説明

車体構造

【課題】燃料タンクの配設スペースが制限される等の問題を生じることなく、車体をコンパクトかつ軽量に構成できる車体構造を提供する。
【解決手段】側面視で運転席シート6の後方部と重複するとともに、平面視で運転席シート6を左右から挟むように設置された一対の後席シート7,8とを備えた自動車の車体構造において、上記運転席シート6の設置部下方に車室フロア5を上方にキックアップさせた第1キックアップ部13を設けるとともに、上記後席シート7,8の設置部下方に車室フロアを上方にキックアップさせた第2キックアップ部14を設け、上記第1キックアップ部13の下面に沿って車体の前後方向に延びるように設置された燃料タンク15の前部タンク30を配設するとともに、この前部タンク30の後端部から上記第2キックアップ部14に沿って車幅方向に延びるように燃料タンク15の後部タンク31を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の側面部に形成された乗降用開口部と、この乗降用開口部を開閉するサイドドアと、車室フロア上の車幅方向中心部に配設された運転席シートと、その後部左右に配設された後席シートとを備えた自動車の車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量の節減等の要求から、コンパクトで軽量な自動車が求められている。このような自動車では、コンパクトな構成でありながら車室内において乗員のためのスペースをできるだけ広く確保するための工夫が必要となる。例えば、下記特許文献1では、車室内の車幅方向中心部、つまり車体の左右両側端部から離れた位置に運転席シートを配設するとともに、その後方側に複数の後席シートを配設することにより、車体をコンパクト化しつつ運転席シートの左右に広いスペースを確保することが行われている。
【特許文献1】特開平7−156807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、車室内の車幅方向中心部に配設された単一の運転席シートと、その後方側に配設された複数の後席シートとを有する車両において、車体を効果的にコンパクト化するためには、運転席シートと後席シートとを互いに近接させて配設することが望ましい。しかし、上記のように運転席シートと後席シートとを互いに近接させて配設した場合には、車体の前後寸法をコンパクトができるという利点を有する反面、燃料タンクの配設スペースが制限されるとともに、乗員の足元スペースを確保することが困難である等の問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、燃料タンクの配設スペースが制限される等の問題を生じることなく、車体をコンパクトかつ軽量に構成することができる車体構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、車室の側面部に形成された乗降用開口部と、この乗降用開口部を開閉するサイドドアと、車室フロア上の車幅方向中心部に配設された運転席シートと、側面視で運転席シートの後方部と重複するとともに、平面視で運転席シートを左右から挟むように設置された一対の後席シートとを備えた自動車の車体構造において、上記運転席シートの設置部下方に車室フロアを上方にキックアップさせた第1キックアップ部を設けるとともに、上記後席シートの設置部下方に車室フロアを上方にキックアップさせた第2キックアップ部を設け、上記第1キックアップ部の下面に沿って車体の前後方向に延びるように設置された燃料タンクの前部タンクを配設するとともに、この前部タンクの後端部から上記第2キックアップ部に沿って車幅方向に延びるように燃料タンクの後部タンクを配設したものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車体構造において、第2キックアップ部に設けられた左右後席シートのシート載置部間に上方へ隆起する隆起部を設けるとともに、この隆起部に沿って上方に膨出する膨出部を後部タンクに設けたものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車体構造において、第2キックアップ部の中央部前方側に、運転席シートを車体の前後方向にスライド変位させるシートスライドレールの設置部を設けるとともに、このシートスライドレールの設置部に対応した凹入部を後部タンクの中央部に設けたものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体構造において、第2キックアップ部の後部に沿って車幅方向に延びるクロスメンバを配設するとともに、このクロスメンバの配設部に対応して車幅方向に延びる凹溝部を燃料タンクの上面部に設けたものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、上記1〜4のいずれか1項に記載の車体構造において、左右の後列席シートは、それぞれの前面が車外側を指向するように傾斜して設置されるとともに、第2キックアップ部および後部タンクには、それぞれの左右前面が上記後席シートの傾斜角度に対応して車外側を指向する傾斜面が形成されたものである。
【0010】
請求項6に係る発明は、上記請求項2〜5のいずれか1項に記載の車体構造において、後部タンクの膨出部内に燃料ポンプを配設したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、上記後席シートを側面視で運転席シートの後方部と重複するとともに、平面視で運転席シートを左右から挟むように設置することにより、車体の前後寸法をコンパクト化した車両において、燃料タンクの配設スペースが制限される等の問題を生じることなく、運転席シートおよび後席シートに着座した乗員の足元スペースを確保するとともに、これらのシートに対する乗降性を確保しつつ、大容量の燃料タンクを効率よく配設できるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、第2キックアップ部に設けられた左右後席シートのシート載置部間に上方へ隆起する隆起部を設けるとともに、この隆起部に沿って上方に膨出する膨出部を燃料タンクの後部タンクに設けたため、上記両後席シート間に形成されたデッドスペースを有効に利用して燃料タンクの容量を効果的に増大できるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、第2キックアップ部の中央部前方側に、運転席シートを車体の前後方向にスライド変位させるシートスライドレールの設置部を設けるとともに、このシートスライドレールの設置部に対応した凹入部を後部タンクの中央部に設けたため、燃料タンクの容量を確保しつつ、上記運転席シートの前後移動距離を充分に確保できるという利点がある。
【0014】
請求項4に係るに発明によれば、燃料タンクがクロスメンバに干渉するという事態を生じることなく、上記運転席シートおよび後席シートの設置部等を上記クロスメンバにより効果的に補強できるという利点がある。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、後席シートのシート幅および上記後部タンクの幅寸法を充分に広く確保することができるとともに、後席シートに着座した乗員がその足を斜め前方に向けて伸ばした状態で着座する際に、その足元スペースを充分に確保できるという利点がある。
【0016】
請求項6に係る発明では、後部タンクの後部中央に形成された膨出部内に燃料ポンプを配設するように構成したため、燃料タンクに形成されたスペースを有効に利用して上下寸法が大きい燃料ポンプを効率よく配設できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図3は、本発明の一実施形態に係る車体構造を示している。この自動車には、車室の側面部に乗降用開口部1,2が形成されるとともに、この乗降用開口部1,2をそれぞれ開閉するサイドドア3,4が設置されている。そして、車室フロア5上の車幅方向中心部に運転席シート6が配設されるとともに、この運転席シート6の左右後方に一対の後席シート7,8が配設されている。また、上記運転席シート6の前方側には、ステアリングホイール9が設置され、かつ運転席シート6の前部右側には、パーキングブレーキ用のブレーキレバー10が配設されている。
【0018】
上記車室フロア5は、車室の左右両側辺部に設けられたサイドシル11,11間において車幅方向に延びるように設置されたフロントフロア部12と、上記運転席シート6の設置部に位置する車幅方向の中央部分が上方にキックアップした第1キックアップ部13と、左右後席シート7,8の設置部間に位置する車幅方向中央部分が上記第1キックアップ部13よりもさらに上方にキックアップした第2キックアップ部14とを有している。上記第1キックアップ部13および第2キックアップ部14の下方には、燃料タンク15が設置され、かつ上記第1キックアップ部13の下部後方には車幅方向に延びるクロスメンバ16が設置されている。
【0019】
上記第1キックアップ部13の上方には、運転席シート6を、車体の前後方向にスライド自在に支持する左右一対のシートスライドレール17からなるスライド支持手段が設置されている。このシートスライドレール17は、取付ブラケット18を介して上記第1キックアップ部13の上面に固定されたロアレール19と、このロアレール19に沿って摺動可能に支持されたアッパレール20とを有し、このアッパレール20の上面に運転席シート6のシートクッション21が支持されている。
【0020】
上記シートクッション21がアッパレール20とともにシートスライドレール17のロアレール19に沿って摺動することにより、上記運転席シート6が車体の前後方向にスライド変位してその前後位置が調節されるようになっている。なお、上記スライドレール17は、乗員によって操作される操作レバーにより適宜の調節位置で運転シート6をロックするロック機構(図示せず)を有している。また、上記運転席シート6のシートバック22は、その下端部に設けられたリクライニング機構23により、図2の実線で示す起立状態から仮想線で示す前傾状態に変位可能に支持されている。
【0021】
上記第2キックアップ部14には、図4に示すように、後席シート7,8のシートクッション24が載置されるシート載置部25が左右に形成されている。このシート載置部25上に載置された左右の後席シート7,8は、それぞれ図2に示すように、側面視で運転席シート6の後方部と重複し、かつ図1に示すように、平面視で運転席シート6を左右から挟むように設置されるとともに、後席シート7,8の前面が車幅方向の斜め外側を向くように傾斜したラインA,Aに沿って設置されるようになっている。
【0022】
また、上記実施形態では、運転席シート6をシートスライドフレーム17上の最も後退した位置にスライド変位させた場合に、運転席のシートクッション21の後部が後席シート7,8のシートクッション24の前端部間に位置するように設定されており、これによって車体のコンパクト化をより一層、図った構成としている。なお、図4において、符号26は、車体フロアの後部下面に沿って設置されたリヤサイドフレームである。
【0023】
また、図4および図5に示すように、上記第2キックアップ部14の左右に形成された上記シート載置部25,25の間には、上方へ隆起する隆起部27が第2キックアップ部14の中央部後方側に形成されるとともに、その前方側、つまり第2キックアップ部14の中央部前方側には、上記第1キックアップ部13と連続するシートスライドレール17の設置部28が形成されている。さらに、上記第2キックアップ部14の前面左右には、図6に示すように、上記後席シート7,8の傾斜角度に対応して車外側を指向するように傾斜した左右一対の傾斜面29が設置されている。
【0024】
上記燃料タンク15は、その上下寸法および幅寸法が第1キックアップ部13の上下寸法および幅寸法に対応した値に設定されて第1キックアップ部13の下方に配設される前部タンク30と、その後端部に連設された後部タンク31とからなっている。この後部タンク31は、上記第2キックアップ部14のシート載置部25に沿って車幅方向に延びる左右一対の延出部32と、左右の延出部32の間で上記第2キックアップ部13の隆起部27に沿って上方に膨出する膨出部33とを有し、この膨出部33の前方側には、上記シートスライドレール17の設置部28に対応した凹入部36が形成されている。
【0025】
上記膨出部33の前方部上面および上記前部タンク30の後方部上面には、図5および図7に示すように、上記クロスメンバ16の配設部に対応して車幅方向に延びる凹溝部34が形成されている。また、上記燃料タンク15には、燃料供給用のフィラーパイプ56および換気用のブリーザパイプ(図示せず)が左右の延出部32の一方(当実施形態では車幅方向の左側)に接続されるとともに、エンジンの燃料を供給する燃料ポンプ35が上記膨出部33内に配設されている(図4および図5参照)。さらに、上記左右の延出部32の他方(車幅方向の右側)には、排気管37との干渉を防止するための切欠き38が形成されている。さらに、上記後部タンク31の前面左右には、第2キックアップ部14に設けられた左右一対の傾斜面29に対応した傾斜面43が形成されている。
【0026】
上記クロスメンバ16は、図8に示すように、第2キックアップ部14のシート載置部25と所定距離を置いてその下方側に配設された左右両側方部44と、上記隆起部27の前方側において上記シートスライドレール17の設置部28の下面に沿って設置された中央部分45とを有している。上記クロスメンバ16の左右両側方部44には、その前面に第2キックアップ部14の後面に溶接される接合フランジ部46が設けられ(図2参照)、クロスメンバ16の車外側端部には、サイドシル11の内側面に接合される接合フランジ部47が設けられている。
【0027】
また、上記クロスメンバ16の中央部分45は、上端部が上記シートスライドレール17の設置部28の下面に接合されたフロントメンバ48と、その下端部に前端部が接合されたリヤメンバ49とを有している(図5参照)。このリヤメンバ49の上端部には、上記シートスライドレール17の設置部28の下面に接合される接合フランジ部50が形成され、この接合フランジ部50の設置部に、シートスライドレール17の後方部を固定する上記取付ブラケット18が図外の取付ボルト等により取り付けられるように構成されている。
【0028】
上記両後席シート7,8には、図9に示すように、そのシートクッション24を揺動変位させてその前端部を立ち上げ可能に支持する回動支持部52がシートクッション24の後端部に設けられている。この回動支持部52は、上記シート載置部25に設けられた支持ブラケット(図示せず)により回転可能に支持された支持軸からなり、この支持軸には、常時、シートクッション24の前端部を上方に跳ね上げる方向に付勢する捩りコイルばね等からなる付勢手段53が設置されている。また、上記シート載置部25の前面には、シートクッション24の前端部を係止することにより、上記付勢手段53の付勢力に抗してシートクッション24が跳ね上げられるのを規制するためのロックレバー54が設けられている。
【0029】
上記ロックレバー54は、その先端フック部が、シートクッション24の前部に設けられた係止ピン55に係合されることにより、通常時にシートクッション24の跳ね上がりを規制して水平な使用状態に保持するように構成されている。そして、上記シート載置部25を物品の載置部として利用する際等に、上記ロックレバー54の操作部を持って先端フック部を係止ピン55から離脱させるようにロックレバー54を揺動変位させることにより、上記付勢手段53の付勢力に応じ、図9の仮想線で示すように、上記回動支持部52を支点にシートクッション24が揺動変位して、その前端部が自動的に上方に跳ね上げられるようになっている。なお、手動操作により上記ロックレバー54を操作してシートクッション24を水平な使用状態に保持するとともに、必要に応じて上記ロックレバー53によるシートクッション24の保持状態を解除するように構成された上記実施形態に代え、スイッチ操作により自動的に駆動されるプッシュプルソレノイド等からなる係止手段を設けた構造としてもよい。
【0030】
上記のように車室の側面部に形成された乗降用開口部1,2と、この乗降用開口部1,2を開閉するサイドドア3,4と、車室フロア5上の車幅方向中心部に配設された運転席シート6と、側面視で運転席シート6の後方部と重複するとともに、平面視で運転席シート6を左右から挟むように設置された後席シート7,8とを備えた自動車の車体構造において、上記運転席シート6の設置部下方に車室フロア5を上方にキックアップさせた第1キックアップ部13を設けるとともに、上記後席シート7,8の設置部下方に車室フロア5を上方にキックアップさせた第2キックアップ部14を設け、上記第1キックアップ部13の下面に沿って車体の前後方向に延びるように燃料タンク15の前部タンク30を配設するとともに、この前部タンク30の後端部から上記第2キックアップ部14に沿って車幅方向に延びるように燃料タンク15の後部タンク31を配設したため、燃料タンク15の配設スペースが制限される等の問題を生じることなく、車体をコンパクトかつ軽量に構成できるという利点がある。
【0031】
すなわち、運転席シート6を車室フロア5上の車幅方向中心部に配設するとともに、この運転席シート6の後部がその後方に配設された左右一対の後席シート7,8と側面視で重複するように、上記運転席シート6と後席シート7,8とを互いに近接して配設した場合には、搭乗可能な乗員の人数を確保しつつ、室内スペースの前後長が大きくなるのを防止できるとともに、上記運転席シート6および後席シート7,8の両方を効率よく配設することにより、車体を効果的にコンパクトかつ軽量に形成できるという利点がある。
【0032】
そして、上記のように運転席シート6および後席シート7,8の設置部を上方にキックアップさせることにより車室フロア5の下方に形成された空間部を利用して、燃料タンク15の前部タンク30および後部タンク31を配設するように構成したため、運転席シート6および後席シート7,8に着座した乗員の足元スペースを確保するとともに、これらのシート6〜8に対する乗降性を確保しつつ、大容量の燃料タンク15を効率よく配設することが可能である。したがって、上記後席シート7,8を側面視で運転席シート6の後方部と重複するとともに、平面視で運転席シート6を左右から挟むように設置することにより、車体の前後寸法をコンパクト化した車両において、燃料タンク15の配設スペースが制限される等の問題を生じることなく、車体のデザイン性を効果的に向上させることができる。
【0033】
また、上記実施形態に示すように、第2キックアップ部14に設けられた左右後席シート7,8のシート載置部25間に上方へ隆起する隆起部27を設けるとともに、この隆起部27に沿って上方に膨出する膨出部33を燃料タンク15の後部タンク31に設けた場合には、上記両後席シート7,8間に形成されたデッドスペースを有効に利用して燃料タンク15の容量を効果的に増大できるという利点がある。
【0034】
さらに、上記実施形態では、第2キックアップ部14の中央部前方側に、運転席シート6を車体の前後方向にスライド変位させるシートスライドレール17の設置部28を設けるとともに、このシートスライドレール17の設置部28に対応した凹入部36を後部タンク31の中央部に設けたため、燃料タンク15の容量を確保しつつ、上記運転席シート6の前後移動距離を充分に確保できるという利点がある。
【0035】
また、上記実施形態では、第1キックアップ部13の後部に沿って車幅方向に延びるクロスメンバ16を配設するとともに、このクロスメンバ16の配設部に対応して車幅方向に延びる凹溝部38を燃料タンク15の上面部に設けたため、この燃料タンク15がクロスメンバ16に干渉するという事態を生じることなく、上記運転席シート6および後席シート7,8の設置部等を上記クロスメンバ16により効果的に補強できるという利点がある。特に、上記実施形態に示すように、シートスライドレール17の設置部27の下面に接合される接合フランジ部50を上記クロスメンバ16に形成するとともに、この接合フランジ部50の設置部にシートスライドレール17の後方部を固定するように構成した場合には、このシートスライドレール17の支持強度を効果的に増大させることができるため、上記シートスライドレール17に沿って前後移動する上記運転席シート6の支持剛性を効果的に確保できるという利点がある。
【0036】
また、上記実施形態では、左右の後席シート7,8を、それぞれの前面が車外側を指向するように傾斜したラインA,Aに沿って設置するとともに、第2キックアップ部14および後部タンク31を、それぞれの左右前面が上記後席シート7,8の傾斜角度に対応して車外側を指向するように傾斜して設置したため、この後席シート7,8のシート幅および上記後部タンク31の幅寸法を充分に広く確保することができるとともに、図1の仮想線で示すように、後席シート7,8に着座した乗員がその足を斜め前方に向けて伸ばした状態で着座する際に、その足元スペースを充分に確保できる等の利点がある。
【0037】
さらに、上記実施形態では、後部タンク31の後部中央に形成された膨出部33内に燃料ポンプ35を配設するように構成したため、この燃料ポンプ35の上下寸法が大きい場合においても、燃料タンク15に形成されたスペースを有効に利用して上記燃料ポンプ35を効率よく配設できるという利点がある。
【0038】
また、上記実施形態に示すように、後席シート7,8のシートクッション24を、その後端部に設けられた支持軸からなる回動支持部52を支点に、シートクッション24を揺動変位させることにより、図9の仮想線で示すように、その前端部を立ち上げ可能に構成した場合には、後席シート7,8の不使用時に、その下方部物品の収納部として利用することができるため、上記運転席シート6と後席シート7,8とを互いに近接させて配設したにも拘わらず、運転席シート6の後方スペース等が後席シート7,8のシートクッション24により狭められるのを防止して車室内スペースの有効利用を図ることができる。しかも、上記開口部1から離れた車幅方向中心部に位置する運転席シート6に対して運転者が乗降する際には、後席シート7のシートクッション24を揺動変位させてその前端部を立ち上げることにより、運転者の乗降性を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0039】
また、上記実施形態では、後席シート7,8のシートクッション24を立ち上げる方向に付勢する付勢手段53を設けたため、この付勢手段53の付勢力を利用して後席シートの7,8の不使用時に上記シートクッション24を容易に立ち上げ状態に移行させることができるとともに、後席シート7,8の使用時には、上記付勢手段53の付勢力に抗してシートクッション24を押し下げることにより、水平な使用状態に容易に移行させることができる。特に、上記実施形態に示すように、ロックレバー54等からなる係止手段により上記付勢手段53の付勢力に抗して後席シート7,8のシートクッション24を略水平な使用状態に係止するように構成した場合には、後席シート7,8に対する乗員の乗降性を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0040】
上記実施形態では、後席シート7,8のシートクッション24を常時、立ち上げ方向に付勢する上記捩りコイルばねからなる付勢手段53を設けた例について説明したが、図10に示すように、後席シート7,8の使用時に、そのシートクッション24その側面前部等を下方に付勢する引張ばね56を設けた構造としてもよい。そして、後席シート7,8の非使用時に、後端部を支点としてシートクッション24を揺動変位させてその前端部を立ち上げる過程で、上記引張ばね56がシートクッション24の揺動支点となる回動支持部52の上方側に移動することにより、上記引張ばね56の付勢力がシートクッション24の立ち上げ方向に作用するように、上記引張ばね56を配設した構造としてもよい。この構成によれば、後席シート7,8のシートクッション24を通常の使用位置に係止する上記ロックレバー54等からなる別体の係止手段を設けることなく、後席シート7,8の使用時には、そのシートクッション24を水平状態に係止することができるとともに、後席シート7,8の非使用時には、そのシートクッション24をある程度持ち上げることにより、上記引張ばね56の付勢力に応じてシートクッション24を自動的に立ち上げ位置に変位させて、その状態を保持できるという利点がある。
【0041】
上記運転席シート6および後席シート7,8の設置スペースを、よりコンパクトに構成するため、図11に示すように、後列シート7,8のシートクッション24に切欠き58を設けた構造としてもよい。すなわち、上記シートクッション24の前部内側方側、つまり車幅方向の中央部側に運転席シート6との干渉を回避するための切欠き58を設け、運転席シート6と後席シート7,8とを近接させて配設することにより、車体をさらに効果的にコンパクト化し得るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る車体構造の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】車室フロア部の構成を示す平面図である。
【図7】燃料タンクの構成を示す斜視図である。
【図8】クロスメンバの構成を示す正面断面図である。
【図9】後席シートの構成を示す側面断面図である。
【図10】後席シートの他の実施形態を示す側面図である。
【図11】本発明に係る自動車のシート装置の別の実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,2 乗降用開口部
3,4 サイドドア
5 車室フロア
6 運転席シート
7,8 後席シート
13 第1キックアップ部
14 第2キックアップ部
15 燃料タンク
17 シートスライドレール
19 クロスメンバ
27 隆起部
28 凹入部
29 第2キックアップ部の傾斜面
30 前部タンク
31 後部タンク
32 延出部
33 膨出部
34 凹溝部
43 後部タンクの傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の側面部に形成された乗降用開口部と、この乗降用開口部を開閉するサイドドアと、車室フロア上の車幅方向中心部に配設された運転席シートと、側面視で運転席シートの後方部と重複するとともに、平面視で運転席シートを左右から挟むように設置された一対の後席シートとを備えた自動車の車体構造において、上記運転席シートの設置部下方に車室フロアを上方にキックアップさせた第1キックアップ部を設けるとともに、上記後席シートの設置部下方に車室フロアを上方にキックアップさせた第2キックアップ部を設け、上記第1キックアップ部の下面に沿って車体の前後方向に延びるように設置された燃料タンクの前部タンクを配設するとともに、この前部タンクの後端部から上記第2キックアップ部に沿って車幅方向に延びるように燃料タンクの後部タンクを配設したことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の車体構造において、第2キックアップ部に設けられた左右後席シートのシート載置部間に上方へ隆起する隆起部を設けるとともに、この隆起部に沿って上方に膨出する膨出部を後部タンクに設けたことを特徴とする車体構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の車体構造において、第2キックアップ部の中央部前方側に、運転席シートを車体の前後方向にスライド変位させるシートスライドレールの設置部を設けるとともに、このシートスライドレールの設置部に対応した凹入部を後部タンクの中央部に設けたことを特徴とする車体構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体構造において、第2キックアップ部の後部に沿って車幅方向に延びるクロスメンバを配設するとともに、このクロスメンバの配設部に対応して車幅方向に延びる凹溝部を燃料タンクの上面部に設けたことを特徴とする車体構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体構造において、左右の後列席シートは、それぞれの前面が車外側を指向するように傾斜して設置されるとともに、第2キックアップ部および後部タンクには、それぞれの左右前面が上記後席シートの傾斜角度に対応して車外側を指向する傾斜面が形成されたことを特徴とする車体構造。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の車体構造において、後部タンクの膨出部内に燃料ポンプを配設したことを特徴とする車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−24078(P2008−24078A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196719(P2006−196719)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】