説明

車体構造

【課題】車両側突時において乗員を十分に保護することのできる車体構造を提供する。
【解決手段】センタフロアクロス3の車幅方向端部側に設けられるセンタフロアクロスガセット9と、ドアトリム6とドアインナパネル14との間に設けられ、車両側突時にセンタフロアクロスガセット9と衝突することにより、車両下側を支点としてドアトリム6を車幅方向内側に回転させるように構成されたインナ側ドア内バルク8と、を備える。これにより、インナ側ドア内バルク8をセンタフロアクロスガセット9と衝突させて、ドアトリム6を車両下側を支点として車幅方向内側に回転させる。これによって、ドアトリム6の上端側をドアインナパネル14から外して乗員M側に移動させる。このドアトリム6を車幅方向内側に変形するサイドドア4から乗員Mを保護する保護部材として機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側突時に乗員を保護する車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両側突時に乗員を保護するための車体構造として、例えば、特開2006−248494号公報に記載されるように、サイドドアのドアトリムの下端部側に箱状のドリンクホルダを設けると共に、車両のフロアを車幅方向に延在するボディクロスメンバの車幅方向外側端部に荷重伝達部材をドリンクホルダと対向するように設けているものが知られている。このような車体構造においては、車両側突時に外部からサイドドアに衝突荷重が入力され、この衝突荷重によってサイドドアが車幅方向内側へ変形すると、サイドドアに設けられたドリンクホルダがボディクロスメンバに設けられた荷重伝達部材と衝突する。これによって、サイドドアに入力された衝突荷重がドリンクホルダ及び荷重伝達部材を介して車両の補強構造部に伝達され、衝突荷重によるサイドドアの変形が効果的に抑制される。
【特許文献1】特開2006−248494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような車体構造においては、車両側突における衝突荷重を車幅方向内側に伝達させることによってサイドドアの変形を抑制することができるが、更に、車両側突時における乗員の保護力も向上させることが求められている。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、車両側突時において乗員を十分に保護することのできる車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車体構造は、フロアクロスの車幅方向端部側に設けられる第1の回転誘導部材と、ドアトリムとドアパネルとの間に設けられ、車両側突時に第1の回転誘導部材と衝突することにより、車両下側を支点としてドアトリムを車幅方向内側に回転させるように構成された第2の回転誘導部材と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この車体構造では、ドアトリムとドアパネルとの間に設けられた第2の回転誘導部材が、車両側突時においてサイドドアが変形するのに伴って第2の回転誘導部材が車幅方向内側に移動し、車両側突時にフロアクロスに設けられた第1の回転誘導部材と衝突することによって、サイドドアに入力された衝突荷重を車幅方向内側へ逃がすことができる。また、第2の回転誘導部材が第1の回転誘導部材と衝突すると、ドアトリムが車両下側を支点として車幅方向内側に回転する。これによって、ドアトリムの上端側がドアパネルから外れて乗員側に移動する。このドアトリムが車幅方向内側に変形するサイドドアから乗員を保護する保護部材として機能する。以上によって、車両側突時において乗員を十分に保護することが可能となる。
【0007】
本発明に係る車体構造において、第1の回転誘導部材は、車幅方向外側に突出する突出部を上端部側に有し、第2の回転誘導部材は、車幅方向内側の側面に、車両側突時に突出部が入り込むように形成された凹部を有していることが好ましい。第2の回転誘導部材の車幅方向内側の側面に、車両側突時に第1の回転誘導部材の突出部が入り込むように形成されている。従って、車両側突時においてサイドドアが変形するのに伴って第2の回転誘導部材が車幅方向内側に移動して第1の回転誘導部材と衝突する際には、突出部が凹部に入り込み、凹部の内側面が突出部に引っ掛かることによって、突出部を支点として第2の回転誘導部材が車幅方向内側に回転する。これによって、第2の回転誘導部材に押されることによってドアトリムが車両下側を支点として車幅方向内側に回転し、確実に乗員を保護することが可能となる。
【0008】
本発明に係る車体構造において、第1の回転誘導部材の車幅方向外側の側面は、車両上側から車両下側へ向かって車幅方向外側へ傾斜する第1のテーパ面とされ、第2の回転誘導部材の車幅方向内側の側面は、第1のテーパ面と対向するように、車両上側から車両下側へ向かって車幅方向外側へ傾斜する第2のテーパ面とされていることが好ましい。第1の回転誘導部材の車幅方向外側の側面がテーパ面とされ、第2の回転誘導部材の車幅方向内側の側面が第1の回転誘導部材のテーパ面と対向するようなテーパ面とされているため、車両側突によって第2の回転誘導部材が車幅方向内側へ移動して第1の回転誘導部材と衝突すると、第2のテーパ面が第1のテーパ面と衝突し合い、更に、いずれか一方のテーパ面の頂部を支点として、第2の回転誘導部材が車幅方向内側に回転する。これによって、ドアトリムが第2の回転誘導部材に押されて車幅方向内側へ回転し易くなり、確実に乗員を保護することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両側突時において乗員を十分に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る車体構造の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態においては、一方のサイドドア側の構造のみについて説明しており、図面における紙面右側を「車幅方向外側」とし、図面における紙面左側を「車幅方向内側」として説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車体構造1を採用した車両を正面から見た概略断面図である。
【0012】
図1に示すように、車体構造1は、車幅方向両端側で車両前後方向に延在するサイドシル2と、車両のフロア側で車幅方向に延在するセンタフロアクロス3と、車幅方向両側に配置されるサイドドア4と、サイドドア4の車幅方向内側に取り付けられるドアトリム6と、サイドドア4内に設けられるアウタ側ドア内バルク7と、サイドドア4とドアトリム6の間に設けられるインナ側ドア内バルク(第2の回転誘導部材)8と、センタフロアクロス3の車幅方向両端側に設けられるセンタフロアクロスガセット(第1の回転誘導部材)9とを備えて構成されている。なお、車体構造1は、リア側のサイドドアに適用してもよく、フロント側のサイドドアに適用してもよい。
【0013】
サイドシル2は、車両下側で水平方向に広がり車両の床面を形成するフロア(不図示)の車幅方向両端部において、車両前後方向に延在する中空部材であり、車両の骨格部材を構成するものである。このサイドシル2は、サイドシルアウタ11とサイドシルインナ12を接合させることによって構成されている。サイドシルアウタ11は、車幅方向内側が開口するようなコ字状の断面形状を有しており、サイドシル2の外側の側壁を構成する外壁部11aと、外壁部11aの上下方向両端部から車幅方向内側へ延びる一対の側壁部、及び側壁部の端部に設けられた一対のフランジ部を備えている。また、サイドシルインナ12は、車幅方向外側が開口するようなコ字状の断面形状を有しており、サイドシル2の内側の側壁を構成する内壁部12aと、内壁部12aの上下方向両端部から車幅方向外側へ延びる一対の側壁部、及び側壁部の端部に設けられた一対のフランジ部を備えている。サイドシルアウタ11とサイドシルインナ12同士を向かい合わせて互いのフランジ部で溶接することによって、サイドシル2が形成される。
【0014】
センタフロアクロス3は、フロア上で車幅方向に延在する断面矩形状の中空部材であり、車幅方向外側の端部がサイドシル2の内壁部12aに対して溶接によって連結されている。これによって、センタフロアクロス3は、フロアを補強する機能を有すると共に、車両側突による衝撃荷重を車幅方向内側へ伝達する機能を有することとなる。センタフロアクロス3は、乗員の座席の下方において車幅方向外側へ向かって下側に傾斜する傾斜部3aと、車幅方向内側部分よりも低位置で延在する車幅方向外側端部付近の低位置部3bとを備えている。センタフロアクロスガセット9(詳細については後述)は、低い位置とされている傾斜部3a及び低位置部3bの上側面に配置されているため、車室空間の減少及び乗員への干渉が防止されている。
【0015】
サイドドア4は、車両のサイドボディに設けられ、ピラー(不図示)に設けられたヒンジで支持されることによって開閉可能な構成とされている。なお、サイドドア4は、本体部の上側にウィンドウ部が設けられる構成となっているが、図1においては、ウィンドウ部の下側の本体部のみ示している。このサイドドア4は、外壁を構成するドアアウタパネル13と内壁を構成するドアインナパネル14とを接合することによって形成されている。ドアアウタパネル13はサイドシル2の外側で車両上下方向に広がり、下端部がサイドシル2の外壁部11aと対向する位置にまで及んでいる。ドアインナパネル14は、サイドシル2の上方で車両上下方向に広がり、その下端部側では、サイドシル2の上側の側壁部及び外壁部11aの形状に沿って屈曲する構成となっている。ドアアウタパネル13とドアインナパネル14は、互いの外縁部同士を溶接することによって接合され、パネル同士の間に所定の幅を有する内部空間が形成されるように構成されている。
【0016】
ドアトリム6は、樹脂によって形成される板状部材であり、サイドドア4の内張り部品としてサイドドア4の車室空間側に設けられている。このドアトリム6は、ドアインナパネル14との間に空間が設けられるように、サイドシル2の上方で車両上下方向に広がり、ドアインナパネル14の車室空間側の面に取り付けられている。ドアトリム6は、車両下側の領域が車幅方向内側に迫り出すことによってドアインナパネル14との間の空間の幅が大きくされており、その下端部が、サイドシル2の上方でドアインナパネル14と接合されている。また、ドアトリム6の上端部は、ドアインナパネル14の本体部とウィンドウ部との間でドアインナパネル14と接合されている。このドアトリム6は、車両側突時において、車幅方向外側から内側へ向かってインナ側ドア内バルク8で押されることによって外れる程度の強度で、ドアインナパネル14に接合されている。ドアトリム6は、車両側突時にドアインナパネル14から外れ易くするため、例えば、クリップ止めなどの係合力が低い部材で接合されている。
【0017】
アウタ側ドア内バルク7は、サイドドア4内に設けられた直方体の箱状部材であり、車両側突時による衝突荷重を車幅方向内側へ伝達する機能を有する。このアウタ側ドア内バルク7は、溶接やボルト締めによってドアインナパネル14の車幅方向外側面の車両下側位置に取り付けられている。アウタ側ドア内バルク7は、例えば、板金加工により形成されたボックス内に複数のリブを設けることによって車幅方向に圧縮変形し難くされており、これによって、確実に衝突荷重を伝達できる構成とされている。また、ボックス内に樹脂材を充填させた構成としてもよい。
【0018】
インナ側ドア内バルク8は、ドアトリム6とドアインナパネル14との間に設けられて車両上下方向に延びる略直方体の箱状部材であり、車両側突時による衝突荷重を車幅方向内側へ伝達すると共に、ドアトリム6の回転を誘導する機能を有する。このインナ側ドア内バルク8は、溶接あるいはボルト締めによってドアインナパネル14の車幅方向内側面の車両下側位置に、アウタ側ドア内バルク7とドアインナパネル14を介して隣接するように取り付けられている。インナ側ドア内バルク8は、例えば、板金加工により形成されたボックス内に複数のリブを設けることによって車幅方向に圧縮変形し難くされており、これによって、確実に衝突荷重を伝達できる構成とされている。また、ボックス内に樹脂材を充填させた構成としてもよい。
【0019】
インナ側ドア内バルク8の車幅方向内側の側面には、凹部16が形成されており、これによって、車幅方向内側へ突出する下側突出部17が下端側に形成されると共に、車幅方向内側へ突出する上側突出部18が上端側に形成される。この凹部16は、車両側突時にセンタフロアクロスガセット9の上側突出部19が入り込むように形成されている。また、凹部16は、車両上下方向の位置がアウタ側ドア内バルク7と対応する位置に設けられていることが好ましく、これによって、車両側突時にアウタ側ドア内バルク7から伝達される衝突荷重は凹部16の底面16a付近に特に伝達され易くなる。また、下側突出部17の先端面17aの上下方向の幅は、上側突出部18の先端面18aの上下方向の幅、及び凹部16の底面16aの上下方向の幅よりも狭くされている。インナ側ドア内バルク8のドアインナパネル14に対する接合強度は、車両側突時においてセンタフロアクロスガセット9と衝突することによって、ドアインナパネル14から外れる程度の強度とされている。これによって、車両側突時において、インナ側ドア内バルク8は、アウタ側ドア内バルク7及びドアインナパネル14の車幅方向内側への移動に伴って移動し、センタフロアクロスガセット9と衝突する際に、ドアインナパネル14から外れて回転することができる。インナ側ドア内バルク8の下部は、ドアインナパネル14にボルト締め、あるいは溶接によって強固に接合され、上部はクリップ止めなどの係合力が低い部材で接合されている。これにより衝突時にインナ側ドア内バルク8の上部がドアインナパネル14から離間するように構成されている。
【0020】
センタフロアクロスガセット9は、センタフロアクロス3上の車幅方向外側端部に設けられた箱状部材であり、車両側突時による衝突荷重をセンタフロアクロス3を介して車幅方向内側へ伝達すると共に、インナ側ドア内バルク8を介してドアトリム6の回転を誘導する機能を有する。このセンタフロアクロスガセット9は、溶接あるいはボルト締めによってセンタフロアクロスガセット9の車幅方向外側端部付近の傾斜部3a及び低位置部3bの上面に取り付けられている。センタフロアクロスガセット9は、例えば、板金加工により形成されたボックス内に複数のリブを設けることによって車幅方向に圧縮変形し難くされており、これによって、確実に衝突荷重を伝達できる構成とされている。また、ボックス内に樹脂材を充填させた構成としてもよい。
【0021】
センタフロアクロスガセット9は、車幅方向上側に上面9aを有すると共に車幅方向外側に側面を有している。車幅方向上側の上面9aは、センタフロアクロス3の傾斜部3aから車幅方向外側へ向かって上方に傾斜するように広がり、車幅方向外側の側面は、センタフロアクロス3の低位置部3bから車両上側へ向かって車幅方向内側に傾斜するように広がっている。センタフロアクロスガセット9の側面には、凹部20が設けられており、これによって、車幅方向外側へ突出する上側突出部(突出部)19が上端側に形成されると共に、車幅方向外側へ突出する下側突出部21が下端側に形成される。この凹部20は、車両上下方向の中央位置に設けられていることが好ましく、上側突出部19の先端面19aの上下方向の幅は、凹部20の底面20aの上下方向の幅よりも狭くされている。上側突出部19は、具体的には、インナ側ドア内バルク8の側面に形成された凹部16に向かって突出しており、車両側突時においてインナ側ドア内バルク8が車幅方向内側へ移動する際に、凹部16に入り込むと共に、下側突出部17と引っ掛るような位置に配置されている。
【0022】
センタフロアクロスガセット9及びセンタフロアクロス3の上方にはシート(不図示)が設けられており、そのシート上に乗員Mが着席する。
【0023】
次に、本実施形態に係る車体構造1の作用・効果について、図2〜図4を参照して説明する。図2は、第1の実施形態に係る車体構造1を採用した車両に他車両が側突した様子を示す概略断面図である。図3は、図2の要部拡大図である。図4は、従来の車体構造を示す要部拡大断面図である。
【0024】
第1の実施形態に係る車体構造1では、図2及び図3に示すように、他車両の側突によって車幅方向外側から衝突加重Fが入力されると、サイドドア4のドアアウタパネル13が車幅方向内側へ変形することによって、ドアアウタパネル13がアウタ側ドア内バルク7に衝突する。ドアアウタパネル13との衝突によりアウタ側ドア内バルク7に衝突荷重が入力されることによって、車幅方向内側のドアインナパネル14及びインナ側ドア内バルク8に衝突荷重が伝達される。アウタ側ドア内バルク7から衝突荷重が伝達されることによって、ドアインナパネル14が、サイドシル2を支点として車幅方向内側に倒れ込むように変形し、その変形に伴ってインナ側ドア内バルク8が車幅方向内側へ移動する。
【0025】
インナ側ドア内バルク8が車幅方向内側へ移動することによって、センタフロアクロスガセット9の上側突出部19が、ドアトリム6を突き破って、あるいはドアトリム6を介してインナ側ドア内バルク8の凹部16に入り込む。凹部16に入り込んだ上側突出部19の先端面19aと凹部16の底面16aとが衝突することによって、上側突出部19を介してセンタフロアクロスガセット9に衝突荷重が伝達されると共に、ドアインナパネル14、ドアアウタパネル13及びアウタ側ドア内バルク7の車幅方向内側への進入が抑止される。センタフロアクロスガセット9に伝達された衝突荷重は、センタフロアクロス3に伝達され、車幅方向内側へ伝達される。
【0026】
また、インナ側ドア内バルク8が車幅方向内側へ移動することによって、インナ側ドア内バルク8の下側突出部17の内側面17bが、センタフロアクロスガセット9の上側突出部19の内側面19bに引っ掛る。下側突出部17がセンタフロアクロスガセット9の上側突出部19に引っ掛ることによって、インナ側ドア内バルク8が、下側突出部17を支点として車幅方向内側に回転移動する。
【0027】
インナ側ドア内バルク8が車幅方向内側に回転移動すると、上側突出部18の先端面18aは、ドアトリム6と衝突すると共に、ドアトリム6を車幅方向内側へ押し込むように荷重を付与する。荷重が付与されたドアトリム6には車幅方向内側へ向かう回転力が作用し、これによってドアトリム6は、上端側でドアインナパネル14から外れると共に、下端側を支点として車幅方向内側へ回転移動する。回転移動したドアトリム6は乗員Mを覆い、これによって、車幅方向内側へ進入するサイドドア4から乗員Mを保護することができる。
【0028】
ここで、比較のため、従来の車体構造30について説明する。図4に示すように、従来の車体構造30は、サイドドア4内に設けられるアウタ側ドア内バルク7と、サイドドア4とドアトリム6の間に設けられるインナ側ドア内バルク38と、センタフロアクロス3の車幅方向両端側に設けられるセンタフロアクロスガセット39とを備えて構成されている。車体構造30におけるインナ側ドア内バルク38は、車幅方向内側の側面38aが平面とされており、凹部や突出部が設けられていない。また、センタフロアクロスガセット39の車幅方向外側の側面39aも平面とされており、凹部や突出部が設けられていない。
【0029】
このような従来の車体構造30では、車両側突により衝突荷重が入力され、サイドドア4及びアウタ側ドア内バルク7の変形に伴ってインナ側ドア内バルク38が車幅方向内側へ移動すると、インナ側ドア内バルク38の側面38aがドアトリム6を介してセンタフロアクロスガセット39の側面39aと衝突する。これによって、センタフロアクロスガセット39を介してセンタフロアクロス3に衝突荷重が伝達されるが、インナ側ドア内バルク38はセンタフロアクロスガセット39と衝突した状態で留まる。従って、ドアトリム6はドアインナパネル14から外れることなく、サイドドア4との変形と共に、車幅方向内側へ変形する。
【0030】
一方、本実施形態に係る車体構造では、ドアトリム6とドアインナパネル14との間に設けられたインナ側ドア内バルク8が、車両側突時に、車両側突時においてサイドドア4が変形するのに伴って車幅方向内側に移動しセンタフロアクロス3に設けられたセンタフロアクロスガセット9と衝突することによって、サイドドア4に入力された衝突荷重を車幅方向内側へ逃がすことができる。また、インナ側ドア内バルク8がセンタフロアクロスガセット9と衝突すると、ドアトリム6が車両下側を支点として車幅方向内側に回転する。これによって、ドアトリム6の上端側がドアインナパネル14から外れて乗員M側に移動する。このドアトリム6が車幅方向内側に変形するサイドドア4から乗員Mを保護する保護部材として機能する。以上によって、車両側突時において乗員Mを十分に保護することが可能となる。
【0031】
本発明に係る車体構造において、センタフロアクロスガセット9は、車幅方向外側に突出する上側突出部19を上端部側に有し、インナ側ドア内バルク8は、車幅方向内側の側面に、車両側突時に上側突出部19が入り込むように形成された凹部16を有している。すなわち、インナ側ドア内バルク8の下端部側の下側突出部17が、車幅方向内側に突出すると共に車両側突時にセンタフロアクロスガセット9の上側突出部19と引っ掛かるように形成されている。従って、車両側突時においてサイドドア4が変形するのに伴ってインナ側ドア内バルク8が車幅方向内側に移動してセンタフロアクロスガセット9と衝突すると、上側突出部19が凹部16に入り込み、下側突出部17が上側突出部19に引っ掛かることによって、下側突出部17を支点としてインナ側ドア内バルク8が車幅方向内側に回転する。これによって、インナ側ドア内バルク8に押されることによってドアトリム6が車両下側を支点として車幅方向内側に回転し、確実に乗員Mを保護することが可能となる。
【0032】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る車体構造について説明する。第2の実施形態に係る車体構造40は、車両側突時に乗員Mとドアトリム6との間に配置されるエアバッグ41を備えている点で、第1の実施形態に係る車体構造1と主に相違している。図5は、第2の実施形態に係る車体構造40を採用した車体に他車両が側突した様子を示す概略断面図であり、図2に対応する図である。
【0033】
車体構造40は、ドアトリム6内にエアバッグ装置を備えている。このエアバッグ装置は、他車両が側突した時に作動し、エアバッグ41でドアトリム6を覆うように構成されている。これによって、車両側突時におけるサイドドアの車幅方向内側へ変形に対する乗員Mの保護力を向上させることができる。
【0034】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係る車体構造について説明する。第3の実施形態に係る車体構造50は、ドアトリム6とインナ側ドア内バルク8との間にパッド51を備えている点で、第1の実施形態に係る車体構造1と主に相違している。図6は、第3の実施形態に係る車体構造50を採用した車体を示す概略断面図であり、図1に対応する図である。
【0035】
車体構造50は、ドアトリム6とインナ側ドア内バルク8との間にパッド51を備えている。具体的には、パッド51は、インナ側ドア内バルク8の上側突出部18の先端面18aに設けられた衝撃吸収部材である。なお、パッド51は、ドアトリム6とは固定されていない。これにより、車両衝突時において、インナ側ドア内バルク8が車幅方向内側へ回転する際に、インナ側ドア内バルク8の上側突出部18の先端面18aがドアトリム6を介して乗員Mに与える衝撃をパッド51によって吸収することができる。
【0036】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態に係る車体構造について説明する。第4の実施形態に係る車体構造60は、インナ側ドア内バルク(第2の回転誘導部材)68の車幅方向内側の面と、センタフロアクロスガセット(第1の回転誘導部材)69の車幅方向外側の面が、それぞれテーパ面とされている点で、第1の実施形態に係る車体構造1と主に相違している。図7は、第4の実施形態に係る車体構造60を採用した車体を示す概略断面図であり、図1に対応する図である。図8は、第4の実施形態に係る車体構造60を採用した車両に他車両が衝突した様子を示す要部拡大図であり、図3に対応する図である。
【0037】
車体構造60のセンタフロアクロスガセット69の車幅方向外側の側面は、車両上側から車両下側へ向かって車幅方向外側へ傾斜するテーパ面(第1のテーパ面)69aとされている。また、車体構造60のインナ側ドア内バルク68の車幅方向内側の側面は、センタフロアクロスガセット69のテーパ面69aと対向するように、車両上側から車両下側へ向かって車幅方向外側へ傾斜するテーパ面(第2のテーパ面)68aとされている。また、インナ側ドア内バルク68は、センタフロアクロスガセット69よりも高い位置に形成されている。
【0038】
このように構成された車体構造60においては、インナ側ドア内バルク68が車幅方向内側へ移動することによって、センタフロアクロスガセット69のテーパ面69aとインナ側ドア内バルク68のテーパ面68aとが、ドアトリム6を介して衝突する。テーパ面68aとテーパ面69aとが衝突することによって、インナ側ドア内バルク68を介してセンタフロアクロスガセット69に衝突荷重が伝達されると共に、ドアインナパネル14、ドアアウタパネル13及びアウタ側ドア内バルク7の車幅方向内側への進入が抑止される。センタフロアクロスガセット69に伝達された衝突荷重は、センタフロアクロス3に伝達され、車幅方向内側へ伝達される。
【0039】
また、インナ側ドア内バルク68が車幅方向内側へ移動することによって、インナ側ドア内バルク68のテーパ面68aが、センタフロアクロスガセット69のテーパ面69aの上端側の頂部69bに引っ掛る。テーパ面68aがセンタフロアクロスガセット69の頂部69bに引っ掛ることによって、インナ側ドア内バルク68が、頂部69bを支点として車幅方向内側に回転移動する。
【0040】
インナ側ドア内バルク68が車幅方向内側に回転移動すると、インナ側ドア内バルク68は、そのテーパ面68aの上端側でドアトリム6を車幅方向内側へ押し込むように荷重を付与する。荷重が付与されたドアトリム6には車幅方向内側へ向かう回転力が作用し、これによってドアトリム6は、上端側でドアインナパネル14から外れると共に、下端側を支点として車幅方向内側へ回転移動する。回転移動したドアトリム6は乗員Mを覆い、これによって、車幅方向内側へ進入するサイドドア4から乗員Mを保護することができる。
【0041】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0042】
例えば、第1の実施形態に係る車体構造1では、インナ側ドア内バルク8の車幅方向内側の側面に上側突出部18と下側突出部17が設けられているが、これに代えて、下側突出部17のみが設けられている構成としてもよい。このような構成によっても、センタフロアクロスガセット9の上側突出部19と引っ掛ることによって、インナ側ドア内バルク8を回転させることができる。
【0043】
また、第1の実施形態に係る車体構造1では、センタフロアクロスガセット9の車幅方向外側の側面に上側突出部19と下側突出部21が設けられているが、これに代えて、上側突出部19のみが設けられている構成としてもよい。このような構成によっても、インナ側ドア内バルク8の下側突出部17を引っ掛けることによって、インナ側ドア内バルク8を回転させることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る車体構造は、センタフロアクロス周辺に適用されていたが、センタフロアクロスに限らず、フロントフロアクロスメンバ周辺に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体構造を採用した車両を正面から見た概略断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る車体構造を採用した車両に他車両が側突した様子を示す概略断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】従来の車体構造を示す要部拡大断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る車体構造を採用した車体に他車両が側突した様子を示す概略断面図であり、図2に対応する図である。
【図6】第3の実施形態に係る車体構造を採用した車体を示す概略断面図であり、図1に対応する図である。
【図7】第4の実施形態に係る車体構造を採用した車体を示す概略断面図であり、図1に対応する図である。
【図8】第4の実施形態に係る車体構造を採用した車両に他車両が衝突した様子を示す要部拡大図であり、図3に対応する図である。
【符号の説明】
【0046】
1,40,50,60…車体構造、3…フロアクロス、6…ドアトリム、14…ドアインナパネル、8,68…インナ側ドア内バルク(第2の回転誘導部材)、9,69…センタフロアクロスガセット(第1の回転誘導部材)、16…凹部、19…上側突出部(突出部)、68…テーパ面(第2のテーパ面)、69a…テーパ面(第1のテーパ面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアクロスの車幅方向端部側に設けられる第1の回転誘導部材と、
ドアトリムとドアパネルとの間に設けられ、車両側突時に前記第1の回転誘導部材と衝突することにより、車両下側を支点として前記ドアトリムを車幅方向内側に回転させるように構成された第2の回転誘導部材と、を備えることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記第1の回転誘導部材は、車幅方向外側に突出する突出部を上端部側に有し、
前記第2の回転誘導部材は、車幅方向内側の側面に、車両側突時に前記突出部が入り込むように形成された凹部を有していることを特徴とする請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記第1の回転誘導部材の車幅方向外側の側面は、車両上側から車両下側へ向かって車幅方向外側へ傾斜する第1のテーパ面とされ、
前記第2の回転誘導部材の車幅方向内側の側面は、前記第1のテーパ面と対向するように、車両上側から車両下側へ向かって車幅方向外側へ傾斜する第2のテーパ面とされていることを特徴とする請求項1記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−69948(P2010−69948A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236940(P2008−236940)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】