車体構造
【課題】車体下面において乱流の発生を防止可能な車体構造を提供する。
【解決手段】前タイヤ収納部と後タイヤ収納部との間位置、かつ、車体の側面と下面との端部に配置されるサイドシルを有し、このサイドシルは、車体の幅方向の外側位置に形成される外側サイドシル部を備え、外側サイドシル部は、前タイヤ収納部側の底面と地面との距離と、後タイヤ収納部側の底面と地面との距離が同一に形成される。また、車体の底面は、前タイヤ収納部と後タイヤ収納部の間の位置に形成される傾斜面を備え、この傾斜面は、前タイヤ収納部側の底面と地面との距離よりも、後タイヤ収納部側の底面と地面との距離が短く形成される。
【解決手段】前タイヤ収納部と後タイヤ収納部との間位置、かつ、車体の側面と下面との端部に配置されるサイドシルを有し、このサイドシルは、車体の幅方向の外側位置に形成される外側サイドシル部を備え、外側サイドシル部は、前タイヤ収納部側の底面と地面との距離と、後タイヤ収納部側の底面と地面との距離が同一に形成される。また、車体の底面は、前タイヤ収納部と後タイヤ収納部の間の位置に形成される傾斜面を備え、この傾斜面は、前タイヤ収納部側の底面と地面との距離よりも、後タイヤ収納部側の底面と地面との距離が短く形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体下部における気流を調整するための車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行時に、車体下部に前方から後方に向かう気流である走行風が発生する。この車体下部に発生する走行風を整流するための車体構造が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、後側タイヤの後方に配置された第1整流手段と、後側タイヤの前方に配置された第2整流手段とを有する車両の後部車体構造が記載されている。この後部車体構造は、第1整流手段を備えることにより、車両下面にそって流れる気流(走向風)が、後側タイヤの後方で車幅方向外側へ拡散するのを防止し、車両下面に沿った気流の乱れを少なくして、空力特性の向上を図っている。
【0004】
さらに、特許文献1に記載の後部車体構造は、第2整流手段を備えることにより、気流が後側タイヤに当たって後側タイヤの近傍で乱流が発生することを防止して、車両下面に沿った気流の乱れを少なくして、空力特性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002―37144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、タイヤの間の車体下部中央を前方から後方に流れる気流、すなわち、一対の前タイヤよりも内側の領域から、一対の後タイヤよりも内側の領域を流れる気流は、その流れを妨げるものが少ないため早い気流となる。これに対して、前タイヤの後から後タイヤへと流れる気流は、車体下部中央を前方から後方に流れる気流よりも遅い気流となる。
【0007】
このように、従来の車体構造を有する車両では、車体の幅方向において、気流の速さに差異が生じてしまう。そして、気流の速さに差異が生じることにより、その境目において乱流が生じ、空力性能が悪化してしまうという問題があった。
【0008】
特許文献1に記載の後部車体構造においても、後タイヤ周辺における気流の乱れを少なくしているにすぎず、このような車体の幅方向における気流の速さの差異による乱流の発生、及び空力性能の低下という不都合を解消できていない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、車体下部中央付近の気流の速さと、前タイヤ後方における気流の速さとの差に起因する乱流の発生を防止可能な車体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車体構造は、前タイヤを収納するための前タイヤ収納部と、後タイヤを収納するための後タイヤ収納部と、前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部との間位置、かつ、車体の側面と下面との端部に配置されるサイドシルと、を有し、前記サイドシルは、前記車体の幅方向の外側位置に形成される外側サイドシル部を備え、前記外側サイドシル部は、前記前タイヤ収納部側の前記外側サイドシル部の底面と地面との距離と、前記後タイヤ収納部側の前記外側サイドシル部の底面と地面との距離が同一に形成され、前記車体の底面は、前記車体の幅方向の前記外側サイドシル部の内側、かつ、前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部の間の位置に形成される傾斜面を備え、前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部側の底面と地面との距離よりも、前記後タイヤ収納部側の底面と地面との距離が短く形成される。
【0011】
また、本発明の車体構造において、前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部の後端部から、前記後タイヤ収納部の先端部にわたって形成されることが好ましい。
【0012】
または、本発明の車体構造において、前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部の後端部から、前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部の間の位置にわたって形成されることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の車体構造において、前記傾斜面は、前記車体の幅方向の外側が地面との距離が長く、前記車体の幅方向の内側が地面との距離が短く形成されることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の車体構造において、前記傾斜面は、少なくとも前記タイヤの前記車体方向の幅にわたって形成されることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の車体構造において、前記傾斜面に、前記下方に向かって突出し、前記車体の前後方向に延在するリブを少なくとも1つ設けることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明の車体構造において、前記傾斜面と前記外側サイドシル部が、サイドシルスポイラとして一体的に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明における車体構造によって、車体下部中央付近の走行風の速さと、前タイヤ後方における気流の速さとの差に起因する乱流の発生を防止可能な車体構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るサイドシル及び底面付近の断面を示す断面図である。
【図3】本発明に係る車両の側面の一部を示す側面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るサイドシル及び底面付近の断面を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るサイドシル及び底面付近の断面を示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るサイドシル及び底面付近の断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態である車体構造を備える車両について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の車体構造を備える車両10の側面図である。
【0020】
図1に示すように、車両10は、車体の前方に1対の前タイヤ12と、前タイヤ12を収納するために車体に形成された前タイヤ収納部14と、後方に1対の後タイヤ16と、後タイヤ16を収納するために車体に形成された後タイヤ収納部18と、サイドシル20とを備える。なお、以下、車体の前後方向を単に前後方向ともいい、車体の幅方向を単に幅方向ともいう。
【0021】
前タイヤ収納部14は、車体の一部に設けられた略半円筒形状の凹部である。前タイヤ収納部14は、前タイヤ12を収納するのに十分な空間を提供する。
【0022】
特に、操舵輪である前タイヤ12を収納するために形成された前タイヤ収納部14は、転舵代を見込んで、幅方向に十分な空間を提供するように形成されている。すなわち、前後方向に延在してタイヤ収納部14を形成する壁部と、タイヤ12の幅方向の内側部との間には、転舵代を十分に確保するための空間が形成されている。
【0023】
また、後タイヤ収納部18は、前タイヤ収納部14と同様に、車体の一部に設けられた略半円筒形状の凹部である。後タイヤ収納部18は、後タイヤ16を収納するのに十分な空間を提供する。
【0024】
図2は、図1に示すII−II線で切断した、サイドシル20及び車両10の底面24の一部を示す断面図である。また、図3は、図1に示す車両10の側面の一部を示す側面図である。
【0025】
サイドシル20は、車体の側方下部、かつ、前タイヤ収納部14と後タイヤ収納部18との間位置、ドアの下方に前後方向に延在する敷居部材である。
【0026】
図2に示すように、サイドシル20は、幅方向の外側位置に形成される外側サイドシル部22を備える。この外側サイドシル部22は、車体の側方位置に前後方向に延在し、車体の底面24(図2参照)よりも下方に突出した突出部を有する。外側サイドシル部22の底面Aは、前タイヤ収納部14側の底面Aと地面との距離と、後タイヤ収納部18側の底面Aと地面との距離が同一になるように形成されている。すなわち、外側サイドシル部22の底面Aは地面と平行になるように形成されている。
【0027】
図2、3に示すように、本実施形態において、車体の底面24には傾斜面Bが形成されている。この傾斜面Bは、幅方向の外側サイドシル部22の内側、かつ、前タイヤ収納部14と後タイヤ収納部18との間の位置に形成されている。換言すると、傾斜面Bは、前タイヤ収納部14の後端部から後タイヤ収納部の先端部にわたって形成されている。また、図2に示すように、傾斜面Bは、少なくとも、前タイヤ12(後タイヤ16)の幅にわたって形成されている。すなわち、傾斜面Bは、概ね、外側サイドシル部22の幅方向内側位置から、前タイヤ12(後タイヤ16)の幅方向の内側位置にわたって形成されている。
【0028】
図3の点線で示すように、傾斜面Bは、前タイヤ収納部14側の面と地面との距離よりも、後タイヤ収納部18側の面と地面との距離が短くなるように形成されている。すなわち、傾斜面Bは、前方から後方に向かって下傾するように形成されている。この傾斜面Bの後端部(すなわち、後タイヤ収納部18側の端部)の高さは、底面Aよりも高いが、略同じ高さとなっている。
【0029】
なお、傾斜面Bは、外側サイドシル部22を除くサイドシル20の底面と、車体の底面24を形成するアンダーボディーの一部とから形成されている。しかしながら、サイドシル20が、タイヤ幅に対して十分に細い場合は、車体の底面24を形成するアンダーボディーの一部のみで傾斜面Bを形成してもよい。
【0030】
このように、本実施形態では、車体の底面24に、前タイヤ収納部14側の底面と地面との距離よりも、後タイヤ収納部18側の底面と地面との距離が短い傾斜面Bが形成されている。さらに、外側サイドシル部22は、前タイヤ収納部14側の底面と地面との距離と、後タイヤ収納部18側の底面と地面との距離が同一に形成されている。
【0031】
このように構成された本実施形態では、外側サイドシル部22の突出部と傾斜面Bとで、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流の流路を提供する。さらに、本実施形態では、この気流の流路を前方から後方に向かうにつれて狭めている。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かうにつれて加速させることができる。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流と、車両中央部を流れる気流の速さの差を低減することができ、気流の速さの差に起因する乱流の発生を防止することができる。
【0032】
このようにして、本実施形態では、乱流の発生を防止することにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。さらに、この空力性能の改善によって、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、外側サイドシル部22は、前タイヤ収納部14側の底面と地面との距離と、後タイヤ収納部18側の底面と地面との距離が同一に形成されている。さらに、その底面Aは、傾斜面Bよりも下方になるように形成されている。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を車体の側方外側に拡散させることなく、後方に向かって加速させることができる。
【0034】
<本発明の第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態における車体構造を説明するII−II線矢視断面図である。
基本的に、本発明の第1の実施形態と同様の構成・作用・効果を有し、異なる点は、車体の底面24に形成された傾斜面Bが車体の幅方向に外側から内側に向かって下傾している点である。
【0035】
本実施形態において、傾斜面Bは、図4に示すように、幅方向の外側が地面との距離が長く、内側が地面との距離が短くなるように形成されている。すなわち、傾斜面Bは、車体の幅方向に外側から内側に向かって下傾している。
また、傾斜面Bは、図3に示すように、前方から後方に向かって下傾するように形成されているのは上述のとおりである。
【0036】
このように構成された本実施形態では、第1の実施形態と同様に、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流の流路を、前方から後方に向かうにつれて狭めている。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かうにつれて加速させることができる。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流と、車両中央部を流れる気流の速さの差を低減することができ、気流の速さの差に起因する乱流の発生を防止することができる。また、乱流の発生を防止することにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。さらに、この空力性能の改善によって、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、傾斜面Bを車体の幅方向の外側から内側に向かって下傾させている。これにより、特に気流の速さが遅くなる幅方向の外側位置において、その速さを確実に加速させるとともに、内側位置においては、車体の底面24の高さを低くすることができる。すなわち、内側位置においては、車内空間をより広く確保することができる。
【0038】
<本発明の第3の実施形態>
図5は、本発明の第3の実施形態における車体構造を説明するII−II線矢視断面図である。
基本的に、本発明の第1の実施形態と同様の構成・作用・効果を有し、異なる点は、傾斜面Bにリブ26が形成されている点である。
【0039】
本実施形態において、図5に示すように、傾斜面Bには、車体の下方に向かって突出し、車体の前後方向に延在するリブ26が複数(図5では2つ)形成されている。
リブ26は、傾斜面Bから車体の下方に向かって突出する板状の部材であり、車体の前後方向に前タイヤ収納部14の後端部から後タイヤ収納部の先端部にかけて延在する。リブ26は、その底面が、外側サイドシル部22の底面Aの高さと略同じ高さとなるように形成されている。すなわち、リブ26は、前タイヤ収納部14側の方が後タイヤ収納部18側よりも長くなるように形成されている。本実施形態では、複数のリブ26が、幅方向に平行に設けられている。
【0040】
リブ26は、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かって整流する。すなわち、リブ26を設けることにより、気流を拡散させることなく、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって導くことができる。
【0041】
このような構成を有する本実施形態では、上記実施形態における効果に加えて、さらに、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かって確実に整流することができるので、気流を拡散させることなく確実に加速させることができる。
【0042】
ところで、前タイヤ収納部14から走行風が流出する際に、前タイヤ収納部14の後方において乱流が発生しやすいという不都合がある。また、後タイヤ収納部18に気流が流入する際に、後タイヤ収納部18の前方において乱流が発生しやすいという不都合がある。これに対して、リブ26を前タイヤ収納部14の後方に設けることにより、前タイヤ収納部14の後方、及び、後タイヤ収納部18の前方において乱流の発生を防止することができる。また、乱流の発生を防止することにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。さらに、この空力性能の改善によって、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0043】
なお、本実施形態において、リブ26は、車体の前後方向に前タイヤ収納部14の後端部から後タイヤ収納部18の先端部にかけて延在するとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、リブ26を、前タイヤ収納部14の後端部から、前方から後方に向かう途中位置まで延在するように形成してもよい。このように構成される場合であっても、前タイヤ収納部14の後方、及び、後タイヤ収納部18の前方において乱流の発生を防止することができ、空力性能を改善することができる。
【0044】
また、同様に、リブ26を、前方から後方に向かう途中位置から、後タイヤ収納部18の先端部まで延在するように形成してもよい。このように構成される場合であっても、前タイヤ収納部14の後方、及び、後タイヤ収納部18の前方において乱流の発生を防止することができ、空力性能を改善することができる。
【0045】
また、リブ26を、前方から後方に向かう途中位置にのみ形成するようにしてもよい。このように構成した場合であっても、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かって整流することができるので、気流を拡散させることなく加速させることができる。
【0046】
また、本実施形態において、少なくとも1以上のリブ26を設ければよく、所望の整流効果を得ることができる限りにおいて、その個数は特に制限されない。
【0047】
以上、本発明に係る車体構造について詳細に説明した。本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、様々な変化した構造、構成を採用してもよい。
【0048】
例えば、上記実施形態では、傾斜面Bは、外側サイドシル部22に対して幅方向の内側位置に、前タイヤ12(後タイヤ16)の幅にわたって形成されているとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、傾斜面Bが、前タイヤ収納部14(後タイヤ収納部18)の幅にわたって形成されていてもよい。本発明において、傾斜面Bは、少なくとも、前タイヤ12(後タイヤ16)の幅にわたって形成されていればよい。
【0049】
また、上記実施形態では、傾斜面Bは、図3に示すように、前方端部から後方端部に向かって一様に下傾するよう形成されているが、本発明はこれに限定されず、その傾斜角を途中で変化させてもよい。
【0050】
例えば、傾斜面Bは、地面に対する傾斜角が、前方から後方に向かって減少するようにしてもよいし、増大するようにしてもよい。特に、傾斜角が減少するように構成した場合、傾斜面Bの傾斜角が前方側において大きくなるので、前方側において気流を大きく加速させることができる。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流の速さを、車体の前方側において大きく増大させることができるので、より前方側において、車両中央部を流れる気流の速さとの差を低減することができる。したがって、乱流の発生をより確実に防止することができ、空力性能をより一層改善することができる。
【0051】
また、傾斜面Bは、前方から後方に向かう途中位置まで傾斜させ、それより後方は外側サイドシル部22の底面Aと略同じ高さで地面と平行になるよう構成してもよい。すなわち、傾斜面Bを、前方から後方に向かう途中位置まで形成するとともに、その後端部の高さが底面Aと略同じ高さとなるように構成するようにしてもよい。このように構成した場合においても、前方側において気流を大きく加速させることができる。これにより、より前方側において、車両中央部を流れる気流の速さとの差を低減することができる。したがって、乱流の発生をより確実に防止することができ、空力性能をより一層改善することができる。
【0052】
<本発明の第4の実施形態>
図6は、本発明の第4の実施形態における車体構造を説明するII−II線矢視断面図である。
基本的に、本発明の第2の実施形態と同様の構成・作用・効果を有し、異なる点は、外側サイドシル部22と傾斜面Bとがサイドシルスポイラによって一体的に形成されている点である。
【0053】
本実施形態において、外側サイドシル部22と傾斜面Bとは、サイドシルスポイラ28によって一体的に形成されている。なお、傾斜面Bは、第2の実施形態と同様に、車体の幅方向に外側から内側に向かって下傾している。また、傾斜面Bは、前方から後方に向かって下傾している。
【0054】
サイドシルスポイラ28は、樹脂等で形成された部材であり、真空成型や射出成型等によって成型される。これにより、サイドシル部22と傾斜面Bとを一体的に容易に形成することができる。このサイドシルスポイラ28は、車体を覆うように配置され、車体に対してクリップ30によって保持されている。
【0055】
このように構成された本実施形態では、第2の実施形態と同様に、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流の流路を、前方から後方に向かうにつれて狭めている。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かうにつれて加速させることができる。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流と、車両中央部を流れる気流の速さの差を低減することができ、気流の速さの差に起因する乱流の発生を防止することができる。また、乱流の発生を防止することにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。さらに、この空力性能の改善によって、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、傾斜面Bを車体の幅方向の外側から内側に向かって下傾させている。これにより、特に気流の速さが遅くなる幅方向の外側位置において、その速さを確実に加速させることができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、サイドシルスポイラ28を設けることにより、本発明にかかる構成である外側サイドシル部22と傾斜面Bとを一体的に形成し、取り付けることを容易とすることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、傾斜面Bを第2の実施形態と同様に、車体の幅方向に外側から内側に向かって下傾するとともに、前方から後方に向かって下傾しているとしたが、本発明はこれに限定されない。傾斜面Bは、第1の実施形態と同様に、前方から後方に向かって下傾しているのみでもよい。この場合であっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、本実施形態では、サイドシルスポイラ28は、外側サイドシル部22と傾斜面Bを一体的に形成するとしたが、これに限定されない。例えば、外側サイドシル部22のみをサイドシルスポイラ28で形成してもよい。この場合、傾斜面Bは、車体の底面24によって形成される。また、傾斜面Bのみをサイドシルスポイラ28によって形成してもよい。この場合、外側サイドシル部22は、車体と一体的に形成される。
【0060】
<実施形態の構成及び効果>
以上の実施形態によれば、前タイヤ12を収納するための前タイヤ収納部14と、後タイヤ16を収納するための後タイヤ収納部18と、前タイヤ収納部14と後タイヤ収納部18との間位置、かつ、車体の側面と下面との端部に配置されるサイドシル20と、を有し、サイドシル20は、車体の幅方向の外側位置に形成される外側サイドシル部22を備え、外側サイドシル部22は、前タイヤ収納部14側の外側サイドシル部22の底面Aと地面との距離と、後タイヤ収納部18側の外側サイドシル部22の底面Aと地面との距離が同一に形成され、車体の底面24は、車体の幅方向の外側サイドシル部22の内側、かつ、前タイヤ収納部14と後タイヤ収納部18の間の位置に形成される傾斜面Bを備え、傾斜面Bは、前タイヤ収納部14側の底面と地面との距離よりも、後タイヤ収納部18側の底面と地面との距離が短く形成される傾斜面Bが形成されている。
【0061】
このような構成によって、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流の流路を形成するとともに、その流路を前方から後方に向かうにつれて狭めている。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、車体の側方外側に拡散させることなく、前方から後方に向かうにつれて加速させることができる。また、これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流と、車両中央部を流れる気流の速さの差を低減することができ、気流の速さの差異に起因する乱流の発生を防止することができる。このようにして、乱流の発生を防止することにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。さらに、この空力性能の改善によって、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0062】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bは、前タイヤ収納部14の後端部から、後タイヤ収納部18の先端部にわたって形成される。
このような構成により、前タイヤ収納部14から後タイヤ収納部18にわたって、気流の流路を確保することができ、気流を拡散させることなく加速させることができる。その結果、気流の速さの差に起因する乱流の発生を防止し、これにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。
【0063】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bは、前タイヤ収納部14の後端部から、前タイヤ収納部14と後タイヤ収納部18の間の位置にわたって形成される。
このような構成により、前方側において気流を大きく加速させることができる。これにより、より前方側において、車両中央部を流れる気流の速さとの差を低減することができる。したがって、乱流の発生をより確実に防止することができ、空力性能をより一層改善することができる。
【0064】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bは、車体の幅方向の外側が地面との距離が長く、車体の幅方向の内側が地面との距離が短く形成される。
このような構成により、特に気流の速さが遅くなる車体の幅方向の外側位置において、気流の速さを確実に加速させるとともに、内側位置においては、車体の底面24の高さを低くすることができる。すなわち、内側位置においては、車内空間をより広く確保することができる。
【0065】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bは、少なくともタイヤの車体方向の幅にわたって形成される。
このような構成により、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かうにつれてより確実に加速させることができる。
【0066】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bに、下方に向かって突出し、車体の前後方向に延在するリブ26を少なくとも1つ設ける。
このような構成により、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かって確実に整流することができるので、気流を拡散させることなく確実に加速させることができる。また、前タイヤ収納部14の後方、及び、後タイヤ収納部18の前方において乱流の発生を防止することができる。
【0067】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bと外側サイドシル部22が、サイドシルスポイラ28として一体的に形成される。
このような構成により、本発明にかかる構成である外側サイドシル部22と傾斜面Bとを一体的に形成し、取り付けることを容易とすることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 車両
12 前タイヤ
14 前タイヤ収納部
16 後タイヤ
18 後タイヤ収納部
20 サイドシル
22 外側サイドシル部
24 車体の底面
26 リブ
28 サイドシルスポイラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体下部における気流を調整するための車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行時に、車体下部に前方から後方に向かう気流である走行風が発生する。この車体下部に発生する走行風を整流するための車体構造が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、後側タイヤの後方に配置された第1整流手段と、後側タイヤの前方に配置された第2整流手段とを有する車両の後部車体構造が記載されている。この後部車体構造は、第1整流手段を備えることにより、車両下面にそって流れる気流(走向風)が、後側タイヤの後方で車幅方向外側へ拡散するのを防止し、車両下面に沿った気流の乱れを少なくして、空力特性の向上を図っている。
【0004】
さらに、特許文献1に記載の後部車体構造は、第2整流手段を備えることにより、気流が後側タイヤに当たって後側タイヤの近傍で乱流が発生することを防止して、車両下面に沿った気流の乱れを少なくして、空力特性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002―37144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、タイヤの間の車体下部中央を前方から後方に流れる気流、すなわち、一対の前タイヤよりも内側の領域から、一対の後タイヤよりも内側の領域を流れる気流は、その流れを妨げるものが少ないため早い気流となる。これに対して、前タイヤの後から後タイヤへと流れる気流は、車体下部中央を前方から後方に流れる気流よりも遅い気流となる。
【0007】
このように、従来の車体構造を有する車両では、車体の幅方向において、気流の速さに差異が生じてしまう。そして、気流の速さに差異が生じることにより、その境目において乱流が生じ、空力性能が悪化してしまうという問題があった。
【0008】
特許文献1に記載の後部車体構造においても、後タイヤ周辺における気流の乱れを少なくしているにすぎず、このような車体の幅方向における気流の速さの差異による乱流の発生、及び空力性能の低下という不都合を解消できていない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、車体下部中央付近の気流の速さと、前タイヤ後方における気流の速さとの差に起因する乱流の発生を防止可能な車体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車体構造は、前タイヤを収納するための前タイヤ収納部と、後タイヤを収納するための後タイヤ収納部と、前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部との間位置、かつ、車体の側面と下面との端部に配置されるサイドシルと、を有し、前記サイドシルは、前記車体の幅方向の外側位置に形成される外側サイドシル部を備え、前記外側サイドシル部は、前記前タイヤ収納部側の前記外側サイドシル部の底面と地面との距離と、前記後タイヤ収納部側の前記外側サイドシル部の底面と地面との距離が同一に形成され、前記車体の底面は、前記車体の幅方向の前記外側サイドシル部の内側、かつ、前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部の間の位置に形成される傾斜面を備え、前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部側の底面と地面との距離よりも、前記後タイヤ収納部側の底面と地面との距離が短く形成される。
【0011】
また、本発明の車体構造において、前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部の後端部から、前記後タイヤ収納部の先端部にわたって形成されることが好ましい。
【0012】
または、本発明の車体構造において、前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部の後端部から、前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部の間の位置にわたって形成されることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の車体構造において、前記傾斜面は、前記車体の幅方向の外側が地面との距離が長く、前記車体の幅方向の内側が地面との距離が短く形成されることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の車体構造において、前記傾斜面は、少なくとも前記タイヤの前記車体方向の幅にわたって形成されることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の車体構造において、前記傾斜面に、前記下方に向かって突出し、前記車体の前後方向に延在するリブを少なくとも1つ設けることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明の車体構造において、前記傾斜面と前記外側サイドシル部が、サイドシルスポイラとして一体的に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明における車体構造によって、車体下部中央付近の走行風の速さと、前タイヤ後方における気流の速さとの差に起因する乱流の発生を防止可能な車体構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るサイドシル及び底面付近の断面を示す断面図である。
【図3】本発明に係る車両の側面の一部を示す側面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るサイドシル及び底面付近の断面を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るサイドシル及び底面付近の断面を示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るサイドシル及び底面付近の断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態である車体構造を備える車両について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の車体構造を備える車両10の側面図である。
【0020】
図1に示すように、車両10は、車体の前方に1対の前タイヤ12と、前タイヤ12を収納するために車体に形成された前タイヤ収納部14と、後方に1対の後タイヤ16と、後タイヤ16を収納するために車体に形成された後タイヤ収納部18と、サイドシル20とを備える。なお、以下、車体の前後方向を単に前後方向ともいい、車体の幅方向を単に幅方向ともいう。
【0021】
前タイヤ収納部14は、車体の一部に設けられた略半円筒形状の凹部である。前タイヤ収納部14は、前タイヤ12を収納するのに十分な空間を提供する。
【0022】
特に、操舵輪である前タイヤ12を収納するために形成された前タイヤ収納部14は、転舵代を見込んで、幅方向に十分な空間を提供するように形成されている。すなわち、前後方向に延在してタイヤ収納部14を形成する壁部と、タイヤ12の幅方向の内側部との間には、転舵代を十分に確保するための空間が形成されている。
【0023】
また、後タイヤ収納部18は、前タイヤ収納部14と同様に、車体の一部に設けられた略半円筒形状の凹部である。後タイヤ収納部18は、後タイヤ16を収納するのに十分な空間を提供する。
【0024】
図2は、図1に示すII−II線で切断した、サイドシル20及び車両10の底面24の一部を示す断面図である。また、図3は、図1に示す車両10の側面の一部を示す側面図である。
【0025】
サイドシル20は、車体の側方下部、かつ、前タイヤ収納部14と後タイヤ収納部18との間位置、ドアの下方に前後方向に延在する敷居部材である。
【0026】
図2に示すように、サイドシル20は、幅方向の外側位置に形成される外側サイドシル部22を備える。この外側サイドシル部22は、車体の側方位置に前後方向に延在し、車体の底面24(図2参照)よりも下方に突出した突出部を有する。外側サイドシル部22の底面Aは、前タイヤ収納部14側の底面Aと地面との距離と、後タイヤ収納部18側の底面Aと地面との距離が同一になるように形成されている。すなわち、外側サイドシル部22の底面Aは地面と平行になるように形成されている。
【0027】
図2、3に示すように、本実施形態において、車体の底面24には傾斜面Bが形成されている。この傾斜面Bは、幅方向の外側サイドシル部22の内側、かつ、前タイヤ収納部14と後タイヤ収納部18との間の位置に形成されている。換言すると、傾斜面Bは、前タイヤ収納部14の後端部から後タイヤ収納部の先端部にわたって形成されている。また、図2に示すように、傾斜面Bは、少なくとも、前タイヤ12(後タイヤ16)の幅にわたって形成されている。すなわち、傾斜面Bは、概ね、外側サイドシル部22の幅方向内側位置から、前タイヤ12(後タイヤ16)の幅方向の内側位置にわたって形成されている。
【0028】
図3の点線で示すように、傾斜面Bは、前タイヤ収納部14側の面と地面との距離よりも、後タイヤ収納部18側の面と地面との距離が短くなるように形成されている。すなわち、傾斜面Bは、前方から後方に向かって下傾するように形成されている。この傾斜面Bの後端部(すなわち、後タイヤ収納部18側の端部)の高さは、底面Aよりも高いが、略同じ高さとなっている。
【0029】
なお、傾斜面Bは、外側サイドシル部22を除くサイドシル20の底面と、車体の底面24を形成するアンダーボディーの一部とから形成されている。しかしながら、サイドシル20が、タイヤ幅に対して十分に細い場合は、車体の底面24を形成するアンダーボディーの一部のみで傾斜面Bを形成してもよい。
【0030】
このように、本実施形態では、車体の底面24に、前タイヤ収納部14側の底面と地面との距離よりも、後タイヤ収納部18側の底面と地面との距離が短い傾斜面Bが形成されている。さらに、外側サイドシル部22は、前タイヤ収納部14側の底面と地面との距離と、後タイヤ収納部18側の底面と地面との距離が同一に形成されている。
【0031】
このように構成された本実施形態では、外側サイドシル部22の突出部と傾斜面Bとで、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流の流路を提供する。さらに、本実施形態では、この気流の流路を前方から後方に向かうにつれて狭めている。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かうにつれて加速させることができる。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流と、車両中央部を流れる気流の速さの差を低減することができ、気流の速さの差に起因する乱流の発生を防止することができる。
【0032】
このようにして、本実施形態では、乱流の発生を防止することにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。さらに、この空力性能の改善によって、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、外側サイドシル部22は、前タイヤ収納部14側の底面と地面との距離と、後タイヤ収納部18側の底面と地面との距離が同一に形成されている。さらに、その底面Aは、傾斜面Bよりも下方になるように形成されている。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を車体の側方外側に拡散させることなく、後方に向かって加速させることができる。
【0034】
<本発明の第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態における車体構造を説明するII−II線矢視断面図である。
基本的に、本発明の第1の実施形態と同様の構成・作用・効果を有し、異なる点は、車体の底面24に形成された傾斜面Bが車体の幅方向に外側から内側に向かって下傾している点である。
【0035】
本実施形態において、傾斜面Bは、図4に示すように、幅方向の外側が地面との距離が長く、内側が地面との距離が短くなるように形成されている。すなわち、傾斜面Bは、車体の幅方向に外側から内側に向かって下傾している。
また、傾斜面Bは、図3に示すように、前方から後方に向かって下傾するように形成されているのは上述のとおりである。
【0036】
このように構成された本実施形態では、第1の実施形態と同様に、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流の流路を、前方から後方に向かうにつれて狭めている。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かうにつれて加速させることができる。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流と、車両中央部を流れる気流の速さの差を低減することができ、気流の速さの差に起因する乱流の発生を防止することができる。また、乱流の発生を防止することにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。さらに、この空力性能の改善によって、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、傾斜面Bを車体の幅方向の外側から内側に向かって下傾させている。これにより、特に気流の速さが遅くなる幅方向の外側位置において、その速さを確実に加速させるとともに、内側位置においては、車体の底面24の高さを低くすることができる。すなわち、内側位置においては、車内空間をより広く確保することができる。
【0038】
<本発明の第3の実施形態>
図5は、本発明の第3の実施形態における車体構造を説明するII−II線矢視断面図である。
基本的に、本発明の第1の実施形態と同様の構成・作用・効果を有し、異なる点は、傾斜面Bにリブ26が形成されている点である。
【0039】
本実施形態において、図5に示すように、傾斜面Bには、車体の下方に向かって突出し、車体の前後方向に延在するリブ26が複数(図5では2つ)形成されている。
リブ26は、傾斜面Bから車体の下方に向かって突出する板状の部材であり、車体の前後方向に前タイヤ収納部14の後端部から後タイヤ収納部の先端部にかけて延在する。リブ26は、その底面が、外側サイドシル部22の底面Aの高さと略同じ高さとなるように形成されている。すなわち、リブ26は、前タイヤ収納部14側の方が後タイヤ収納部18側よりも長くなるように形成されている。本実施形態では、複数のリブ26が、幅方向に平行に設けられている。
【0040】
リブ26は、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かって整流する。すなわち、リブ26を設けることにより、気流を拡散させることなく、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって導くことができる。
【0041】
このような構成を有する本実施形態では、上記実施形態における効果に加えて、さらに、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かって確実に整流することができるので、気流を拡散させることなく確実に加速させることができる。
【0042】
ところで、前タイヤ収納部14から走行風が流出する際に、前タイヤ収納部14の後方において乱流が発生しやすいという不都合がある。また、後タイヤ収納部18に気流が流入する際に、後タイヤ収納部18の前方において乱流が発生しやすいという不都合がある。これに対して、リブ26を前タイヤ収納部14の後方に設けることにより、前タイヤ収納部14の後方、及び、後タイヤ収納部18の前方において乱流の発生を防止することができる。また、乱流の発生を防止することにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。さらに、この空力性能の改善によって、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0043】
なお、本実施形態において、リブ26は、車体の前後方向に前タイヤ収納部14の後端部から後タイヤ収納部18の先端部にかけて延在するとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、リブ26を、前タイヤ収納部14の後端部から、前方から後方に向かう途中位置まで延在するように形成してもよい。このように構成される場合であっても、前タイヤ収納部14の後方、及び、後タイヤ収納部18の前方において乱流の発生を防止することができ、空力性能を改善することができる。
【0044】
また、同様に、リブ26を、前方から後方に向かう途中位置から、後タイヤ収納部18の先端部まで延在するように形成してもよい。このように構成される場合であっても、前タイヤ収納部14の後方、及び、後タイヤ収納部18の前方において乱流の発生を防止することができ、空力性能を改善することができる。
【0045】
また、リブ26を、前方から後方に向かう途中位置にのみ形成するようにしてもよい。このように構成した場合であっても、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かって整流することができるので、気流を拡散させることなく加速させることができる。
【0046】
また、本実施形態において、少なくとも1以上のリブ26を設ければよく、所望の整流効果を得ることができる限りにおいて、その個数は特に制限されない。
【0047】
以上、本発明に係る車体構造について詳細に説明した。本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、様々な変化した構造、構成を採用してもよい。
【0048】
例えば、上記実施形態では、傾斜面Bは、外側サイドシル部22に対して幅方向の内側位置に、前タイヤ12(後タイヤ16)の幅にわたって形成されているとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、傾斜面Bが、前タイヤ収納部14(後タイヤ収納部18)の幅にわたって形成されていてもよい。本発明において、傾斜面Bは、少なくとも、前タイヤ12(後タイヤ16)の幅にわたって形成されていればよい。
【0049】
また、上記実施形態では、傾斜面Bは、図3に示すように、前方端部から後方端部に向かって一様に下傾するよう形成されているが、本発明はこれに限定されず、その傾斜角を途中で変化させてもよい。
【0050】
例えば、傾斜面Bは、地面に対する傾斜角が、前方から後方に向かって減少するようにしてもよいし、増大するようにしてもよい。特に、傾斜角が減少するように構成した場合、傾斜面Bの傾斜角が前方側において大きくなるので、前方側において気流を大きく加速させることができる。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流の速さを、車体の前方側において大きく増大させることができるので、より前方側において、車両中央部を流れる気流の速さとの差を低減することができる。したがって、乱流の発生をより確実に防止することができ、空力性能をより一層改善することができる。
【0051】
また、傾斜面Bは、前方から後方に向かう途中位置まで傾斜させ、それより後方は外側サイドシル部22の底面Aと略同じ高さで地面と平行になるよう構成してもよい。すなわち、傾斜面Bを、前方から後方に向かう途中位置まで形成するとともに、その後端部の高さが底面Aと略同じ高さとなるように構成するようにしてもよい。このように構成した場合においても、前方側において気流を大きく加速させることができる。これにより、より前方側において、車両中央部を流れる気流の速さとの差を低減することができる。したがって、乱流の発生をより確実に防止することができ、空力性能をより一層改善することができる。
【0052】
<本発明の第4の実施形態>
図6は、本発明の第4の実施形態における車体構造を説明するII−II線矢視断面図である。
基本的に、本発明の第2の実施形態と同様の構成・作用・効果を有し、異なる点は、外側サイドシル部22と傾斜面Bとがサイドシルスポイラによって一体的に形成されている点である。
【0053】
本実施形態において、外側サイドシル部22と傾斜面Bとは、サイドシルスポイラ28によって一体的に形成されている。なお、傾斜面Bは、第2の実施形態と同様に、車体の幅方向に外側から内側に向かって下傾している。また、傾斜面Bは、前方から後方に向かって下傾している。
【0054】
サイドシルスポイラ28は、樹脂等で形成された部材であり、真空成型や射出成型等によって成型される。これにより、サイドシル部22と傾斜面Bとを一体的に容易に形成することができる。このサイドシルスポイラ28は、車体を覆うように配置され、車体に対してクリップ30によって保持されている。
【0055】
このように構成された本実施形態では、第2の実施形態と同様に、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流の流路を、前方から後方に向かうにつれて狭めている。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かうにつれて加速させることができる。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流と、車両中央部を流れる気流の速さの差を低減することができ、気流の速さの差に起因する乱流の発生を防止することができる。また、乱流の発生を防止することにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。さらに、この空力性能の改善によって、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、傾斜面Bを車体の幅方向の外側から内側に向かって下傾させている。これにより、特に気流の速さが遅くなる幅方向の外側位置において、その速さを確実に加速させることができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、サイドシルスポイラ28を設けることにより、本発明にかかる構成である外側サイドシル部22と傾斜面Bとを一体的に形成し、取り付けることを容易とすることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、傾斜面Bを第2の実施形態と同様に、車体の幅方向に外側から内側に向かって下傾するとともに、前方から後方に向かって下傾しているとしたが、本発明はこれに限定されない。傾斜面Bは、第1の実施形態と同様に、前方から後方に向かって下傾しているのみでもよい。この場合であっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、本実施形態では、サイドシルスポイラ28は、外側サイドシル部22と傾斜面Bを一体的に形成するとしたが、これに限定されない。例えば、外側サイドシル部22のみをサイドシルスポイラ28で形成してもよい。この場合、傾斜面Bは、車体の底面24によって形成される。また、傾斜面Bのみをサイドシルスポイラ28によって形成してもよい。この場合、外側サイドシル部22は、車体と一体的に形成される。
【0060】
<実施形態の構成及び効果>
以上の実施形態によれば、前タイヤ12を収納するための前タイヤ収納部14と、後タイヤ16を収納するための後タイヤ収納部18と、前タイヤ収納部14と後タイヤ収納部18との間位置、かつ、車体の側面と下面との端部に配置されるサイドシル20と、を有し、サイドシル20は、車体の幅方向の外側位置に形成される外側サイドシル部22を備え、外側サイドシル部22は、前タイヤ収納部14側の外側サイドシル部22の底面Aと地面との距離と、後タイヤ収納部18側の外側サイドシル部22の底面Aと地面との距離が同一に形成され、車体の底面24は、車体の幅方向の外側サイドシル部22の内側、かつ、前タイヤ収納部14と後タイヤ収納部18の間の位置に形成される傾斜面Bを備え、傾斜面Bは、前タイヤ収納部14側の底面と地面との距離よりも、後タイヤ収納部18側の底面と地面との距離が短く形成される傾斜面Bが形成されている。
【0061】
このような構成によって、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流の流路を形成するとともに、その流路を前方から後方に向かうにつれて狭めている。これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、車体の側方外側に拡散させることなく、前方から後方に向かうにつれて加速させることができる。また、これにより、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流と、車両中央部を流れる気流の速さの差を低減することができ、気流の速さの差異に起因する乱流の発生を防止することができる。このようにして、乱流の発生を防止することにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。さらに、この空力性能の改善によって、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0062】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bは、前タイヤ収納部14の後端部から、後タイヤ収納部18の先端部にわたって形成される。
このような構成により、前タイヤ収納部14から後タイヤ収納部18にわたって、気流の流路を確保することができ、気流を拡散させることなく加速させることができる。その結果、気流の速さの差に起因する乱流の発生を防止し、これにより、空気抵抗を低減し、空力性能を改善することができる。
【0063】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bは、前タイヤ収納部14の後端部から、前タイヤ収納部14と後タイヤ収納部18の間の位置にわたって形成される。
このような構成により、前方側において気流を大きく加速させることができる。これにより、より前方側において、車両中央部を流れる気流の速さとの差を低減することができる。したがって、乱流の発生をより確実に防止することができ、空力性能をより一層改善することができる。
【0064】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bは、車体の幅方向の外側が地面との距離が長く、車体の幅方向の内側が地面との距離が短く形成される。
このような構成により、特に気流の速さが遅くなる車体の幅方向の外側位置において、気流の速さを確実に加速させるとともに、内側位置においては、車体の底面24の高さを低くすることができる。すなわち、内側位置においては、車内空間をより広く確保することができる。
【0065】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bは、少なくともタイヤの車体方向の幅にわたって形成される。
このような構成により、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かうにつれてより確実に加速させることができる。
【0066】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bに、下方に向かって突出し、車体の前後方向に延在するリブ26を少なくとも1つ設ける。
このような構成により、前タイヤ12の後から後タイヤ16へと向かって流れる気流を、前方から後方に向かって確実に整流することができるので、気流を拡散させることなく確実に加速させることができる。また、前タイヤ収納部14の後方、及び、後タイヤ収納部18の前方において乱流の発生を防止することができる。
【0067】
また、以上の実施形態によれば、傾斜面Bと外側サイドシル部22が、サイドシルスポイラ28として一体的に形成される。
このような構成により、本発明にかかる構成である外側サイドシル部22と傾斜面Bとを一体的に形成し、取り付けることを容易とすることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 車両
12 前タイヤ
14 前タイヤ収納部
16 後タイヤ
18 後タイヤ収納部
20 サイドシル
22 外側サイドシル部
24 車体の底面
26 リブ
28 サイドシルスポイラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前タイヤを収納するための前タイヤ収納部と、
後タイヤを収納するための後タイヤ収納部と、
前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部との間位置、かつ、車体の側面と下面との端部に配置されるサイドシルと、を有し、
前記サイドシルは、前記車体の幅方向の外側位置に形成される外側サイドシル部を備え、
前記外側サイドシル部は、前記前タイヤ収納部側の前記外側サイドシル部の底面と地面との距離と、前記後タイヤ収納部側の前記外側サイドシル部の底面と地面との距離が同一に形成され、
前記車体の底面は、前記車体の幅方向の前記外側サイドシル部の内側、かつ、前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部の間の位置に形成される傾斜面を備え、
前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部側の底面と地面との距離よりも、前記後タイヤ収納部側の底面と地面との距離が短く形成される
車体構造。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部の後端部から、前記後タイヤ収納部の先端部にわたって形成される
請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部の後端部から、前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部の間の位置にわたって形成される
請求項1に記載の車体構造。
【請求項4】
前記傾斜面は、
前記車体の幅方向の外側が地面との距離が長く、
前記車体の幅方向の内側が地面との距離が短く
形成される
請求項1〜3のいずれかに記載の車体構造。
【請求項5】
前記傾斜面は、少なくとも前記タイヤの前記車体方向の幅にわたって形成される
請求項1〜4のいずれかに記載の車体構造。
【請求項6】
前記傾斜面に、前記下方に向かって突出し、前記車体の前後方向に延在するリブを少なくとも1つ設ける
請求項1〜5のいずれかに記載の車体構造。
【請求項7】
前記傾斜面と前記外側サイドシル部が、サイドシルスポイラとして一体的に形成される
請求項1〜6のいずれかに記載の車体構造。
【請求項1】
前タイヤを収納するための前タイヤ収納部と、
後タイヤを収納するための後タイヤ収納部と、
前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部との間位置、かつ、車体の側面と下面との端部に配置されるサイドシルと、を有し、
前記サイドシルは、前記車体の幅方向の外側位置に形成される外側サイドシル部を備え、
前記外側サイドシル部は、前記前タイヤ収納部側の前記外側サイドシル部の底面と地面との距離と、前記後タイヤ収納部側の前記外側サイドシル部の底面と地面との距離が同一に形成され、
前記車体の底面は、前記車体の幅方向の前記外側サイドシル部の内側、かつ、前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部の間の位置に形成される傾斜面を備え、
前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部側の底面と地面との距離よりも、前記後タイヤ収納部側の底面と地面との距離が短く形成される
車体構造。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部の後端部から、前記後タイヤ収納部の先端部にわたって形成される
請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記前タイヤ収納部の後端部から、前記前タイヤ収納部と前記後タイヤ収納部の間の位置にわたって形成される
請求項1に記載の車体構造。
【請求項4】
前記傾斜面は、
前記車体の幅方向の外側が地面との距離が長く、
前記車体の幅方向の内側が地面との距離が短く
形成される
請求項1〜3のいずれかに記載の車体構造。
【請求項5】
前記傾斜面は、少なくとも前記タイヤの前記車体方向の幅にわたって形成される
請求項1〜4のいずれかに記載の車体構造。
【請求項6】
前記傾斜面に、前記下方に向かって突出し、前記車体の前後方向に延在するリブを少なくとも1つ設ける
請求項1〜5のいずれかに記載の車体構造。
【請求項7】
前記傾斜面と前記外側サイドシル部が、サイドシルスポイラとして一体的に形成される
請求項1〜6のいずれかに記載の車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−14175(P2013−14175A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146782(P2011−146782)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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