって、燃料タンク63のスペース的な制約を極力排除することができ、タンク容量を確保することができる。しかも、部品取付ボルト112,125を覆うシートスティフナ91と燃料タンク63の当て面117,118を設ける部材とを兼用でき、コストダウンを図ることができる。
【0071】
また、シートスティフナ91は車体フロア38のフロアパネル76とで閉断面構造をなすため、車体強度を向上させることができるとともに、シートスティフナ91の当て面117,118に当接する燃料タンク63を安定的に支持することができる。
【0072】
さらに、シートスティフナ91の前で車幅方向に延びる車体骨格部67にシートスティフナ91を結合してなるため、車幅方向に延びる車体骨格部67からシートスティフナ91が突出することになり、車体強度を向上させることができるとともに、シートスティフナ91の当て面117,118に当接する燃料タンク63をさらに安定的に支持することができる。なお、シートスティフナ91の後ろで車幅方向に延びる車体骨格部が設けられている場合には、これにシートスティフナ91を連結させても同様の効果が得られる。
【0073】
加えて、シートスティフナ91および車体骨格部67が、車体フロア38に沿って枠状に連結されることで車体フロア38を補強する枠状フロア補強部105の一部を構成するため、シートスティフナ91を枠状フロア補強部105の一部として有効利用できる。
【0074】
なお、図20に示すように、上記した連結部材140の下方に、燃料タンク63のメンテナンスが必要なポンプ等が配置されるメンテナンス穴195が形成されている場合、連結部材140が上記のように細いパイプ142を備えているため、作業のための隙間を良好に確保することができる。
また、上記したフロア補強部103に換えて閉断面の車体骨格部を配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両の車室内を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席が直線レイアウトとされた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席がV字レイアウトとされた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席がダイブダウン収納された状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席の中央シートが前端位置にある状態を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席の中央シートが後端位置にある状態を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態の車体構造が適用された車両における後部座席の中央シートのダイブダウン収納状態を示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態の車体構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態の車体構造における後部の車体骨格部を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の車体構造におけるシートスティフナ周辺の断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の車体構造におけるシートスティフナ、シートプレートおよびシートパッチの組付状態の斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態の車体構造におけるシートスティフナおよびシートプレートのフロアパネルへの取り付けを示す断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の車体構造におけるシートスティフナおよびシートパッチのフロアパネルへの取り付けを示す断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の車体構造におけるシートスライドレール後端の車体骨格部への取り付けを示す断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材を示す斜視図である。
【図16】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材のパイプの車体側への取り付けを示す断面図である。
【図17】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材の閉断面構造部の車体側への取り付けを示す断面図である。
【図18】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材の閉断面構造部への側部シートの取り付けを示す断面図である。
【図19】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材の閉断面構造部へのシートベルトアンカの取り付けを示す断面図である。
【図20】本発明の一実施形態の車体構造における連結部材の四輪駆動車への取付例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0076】
38 車体フロア
63 燃料タンク
91 シートスティフナ(カバー部材)
96 車体骨格部
105 枠状フロア補強部
112,125 部品取付ボルト
113,126 突出部
117,118 当て面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアの下側に燃料タンクを配設し、前記車体フロアにおける前記燃料タンクの上方位置に前記車体フロアを貫通する部品取付ボルトを配設した車体構造であって、
前記車体フロアの下面に、前記部品取付ボルトの前記車体フロアから突出する突出部と前記燃料タンクとの間に介在するカバー部材を固定し、該カバー部材に前記燃料タンクの当て面を設けてなることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記カバー部材は前記車体フロアとで閉断面構造をなすことを特徴とする請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記カバー部材の前または後で車幅方向に延びる車体骨格部に前記カバー部材を結合してなることを特徴とする請求項1または2記載の車体構造。
【請求項4】
前記カバー部材および前記車体骨格部は、車体フロアに沿って枠状に連結されることで車体フロアを補強する枠状フロア補強部の一部を構成することを特徴とする請求項3記載の車体構造。
【請求項1】
車体フロアの下側に燃料タンクを配設し、前記車体フロアにおける前記燃料タンクの上方位置に前記車体フロアを貫通する部品取付ボルトを配設した車体構造であって、
前記車体フロアの下面に、前記部品取付ボルトの前記車体フロアから突出する突出部と前記燃料タンクとの間に介在するカバー部材を固定し、該カバー部材に前記燃料タンクの当て面を設けてなることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記カバー部材は前記車体フロアとで閉断面構造をなすことを特徴とする請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記カバー部材の前または後で車幅方向に延びる車体骨格部に前記カバー部材を結合してなることを特徴とする請求項1または2記載の車体構造。
【請求項4】
前記カバー部材および前記車体骨格部は、車体フロアに沿って枠状に連結されることで車体フロアを補強する枠状フロア補強部の一部を構成することを特徴とする請求項3記載の車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−15798(P2006−15798A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193015(P2004−193015)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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