説明

車体構造

【課題】本発明は、車体前部の側部にフロントピラーとフロントフェンダーを備えた車体構造において、フロントピラーとボンネット側端部との間の連続部分をフロントフェンダーの上部で構成する構造を採用しつつも、フロントフェンダーの取付け剛性を確保して、フロントフェンダーの撓みやガタツキ等の異音発生を防止する車体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】フェンダーアッパー51とフェンダーロア4との間に、フェンダーアッパー51を車体に締結するボルト挿通穴43,43と、フェンダーロア4を車体に締結する締結フランジ42,42を設け、このボルト挿通穴43と締結フランジ42の車体外方側に、側面視で重複するようにクリアガーニッシュ20を設置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車体構造に関し、特に、車体前部の側部に三角窓等のサブウインドウとフロントフェンダーを備えた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミニバン等の自動車において、車体前部の側方視界を向上するためフロントピラーの下部に三角窓を設けることが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、フロントピラーの下部に三角窓を設ける車体構
造が開示されており、これにより、車体前部の側方視界を向上している。
【0004】
この特許文献1では、さらに、その周辺構造であるエプロンレインメンバ等も開示され、この三角窓周辺が複数の構成要素で構成されていることが開示されている。
【特許文献1】特開2000−103360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、デザイン上の要請等により、前下がりに大きく傾斜するフロントピラー下部と、その傾斜よりも小さく傾斜するボンネット側端部の後部の間の連続部分を、連続的に視認させるように、この連続部分の頂部(ピラー長手方向に延びる峰部)を側面視で下凸の円弧状に形成する車体構造を採用することが多くなっている。
【0006】
しかし、この連続部分をフロントピラー下部で形成した場合には、下凸の円弧形状に延びる頂部と、フロントウインドウガラス側端部を支持する直線状に延びる支持フランジ(基部)とが、フロントピラー下方に向うに従って大きく離間してしまうため、このフロントピラー下部を金属材料のプレス成形で行なうのが困難になるといった問題がある。
【0007】
そこで、この連続部分を、フロントピラー下部で形成する代わりに、車体側部のフロントフェンダーをフロントピラー下部まで上方に延長して、その延長したフロントフェンダーの延長部で構成する構造が採用されることになる。
【0008】
しかしながら、フロントフェンダーは、通常、その上縁部に設けた取付けフランジで、車体前後方向に延びるエプロンレイン等に締結固定されて、車体に固定されるが、前述のように延長部を形成した場合には、この延長部が下側からの片持ち支持で固定されることになるため、この延長部が撓んだり、走行中に振動して異音が発生する懸念があった。
【0009】
すなわち、フロントフェンダーを車体に固定するには、その外周縁に所定間隔をもって形成される取付けフランジで車体に締結固定されるが、この取付けフランジ間の間隔が広くなりすぎると、その間でフロントフェンダーに撓み等が生じ、この撓みにより、外力等でフロントフェンダーが車体に当接するなどして、異音やいわゆるガタツキが生じるのである。
【0010】
そこで、本発明は、車体前部の側部にフロントピラーとフロントフェンダーを備えた車体構造において、フロントピラーとボンネット側端部との間の連続部分をフロントフェンダーの上部で構成する構造を採用しつつも、フロントフェンダーの取付け剛性を確保して、フロントフェンダーの撓みやガタツキ等の異音発生を防止する車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の車体構造は、車体前部の側部で、前傾するフロントウインドウガラスの両端部を支持し上下方向に前傾して延在するフロントピラーと、該フロントピラーの下部でサブウインドウガラスを装着するサブウインドウ開口部と、該サブウインドウ開口部の下部から前方に延設されるエプロンレインメンバと、該エプロンレインメンバの上方に延在するボンネットと、該エプロンレインメンバの車幅方向外方で車体側部の外表面をなすフロントフェンダーとを備えた車体構造であって、前記フロントフェンダーを、前記フロントピラーの下部とボンネットの側端部の後部との間に位置して両者を補間するアッパーフェンダーと、前記サブウインドウ開口部の下方に位置してホイールアーチを有するロアフェンダーとで構成し、該アッパーフェンダーとロアフェンダーとの間に、該アッパーフェンダーとロアフェンダーを車体側部に固定する締結固定部を設けるとともに、該締結固定部の車幅方向外方側に、側面視で重複するように被覆部材を設けたものである。
【0012】
上記構成によれば、フロントピラーの下部とボンネット側端部の後部との間の連続部分を、アッパーフェンダーで構成して、そのアッパーフェンダーとロアフェンダーとの間、すなわちフロントフェンダーの上下方向中央位置で、アッパーフェンダーとロアフェンダーを車体に締結固定して、その締結固定部を被覆部材で覆うことになる。
このため、連続部分をフロントフェンダーで構成したことでフロントフェンダーが上下方向に長くなったとしても、上下方向中央位置の締結固定部で、アッパーフェンダーとロアフェンダーを車体に締結固定するため、上下方向に短いスパン(距離)でフロントフェンダーを車体に固定できる。また、この締結固定部を被覆部材で覆うことにより、締結固定部が車体外表面に露出することもない。
【0013】
なお、前述の「補間」とは、フロントピラー下部とボンネット側端部との間の空隙領域に位置して車体外表面を構成することをいう。
【0014】
発明の一実施態様においては、前記アッパーフェンダーとロアフェンダーを、上下方向に延びて連結する連結部を備え、該連結部に、前記締結固定部を設けたものである。
上記構成によれば、連結部によってアッパーフェンダーとロアフェンダーが一体的に連結され、この連結部で、アッパーフェンダーとロアフェンダーが一体的に車体に締結固定されることになる。
このため、アッパーフェンダーとロアフェンダーを一部材として、車体に対して一体的に締結固定することができる。
よって、車体に対するフロントフェンダーの締結ポイントを削減することができ、また、フロントフェンダーを上下で別々で車体に固定する構成した場合よりも、車体への組付けを容易に行なうことができる。
【0015】
発明の一実施態様においては、前記被覆部材を、前記アッパーフェンダーと前記ロアフェンダーとの間に配置したヘッドランプとしたものである。
上記構成によれば、アッパーフェンダーとロアフェンダーとの間に配置したヘッドランプで、フロントフェンダーの締結固定部が隠蔽されることになる。
このため、フロントフェンダーの締結固定部の被覆を、別途、被覆部材を設けることなく、ヘッドランプという車体の機能部品を用いて行なうことができる。
よって、部品点数を削減しつつ、フロントフェンダー周りの機能部品を使って、車体外表面を有効活用することができる。
【0016】
発明の一実施態様においては、前記被覆部材を、前記アッパーフェンダーと前記ロアフェンダーとの間に配置したサブウインドウガラスとしたものである。
上記構成によれば、アッパーフェンダーとロアフェンダーとの間に配置したサブウインドウガラスで、フロントフェンダーの締結固定部が隠蔽されることになる。
このため、フロントフェンダーの締結固定部の被覆を、別途、被覆部材を設けることなく、サブウインドウガラスという車体の機能部品を用いて行なうことができる。
よって、部品点数を削減しつつ、フロントフェンダー周りの機能部品を使って、車体外表面を有効活用することができる。
【0017】
発明の一実施態様においては、前記被覆部材を、前記アッパーフェンダーと前記ロアフェンダーとの間に配置したガーニッシュとしたものである。
上記構成によれば、アッパーフェンダーとロアフェンダーとの間に配置したガーニッシュで、フロントフェンダーの締結固定部が隠蔽されることになる。
このため、フロントフェンダーの締結固定部の被覆を、装飾機能を持ったガーニッシュで行なうことができ、締結固定部の被覆部材に装飾機能を持たせることができる。
よって、フロントフェンダー周りを装飾することができ、車体外表面を有効活用することができる。
なお、ここでのガーニッシュは、車体表面と同色のパネル体であってもよいし、クリアタイプのパネル体であってもよい。
【0018】
発明の一実施態様においては、前記ボンネットの側端部と前記アッパーフェンダー下縁と前記フロントピラー下縁とで、車体前後方向に連続した第一縁部を形成し、前記ロアフェンダーの上縁で車体前後方向に延びる第二縁部を形成し、該第二縁部と第一縁部との間に、前記締結固定部を設けた車体前後方向に延びるベルトライン凹部を形成して、該ベルトライン凹部に対して、車体前方側から車体後方側にかけてヘッドランプとガーニッシュと前記サブウインドウガラスを収容することで、車体側部の車体外表面に前後に連続するベルトライン面部を構成したものである。
上記構成によれば、アッパーフェンダー下縁等で形成した第一縁部とロアフェンダーの上縁の第二縁部との間に形成したベルトライン凹部に、締結固定部を設定し、そのベルトライン凹部に、ヘッドランプ、ガーニッシュ、サブウインドウガラスを収容装着してベルトライン面部を構成することで、締結固定部がベルトライン面部によって完全に覆われることになる。
このため、フロントフェンダーの締結固定部が、ベルトライン面部という車体前後方向に延びる透明又は半透明の外表面領域によって完全に隠蔽されることになる。
よって、ベルトライン面部を設けることによって、締結固定部を隠蔽しつつも、車体前部の側部における、車外からの視認性を高めることができる。
こうした、ベルトライン面部を車体側部に設けることにより、例えば、見通しの悪い交差点等において、自車の車体側部を側方から走行してくる他車の運転者に認識させやすくなり、衝突予防も図ることができ、安全性を高めることができる。
また、ベルトライン面部を車体のベルトライン位置で車体前後方向に延設することで、車体全体の美感も向上することができる。
【0019】
発明の一実施態様においては、前記アッパーフェンダー下縁を、側面視で下凸の円弧形状に形成したものである。
上記構成によれば、アッパーフェンダー下縁を下凸の円弧形状としたことで、対応するベルトライン面部の上縁も下凸の円弧形状に湾曲形成されることになる。
このため、ベルトライン面部を構成するサブウインドウガラスも、従来のように略三角形に形成した場合よりも、前端部を上方に反るような形で形成できるため、前端上縁部をより高い位置に設定することができる。
よって、サブウインドウの前端部の可視領域を広げることができ、車体前部の側方視界をより広げることができる。
【0020】
発明の一実施態様においては、前記アッパーフェンダーを樹脂製部材で構成し、前記ロアフェンダーを金属製部材で構成したものである。
上記構成によれば、プレス成形の困難なアッパーフェンダーを樹脂パネルで構成することで成形を容易に行ないつつも、泥はね等で表面が傷つきやすいロアフェンダーを金属パネルで構成することで、フロントフェンダーの傷みを防止できる。
よって、フロントフェンダーの成形を確実に行ないつつも、車体外表面の美感を長期間にわたって維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、連続部分をフロントフェンダーで構成したことでフロントフェンダーが上下方向に長くなったとしても、上下方向中央位置の締結固定部で、アッパーフェンダーとロアフェンダーを車体に締結固定するため、上下方向に短いスパン(距離)でフロントフェンダーを車体に固定できる。また、この締結固定部を被覆部材で覆うことにより、締結固定部が車体外表面に露出することもない。
【0022】
よって、車体前部の側部にフロントピラーとフロントフェンダーを備えた車体構造において、フロントピラーとボンネット側端部との間の連続部分をフロントフェンダーの上部で構成する構造を採用しつつも、フロントフェンダーの取付け剛性を確保して、フロントフェンダーの撓みやガタツキ等の異音発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
まず、図1〜図11により、第一実施形態について説明する。図1は本発明の車体構造を採用した自動車の前部右側の全体斜視図、図2はその車体構造の前部側部の側面図、図3はサブウインドウガラス等を分解した分解斜視図、図4はフロントフェンダーロア等を分解した分解斜視図、図5はサブウインドウ開口部周辺の車体を分解した分解斜視図、図6は図1のA−A線矢視断面図、図7は図1のB−B線矢視断面図、図8は図1のC−C線矢視断面図、図9はフロントフェンダーロアの車体内方側の斜視図、図10は図9のD−D線矢視断面図、図11は図9のE−E線矢視断面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の自動車は、車体前部に設けられるエンジンルームE部分が前後に短い、所謂ミニバンタイプの車体構造1で構成される。
この車体構造1は、エンジンルームEの上方に略水平状に設置されるボンネット2と、エンジンルームEの前方で車幅方向にわたって設置されるフロントバンパー3と、エンジンルームEの側方に車体前後方向にわたって設置されて下部にホイールアーチHを形成するフロントフェンダーロア4と、そのフェンダーロア4の後方に連なるように設置されるフロントドア5と、ボンネット2後方で上方に向って傾斜設置されるフロントウインドウガラス6と、フロントウインドウガラス6の後方で略水平状に配置されるルーフパネル7とを備える。また、フェンダーロア4の内方には、エンジンルームEの側壁上縁を構成するエプロンレインメンバ8を配置している。このエプロンレインメンバ8の上方には、前述のボンネット2が延在している。
【0025】
そして、この車体側部には、車体前後方向に延びるように、ヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30を、それぞれ車体前方側から順に配置している。
【0026】
このヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30は、共に外表面が透明又は半透明となっており、これらが車体側面の中央付近で水平線状(所謂ベルトライン)に位置することで、車体側面に光の反射率の高い透明又は半透明のベルトライン面部Fを構成している。
【0027】
図2に示すように、このベルトライン面部Fは、車体前端から車体後方側にかけて直線状に延びるとともに、ヘッドランプ10前端部の幅t1と、クリアガーニッシュ20の幅t2と、サブウインドウガラス30の幅t3とが、t1<t2<t3となるように車体前方側から車体後方側に向かうにしたがって、徐々に幅広となるように設定している。
【0028】
そして、各部材10,20,30の下端縁11,21,31を直線状に形成し、上端縁12,22,32をなだらかな湾曲線状に形成することで、ベルトライン面部Fが一体となって車外から視認されるように構成している。
【0029】
また、この実施形態では、ベルトライン面部Fの後方に、フロントドア5のドアウインドウガラス50が位置するように設定している。このため、ドアウインドウガラス50も含めて、透明又は半透明領域を構成することができ、車体側面に、より広い範囲の透明又は半透明領域を形成することができる。
【0030】
ベルトライン面部Fの上方には、車体前方から、車体構成部材であるボンネット側端部2a、フロントフェンダーの上部であるフェンダーアッパー51、それとフロントピラー52が順に配置され、各部材の形状は、側面視で、ベルトライン面部Fの上端縁と略一致するように湾曲形成されている。
なお、ここでフロントピラー52は、前述のフロントウインドウガラス6の側端部を支持して上下方向に延在している。
【0031】
特に、フェンダーアッパー51は、図2に示すように、側面視で、ボンネット側端部2aの緩やかな傾斜角α1と、フロントピラー52の急な傾斜角α2が滑らかに連続するように、下凸状に湾曲して、弓形に反った円弧形状として構成している。これにより、フェンダーアッパー51で、フロントピラー52とボンネット側端部2aとの間の車体外表面を補間する「連続部分」を構成している。
【0032】
このため、外観上、ボンネット2とフロントピラー52が連続しているように視認されることになる。
【0033】
次に、ベルトライン面部Fを構成する車体構造について説明する。
このベルトライン面部Fは、図3に示すように、車体前部の側面部に形成したベルトライン凹部60に、ヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30を収容することで構成している(図3では、クリアガーニッシュ20とサブウインドウガラス30を分解した状態を図示)。
【0034】
このベルトライン凹部60は、上部を、「第一縁部」たるボンネット側端部2a、フェンダーアッパー51の下端縁部51a、フロントピラー52の下縁部52aで、下部を、「第二縁部」たるフェンダーロア4の上端縁部4aで挟まれ、さらに、前部をフロントバンパー3のヘッドランプ切欠縁部3aで仕切られ、車体外表面から一段凹んだ領域で構成している。
【0035】
このベルトライン凹部60に対して、ヘッドランプ10を締結固定によって固定して、クリアガーニッシュ20をクリップ固定によって固定して、サブウインドウガラス30を接着固定によって固定することで、フロントフェンダー4とボンネット2との間の車体外表面を、連続させるように構成している。
【0036】
クリアガーニッシュ20については、その裏面に複数(4つ)のクリップ脚21…を設けて、その対応するフェンダーアッパー基部51bに複数(4つ)の係止穴22…を設け、クリアガーニッシュ20を車幅方向外方から押圧し、クリップ脚21を係止穴22に係合させることで、ベルトライン凹部60に装着している。
【0037】
一方、サブウインドウガラス30については、略三角形状に開口したサブウインドウ開口部30Aの周囲に接着剤を塗布して、車幅方向外方から組付け、サブウインドウ開口部30A周縁にサブウインドウガラス30を接着固定することで、ベルトライン凹部60に装着している。
【0038】
こうしてサブウインドウガラス30を接着固定とすることで、車外からの雨水等の浸入を防ぐことができ、サブウインドウ開口部30Aの防水性を高めることができる。
【0039】
これに対して、クリアガーニッシュ20については、クリップ固定としたことで、車体から取り外し自在とすることができる。このため、後述するようにフェンダーロア4を修理する際に、自由に着脱することができ、フェンダーロア4の修復性を確保することができる。
【0040】
なお、このサブウインドウ開口部30Aに接着されるサブウインドウガラス30は、図3に示すように、前端上縁33が角部となった略台形形状のガラス体で構成しており、通常の三角形状のものよりも、前端上縁33部分のガラス領域を増加させている。
これは、前述のようにフェンダーアッパー51の下端縁部51aが下凸状に湾曲形成されていることによるが、このため、サブウインドウガラス30は、従来のものより、前端部分の可視領域を広げることができる。
【0041】
また、図4に示すように、フェンダーロア4とフェンダーアッパー51は、車体から自由に取り外すことができるように構成している。
【0042】
具体的には、クリップ固定されたクリアガーニッシュ20(図3参照)を工具等で取り外し、フェンダーロア4とフェンダーアッパー51の締結固定部42,43を露出させ(図3参照)、この締結固定部42,43に位置する締結ボルト41,41(図4参照)を、取り外すことで、フェンダーロア4とフェンダーアッパー51を、車体から取り外す。
【0043】
フェンダーロア4の上部には、車幅方向外方側から締結固定できるように、上方に突出する「締結固定部」たる締結フランジ42,42を上方に突出するように二つ設け、フェンダーロア4上部を、車体に締結固定できるように構成している。
【0044】
また、フェンダーアッパー51の下部には、平板状の基部51bを設け、この基部51bに「締結固定部」たるボルト挿通穴43,43を二つ形成して、フェンダーロア4と共に、車体に共締め固定できるように構成している。
【0045】
さらに、フェンダーロア4の後部には、ウィンカーランプ(方向指示燈)44を装着する開口45を設け、その開口45に対応する車幅方向内方側に、フェンダーロア4を車体に締結固定する取付けガゼット46を設けている。
【0046】
また、フェンダーロア4の前部や下部にも、同様に、車体に対して取り外し可能となる締結部を設けているが、従来と同様の構造であるため、詳細な説明を省略する。
【0047】
一方、フェンダーアッパー51については、その上部をフロントピラー52に設けた後述する取付けブラケット53を介して、車体に締結固定している。
【0048】
ベルトライン面部Fの車体内方側の車体構造は、さらに図5に示すように、複数の構成要素を組み合わせて構成している。
【0049】
この車体構造は、前述のフェンダーロア4とフェンダーアッパー51に加え、上下方向に延びてフロントピラー52の外表面を構成するピラーアウタパネル61と、車体前後方向に延びてエンジンルームE側端上縁を構成するエプロンレインメンバ8と、サブウインドウ開口部30A周囲に位置してサブウインドウ開口部30Aの剛性を高めるピラーレイン62と、車室内方側に位置してフロントピラー52の内表面を構成するピラーインナパネル63とを備え、このうち、ピラーアウタパネル61、エプロンレインメンバ8、ピラーレイン62及びピラーインナパネル63の4つの構成要素を接合することで、構成している。
【0050】
前述のピラーアウタパネル61は、上部にフロントピラー52の外表面を構成する曲面形状の化粧面61aを設け、その下部に一段低くなった絞り部61bを設けている。また、絞り部61bの上面中央には、フェンダーアッパー51を締結固定する取付けブラケット53を接合している。この取付けブラケット53は、L字状断面のブラケット部材で形成され、前後二つのボルト締結穴を有する締結部53aを備えている。
【0051】
また、このピラーアウタパネル61は、後端位置に化粧面61aから下方に延びる縦梁部61cを設けることで、略三角形状に開口したサブウインドウ開口部30Aを形成している。そして、このサブウインドウ開口部30Aの周囲に、前述のサブウインドウガラス30を接着固定する接着座部61dを形成している。
【0052】
また、この接着座部61dからサブウインドウ開口部30A中心側の一段奥まった位置には、ピラーインナパネル63と接合を行なう接合フランジ61eを設けている。さらに、接着座部61dの前方に、折り曲げ形成した段差接合部61fを設けている。この段差接合部61fを設けることで、エプロンレインメンバ8に溶接する際に生じる「熱歪み」が、サブウインドウ開口部30A周囲の接着座部61dに生じないようにしている。
【0053】
前述のエプロンレインメンバ8は、車体前後方向に延びる上下二段の閉断面を有する前後メンバ部8aと、その後方位置でフロントピラー52側(上方側)とヒンジピラー側(下方側)にそれぞれ分岐して延びる分岐メンバ部8bとを設け、サブウインドウ開口部30A前方の骨格部材として車体剛性を確保している。また、分岐メンバ部8bの上方には、ボンネット2後端の回転ヒンジ(図示せず)を固定するヒンジブラケット64を設けている。
【0054】
前述のピラーレイン62は、ピラーアウタパネル61のサブウインドウ開口部30Aに対応するように三角形状の開口62aを形成した略三角形のパネル体で構成している。上端縁62b、前端縁62c及び下端縁62dを、車幅方向内方側に折り曲げると共に、前端縁62cと下端縁62dには、上下方向に延びる接合フランジ62eを設けている。
【0055】
前述のピラーインナパネル63は、斜め上方に延びるピラーメンバ部63aと、サブウインドウ開口部30A周囲に位置する三角枠部63bとを設け、フロントピラー52の内側面を構成している。このうち、三角枠部63bには、その中心側に車幅方向外方側に突出する棚部63cを形成し、その内端には、ピラーアウタパネル61に接合される接合フランジ63eを形成している。
【0056】
このように構成された各構成要素は、エプロンレインメンバ8の後端に対して、車幅方向の両側からピラーアウタパネル61の前端とピラーインナパネル63の前端を挟み込むようにして組み合わせ、さらに、このピラーアウタパネル61とピラーインナパネル63との間にピラーレイン62を挟持し、各構成要素の接合フランジ等を溶接ガン(図示せず)で溶接することで、車体構造を構成している。
【0057】
図6の断面図に示すように、この車体構造は、車体前方側に第一閉断面S1を有するエプロンレインメンバ8を設置し、その後方に、エプロンレインメンバ8に接合されるピラーレイン62と、エプロンレインメンバ8のインナパネル81に接合されるピラーインナパネル63とを設置することで、エプロンレインメンバ8との間で第二閉断面S2を構成している。また、このピラーインナパネル63の前部と後端の接合フランジ63eに対してピラーレイン62の前端の接合フランジ62eと後端をそれぞれ接合することで、ピラーインナパネル63とピラーレイン62との間で第三閉断面S3を構成し、さらに、ピラーレイン62の中央と後端に対してピラーアウタパネル61の前端の段差接合部61fと後端の接合フランジ61eを接合することで、ピラーレイン62とピラーアウタパネル61との間で第四閉断面S4を構成している。
【0058】
このように複数の閉断面を構成することで、本実施形態の車体構造では、ベルトライン面部Fの車体内方側の車体剛性を高めている。
【0059】
本実施形態では、この剛性の高い車体構造に対して、ヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30を、図6に示すように、各外表面が面一となるように設置している。
【0060】
ヘッドランプ10は、図示しない取付けネジ等で車体に装着固定されている。また、クリアガーニッシュ20は、その裏面のクリップ脚21がフェンダーアッパー51の基部51bに対してクリップ固定され、このフェンダーアッパー51の基部51bが締結ボルト41,41で車体に固定されることで、車体に装着固定されている。さらに、サブウインドウガラス30は、接着剤Gによってピラーアウタパネル61の接着座部61dに接着されて、車体に装着固定されている。
【0061】
特に、クリアガーニッシュ20については、フェンダーアッパー51とフェンダーロア4の締結固定部を隠蔽するように、締結固定部の車幅方向外方側に設置されており、締結固定部の被覆部材としての機能も有している。
【0062】
また、図7の断面図に示すように、本実施形態では、フロントピラー52の断面形状をサブウインドウ開口部30Aの前部52Aと後部52Bとで変更して、運転者の視界を広げる構造を採用している。すなわち、フロントピラー前部52Aのサブウインドウ開口部30A側の接合フランジ52A1を、後部52Bの接合フランジ52B1と相違させ、サブウインドウガラス30から離間した車体内方側に位置するように形成している。
【0063】
このように、接合フランジ52A1をサブウインドウガラス30から離間して形成することにより、図示するように、運転者Dからの可視範囲をより車体前方側まで広げることができる(一点鎖線P1が可視範囲を示す線で、二点鎖線P2がそのまま延ばした場合の可視範囲を示す線)。なお、mは、フロントピラー52A、52Bを覆うピラートリムである。
【0064】
さらに、図8の断面図に示すように、本実施形態では、フェンダーアッパー51の上部の取り付け構造についても、視界を広げる構造を採用している。
すなわち、前述したようにフロントピラー52の絞り部61bの上面61b1に、別途、取付けブラケット53を設け、この取付けブラケット53に対して、上方から廻り込むフェンダーアッパー51の上端フランジ部51cを、車幅方向内方側から外方側に延びる締結ボルト51dで締結固定することで、フェンダーアッパー51の上部を取り付けている。
【0065】
例えば、従来構造であると、二点鎖線で示すように、フェンダーアッパー51の上端フランジ部51c′を、ピラーアウタパネル61とピラーインナパネル63の接合フランジ位置まで延ばし、その位置で上下方向に延びる締結ボルト51d′によってフロントピラー52に取り付けることが考えられるが、こうした構造を採用した場合には、フロントウインドウガラス6を支持する位置が必然的に車幅方向内方側に設定されてしまい、その分フロントウインドウガラス6を小さくする必要が生じて、車体前方の視界を制限してしまう。
【0066】
これに対して、本実施形態のように、フロントピラー52の絞り部61bの上面61b1に、別途取付けブラケット53を設けて、フェンダーアッパー51の上端フランジ部51cを車幅方向に延びる締結ボルト51dで締結することで、フロントウインドウガラス6を車幅方向外方側に大きく延設することが可能となり、車体前方の視界を広げることができる。
【0067】
次に、フェンダーロア4の内部に設けられる取付けガゼット46について説明する。図9に示すように、フェンダーロア4の車体内方側には、前述したように取付けガゼット46を設けている。
【0068】
この取付けガゼット46は、中央に車幅方向内方側に隆起する山型隆起部46aを設け、その頂の平面部46bに締結ボルト47(図10参照)を挿通する挿通穴46cを設けている。また、周縁にフェンダーロア4の内壁面4bに接着クッション材46dを介して当接する当接フランジ部46eを設け、さらに、当接フランジ部46eの上端と後端には、それぞれフェンダーロア4に接合される接合フランジ46f,46gを設けている。なお、取付けガゼット46の下側部分46hは、開放している(図10参照)。
【0069】
この取付けガゼット46は、ウィンカーランプ44を装着する開口45を通じて、締結ボルト47を着脱できるように、側面視でウィンカーランプ44の位置と略一致する位置に、設置している(図2参照)。
【0070】
このように、取付けガゼット46を設けて、フェンダーロア4上部を車体に固定することにより、フェンダーロア4のガタツキを確実に抑えることができる。
【0071】
すなわち、前述のようにサブウインドウガラス30を接着固定した場合には、その下方に位置するフェンダーロア4上部の締結場所を確保できないため、締結フランジ間の間隔が広くなりすぎて、その間でフェンダーロア4に撓みが生じて、この撓みにより、外力等でフェンダーロア4が車体に当接するなどして、異音やいわゆるガタツキが生じるおそれがある。
【0072】
これを、本実施形態のように、取付けガゼット46を設けて、フェンダーロア4の車幅方向内方側の車体に対して、締結固定することで、フェンダーロア4上部の締結力を高めているのである。
【0073】
このフェンダーロア4の取り外し方法は、まず、図11に示すように、フェンダーロア4の開口45に装着されたウィンカーランプ44を、マイナスドライバー等の工具Tを用いて、爪44aとフック44bの係合を解除して、取り外し、さらにコネクタ48(図10参照)との結合を外したうえで、ウィンカーランプ44をフェンダーロア4の開口45から取り外す。
【0074】
そして、フェンダーロア4の開口45を通じて、露出した締結ボルト47を、開口45から挿入した工具(図示せず)を用いて回転操作する。こうして、締結ボルト47の締結を解除した後、フェンダーロア4を車体から取り外す。
【0075】
このように、ウィンカーランプ44の開口45を利用して、取付けガゼット46の締結ボルト47を解除するため、フェンダーロア4の着脱のために別途、フェンダーロア4に開口等を形成する必要がなく、フェンダーロア4の外表面の見栄えの悪化も防止することができる。
【0076】
次に、本実施形態の作用効果について、詳述する。
この実施形態の車体構造は、フロントフェンダーを、フロントピラー52の下部とボンネット側端部2aの後部との間に位置して両者を補間するフェンダーアッパー51と、サブウインドウ開口部30Aの下方に位置してホイールアーチHを有するフェンダーロア4とで形成し、そのフェンダーアッパー51とフェンダーロア4との間に、フェンダーアッパー51を車体に締結するボルト挿通穴43,43と、フェンダーロア4を車体に締結する締結フランジ42,42を設け、このボルト挿通穴43と締結フランジ42の車体外方側に、側面視で重複するようにクリアガーニッシュ20を設置している(図2参照)。
これにより、フロントピラー52の下部とボンネット側端部2aの後部との間の連続部分をフェンダーアッパー51で構成して、そのフェンダーアッパー51とフェンダーロア4との間、すなわちフロントフェンダー(4,51)の上下方向中央位置に設けたボルト挿通穴43,43と締結フランジ42,42とで、フェンダーアッパー51とフェンダーロア4を車体に締結固定して、クリアガーニッシュ20によってそのボルト挿通穴43,43と締結フランジ42,42を覆うことになる。
このため、フロントフェンダー(4,51)が上下方向に長くなったとしても、上下方向中央位置のボルト挿通穴43,43と締結フランジ42,42とで、フェンダーアッパー51とフェンダーロア4が車体に締結固定されることになり、上下方向に短いスパンでフロントフェンダー(4,51)を車体に締結固定できる。
【0077】
よって、車体前部の側部にフロントピラー52とフロントフェンダー(4,51)を備えた車体構造において、フロントピラー52とボンネット側端部2aとの間の連続部分をフェンダーアッパー51で構成する構造を採用しつつも、フロントフェンダー(4,51)の取付け剛性を確保して、フロントフェンダー(4,51)の撓みやガタツキ等の異音発生を防止することができる。
【0078】
また、この実施形態では、ボルト挿通穴43,43と締結フランジ42,42を、透明又は半透明のクリアガーニッシュ20で被覆している。
【0079】
これにより、フロントフェンダー(4,51)の締結固定部位(42,43)を、装飾機能を持ったクリアガーニッシュ20で隠蔽することができ、締結固定部位(42,43)に対応する車体部分に、装飾機能を持たせることができる。
よって、フロントフェンダー(4,51)の周りを装飾することができ、車体外表面を有効活用することができる。
なお、クリアガーニッシュに代わりに、車体表面の色彩と、同色のガーニッシュパネルを設定してもよい。
【0080】
また、この実施形態では、ボンネット側端部2aとフェンダーアッパー51とフロントピラー52とで、車体前後方向に連続した第一縁部(2a,51a,52a参照)を形成し、フェンダーロア4の上端縁部4aで車体前後方向に延びる第二縁部を形成して、その第一縁部(2a,51a,52a)と第二縁部(4a)との間に、ボルト挿通穴43,43と締結フランジ42,42を設定した車体前後方向に延びるベルトライン凹部60を形成して、そのベルトライン凹部60に対して、車体前方側から車体後方側にかけてヘッドランプ10と、クリアガーニッシュ20と、サブウインドウガラス30を収容することで、車体側部の車体外表面に前後に連続するベルトライン面部Fを構成している。
これにより、フロントフェンダー(4,51)の締結固定部位(42,43)を、ベルトライン面部Fという車体前後方向に延びる透明又は半透明の外表面領域によって、完全に隠蔽することができる。
よって、ベルトライン面部Fを設けることによって、締結固定部位(42,43)を隠蔽しつつも、車体前部の側部における、車外からの視認性を高めることができる。
こうした、ベルトライン面部Fを車体側部に設けることにより、例えば、見通しの悪い交差点等において、自車の車体側部を側方から走行してくる他車の運転者に認識させやすくなり、衝突予防も図ることができ、安全性を高めることができる。
また、ベルトライン面部Fを車体のベルトライン位置で車体前後方向に延設することで、車体全体の美感も向上することができる。
【0081】
さらに、この実施形態によると、ベルトライン面部Fを設けたことで、フェンダーロア4の上部をボンネット2高さまで引き上げる必要がないため、フェンダーロア4を成形する際、ホイールアーチH等の膨出部のプレス成形も容易にできる。
【0082】
また、この実施形態によると、ボンネット側端部2aとフェンダーロア4の上端縁部4aを近接させる必要がないため、例えば、幅広のタイヤを収容するのにフェンダーロア4を車幅方向に大きく突出させる場合でも、ボンネット2の幅を自由に設定できる。
【0083】
加えて、この実施形態によると、ボンネット2を正面視で幅狭に形成することも可能となるため、左右のフェンダーロア4の幅と同一幅のボンネット2を設定する場合よりも、車体の前面投影面積を小さくでき、車体の空力性能を向上することもできる。
【0084】
さらに、この実施形態によると、例えば、車体の共通化を図るべく、ボンネット2位置の低い車体とボンネット2位置の高い車体とを共通に製作する場合においても、このボンネット高さの違いを、ヘッドランプ10とサブウインドウガラス30を装着することで吸収させることもできる。よって、車体製作のコストがより削減できるという効果も得られる。
【0085】
また、この実施形態では、フェンダーアッパー51の下端縁部51aを、側面視で下凸の円弧状に湾曲形成している。
これにより、フェンダーアッパー51の下端縁部51aに対応するベルトライン面部Fの上端縁(11,21,31)も、下凸の円弧形状に湾曲形成されることになる。
このため、ベルトライン面部Fを構成するサブウインドウガラス30も、従来のように略三角形に形成した場合よりも、その前端を上方に反るような形で形成できるため、前端上縁33をより高い位置に設定することができる。
よって、サブウインドウ開口部30Aの前端部の可視領域を広げることができ、車体前部の側方視界をより広げることができる。
【0086】
次に、本発明の第二実施形態について、図12、図13より説明する。図12は第一実施形態の図3に対応する分解斜視図、図13は第一実施形態の図4に対応する分解斜視図である。
【0087】
この第二実施形態は、フェンダーアッパー51とフェンダーロア4(図4参照)とを一体的に構成することでフロントフェンダーを一部材で構成し、このフロントフェンダーを上下方向中央位置に設けた連結部で車体側部に締結固定するものである。すなわち、第一実施形態では、別々に構成していたフェンダーアッパー51とフェンダーロア4を、通常のフロントフェンダー同様に一部材で構成したものである。その他の構成については、第一実施形態と同様であり、同一構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
図13に示すように、本実施形態の車体構造は、フロントフェンダー100を、フロントピラー52下部に締結固定されるアッパー部151と、下部にホイールアーチHを設けたロア部104と、このアッパー部151とロア部104を上下方向に延びて連結する平板状の連結部152とで形成して、このフロントフェンダー100を、車体側部に締結固定するように構成している。
【0089】
このフロントフェンダー100は、一枚の素材からプレス成形によって、一体形成してもよいし、別々にプレス成形した後に、溶接等で一部材として構成してもよい。
【0090】
このうち、平板状の連結部152には、車幅方向外方側から締結できるように、締結ボルト141を挿通するボルト挿通穴142を形成している。
【0091】
この連結部152を、締結ボルト141を用いて、サブウインドウ開口部30Aの前方の車体側部153に締結固定することで、フロントフェンダー100のアッパー部151とロア部104が一体的に車体に締結固定されることになる。
【0092】
こうして、車体側部に締結固定された連結部152は、図12に示すように、車幅方向外方側にクリップ固定によって固定されるクリアガーニッシュ20によって覆われることにより、車体外表面から隠蔽される。
【0093】
このように、連結部152がクリアガーニッシュ20で隠蔽されることで、フロントフェンダー100の締結固定部位(142)を、上下方向中央位置に設けたとしても、車体側部の美感を悪化させることなく、フロントフェンダー100の取付け剛性を高めることができる。
【0094】
この実施形態では、アッパー部151とロア部104を上下方向に延びて連結する連結部152を設け、その連結部152に、締結ボルト141を挿通するボルト挿通穴142を設けている。
これにより、フロントフェンダー100を一部材として構成でき、この連結部152でフロントフェンダー100を車体に締結固定することができる。
よって、フロントフェンダーを上下別々で構成した第一実施形態よりも、車体に対するフロントフェンダー100の締結位置を削減することができる。また、フロントフェンダー100の車体への組付け作業も一部材で行うことができるため、容易に行なうことができる。
【0095】
その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0096】
次に、本発明の第三実施形態について、図14、図15により説明する。図14は図3に対応する分解斜視図、図15は図8に対応する断面図である。
【0097】
この第三実施形態は、フェンダーアッパー51(図2参照)を樹脂製のガーニッシュ部材251で構成したものである。すなわち、前述の第一実施形態とは異なり、「連続部分」を金属材料で構成するのではなく、複雑な形状であっても成形を容易に行なえる樹脂製のガーニッシュ部材251で構成しているのである。その他の構成については、第一実施形態と同様であり、同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0098】
図14に示すように、本実施形態の車体構造は、フロントピラー52の下部に樹脂製のガーニッシュ部材251を装着できるように、ガーニッシュ部材251の裏面にクリップ脚252を複数(2つ)設け、対向する絞り部61bの上面に係止孔253を複数(2つ)設けることで、ガーニッシュ部材251を絞り部61bの上面に係止して、フロントピラー52の下部に装着固定している。
なお、この固定方法は、特にこのクリップ固定に限定されるものではなく、例えば、ボルト等による締結固定であってもよい。
【0099】
この「連続部分」を樹脂製のガーニッシュ部材251で構成したことにより、フロントピラー52とボンネット2の間を滑らかに連続させるため下凸状の円弧状の湾曲形状に形成する場合においても、容易に成形できる。
【0100】
特に、図15に示すように、「連続部分」を下凸の円弧状の湾曲形状とすると、フロントウインドウガラス6を支持する支持フランジと上下距離が離間して、ガーニッシュ部材251の上端(頂部)251aの絞りが厳しくなり、金属材料で成形した場合、十分に成形することができないが、本実施形態のように、樹脂成形部材で構成することで、上下距離が大きく離間したとしても十分に成形することができる。
【0101】
このように、第三実施形態の車体構造では、「連続部分」のフェンダーアッパー部分を、樹脂製のガーニッシュ部材251で構成している。
【0102】
これにより、樹脂製のガーニッシュ部材251によって、金属材料では成形しにくい下凸の円弧形状の連続部分を、容易に構成することができる。
よって、成形コストを抑えつつも、外観上の見栄えを向上して、サブウインドウ開口部30Aの前端部の可視領域を広げることができる。
【0103】
また、この実施形態では、フェンダーロア4について、樹脂ではなく金属材料である鉄板で構成している。
【0104】
これにより、泥はね等で傷つきやすいフェンダーロア4の傷みを防止して、車体外表面の美感を長期間にわたって維持することができる。
【0105】
したがって、本実施形態は、フロントフェンダー(4,251)の生産時における成形上の要請と、生産後の美感維持の要請を、フェンダーアッパー251とフェンダーロア4とで材料を変更することで、両立している。
その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0106】
次に、本発明の第四実施形態について、図16、図17により説明する。図16は図1に対応する全体斜視図、図17は図2に対応する側面図である。
【0107】
この第四実施形態は、ヘッドランプ210に、サブウインドウガラス30の前端位置まで車体後方側に延びる延長部211を設け、フロントフェンダー(4,51)の締結固定部位である締結フランジ42とボルト挿通穴43を、その延長部211で被覆するように構成したものである。すなわち、クリアガーニッシュを設定することなく、車体前方を照射するヘッドランプ210で締結固定部位を覆うように構成したものである。その他の構成については、第一実施形態と同様であり、同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0108】
図16に示すように、本実施形態の車体構造は、ヘッドランプ210に延長部211を設けたため、ベルトライン面部Fがヘッドランプ210とサブウインドウガラス30とで構成されて、車外からより一体的に視認されることになる。
【0109】
また、図17に示すように、ヘッドランプ210の延長部211で、締結フランジ42とボルト挿通穴43が隠蔽されるため、フロントフェンダー(4,51)の締結固定部位が露出することなく、車体の美感を悪化させることもない。
【0110】
この実施形態では、フロントフェンダー(4,51)を締結固定する締結フランジ42とボルト挿通穴43を、ヘッドランプ210で被覆している。
これにより、フロントフェンダー(4,51)の締結固定部位のために、別途、クリアガーニッシュ等の被覆部材を設けることなく、ヘッドランプ210という既存の車体の機能部品を用いて隠蔽することができる。
よって、部品点数を削減しつつ、フロントフェンダー(4,51)周りの機能部品を使って、車体外表面を有効活用することができる。
その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0111】
次に、本発明の第五実施形態について、図18、図19、図20により説明する。図18は図1に対応する全体斜視図、図19は図2に対応する側面図、図20は図3に対応する分解斜視図である。
【0112】
この第五実施形態は、サブウインドウガラス330に、車体前方側に延長する延長部331を設けて、フロントフェンダー(4,51)の締結固定部位である締結フランジ42とボルト挿通穴43を、その延長部331で隠蔽するように構成したものである。すなわち、クリアガーニッシュを設定することなく、サブウインドウガラス330によって、締結固定部位を覆うように構成したものである。その他の構成については、第一実施形態と同様であり、同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0113】
図18に示すように、本実施形態の車体構造は、車体側部に、ヘッドランプ10とサブウインドウガラス330を車体前後方向に延びるように配置しており、このうち、サブウインドウガラス330に、車体前方側に延びる延長部331を設けている。
【0114】
このように、サブウインドウガラス330に延長部331を設けたことで、ヘッドランプ10とその後方のサブウインドウガラス330は、車外から一体的に視認されることになる。
【0115】
また、図19に示すように、サブウインドウガラス330の延長部331で、締結フランジ42とボルト挿通穴43を被覆することで、既存のサブウインドウガラス330を利用して、フロントフェンダー(4,51)の締結固定部位を隠蔽することができる。
【0116】
サブウインドウガラス330は、図20に示すように、第一実施形態の固定方法とは異なり、フェンダーロア4の取り外しを可能にするため、ボルトナット等に締結固定で車体に装着固定している。
【0117】
サブウインドウガラス330の裏面にスタッドボルト332…を複数(6つ)を設け、対向する車体側にナット333を複数(6つ)設けて、サブウインドウガラス330を、ベルトライン凹部60に締結固定することで、車体側部に装着固定するようにしている。
【0118】
なお、このサブウインドウガラス330の固定方法は、サブウインドウガラス330を、取り外すことができれば、その他の方法であってもよい。
【0119】
この実施形態では、フロントフェンダー(4,51)を締結固定する締結フランジ42とボルト挿通穴43を、サブウインドウガラス330で被覆している。
これにより、フロントフェンダー(4,51)の締結固定部位を、別途、クリアガーニッシュ等の被覆部材を設けることなく、サブウインドウガラス330という既存の車体の機能部品で、隠蔽することができる。
よって、フロントフェンダー(4,51)周りの機能部品を使って、車体外表面を有効活用することができる。
【0120】
特に、サブウインドウガラス330に延長部331を設けて、フロントフェンダー(4,51)の締結固定部位を被覆したため、サブウインドウガラス330自体を大きく設定でき、サブウインドウ開口部30Aの可視領域も広げることができる。
その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0121】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明のアッパーフェンダーは、実施形態のフェンダーアッパー51、アッパー部151、ガーニッシュ部材251に対応し、
以下、同様に、
ロアフェンダーは、フェンダーロア4、ロア部104に対応し、
締結固定部は、締結フランジ42、ボルト挿通穴43、ボルト挿通穴142に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車体構造に適用する実施形態を含むものである。この実施形態では、ミニバンタイプの車体構造で説明をしたが、その他の、セダンタイプ、ワゴンタイプ等々の車体構造で採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の車体構造を採用した自動車の前部右側の全体斜視図。
【図2】車体構造の前部側部の側面図。
【図3】サブウインドウガラス等を分解した分解斜視図。
【図4】フェンダーロア等を分解した分解斜視図。
【図5】サブウインドウ開口部周辺の車体を分解した分解斜視図。
【図6】図1のA−A線矢視断面図。
【図7】図1のB−B線矢視断面図。
【図8】図1のC−C線矢視断面図。
【図9】フェンダーロアの車体内方側の斜視図。
【図10】図9のD−D線矢視断面図。
【図11】図9のE−E線矢視断面図。
【図12】第二実施形態のサブウインドウガラス等を分解した分解斜視図。
【図13】第二実施形態のフロントフェンダーを分解した分解斜視図。
【図14】第三実施形態のサブウインドウガラス等を分解した分解斜視図。
【図15】第三実施形態の図8に相当する断面図。
【図16】第四実施形態の自動車の前部右側の全体斜視図。
【図17】第四実施形態の車体構造の前部側部の側面図。
【図18】第五実施形態の自動車の前部右側の全体斜視図。
【図19】第五実施形態の車体構造の前部側部の側面図。
【図20】第五実施形態のサブウインドウガラスを分解した分解斜視図。
【符号の説明】
【0123】
E…エンジンルーム
F…ベルトライン面部
1…車体構造
2…ボンネット
4…フェンダーロア
30A…サブウインドウ開口部
42…締結フランジ
43…ボルト挿通穴
51…フェンダーアッパー
52…フロントピラー
60…ベルトライン凹部
100…フロントフェンダー
104…ロア部
142…ボルト挿通穴
151…アッパー部
251…ガーニッシュ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の側部で、前傾するフロントウインドウガラスの両端部を支持し上下方向に前傾して延在するフロントピラーと、該フロントピラーの下部でサブウインドウガラスを装着するサブウインドウ開口部と、該サブウインドウ開口部の下部から前方に延設されるエプロンレインメンバと、該エプロンレインメンバの上方に延在するボンネットと、該エプロンレインメンバの車幅方向外方で車体側部の外表面をなすフロントフェンダーとを備えた車体構造であって、
前記フロントフェンダーを、前記フロントピラーの下部とボンネットの側端部の後部との間に位置して両者を補間するアッパーフェンダーと、前記サブウインドウ開口部の下方に位置してホイールアーチを有するロアフェンダーとで構成し、
該アッパーフェンダーとロアフェンダーとの間に、該アッパーフェンダーとロアフェンダーを車体側部に固定する締結固定部を設けるとともに、
該締結固定部の車幅方向外方側に、側面視で重複するように被覆部材を設けた
車体構造。
【請求項2】
前記アッパーフェンダーとロアフェンダーを、上下方向に延びて連結する連結部を備え、
該連結部に、前記締結固定部を設けた
請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記被覆部材を、前記アッパーフェンダーと前記ロアフェンダーとの間に配置したヘッドランプとした
請求項1又は2記載の車体構造。
【請求項4】
前記被覆部材を、前記アッパーフェンダーと前記ロアフェンダーとの間に配置したサブウインドウガラスとした
請求項1又は2記載の車体構造。
【請求項5】
前記被覆部材を、前記アッパーフェンダーと前記ロアフェンダーとの間に配置したガーニッシュとした
請求項1又は2記載の車体構造。
【請求項6】
前記ボンネットの側端部と前記アッパーフェンダー下縁と前記フロントピラー下縁とで、車体前後方向に連続した第一縁部を形成し、
前記ロアフェンダーの上縁で車体前後方向に延びる第二縁部を形成し、
該第二縁部と第一縁部との間に、前記締結固定部を設けた車体前後方向に延びるベルトライン凹部を形成して、
該ベルトライン凹部に対して、車体前方側から車体後方側にかけてヘッドランプとガーニッシュと前記サブウインドウガラスを収容することで、車体側部の車体外表面に前後に連続するベルトライン面部を構成した
請求項1又は2記載の車体構造。
【請求項7】
前記アッパーフェンダー下縁を、側面視で下凸の円弧形状に形成した
請求項6記載の車体構造。
【請求項8】
前記アッパーフェンダーを樹脂製部材で構成し、前記ロアフェンダーを金属製部材で構成した
請求項1〜7いずれか記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−308013(P2007−308013A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138964(P2006−138964)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】